JP3858446B2 - 空調装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空調装置に関するもので、車両用空調装置に適用して有効である。
【0002】
【従来の技術】
車両用空調装置では、温度設定器及び内気温センサ等の検出値に基づいて必要吹出温度を算出し、この必要吹出し温度に基づいて車室内に吹出す空気の送風量を決定している。
また、特開平6−195323号公報に記載の発明では、温度設定器及び内気温センサ等の検出値に基づいてニューラルネットワークにより送風量を決定している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、発明者等は車両用空調装置について種々の試験検討をしていたところ、車室内の温度が比較的安定しているときであっても、送風量が大きく変動してしまい、乗員に対して不快感を与えてしまうという問題を発見した。そこで、引き続き試験検討したところ、以下に述べる原因により送風量が変動するということが判った。
【0004】
すなわち、車室内の温度が比較的安定しているときであっても、車室内の空気の流れの変化等により、内気温センサの検出温度が変動してしまうため、これに呼応して送風量も変動してしまう。そして、この送風量の変動は、さらに検出温度の変動を誘発するので、さらに大きく送風量が変動してしまう。
ところで、発明者等は、上記問題を解決するために、ニューラルネットワークにより仮の送風量VM1を算出し、この仮の送風量VM1に基づいて、図9の実線に示すような風量特性マップにより真の送風量VM2を決定するといった手段を採用したが、この風量特性マップでは、仮の送風量VM1が1段(1ステップ)変化すると、真の送風量VM2も1段(1ステップ)変化するので、内気温センサの検出温度を十分に吸収することができず、送風量の変動を防止することができなかった。
【0005】
なお、仮の送風量VM1が2段以上変化した時に、真の送風量VM2が1段のみ変化するような風量特性マップ(図9の破線参照)とすれば、上記問題は解決することができるものの、仮の送風量VM1の変化に対し、真の送風量VM2の変化が小さくなるので、送風量の変化段数が少なくなる。このため、送風量(車両用空調装置)をきめ細かく制御することができなくなるという新たな問題が発生する。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、内気温センサ等の室温検出手段の検出温度が変動しても、送風量が大きく変動することを防止する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術的手段を用いる。請求項1、2に記載の発明では、温設定出手段(21)により設定された希望室内温度、及び室温検出手段(22)により検出された検出温度に基づいて、段階的に変化する送風量変数(VM1)を決定する送風量変数決定手段(S50)と、
送風量変数(VM1)に基づいて目標風量(VM2)を決定する目標風量決定手段(S60)と、
送風機(3)の送風量が、目標風量(VM2)となるように送風機(3)を制御する制御手段(19)とを有し、
目標風量決定手段(S60)は、送風量変数(VM1)の増減変化の向きが一の向きに変化したときは、その一の向きの変化に連動して目標風量(VM2)を段階的に変化させ、送風量変数(VM1)の増減変化の向きが反転したときには、送風量変数(VM1)の増減変化量が2段以上となるまでは、目標風量(VM2)を固定することを特徴とする。
【0008】
これにより、送風量変数(VM2)の増減変化の向きが反転したときには、送風量変数(VM1)の増減変化量が2段以上となるまでは、目標風量(VM2)を固定するので、室温検出手段(22)の検出値が変動しても、実際の送風量(目標風量)が変動(ハンチング)することを防止できる。
また、送風量変数(VM1)の増減変化の向きが反転したときにのみ、送風量変数VM1の増減変化量が2段以上となるまで、目標風量VM2を固定するので、後述するように、送風量の変化段数を少なくすることができる。
【0009】
したがって、本発明に係る空調装置では、送風量(車両用空調装置)をきめ細かく制御しつつ、送風量の変動を防止できる
【0010】
因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本実施形態は、本発明に係る空調装置を車両用空調装置に適用したものであり、図1は本実施形態に係る車両用空調装置の模式図である。
1は空気通路を構成する空調ケーシングであり、この空調ケーシング1の空気流れ最上流側には、車室内空気を空調ケーシング1内に導入する内気吸入口1a及び車室外空気を空調ケーシング1内に導入する外気吸入口1bが形成されている。そして、両吸入口1a、1bには、各吸入口1a、1bの開口状態(吸入口モード)を調節する内外気切替ドア2が配置されており、この内外気切替ドア2の空気流れ下流側には、車室内に向けて空気を送風する送風機3が配設されている。
【0012】
また、送風機3の空気流れ下流側には、車室内に送風される空気を冷却する蒸発器(空気冷却手段)4が配設されており、空調ケーシング1を流通する空気(送風機3により送風される空気)の全ては蒸発器4を通過する。また、蒸発器4の空気流れ下流側には、走行用エンジン(図示せず)の冷却水を熱源として車室内に吹き出す空気を加熱するヒータコア(空気加熱手段)5が配設されているとともに、蒸発器4を通過した空気をヒータコア5を迂回させて下流側に流通させるバイパス通路6が形成されている。
【0013】
7はヒータコア5を通過する風量とバイパス通路6を通過する風量との風量割合を調節するエミックスドアであり、本実施形態に係る車両用空調装置では、エアミックスドア7の開度(風量割合)SWを調節することにより、車室内に吹き出す空気の温度を調節している。なお、以下、蒸発器4、ヒータコア5及びエアミックスドア7等を総称して空調手段と呼ぶ。
【0014】
空調ケーシング1の最下流側には、空調手段により調節された空調風を車両乗員の足元に向けて吹出すためのフット吹出口8a、8b、空調風を車両乗員の上半身に向けて吹出すためのセンタ・サイドの各フェイス吹出口9a〜9d、及び空調風をフロントガラスに向けて吹出すためのデフロスタ吹出口10が設けられている。
【0015】
また、各吹出口8a、8b、9a〜9d、10には、これら吹出口8a、8b、9a〜9d、10を選択的に開閉する吹出口切替ドア11〜13が設けられている。そして、これら吹出口切替ドア11〜13の開閉状態を切替えることによって、フットモード、バイレベルモード、フェイスモード、デフモード等の所定の吹出口モードを設定する。
【0016】
ところで、内外気切替ドア2、エアミックスドア7、および吹出口切替ドア11〜13それぞれは、サーボモータ(駆動手段)14〜18により駆動され、これらサーボモータ14〜18の作動は電子制御装置(制御手段)19により制御される。同様に、送風機3の送風量も、モータ3aへの印可電圧を制御することにより電子制御装置(以下、ECUと記す。)19によって制御される。
【0017】
なお、ECU19は、中央演算装置(CPU)、記憶装置(ROM、RAM等)からなる周知のマイクロコンピュータ等からなるものである。
21は、乗員の手動操作により、乗員(人員)が希望する車室内温度(希望室内温度)を設定(入力)する温度設定器(温度設定手段)であり、22は車室内空気の温度を検出する内気温センサ(室内温度検出手段)である。23は車室外空気の温度を検出する外気温センサ(室外温度検出手段)であり、24は車室内への日射量を検出する日射センサ(日射量検出手段)である。
【0018】
また、25は蒸発器4を通過した直後の空気温度(蒸発器4の温度)を検出するエバポレータ温度センサであり、26はヒータコア5に流入する温水(エンジン冷却水)の温度を検出する水温センサ(水温検出手段)である。そして、これらセンサ22〜26の検出信号は、ECU19に入力されている。
次に、ECU19の制御フローに基づいて、本実施形態に係る車両用空調装置の作動を述べる(図2参照)。
【0019】
イグニッションスイッチ等の車両電源スイッチ(図示せず)が投入されると、先ず、ECU19の記憶装置(RAM)の初期化(イニシャライズ)を行い(S10)、温度設定器21の設定温度Tset、及び各センサ22〜26の検出値を読み込む(S20、S30)。
次に、設定温度Tset及び各センサ22〜26の検出値を用いて以下の数式1により必要吹出温度TAOを算出する(S40)。
【0020】
【数1】
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts−CKset、Kr、Kam、Ks:ゲイン
C:定数
Tr:内気温センサ22の検出値
Tam:外気温センサ23の検出値
Ts:日射センサ24の検出値
そして、内気温Tr、外気温Tam、日射量Ts及び内気温Trと設定温度Tsetとの偏差TD(=Tr−Tset)からニューラネットワークに基づいて、段階的(ステップ的)に変化する仮の必要送風量レベル(以下、この送風量を送風量変数VM1と呼ぶ。)を決定し(S50)、この決定された送風量変数VM1に基づいて、記憶装置(ROM)に予め記憶された送風特性マップ(図3参照)により真の必要送風量レベル(以下、この送風量を目標風量VM2と呼ぶ。)を決定する(S60)。なお、風量特性マップについての詳細は、後述する。
【0021】
次に、必要吹出温度TAOに基づいて、図4、5に示すように、吸入口モード及び吹出口モードを決定するとともに(S70)、以下の数式2に基づいてエアミックスドア7の開度SWを決定する(S80)。
【0022】
【数2】
SW(%)=(TAO−Te)/(Tw−Te)×100
Te:エバポレータ温度センサ25の検出値
Tw:水温センサ26の検出値
その後、S50〜S80にて決定した値に基づき、各サーボモータ14〜18及び送風機3のモータ3aに制御信号を出力し(S90)、その制御信号を発した時から所定時間to経過後(S100、S110)、S20に戻る。
【0023】
次に、風量特性マップについて述べる。
送風特性マップは、図3に示すように、送風量変数VM1に基づいて目標風量VM2を段階的(ステップ的)に決定するもので、送風量変数VM1が増加する向きに変化するときの目標風量と、減少する向きに変化するときの目標風量との間で所定のヒステリシス特性が得られるようになっている。
【0024】
そして、そのヒステリシス特性は、送風量変数VM1の増減変化の向きが一の向きに変化したときは、その一の向きの変化に連動して目標風量VM2を段階的に変化させる。一方、送風量変数VM1の増減変化の向きが反転したときには、送風量変数VM1の増減変化量が2段以上(2ステップ以上)となるまで、そのときの目標風量VM2に固定し、送風量変数VM1の増減変化量が2段以上となった時に目標風量VM2を変化させる。
【0025】
ところで、ニューラルネットワークとは、周知のごとく、脳の情報処理方式を模倣した情報処理方法であり、本実施形態では、以下のようなものである。
すなわち、送風量変数を算出するニューラルネットは、図6に示すようにある入力信号を与えたときにこの出力が所望の値(教師データ)になるようにニューラルネット内に設けられた入力層、第1、第2の中間層、出力層内部の各ニューロン間の結合係数(シプナス荷重)を修正するというバックプロパゲーション機能を備えたものであり、繰り返し「学習」させることにより新たな信号が入力されたとき、所望の値を得ることができるものである。つまり、多量のデータ(教師データ)からその相関関数を自動生成する特徴をもっている。
【0026】
なお、入出力値はセンサ信号等をそれぞれ0〜1に規格化(正規化)されたものであり、実際に出力された値は(0〜1)変換する作業が必要である。例えば、外気温センサ23は検出範囲は、通常−30〜50℃であり、この範囲の値を0〜1に割り当てニューラルネットに入力する。出力結果も0〜1の値が出力されるため、あらかじめ設定された変換マップによって逆に変換されて出力(算出)される。
【0027】
ここで、現状の車両用空調装置が直面する環境条件は、様々であり、その教師データは、数万点から数十万点以上におよぶため、専用の大型コンピュータにて学習を行い、予め結合係数を算出しておく。そして、その結果をECU19に組み込み、図7に示すように入力に対する出力を計算する。
各ニューロンでは、入力信号O1〜Onそれぞれに対応する結合係数を掛け合わせ、その値をシグモイド関数と呼ばれる関数に適用する。その結果を後続のニューロンの入力として出力する。そして、これを繰り返すことで最終的な出力を得る。
【0028】
次に、本実施形態の特徴を述べる。
本実施形態によれば、送風量変数VM1の増減変化の向きが反転したときには、送風量変数VM1の増減変化量が2段以上(2ステップ以上)となるまで、そのときの目標風量VM2に固定するので、内気温センサ22の検出値(内気温センサ22の検出値が変動しても、実際の送風量(目標風量)が変動(ハンチング)することを防止できる。
【0029】
また、送風量変数VM1の増減変化の向きが反転したときにのみ、送風量変数VM1の増減変化量が2段以上(2ステップ以上)となるまで、目標風量VM2を固定するので、送風量変数VM1の増減変化の向きが一の向きに変化するときには、図3に示すように、送風量変数VM1が一段変化した時に目標風量VM2が1段変化するような風量特性マップとすることができる。
【0030】
したがって、送風量の変化段数を少なくすることなく、実際の送風量(目標風量)が変動することを防止できる。つまり、送風量(車両用空調装置)を木目細かく制御しつつ、送風量の変動を防止できる(図8参照)。
ところで、上述の実施形態では、車両用空調装置を例に本発明に係る空調装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他の空調装置に対しても適用することができる。
【0031】
また、上述の実施形態では、送風量変数VM1の増減変化の向きが反転したときには、送風量変数VM1の増減変化量が2段以上となるまで、目標風量VM2を固定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、送風量変数VM1の増減変化量が3段以上となるまで、目標風量VM2を固定してもよい。
また、上述の実施形態では、各吹出口8a、8b、9a〜9d、10から吹出す空調風の温度及び送風量は、1つのエアミックドア7及び1つの送風機3にて集中的に制御したものであったが、例えば左右の吹出口毎に空調風を制御する、いわゆる左右独立コントロール型の車両用空調装置に対しても適用することができる。
【0032】
また、上述の実施形態では、ニューラルネットワークにより送風量変数VM1を算出したが、ファジィ理論等その他の制御理論を用いて送風量変数VM1を算出してもよい。
また、上述の実施形態では、送風量を決定する風量特性マップのみにヒステリシスを設けたが、その他のものにヒステリシスを設けてもよい。
【0033】
また、上述の実施形態では、内気温Tr、外気温Tam、日射量Ts及び内気温Trと設定温度Tsetとの偏差TD(=Tr−Tset)を変数(パラメータ)として送風量変数VM1を算出したが、本発明はこれに限定されるものではなく、送風量変数VM1を算出するにあたって、少なくとも内気温Tr及び設定温度Tsetを含んでいればよい。
【0034】
また、上述の実施形態では、ニューラルネットワークの出力である送風量変数VM1がステップ状であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、リニアな出力(連続的な出力)であってもよい。その時は、段数部分のステップを見て、2段以上変化した時に目標風量VM2を変化させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る車両用空調装置の模式図である。
【図2】実施形態に係る車両用空調装置の制御フローチャートである。
【図3】実施形態に係る車両用空調装置の風量特性マップである。
【図4】吸入口モードを示すマップである。
【図5】吹出口モードを示すマップである。
【図6】ニューラルネットワークの模式図である。
【図7】シグモイド関数を示す模式図である。
【図8】風量変化及び室内温度と時間との関係を示すグラフである。
【図9】従来の技術に係る風量特性マップである。
【符号の説明】
19…電子制御装置(制御手段)、21…温度設定器(温度設定手段)、
22…温度設定器(温度設定手段)、23…外気温センサ。

Claims (2)

  1. 室内に吹き出す空気の調和を図る空調装置であって、室内に空気を送風する送風機(3)と、
    人員が操作することにより、人員が希望する室内温度を設定する温度設定手段(21)と、
    室内の温度を検出する室温検出手段(22)と、
    前記温設定出手段(21)により設定された希望室内温度、及び前記室温検出手段(22)により検出された検出温度に基づいて、段階的に変化する送風量変数(VM1)を決定する送風量変数決定手段(S50)と、
    前記送風量変数(VM1)に基づいて目標風量(VM2)を決定する目標風量決定手段(S60)と、
    前記送風機(3)の送風量が、前記目標風量(VM2)となるように前記送風機(3)を制御する制御手段(19)とを有し、
    前記目標風量決定手段(S60)は、前記送風量変数(VM1)の増減変化の向きが一の向きに変化したときは、その一の向きの変化に連動して前記目標風量(VM2)を段階的に変化させ、前記送風量変数(VM1)の増減変化の向きが反転したときには、前記送風量変数(VM1)の増減変化量が2段以上となるまでは、前記目標風量(VM2)を固定することを特徴とする空調装置。
  2. 前記送風量変数決定手段(S50)は、前記希望室内温度及び前記検出温度を変数として、ニューラルネットワークに基づいて前記送風量変数(VM1)を決定することを特徴とする請求項に記載の空調装置。
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