JP3857338B2 - レシチン化スーパーオキシドディスムターゼおよびそれを有効成分とする医薬 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レシチン化スーパーオキシドディスムターゼ、およびそれを有効成分とする医薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
薬物の効果を高め、副作用を減らす試みは、古くから行われてきているが、近年応用され始めているものの一つとしてドラッグデリバリーシステム(DDS)がある。DDSとは、薬物を必要とする部位へ、なるべく選択的に、必要な時間の間移行させ、それにより薬物の効果を高め全身的な副作用を大幅に減少させる試みである。
【0003】
DDSに用いられるキャリアとしては種々のものがあり、例えばリポソームとリピッドマイクロスフェアを挙げることができる。リポソームは、天然に存在する脂質、例えばレシチン、コレステロールなどを有機溶媒に溶解し、超音波処理などで水に拡散させ、これに薬物を封入させたものである。一方、リピッドマイクロスフェアは、大豆油をレシチンとともに水に懸濁したものであり、レシチンがその表面にあり、内部に薬物が封入されている。
【0004】
両者とも、薬物は主として物理的な結合により内部に封入されている。リポソームは、安定性が悪く、またリピッドマイクロスフェアは、封入する薬物が脂溶性であることが要求され、その上特殊な製造装置を使用する必要がある。
【0005】
一方、スーパーオキシドディスムターゼ(以下、それをSODと略記する)は、動物、植物、微生物などの生体内に広く分布し、遊離(フリー)の反応性に富む活性酸素であるスーパーオキシドアニオンラジカルを分解する酵素として知られている。薬物の面では、スーパーオキシドによって引き起こされる種々の疾患に対する予防薬、治療薬(例えば、炎症、変形性関節炎、慢性関節リウマチ、紫外線照射による障害、未熟児酸素網膜症、白内障、アドリアマイシンなどの制癌剤の副作用、虚血部分への血流再開に伴う障害、心筋梗塞または臓器移植の際の使用など)などとして期待されている(抗炎症剤としては、ファルマシア、17巻、411 頁(1981年)参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
SODを静脈内投与した場合、細胞親和性が低く、かつその血中半減期は僅か4〜6分とされており、SODは速やかに尿中に排泄される。SODの血中半減期を増大させるために,SODをフィコール、ポリエチレングリコール、ラットアルブミン、デキストランで修飾し、巨大化させることが試みられてきた。
【0007】
しかし、フィコールまたはポリエチレングリコールで修飾されたSODには抗原性があることが報告されている。また、デキストランによる修飾では,SODの抗炎症作用の増強が認められるが、免疫原生を抑制する効果は認められない。
【0008】
従来知られている種々の修飾SODは、すでに報告されている上記の理由、または巨大分子化に伴う組織内浸透性の低下などの点でいずれも実用上問題があった。従って、いずれの修飾SODも臨床応用には至っていないのが現状である。
【0009】
一方、本発明者らは、SODのDDS化について検討した結果、SODに化学的橋かけでレシチンを結合させたレシチン化スーパーオキシドディスムターゼを見い出した(特開平3−163100号公報参照)。また、このSODとして、銅および/または亜鉛が配位した、111位がセリンであるヒト由来のSODが適当であることも見いだした(特開平6−54681号公報参照)。
【0010】
【問題を解決するための手段】
本発明者らは、これら従来のものとは全く異なり、しかも優れた効果を挙げることができるレシチン化スーパーオキシドディスムターゼについて検討した結果、下記特定のスーパーオキシドディスムターゼを用いたレシチン化スーパーオキシドディスムターゼを見い出した。
【0011】
本発明は、この特定のレシチン化スーパーオキシドディスムターゼ、およびそれを有効成分とする薬剤である。
下記式[1]で表されるレシチン化スーパーオキシドディスムターゼ。
A−[C(O)-(CH2)n C(O)- B] m ・・・[1]
ただし、
A:銅および/または亜鉛が配位した、111 位のシステインのメルカプト基に2−ヒドロキシエチルチオ基が導入されたヒト型スーパーオキシドディスムターゼの残基、
B:グリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンの、その2位の水酸基の水素原子を除いた残基、
m :1以上の整数、
n :2以上の整数。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のレシチン化スーパーオキシドディスムターゼは、従来のSODとは生物体内分布、細胞親和性が著しく異なり、かつ残存活性が90%以上の極めて均一な活性を保持したものが得られ、従ってSODの薬理活性の強化、副作用の低下、吸収促進が期待できる。
【0013】
本発明のレシチン化スーパーオキシドディスムターゼは、通常、リゾレシチンの残基に化学的に橋かけ剤を結合させたレシチン誘導体を、銅および/または亜鉛が配位した、かつ111 位のシステインのメルカプト基に2−ヒドロキシエチルチオ基が導入されたヒト型スーパーオキシドディスムターゼ(以下、 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODという) に1個以上結合させて得られる。
【0014】
Bは、下記式[2]で表されるグリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンの、その2位の水酸基の水素原子を除いた残基である。
-O-CH(CH2OR)[CH2OP(O)(O-)(OCH2CH2N+(CH3)3] ・・・[2]
上記式において、Rは脂肪酸残基(アシル基)であり、特に炭素数8〜30の飽和〜不飽和の脂肪酸残基が好ましい。特に好ましいRは、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、その他の炭素数14〜22の飽和脂肪酸残基である。Cu-Zn 型Cys-111-ME-h-SODにリゾレシチンの残基が2個以上ある場合は、それらリゾレシチンの残基におけるRは異なっていてもよい。
【0015】
上記式[1]中、-C(O)-(CH2)nC(O)- は化学的橋かけ剤の残基を表す。この化学的橋かけ剤の残基は、HO-C(O)-(CH2)nC(O)-OH で表される直鎖ジカルボン酸、およびその無水物、そのエステル、その他のそのジカルボン酸の反応性誘導体からなる化学的橋かけ剤の両水酸基を除いた残基である。以下、この残基を化学的橋かけという。
【0016】
この化学的橋かけは、上記リゾレシチン残基とエステル結合で結合している。また、化学的橋かけの他端は、 Cu-Zn型Cys-111-ME-SODのアミノ基とアミド結合などにより直接結合していると考えられる。この式において、nは2以上の整数であり、-(CH2)n - は直鎖アルキレン基を表し、特にnが2〜10の直鎖状アルキレン基が好ましい。
【0017】
上記式[1]で表されるレシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODは、例えば Cu-Zn型組換えh-SOD と式[3]のリゾレシチン誘導体とにより製造される。
Z-C(O)-(CH2)nC(O)-B・・・[3]
上記式中、B、nは式[1]の場合と同様である。式[3]中Zは水酸基、または活性エステルを形成する基からカルボニル基を除いた基を表す。例えば、p−ニトロフェノール、3,5-トリクロロフェノール、ペンタフルオロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシピペリジン、N-ヒドロキシ-5- ノルボルネン-2,3- ジカルボン酸イミド、8-ヒドロキシキノリン、2-ヒドロキシピリジンなどの水酸基含有化合物の水酸基の水素原子を除いた基である。活性エステル体の合成法については公知の方法を用いることができる(泉屋他、「ペプチド合成の基礎と実験」(1985)丸善(株)発行、参照)。
【0018】
式[3]で表されるリゾレシチン誘導体と Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODとの結合方法としては、例えば以下のものが挙げられる。
式[3]においてZが水酸基の場合はカルボジイミド法により行われる。カルボジイミド類としては、ジエチルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなどが挙げられる。たとえば、1〜10wt%の[3]の化合物の水溶液を塩酸でpH4〜6に調製し、室温または0℃で1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを加え、再度pHを4〜6に調製する。SODを加え室温または0℃で1時間pHを4〜6に保持しその後5〜20時間撹拌し、レシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODを得る。
【0019】
式[3]においてZが活性エステルを形成する基からカルボニル基を除いた基を表す場合は、 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODと直接結合させることができる。反応は、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、重炭酸ナトリウムなどの塩の水溶液中でレシチン誘導体と Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODを混合することによって行われる。
【0020】
必要に応じて、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジメチルスルホキシド、アセトン、1,4-ジオキサン、メタノールなどの有機溶媒を加えておくことができる。反応温度は -20〜50℃が好ましく、0〜20℃が更に好ましい。反応時間は反応温度、混合方法により異なるが通常2〜24時間である。
【0021】
式[3]で表されるレシチン誘導体の仕込量は、 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODのアミノ基に対して0.2 〜8モル量が適当である。この仕込み比によって Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODに結合させるレシチン誘導体(式[3])の分子数を調整することができる。
【0022】
このようにして得られた反応液にはレシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODと未反応 Cu-Zn型Cys--111-ME-r-h-SOD 、および未反応レシチン誘導体が共存するが、反応液をゲル濾過およびイオン交換カラムクロマトグラフィーに付することにより所望のレシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODを得ることができる。また、このようにして得られたレシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODは、通常 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODに種々の数のレシチン誘導体が結合して得られたものの混合物である。
【0023】
有効成分化合物として Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODに結合するレシチン誘導体の分子数が均一になるようなレシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODが所望される場合には、前記の方法により得られるレシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODを更にゲル濾過、イオン交換カラムクロマトグラフィ−などの操作に付することにより所望の数のレシチン誘導体が結合したレシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODを得ることが可能である。 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SOD1分子あたりのレシチン結合数(式[1]におけるm )は、特に限定されるものではないが、1〜16が好ましく、特に1〜10が好ましい。
【0024】
式[3]の化合物の製造方法としては、下記式[4]で表される酸無水物をH-Bで表されるリゾレシチンに反応させる方法、または、下記式[5]で表されるジカルボンン酸ハーフエステル無水物をH-Bで表されるリゾレシチンに反応させる方法により得られる。
[-C(O)-(CH2)nC(O)-]=O ・・・[4]
[Z'-O-C(O)-(CH2)nC(O)-]2=O ・・・[5]
ここでB,nは式[1]の場合と同様である。Z'はカルボキシル基の保護基、たとえば、アルキル基、メトキシメチル基、ベンジル基、フェナシル基、t-ブチルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリメチルシリル基などを表す。
【0025】
これら酸無水物やハーフエステル無水物を用いて式[3]の化合物を製造する反応は、通常溶媒中で行われ、必要により有機塩基を共存させて行う。反応溶媒としては、たとえば、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素が用いられ、有機塩基としては、たとえば、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、4-ピペリジノピリジンなどが用いられる。反応温度は20〜80℃が好ましく40〜60℃がさらに好ましい。反応時間は通常2〜24時間である。
【0026】
式[5]の製造方法としては、当該するカルボン酸ハーフエステルをベンゼン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、などの溶媒中でカルボジイミドと混合させることにより得られる。カルボジイミドとしては、たとえば、ジエチルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなどが用いられる。反応温度は、-20 ℃から溶媒還流温度までの範囲を用いることができるが、好ましくは、0℃から室温程度の温度を用いる。
【0027】
本発明で用いる Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODは、たとえばヒト型スーパーオキシドディスムターゼとビス(2-ヒドロキシエチル)ジスルフィドとを反応させることによって得られる(特開平6ー199895号公報参照)。ヒト型スーパーオキシドディスムターゼは、天然型ヒトSODと実質上同一のアミノ酸配列を有するものであり、たとえば、特開昭61ー111690号公報などに記載の方法によって得ることができるし、あるいは市販品として入手することもできる。
【0028】
本発明における製剤の形態としては、注射剤、直腸吸収剤、経鼻吸収剤などが挙げられる。注射剤は、たとえば本有効成分を緩衝剤、等張剤、pH調節剤、安定化剤と適量に溶解した注射用蒸留水に溶解し、除菌フィルタを通して無菌化したものをアンプルに分注するか、バイアル瓶に分注して凍結乾燥することにより調製される。
【0029】
本発明のレシチン化スーパーオキシドディスムターゼのヒトに対する投与量は、特に限定されるものではないが、約0.0001〜100mg /人程度が適当であり、特に約 0.001〜10mg/人程度が好ましい。なお、 1mgは3000ユニット(U)に相当する。
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。
【0030】
【実施例】
(合成例1)
9-ベンジルオキシカルボニル-1- ノナン酸無水物の合成
9-ベンジルオキシカルボニル-1- ノナン酸15g(51mmol)をベンゼン50mlに溶解させ0℃に冷却し、DCC(1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド) 5.8g(28mmol)を加え、室温で15時間撹拌した。不溶物をセライトで濾過し、減圧濃縮して、標記化合物を得た。
【0031】
(合成例2)
2-(9-ベンジルオキシカルボニルノナノイル)リゾレシチンの合成
グリセロールの2位が水酸基であるリゾレシチン3g(5.9mmol) のクロロホルム−ピリジン(80ml/20ml) 懸濁液に、DMP(N,N- ジメチルアミノピリジン)2.16g(17.7mmol) 、9-ベンジルオキシカルボニル-1- ノナン酸無水物10.0g(17.7mmol)を加え、60℃で15時間撹拌した。その後、反応液を減圧濃縮し、残渣にクロロホルム:メタノール:水=4:5:1(10ml)を加えて溶解し、同液にて平衡化したイオン交換カラム(Dowex 50W-X8) に通した。
【0032】
TLCにより目的化合物を分画し、溶媒を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムにより、精製し、標記化合物3.91g(5.0mmol 、85%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)
0.84(t,3H),1.20(brs),1.50-1.70(brs,6H),2.20-2.40(brs,6H),3.38(s,9H),3.80-4.00(m,4H),4.20-4.40(m,4H),5.10(s,2H),5.20(m,1H),7.30(m,5H).
【0033】
(合成例3)
2-(9- ヒドロキシカルボニルノナノイル)リゾレシチンの合成
合成例2で得られた2-(9- ベンジルオキシカルボニルノナノイル)リゾレシチン3.91g(5.00mmol)をメタノール−水(225ml/25ml)に溶解させ、水酸化パラジウム3.0 gを加えた。水素置換後15時間1気圧、室温で撹拌した。セライトで濾過し減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムより精製して、標記化合物2.37(3.41mmol、61%)を得た。
【0034】
(合成例4)
2-(9- ヒドロキシカルボニルノナノイル)リゾレシチンの活性エステル体の合成
合成例3で得られたカルボン酸2.0 g(2.98mmol )をジクロロメタン50mlに溶解させて0℃に冷却し、N-ヒドロキシスクシンイミド343mg(2.98mmol) 、テトラゾール209mg(2.98mmol) をこの順で加えた。次にDDC769mg(3.73mmol) をジクロロメタン8mlに溶解した。この溶液をゆっくり滴下し、室温で15時間撹拌した。不溶物をセライトで濾過し、活性エステル体のジクロロメタン溶液を得た。
【0035】
(合成例5)
11- ベンジルオキシカルボニル-1- ウンデカン酸無水物の合成
合成例1と同様に11- ベンジルオキシカルボニル-1- ウンデカン酸より合成した。
【0036】
(合成例6)
2-(11-ベンジルオキシカルボニルウンデカノイル)リゾレシチンの合成
合成例2と同様に合成例5で得られた酸無水物より合成した。
【0037】
(合成例7)
2-(11-ヒドロキシカルボニルウンデカノイル)リゾレシチンの合成
合成例3と同様に合成例6で得られたベンジルエステル体より合成した。
【0038】
(合成例8)
2-(11-ヒドロキシカルボニルウンデカノイル)リゾレシチンの活性エステル体の合成
合成例4と同様に合成例7で得られたカルボン酸より合成した。
【0039】
(合成例9)
6-ベンジルオキシカルボニル-1- ヘキサン酸無水物の合成
合成例1と同様に6-ベンジルオキシカルボニル-1- ヘキサン酸より合成した。
【0040】
(合成例10)
2-(6- ベンジルオキシカルボニルヘキサノイル)リゾレシチンの合成
合成例2と同様に合成例9で得られた酸無水物より合成した。
【0041】
(合成例11)
2-(6- ヒドロキシカルボニルヘキサノイル)リゾレシチンの合成
合成例3と同様に合成例10で得られたベンジルエステル体より合成した。
【0042】
(合成例12)
2-(6- ヒドロキシカルボニルヘキサノイル)リゾレシチンの活性エステル体の合成
合成例4と同様に合成例11で得られたカルボン酸より合成した。
【0043】
(合成例13)
2-(4- ヒドロキシカルボニルブチロイル)リゾレシチンの合成
合成例3と同様に無水グルタル酸より合成した。精製はODS(オクタデシルシラン)を充填したカラムにより行った。
1H-NMR(CDCl3)
0.84(t,3H),1.20(brs),1.52-1.60(brs,2H),1.80-1.95(m,2H),2.20-2.40(m,6H),3.35(s,9H),3.780(m,4H),3.90-4.35(m,4H),5.20(m,1H).
【0044】
(合成例14)
2-(4- ヒドロキシカルボニルブチロイル)リゾレシチンの活性エステル体の合成
合成例4と同様に合成例13で得られたカルボン酸より合成した。
【0045】
[実施例]
上記合成例で製造した化合物を用いてレシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODを下記のA〜Cの方法を用いて製造した。
方法A:活性エステル溶液のジクロロメタンを留去し、50mMホウ酸緩衝液(pH8.5) に溶解した Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SOD溶液を添加し、0℃で1時間、更に室温で2時間反応させる。反応液を濾過し、セファクリルS−300 (ファルマシア社製)を担体としたゲル濾過カラムに付し、反応緩衝液と同一の緩衝液で溶出する。次いで、レシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SOD溶出分画を集め、限外濾過により濃縮する。
【0046】
方法B:活性エステル溶液のジクロロメタンを留去し、DMFに溶解させた。これを50mMホウ酸緩衝液(pH8.5) に添加し、不溶物を濾過後同一緩衝液に溶解して0℃に冷却した Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SOD溶液に滴下する。この時、 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SOD溶液にDMFを50%加えておく。0℃で15時間撹拌後、方法Aと同様に精製する。
【0047】
方法C:50mMホウ酸緩衝液(pH8.5) に溶解した Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SOD溶液に、20%のDMFを加え、0℃に冷却し、方法Bと同様に調製した活性エステルのDMF溶液をゆっくりと滴下する。0℃で15時間撹拌後、方法Aと同様に精製する。
【0048】
(実施例1)
Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SOD1分子あたりレシチン誘導体が平均2個結合したレシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODの合成
50mMホウ酸緩衝液(pH8.5) に溶解させた Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODと、 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODの全アミノ基に対して0.4 倍モル量の合成例4で合成した活性エステルとを方法Aに従って反応させた。反応溶液をゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィーにより精製した。タンパク質濃度をローリー法(Lowry ,O.H.ら、(1951) J. Biol. Chem., 193, 265)、 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODの残存アミノ基をTNBS法(トリニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、Goodwin, J.F. ら、 (1970) Clin. Chem.,16, 24) で行うことにより Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SOD1分子当たりのレシチン誘導体の結合数を求めたところ、平均 2.0個であった。
【0049】
(実施例2)
Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SOD1分子あたりレシチン誘導体が平均4個結合したレシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODの合成
50mMホウ酸緩衝液(pH8.5) に溶解させた Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODと、 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODの全アミノ基に対して0.8 倍モル量の合成例14で合成した活性エステルとを方法Bに従って反応させた。実施例1と同様に精製し、 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SOD1分子当たりのレシチン誘導体の結合数を求めたところ、平均 4.0個であった。
【0050】
(実施例3)
Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SOD1分子あたりレシチン誘導体が平均8個結合したレシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODの合成
50mMホウ酸緩衝液(pH8.5) に溶解させた Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODと、 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODの全アミノ基に対して2.0 倍モル量の合成例8で合成した活性エステルとを方法Cに従って反応させた。実施例1と同様に精製し、 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SOD1分子当たりのレシチン誘導体の結合数を求めたところ、平均 8.0個であった。
【0051】
(実施例4)
マウス虚血性足浮腫モデルにおけるレシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODの抑制効果
ICRマウス(雄性、6週令)を日本チャールス・リバー(株)より購入し、実験に用いた。ICRマウスに尾静脈より、被験薬剤としてレシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODまたは Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODを投与し、右足首を市販の輪ゴム(1x1mm、直径42mm)で5回巻き付けた。このまま20分虚血した後、輪ゴムをはさみで取り除き、再還流させた。30分後ゲージを用いて右足の厚さを測定した。この時コントロールとして左足の厚さを測定した。
【0052】
被験薬剤としては、レシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SOD(実施例2で合成、30000U/kg または60000U/kg を使用)、または Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SOD(60000U/kg を使用)を用いた。
統計学的処理としてMann-WhitneyのU検定を用いて有為差検定を行い、P<
0.05を有意差ありと判定した。この試験結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
この結果より、実施例2のレシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SOD 30000U/kg、60000U/kg 投与群はコントロールに比較してそれぞれ、P<0.05、P<0.01で差が見られ、効果があったと判定された。また、 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SOD 60000U/kg 投与群と比較しても、効果があることが判ったことから、実施例2のレシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODは、 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODよりフリーラジカルを有意に低減することから効果的であったと判定された。
【0055】
また、被験薬剤として銅および亜鉛が配位した111 位がセリンで示されるヒト由来のスーパーオキシドディスムターゼ(以下、 Cu-Zn型Ser-111-r-h-SOD という) のレシチン化体(実施例2と同様にして合成した)を用いた場合とを比較した結果を表2に示した。
その結果、レシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODは、レシチン化 Cu-Zn型Ser-111-h-SOD と比較しても、抑制効果が高いことが判った。
【0056】
【表2】
【0057】
以上のように、実施例2のレシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODは、マウス虚血足浮腫に対して抑制効果が見られた。また、レシチン化 Cu-Zn型Cys-111-ME-h-SODをマウスに60000U/kg 静脈投与した結果、いずれも死亡例は見られなかった。
【0058】
【発明の効果】
本発明のレシチン化スーパーオキシドディスムターゼは、スーパーオキシドディスムターゼと化学的橋かけを経てレシチンに結合させたものである。従来の修飾体と比較すると生体内分布、細胞親和性が著しく異なることが期待でき、薬理活性の強化が図られたという効果を有する。
Claims (1)
- 下記式[1]で表されるレシチン化スーパーオキシドディスムターゼ。
A−[C(O)−(CH2)nC(O)−B]m ・・・ [1]
ただし、
A:銅及び/又は亜鉛が配位した、111位のシステインのメルカプト基に2−ヒドロキシエチルチオ基が導入されたヒト型スーパーオキシドディスムターゼの残基、
B:グリセロールの2位に水酸基を有するリゾレシチンの、その2位の水酸基の水素原子を除いた残基、
m:1〜16の整数、
n:2〜10の整数。
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