JP3857332B2 - 転写材とその廃棄前処理方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、転写後に基体シートを廃棄しても公害問題を起こすことがない転写材とその廃棄前処理方法に関する。とくに、化粧品容器、電気製品、生活用品などの加飾に利用できる転写材として好適なものである。また、記録媒体への磁気層形成のための磁気転写材や熱溶融タイプの感熱転写材など種々の転写材に適応できる。
【0002】
【従来の技術】
物品の表面を装飾する方法として、転写法がある。転写法とは、基体シート上に、剥離層、図柄層、接着層などからなる転写層を形成した転写材を用い、加熱加圧して転写層を被転写体に密着させた後、基体シートを剥離して、被転写体面に転写層のみを転移して装飾を行う方法である。また、被転写体が樹脂成形品である場合に、転写法をより合理的に行う方法として、成形同時転写法がある。成形同時転写法とは、転写材を成形金型内に挟み込み、金型内に樹脂を射出充満させ、冷却して樹脂成形品を得るのと同時に成形品表面に転写材を接着させた後、基体シートを剥離して、被転写体面に転写層を転移して装飾を行う方法である。
【0003】
従来、転写材の基体シートとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロンなどのプラスチックフィルム、または、これらのプラスチックフィルムを積層したものを使用していた。
【0004】
基体シートは転写層を形成する印刷加工時と、転写加工時または成形同時転写加工時に有用なものであるが、転写層が成形品に転移した後は、基体シートは成形品から剥がしとられ、不要のものとして廃棄されていた。基体シートを廃棄する方法としては、燃やすか、土中に埋めるか、海中に投棄するなどの方法が一般的である。しかし、基体シートであるプラスチックフィルムを燃やすと、燃焼熱を発するものが多く、大気の温暖化を促進したり、大気を汚染したりする公害問題が生じる。また土中に埋めたり、海中に投棄したりする場合も、プラスチックフィルムは分解せず、堆積していくため、やはり公害問題が生じる。
【0005】
そこで、転写材の基体シートを分解性プラスチックで構成することが考えられる。分解性プラスチックとしては、微生物により分解する生分解プラスチックと、紫外線などの光により分解する光分解性プラスチックとがある。いずれの分解性プラスチックも分解されて低分子化合物となり、最終的には炭酸ガスと水になるため、公害問題を生じない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、基体シートを分解性プラスチックとし、転写層をすべて被転写体に転写したとしても、転写材の位置検知用パターン層は被転写体に転写されず基体シート上に残り、位置検知用パターン層が非分解性プラスチックであるので、基体シートを廃棄すると公害問題を引き起こすことに変わりはない。
【0007】
したがって、この発明は、上記のような問題を解決することにあり、転写後に基体シートを廃棄しても公害問題を起こすことがない転写材とその廃棄前処理方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、以上の目的を達成するために、転写材を、生分解性プラスチックおよび/または光分解性プラスチックからなる基体シート上に、水溶性バインダーを主成分とする位置検知用パターン層と転写層とが重複しないようにそれぞれ部分的に設けられ、剥離層が転写層の一構成層として少なくとも含むものであり、剥離層が転写層全体を剥離可能な領域に形成され、転写後に基体シート上に位置検知用パターン層のみが残存し位置検知用パターン層が水洗除去可能であるように構成した。また、生分解性プラスチックおよび/または光分解性プラスチックからなる基体シート上に、生分解性プラスチックおよび/または光分解性プラスチックを主成分とする位置検知用パターン層と転写層とが重複しないようにそれぞれ部分的に設けられ、剥離層が転写層の一構成層として少なくとも含むものであり、剥離層が転写層全体を剥離可能な領域に形成され、転写後に基体シート上に位置検知用パターン層のみが残存するように構成した。
【0009】
また、転写材の廃棄前処理方法を、請求項1記載の転写材の転写層を被転写体面に転写し基体シートを剥離した後、基体シート上に残存する位置検知用パターン層を水洗して除去することにより基体シートを廃棄可能とするように構成した。また、請求項2記載の転写材の転写層を被転写体面に転写し基体シートを剥離することにより基体シートを廃棄可能とするように構成した。
【0010】
図面を参照しながらこの発明をさらに詳しく説明する。
【0011】
図1は、この発明の転写材の一実施例を示す平面図である。図2は、図1の発明の転写材のAA断面図である。図3は、この発明の転写材を用いて成形同時転写を行う一実施例を示す断面図である。図4は、この発明の転写材を用いて得た被転写体の一実施例を示す斜視図である。図中、1は転写材、2は基体シート、3は位置検知用パターン層、4は剥離層、5は図柄層、6は接着層、7は転写層、8は金型、9は被転写体、10は成形材料、11は射出口をそれぞれ示す。
【0012】
この発明の転写材1は、分解性プラスチックからなる基体シート2上に、水溶性バインダーまたは分解性プラスチックを主成分とする位置検知用パターン層3を転写層7と重複しないように設けたものである(図1〜2参照)。
【0013】
基体シート2の材質としては、分解性プラスチックを用いる。分解性プラスチックとしては、微生物により分解する生分解プラスチックと、紫外線などの光により分解する光分解性プラスチックとがある。いずれも分解されて低分子化合物となり最終的には炭酸ガスと水になると考えられている。
【0014】
生分解性プラスチックはその全部または一部が、土中または水中のバクテリア、菌類、藻類などの微生物の働きで、二酸化炭素、水、メタンなどの低分子化合物に分解される高分子物または配合物を含むものである。生分解性プラスチックとしては、次のようなものがある。
(1)化学合成脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリエステルオレフィン系樹脂、ポリエステルアミド系樹脂、ポリエステルエーテル系樹脂など)
(2)天然高分子ポリビニルアルコール系樹脂(澱粉変性ポリビニルアルコール共重合体系樹脂、エチレンポリビニルアルコール共重合体系樹脂など)
(3)天然高分子澱粉ポリカプロラクトン系樹脂
(4)天然高分子セルロース系樹脂
(5)化学合成ポリ乳酸系樹脂
(6)微生物生産ポリエステル系樹脂(ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂など)
【0015】
光分解性プラスチックは、太陽光線中の紫外線などの光で高分子鎖が切れて低分子化合物に分解されるポリマーである。光分解性プラスチックとしては、次のようなものがある。
(1)一酸化炭素とポリエチレンの共重合体系樹脂
(2)二酸化炭素とポリエチレンの共重合体系樹脂
【0016】
また、上記した各材料どうしのポリマーアロイや、ポリエチレンに澱粉や植物性油などの生分解誘引剤を混ぜて生分解するようにした分解性プラスチックを用いてもよい。分解性プラスチックを基体シート2として用いるためにフィルム化する方法としては、インフレーションフィルム成形法、押出成形法などによる方法が一般的である。また、引っ張り強度や寸法安定性を高めるために、2軸延伸を行うとよい。
【0017】
剥離層4は、基体シート2上に部分的に形成する。剥離層4は、転写後または成形同時転写後に基体シート2を剥離した際に、基体シート2から剥離して被転写体9の最外面となる層である。剥離層4の材質としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などのほか、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂などのコポリマーを用いるとよい。剥離層4に硬度が必要な場合には、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを選定して用いるとよい。剥離層4は、着色したものでも、未着色のものでもよい。剥離層4の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0018】
位置検知用パターン層3は、転写層7を被転写体9の正確な位置に形成するためのものであり、剥離層4などからなる転写層7と重複しない部分に設ける。位置検知用パターン層3は、たとえば光電管で読み取ることにより、転写材1を所定のピッチで送ることができる。位置検知用パターン層3は、水溶性バインダーを守勢部として構成する。転写後に、基体シート2から位置検知用パターン層3を除去するには、コスト面や環境衛生的を考慮すれば、有機溶剤で除去するよりも水で除去する方が優れているからである。水溶性バインダーとしては、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂などがある。位置検知用パターン層3の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法などの汎用印刷方法や、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、インクジェット法などがある。
【0019】
また、位置検知用パターン層3は、分解性プラスチックを主成分として形成してもよい。分解性プラスチックで位置検知用パターン層3を形成するには、分解性プラスチックを各印刷法または各コート法に適したインキにする必要がある。分解性プラスチックは常温では固体であり、インキ化するには細かく粉砕し適当な溶媒に溶かすことが必要である。分解性プラスチックは一般の有機溶媒には溶解しにくいので、少量のアンモニアなどのアルカリ性水溶化剤や、クロロフェノール、ヘキサフロロイソプロパノールなどのハロゲン化炭化水素で樹脂をいったん溶解した後、これと混合できる溶媒を添加するのが好ましい。分散剤としては、溶媒が油性の場合は、脂肪酸エステル、アミン脂肪酸などが、溶媒が水性の場合は、スチレンマレイン酸、ポリアクリル酸誘導体などが好ましい。顔料としては、インジゴ、アリザリン、カーサミン、アントシアニン、フラボノイド、シコニンなどの植物色素やアゾ、キサンテン、トリフェニルメタンなどの食用色素、黄土、緑土などの天然無機顔料のほか、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミニウムレーキ、マダーレーキ、コチニールレーキなどが好ましい。また、位置検知用パターン層3の耐磨擦性向上のためにインキ中にワックスなどを含有させてもよい。ワックスとしては、脂肪酸エステル、パルミチン酸グリセリド、パルミチン酸エステル、ステイン、パラフィンなどの天然ワックス系が好ましい。位置検知用パターン層3の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法などの汎用印刷方法や、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、インクジェット法などがある。
【0020】
図柄層5は、剥離層4の上に、通常は印刷層として形成する。印刷層の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、熱可塑ウレタン系樹脂、メタアクリル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ポリエチレン系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。顔料としては、インジゴ、アリザリン、カーサミン、アントシアニン、フラボノイド、シコニンなどの植物色素やアゾ、キサンテン、トリフェニルメタンなどの食用色素、黄土、緑土などの天然無機顔料の他、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミニウムレーキ、マダーレーキ、コチニールレーキなどが好ましい。印刷層の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法などの通常の印刷法などを用いるとよい。特に、多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印刷法やグラビア印刷法が適している。また、単色の場合には、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法を採用することもできる。印刷層は、表現したい図柄に応じて、全面的に設ける場合や部分的に設ける場合もある。
【0021】
また、図柄層5は、金属薄膜層からなるもの、あるいは印刷層と金属薄膜層との組み合わせからなるものでもよい。金属薄膜層は、図柄層5として金属光沢を表現するためのものであり、真空蒸着法、スパッターリング法、イオンプレーティング法、鍍金法などで形成する。表現したい金属光沢色に応じて、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛などの金属、これらの合金または化合物を使用する。部分的な金属薄膜層を形成する場合の一例としては、金属薄膜層を必要としない部分に溶剤可溶性樹脂層を形成した後、その上に全面的に金属薄膜を形成し、溶剤洗浄を行って溶剤可溶性樹脂層と共に不要な金属薄膜を除去する方法がある。この場合によく用いる溶剤は、水または水溶液である。また、別の一例としては、全面的に金属薄膜を形成し、次に金属薄膜を残しておきたい部分にレジスト層を形成し、酸またはアルカリでエッチングを行い、レジスト層を除去する方法がある。なお、金属薄膜層を設ける際に、他の転写層7と金属薄膜層との密着性を向上させるために、前アンカー層や後アンカー層を設けてもよい。前アンカー層および後アンカー層の材質としては、2液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系共重合体樹脂樹脂などを使用するとよい。前アンカー層および後アンカー層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0022】
接着層6は、被転写体9面に上記の各層を接着するものであり、図柄層5上に形成する。接着層6としては、被転写体9の素材に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。たとえば、被転写体9の材質がアクリル系樹脂の場合はアクリル系樹脂を用いるとよい。また、被転写体9の材質がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用すればよい。さらに、被転写体9の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂が使用可能である。また、塩化ビニル酢酸ビニル系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂などを使用してもよい。接着層6の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0023】
転写層7の構成は、上記した態様に限定されるものではなく、たとえば、図柄層5の材質として被転写体9との接着層6性に優れたものを使用する場合には、接着層6を省略することができる。また、転写層7として磁性体を含有する磁気層を使用すれば、記録媒体へ磁気層を形成する磁気転写材1を得ることができる。また、転写層7として加熱のみで転移するものを用いれば、熱溶融タイプの感熱転写材1を得ることができる。
【0024】
被転写体9としては、樹脂成形品、ゴム製品、金属製品、木工品、ガラス製品、陶磁器製品もしくは各種材質からなる複合製品などを挙げることができる。被転写体9は、透明、半透明、不透明のいずれでもよい。また、被転写体9は、着色されていても、着色されていなくてもよい。樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂などの汎用樹脂を挙げることができる。また、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂やポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。さらに、ガラス繊維や無機フィラーなどの補強材を添加した複合樹脂も使用できる。
【0025】
前記した層構成の転写材1を用い、転写法を利用して被転写体9面に装飾を行う方法について説明する(図3参照)。まず、被転写体9面に、転写材1の接着層6側を密着させる。転写材1の位置合わせは、位置決め機構を有する送り装置を使用して、転写材1の位置検知用パターン層3によって転写材1の図柄層5と被転写体9との見当が一致するようにするとよい。次に、シリコンラバーなどの耐熱ゴム状弾性体を備えたロール転写機、アップダウン転写機などの転写機を用い、温度80〜260℃程度、圧力50〜200kg/m2程度の条件に設定した耐熱ゴム状弾性体を介して転写材1の基体シート2側から熱と圧力とを加える。こうすることにより、接着層6が被転写体9表面に接着する。最後に、冷却後に基体シート2を剥がすと、基体シート2と剥離層4との境界面で剥離が起こり、転写が完了する。
【0026】
次に、前記した転写材1を用い、射出成形による成形同時転写法を利用して被転写体9である樹脂成形品の面に装飾を行う方法について説明する。まず、可動型と固定型とからなる成形用金型8内に転写材1を送り込む。その際、枚葉の転写材1を1枚づつ送り込んでもよいし、長尺の転写材1の必要部分を間欠的に送り込んでもよい。転写材1の位置合わせは、位置決め機構を有する送り装置を使用して、転写材1の位置検知用パターン層3によって転写材1の図柄層5と成形用金型8との見当が一致するようにするとよい。また、転写材1を間欠的に送り込む際に、転写材1の位置をセンサーで検出した後に転写材1を可動型と固定型とで固定するようにすれば、常に同じ位置で転写材1を固定することができ、図柄層5の位置ずれが生じない。成形用金型8を閉じた後、固定型に設けたゲートより溶融樹脂を金型8内に射出充満させ、被転写体9を形成するのと同時にその面に転写材1を接着させる。成形材料10としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチルなどの汎用成形樹脂を用いる。また、生分解性プラスチックや光分解性プラスチックなどの分解性プラスチックであってもよい。被転写体9である樹脂成形品を冷却した後、成形用金型8を開いて樹脂成形品を取り出す。最後に、基体シート2を剥がすことにより、転写が完了する(図4参照)。
【0027】
【作用】
この発明の転写材は、分解性プラスチックからなる基体シート上に、水溶性バインダーまたは分解性プラスチックを主成分とする位置検知用パターン層を転写層と重複しないように設けたので、次の作用を有する。
【0028】
位置検知用パターン層が水溶性バインダーを主成分とする場合、転写後に基体シートを水洗すると、位置検知用パターン層は水に溶けて除去される。水洗後の基体シートは、土中に埋めるなどすると分解する。また、位置検知用パターン層が分解性プラスチックを主成分とする場合、転写後に基体シートを土中に埋めるなどすると、位置検知用パターン層は基体シートとともに分解する。
【0029】
【実施例】
実施例1
分解性プラスチックとして澱粉変性ポリビニルアルコール共重合体樹脂を用い、下記の条件でフィルム成形を行って基体シートに用いる厚さ30μmのプラスチックフィルムを得た。
【0030】
フイルム成形条件
LDPE用インフレーション製膜加工
押出機 L/D比=20〜30
スクリュー 圧縮比2.0〜3.0フルフライトタイプ
ダイス スパイラル丸ダイギャップ0.5〜0.8mm
押出温度 130〜150℃
スクリュー回転数 60rpm以上
【0031】
次に、剥離層として塩素化ポリプロピレン系樹脂インキを用い、図柄層として塩素化ポリプロピレン系樹脂インキ(金赤色)を用い、接着層としてポリエステル系樹脂インキを用い、位置検知用パターン層として下記のインキ組成物を用い転写材を得た。
【0032】
位置検知用パターン層用インキ組成物
水溶性バインダー ヒドロキシプロピルセルロース 40重量%
顔料 重質炭酸カルシウム 28重量%
溶剤 イソプロピルアルコール/トルエン=1/3 30重量%
ワックス パルミチン酸グリセリド 2重量%
【0033】
このようにして得た転写材を用いて転写加工を行った後、基体シートを土中に廃棄したところ、6ヶ月後にはプラスチック化合物は検出されなかった。
【0034】
実施例2
実施例1の位置検知用パターン層の水溶性バインダーインキ組成物に代えて、下記の生分解性プラスチックインキ組成物を用い、他は実施例1と同様にして転写材を得た。
【0035】
生分解性プラスチックインキ組成物
バインダー ポリ乳酸 28重量%
顔料 重質炭酸カルシウム 28重量%
溶媒 イソプロピルアルコール/水=1/3 40重量%
水溶化剤 アンモニア 2重量%
ワックス パルミチン酸グリセリド 2重量%
【0036】
このようにして得た転写材を用いて転写加工を行った後、基体シートを土中に廃棄したところ、8ヶ月後にはプラスチック化合物は検出されなかった。
【0037】
【発明の効果】
この発明は、以上のとおりの構成、作用を有するので、次のような優れた効果を有する。
【0038】
この発明の転写材とその廃棄前処理方法は、位置検知用パターン層が容易に除去でき、または位置検知用パターン層が分解性を有するので、転写後の基体シートを土中などに廃棄しても公害問題を起こさない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の転写材の一実施例を示す平面図である。
【図2】図1の発明の転写材のAA断面図である。
【図3】この発明の転写材を用いて成形同時転写を行う一実施例を示す断面図である。
【図4】この発明の転写材を用いて得た被転写体の一実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 転写材
2 基体シート
3 位置検知用パターン層
4 剥離層
5 図柄層
6 接着層
7 転写層
8 金型
9 被転写体
10 成形材料
11 射出口
Claims (4)
- 生分解性プラスチックおよび/または光分解性プラスチックからなる基体シート上に、水溶性バインダーを主成分とする位置検知用パターン層と転写層とが重複しないようにそれぞれ部分的に設けられ、剥離層が転写層の一構成層として少なくとも含むものであり、剥離層が転写層全体を剥離可能な領域に形成され、転写後に基体シート上に位置検知用パターン層のみが残存し位置検知用パターン層が水洗除去可能であることを特徴とする転写材。
- 生分解性プラスチックおよび/または光分解性プラスチックからなる基体シート上に、生分解性プラスチックおよび/または光分解性プラスチックを主成分とする位置検知用パターン層と転写層とが重複しないようにそれぞれ部分的に設けられ、剥離層が転写層の一構成層として少なくとも含むものであり、剥離層が転写層全体を剥離可能な領域に形成され、転写後に基体シート上に位置検知用パターン層のみが残存するものであることを特徴とする転写材。
- 請求項1記載の転写材の転写層を被転写体面に転写し基体シートを剥離した後、基体シート上に残存する位置検知用パターン層を水洗して除去することにより基体シートを廃棄可能とすることを特徴とする転写材の廃棄前処理方法。
- 請求項2記載の転写材の転写層を被転写体面に転写し基体シートを剥離することにより基体シートを廃棄可能とすることを特徴とする転写材の廃棄前処理方法。
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