JP3856609B2 - 光導波路素子の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、光フィルタ等の光導波路素子の製造方法に関し、特に、光ファイバー等の光導波路中に形成されたブラッググレーティングの特性を調整する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
米国特許第4,807,950号公報及び特開平7−140311号公報には、フェーズマスクを用いたブラッググレーティングの形成方法が開示されている。これらの公報に開示された方法によれば、紫外線に対してフォトリフラクティブ効果(光誘起屈折率変化)を有する光ファイバー上にフェーズマスクを置き、このフェーズマスクを介して光ファイバーに紫外光を照射する。このとき、フェーズマスクに入射した紫外光はフェーズマスクにより回折され、互いに干渉してフェーズマスクピッチ2Λの半分のピッチΛで干渉が発生する。このため、光ファイバーのコアには、フォトリフラクティブ効果により、ピッチΛごとに屈折率変化が生じ、その結果、光ファイバーのコアにブラッググレーティングが形成される。ブラッググレーティングは、ブラッグ波長λの入力光を反射する。ここで、λ=2neffΛであり、neffはブラッググレーティング形成領域の実効屈折率である。
【0003】
ところで、ブラッググレーティングを適用した分波又は合波用の光波長フィルタには、ほぼ100%の反射率が要求される。これに対し、例えば、光アンプの利得均一化フィルタにブラッググレーティングを応用する場合は、光アンプの利得特性の逆の反射スペクトル特性を有するフィルタが要求される。また、ブラッググレーティングを応用した光フィルタを、半導体レーザーの波長選択や波長安定化に用いる場合は、半導体レーザーの出力効率を極力損わない反射率の設定が必要になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、光誘起屈折率変化Δnの照射紫外線強度(即ち、単位面積当たりに照射される紫外光の積算エネルギーE(J/cm))依存性は、図13に示されるように、対数関数的な特性を有している。図13からわかるように、光誘起屈折率変化Δnは、照射紫外線の積算エネルギーEが小さい場合には顕著に現れ(図13の曲線の傾斜が急であり)、照射紫外線の積算エネルギーEが大きい場合には顕著ではない(図13の曲線の傾斜が緩やかである)。従来は、低反射率ブラッググレーティングを形成する場合に、照射紫外線の積算エネルギーEが小さい領域を利用していたので、僅かな製造条件の変動(即ち、照射紫外線の積算エネルギーEの変動)が光誘起屈折率変化Δn(その結果、反射率)に大きく反映するため、高反射率ブラッググレーティングを形成する場合(照射紫外線の積算エネルギーEが大きい場合)に比べて、十分に高い反射率精度(製造再現性)を得ることが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、上記したような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ブラッググレーティングの反射特性を正確に調整することができる光導波路素子の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光導波路素子の製造方法は、光誘起屈折率変化を生じる光導波路にフェーズマスクを介して紫外光を照射してブラッググレーティングを形成する工程と、上記光導波路にフェーズマスクを介さずに紫外光を照射してブラッググレーティングの特性を調整するトリミング工程とを有し、上記ブラッググレーティング形成工程において、光導波路に照射される紫外光の単位面積当たりの積算エネルギーがブラッググレーティング形成領域の長手方向の両端部において端部に近づくほど徐々に低下するようにアポタイズがなされ、上記トリミング工程において、光導波路に照射される紫外光の単位面積当たりの積算エネルギーの分布がブラッググレーティング形成領域の長手方向の両端部において端部に近づくほど徐々に低下する台形型のプロファイルを示すことを特徴としている。
【0007】
また、上記ブラッググレーティング形成工程を、光導波路にフェーズマスクを介して紫外光を照射してブラッググレーティングを形成する工程とし、上記トリミング工程を、光導波路にフェーズマスクを介さずに紫外光を照射して特性を調整する工程としてもよい。
【0008】
また、上記トリミング工程を、上記ブラッググレーティング形成工程より先に実施しても、後に実施してもよい。
【0009】
また、上記紫外光がレーザー光であることが望ましい。
【0010】
また、上記ブラッググレーティングがチャープドグレーティング又はブレーズドチャープドグレーティングであってもよい。
【0011
【発明の実施の形態】
第1の参考例
第1の参考例は、ユニフォームブラッググレーティングの反射率と反射中心波長の調整に関する。
【0012
図1は、第1の参考例に係る光導波路素子の製造方法の工程説明図であり、同図(A)は、ブラッググレーティング形成工程を示し、同図(B)は、ブラッググレーティングの特性を調整するトリミング工程を示す。
【0013
図1に示されるように、第1の参考例に係る製造方法は、光誘起屈折率変化を生じる光導波路としての光ファイバー1にフェーズマスク2を介して紫外線レーザー光3を照射するブラッググレーティング形成工程(同図(A))と、光ファイバー1にフェーズマスク2を介さずに紫外線レーザー光4を照射するトリミング工程(同図(B))とを有する。但し、ブラッググレーティングの形成を、フェーズマスク法以外の方法(例えば、2光束干渉法)によって実行してもよい。
【0014
光ファイバー1としては、ゲルマニウムがドープされた石英系導波路からなるコア5と、このコア5の外側を囲うクラッド6とから構成された感光性光ファイバー(例えば、ファイバーコア(Fibercore)社製の製品番号PS1500)を用いる。また、第1の参考例におけるフェーズマスク2のラインアンドスペースのピッチは、一定であり、2Λである。また、紫外線レーザー光3としては、例えば、アルゴンSHG(Second Harmonic Generation)レーザーから照射される波長240nm付近の紫外コヒーレント光を用いる。図1(A)に示されるように、光ファイバー1にフェーズマスク2を介して紫外線レーザー光3を照射すると、コア5には、コア軸方向(即ち、光ファイバー長手方向又はブラッググレーティング形成領域の長手方向)に屈折率変化部分7と屈折率が変化しない部分8が交互に、フェーズマスク2のピッチ2Λの半分のピッチΛで形成され、その結果、コア5に周期的な屈折率分布が生じた領域(ブラッググレーティング)が形成される。
【0015
次のトリミング工程においては、図1(B)に示されるように、光ファイバー1にフェーズマスク2を介さずに紫外線レーザー光4を照射する。紫外線レーザー光4としては、紫外線レーザー光3と同じものを用いてもよい。紫外線レーザー光4の照射に際しては、例えば、光ファイバー3を支持するテーブル(図示せず)又は紫外線レーザー光4をコア軸方向に一定速度で移動させる。トリミング工程は、1回でもよいが、複数回のトリミング工程によって光ファイバーの特性を要求される値に到達させてもよい。尚、図1においては、トリミング工程をブラッググレーティング形成工程より後に実施しているが、トリミング工程をブラッググレーティング形成工程より先に実施してもよい。
【0016
図2は、第1の参考例に係る光導波路素子の製造方法を説明するための図であり、同図(A)は、ブラッググレーティング形成工程後のコア5の屈折率分布(実線)と有効屈折率neff(破線)を示し、同図(B)は、トリミング工程後のコア5の屈折率分布(実線)と有効屈折率neff′(破線)を示し、同図(C)は、単位面積当たりの照射紫外線エネルギーΔE(J/cm)に対する光誘起屈折率変化Δnが照射紫外線の積算エネルギーE(J/cm)によって変化することを示す説明図である。
【0017
図2(A)に実線で示されるように、ブラッググレーティング形成工程後のコア5の屈折率分布は、光誘起屈折率差がΔnで屈折率変化の周期(ピッチ)がΛであり、山の部分(図1における屈折率変化部分7に対応する部分)の最高値がΔnで谷の部分(図1における屈折率が変化しない部分8に対応する部分)の最低値がΔnになる。また、ncoreは、紫外線照射前のコア5の屈折率を示す。この場合、ブラッグ波長λは、λ=2neffΛとなる。
【0018
また、図2(B)に実線で示されるように、トリミング工程後のコア5の屈折率分布は、光誘起屈折率差がΔn′で周期がΛであり、山の部分の最高値がΔn′で谷の部分の最低値がΔn′になる。図2(C)に示されるように、トリミング工程においては、コア5に均一に(単位面積に照射された紫外線の照射エネルギーがΔEであるように)紫外線が照射された。この場合、コア5の実効屈折率はneffからneff′に増加し、ブラッグ波長λは、2neffΛから2neff′Λに増加する。図2(C)に示されるように、照射紫外線の積算エネルギーEの低い部分では、照射エネルギーΔEの紫外線照射により、屈折率の最低値(図1における屈折率が変化しない部分8の屈折率)がΔnからΔn′に上昇し、積算エネルギーEの高い部分では、照射エネルギーΔEの紫外線照射により、屈折率の最低値(図1における屈折率変化部分7の屈折率)がΔnからΔn′に上昇する。従って、積算エネルギーEの低い部分では、照射エネルギーΔEの紫外線照射により光誘起屈折率の谷の部分の最低値がΔnbottom(=Δn′−Δn)と大きく変化するが、積算エネルギーの高い部分では、照射エネルギーΔEの紫外線照射により光誘起屈折率の山の部分の最高値はΔntop(=Δn′−Δn)と僅かに変化する。この結果、照射エネルギーΔEの紫外線照射により、ブラッググレーティングを形成する光誘起屈折率差Δn=Δn−Δnが、図2(B)に示されるように、光誘起屈折率差Δn′=Δn′−Δn′に変化する。光誘起屈折率の紫外光強度依存性から明らかなように、常にΔnbottom>Δntopであるから、ブラッググレーティングを形成する光誘起屈折率差は小さくなり(即ち、Δn>Δn′)、ブラッググレーティングの反射率は低下する。このような光誘起屈折率の変化に伴い、このグレーティング形成領域の実効屈折率neffがneff′変化し、ブラッグ波長λも変化する。この現象を利用することで、ブラッググレーティング形成後に、反射スペクトル(特に、反射率と反射中心波長)を調整(トリミング)することができる。
【0019
図3は、第1の参考例のトリミング工程を狭帯域(FWHM(半値幅):0.2nm程度)のファイバーブラッググレーティング(FBG)に複数回実行した場合の反射スペクトルの変化を示す図である。図3に示されるように、トリミング工程を繰り返すことにより、反射率が低下し、反射中心波長が長波長側にシフトし、反射スペクトルは図中の矢印方向に変化する。図4は、第1の参考例のトリミング工程を3種類(それぞれを記号○、●、△で区別する。)の狭帯域FBGのそれぞれに複数回実行した場合の反射スペクトルの変化を示す図である。図4に示されるように、複数回のトリミング工程によりFBGの反射率は低下し、反射中心波長が長波長側にシフトする。図3及び図4からわかるように、第1の参考例に係る製造方法によれば、数10%に及ぶ反射率調整とブラッググレーティングのFWHMに相当する約0.2nmの反射波長の調整が可能になる。
【0020
また、第1の参考例のようなユニフォームブラッググレーティングにおける反射率や反射中心波長の調整(トリミング)は、半導体光アンプ素子等と先球レンズファイバーに形成したブラッググレーティングとを組み合わせて構成された外部共振器或いは半導体光アンプ素子等とPLC型光導波路に形成されたブラッググレーティングとを組み合わせて構成された外部共振器によってレーザー発振を得る光モジュール等に使用されるブラッググレーティングの反射率/波長のトリミング(調整)に有効である。
【0021
図5は、第1の参考例の変形例を説明するための図であり、図中の曲線は単位面積当たりに照射される照射紫外線の積算エネルギーE(J/cm)に対する光誘起屈折率変化Δnを示す。この変形例は、照射紫外線のエネルギーΔEを大きくしている点のみが、図1から図4までに示される製造方法と相違する。また、図6は、トリミング工程後のコア5の屈折率分布を示す。図6において、Xはコア軸方向を示し、Δnは、光誘起屈折率差を示す。図6において、11は、トリミング工程における屈折率変化分を示し、12は、グレーティング形成工程による屈折率変化を示す。この変形例によれば、照射される紫外線の単位面積当たりの照射エネルギーの変動に対する光誘起屈折率変化の大きい部分(図5の部分13)ではなく、照射エネルギーの変動に対する光誘起屈折率変化の小さい部分(図5の部分14)を利用しているので、ファイバーにブラッググレーティングを形成する際に照射される紫外線の単位面積当たりの照射エネルギーの変動に起因する特性劣化を軽減することができる。
【0022
第2の参考例
図7は、第2の参考例を説明するための図であり、トリミング工程後のコア5の屈折率分布を示す。この変形例は、照射エネルギーΔEを大きくしている点及び照射紫外線の単位面積当たりのエネルギーの分布がブラッググレーティング形成領域の長手方向の両端部の外側において徐々に低下している点が、上記図1から図4までに示される製造方法と相違する。図7において、15は、トリミング工程における屈折率変化分を示し、16は、グレーティング形成工程による屈折率変化を示す。この変形例によれば、ファイバーにブラッググレーティングを形成する際に照射される紫外光のエネルギー(ファイバーに照射される単位面積当たりの積算エネルギー)の変動に起因する特性劣化を軽減することができる。また、ブラッググレーティング境界部における伝搬光のロスを軽減することができる。
【0023
実施の形態
本実施の形態に係る光導波路素子の製造方法は、ブラッググレーティング形成工程においてサイドローブ抑圧比の改善のためにブラッググレーティング形成領域の両端部に屈折率変調(アポダイズ)させた部分を設けた場合に関する。
【0024
図8は、本実施の形態に係る光導波路素子の製造方法を説明するための図であり、同図(A)は、ブラッググレーティング形成工程後のコア5の屈折率分布(実線)と有効屈折率neff(破線)を示し、同図(B)は、トリミング工程後のコア5の屈折率分布(実線)と有効屈折率neff′(破線)を示す。
【0025
本実施の形態に係る製造方法は、光誘起屈折率変化を生じる光ファイバーにフェーズマスクを介して紫外線レーザー光を照射するブラッググレーティング形成工程(図1(A)に対応する工程)と、光ファイバーにフェーズマスクを介さずに紫外線レーザー光を照射するトリミング工程(図1(B)に対応する工程)とを有する。
【0026
本実施の形態におけるフェーズマスクのラインアンドスペースのピッチは、一定値2Λである。このフェーズマスクを介して光ファイバーに紫外線レーザー光を照射すると、コアには、コア軸方向に屈折率変化部分と屈折率が変化しない部分が交互に、フェーズマスクのピッチの半分のピッチΛで形成される。その結果、コアにブラッググレーティングを形成することができる。本実施の形態のブラッググレーティング形成工程においては、図8(A)に示されるように、ブラッググレーティング形成工程において照射される紫外線レーザー光の単位面積当たりの積算エネルギーがブラッググレーティング形成領域の長手方向の両端部において端部に近づくほど徐々に低下するようにアポダイズがなされている。
【0027
次のトリミング工程においては、図8(B)に示されるように、光導波路に照射される紫外光の単位面積当たりの積算エネルギーの分布がブラッググレーティング形成領域の長手方向の両端部において端部に近づくほど徐々に低下する台形型のプロファイルを示すように、トリミング工程における紫外線照射においても、図8(A)の場合と同様にアポダイズを行った。トリミング工程においては、光ファイバーにフェーズマスクを介さずに紫外線レーザー光を照射する。紫外線レーザー光の照射に際しては、例えば、光ファイバーを支持するテーブル又は紫外線レーザー光をコア軸方向に移動させる。レーザー光の照射エネルギーを一定に保ちながら、この移動速度を変化させることによって、単位面積当たりの照射紫外線エネルギーの分布をコア軸方向に調整することができる。こうすることによって、ブラッググレーティング形成領域の全域にトリミングを施すことができる。トリミング工程は、1回でもよいが、複数回のトリミング工程によって光ファイバーの特性を要求される値に到達させてもよい。尚、照射紫外線エネルギーの分布をコア軸方向に調整する方法としては、マスクを用いる方法もある。
【0028
以上説明したように、本実施の形態によれば、トリミング工程においても、屈折率変調(アポダイズ)を行って、グレーティング形成領域両端での屈折率の不連続点を解消したので、ファブリペロー干渉が抑制され、ブラッググレーティングとしてのサイドローブ抑圧比を改善することができる。
【0029
また、本実施の形態において、上記以外の点は、上記第1の参考例と同じである。
【0030
第3の参考例
第3の参考例は、広帯域(FWHM約1.0nm)のチャープドブラッググレーティングが形成された全域に反射率調整のための紫外光照射(トリミング)を行ったものである。
【0031
図9は、第3の参考例に係る光導波路素子の製造方法を説明するための図であり、同図(A)は、ブラッググレーティング形成工程後のコア5の屈折率分布(実線)と有効屈折率neff(破線)を示し、同図(B)は、トリミング工程後のコア5の屈折率分布(実線)と有効屈折率neff′(破線)を示し、同図(C)は、トリミング工程を繰り返すことにより反射スペクトルが変化することを示す。
【0032
第3の参考例に係る製造方法は、光誘起屈折率変化を生じる光ファイバーにフェーズマスクを介して紫外線レーザー光を照射するブラッググレーティング形成工程(図1(A)に対応する工程)と、光ファイバーにフェーズマスクを介さずに紫外線レーザー光を照射するトリミング工程(図1(B)に対応する工程)とを有する。
【0033
第3の参考例におけるフェーズマスクのラインアンドスペースのピッチは、一定ではなく、最大値2Λから最小値2Λまで徐々に増加又は減少している。このフェーズマスクを介して光ファイバーに紫外線レーザー光を照射すると、コアには、コア軸方向に屈折率変化部分と屈折率が変化しない部分が交互に、フェーズマスクのピッチの半分のピッチ(Λ〜Λ)で形成される。その結果、コアにチャープドブラッググレーティングを形成することができる。即ち、図9(A)に示すように、第3の参考例の広帯域のブラッググレーティングは光誘起屈折率変化のピッチを最大Λから最小Λまで連続的に変化させることで形成されており、反射波長帯域はλB1=2neffΛからλB2=2neffΛまでの連続波長である。
【0034
次のトリミング工程においては、光ファイバーにフェーズマスクを介さずに紫外線レーザー光を照射する。紫外線レーザー光の照射に際しては、例えば、光ファイバーを支持するテーブル又は紫外線レーザー光をコア軸方向に一定速度で移動させる。こうすることによって、ブラッググレーティング形成領域の全域にトリミングを施すことができる。トリミング工程は、1回でもよいが、複数回のトリミング工程によって光ファイバーの反射特性を要求される値に到達させてもよい。尚、トリミング領域を制限する方法としては、マスクを用いる方法もある。
【0035
以上説明したように、第3の参考例によれば、チャープドブラッググレーティングが形成された全域に、均等なエネルギーで、トリミング工程における紫外光照射を行うことにより、ブラッググレーティングを形成する光誘起屈折率差Δnを小さくしている(Δn′にしている)ので、照射する紫外光の積算エネルギーが大きいほど、ブラッググレーティングの反射率は反射波長帯域内で均等に低下する。従って、第1の参考例と同様に、反射率を精度良く設定することができる。この場合は、図9(C)に示されるように、反射波長変化は反射波長帯域幅に比べて十分小さいことから、現実的には反射率のみを調整することができる。また、上記実施の形態と同様に、反射率を調整するトリミングにアポダイズを施せばサイドローブ抑圧比を改善することができる。
【0036
また、第3の参考例において、上記以外の点は、上記第1及び第2の参考例又は上記実施の形態と同じである。
【0037
第4の参考例
第4の参考例は、チャープドブラッググレーティングが形成された一部分にのみ反射率調整のための紫外光照射(トリミング)を行ったものである。
【0038
図10は、第4の参考例に係る光導波路素子の製造方法を説明するための図であり、同図(A)は、ブラッググレーティング形成工程後のコア5の屈折率分布(実線)と有効屈折率neff(破線)を示し、同図(B)は、トリミング工程後のコア5の屈折率分布(実線)と有効屈折率neff′(破線)を示し、同図(C)は、トリミング工程による反射スペクトルの変化を示す。
【0039
第4の参考例に係る製造方法は、光誘起屈折率変化を生じる光ファイバーにフェーズマスクを介して紫外線レーザー光を照射するブラッググレーティング形成工程(図1(A)に対応する工程)と、光ファイバーにフェーズマスクを介さずに紫外線レーザー光を照射するトリミング工程(図1(B)に対応する工程)とを有する。
【0040
第4の参考例におけるフェーズマスクのラインアンドスペースのピッチは、一定ではなく、最大値2Λから最小値2Λまで徐々に増加又は減少している。このフェーズマスクを介して光ファイバーに紫外線レーザー光を照射すると、コアには、コア軸方向に屈折率変化部分と屈折率が変化しない部分が交互に、フェーズマスクのピッチの半分のピッチ(Λ〜Λ)で形成される。その結果、コアにチャープドブラッググレーティングを形成することができる。即ち、図10(A)に示すように、第4の参考例の広帯域のブラッググレーティングは光誘起屈折率変化のピッチを最大Λから最小Λまで連続的に変化させることで形成されており、反射波長帯域はλB1=2neffΛからλB2=2neffΛまでの連続波長である。
【0041
次のトリミング工程においては、光ファイバーにフェーズマスクを介さずに紫外線レーザー光を照射する。紫外線レーザー光の照射に際しては、例えば、光ファイバーを支持するテーブル又は紫外線レーザー光をコア軸方向に移動させる。この移動範囲を制限することによって、ブラッググレーティング形成領域の一部にトリミングを施すことができる。トリミング工程は、1回でもよいが、複数回のトリミング工程によって光ファイバーの反射特性を要求される値に到達させてもよい。尚、トリミング領域を制限する方法としては、マスクを用いる方法もある。
【0042
第4の参考例においては、チャープドグレーティングが形成された領域の一部に、照射紫外線エネルギーを一定にして紫外光照射を行っているので、照射紫外線エネルギーの分布は、図10(B)の実効屈折率neff′として示された破線と同様のプロファイルを示す。即ち、トリミング工程をチャープドブラッググレーティング形成領域の一部に施したことによって、図10(C)に実線で示されるように、階段状の反射スペクトルを得ることができる。
【0043
以上説明したように、第4の参考例によれば、図10(C)に示されるように、グレーティング形成領域内で階段状に変化した反射スペクトルを得ることができ、製造された素子に、希望する波長において反射率が急に変化する特性を持たせることができる。このような特性は、例えば、2値センサー等への応用に適している。
【0044
尚、第4の参考例におけるトリミング工程における照射紫外線エネルギーの分布のプロファイルに、上記実施の形態と同様に、反射率を調整するアポダイズを施せばサイドローブ抑圧比の改善に有効である。
【0045
また、第4の参考例において、上記以外の点は、上記第1及び第3の参考例及び上記実施の形態と同じである。
【0046
第5の参考例
第5の参考例は、チャープドブラッググレーディングが形成された全域に、反射率調整のための紫外光照射(トリミング)を、コア軸方向に照射紫外線エネルギーを連続的に変化させて行ったものである。
【0047
図11は、第5の参考例に係る光導波路素子の製造方法を説明するための図であり、同図(A)は、ブラッググレーティング形成工程後のコア5の屈折率分布(実線)と有効屈折率neff(破線)を示し、同図(B)は、トリミング工程後のコア5の屈折率分布(実線)と有効屈折率neff′(破線)を示し、同図(C)は、トリミング工程による反射スペクトルの変化を示す図である。
【0048
第5の参考例に係る製造方法は、光誘起屈折率変化を生じる光ファイバーにフェーズマスクを介して紫外線レーザー光を照射するブラッググレーティング形成工程(図1(A)に対応する工程)と、光ファイバーにフェーズマスクを介さずに紫外線レーザー光を照射するトリミング工程(図1(B)に対応する工程)とを有する。
【0049
図11(A)に示されるように、広帯域のブラッググレーティングはグレーディングのピッチを連続的に、例えば、ΛからΛまで変化させることによって形成されている。この場合の反射波長帯域はλB1=2neffΛからλB2=2neffΛまでの連続波長である。第5の参考例においては、チャープドグレーティングが形成された領域の全域に、照射紫外線エネルギーを徐々に変化させながら紫外光照射を行う。照射紫外線エネルギーの分布は、図11(B)の実効屈折率neff′として示された直線(破線)と同様のプロファイルを示す。トリミング工程を実行すると、図11(B)に示されるように、チャープドブラッググレーティングの光誘起屈折率差が小さくなる。トリミング工程によって、チャープドブラッググレーティングの波長域における反射率にはその反射波長帯域内で傾斜が発生する。
【0050
以上説明したように、第5の参考例の製造方法によれば、図11(C)に示されるように、グレーティング形成領域内で連続的に傾斜した反射スペクトルを得ることができ、波長の増加に応じて反射率が増加又は低下する特性を用いるアナログセンサー等への応用に適した特性を持たせることができる。
【0051
尚、第5の参考例におけるトリミング工程における照射紫外線エネルギーの分布のプロファイルに、上記実施の形態と同様に、反射率を調整するアポダイズを施せばサイドローブ抑圧比の改善に有効である。
【0052
また、第5の参考例において、上記以外の点は、上記第1から第4までの参考例及び上記実施の形態と同じである。
【0053
第6の参考例
第6の参考例は、ブレーズドチャープドブラッググレーティングが形成された全域に、反射率調整のための紫外光照射(トリミング)を連続的に任意のパターンでコア軸方向に照射紫外線エネルギーを変化させて行ったものである。
【0054
図12は、第6の参考例を説明するための図であり、同図(A)は、ブラッググレーティング形成工程後のコア軸方向の屈折率分布(実線)及び実効反射率(破線)を示し、同図(B)は、トリミング工程後のコア軸方向の屈折率分布(実線)及び実効反射率(破線)を示し、同図(C)は、トリミング工程による透過率の変化を示す図である。
【0055
第6の参考例に係る製造方法は、光誘起屈折率変化を生じる光ファイバーにフェーズマスクを介して紫外線レーザー光を照射するブラッググレーティング形成工程(図1(A)に対応する工程)と、光ファイバーにフェーズマスクを介さずに紫外線レーザー光を照射するトリミング工程(図1(B)に対応する工程)とを有する。
【0056
第6の参考例におけるフェーズマスクのラインアンドスペースのピッチは、一定ではなく、最大値2Λから最小値2Λまで徐々に増加又は減少している。このフェーズマスクを介して光ファイバーに紫外線レーザー光を照射すると、コアには、コア軸方向に屈折率変化部分と屈折率が変化しない部分が交互に、フェーズマスクのピッチの半分のピッチ(Λ〜Λ)で形成される。その結果、コアにブレーズドチャープドブラッググレーティングを形成することができる。即ち、図11(A)に示すように、第6の参考例の広帯域のブレーズドチャープドブラッググレーティングは光誘起屈折率変化のピッチを最大Λから最小Λまで連続的に変化させることで形成されており、透過波長帯域はλB1=2neffΛからλB2=2neffΛまでの連続波長である。
【0057
次のトリミング工程においては、光ファイバーにフェーズマスクを介さずに紫外線レーザー光を照射する。紫外線レーザー光の照射に際しては、例えば、光ファイバーを支持するテーブル又は紫外線レーザー光をコア軸方向に移動させる。この移動速度を変化させることによって、単位面積当たりの照射紫外線エネルギーの分布をコア軸方向に調整することができる。トリミング工程は、1回でもよいが、複数回のトリミング工程によって光ファイバーの反射特性を要求される値に到達させてもよい。尚、単位面積当たりの照射紫外線エネルギーの分布をコア軸方向に調整する方法としては、マスクを用いる方法もある。
【0058
第6の参考例においては、ブレーズドチャープドグレーティングが形成された領域の全域に、照射紫外線エネルギーの分布をあるパターンで変化させながら紫外光照射を行う。照射紫外線エネルギーの分布は、図12(B)の実効屈折率neff′として示された曲線(破線)と同様のプロファイルを示す。図12(B)において、実効屈折率neff′が低下している部分21は、照射紫外線エネルギーが低い部分に相当する。また、トリミング工程を実行すると、図12(B)に示されるように、ブレーズドチャープドブラッググレーティングの光誘起屈折率差が小さくなる(Δn′になる)。トリミング工程によって、ブレーズドチャープドブラッググレーティングの波長域における透過率には、その透過波長帯域内におけるある波長(図12(B)における部分21に対応する波長)に損失(図12(C)のトリミング後の透過スペクトルの部分22)が発生する。
【0059
以上説明したように、第6の参考例によれば、図12(C)に示されるように、波長により損失が連続的に変化する透過スペクトルを得ることができ、このようなブレーズドチャープドグレーティングは、特に、光増幅器の利得平坦化素子に有効である。
【0060
尚、第6の参考例のトリミング工程における照射紫外線エネルギーのコア軸方向の連続的な分布は、製造された素子の用途に応じて決定すればよい。
【0061
また、第6の参考例において、上記以外の点は、上記第1から第5までの参考例及び上記実施の形態と同じである。
【0062
また、第1から第6までの参考例及び上記実施の形態におけるトリミング方法は、第1から第6までの参考例及び上記実施の形態におけるいずれのブラッググレーティング形成領域にも適用できる。
【0063
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、ブラッググレーティング形成領域に紫外光照射を行うトリミング工程によって、ブラッググレーティングの特性を正確に調整することができるという効果がある。
【0064
また、トリミング工程において照射される紫外光の単位面積当たりの積算エネルギーの分布がブラッググレーティング形成領域の長手方向の全域にわたって均一である場合は、製造された光導波路素子の反射率と反射光の中心波長とを調整することができるという効果がある。
【0065
また、トリミング工程において照射される紫外光の単位面積当たりの積算エネルギーの分布がブラッググレーティング形成領域の長手方向の両端部において端部に近づくほど徐々に低下する台形型のプロファイルを示す場合は、製造された光導波路素子におけるファブリペロー干渉が抑制され、ブラッググレーティングとしてのサイドローブ抑圧比を改善できるという効果がある。
【0066
また、トリミング工程をブラッググレーティング形成領域の一部に実行する場合は、製造された光導波路素子に、希望する波長において反射率が急に変化するという特性を持たせることができるという効果がある。
【0067
また、トリミング工程において照射される紫外光の単位面積当たりの積算エネルギーの分布がブラッググレーティング形成領域の長手方向に沿って徐々に増加又は減少させた場合は、製造された光導波路素子に、波長の増加に応じて反射率が増加又は低下する特性を持たせることができるという効果がある。
【0068
また、トリミング工程において照射される紫外光の単位面積当たりの積算エネルギーの分布がブラッググレーティング形成領域の長手方向に沿って連続的に変化させた場合は、製造された光導波路素子に、所望の反射特性(又は透過率特性)をもたせることができ、特に、利得平坦化素子に適した特性を持たせることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の参考例に係る光導波路素子の製造方法の工程説明図であり、(A)はブラッググレーティング形成工程を示し、(B)はトリミング工程を示す。
【図2】 第1の参考例に係る光導波路素子の製造方法を説明するための図であり、(A)はブラッググレーティング形成工程後のコアの屈折率分布と有効屈折率を示し、(B)はトリミング工程後のコアの屈折率分布と有効屈折率を示し、(C)は単位面積当たりの照射紫外線エネルギーに対する光誘起屈折率変化量が照射紫外線の積算エネルギーによって変化することを示す説明図である。
【図3】 第1の参考例において、トリミング工程を狭帯域FBGに複数回実行した場合の反射スペクトルの変化を示す図である。
【図4】 第1の参考例のトリミング工程により、反射率が低下し、反射中心波長が長波長側にシフトする例を示す図である。
【図5】 第1の参考例の変形例を説明するための図である
【図6】 第1の参考例の変形例におけるトリミング工程後のコアの屈折率分布を示す図である。
【図7】 第2の参考例におけるトリミング工程後のコアの屈折率分布を示す図である。
【図8】 本発明の実施の形態に係る光導波路素子の製造方法を説明するための図であり、(A)はブラッググレーティング形成工程後のコアの屈折率分布と有効屈折率を示し、(B)はトリミング工程後のコアの屈折率分布と有効屈折率を示す。
【図9】 第3の参考例に係る光導波路素子の製造方法を説明するため図であり、(A)はブラッググレーティング形成工程後のコアの屈折率分布と有効屈折率を示し、(B)はトリミング工程後のコアの屈折率分布と有効屈折率を示し、(C)はトリミング工程を繰り返すことにより反射スペクトルが変化することを示す図である。
【図10】 第4の参考例に係る光導波路素子の製造方法を説明するための図であり、(A)はブラッググレーティング形成工程後のコアの屈折率分布と有効屈折率を示し、(B)はトリミング工程後のコアの屈折率分布と有効屈折率を示し、(C)はトリミング工程による反射スペクトルの変化を示す。
【図11】 第5の参考例に係る光導波路素子の製造方法を説明するための図であり、(A)はブラッググレーティング形成工程後のコアの屈折率分布と有効屈折率を示し、(B)はトリミング工程後のコア5の屈折率分布と有効屈折率を示し、(C)はトリミング工程による反射スペクトルの変化を示す。
【図12】 第6の参考例に係る光導波路素子の製造方法を説明するための図であり、(A)はブラッググレーティング形成工程後のコアの屈折率分布と有効屈折率を示し、(B)はトリミング工程後のコア5の屈折率分布と有効屈折率を示し、(C)はトリミング工程による透過率の変化を示す図である。
【図13】 光誘起屈折率変化の紫外線強度依存性を示す図である。
【符号の説明】
1 光ファイバー、 2 フェーズマスク、 3,4 紫外線レーザー光、 5 コア、 6 クラッド、 7 屈折率変化部分、 8 屈折率が変化しない部分、 Λ,Λ,Λ 屈折率変化ピッチ、 neff ブラッググレーティング形成工程後の実効屈折率、 neff′ トリミング工程後の実効屈折率、 Δn ブラッググレーティング形成工程後の光誘起屈折率差、 Δn′ トリミング工程後の光誘起屈折率差。

Claims (6)

  1. 光誘起屈折率変化を生じる光導波路にフェーズマスクを介して紫外光を照射してブラッググレーティングを形成する工程と、
    上記光導波路にフェーズマスクを介さずに紫外光を照射してブラッググレーティングの特性を調整するトリミング工程と
    を有し、
    上記ブラッググレーティング形成工程において、光導波路に照射される紫外光の単位面積当たりの積算エネルギーがブラッググレーティング形成領域の長手方向の両端部において端部に近づくほど徐々に低下するようにアポタイズがなされ
    上記トリミング工程において、光導波路に照射される紫外光の単位面積当たりの積算エネルギーの分布がブラッググレーティング形成領域の長手方向の両端部において端部に近づくほど徐々に低下する台形型のプロファイルを示す
    ことを特徴とする光導波路素子の製造方法。
  2. 上記トリミング工程を、上記ブラッググレーティング形成工程より先に実施することを特徴とする請求項1に記載の光導波路素子の製造方法。
  3. 上記トリミング工程を、上記ブラッググレーティング形成工程より後に実施することを特徴とする請求項1に記載の光導波路素子の製造方法。
  4. 上記紫外光がレーザー光であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の光導波路素子の製造方法。
  5. 上記ブラッググレーティングがチャープドグレーティングであることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の光導波路素子の製造方法。
  6. 上記ブラッググレーティングがブレーズドチャープドグレーティングであることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の光導波路素子の製造方法。
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