JP3856605B2 - 射出成形用の金型装置及び成形品の射出成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、射出成形用の金型装置及び成形品の射出成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばプリンターやファクシミリ、コピー機、その他各種の機器においては、多々、印字機構あるいは印刷機構が付属しており、印字機構あるいは印刷機構には、通常、紙送り機構が備えられている。紙送り機機は、通常、ゴムローラから構成されている。ゴムローラは、一般に、金属製又は樹脂製の軸部と、軸部の円周方向の周囲に設けられ、そして紙と接触するゴム部とから構成されている。ゴムローラは、金属又は樹脂から成る円柱状の部材を切削加工することによって製造した軸部を準備し、一方、筒状のゴム部を別途作製し、ゴム部を軸部に被せることによって作製される。このような製造方法では組立工程を必要とし、また、作製後のゴムローラのゴム部の表面を切削、研磨することによって、紙送り精度を高める必要がある。
【0003】
樹脂製の軸部を得る方法として、金型のキャビティ内に射出された溶融樹脂を冷却、固化して成形品を得る射出成形方法がある。また、所望の中空部を有する樹脂製の成形品を得る方法として、金型のキャビティ内に射出された溶融樹脂中に加圧流体を導入することによって、中空部を有する成形品を成形する射出成形方法が、近年、成形品にヒケや反りが発生し難いために、急速に普及している。このような従来の射出成形方法を実行する場合、射出成形用の金型装置及び加圧流体導入装置が必要とされる。
【0004】
本出願人は、特開平8―323818号公報(特願平7―200454号)にて、栓体を具備した金型によって、ジェッティングを防止し、優れた外観特性を有する中実の成形品及び中空部を有する成形品の射出成形方法を提案した。中空部を有する成形品の射出成形方法は、基本的には、金型に設けられたキャビティ内に射出された溶融樹脂中に加圧流体を導入して、外観性の向上(ヒケやそり等の改善)を達成するための射出成形方法であり、一般には、ガスアシスト射出成形方法と称されている方法である。
【0005】
また、本出願人は、特開平10―180790号公報(特願平8―356895号)にて、栓体を具備した金型によって、優れた外観特性を付与することができる、中空部を有する歯車付き樹脂製ローラの射出成形方法を提案した。
【0006】
特開平10―281139(特願平9―90679号)公報には、固化後に相対的に軟質となる軟質材をキャビティ内に射出し、次いで、固化後に相対的に硬質となる樹脂材を軟質材中に射出し、その後、樹脂材中にガスを注入することによって、樹脂材に軟質材の層を突き破らせると共に、樹脂材によってキャビティの壁面に軟質材を押付ける、紙送りローラの製造方法が開示されている。
【0007】
また、特開平11―20979号(特願平9―190715号)公報には、樹脂製中空構造の軸ロール構造部をガスアシスト射出成形法によって成形し、軸ロール構造部を金型にインサートし、その後、熱可塑性エラストマーを射出して筒状ゴム質部を形成する送りロールの製造方法が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特開平8―323818号公報あるいは特開平10―180790号公報には、キャビティ内に配設された栓体を備えた金型を用いて優れた外観特性を有する成形品の射出成形方法が開示されている。しかしながら、例えば、樹脂製の軸部と、軸部の円周方向外周に設けられたゴム層や軟質層といった、異なる材料が一体に成形された成形品あるいは樹脂製ローラの形成方法に関しては、これらの特許公開公報には何ら開示されていない。
【0009】
特開平10―281139号公報に開示された紙送りローラの製造方法においては、樹脂層の表面に高い位置精度や厚さ精度をもって軟質材を形成することが困難であるという問題がある。また、特開平11―20979号公報に開示された送りローラの製造方法においては、樹脂製中空構造の軸ロール構造部をガスアシスト射出成形法によって成形するが、高い表面精度を有する軸ロール構造部をガスアシスト射出成形法によって成形することは困難であるといった問題を有し、あるいは又、樹脂製中空構造の軸ロール構造部を金型にインサートし、その後、熱可塑性エラストマーを射出して筒状ゴム質部を形成する際、軸ロール構造部に熱変形が生じる虞がある。
【0010】
また、一般的に紙送りローラの軸部は肉厚であり、肉厚の軸部を成形するためのキャビティ部に溶融樹脂を射出した場合、ジェッティングが発生し易い。即ち、キャビティ内の溶融樹脂の流れに対して垂直な面におけるキャビティの断面積と樹脂導入部(ゲート部)の断面積との差が大きい場合、キャビティ内に溶融樹脂を射出したときジェッティングが発生し易い。そのため、軸部の表面に欠陥が生じ、軸部表面の研磨等の後処理が必要となる。
【0011】
ところで、金型のキャビティ内に射出された溶融樹脂内に加圧流体を導入する方法は、キャビティ内を溶融樹脂で完全に満たした後に加圧流体を導入する方法(フルショット法と呼ばれる)と、キャビティ内を溶融樹脂で完全には満たさない状態で加圧流体を導入する方法(ショートショット法と呼ばれる)とに分類することができる。特に、ショートショット法の場合、螺旋状(コイル状)のジェッティングが生じると、キャビティ内に射出された溶融樹脂(キャビティ内を完全には満たさない量である)中に加圧流体を導入することが困難となり、場合によっては、加圧流体がキャビティ内の溶融樹脂を吹き飛ばし、所望の成形品が得られなくなるという問題もある。尚、ジェッティングの発生防止といった技術は、上記の特開平10―281139号公報あるいは特開平11―20979号公報には、何ら開示されていない。
【0012】
従って、本発明の第1の目的は、使用する樹脂に影響されることなく、短い安定した成形サイクルにて、優れた外観特性を有し、第1の樹脂から成る部分の所望の表面領域が一定の厚さの第2の樹脂から成る層で一体的に、且つ、高い位置精度、高い厚さ精度にて被覆されて成る樹脂製の成形品を成形し得る射出成形用の金型装置を提供することにある。
【0013】
本発明の第2の目的は、第1の目的に加え、第1の樹脂から成る部分に確実に所望の中空部が形成されて成る樹脂製の成形品を成形し得る射出成形用の金型装置を提供することにある。
【0014】
更に、本発明の第3の目的は、使用する樹脂に影響されることなく、短い安定した成形サイクルにて、優れた外観特性を有し、第1の樹脂から成る部分の所望の表面領域が一定の厚さの第2の樹脂から成る層で一体的に、且つ、高い位置精度、高い厚さ精度にて被覆されて成る樹脂製の成形品の射出成形方法を提供することにある。
【0015】
更に、本発明の第4の目的は、使用する樹脂に影響されることなく、短い安定した成形サイクルにて、優れた外観特性を有し、第1の樹脂から成る部分の所望の表面領域が一定の厚さの第2の樹脂から成る層で一体的に、且つ、高い位置精度、高い厚さ精度にて被覆され、しかも、第1の樹脂から成る部分に確実に所望の中空部が形成されて成る樹脂製の成形品の射出成形方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の第1の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る射出成形用の金型装置は、
(A)第1の金型部と第2の金型部とから構成され、第1の金型部と第2の金型部とが型締めされた状態で、第1のキャビティ部と、該第1のキャビティ部に連通する第2のキャビティ部とから構成されたキャビティが形成される金型、
(B)第1のキャビティ部内に配設され、第1のキャビティ部の軸線に沿って第1のキャビティ部の一端から他端へと移動可能な栓体、
(C) 該栓体を移動させるための栓体移動手段、
(D)第1のキャビティ部の一端近傍に配設され、第1のキャビティ部内に第1の溶融樹脂を射出するための第1の樹脂導入部、並びに、
(E)第2のキャビティ部に配設され、第2のキャビティ部内に第2の溶融樹脂を射出するための第2の樹脂導入部、
を備えていることを特徴とする。
【0017】
上記の第2の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る射出成形用の金型装置は、上記の本発明の第1の態様に係る射出成形用の金型装置において、キャビティ内に射出された第1の溶融樹脂内に加圧流体を導入するための加圧流体導入部を更に備えていることを特徴とする。本発明の第2の態様に係る構成の金型装置、あるいは後述する本発明の第2の態様あるいは第4の態様に係る射出成形方法において用いられる金型装置にあっては、加圧流体導入部は、第1のキャビティ部の一端近傍に配設されていることが好ましい。加圧流体導入部の軸線(加圧流体が加圧流体導入部から吐出される方向)は、第1のキャビティ部の軸線と概ね平行であることが好ましく、加圧流体導入部の軸線は、第1のキャビティ部の軸線と概ね一致することが一層好ましい。加圧流体導入部を第1の樹脂導入部の近傍に配置してもよいし、加圧流体導入部を第1の樹脂導入部から離して配置してもよいし、第1の樹脂導入部内に加圧流体導入部を配置してもよい。尚、加圧流体導入部の軸線が第1のキャビティ部の軸線と概ね一致していない場合、成形品の形状に依っては、成形品の表面の平行度が不十分となり、あるいは又、高い寸法精度を有する成形品を成形することができなくなる場合がある。ここで、加圧流体導入部の軸線と第1のキャビティ部の軸線とは、厳密に一致していなくともよい。
【0018】
本発明の第2の態様に係る金型装置、あるいは後述する本発明の第2の態様あるいは第4の態様に係る射出成形方法において用いられる加圧流体は、常温・常圧下でガス状あるいは液状の流体であって、第1のキャビティ部内に射出された第1の溶融樹脂あるいは溶融樹脂内への導入時、第1の溶融樹脂あるいは溶融樹脂と反応したり混合しないものが望ましい。具体的には、窒素ガス、炭酸ガス、空気、ヘリウムガス等、常温でガス状の物質、水等の液体、高圧下で液化したガスを使用することができるが、中でも、窒素ガスやヘリウムガス等の不活性ガスが好ましい。尚、第1のキャビティ部内に射出された第1の溶融樹脂及び溶融樹脂を総称して、以下、「第1の溶融樹脂等」と呼ぶ場合がある。
【0019】
本発明の第1若しくは第2の態様に係る金型装置においては、第2のキャビティ部は複数の区画に分割されていてもよく、この場合、各区画に第2の樹脂導入部を配設するか、各区画を連通させ、1あるいは2以上の区画に第2の樹脂導入部を配設すればよい。また、栓体の先端部が第1のキャビティ部の一端近傍に位置するように栓体移動手段によって栓体を保持したとき、第2のキャビティ部の一部は栓体の外表面によって構成されることが好ましい。場合によっては、第2のキャビティ内に射出された第2の溶融樹脂内に加圧流体を導入するための第2の加圧流体導入部を更に備えていてもよい。
【0020】
上記の第3の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る成形品の射出成形方法は、本発明の第1の態様に係る射出成形用の金型装置を用いた射出成形方法である。即ち、本発明の第1の態様に係る成形品の射出成形方法は、
(A)第1の金型部と第2の金型部とから構成され、第1の金型部と第2の金型部とが型締めされた状態で、第1のキャビティ部と、該第1のキャビティ部に連通する第2のキャビティ部とから構成されたキャビティが形成される金型、
(B)第1のキャビティ部内に配設され、第1のキャビティ部の軸線に沿って第1のキャビティ部の一端から他端へと移動可能な栓体、
(C) 該栓体を移動させるための栓体移動手段、
(D)第1のキャビティ部の一端近傍に配設され、第1のキャビティ部内に第1の溶融樹脂を射出するための第1の樹脂導入部、並びに、
(E)第2のキャビティ部に配設され、第2のキャビティ部内に第2の溶融樹脂を射出するための第2の樹脂導入部、
を備えた射出成形用の金型装置を用いた成形品の射出成形方法であって、
(イ)第1の金型部と第2の金型部とを型締めし、
(ロ)栓体の先端部が第1のキャビティ部の一端近傍に位置するように栓体移動手段によって栓体を保持した状態で、第2の樹脂導入部から第2の溶融樹脂を第2のキャビティ部内に射出し、
(ハ)第2の溶融樹脂の射出完了と同時に若しくは射出完了後、第1の樹脂導入部から第1のキャビティ部へ第1の溶融樹脂を射出し、第1の溶融樹脂の射出開始と同時に若しくは射出開始後、栓体移動手段及び/又は射出された第1の溶融樹脂の圧力によって、栓体の先端部が第1のキャビティ部の他端に向かうように第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部内で移動させ、
(ニ)栓体移動手段及び/又は射出された第1の溶融樹脂の圧力によって、第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部の他端まで移動させた後、樹脂をキャビティ内で冷却、固化させる、
各工程から成ることを特徴とする。ここで、キャビティ内で冷却、固化させる樹脂は、成形条件に依存して、第1の溶融樹脂の場合もあれば、第1及び第2の溶融樹脂の場合もある。以下の本発明の第2の態様に係る成形品の射出成形方法においても同様である。
【0021】
上記の第4の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る成形品の射出成形方法は、加圧流体導入部を更に備えた本発明の第2の態様に係る射出成形用の金型装置を用いた射出成形方法である。即ち、本発明の第2の態様に係る成形品の射出成形方法は、
(A)第1の金型部と第2の金型部とから構成され、第1の金型部と第2の金型部とが型締めされた状態で、第1のキャビティ部と、該第1のキャビティ部に連通する第2のキャビティ部とから構成されたキャビティが形成される金型、
(B)第1のキャビティ部内に配設され、第1のキャビティ部の軸線に沿って第1のキャビティ部の一端から他端へと移動可能な栓体、
(C) 該栓体を移動させるための栓体移動手段、
(D)第1のキャビティ部の一端近傍に配設され、第1のキャビティ部内に第1の溶融樹脂を射出するための第1の樹脂導入部、
(E)第2のキャビティ部に配設され、第2のキャビティ部内に第2の溶融樹脂を射出するための第2の樹脂導入部、並びに、
(F)第1のキャビティ部内に射出された第1の溶融樹脂内に加圧流体を導入するための加圧流体導入部、
を備えた射出成形用の金型装置を用いた成形品の射出成形方法であって、
(イ)第1の金型部と第2の金型部とを型締めし、
(ロ)栓体の先端部が第1のキャビティ部の一端近傍に位置するように栓体移動手段によって栓体を保持した状態で、第2の樹脂導入部から第2の溶融樹脂を第2のキャビティ部内に射出し、
(ハ)第2の溶融樹脂の射出完了と同時に若しくは射出完了後、第1の樹脂導入部から第1のキャビティ部へ第1の溶融樹脂を射出し、第1の溶融樹脂の射出開始と同時に若しくは射出開始後、栓体移動手段及び/又は射出された第1の溶融樹脂の圧力によって、栓体の先端部が第1のキャビティ部の他端に向かうように第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部内で移動させ、(ニ)栓体の移動中に、第1のキャビティ部内の第1の溶融樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、更に、栓体移動手段及び/又は射出された第1の溶融樹脂の圧力及び/又は導入された加圧流体の圧力によって、第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部の他端まで移動させ、あるいは又、第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部の他端まで移動させた後、第1のキャビティ部内の第1の溶融樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、
(ホ)樹脂をキャビティ内で冷却、固化させ、以て、第1のキャビティ部内を占める第1の樹脂内に中空部を形成する、
各工程から成ることを特徴とする。尚、加圧流体導入部は、第1のキャビティ部の一端近傍に配設されていることが好ましい。
【0022】
上記の第3の目的を達成するための本発明の第3の態様に係る成形品の射出成形方法は、
(A)第1の金型部と第2の金型部とから構成され、第1の金型部と第2の金型部とが型締めされた状態で、第1のキャビティ部と、該第1のキャビティ部に連通する第2のキャビティ部とから構成されたキャビティが形成される金型、
(B)第1のキャビティ部内に配設され、第1のキャビティ部の軸線に沿って第1のキャビティ部の一端から他端へと移動可能な栓体、
(C) 該栓体を移動させるための栓体移動手段、並びに、
(D)第1のキャビティ部の一端近傍に配設され、第1のキャビティ部内に溶融樹脂を射出するための樹脂導入部、
を備えた射出成形用の金型装置を用いた成形品の射出成形方法であって、
(イ)第2のキャビティ部に賦形物が収納されるようにキャビティ内に賦形物を配置した後、第1の金型部と第2の金型部を型締めし、
(ロ)栓体の先端部が第1のキャビティ部の一端近傍に位置するように栓体移動手段によって栓体を保持した状態で、樹脂導入部から第1のキャビティ部へ溶融樹脂を射出し、
(ハ)樹脂導入部からの第1のキャビティ部への溶融樹脂の射出開始と同時に若しくは射出開始後、栓体移動手段及び/又は射出された溶融樹脂の圧力によって、栓体の先端部が第1のキャビティ部の他端に向かうように第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部内で移動させ、
(ニ)栓体移動手段及び/又は射出された溶融樹脂の圧力によって、第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部の他端まで移動させた後、樹脂を第1のキャビティ部内で冷却、固化させる、
各工程から成ることを特徴とする。
【0023】
上記の第4の目的を達成するための本発明の第4の態様に係る成形品の射出成形方法は、
(A)第1の金型部と第2の金型部とから構成され、第1の金型部と第2の金型部とが型締めされた状態で、第1のキャビティ部と、該第1のキャビティ部に連通する第2のキャビティ部とから構成されたキャビティが形成される金型、
(B)第1のキャビティ部内に配設され、第1のキャビティ部の軸線に沿って第1のキャビティ部の一端から他端へと移動可能な栓体、
(C) 該栓体を移動させるための栓体移動手段、
(D)第1のキャビティ部の一端近傍に配設され、第1のキャビティ部内に溶融樹脂を射出するための樹脂導入部、並びに、
(E)第1のキャビティ部内に射出された溶融樹脂内に加圧流体を導入するための加圧流体導入部、
を備えた射出成形用の金型装置を用いた成形品の射出成形方法であって、
(イ)第2のキャビティ部に賦形物が収納されるようにキャビティ内に賦形物を配置した後、第1の金型部と第2の金型部を型締めし、
(ロ)栓体の先端部が第1のキャビティ部の一端近傍に位置するように栓体移動手段によって栓体を保持した状態で、樹脂導入部から第1のキャビティ部へ溶融樹脂を射出し、
(ハ)樹脂導入部からの第1のキャビティ部への溶融樹脂の射出開始と同時に若しくは射出開始後、栓体移動手段及び/又は射出された溶融樹脂の圧力によって、栓体の先端部が第1のキャビティ部の他端に向かうように第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部内で移動させ、
(ニ)栓体の移動中に、第1のキャビティ部内の溶融樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、更に、栓体移動手段及び/又は射出された溶融樹脂の圧力及び/又は導入された加圧流体の圧力によって、第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部の他端まで移動させ、あるいは又、第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部の他端まで移動させた後、第1のキャビティ部内の溶融樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、
(ホ)樹脂を第1のキャビティ部内で冷却、固化させ、以て、第1のキャビティ部内を占める樹脂内に中空部を形成する、
各工程から成ることを特徴とする。尚、加圧流体導入部は、第1のキャビティ部の一端近傍に配設されていることが好ましい。
【0024】
本発明の第1若しくは第2の態様に係る成形品の射出成形方法においては、第2のキャビティ部は複数の区画に分割されていてもよく、この場合、各区画に第2の樹脂導入部を配設するか、各区画を連通させ、1あるいは2以上の区画に第2の樹脂導入部を配設すればよい。また、栓体の先端部が第1のキャビティ部の一端近傍に位置するように栓体移動手段によって栓体を保持したとき、第2のキャビティ部の一部は栓体の外表面によって構成されることが好ましい。場合によっては、第2のキャビティ内に射出された第2の溶融樹脂内に加圧流体を導入するための第2の加圧流体導入部を更に備えていてもよい。
【0025】
本発明の第3の態様若しくは第4の態様に係る成形品の射出成形方法においても、第2のキャビティ部を複数の区画から構成してもよい。即ち、金型にインサートすべき賦形物の数と同じとすればよく、区画数を1あるいは2以上とすることができる。
【0026】
本発明の射出成形用の第1の態様〜第2の態様に係る金型装置、あるいは、本発明の第1の態様〜第4の態様に係る成形品の射出成形方法(以下、これらの全てを総称して、単に、本発明と呼ぶ場合がある)においては、第1の溶融樹脂等及び第2の溶融樹脂あるいは賦形物と接触する栓体の接触面は滑らかな仕上げであることが望ましい。接触面の面粗度が粗い場合、栓体の接触面が固化した第1の樹脂、固化した樹脂あるいは固化した第2の樹脂から離型し難くなるし、あるいは又、滑らかな栓体の移動が困難となり、所望の成形品が得られない場合がある。
【0027】
栓体の形状は、使用する樹脂の特性や所望とする成形品の形状等に基づき適宜決定すればよく、一義的には定めることができない。栓体は、第1のキャビティ部内で移動できる形状であればよい。第1のキャビティ部によって成形される成形品の部分の表面におけるジェッティングやフローマークの発生防止の観点から、栓体の移動方向と直角方向の断面形状を、かかる方向における第1のキャビティ部の断面形状と概ね相似した形状とすることが好ましい。栓体の移動方向における栓体表面と第1のキャビティ部の金型面との間の隙間は、栓体の移動時、栓体が第1のキャビティ部の金型面と接触しない隙間であることが必要とされる。尚、第1の溶融樹脂等がこの隙間に侵入しない方が好ましいが、場合によっては、この隙間に第1の溶融樹脂等が侵入してもよい。
【0028】
本発明において、栓体の先端部が第1のキャビティ部の一端近傍に位置するように栓体移動手段によって栓体を保持したとき(この状態を、「前進端位置に栓体を位置させる」と称する)、栓体の先端部は、第1の樹脂導入部あるいは樹脂導入部に近接して位置することが好ましい。尚、第1の樹脂導入部あるいは樹脂導入部を総称して、以下、「第1の樹脂導入部等」と呼ぶ場合がある。ここで、栓体の先端部が第1の樹脂導入部等に近接して位置するとは、成形品の形状等に依存するが、通常、前進端位置に栓体を位置させたとき、樹脂導入部等と対向する栓体の先端部が樹脂導入部等から0mm乃至20mm離れていることを意味する。前進端位置に栓体を位置させたとき、栓体の先端部がキャビティの金型面と接し、樹脂導入部等を塞ぐように栓体を位置させてもよい。前進端位置に栓体を位置させたとき、栓体の先端部が樹脂導入部等から余りに離れていると、キャビティの金型面及び栓体の先端部によって形成される空間が大きくなり過ぎ、第1のキャビティ部内に射出された第1の溶融樹脂等が栓体の先端部に突き当たって第1の溶融樹脂等の直進が妨げられることが無くなり、ジェッティングの発生を効果的に防止できない場合がある。
【0029】
本発明においては、第1の樹脂導入部等の軸線(第1の樹脂導入部等から第1のキャビティ部に射出される第1の溶融樹脂等の方向)は、第1のキャビティ部の軸線と概ね平行であることが好ましく、第1の樹脂導入部等の軸線は、第1のキャビティ部の軸線と概ね一致することが一層好ましい。尚、第1の樹脂導入部等の軸線が第1のキャビティ部の軸線と概ね一致していない場合、成形品の形状に依っては、成形品の表面の平行度が不十分となり、あるいは又、高い寸法精度を有する成形品を成形することができなくなる場合がある。ここで、第1の樹脂導入部等の軸線と第1のキャビティ部の軸線とは、厳密に一致していなくともよい。
【0030】
本発明においては、射出成形装置の加熱シリンダー先端とキャビティとの間に溶融樹脂が流れる湯路としてスプルー部やランナー部が設けられており、且つ、ランナー部とキャビティの間にはゲート部が配設されている構造としてもよいし、ホットランナー、バルブゲート等で直接、キャビティ内に溶融樹脂を射出する構造としてもよい。金型装置に設けられたこれらのゲート部やホットランナー、バルブゲート等を総称して樹脂導入部と呼ぶ。更には、成形品が薄肉部から厚肉部へ変化する形状を有している場合、栓体の前進端位置が薄肉部を形成するキャビティの部分の近傍となるときには、成形品の薄肉部を形成するキャビティの部分も樹脂導入部に包含される。
【0031】
本発明においては、成形品を1個取りあるいは複数個取りとすることができる。
【0032】
本発明の第1の態様若しくは第3の態様に係る射出成形方法において、第1のキャビティ部内に射出する第1の溶融樹脂の量は、成形品を作製するのに十分な量であればよい。一方、本発明の第2の態様若しくは第4の態様に係る射出成形方法において、第1のキャビティ部内に射出する第1の溶融樹脂等の量は、第1のキャビティ部内を完全に充填する量であってもよいし(所謂、フルショット法)、あるいは又、第1のキャビティ部内に射出する第1の溶融樹脂等の量は、第1のキャビティ部内を完全に充填するには少ない量であり、且つ、加圧流体が第1の溶融樹脂等内に導入されたとき、成形品を作製するのに十分な量としてもよい(所謂、ショートショット法)。尚、本発明の第1の態様若しくは第2の態様に係る射出成形方法において、第2のキャビティ部内に射出する第2の溶融樹脂の量は、成形品を作製するのに十分な量であればよい。
【0033】
本発明の第2の態様に係る射出成形方法において、ショートショット法を採用する場合、工程(ニ)においては、栓体の移動中に、第1のキャビティ部内の第1の溶融樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、更に、栓体移動手段及び/又は射出された第1の溶融樹脂の圧力及び/又は導入された加圧流体の圧力によって、第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部の他端まで移動させる。一方、本発明の第2の態様に係る射出成形方法において、フルショット法を採用する場合、第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部の他端まで移動させた後、第1のキャビティ部内の第1の溶融樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入する。
【0034】
また、本発明の第4の態様に係る射出成形方法において、ショートショット法を採用する場合、工程(ニ)においては、栓体の移動中に、第1のキャビティ部内の溶融樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、更に、栓体移動手段及び/又は射出された溶融樹脂の圧力及び/又は導入された加圧流体の圧力によって、第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部の他端まで移動させる。一方、本発明の第4の態様に係る射出成形方法において、フルショット法を採用する場合、第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部の他端まで移動させた後、第1のキャビティ部内の溶融樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入する。
【0035】
本発明の第1の態様若しくは第3の態様に係る射出成形方法において、第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体の先端部が第1のキャビティ部の他端に向かうように第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体の第1のキャビティ部内で移動するが(この状態を、「後進端位置に向かっての栓体の移動」と称する)、この栓体の移動は、第1のキャビティ部に射出された第1の溶融樹脂等の圧力によって行うこともできるし、金型装置に備えられた栓体移動手段によって行うこともできる。更には、射出された第1の溶融樹脂等の圧力に加えて、金型装置に備えられた栓体移動手段によって行うこともできる。
【0036】
本発明の第2の態様若しくは第4の態様に係る射出成形方法において、後進端位置に向かっての栓体の移動は、
▲1▼ 金型装置に備えられた栓体移動手段によって、
▲2▼ 第1のキャビティ部に射出された第1の溶融樹脂等の圧力によって、
▲3▼ 導入された加圧流体の圧力によって、
▲4▼ 金型装置に備えられた栓体移動手段、及び、第1のキャビティ部に射出された第1の溶融樹脂等の圧力によって、
▲5▼ 金型装置に備えられた栓体移動手段、及び、導入された加圧流体の圧力によって、
▲6▼ 第1のキャビティ部に射出された第1の溶融樹脂等の圧力、及び、導入された加圧流体の圧力によって、
▲7▼ 金型装置に備えられた栓体移動手段、第1のキャビティ部に射出された第1の溶融樹脂等の圧力、及び、導入された加圧流体の圧力によって、
行うことができる。尚、これらの形態の全てを包含した表現として、「栓体移動手段及び/又は射出された溶融樹脂の圧力及び/又は導入された加圧流体の圧力によって」という表現を用いる。
【0037】
栓体移動手段を、作動油等の液体あるいは空気等の気体を用いた流体シリンダーの他、作動油等の液体あるいは空気等の気体を用いた流体駆動モーター、電動サーボモーターから構成し、栓体を直接移動(摺動)させることもできるし、これらの流体シリンダー、流体駆動モーター、電動サーボモーター等と、ボールネジ等のネジ機構、カム機構、ラック・アンド・ピニオン機構等との組合わせ、あるいは又、各種の発条(スプリングあるいはバネ)から構成することもできるが、中でも、流体シリンダーやラック・アンド・ピニオン機構、発条から構成することが好ましい。尚、栓体移動手段を発条から構成した場合、発条が縮むに従い、射出溶融樹脂の圧力に対抗する栓体の抗力が増加する。従って、一様な抗力が要求される場合には、栓体移動手段を流体シリンダーやラック・アンド・ピニオン機構等から構成することが好ましい。
【0038】
第1の溶融樹脂等の射出圧力等に対抗する栓体の抗力の値は、使用する樹脂材料、樹脂の溶融粘度、第1の溶融樹脂等の射出圧力、第1の溶融樹脂等の射出速度等に依存するため、一義的には決定できない。第1の溶融樹脂等の射出中に栓体を移動させるので、栓体の先端部が第1のキャビティ部を構成する面の一部分を形成するように、栓体の移動を制御する必要がある。例えば、流体シリンダーを用いる場合、流体シリンダーの作動を制御することで、栓体の移動速度を容易に制御することができる。他の機構を用いた場合でも同様である。
【0039】
第1のキャビティ部に射出される第1の溶融樹脂等を構成する樹脂に特に制限はなく、射出成形が可能な合成樹脂、詳しくは、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、これらのアロイや、熱硬化性樹脂でもよく、更には、これらの樹脂と公知の安定剤等の添加剤、フィラー、ガラス繊維等の繊維強化材との配合物も用いることができるが、特に、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、これらのアロイ、これらの樹脂と公知の安定剤等の添加剤、フィラー、繊維強化材等との配合物を用いることが好ましい。樹脂として、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、PVC樹脂、メタアクリル樹脂、含フッ素樹脂等で例示される、所謂汎用熱可塑性樹脂はもとより、ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂等で例示されるエンジニアリングプラスチックスを例示することができる。
【0040】
第2のキャビティ部に射出される第2の溶融樹脂を構成する樹脂として、上記の汎用熱可塑性樹脂及びエンジニアリングプラスチックスを挙げることができるが、中でも、スチレン系熱可塑性エラストマー(SBS、SIS、SEBS、SEPS等)、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(T−PVC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(PAE)を用いることが好ましい。
【0041】
賦形物を構成する材料は、溶融樹脂によって劣化しない材料であれば特に制限はなく、具体的には、上記の第1のキャビティ部に射出される第1の溶融樹脂等を構成する樹脂あるいは第2のキャビティ部に射出される第2の溶融樹脂を構成する樹脂にて説明した各種樹脂や熱可塑性エラストマーの他に、エチレン−アクリルゴム、ポリブタジエンゴム、ハイスチレンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ヒドリンゴム、EPDM、EPM、NBR、水添加NBR、NBR/PVC、SBRで例示される各種のゴムを挙げることができる。また、賦形物の作製方法として、熱可塑性材料を用いる場合には、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、回転成形法に代表される溶融加工法、及び、切削、研磨に代表される機械加工法を挙げることができ、溶融加工法を採用出来ない材料を用いる場合には、切削、研磨に代表される機械加工法を挙げることができる。
【0042】
本発明の第1若しくは第3の態様に係る成形品の射出成形方法によって得られる成形品として、中実の棒状成形品や曲管を例示することができる。栓体の移動方向と略直角の方向に成形品を切断したときの成形品の断面形状は、円形、楕円形、矩形、多角形等、任意の形状とすることができる。また、本発明の第2若しくは第4の態様に係る成形品の射出成形方法によって得られる成形品として、中空部を有する円筒形状や棒状の直管、曲管を例示することができる。本発明の第1の態様〜第4の態様に係る成形品の射出成形方法によって得られる成形品の具体例として、ローラ、カム軸、手摺部品を例示することができる。成形品がローラである場合、第1の溶融樹脂等の流動軸線方向と略直角の方向に成形品を切断したときの成形品の断面形状は、円形である。
【0043】
成形品が、棒状の軸部と、軸部の外面の少なくとも一部を被覆した層状部とから構成された成形品である場合、樹脂あるいは第1の樹脂から軸部を構成し、第2の樹脂あるいは賦形物から層状部を構成することができる。あるいは又、軸部を、中実あるいは中空の棒状の第1の軸部と、第1の軸部の外面を被覆する第2の軸部といった、一種の二重管構造から構成した場合、樹脂あるいは第1の樹脂から第1の軸部を構成し、第2の樹脂あるいは賦形物から第2の軸部及び層状部を構成することもできる。
【0044】
成形品がローラである場合、ローラの端部に歯車を有する構成とすることもできる。この場合、第1のキャビティ部において歯車を成形してもよいし、第2のキャビティ部において歯車を成形してもよいし、更には、賦形物の一部を歯車としてもよい。第1のキャビティ部において歯車を成形する場合、歯車の成形精度を向上させるために、歯車を形成すべき第1のキャビティ部の部分に樹脂導入部を配設することが好ましく、更には、前進端位置に栓体を位置させたとき、栓体は、ローラ部を形成すべき第1のキャビティ部の部分内に位置し、且つ、歯車を形成すべき第1のキャビティ部の部分に近接して位置することが望ましい。あるいは又、ローラ部の他端部を形成すべき第1のキャビティ部の部分に樹脂導入部が配設されていてもよい。
【0045】
栓体の移動(摺動)のタイミング、溶融樹脂の射出のタイミング、加圧流体の導入のタイミングを、図27の(A)〜(C)、図28の(A)〜(C)、図29の(A)〜(C)、図30の(A)及び(B)、図31の(A)〜(C)に模式的に示す。尚、これらの図において、「溶融樹脂の射出」「第1の溶融樹脂の射出」、「第2の溶融樹脂の射出」の項の右側に描いた線分の左端は溶融樹脂、第1の溶融樹脂あるいは第2の溶融樹脂の射出開始を表し、線分の右端は溶融樹脂、第1の溶融樹脂あるいは第2の溶融樹脂の射出完了を表す。また、「加圧流体の導入」の項の右側に描いた線分の左端は加圧流体の導入開始を表し、線分の右端は加圧流体の導入完了を表す。更には、「栓体の移動」の項の右側に描いた線分の左端は栓体の移動開始を表し、線分の右端は栓体の移動完了を表す。尚、線分の長さは時間を表すが、時間の長さは模式的な表示である。
【0046】
本発明の第1の態様に係る射出成形方法においては、図27の(A)及び(B)に示すように、第2のキャビティ部への第2の溶融樹脂の射出完了と同時に、第1のキャビティ部への第1の溶融樹脂の射出を開始する。そして、図27の(A)に示すように、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出開始と同時に、栓体の移動(摺動)を開始する。栓体が後進端位置に到達するタイミングは、図27の(A)に示すように、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了前であってもよいし、図示しないが、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了と同時であってもよい。あるいは又、図27の(B)に示すように、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出開始後、栓体の移動(摺動)を開始する。栓体が後進端位置に到達するタイミングは、図27の(B)に示すように、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了前であってもよいし、図示しないが、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了と同時であってもよい。
【0047】
あるいは又、図27の(C)及び(D)に示すように、第2のキャビティ部への第2の溶融樹脂の射出完了後、第1のキャビティ部への第1の溶融樹脂の射出を開始する。尚、第2のキャビティ部内で第2の溶融樹脂を冷却中に、あるいは冷却後に、第1のキャビティ部への第1の溶融樹脂の射出を開始してもよい。そして、図27の(C)に示すように、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出開始と同時に、栓体の移動(摺動)を開始する。栓体が後進端位置に到達するタイミングは、図27の(C)に示すように、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了前であってもよいし、図示しないが、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了と同時であってもよい。あるいは又、図27の(D)に示すように、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出開始後、栓体の移動(摺動)を開始する。栓体が後進端位置に到達するタイミングは、図27の(D)に示すように、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了前であってもよいし、図示しないが、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了と同時であってもよい。
【0048】
本発明の第2の態様に係る射出成形方法においては、図28の(A)〜(C)に示すように、第2のキャビティ部への第2の溶融樹脂の射出完了と同時に、第1のキャビティ部への第1の溶融樹脂の射出を開始する。あるいは又、図29の(A)〜(C)に示すように、第2のキャビティ部への第2の溶融樹脂の射出完了後、第1のキャビティ部への第1の溶融樹脂の射出を開始する。尚、第2のキャビティ部内で第2の溶融樹脂を冷却中に、あるいは冷却後に、第1のキャビティ部への第1の溶融樹脂の射出を開始してもよい。
【0049】
そして、図28の(A)あるいは図29の(A)に示すように、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出開始と同時に、栓体の移動(摺動)を開始する。栓体が後進端位置に到達するタイミングは、図28の(A)あるいは図29の(A)に示すように、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了前であってもよいし、図示しないが、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了と同時であってもよいし、射出完了後であってもよい。そして、第1のキャビティ部内に第1の溶融樹脂を射出中に、第1のキャビティ部内の第1の溶融樹脂内に加圧流体を導入する。図28の(A)あるいは図29の(A)に示すように、加圧流体の導入の完了は、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了後であってもよいし、図示しないが、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了と同時であってもよい。
【0050】
あるいは又、図28の(B)あるいは図29の(B)に示すように、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出開始後、栓体の移動(摺動)を開始する。栓体が後進端位置に到達するタイミングは、図28の(B)あるいは図29の(B)に示すように、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了後であってもよいし、図示しないが、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了と同時であってもよいし、射出完了前であってもよい。そして、第1のキャビティ部内に第1の溶融樹脂を射出中に、第1のキャビティ部内の第1の溶融樹脂内に加圧流体を導入する。図28の(B)あるいは図29の(B)に示すように、加圧流体の導入の完了は、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了後であってもよいし、図示しないが、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了と同時であってもよい。
【0051】
あるいは又、図28の(C)あるいは図29の(C)に示すように、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出開始後、栓体の移動(摺動)を開始する。栓体が後進端位置に到達するタイミングは、図28の(C)あるいは図29の(C)に示すように、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了後であってもよいし、図示しないが、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了と同時であってもよいし、射出完了前であってもよい。そして、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了後に(射出完了と同時を含む)、第1のキャビティ部内の第1の溶融樹脂内に加圧流体を導入する。図28の(C)あるいは図29の(C)に示すように、加圧流体の導入の完了は、第1のキャビティ部内への第1の溶融樹脂の射出完了後である。
【0052】
本発明の第3の態様に係る射出成形方法においては、図30の(A)に示すように、第1のキャビティ部への溶融樹脂の射出を開始と同時に、栓体の移動(摺動)を開始する。栓体が後進端位置に到達するタイミングは、図30の(A)に示すように、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出完了前であってもよいし、図示しないが、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出完了と同時であってもよい。あるいは又、図30の(B)に示すように、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出開始後、栓体の移動(摺動)を開始する。栓体が後進端位置に到達するタイミングは、図30の(B)に示すように、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出完了前であってもよいし、図示しないが、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出完了と同時であってもよい。
【0053】
本発明の第4の態様に係る射出成形方法においては、図31の(A)に示すように、第1のキャビティ部への溶融樹脂の射出を開始と同時に、栓体の移動(摺動)を開始する。栓体が後進端位置に到達するタイミングは、図31の(A)に示すように、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出完了前であってもよいし、図示しないが、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出完了と同時、あるいは射出完了後であってもよい。そして、第1のキャビティ部内に溶融樹脂を射出中に、第1のキャビティ部内の溶融樹脂内に加圧流体を導入する。図31の(A)に示すように、加圧流体の導入の完了は、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出完了後であってもよいし、図示しないが、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出完了と同時であってもよい。
【0054】
あるいは又、図31の(B)に示すように、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出開始後、栓体の移動(摺動)を開始する。栓体が後進端位置に到達するタイミングは、図31の(B)に示すように、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出完了後であってもよいし、図示しないが、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出完了と同時であってもよいし、射出完了前であってもよい。そして、第1のキャビティ部内に溶融樹脂を射出中に、第1のキャビティ部内の溶融樹脂内に加圧流体を導入する。図31の(B)に示すように、加圧流体の導入の完了は、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出完了後であってもよいし、図示しないが、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出完了と同時であってもよい。
【0055】
あるいは又、図31の(C)に示すように、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出開始後、栓体の移動(摺動)を開始する。栓体が後進端位置に到達するタイミングは、図31の(C)に示すように、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出完了後であってもよいし、図示しないが、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出完了と同時であってもよいし、射出完了前であってもよい。そして、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出完了後に(射出完了と同時を含む)、第1のキャビティ部内の溶融樹脂内に加圧流体を導入する。図31の(C)に示すように、加圧流体の導入の完了は、第1のキャビティ部内への溶融樹脂の射出完了後である。
【0056】
本発明においては、第1の溶融樹脂等が射出される前には、栓体移動手段によって、栓体は、その前進端位置に保持されている。栓体を、このように前進端位置に保持することで、第1のキャビティ部内に射出された第1の溶融樹脂等が栓体の先端部に突き当たり、第1の溶融樹脂等の直進が妨げられ、その結果、ジェッティングの発生を効果的に防止することができ、外観特性に優れた成形品を得ることができる。
【0057】
また、第1の溶融樹脂等を第1のキャビティ部内に射出する際、最終的に成形品を成形するために要求される第1のキャビティ部の容積よりも、第1のキャビティ部の容積は小さくなっている。従って、たとえ、第1の溶融樹脂等として溶融時の粘度の高い合成樹脂を使用する場合であっても、本発明の第2の態様若しくは第4の態様に係る射出成形方法においては、第1のキャビティ部内の第1の溶融樹脂等内への加圧流体の導入によって、中空部の形成を確実に開始することが可能になる。そして、最終的に栓体を後進端位置に位置させることによって、成形品を成形するために要求される第1のキャビティ部の形状が得られ、これによって、所望の中空部を成形品に容易に且つ確実に制御された状態で形成することができる。また、栓体を移動させることで、第1のキャビティ部の容積を徐々に拡大することができ、第1のキャビティ部内の第1の溶融樹脂等の流れを制御することができるので、本発明の成形品の射出成形方法により優れた外観特性を有する成形品を得ることができるばかりか、本発明の第2の態様若しくは第4の態様に係る射出成形方法においては、所望の中空部を成形品に容易に且つ確実に制御された状態で形成することができるし、成形品の外観品質も向上する。また、ウエルドが生じないという利点もある。
【0058】
尚、本発明の第1若しくは第2の態様に係る成形品の射出成形方法において、第2のキャビティ部内に射出された第2の溶融樹脂が冷却する前に、第1のキャビティ部に第1の溶融樹脂を射出すれば、第1の溶融樹脂によって、第2のキャビティ部内の第2の溶融樹脂が外側方向の金型面に押し付けられる結果、第2の樹脂から成る成形品の部分の表面平滑性が向上する。
【0059】
本発明の第1若しくは第2の態様に係る成形品の射出成形方法においては、栓体を前進端位置に保持することによって、第2のキャビティ部への第2の溶融樹脂の射出中に第1のキャビティ部と第2のキャビティ部とが実質的に連通することがなくなるので、第2の溶融樹脂が第1のキャビティ部や第1の樹脂導入部に侵入することを防止し得る。また、本発明の第3若しくは第4の態様に係る成形品の射出成形方法においては、栓体を前進端位置に保持することによって、栓体は賦形物を保持する機構の一部として機能する。
【0060】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、発明の実施の形態(以下、実施の形態と略称する)及び実施例に基づき本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、図中、同一参照番号は、同一の部品又は構成要素を意味する。先ず、以下、本発明の金型装置に関する実施の形態を説明し、次いで、実施例に基づき、本発明の成形品の射出成形方法を説明する。
【0061】
(実施の形態1)
本発明の第1の態様に係る金型装置の一例の模式的な断面図を、図1及び図2に示す。実施の形態1の金型装置は金型を備えている。この金型は、第1の金型部10Aと第2の金型部10Bとから構成され、第1の金型部10Aと第2の金型部10Bとが型締めされた状態で、第1のキャビティ部14と、該第1のキャビティ部14に連通する第2のキャビティ部15とから構成されたキャビティが形成される。実施の形態1の金型装置は、更に、第1のキャビティ部14内に配設され、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って第1のキャビティ部14の一端14Aから他端14Bへと移動可能な栓体20と、栓体20を移動させるための栓体移動手段22と、第1のキャビティ部14の一端近傍に配設され、第1のキャビティ部14内に第1の溶融樹脂を射出するための第1の樹脂導入部11、並びに、第2のキャビティ部15に配設され、第2のキャビティ部15内に第2の溶融樹脂を射出するための第2の樹脂導入部13を備えている。樹脂導入部11の軸線L1は第1のキャビティ部14の軸線L2と概ね一致している。尚、第1の樹脂導入部11及び第2の樹脂導入部13のそれぞれは、射出成形装置の加熱シリンダー(図示せず)に連通している。
【0062】
栓体20は、例えば、金型10と同じ材質の材料から作製すればよい。尚、図1に示す金型装置の模式的な断面図においては、栓体20は後進端位置にあり、図2に示す金型装置の模式的な断面図においては、栓体20は前進端位置にある。前進端位置にある栓体20の先端部20aは、第1の樹脂導入部11をほぼ塞ぐように位置する。
【0063】
栓体20と栓体移動手段22とはピストンロッド21によって連結されており、栓体移動手段22の作動によって栓体20は移動可能である。栓体移動手段22は、例えば圧縮空気で作動する流体シリンダーから成る。また、参照番号40は、流体シリンダーから成る栓体移動手段22に圧縮空気圧を供給するためのソレノイドであり、参照番号41は圧力制御弁であり、参照番号42は栓体20の移動速度を制御するための流量制御弁であり、ソレノイド40、圧力制御弁41及び流量制御弁42によって、栓体移動手段22の作動が制御される。尚、図面によっては、ソレノイド40、圧力制御弁41及び流量制御弁42の図示を省略した。
【0064】
図7に模式的な断面図を示す本発明の第2の態様に係る金型装置は、図1に示した本発明の金型装置の変形であり、キャビティ内に射出された第1の溶融樹脂内に加圧流体を導入するための加圧流体導入部12を更に備えている。加圧流体導入部12は、第1の樹脂導入部11内に配置されている。加圧流体導入部12の軸線L3は第1のキャビティ部14の軸線L2と概ね一致している。加圧流体導入部12の端部は、配管、逆止弁、圧力制御弁等を介して加圧流体源に接続されているが、これらの図示は省略した。
【0065】
【実施例】
(実施例1)
実施例1は、本発明の第1の態様に係る成形品の射出成形方法に関し、図1及び図2に示した本発明の第1の態様に係る金型装置を使用した。以下、図2〜図6を参照して、実施例1の射出成形方法を説明する。
【0066】
実施例1においては、第1の樹脂として、ポリアセタール樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製 F20―03)を用いた。また、第2の樹脂として、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のハードセグメントとポリテトラメチレングリコールのソフトセグメントが交互に連結したマルチブロックポリマーであり、分子量が100000〜150000、軟化点が175゜Cの熱可塑性ポリエステルエラストマーを用いた。
【0067】
実施例1においては、成形品を、軸部、及び軸部の円周方向外周に設けられたエラストマー層から構成された紙送り用ローラとした。軸部は上記の第1の樹脂(ポリアセタール樹脂)から構成され、エラストマー層は上記の熱可塑性ポリエステルエラストマーから構成されている。また、軸部は第1のキャビティ部14に基づき成形され、エラストマー層は第2のキャビティ部15に基づき成形される。軸線L2に沿った第1のキャビティ部14の長さを320mmとした。また、軸線L2に沿った第2のキャビティ部15の長さを240mmとした。エラストマー層の外径を32mmとし、軸部の外径を14mmとした。成形品の軸線と直角の平面で成形品を切断したときの軸部及びエラストマー層の断面形状は円形である。
【0068】
実施例1においては、先ず、第1の金型部10Aと第2の金型部10Bとを型締めする(図1参照)。次いで、栓体20の先端部20aが第1のキャビティ部14の一端14Aの近傍に位置するように栓体移動手段22によって栓体20を保持する(図2参照)。栓体20の移動時、流体シリンダーから成る栓体移動手段22には、圧縮空気圧力(5kgf−G/cm2)を付与した。尚、圧力制御弁41の流体制御設定圧力を7kgf−G/cm2とした。栓体20を前進端位置に保持した後、栓体移動手段22の空気圧力を大気圧に戻した。尚、栓体20の先端部20aが第1のキャビティ部14の一端14A近傍に位置するように栓体移動手段22によって栓体を保持したとき、第2のキャビティ部15の一部は栓体20の外表面によって構成されている。尚、栓体20を前進端位置に保持することによって、第2のキャビティ部15に第2の溶融樹脂を射出中に第1のキャビティ部14と第2のキャビティ部15とが実質的に連通することがなくなるので、第2の溶融樹脂が第1のキャビティ部14や第1の樹脂導入部11に侵入することを防止することができる。
【0069】
そして、この状態を保持しながら、図示しない加熱シリンダー内で可塑化、溶融、計量した第2の溶融樹脂30を、第2の樹脂導入部13から第2のキャビティ部15内に射出した。第2の溶融樹脂30の第2のキャビティ部15への射出中の状態を模式的に図3に示し、射出完了時の状態を模式的に図4に示す。尚、第2の溶融樹脂30の射出圧力を800kgf−G/cm2、射出率を8cm3/秒とした。
【0070】
第2の溶融樹脂30の射出完了後(実施例1においては、第2の樹脂を第2のキャビティ部15内で30秒間冷却した後)、図示しない加熱シリンダー内で可塑化、溶融、計量した第1の溶融樹脂31を第1の樹脂導入部11から第1のキャビティ部14へ射出した。尚、第1の溶融樹脂31の射出圧力を700kgf−G/cm2、射出率を10cm3/秒とした。また、第1のキャビティ部14内に射出する第1の溶融樹脂31の量を、第1のキャビティ部14内を完全に充填する量とした。射出された第1の溶融樹脂31の圧力に対抗するための抗力を、栓体20及びピストンロッド21の自重によって生成させている。第1の溶融樹脂31の第1のキャビティ部14内への射出によって栓体20に発生する反力はこの抗力よりも大きいので、第1のキャビティ部14内に射出された第1の溶融樹脂31による圧力によって、栓体20は、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って後進端位置に向かっての移動を開始する。即ち、栓体20の先端部20aが第1のキャビティ部14の他端14Bに向かうように、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って栓体20を第1のキャビティ部14内で移動させた。この状態を図5に模式的に示す。尚、栓体移動手段22に圧縮空気圧力を付与したままとすることによって、栓体移動手段22により射出された第1の溶融樹脂31の圧力に対抗するための抗力を生成させてもよい。そして、栓体移動手段22及び/又は射出された第1の溶融樹脂31の圧力によって、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って栓体20を第1のキャビティ部14の他端14Bまで移動させた後、第1の樹脂を第1のキャビティ部14内で40秒間、冷却、固化させた。その後、第1の金型部10Aと第2の金型部10Bを型開きし、成形品を金型から取り出した。
【0071】
(実施例2)
実施例2は、本発明の第2の態様に係る成形品の射出成形方法に関し、図7に示した本発明の第2の態様に係る金型装置を使用した。以下、図8〜図10を参照して、実施例2の射出成形方法を説明する。
【0072】
実施例2においては、実施例1と同じ第1の樹脂及び第2の樹脂を使用した。また、実施例2における成形品を、実施例1の成形品と同じとした。尚、実施例2においては、ショートショット法を採用した。
【0073】
実施例2においても、先ず、第1の金型部10Aと第2の金型部10Bとを型締めする。次いで、栓体20の先端部20aが第1のキャビティ部14の一端14Aの近傍に位置するように栓体移動手段22によって栓体20を保持する。栓体20の移動時、流体シリンダーから成る栓体移動手段22等における圧力設定値を、実施例1と同様とした。尚、栓体20の先端部20aが第1のキャビティ部14の一端14A近傍に位置するように栓体移動手段22によって栓体を保持したとき、第2のキャビティ部15の一部は栓体20の外表面によって構成されている。
【0074】
そして、この状態を保持しながら、図示しない加熱シリンダー内で可塑化、溶融、計量した第2の溶融樹脂30を、第2の樹脂導入部13から第2のキャビティ部15内に射出した。第2の溶融樹脂30の第2のキャビティ部15への射出完了時の状態を模式的に図8に示す。尚、第2の溶融樹脂30の射出圧力を800kgf−G/cm2、射出率を8cm3/秒とした。
【0075】
第2の溶融樹脂30の射出完了後(実施例2においては、第2の樹脂を第2のキャビティ部15内で30秒間冷却した後)、図示しない加熱シリンダー内で可塑化、溶融、計量した第1の溶融樹脂31を、第1の樹脂導入部11から第1のキャビティ部14へ射出した。尚、第1の溶融樹脂31の射出圧力を800kgf−G/cm2、射出率を8cm3/秒とした。また、第1のキャビティ部14内に射出する第1の溶融樹脂31の量を、第1のキャビティ部14内を完全に充填するには少ない量であり、且つ、加圧流体が第1の溶融樹脂31内に導入されたとき、成形品を作製するのに十分な量とした。射出された第1の溶融樹脂31の圧力に対抗するための抗力を、栓体20及びピストンロッド21の自重によって生成させている。第1の溶融樹脂31の第1のキャビティ部14内への射出によって栓体20に発生する反力はこの抗力よりも大きいので、第1のキャビティ部14内に射出された第1の溶融樹脂31による圧力によって、栓体20は、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って後進端位置に向かっての移動を開始する。即ち、栓体20の先端部20aが第1のキャビティ部14の他端14Bに向かうように、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って栓体20を第1のキャビティ部14内で移動させた。この状態を図9に模式的に示す。尚、栓体移動手段22に圧縮空気圧力を付与したままとすることによって、栓体移動手段22により射出された第1の溶融樹脂31の圧力に対抗するための抗力を生成させてもよい。
【0076】
そして、栓体20の移動中に、第1のキャビティ部14内の第1の溶融樹脂31内に加圧流体導入部12から加圧流体(実施例2においては、ゲージ圧80kgf/cm2−Gの窒素ガス)を導入した。同時に、ソレノイド40を切り替えて、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って栓体20を第1のキャビティ部14の他端14Bまで移動させた後、第1の樹脂を第1のキャビティ14内で40秒間、冷却、固化させ、以て、第1のキャビティ部14内を占める第1の樹脂内に中空部32を形成した(図10参照)。尚、第1の溶融樹脂31の第1のキャビティ部14内への射出完了から0.1秒後に、加圧流体の導入を開始した。第1の溶融樹脂の冷却、固化中、加圧流体の導入を継続した。その後、中空部32内の窒素ガスを大気中に放出し、第1の金型部10Aと第2の金型部10Bを型開きし、成形品を金型から取り出した。
【0077】
(実施例3)
実施例3は、本発明の第3の態様に係る成形品の射出成形方法に関し、図11に示す金型装置を使用した。以下、図11〜図14を参照して、実施例3の射出成形方法を説明する。
【0078】
実施例3においては、樹脂として、ポリアセタール樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製 F20―03)を用いた。また、賦形物を、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のハードセグメントとポリテトラメチレングリコールのソフトセグメントが交互に連結したマルチブロックポリマーであり、分子量が100000〜150000、軟化点が175゜Cの熱可塑性ポリエステルエラストマーから作製した。
【0079】
実施例3においては、成形品を、軸部、及び軸部の円周方向外周に設けられた賦形物から構成された紙送り用ローラとした。軸部は上記の樹脂から構成されている。軸部は第1のキャビティ部14に基づき成形される。軸線L2に沿った第1のキャビティ部14の長さを320mmとした。また、軸線L2に沿った第2のキャビティ部15の長さを240mmとした。賦形物の外径を32mmとし、軸部の外径を14mmとした。成形品の軸線と直角の平面で成形品を切断したときの軸部及び賦形物の断面形状は円形である。
【0080】
実施例3においては、先ず、第2のキャビティ部15に賦形物33が収納されるようにキャビティ内に賦形物33を配置した後、即ち、賦形物33を金型にインサートした後、第1の金型部10Aと第2の金型部10Bを型締めする(図11参照)。次いで、栓体20の先端部20aが第1のキャビティ部14の一端14Aの近傍に位置するように栓体移動手段22によって栓体20を保持する(図12参照)。栓体20を前進端位置に保持することによって、栓体20は賦形物33を保持する機構の一部として機能する。前進端位置にある栓体20の先端部20aを、樹脂導入部111をほぼ塞ぐように位置させた。栓体20の移動時、流体シリンダーから成る栓体移動手段22等における圧力設定値を、実施例1と同様とした。
【0081】
そして、この状態を保持しながら、図示しない加熱シリンダー内で可塑化、溶融、計量した溶融樹脂34を樹脂導入部111から第1のキャビティ部14へ射出した。尚、溶融樹脂34の射出圧力を700kgf−G/cm2、射出率を10cm3/秒とした。溶融樹脂34の第1のキャビティ部14への射出中の状態を模式的に図13に示す。尚、第1のキャビティ部14内に射出する溶融樹脂34の量を、第1のキャビティ部14内を完全に充填する量とした。
【0082】
射出された溶融樹脂34の圧力に対抗するための抗力を、栓体20及びピストンロッド21の自重によって生成させている。溶融樹脂34の第1のキャビティ部14内への射出によって栓体20に発生する反力はこの抗力よりも大きいので、第1のキャビティ部14内に射出された溶融樹脂34による圧力によって、栓体20は、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って後進端位置に向かっての移動を開始する。即ち、栓体20の先端部20aが第1のキャビティ部14の他端14Bに向かうように、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って栓体20を第1のキャビティ部14内で移動させた。尚、栓体移動手段22に圧縮空気圧力を付与したままとすることによって、栓体移動手段22により射出された溶融樹脂34の圧力に対抗するための抗力を生成させてもよい。そして、栓体移動手段22及び/又は射出された溶融樹脂34の圧力によって、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って栓体20を第1のキャビティ部14の他端14Bまで移動させた後(図14参照)、樹脂を第1のキャビティ部14内で40秒間、冷却、固化させた。その後、第1の金型部10Aと第2の金型部10Bを型開きし、成形品を金型から取り出した。
【0083】
(実施例4)
実施例4は、本発明の第4の態様に係る成形品の射出成形方法に関し、図15に示す金型装置を使用した。以下、図15〜図17を参照して、実施例4の射出成形方法を説明する。尚、実施例4にて使用した金型装置は、加圧流体導入部12が、第1のキャビティ部14の一端近傍に配設されており、加圧流体導入部12の軸線L3は、第1のキャビティ部14の軸線L2と概ね平行である点を除き、実施例3にて使用した金型装置と同じである。尚、実施例4においては、ショートショット法を採用した。
【0084】
実施例4においては、実施例3と同じ樹脂及び賦形物を使用した。また、実施例4における成形品を、実施例3の成形品と同じとした。
【0085】
実施例4においても、先ず、第2のキャビティ部15に賦形物33が収納されるようにキャビティ内に賦形物33を配置した後、即ち、賦形物33を金型にインサートした後、第1の金型部10Aと第2の金型部10Bを型締めする。次いで、栓体20の先端部20aが第1のキャビティ部14の一端14Aの近傍に位置するように栓体移動手段22によって栓体20を保持する(図15参照)。尚、前進端位置にある栓体20の先端部20aを、樹脂導入部111をほぼ塞ぐように位置させた。栓体20の移動時、流体シリンダーから成る栓体移動手段22等における圧力設定値を、実施例1と同様とした。
【0086】
そして、この状態を保持しながら、図示しない加熱シリンダー内で可塑化、溶融、計量した溶融樹脂34を樹脂導入部111から第1のキャビティ部14へ射出した。尚、溶融樹脂34の射出圧力を800kgf−G/cm2、射出率を8cm3/秒とした。また、第1のキャビティ部14内に射出する溶融樹脂34の量を、第1のキャビティ部14内を完全に充填するには少ない量であり、且つ、加圧流体が溶融樹脂34内に導入されたとき、成形品を作製するのに十分な量とした。溶融樹脂34の第1のキャビティ部14への射出中の状態を模式的に図16に示す。射出された溶融樹脂34の圧力に対抗するための抗力を、栓体20及びピストンロッド21の自重によって生成させている。溶融樹脂34の第1のキャビティ部14内への射出によって栓体20に発生する反力はこの抗力よりも大きいので、第1のキャビティ部14内に射出された溶融樹脂34による圧力によって、栓体20は、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って後進端位置に向かっての移動を開始する。即ち、栓体20の先端部20aが第1のキャビティ部14の他端14Bに向かうように、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って栓体20を第1のキャビティ部14内で移動させた。尚、栓体移動手段22に圧縮空気圧力を付与したままとすることによって、栓体移動手段22により射出された溶融樹脂34の圧力に対抗するための抗力を生成させてもよい。
【0087】
そして、栓体20の移動中に、第1のキャビティ部14内の溶融樹脂34内に加圧流体導入部12から加圧流体(実施例4においては、ゲージ圧80kgf/cm2−Gの窒素ガス)を導入した。同時に、ソレノイド40を切り替えて、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って栓体20を第1のキャビティ部14の他端14Bまで移動させた後、樹脂を第1のキャビティ14内で40秒間、冷却、固化させ、以て、第1のキャビティ部14内を占める樹脂内に中空部35を形成した(図17参照)。尚、溶融樹脂34の第1のキャビティ部14内への射出完了から0.1秒後に、加圧流体の導入を開始した。溶融樹脂の冷却、固化中、加圧流体の導入を継続した。その後、中空部35内の窒素ガスを大気中に放出し、第1の金型部10Aと第2の金型部10Bを型開きし、成形品を金型から取り出した。
【0088】
(実施例5)
実施例5は、本発明の第2の態様に係る成形品の射出成形方法に関し、図7に示した本発明の第2の態様に係る金型装置を使用した。尚、実施例5においては、フルショット法を採用した。
【0089】
実施例5においても、実施例1と同じ第1の樹脂及び第2の樹脂を使用した。また、実施例5における成形品を、実施例1の成形品と同じとした。
【0090】
実施例5においても、先ず、第1の金型部10Aと第2の金型部10Bとを型締めする。次いで、栓体20の先端部20aが第1のキャビティ部14の一端14Aの近傍に位置するように栓体移動手段22によって栓体20を保持する。栓体20の移動時、流体シリンダーから成る栓体移動手段22等における圧力設定値を、実施例1と同様とした。尚、栓体20の先端部20aが第1のキャビティ部14の一端14A近傍に位置するように栓体移動手段22によって栓体を保持したとき、第2のキャビティ部15の一部は栓体20の外表面によって構成されている。
【0091】
そして、この状態を保持しながら、加熱シリンダー内で可塑化、溶融、計量した第2の溶融樹脂30を、第2の樹脂導入部13から第2のキャビティ部15内に射出した。尚、第2の溶融樹脂30の射出圧力を800kgf−G/cm2、射出率を8cm3/秒とした。
【0092】
第2の溶融樹脂30の射出完了後(実施例5においては、第2の樹脂を第2のキャビティ部15内で30秒間冷却した後)、加熱シリンダー内で可塑化、溶融、計量した第1の溶融樹脂31を、第1の樹脂導入部11から第1のキャビティ部14へ射出した。尚、第1の溶融樹脂31の射出圧力を800kgf−G/cm2、射出率を8cm3/秒とした。射出された第1の溶融樹脂31の圧力に対抗するための抗力を、栓体20及びピストンロッド21の自重によって生成させている。第1の溶融樹脂31の第1のキャビティ部14内への射出によって栓体20に発生する反力はこの抗力よりも大きいので、第1のキャビティ部14内に射出された第1の溶融樹脂31による圧力によって、栓体20は、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って後進端位置に向かっての移動を開始する。即ち、栓体20の先端部20aが第1のキャビティ部14の他端14Bに向かうように、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って栓体20を第1のキャビティ部14内で移動させた。尚、栓体移動手段22に圧縮空気圧力を付与したままとすることによって、栓体移動手段22により射出された第1の溶融樹脂31の圧力に対抗するための抗力を生成させてもよい。
【0093】
そして、栓体20が後進端位置に達した後、即ち、第1のキャビティ部14内を第1の溶融樹脂31で完全に充填した後、第1のキャビティ部14内の第1の溶融樹脂31内に加圧流体導入部12から加圧流体(実施例5においては、ゲージ圧80kgf/cm2−Gの窒素ガス)を導入した。そして、第1の樹脂を第1のキャビティ14内で40秒間、冷却、固化させ、以て、第1のキャビティ部14内を占める第1の樹脂内に中空部32を形成した。尚、第1の溶融樹脂の冷却、固化中、加圧流体の導入を継続した。その後、中空部32内の窒素ガスを大気中に放出し、第1の金型部10Aと第2の金型部10Bを型開きし、成形品を金型から取り出した。
【0094】
(実施例6)
実施例6は、本発明の第4の態様に係る成形品の射出成形方法に関し、図15に示す金型装置を使用した。尚、実施例6においては、フルショット法を採用した。
【0095】
実施例6においても、実施例3と同じ樹脂及び賦形物を使用した。また、実施例6における成形品を、実施例3の成形品と同じとした。
【0096】
実施例6においても、先ず、第2のキャビティ部15に賦形物33が収納されるようにキャビティ内に賦形物33を配置した後、即ち、賦形物33を金型にインサートした後、第1の金型部10Aと第2の金型部10Bを型締めする。次いで、栓体20の先端部20aが第1のキャビティ部14の一端14Aの近傍に位置するように栓体移動手段22によって栓体20を保持する。尚、前進端位置にある栓体20の先端部20aを、樹脂導入部111をほぼ塞ぐように位置させた。栓体20の移動時、流体シリンダーから成る栓体移動手段22等における圧力設定値を、実施例1と同様とした。
【0097】
そして、この状態を保持しながら、加熱シリンダー内で可塑化、溶融、計量した溶融樹脂34を樹脂導入部111から第1のキャビティ部14へ射出した。尚、溶融樹脂34の射出圧力を800kgf−G/cm2、射出率を8cm3/秒とした。射出された溶融樹脂34の圧力に対抗するための抗力を、栓体20及びピストンロッド21の自重によって生成させている。溶融樹脂34の第1のキャビティ部14内への射出によって栓体20に発生する反力はこの抗力よりも大きいので、第1のキャビティ部14内に射出された溶融樹脂34による圧力によって、栓体20は、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って後進端位置に向かっての移動を開始する。即ち、栓体20の先端部20aが第1のキャビティ部14の他端14Bに向かうように、第1のキャビティ部14の軸線L2に沿って栓体20を第1のキャビティ部14内で移動させた。尚、栓体移動手段22に圧縮空気圧力を付与したままとすることによって、栓体移動手段22により射出された溶融樹脂34の圧力に対抗するための抗力を生成させてもよい。
【0098】
そして、栓体20が後進端位置に達した後、即ち、第1のキャビティ部14内を溶融樹脂34で完全に充填した後、第1のキャビティ部14内の溶融樹脂34内に加圧流体導入部12から加圧流体(実施例6においては、ゲージ圧80kgf/cm2−Gの窒素ガス)を導入した。そして、樹脂を第1のキャビティ14内で40秒間、冷却、固化させ、以て、第1のキャビティ部14内を占める樹脂内に中空部35を形成した。溶融樹脂の冷却、固化中、加圧流体の導入を継続した。その後、中空部35内の窒素ガスを大気中に放出し、第1の金型部10Aと第2の金型部10Bを型開きし、成形品を金型から取り出した。
【0099】
以上、本発明を、発明の実施の形態及び好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の第1の態様及び第2の態様に係る成形品の射出成形方法における、第1のキャビティ部に基づき成形される成形品の部分(部分−1と呼ぶ)の成形方法、及び、第2のキャビティ部に基づき成形される成形品の部分(部分−2と呼ぶ)の成形方法を、以下の表1に纏めた。また、本発明の第3の態様及び第4の態様に係る成形品の射出成形方法における、第1のキャビティ部に基づき成形される成形品の部分(部分−3と呼ぶ)の成形方法を、以下の表1に纏めた。尚、表1中、「通常射出成形」とは、第1のキャビティ部内に射出する第1の溶融樹脂等の量を、成形品を作製するのに十分な量とする、通常の出成形を意味する。また、「フルショット」とはフルショット法を意味し、「ショートショット」とはショートショット法を意味する。
【0100】
[表1]
[本発明の第1の態様に係る射出成形方法]
部分−2 部分−1
通常射出成形 通常射出成形
フルショット 通常射出成形
ショートショット 通常射出成形
[本発明の第2の態様に係る射出成形方法]
部分−2 部分−1
通常射出成形 フルショット
通常射出成形 ショートショット
フルショット フルショット
フルショット ショートショット
ショートショット フルショット
ショートショット ショートショット
[本発明の第3の態様に係る射出成形方法]
賦形物 部分−3
−−− 通常射出成形
[本発明の第4の態様に係る射出成形方法]
賦形物 部分−3
−−− フルショット
−−− ショートショット
【0101】
本発明の第1の態様に係る金型装置の変形例を、図18〜図26に示す。尚、図18〜図26に示す状態は、栓体20が前進端位置に配置された状態を示す。
【0102】
図18に示す金型装置においては、第2のキャビティ部15が複数の区画(図18に示す金型装置においては3つ)に分割されている。そして、各区画に第2の樹脂導入部13が配設されている。
【0103】
例えば、成形品がローラから構成され、ローラの軸部を、中実あるいは中空の棒状の第1の軸部と、第1の軸部の外面を被覆する第2の軸部といった、一種の二重管構造から構成する場合、第1の樹脂から第1の軸部を構成し、第2の樹脂から第2の軸部及びローラ部を構成することができる。このような成形品を成形する場合には、図19に示す金型装置を用いることが好ましい。第2のキャビティ部は、第2の軸部を成形するためのキャビティ部15A及びローラ部を成形するためのキャビティ部15Bから構成されている。キャビティ部15Aは、第1のキャビティ部14と連通し、且つ、キャビティ部15Bとも連通している。
【0104】
尚、図20に示す金型装置においては、図1に示した金型装置と同様の金型装置における栓体移動手段が、発条(スプリング)23から構成されている。
【0105】
また、図21に示す金型装置においては、栓体20が栓体移動手段を兼用しており、栓体20の自重によって射出溶融樹脂の圧力に対抗する抗力を生成させる。
【0106】
また、図22に示す金型装置においては、栓体移動手段22は、ラック24及びピニオンギア25から成るラック・アンド・ピニオン機構から構成されている。尚、ラック24及びピニオンギア25の歯車部分の図示は省略した。ラック24の一端はピストンロッド21に取り付けられている。ピニオンギア25は図示しないモータによって回転させられ、これによって、ラック24に取り付けられたピストンロッド21及び栓体20を移動させることができる。
【0107】
図23に示す金型装置においては、栓体移動手段22は、ラック50及びピニオンギア52から成るラック・アンド・ピニオン機構から構成されている。尚、ラック50及びピニオンギア52の歯車部分の図示は省略した。ラック50の一端はピストンロッド21に取り付けられている。ピニオンギア52は図示しないモータによって回転させられ、これによって、ラック50が取り付けられたピストンロッド21及び栓体20が移動する。このような金型構造によって、円弧形状を有する曲管を作製することができる。
【0108】
金型装置においては、栓体が2以上備えられていてもよい。3つの栓体20A,20B,20Cを備えた金型装置の模式図を図24に示す。尚、図23及び図24において、参照番号10は金型である。
【0109】
図25に示す金型装置においては、図1に示した金型装置において、第1のキャビティ部14に拡大部14Cが設けられており、かかる拡大部14Cは、栓体14によって占められることがない。このような拡大部14Cを設けることによって、例えば、ローラの端部に歯車を有する成形品を成形する場合に、拡大部14Cにおいて歯車を成形することが可能となる。このような拡大部14Cを、本発明の第1若しくは第2の態様に係る全ての金型装置に適用することができる。
【0110】
図26に示す金型装置においては、図1に示した金型装置において、第2の樹脂導入部113の軸線(第2の樹脂導入部113から第2のキャビティ部15内に射出される第2の溶融樹脂の方向)が、第1のキャビティ部14の軸線方向と概ね一致するように、第2の樹脂導入部113が配設されている。尚、このような第2の樹脂導入部113の配置構成を、本発明の第1若しくは第2の態様に係る全ての金型装置に適用することができる。
【0111】
図18〜図26に示した金型装置には、キャビティ内に射出された第1の溶融樹脂等の内部に加圧流体を導入するための加圧流体導入部が更に備えられていてもよい。
【0112】
図18〜図26に示した金型装置を用いることによって、本発明の第1の態様に係る成形品の射出成形方法を実施することができる。また、図18〜図26に示した金型装置に加圧流体導入部が備えられた金型装置を用いることによって、本発明の第2の態様に係る成形品の射出成形方法を実施することができる。更には、図18〜図24に示した金型装置から第2の樹脂導入部13を取り除いた金型装置を用いることによって、本発明の第3の態様に係る成形品の射出成形方法を実施することができる。また、図18〜図26に示した金型装置から第2の樹脂導入部13を取り除き、しかも、加圧流体導入部が備えられた金型装置を用いることによって、本発明の第4の態様に係る成形品の射出成形方法を実施することができる。
【0113】
【発明の効果】
本発明においては、金型装置に栓体が備えられているので、使用する樹脂に影響されることなく、短い安定した成形サイクルにて、優れた外観特性を有し、第1の樹脂から成る部分の所望の表面領域が一定の厚さの第2の樹脂から成る層で一体的に、且つ、高い位置精度、高い厚さ精度にて被覆されて成る樹脂製の成形品を成形することができるし、所望に応じて、第1の樹脂から成る部分に確実に中空部を形成することができる。
【0114】
また、本発明においては、金型装置に栓体が備えられているので、第1のキャビティ部内に射出された第1の溶融樹脂等にジェッティングが発生することを効果的に防止することができ、優れた外観特性を有する成形品を得ることができる。尚、従来の金型装置においては、キャビティの上部に相当する金型の部分に樹脂導入部が設けられている場合、溶融樹脂をキャビティ内に射出するとき、溶融樹脂が重力の影響を受けるが故に、ジェッティングが発生し易い。本発明においては、栓体を使用することで、第1の溶融樹脂等を第1のキャビティ部内に射出するとき、第1のキャビティ部内の第1の溶融樹脂等が重力の影響を受け難くなり、金型装置における樹脂導入部の配置の自由度を高めることができ、金型装置の設計自由度を高くすることができる。
【0115】
また、本発明の第2若しくは第4の態様に係る成形品の射出成形方法により、たとえ、溶融時の粘度の高い第1の溶融樹脂等を使用する場合であっても、所望の中空部の形成を確実に且つ容易に形成することができるし、成形品の外観品質も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の態様に係る金型装置の栓体が後進端に位置するときの模式図である。
【図2】図1に示した本発明の第1の態様に係る金型装置の栓体が前進端に位置するときの模式図である。
【図3】実施例1の成形品の射出成形方法を説明するための金型装置の模式図である。
【図4】図3に引き続き、実施例1の成形品の射出成形方法を説明するための金型装置の模式図である。
【図5】図4に引き続き、実施例1の成形品の射出成形方法を説明するための金型装置の模式図である。
【図6】図5に引き続き、実施例1の成形品の射出成形方法を説明するための金型装置の模式図である。
【図7】本発明の第2の態様に係る金型装置の栓体が後進端に位置するときの模式図である。
【図8】実施例2の成形品の射出成形方法を説明するための金型装置の模式図である。
【図9】図8に引き続き、実施例2の成形品の射出成形方法を説明するための金型装置の模式図である。
【図10】図9に引き続き、実施例2の成形品の射出成形方法を説明するための金型装置の模式図である。
【図11】実施例3の成形品の射出成形方法を説明するための金型装置の模式図である。
【図12】図11に引き続き、実施例3の成形品の射出成形方法を説明するための金型装置の模式図である。
【図13】図12に引き続き、実施例3の成形品の射出成形方法を説明するための金型装置の模式図である。
【図14】図13に引き続き、実施例3の成形品の射出成形方法を説明するための金型装置の模式図である。
【図15】実施例4の成形品の射出成形方法を説明するための金型装置の模式図である。
【図16】図15に引き続き、実施例4の成形品の射出成形方法を説明するための金型装置の模式図である。
【図17】図16に引き続き、実施例4の成形品の射出成形方法を説明するための金型装置の模式図である。
【図18】本発明の金型装置の変形例の模式図である。
【図19】本発明の金型装置の変形例の模式図である。
【図20】本発明の金型装置の変形例の模式図である。
【図21】本発明の金型装置の変形例の模式図である。
【図22】本発明の金型装置の変形例の模式図である。
【図23】本発明の金型装置の変形例の模式図である。
【図24】本発明の金型装置の変形例の模式図である。
【図25】本発明の金型装置の変形例の模式図である。
【図26】本発明の金型装置の変形例の模式図である。
【図27】本発明の第1の態様に係る成形品の射出成形方法における、栓体の移動(摺動)のタイミング、並びに、第1及び第2の溶融樹脂の射出のタイミングを示す模式図である。
【図28】本発明の第2の態様に係る成形品の射出成形方法における、栓体の移動(摺動)のタイミング、第1及び第2の溶融樹脂の射出のタイミング、並びに、加圧流体の導入のタイミングを示す模式図である。
【図29】本発明の第2の態様に係る成形品の射出成形方法における、栓体の移動(摺動)のタイミング、第1及び第2の溶融樹脂の射出のタイミング、並びに、加圧流体の導入のタイミングを示す模式図である。
【図30】本発明の第3の態様に係る成形品の射出成形方法における、栓体の移動(摺動)のタイミング、並びに、溶融樹脂の射出のタイミングを示す模式図である。
【図31】本発明の第4の態様に係る成形品の射出成形方法における、栓体の移動(摺動)のタイミング、溶融樹脂の射出のタイミング、並びに、加圧流体の導入のタイミングを示す模式図である。
【符号の説明】
10・・・・金型
10A・・・第1の金型部
10B・・・第2の金型部
11,111・・・・第1の樹脂導入部
12・・・・加圧流体導入部
13,113・・・・第2の樹脂導入部
14・・・・第1のキャビティ部
14A・・・第1のキャビティ部の一端
14B・・・第1のキャビティ部の他端
15,15A,15B・・・第2のキャビティ部
20・・・・栓体
20a・・・栓体の先端部
21・・・・ピストンロッド
22・・・・栓体移動手段
30・・・・第2の溶融樹脂
31・・・・第1の溶融樹脂
32,35・・・・中空部
33・・・・溶融樹脂
40・・・・ソレノイド
41・・・・圧力制御弁
42・・・・流量制御弁
Claims (17)
- (A)第1の金型部と第2の金型部とから構成され、第1の金型部と第2の金型部とが型締めされた状態で、第1のキャビティ部と、該第1のキャビティ部に連通する第2のキャビティ部とから構成されたキャビティが形成され、成形品の第1の樹脂から成る部分の所望の表面領域が第2の樹脂から成る層で一体的に被覆されるような位置関係に第1のキャビティ部と第2のキャビティ部とが配置された金型、
(B)第1のキャビティ部内に配設され、第1のキャビティ部の軸線に沿って第1のキャビティ部の一端から他端へと移動可能であり、移動によって第1のキャビティ部の容積を徐々に拡大し、第1のキャビティ部内における第1の溶融樹脂の流れを制御する栓体、
(C) 該栓体を移動させるための栓体移動手段、
(D)第1のキャビティ部の一端近傍に配設され、第1のキャビティ部内に第1の溶融樹脂を射出するための第1の樹脂導入部、並びに、
(E)第2のキャビティ部に配設され、第2のキャビティ部内に第2の溶融樹脂を射出するための第2の樹脂導入部、
を備えていることを特徴とする射出成形用の金型装置。 - キャビティ内に射出された第1の溶融樹脂内に加圧流体を導入するための加圧流体導入部を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の金型装置。
- 加圧流体導入部は、第1のキャビティ部の一端近傍に配設されていることを特徴とする請求項2に記載の金型装置。
- 第1の樹脂導入部の軸線は、第1のキャビティ部の軸線と概ね平行であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の金型装置。
- 栓体の先端部が第1のキャビティ部の一端近傍に位置するように栓体移動手段によって栓体を保持したとき、第2のキャビティ部の一部は栓体の外表面によって構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の金型装置。
- (A)第1の金型部と第2の金型部とから構成され、第1の金型部と第2の金型部とが型締めされた状態で、第1のキャビティ部と、該第1のキャビティ部に連通する第2のキャビティ部とから構成されたキャビティが形成され、成形品の第1の樹脂から成る部分の所望の表面領域が第2の樹脂から成る層で一体的に被覆されるような位置関係に第1のキャビティ部と第2のキャビティ部とが配置された金型、
(B)第1のキャビティ部内に配設され、第1のキャビティ部の軸線に沿って第1のキャビティ部の一端から他端へと移動可能な栓体、
(C) 該栓体を移動させるための栓体移動手段、
(D)第1のキャビティ部の一端近傍に配設され、第1のキャビティ部内に第1の溶融樹脂を射出するための第1の樹脂導入部、並びに、
(E)第2のキャビティ部に配設され、第2のキャビティ部内に第2の溶融樹脂を射出するための第2の樹脂導入部、
を備えた射出成形用の金型装置を用いた成形品の射出成形方法であって、
(イ)第1の金型部と第2の金型部とを型締めし、
(ロ)栓体の先端部が第1のキャビティ部の一端近傍に位置するように栓体移動手段によって栓体を保持した状態で、第2の樹脂導入部から第2の溶融樹脂を第2のキャビティ部内に射出し、
(ハ)第2の溶融樹脂の射出完了と同時に若しくは射出完了後、第1の樹脂導入部から第1のキャビティ部へ第1の溶融樹脂を射出し、第1の溶融樹脂の射出開始と同時に若しくは射出開始後、栓体移動手段及び/又は射出された第1の溶融樹脂の圧力によって、栓体の先端部が第1のキャビティ部の他端に向かうように第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部内で移動させ、
(ニ)栓体移動手段及び/又は射出された第1の溶融樹脂の圧力によって、第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部の他端まで移動させた後、樹脂をキャビティ内で冷却、固化させる、
各工程から成ることを特徴とする成形品の射出成形方法。 - 第1の樹脂導入部の軸線は、第1のキャビティ部の軸線と概ね平行であることを特徴とする請求項6に記載の成形品の射出成形方法。
- 栓体の先端部が第1のキャビティ部の一端近傍に位置するように栓体移動手段によって栓体を保持したとき、第2のキャビティ部の一部は栓体の外表面によって構成されることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の成形品の射出成形方法。
- (A)第1の金型部と第2の金型部とから構成され、第1の金型部と第2の金型部とが型締めされた状態で、第1のキャビティ部と、該第1のキャビティ部に連通する第2のキャビティ部とから構成されたキャビティが形成され、成形品の第1の樹脂から成る部分の所望の表面領域が第2の樹脂から成る層で一体的に被覆されるような位置関係に第1のキャビティ部と第2のキャビティ部とが配置された金型、
(B)第1のキャビティ部内に配設され、第1のキャビティ部の軸線に沿って第1のキャビティ部の一端から他端へと移動可能な栓体、
(C) 該栓体を移動させるための栓体移動手段、
(D)第1のキャビティ部の一端近傍に配設され、第1のキャビティ部内に第1の溶融樹脂を射出するための第1の樹脂導入部、
(E)第2のキャビティ部に配設され、第2のキャビティ部内に第2の溶融樹脂を射出するための第2の樹脂導入部、並びに、
(F)第1のキャビティ部内に射出された第1の溶融樹脂内に加圧流体を導入するための加圧流体導入部、
を備えた射出成形用の金型装置を用いた成形品の射出成形方法であって、
(イ)第1の金型部と第2の金型部とを型締めし、
(ロ)栓体の先端部が第1のキャビティ部の一端近傍に位置するように栓体移動手段によって栓体を保持した状態で、第2の樹脂導入部から第2の溶融樹脂を第2のキャビティ部内に射出し、
(ハ)第2の溶融樹脂の射出完了と同時に若しくは射出完了後、第1の樹脂導入部から第1のキャビティ部へ第1の溶融樹脂を射出し、第1の溶融樹脂の射出開始と同時に若しくは射出開始後、栓体移動手段及び/又は射出された第1の溶融樹脂の圧力によって、栓体の先端部が第1のキャビティ部の他端に向かうように第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部内で移動させ、
(ニ)(a)栓体の移動中に、第1のキャビティ部内の第1の溶融樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、更に、栓体移動手段及び/又は射出された第1の溶融樹脂の圧力及び/又は導入された加圧流体の圧力によって、第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部の他端まで移動させた後、あるいは又、(b)第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部の他端まで移動させ、次いで、第1のキャビティ部内の第1の溶融樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入した後、
(ホ)樹脂をキャビティ内で冷却、固化させ、以て、第1のキャビティ部内を占める第1の樹脂内に中空部を形成する、
各工程から成ることを特徴とする成形品の射出成形方法。 - 加圧流体導入部は、第1のキャビティ部の一端近傍に配設されていることを特徴とする請求項9に記載の成形品の射出成形方法。
- 第1の樹脂導入部の軸線は、第1のキャビティ部の軸線と概ね平行であることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の成形品の射出成形方法。
- 栓体の先端部が第1のキャビティ部の一端近傍に位置するように栓体移動手段によって栓体を保持したとき、第2のキャビティ部の一部は栓体の外表面によって構成されることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の成形品の射出成形方法。
- (A)第1の金型部と第2の金型部とから構成され、第1の金型部と第2の金型部とが型締めされた状態で、第1のキャビティ部と、該第1のキャビティ部に連通する第2のキャビティ部とから構成されたキャビティが形成され、成形品の第1の樹脂から成る部分の所望の表面領域が第2の樹脂から成る層で一体的に被覆されるような位置関係に第1のキャビティ部と第2のキャビティ部とが配置された金型、
(B)第1のキャビティ部内に配設され、第1のキャビティ部の軸線に沿って第1のキャビティ部の一端から他端へと移動可能な栓体、
(C) 該栓体を移動させるための栓体移動手段、並びに、
(D)第1のキャビティ部の一端近傍に配設され、第1のキャビティ部内に溶融樹脂を射出するための樹脂導入部、
を備えた射出成形用の金型装置を用いた成形品の射出成形方法であって、
(イ)第2のキャビティ部に賦形物が収納されるようにキャビティ内に賦形物を配置した後、第1の金型部と第2の金型部を型締めし、
(ロ)栓体の先端部が第1のキャビティ部の一端近傍に位置するように栓体移動手段によって栓体を保持した状態で、樹脂導入部から第1のキャビティ部へ溶融樹脂を射出し、
(ハ)樹脂導入部からの第1のキャビティ部への溶融樹脂の射出開始と同時に若しくは射出開始後、栓体移動手段及び/又は射出された溶融樹脂の圧力によって、栓体の先端部が第1のキャビティ部の他端に向かうように第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部内で移動させ、
(ニ)栓体移動手段及び/又は射出された溶融樹脂の圧力によって、第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部の他端まで移動させた後、樹脂を第1のキャビティ部内で冷却、固化させる、
各工程から成ることを特徴とする成形品の射出成形方法。 - 樹脂導入部の軸線は、第1のキャビティ部の軸線と概ね平行であることを特徴とする請求項13に記載の成形品の射出成形方法。
- (A)第1の金型部と第2の金型部とから構成され、第1の金型部と第2の金型部とが型締めされた状態で、第1のキャビティ部と、該第1のキャビティ部に連通する第2のキャビティ部とから構成されたキャビティが形成され、成形品の第1の樹脂から成る部分の所望の表面領域が第2の樹脂から成る層で一体的に被覆されるような位置関係に第1のキャビティ部と第2のキャビティ部とが配置された金型、
(B)第1のキャビティ部内に配設され、第1のキャビティ部の軸線に沿って第1のキャビティ部の一端から他端へと移動可能な栓体、
(C) 該栓体を移動させるための栓体移動手段、
(D)第1のキャビティ部の一端近傍に配設され、第1のキャビティ部内に溶融樹脂を射出するための樹脂導入部、並びに、
(E)第1のキャビティ部内に射出された溶融樹脂内に加圧流体を導入するための加圧流体導入部、
を備えた射出成形用の金型装置を用いた成形品の射出成形方法であって、
(イ)第2のキャビティ部に賦形物が収納されるようにキャビティ内に賦形物を配置した後、第1の金型部と第2の金型部を型締めし、
(ロ)栓体の先端部が第1のキャビティ部の一端近傍に位置するように栓体移動手段によって栓体を保持した状態で、樹脂導入部から第1のキャビティ部へ溶融樹脂を射出し、
(ハ)樹脂導入部からの第1のキャビティ部への溶融樹脂の射出開始と同時に若しくは射出開始後、栓体移動手段及び/又は射出された溶融樹脂の圧力によって、栓体の先端部が第1のキャビティ部の他端に向かうように第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部内で移動させ、
(ニ)(a)栓体の移動中に、第1のキャビティ部内の溶融樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入し、更に、栓体移動手段及び/又は射出された溶融樹脂の圧力及び/又は導入された加圧流体の圧力によって、第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部の他端まで移動させた後、あるいは又、(b)第1のキャビティ部の軸線に沿って栓体を第1のキャビティ部の他端まで移動させ、次いで、第1のキャビティ部内の溶融樹脂内に加圧流体導入部から加圧流体を導入した後、
(ホ)樹脂を第1のキャビティ部内で冷却、固化させ、以て、第1のキャビティ部内を占める樹脂内に中空部を形成する、
各工程から成ることを特徴とする成形品の射出成形方法。 - 加圧流体導入部は、第1のキャビティ部の一端近傍に配設されていることを特徴とする請求項15に記載の成形品の射出成形方法。
- 樹脂導入部の軸線は、第1のキャビティ部の軸線と概ね平行であることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の成形品の射出成形方法。
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