JP3856437B2 - バイオセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する分野】
本発明は、試料中の特定成分、特にグルコース、総コレステロールを迅速、高感度かつ簡便に定量することができるバイオセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のバイオセンサの一例として代表的なグルコースセンサは、絶縁性基板上にスクリーン印刷などの方法により、少なくとも測定極および対極を含む電極系を形成し、この電極系上に、親水性高分子、酸化還元酵素および電子メディエータを含む酵素反応層を形成して得られる。酸化還元酵素としてはグルコースオキシダーゼなどが用いられ、電子メディエータとしてはフェリシアン化カリウムなどの金属錯体またはフェロセン誘導体もしくはキノン誘導体などの有機化合物が用いられる。さらに酵素反応層には、必要に応じて緩衝剤が加えられる。
そして、得られたバイオセンサの酵素反応層上に基質を含む試料液を滴下すると、酵素反応層が溶解して酵素と基質が反応し、この反応に伴って電子メディエータが還元される。酵素反応終了後、還元された電子メディエータを電気化学的に酸化し、その酸化電流値から試料液中の基質濃度を求めることができるのである。例えば、酵素反応の結果生じた電子メディエータの還元体を電極で酸化し、その酸化電流値からグルコース濃度を求めることができる。
【0003】
このようなバイオセンサは、測定対象物質を基質とする酵素を用いることで、様々な物質を測定することが原理的には可能である。例えば、酸化還元酵素にコレステロールオキシダーゼまたはコレステロールデヒドロゲナーゼを用いれば、各種医療機関で診断指針に用いられる血清中のコレステロール値を測定することができる。
この場合、コレステロールエステラーゼの酵素反応の進行は非常に遅いので、適切な界面活性剤を添加することにより、コレステロールエステラーゼの活性を向上させ、全体の反応に要する時間を短縮することができるが、反応系に含まれる界面活性剤が血球に悪影響を及ぼすため、グルコースセンサのように全血そのものを測定することは不可能である。
【0004】
これに対し、血球をろ過した血漿のみを迅速にセンサ内(試料液供給路)に供給するために、試料液供給路の開口部付近にフィルタ(血球ろ過部)を設けることが提案されている。図5に示したフィルタ装置を用い、血球を分離する方法は下記のように3つに分類できる。図5は、従来からの3種類のフィルタの概略断面図を示す。
▲1▼血液(全血)をフィルタの一次側部分の側端部に滴下し、水平方向においてろ過し、フィルタの二次側部分の端部から血漿をにじみ出させる水平分離(Lateral Separation)方式(図5の(a))。
▲2▼血液をフィルタの上表面に直接滴下し、垂直方向においてろ過し、前記フィルタの底面またはその付近の端部から血漿をにじみ出させる垂直分離(Vertical Separation)方式(図5の(b))。
▲3▼血液をフィルタの一次側部分の上表面の一部に直接滴下して、垂直方向においてろ過するとともに水平方向においてもろ過し、フィルタの二次側部分の端部から血漿がにじみ出させる複合分離(Combination)方式(図5の(c))。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、フィルタが適していないと、フィルタ内に捕捉される血球が破壊され、ヘモグロビンが溶出してしまう。ヘモグロビン程度の小さい血球成分をフィルタでろ過することは困難であり、試料液供給路内にヘモグロビンが流入し、測定誤差の原因となってしまう。このような問題を解決するために、改善された水平分離方式(例えば、特願2000−236131号、特願2000−399056号および特願2001-152868号各明細書)および垂直分離方式(例えば、特願2001−180362号明細書)がある。
しかし、水平分離方式の場合、特にセンサ構造が複雑になるという問題があり、共通の問題として、しばしば血球混入による測定誤差が生じるという問題があった。これは、従来のガラス繊維ろ紙(デプスフィルタ)の留保比率がその特性上98%であるため、2%分が流出してしまうからである。さらに、いくらセンサ体積を小さくしても、全血が厚いガラス繊維ろ紙(例えば厚み200〜800μm)で構成されるフィルタに吸収され、サンプル量の低減に限界があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような不都合をなくし、血球が混入することなく、ろ過された血漿を圧力なしに毛細管現象によって試料液供給路へ移動させ、空気孔でろ液が止まるように改良したバイオセンサを提供することを目的とする。
また、本発明は、高精度で応答性に優れ、全血を試料として用いてグルコースまたは総コレステロールを測定対象とするバイオセンサを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、特に指先穿刺による採血での測定の場合、指先の全血を効率的にセンサに擦り付けたりすることが容易であり、測定対象である血漿を迅速に電極系へ供給することができるバイオセンサを得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、絶縁性基板、前記基板上に設けられた測定極と対極を有する電極系、少なくとも酸化還元酵素と電子メディエータを含む反応層、前記基板に接して前記反応層を含みかつ終端部に空気孔を有する試料液供給路、試料液を導入するための試料液滴下部、ならびに前記試料液供給路内に侵入せず前記試料液供給路および試料液滴下部の間に設けられかつ前記基板に対して垂直方向において前記試料液をろ過するフィルタを具備し、ろ液が毛細管現象によって前記試料液供給路内に吸引され、前記試料液供給路の開口部から前記空気孔に向かって前記基板に対して水平方向に通過するバイオセンサであって、前記フィルタが、スクリーンフィルタで構成され、前記フィルタの前記基板と対向する面が前記電極系と非接触であることを特徴とするバイオセンサに関する。
前記バイオセンサは、前記フィルタと前記絶縁性基板との間が親水処理されているのが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
上記のように、本発明は、絶縁性基板、前記基板上に設けられた測定極と対極を有する電極系、少なくとも酸化還元酵素と電子メディエータを含む反応層、前記基板に接して前記反応層を含みかつ終端部に空気孔を有する試料液供給路、試料液を導入するための試料液滴下部、および前記試料液供給路内に侵入せず前記試料液供給路および試料液滴下部の間に設けられかつ垂直方向において前記試料液をろ過するフィルタを具備し、ろ液が毛細管現象によって前記試料液供給路内に吸引され、前記試料液供給路の開口部から前記空気孔に向かって水平方向に通過するバイオセンサであって、前記フィルタが、孔径が均一で変形のない連続したスクリーンフィルタで構成され、前記フィルタの下部が前記電極系と非接触であることを特徴とする。このスクリーンフィルタはメンブレンフィルタであるのが好ましい。メンブレンフィルタを構成する材料としては、例えばポリエステル、ポリカーボネート、ニトロセルロースなどが挙げられる。
【0009】
このようなメンブレンフィルタを用いることにより、得られるバイオセンサの構造を簡素化し、血球混入による測定誤差を防止し、さらにサンプル量を低減することが可能である。
また、本発明のバイオセンサにおいては、血球分離方法として垂直分離方式を用いる。前記フィルタは、連続均等質な内部構造、均一な孔径および規則的な内部流路を有するメンブレンフィルタで構成されるため、100%の捕捉率を発揮する。
前記フィルタとしてガラス繊維ろ紙を用いた場合は、フィルタ内部で試料液がろ過されフィルタ自体に試料液がかなり吸収されることから、多量の試料液が必要とされる。これに対し、メンブレンフィルタを用いた場合は、フィルタ表面で試料液がろ過されることから、フィルタ自体に試料液が吸収されることはなく、用いる試料液の量を低減することができる。
【0010】
また、本発明に係るバイオセンサにおいては、前記フィルタと前記基板との間に親水性層を設けるのが好ましい。
試料液として全血を用いた場合、ろ過によって前記フィルタの二次側部分からにじみ出た血漿は、毛細管現象によってこの親水性層を介して基板上に展開し、さらに前記電極系が施されている方向へ移動する。
そして、血漿は試料液供給路の開口部から当該試料液供給路内に浸入し、空気孔までの試料液供給路内全体を満たす。
【0011】
前記親水性層を構成する親水性高分子としては、例えばエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アガロース、ポリアクリル酸およびその塩、デンプンおよびその誘導体、無水マレイン酸の重合体およびその塩、ポリアクリルアミド、メタクリレート樹脂、およびポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどがあげられる。
また、特願2001−180362号明細書記載のバイオセンサの構造と同様に、前記フィルタが前記試料液供給路内に侵入していないことから、前記フィルタは前記基板に接触してはいるが電極系とは接触していない。そのため、前記フィルタと電極系との接触による測定誤差が生じることがなく、安定したセンサ精度を実現することができる。
【0012】
本発明において用いる電子メディエータとしては、フェリシアン化カリウムの他、コレステロールオキシダーゼなどの酸化還元酵素との電子伝達能を有するレドックス化合物から選択することができる。
酸化還元酵素は、測定対象物を基質とする酵素であり、グルコースを測定対象物とするセンサでは、グルコースオキシダーゼを用いる。診断指針に用いられる血清中のコレステロール値を測定するためには、コレステロールの酸化反応を触媒する酵素コレステロールオキシダーゼまたはコレステロールデヒドロゲナーゼとコレステロールエステルをコレステロールに変化させる過程を触媒する酵素コレステロールエステラーゼとを用いる。コレステロールエステラーゼの酵素反応の進行は非常に遅いため、適切な界面活性剤を添加することにより、コレステロールエステラーゼの活性を向上させ、全体の反応に要する時間を短縮することができる。
電子メディエータおよび酸化還元酵素などの試薬を含む反応層は、センサ内の電極系上またはその近傍の位置に配置する。また、電極系を設けた絶縁性基板と、絶縁性基板との間に電極系に試料液を供給するための試料液供給路を形成するカバー部材とを組み合わせる。
【0013】
本発明に係るバイオセンサにおいては、前記反応層を、前記試料液供給路に露出する部分や試料液供給路の開口部などのいずれの位置に配置してもよい。すなわち、前記反応層は、試料液供給路内であれば絶縁性基板およびカバー部材のいずれに設けてもよい。いずれの位置であっても、導入された試料液によって前記反応層が容易に溶解して電極系に到達できることが好ましい。また、電極系を保護し、形成される反応層の剥離を抑制するために、電極系上に接して親水性高分子層を形成してもよい。
電子メディエータを含む層は、その溶解性を高めるために界面活性剤と分離させることが好ましく、また、保存安定性のために、コレステロールの酸化反応を触媒する酵素コレステロールオキシダーゼおよびコレステロールエステラーゼと分離させることが好ましい。
血糖値を測定するバイオセンサでは、試料液が反応層へ導入されるのを容易にするため、電極系上に形成された層などを被覆するように、脂質を含む層を形成する例がある(例えば、特開平2−062952号公報)。
【0014】
本発明のコレステロールを測定するバイオセンサでは、反応層の一部を凍結乾燥法により形成するか(特願2000−018834号明細書)、カバー部材の表面を界面活性剤またはプラズマ照射などにより親水処理するのが好ましい。このような構成を採ると脂質層は設けなくてもよい。
親水性高分子としては、例えばエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アガロース、ポリアクリル酸およびその塩、デンプンおよびその誘導体、無水マレイン酸の重合体およびその塩、ポリアクリルアミド、メタクリレート樹脂、およびポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどがあげられる。
【0015】
界面活性剤としては、本発明の効果を損なわないものであればよく、例えばn−オクチル−β−D−チオグルコシド、ポリエチレングリコールモノドデシルエーテル、コール酸ナトリウム、ドデシル−β−マルトシド、ジュークロースモノラウレート、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、N,N−ビス(3−D−グルコンアミドプロピル)デオキシコールアミドおよびポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルなどがあげられる。
脂質を使用する場合、例えばレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質を用いるのが好ましく、特に両親媒性脂質を用いるのが好適である。
また、酸化電流の測定方法としては、測定極および対極のみを用いる二電極方式と、これらの電極および参照極を用いる三電極方式とがある。なかでも、三電極方式を用いるほうがより正確な測定が可能である。
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明をより具体的に説明する。
図1に、本発明の好ましい実施の形態に係るバイオセンサの分解斜視図である。また、図2は図1に示すバイオセンサの合体斜視図であり、図3は、図2に示すバイオセンサの反応層などを省略したX−X線縦断面図である。
図1に示すように、本発明のバイオセンサは、絶縁性基板1、スペーサー5、カバー9、両面テープ12、フィルタ14および試料液滴下部16で構成される。
絶縁性基板1は、例えばポリエチレンテレフタレートなどの絶縁性樹脂で構成されている。また、図1に示すように、絶縁性基板1の左側上面には、パラジウム部分がスパッタ法または蒸着法などによって形成し、レーザートリミングにより作用極2および対極3を含む電極系が形成されている。
さらに、絶縁性基板1には空気孔4が形成されており、電極系の面積は、後述するスペーサー5上に形成されるスリット8の幅により決定される。また、フィルタ14と接触する絶縁性基板1の右端部分20は、後述するように親水処理が施されている。
【0017】
絶縁性基板1に組み合わせるスペーサー5には、得られるバイオセンサにおいて試料液供給路を形成するスリット8、スリット8の開口部7およびフィルタ14を収納する孔6が形成されている。
また、カバー9には、フィルタ14を収納する孔10と空気孔11が形成されている。この空気孔11は、カバー9、スペーサー5および絶縁性基板1を組み合わせたときに、試料液供給路を介して絶縁性基板1に形成されている空気孔4と連通する。
カバー9の上面に配される両面テープ12には、フィルタ14を収納するための孔13が形成されている。ここで用いる両面テープとしては、試料液滴下部16との間でフィルタ14を保持しつつ、試料液滴下部16とカバー9を接合できるものであればよい。したがって、両面テープのほか、両面に接着層を有する板状体を用いてもよい。
また、試料液滴下部16にはフィルタ14に通じる孔17が形成されている。
【0018】
上述の絶縁性基板1、スペーサー5、カバー9および両面テープ12を一体化した際には、スリット8に連なる孔6、カバー9に形成されている孔10および両面テープ12に形成されている孔13が連通する。また、上述したように絶縁性基板1に形成されている空気孔4とカバー9に形成されている空気孔11が連通する。
血球を分離するためのフィルタ14はメンブレンフィルタで構成され、フィルタ14の有する孔のサイズは、血球が通過しない程度でよい(例えば5μm)。
また、フィルタ14は、本発明に係るバイオセンサを組み立てる前においては例えば直径5mmの円形状を有するが、組立直前にくぼみ15を形成し、組立後のバイオセンサにおいては、図3に示すように、上部に開口部および鍔状の周縁部を有する略円筒形状を有するようにフィルタ14を配置する。
【0019】
このバイオセンサを組み立てるには、まず後述するように絶縁性基板1の必要に応じて所定の部分に反応層19aを形成する。また、図1に示すように絶縁性基板1、カバー9およびスペーサー5の右端を一致させて組み合わせて合体基板Aを得、スリット8により形成される凹状部分である試料液供給路8’(図3参照)において、後述のように所定の部材に反応層19bを形成する。
その後、合体基板Aと両面テープ12とをこれらの右端を一致させて組み合わせて合体基板Bを作製し、連通した孔6、孔10および孔13の真上に、フィルタ14を設置する。
フィルタ14と両面テープ部12とを接着する際、例えばフィルタにキズをつけにくい発砲スチロールなどからなる円柱状の棒を用いて、前もってフィルタ14の中央部分を軽く押してくぼみ15を形成する。そして、棒で押さえながら孔からはみ出た周縁部15’(図3参照)を両面テープ12に接着させ、周縁部15’の全体が両面テープ12に接着した後に棒をはずす。
最後に、試料液滴下部16を設置する。試料液滴下部16の孔17は、フィルタ14のくぼみ15に通じている。
【0020】
図3の断面図に示すように、本発明に係るバイオセンサにおいて試料液として全血を用いる場合に妨害物質である血球を完全に除去するためには、試料液がフィルタ14を必ず通過するようにしなければならない。そして、ろ過された血漿を迅速に吸引し、試料液供給路8’へ迅速に供給するために、フィルタ14は試料液供給路8’の開口部7付近に設ける必要があるが、試料液供給路8’内に浸入させてはならない。
図2では反応層および電極系を省略したが、図4に、反応層および電極系を表した図3に対応する部分拡大図面を示す。基板1の電極2および3上に、親水性高分子の層18および反応層19aが形成されている。また、試料液供給路の天井に相当するカバー9の下面には反応層19bが形成されている。
なお、図1〜4に示すバイオセンサは、その構造をわかりやすくするために5種類の部材を用いて作製されるものであるが、スペーサー5とカバー9との合体基板Aを単一の部材で構成してもよい。
【0021】
つぎに、図1〜4に示すバイオセンサを用いて血液中の基質(例えばコレステロール)を測定するためには、試料液である血液を試料液滴下部16の孔17に滴下する。ここに滴下された血液のうち血球のみが、フィルタ14の一次側部分の上表面で捕捉され、二次側部分の下表面から血漿のみがにじみ出てくる。にじみ出てきた血漿は、開口部7から試料液供給路8’内に侵入し、電極系を覆う位置および/またはカバー9の裏面に担持された反応層を溶解しながら試料液供給路8’内を満たす。
すなわち、フィルタ14からしみ出した血漿は、電極近傍からさらに空気孔4および11の部分までの試料液供給路8’全体を満たす。試料液供給路8’全体が液体で満たされると、フィルタ14の液体の流動も停止する。
このような血球ろ過の過程を経て、血漿により溶解された反応層と血漿中の測定成分(例えばコレステロール)との化学反応が生じ、一定時間経過後、電極反応により電流値を測定し、血漿中の成分を定量することができる。
【0022】
ここで、図4は、試料液供給路8’の電極系近傍における反応層、およびフィルタ14と絶縁性基板1との界面に設けられた親水性層の配置の例を示す縦断面図である。
絶縁性基板1の電極系上には、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(以下、単に「CMC」と表す)などの親水性高分子を含む親水性層18、および例えば電子メディエータなどの反応試薬を含む反応層19aが形成されている。また、カバー9とスペーサー5を組み合わせて得られた合体基板Aにおいて、試料液供給路8’に露出するカバー9の面には、酸化還元反応酵素を含む反応層19bが形成されている。絶縁性基板1の右端、すなわち絶縁性基板1とフィルタ14とがの接触する部分には、CMCなどの親水性高分子を含む親水性層20が形成されている。
【0023】
前記電極系は、貴金属電極であることが好ましい。前記試料液供給路8’の幅は、2mm以下であるのが好ましいため、スクリーンを用いた印刷電極では電極面積を決定する精度が劣る。これに対し、貴金属電極を用いる場合は、0.1mm幅でレーザートリミングすることが可能であり、電極面積を決定する精度が高い。
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0024】
【実施例】
《実施例1》
図1〜4に示す構造を有し、測定対象をそれぞれ総コレステロールおよびLDLコレステロールとするバイオセンサ1および2を作製した。反応層19aには電子メディエータが含め、反応層19bにはコレステロールオキシダーゼ、コレステロールエステラーゼおよび界面活性剤を含めた。
まず、絶縁性基板1の電極系上およびフィルタ14と接触する面上に、それぞれCMCの0.5wt%水溶液を滴下し、50℃の温風乾燥機中で10分間乾燥させることによりCMC層18および親水性層20を形成した。
つぎに、フェリシアン化カリウム水溶液4μl(フェリシアン化カリウム70mM相当)をCMC層18上に滴下し、50℃の温風乾燥機中で10分間乾燥させることにより、フェリシアン化カリウムを含む反応層19aを形成した。
【0025】
ノカルジア由来のコレステロールオキシダーゼ(EC1.1.3.6:ChOD)とシュードモナス由来のコレステロールエステラーゼ(EC.3.1.1.13:ChE)を溶解した水溶液に、界面活性剤であるポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(TritonX−100)を添加した。得られた混合液0.4μlを、カバー9の試料液供給路8’に露出する部分に滴下し、−196℃の液体窒素にて予備凍結させた後、凍結乾燥機で2時間乾燥させることにより、450U/mlコレステロールオキシダーゼ、1125U/mlコレステロールエステラーゼおよび2wt%界面活性剤(HLB値が13〜15である例えば(株)花王製のエマルゲンB66または陽イオン界面活性剤)を含む反応層19bを形成した(総コレステロールを測定対象とするバイオセンサ1)。
【0026】
ここで、フィルタ14としては、Whatman社製のサイクロポアメンブレン(孔径5.0μm、厚み7.0〜23μm)、CORNING社製のヘマフィルメンブレン(孔径4.7〜5.0μm、厚み11μm)またはMILLIPORE社製のアイソポア(孔径5.0μm、厚み10μm)を、直径5mmの円形に打ち抜いたものを用いた。このメンブレンは、均一な孔径および規則的な内部流路を有する連続的に等質なフィルタであり、5μmの孔径を有した。
この後、図1に示す位置関係に基づいて、合体基板Aと合体基板Bとをこれらの右端を一致させて組み合わせ、さらにフィルタ14を接着することにより、図1〜4に示す構造を有するバイオセンサ1および2を作製した。
【0027】
[評価]
得られたバイオセンサ1および2に、試料液として全血5μlを試料液添加部となる孔17に添加し、150秒後に対極を基準にして測定極にアノード方向へ+0.2Vのパルス電圧を印加し、5秒後に作用極と対極との間に流れる電流値を測定した。その結果を図6および7に示した。図6は、試料液中の総コレステロールの濃度と電流の応答値との関係を示すグラフである。
図から明らかなように、本発明に係るバイオセンサ1および2によれば、総コレステロール濃度と応答値との間に良好な直線性が得られる。
【0028】
《実施例2》
本実施例においては、図1〜4に示す構造を有し測定対象をグルコースとするバイオセンサを作製した。反応層19aには電子メディエータおよびグルコースオキシダーゼを含めた。なお、グルコースセンサの場合、反応層19bを形成しなかった。
まず、実施例1と同様にしてCMC層18および親水性層20を形成した。また、50mMフェリシアン化カリウム、および250U/mlグルコースオキシダーゼを含む水溶液をCMC層18上に4μl滴下し、50℃の温風乾燥機中で10分間乾燥させることにより反応層19aを形成した。
その他は実施例1と同様にして、グルコースを測定対象とする本発明に係るバイオセンサ3を作製した。
【0029】
[評価]
得られたバイオセンサ3に、試料液として全血5μlを試料液添加部となる孔17に添加し、25秒後に対極を基準にして測定極にアノード方向へ+0.2Vのパルス電圧を印加し、5秒後に作用極と対極との間に流れる電流値を測定した。その結果を図7に示した。図7は、試料液中のグルコースの濃度と電流の応答値との関係を示すグラフである。
図7から明らかなように、本発明に係るバイオセンサ3によれば、グルコース濃度と応答値との間に良好な直線性が得られる。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、指先穿刺による採血での測定の場合、指先の全血を効率的にセンサに擦り付けたりすることが容易であり、妨害物質である血球をフィルタにより溶血することなく除去し、迅速に電極系へろ液を供給することができる。従って、応答特性に優れた電気化学的バイオセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るバイオセンサの分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るバイオセンサの合体斜視図である。
【図3】図2に示したバイオセンサの反応層などを省略したX−X線縦断面図である。
【図4】図3に示したバイオセンサの反応層などの配置例を示す電極系付近の拡大断面図である。
【図5】血球を分離するメカニズムを説明するためのフィルタ装置の概略断面図である。
【図6】試料液中の総コレステロールの濃度と電流の応答値との関係を示すグラフである。
【図7】試料液中のグルコースの濃度と電流の応答値との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 絶縁性基板
2 作用極
3 対極
4 空気孔
5 スペーサー
6 孔
7 開口部
8 スリット
8’ 試料液供給路
9 カバー
10 孔
11 空気孔
12 両面テープ
13 孔
14 フィルタ
15 くぼみ
15’周縁部
16 試料液滴下部
17 孔
18 親水性層
19a 反応層
19b 反応層
20 親水性層
Claims (2)
- 絶縁性基板、前記基板上に設けられた測定極と対極を有する電極系、少なくとも酸化還元酵素と電子メディエータを含む反応層、前記基板に接して前記反応層を含みかつ終端部に空気孔を有する試料液供給路、試料液を導入するための試料液滴下部、ならびに前記試料液供給路内に侵入せず前記試料液供給路および試料液滴下部の間に設けられかつ前記基板に対して垂直方向において前記試料液をろ過するフィルタを具備し、ろ液が毛細管現象によって前記試料液供給路内に吸引され、前記試料液供給路の開口部から前記空気孔に向かって前記基板に対して水平方向に通過するバイオセンサであって、
前記フィルタが、スクリーンフィルタで構成され、前記フィルタの前記基板と対向する面が前記電極系と非接触であることを特徴とするバイオセンサ。 - 前記フィルタと前記絶縁性基板との間が親水処理されていることを特徴とする請求項1記載のバイオセンサ。
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