JP4100196B2 - バイオセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液、血清、血漿などの被検試料中の特定成分を定量することができるバイオセンサ、特にコレステロールセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のバイオセンサの一例として、グルコースセンサについて説明する。
【0003】
代表的なものとして、絶縁性の基板上にスクリーン印刷等の方法により、少なくとも作用極及び対極を含む電極系を形成し、この電極系上に、親水性高分子、酸化還元酵素及び電子メディエータを含む反応試薬層を形成したものがある。酸化還元酵素にはグルコースオキシダーゼが、また電子メディエータにはフェリシアン化カリウム、フェロセン誘導体、キノン誘導体などの金属錯体や有機化合物などがそれぞれ用いられる。反応試薬層には、必要に応じて緩衝剤が加えられる。
【0004】
このバイオセンサの反応試薬層上に、基質を含む試料液を滴下すると、反応試薬層が溶解して、酵素と基質が反応し、この反応に伴い電子メディエータが還元される。このタイプのグルコースセンサでは、酵素反応の結果生じた電子メディエータの還元体を作用極で酸化し、その酸化電流値からグルコース濃度を求めることができる。
【0005】
このようなバイオセンサは、測定対象物質を基質とする酵素を用いることで、様々な物質に対する測定が原理的に可能である。例えば、酸化還元酵素にコレステロールオキシダーゼまたはコレステロールデヒドロゲナーゼを用い、更に、コレステロールエステルをコレステロールに変化させるためにコレステロールエステラーゼを用いれば、各種医療機関で診断指針に用いられる血清中のコレステロール値を測定することができる。
【0006】
コレステロールエステラーゼの酵素反応の進行は非常に遅いので、適切な界面活性剤を添加することにより、コレステロールエステラーゼの活性を向上させ、全体の反応に要する時間を短縮することができる。
【0007】
しかし、反応系に界面活性剤が含まれることから、界面活性剤が血球に悪影響を及ぼすため、グルコースセンサのように全血そのものを測定することは困難である。
【0008】
そこで、血球をろ過した血漿のみを迅速にセンサ内(試料液供給路)に供給するために、試料液供給路の開口部である入口付近にフィルタ(血球ろ過部)を設ける提案がなされている。図6に、血液を分離するメカニズムを説明するためのフィルタの概略断面図を示す。
【0009】
血球を分離する方法としては、図6の(a)に示すように、▲1▼血液をフィルタの試料液供給部側端部、すなわち一次側部分の端部に滴下して、水平方向において濾過し、フィルタのろ過試料液が漏出する側の端部、すなわち二次側部分の端部から血漿をにじみ出させる水平分離(Lateral Separation)方式、図6の(b)に示すように、▲2▼血液をフィルタの一次側部分の上部表面に直接滴下して、垂直方向において濾過し、前記フィルタの二次側部分の底面またはその付近の端部から血漿をにじみ出させる垂直分離(Vertical Separation)方式、及び図6の(c)に示すように、▲3▼血液をフィルタの一次側部分の上部表面に直接滴下して、垂直方向において濾過するとともに水平方向においても濾過し、フィルタの二次側部分の端部から血漿がにじみ出る複合分離(Combination)方式の3種類がある。従来から多く用いられている例は、水平分離(例えば、特許文献1参照)または複合分離(例えば、特許文献2参照)である。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−202283号公報
【特許文献2】
特開2002−340839号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
水平分離方式を用いる場合、フィルタによるろ過距離を長くとることが可能であるが、ろ過に長時間を要していた。また、フィルタへの試料液の浸潤、及びろ過後の試料液の試料液供給路への導出の駆動力を、主に試料液供給路側の濡れ性に依拠しているので、フィルタへの逆流の防止のため、試料液供給路にろ過試料液が満たされた後にもフィルタの一次側端部に充分量の試料液が残留している必要がある。従って、試料液供給量に対するろ過後の試料液(ろ過試料液)量の割合が比較的小さく、したがって多量の試料液が必要であった。
【0012】
複合分離方式の場合、一次側端部における試料液との接触面積の増加と、一次側端部からの試料液の浸潤方向が重力方向であることによる浸潤性の向上により、水平分離方式に比べて、試料液供給量に対するろ過試料液量の割合が大きく、必要な試料液量は少ない。しかし、複合分離方式の場合にも、フィルタによるろ過距離が長いことから、ろ過に長時間を要していた。
【0013】
これに対し、垂直方向に分離可能なフィルタを用いた、垂直分離方式では、試料液のフィルタへの浸潤に重力の効果を期待できる。また、試料液供給部側端部、すなわち一次側端部における試料液との接触部分の面積を多くとることができ、更にろ過試料液が漏出する側の端部、すなわち二次側端部の面積も多くとることができる。これらの効果により一次側端部への試料液供給量に対するろ過試料液量の割合は、水平分離方式、複合分離方式と比して大きくなることが期待できる。さらに、フィルタによるろ過距離が短いことから、ろ過時間の短縮が期待できる。
【0014】
しかし、電極系を用いて試料液中の対象物質の濃度を計測する電気化学バイオセンサにおいては、フィルタと電極部分が接触すると、電極における電気化学反応の反応性が低下するおそれのあることから、フィルタと電極系が直接接触しない配置が求められる。そこで、垂直分離方式のフィルタ配置を電気化学バイオセンサに適用する場合、フィルタと電極系の接触を防ぐために、(1)フィルタの二次側端部を電極系が設けられている基板と離した構成とするか、(2)フィルタの下面部分(二次側端部)を電極系が設けられている基板上であって電極系とは離れた部分に接触させ、電極系につながる試料液供給路の入口を、フィルタの側面に接触させる構成とすることが考えられる。しかし、(1)の構成をとる場合、フィルタの二次側端部であるフィルタ下面部分と基板との距離が大きすぎると、二次側端部に漏出したろ過試料液が基板には接触せず、結果的に試料液供給路にろ過試料液が導入され得ないことが懸念される。また、(2)の構成の場合、フィルタ側面のうち底面に近い部分に電極系への試料液供給路の入口を接触させるので、試料液供給路の入口から電極系に導かれる液体に、試料液中の固形成分が混入しないようにするため、フィルタ下面からしみ出したろ過試料液を電極系に導く場合より、フィルタの上面に近い位置で試料中の固形成分が捕集されている必要がある。従って、フィルタ下面からしみ出したろ過試料液を電極系に導く場合よりも、厚いフィルタが必要であり、試料量が多く必要になる。
【0015】
本発明は、電気化学バイオセンサに垂直分離方式のフィルタ配置を組み合わせる場合に生じる不都合をなくし、試料液中の固形成分が十分にろ過され、ろ過試料液が迅速に電極系に達することができるバイオセンサを提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記従来の課題を解決するために、本発明のバイオセンサは、絶縁性の基板、前記基板上に設けられた作用極と対極とを有する電極系、少なくとも酸化還元酵素と電子メディエータとを含む反応試薬、前記電極系と前記反応試薬とを含み、空気孔を有する試料液供給路、試料液を導入するための試料液供給部、及び前記試料液供給路と前記試料液供給部との間に設けられたフィルタを具備し、試料液が前記フィルタを通過する方向が前記基板に対して略垂直であり、前記フィルタでろ過された試料液が毛細管現象によって前記試料液供給路内に吸引され、前記フィルタでろ過された試料液が前記試料液供給路内を流れる方向が前記基板と略平行であり、前記フィルタの前記基板と対向する面の一部が前記基板と接触し、前記フィルタの前記基板と対向する面と前記基板との間に、前記試料液供給路と連通する空間部を有することを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のバイオセンサは、絶縁性の基板、前記基板上に設けられた作用極と対極とを有する電極系、少なくとも酸化還元酵素と電子メディエータとを含む反応試薬、前記電極系と前記反応試薬とを含み、空気孔を有する試料液供給路、試料液を導入するための試料液供給部、及び前記試料液供給路と前記試料液供給部との間に設けられたフィルタを具備し、試料液が前記フィルタを通過する方向が前記基板に対して略垂直であり、前記フィルタでろ過された試料液が毛細管現象によって前記試料液供給路内に吸引され、前記フィルタでろ過された試料液が前記試料液供給路内を流れる方向が前記基板と略平行であり、前記フィルタの前記基板と対向する面の一部が前記基板と接触し、前記フィルタの前記基板と対向する面と前記基板との間に、前記試料液供給路と連通する空間部を有することを特徴とする。
【0018】
このようにすると、試料中の固形成分の分離方法としては垂直分離方式となるが、フィルタの基板と対向する面、すなわちフィルタの二次側端部に相当する面の一部が基板に接触しているため、フィルタの二次側端部からにじみ出たろ過試料液が、まずフィルタと基板との接触部分で基板に接触することにより、ろ過試料液が迅速に基板上に広がり、フィルタの二次側端面と基板にはさまれた空間部がろ過試料液によって満たされる。ここで、ろ過試料液はフィルタの二次側端部から漏出するので、フィルタの厚みが薄くても、試料液中の固形成分を十分にろ過することができる。この空間部が完全に満たされると、引き続き、この空間部に連通するように形成された試料液供給路にろ過試料液が進入し、試料液供給路の終端部近傍にある空気孔に向かって流れ、試料液供給路内に形成された反応試薬を溶解しつつ、試料液供給路内に形成された電極系に迅速に到達し、酵素による測定対象物質の酸化還元反応が進行する。また、このような構造を持つことから、反応試薬を試料液供給路内に上下に分離して担持することも可能である。
【0019】
ここで、フィルタの基板と対向する面の法線ベクトルと、前記基板の法線ベクトルとのなす角が90°より大きく180°未満であり、前記フィルタの前記基板と対向する面のうち、前記基板と接触する部分が、前記フィルタの前記基板と対向する面の中で空気孔から最も遠い位置にあることが好ましい。このようにすると、試料液をフィルタ上面に点着した時、前記フィルタ下面と基板により形成される空間を試料液で満たすことができる。
【0020】
電極系は、空気孔とフィルタとの間の試料液供給路内に設けられていてもよい。ここで、作用極よりも対極の方がフィルタに近い位置に配置されていることが好ましい。このようにすると、試料供給路を試料液が満たす際、何らかの理由で電極面の一部に試料液が届かない場合でも、より確実に作用極表面全部に試料液を接触させることができる。
【0021】
また、電極系が、基板上のフィルタと対向する位置に設けられていてもよい。このとき、フィルタと電極系とが接触していないことが好ましい。
【0022】
フィルタの材質としては、ガラス、紙、及びポリエステルの不織繊維等を用いることができる。ここで、フィルタが、水に難溶性の繊維からなり、形状の塑性変形が可能であることが好ましい。このようにすると、フィルタの基板と対向する面の一部が基板と接触し、フィルタの基板と対向する面と基板との間に空間部を有するように、フィルタを容易に成形することができ、試料液をろ過させても形状を安定に保持することができる。このような材質としては、ポリエステルの不織繊維が挙げられる。
【0023】
フィルタの形状としては、三角柱、四角柱等の多角柱、円柱などを用いることができる。
【0024】
このなかで、三角柱の形状を用いる場合、フィルタの1辺が、試料液供給路のフィルタに近い部分において、試料液供給路の天井を形成するカバーの上部にのりあげている配置をとり、さらにこの辺に対向するフィルタの面の一部が基板に接触している構成をとることができる。このようにすると、前記フィルタ下面と基板により形成される空間を満たした試料液をより確実に試料供給路に導くことができる。
【0025】
また、開口部を有するフィルタカバーをさらに備え、前記開口部とフィルタとにより試料液供給部が形成されるようにしてもよい。ここで、試料液供給部の開口部の開口面積が、フィルタの、試料液が通過する方向に対して垂直な方向の断面積よりも小さいことが好ましい。このようにすると、試料液供給部に導入された試料液が、フィルタの一次側端部である上面のみに供給されるので、試料液中の固形成分を確実にろ過することができる。
【0026】
電子メディエータとしては、コレステロールオキシダーゼなどの酸化還元酵素との電子伝達能を有するレドックス化合物であればよく、例えばフェリシアン化カリウムが挙げられる。
【0027】
酸化還元酵素は、測定対象物を基質とする酵素であればよく、グルコースを測定対象物とするセンサでは、グルコースオキシダーゼまたはグルコースデヒドロゲナーゼを用いる。診断指針に用いられる血清中のコレステロール値を測定するには、コレステロールの酸化反応を触媒する酵素であるコレステロールオキシダーゼまたはコレステロールデヒドロゲナーゼと、コレステロールエステルをコレステロールに変化させる過程を触媒する酵素であるコレステロールエステラーゼとを用いる。反応試薬系に界面活性剤を添加することでコレステロールエステラーゼの活性を向上させ、全体の反応に要する時間を短縮することができる。
【0028】
これらの試薬を含む反応試薬は、センサ内の電極系上またはその近傍の位置に反応試薬層として配置してもよく、作用極または対極を構成する導電性材料と混合して、電極内部に保持してもよい。本発明によるバイオセンサでは、電極系を設けた基板に組み合わされて、基板との間に、電極系に試料液を供給する試料液供給路を形成するカバー部材を用いてもよい。反応試薬は、試料液供給路に露出する部分や試料液供給路の開口部などに設けることができる。いずれの位置であっても、導入された試料液によって反応試薬が容易に溶解して電極系に到達できることが好ましい。電極を保護し、電極上に形成される反応試薬の剥離を抑制するために、電極上に接して親水性高分子層が形成されることが好ましい。
【0029】
本発明をコレステロールセンサに用いる場合には、電子メディエータを含む層は、溶解性を高めるために、界面活性剤と分離することが好ましい。また、保存安定性のために、コレステロールの酸化反応を触媒する酵素であるコレステロールオキシダーゼ及びコレステロールエステラーゼと分離することが好ましい。
【0030】
血糖値を測定するバイオセンサでは、試料液が反応試薬層へ導入されるのを容易にするため、電極系上に形成された反応試薬層などを被覆するように、脂質を含む層を形成する例がある(例えば、特開平2−062952号公報参照)。本発明によるバイオセンサにおいても、反応試薬層を被覆するように、脂質を含む層を形成してもよい。
【0031】
また、反応試薬層の一部を、溶解性向上のため凍結乾燥法により形成することができる。その場合、反応試薬層の形状、形成位置のばらつきを抑制するために、カバー部材の表面が、界面活性剤あるいはプラズマ照射などにより親水処理されている構成をとることが好ましい。そのような構成の場合、界面活性剤や、反応試薬層自身の濡れ性により、試料液が円滑に試料液供給路内に導かれるので、前記脂質を含む層はなくてもよい。
【0032】
親水性高分子としては、水溶性セルロース誘導体、特にエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースの他、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アガロース、ポリアクリル酸及びその塩、デンプン及びその誘導体、無水マレイン酸の重合体及びその塩、ポリアクリルアミド、メタクリレート樹脂、ポリ−2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどを用いることができる。
【0033】
界面活性剤には、n−オクチル−β−D−チオグルコシド、ポリエチレングリコールモノドデシルエーテル、コール酸ナトリウム、ドデシル−β−マルトシド、ジュークロースモノラウレート、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、N,N−ビス(3−D−グルコンアミドプロピル)デオキシコールアミド及びポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルなどから選択することができる。
【0034】
脂質としては、レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン等のリン脂質で、両親媒性脂質が好適に用いられる。
【0035】
酸化電流の測定方法としては、作用極と対極のみの二電極方式と、参照極を加えた三電極方式があり、三電極方式の方がより正確な測定が可能である。
【0036】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るバイオセンサの分解斜視図、図2は、同バイオセンサの縦断面図である。
【0037】
絶縁性樹脂、例えばポリエチレンテレフタレートからなる絶縁性の基板1の上面には、スパッタまたは蒸着によりパラジウムの薄膜が形成されている。このパラジウムの薄膜をレーザートリミングすることにより、作用極2と対極3を含む電極系が形成されている。
【0038】
基板1に組み合わせる第1のスペーサであるスペーサ5には、開口部7を有するスリット8、及びフィルタ4を収納する貫通部6が形成されている。このスペーサ5と基板1とを組み合わせることにより、スリット8が試料液供給路として機能する。また、スリット8により、作用極2及び対極3の電極面積が規定される。
【0039】
カバー9には、フィルタ4の基板1に対する投影形状(図1の場合は円形)と同じ大きさ及び形状に形成された貫通部10、並びに空気孔11が形成されている。
【0040】
第2のスペーサ12及び第3のスペーサ13には、フィルタ4の基板1に対する投影形状より大きな貫通部16、17が形成され、フィルタ保持板18には貫通部20の周囲に、フィルタ4を直接支えるフィルタ支持部19が形成されている。
【0041】
また、フィルタカバー14には、試料液供給部を構成する開口部15が形成されている。
【0042】
フィルタ4は、ガラス、紙、あるいはポリエステルの不織繊維からなり、直径3mmの円柱形に裁断されたものを用いる。フィルタ厚は約600〜1000μmである。
【0043】
本実施の形態のバイオセンサを組み立てる際には、まず基板1とスペーサ5を組み合わせ、スリット8により形成される凹部の所定の位置に反応試薬層を形成する。次に、スペーサ5の上面に、カバー9、第2のスペーサ12、フィルタ保持板18、及び第3のスペーサ13を、スリット8に連なる貫通部6、カバー9に形成されている貫通部10、第2のスペーサ12及び第3のスペーサ13に形成されている試料液供給部の貫通部16、17、並びに第2のスペーサ12及び第3のスペーサ13に挟み込まれるフィルタ保持板18に形成されている貫通部20が連通するように組み合わせる。
【0044】
スペーサ5においてフィルタ4を収納する貫通部6は、スリット8と連結する部分が、フィルタ4の円柱の半径より小さい半径を有する半円状に裁断され、スリットと連結する部分の反対側の部分が、フィルタの円柱の半径と実質的に等しい半径を有する半円状に裁断されることにより形成されている。複数の貫通部6,10,16,17,20が組み合わされることにより形成された凹部に、フィルタ4を設置する。
【0045】
最後に、第3のスペーサ13の貫通部17とフィルタカバー14の開口部15とが連通するように、第3のスペーサ13上にフィルタカバー14をのせることにより、バイオセンサが完成する。ここで、フィルタ4が塑性変形可能であるため、スペーサ5の貫通部6に配置されたフィルタ4の二次側端部において、試料液供給路と反対側の端部のみが基板1と接触し、図2に示すような形状になる。
【0046】
図2に示すように、基板1の電極系上に、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(以下、CMCと略称する)等の親水性高分子を含む親水性高分子層21と、電子メディエータを含む第1の反応試薬層22が形成されている。また、試料液供給路の天井に相当するカバー9の下面側に、酸化還元酵素を含む第2の反応試薬層23が形成されている。
【0047】
本実施の形態に係るバイオセンサでは、その構造をわかりやすくするために、6種類、7枚の部材から作製されているが、第2のスペーサ12、フィルタ保持板18及び第3のスペーサ13、さらにはフィルタカバー14を一つの部材で構成することも可能である。
【0048】
このバイオセンサを用いて血液中のコレステロールを測定する例を説明する。
【0049】
まず、試料液である血液をフィルタカバー14の試料液供給部へ供給する。ここに供給された血液は、試料液供給部の開口部15からフィルタ4の一次側端面、すなわち上表面からその内へ浸透する。フィルタ4内では、血球の浸透速度は液体成分である血漿より遅いので、血漿がフィルタの二次側の端部から染み出す。そして、この染み出した血漿は、基板1、スペーサ5の貫通部6、カバー9の貫通部10により形成される凹部に一時的に捕集された後、試料液供給路の開口部7から試料液供給路内を、電極系を覆う位置またはその直下のカバー9裏面に担持された反応試薬層を溶解しながら、電極系近傍からさらに空気孔11の部分までの試料液供給路全体を満たす。試料液供給路全体が液体で満たされると、フィルタ4内の液体の流動も停止し、その時点で、血球はフィルタ4の二次側端部に到達せず、その位置に留め置かれる。したがって、フィルタ4は、血漿が試料液供給路全体を満たすだけの量が通過してなお血球がフィルタの二次側端部に達しない程度に、血漿と血球との流通抵抗の差があるように設計される。本発明において用いるフィルタは、孔径1〜7μm程度のデプスフィルタが好適である。
【0050】
このような血球ろ過の過程を経て、血漿により溶解された反応試薬層と血漿中の測定成分、コレステロールセンサであればコレステロール、との化学反応が生じ、一定時間経過後、電極反応により電流値を測定し、血漿中の成分を定量することができる。
【0051】
第2のスペーサ12及び第3のスペーサ13の貫通部16、17及びフィルタカバー14はフィルタ4と非接触で、フィルタ4の膨張を妨げることがないよう設計されているので、試料液である血液がフィルタ4中で溶血するおそれがない。また、フィルタ4側面には、フィルタ保持板18の貫通部20の周囲に突起状に設けられたフィルタ支持部19のみなので、フィルタ4外壁を、ろ過されていない血液が毛細管現象により回りこむのを防ぐことができる。
【0052】
本実施の形態に係るバイオセンサでは、スリット8により構成される試料液供給路の幅が1.5mm以下、高さが150μm以下、好ましくは50μm〜100μm、長さが4.5mm以下であることが好ましい。あるいは、試料液供給路の容積が0.05μl以上、1.0125μl以下であることが好ましい。
【0053】
また、電極系が貴金属により構成されることが好ましい。このようにすると、第1に、試料液供給路の幅が1.5mm以下であるため、貴金属以外の導電性材料を用いたスクリーン印刷では電極面積を規定する精度が劣るが、貴金属を用いると、スパッタ及びレーザートリミングにより0.1mm以下の幅で電極を形成することができ、電極面積を規定する精度が高くなる。第2に、試料液供給路の高さ、すなわちスペーサ5の厚みが150μm以下なので、スクリーン印刷により電極系を設けようとする場合、電極系の厚みによる段差が試料液の流入性に与える影響が無視できなくなるが、スパッタ及びレーザートリミングにより貴金属からなる電極系を形成すると電極系の厚みを薄くすることができるので、試料液の流入性に与える影響を無視することができる。
【0054】
【実施例】
(実施例1)
本実施例では、図1、2に示す構成を有するコレステロールセンサを作製した。第1の反応試薬層22には電子メディエータが含まれ、第2の反応試薬層23にはコレステロールオキシダーゼ、コレステロールエステラーゼ及び界面活性剤が含まれる。このセンサの作製手順を以下に示す。
【0055】
まず、基板1の電極系上に、CMCの0.5wt%水溶液を5μl滴下し、50℃の温風乾燥機中で10分間乾燥させることにより親水性高分子層21を形成した。
【0056】
次に、フェリシアン化カリウム水溶液4μl(フェリシアン化カリウム70mM相当)を親水性高分子層21上に滴下し、50℃の温風乾燥機中で10分間乾燥させることにより、フェリシアン化カリウムを含む第1の反応試薬層22を形成した。
【0057】
ノカルジア由来のコレステロールオキシダーゼ(EC1.1.3.6、以下、ChODと略称する)とシュードモナス由来のコレステロールエステラーゼ(EC.3.1.1.13、以下、ChE略称する)を溶解した水溶液に、界面活性剤であるポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(TritonX−100)を添加した。この混合液を、基板1とスペーサ5を一体化することにより形成された、スリット8に相当する凹部に0.2μl滴下し、液体窒素にて予備凍結後、凍結乾燥機で2時間乾燥(初期温度が−40℃、終末温度が+40℃)させることにより、0.14ユニットのChOD、0.34ユニットのCh及び0.4mgの界面活性剤を含む第2の反応試薬層23を形成した。
【0058】
フィルタは、厚さ約700μmのガラス繊維ろ紙を用い、直径3mmの円形に打ちぬいた。基板1、スペーサ5、カバー9、第2のスペーサ12、フィルタ保持板18及び第3のスペーサ13を組み合わせて、各々の連通部6、10、16、20、17間にフィルタ4を設置した。
【0059】
この後、第3のスペーサ13の上部にフィルタカバー14を設置することにより、図1、2に示すコレステロールセンサを作製した。
【0060】
このセンサに、試料液として全血10μlを試料液供給部に導入し、3分後に対極3を基準にして、作用極2にアノード方向へ+0.2Vのパルス電圧を印加し、5秒後に作用極2と対極3との間に流れる電流値を測定した。その結果、コレステロール濃度に依存した応答が得られた。コレステロール濃度と応答値の関係を図3に示す。
【0061】
(実施例2)
血漿中のブドウ糖濃度、すなわち血糖値を測定するバイオセンサの場合、血液中の血球成分をろ過することで、より正確な測定が可能である。これに本発明を適用した例を以下に示す。
【0062】
本実施例のバイオセンサの外観は、図4、5に示す通りである。図4では分解斜視図を、図5では縦断面図を示している。なお、図4では反応試薬層を省略している。
【0063】
実施例1のコレステロールセンサと、フィルタの配置はほぼ同じであるが、反応試薬層の溶解性が良好であるため、反応試薬層を基板にのみ形成することで良好な応答が得られる。従って、電極系は、フィルタ下面すなわち二次側端面に対向する位置に設けることができる。この場合、実施例1で設けた試料液供給路は不要であるが、空気孔は必要なので、スペーサ5の貫通部6に連結するスリットを空気孔24として設けてある。
【0064】
まず、実施例1と同様に、基板1の電極系上に、CMCの0.5wt%水溶液を5μl滴下し、50℃の温風乾燥機中で10分間乾燥させることにより親水性高分子層21を形成した。
【0065】
次に、フェリシアン化カリウム、グルコースオキシダーゼ(アスペルギルス由来、EC1.1.3.4)の水溶液(フェリシアン化カリウム20mM相当、グルコースオキシダーゼ100ユニット/ml)を親水性高分子層21上に滴下し、50℃の温風乾燥機中で10分間乾燥させることにより、フェリシアン化カリウムを含む反応試薬層25を形成した。
【0066】
続いて、実施例1と同様に組み立て、血液中のグルコースを測定したところ、グルコース濃度に比例した良好な応答性が得られた。
【0067】
以上の実施例では、フィルタの形状について、基板への投影面が円形あるいは楕円のもののみを示しているが、これに限られるものではない。多角形でも同様の効果が得られる。特に、三角形にした場合、二次側端面すなわち下面部の頂点を、基板から離し、これに対向する辺を基板に接触させる形状にした場合、フィルタ自体の変形がなくてもフィルタ下面と基板の間に空間部を生じせしめることができ、好都合である。
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、試料液中の固形成分、例えば血液中の妨害物質である血球をフィルタでろ過することにより十分に除去し、ろ過試料液、例えば血漿を迅速に電極系へ供給することができる。従って、応答特性に優れた電気化学バイオセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るバイオセンサの分解斜視図
【図2】同バイオセンサの縦断面図
【図3】同バイオセンサによる応答特性を示す図
【図4】本発明の他の実施の形態に係るバイオセンサの分解斜視図
【図5】同バイオセンサの縦断面図
【図6】血液を分離するメカニズムを説明するためのフィルタの概略断面図
【符号の説明】
1 基板
2 作用極
3 対極
4 フィルタ
5 スペーサ(第1のスペーサ)
6,10,16,17,20 貫通部
7,15 開口部
8 スリット
9 カバー
11,24 空気孔
12 第2のスペーサ
13 第3のスペーサ
14 フィルタカバー
18 フィルタ保持板
19 フィルタ支持部
21 親水性高分子層
22 第1の反応試薬層
23 第2の反応試薬層
25 反応試薬層
Claims (8)
- 絶縁性の基板、前記基板上に設けられた作用極と対極とを有する電極系、少なくとも酸化還元酵素と電子メディエータとを含む反応試薬、前記電極系と前記反応試薬とを含み、空気孔を有する試料液供給路、試料液を導入するための試料液供給部、及び前記試料液供給路と前記試料液供給部との間に設けられたフィルタを具備し、試料液が前記フィルタを通過する方向が前記基板に対して略垂直であり、前記フィルタでろ過された試料液が毛細管現象によって前記試料液供給路内に吸引され、前記フィルタでろ過された試料液が前記試料液供給路内を流れる方向が前記基板と略平行であり、前記フィルタの前記基板と対向する面の一部が前記基板と接触し、前記フィルタの前記基板と対向する面と前記基板との間に、前記試料液供給路と連通する空間部を有することを特徴とするバイオセンサ。
- フィルタの基板と対向する面の法線ベクトルと、前記基板の法線ベクトルとのなす角が90°より大きく180°未満であり、前記フィルタの前記基板と対向する面のうち、前記基板と接触する部分が、前記フィルタの前記基板と対向する面の中で空気孔から最も遠い位置にあることを特徴とする、請求項1記載のバイオセンサ。
- 空気孔とフィルタとの間の試料液供給路内に電極系が設けられたことを特徴とする、請求項1または2記載のバイオセンサ。
- 作用極よりも対極の方がフィルタに近い位置に配置されたことを特徴とする、請求項3記載のバイオセンサ。
- 基板上のフィルタと対向する位置に電極系が設けられ、前記フィルタと前記電極系とが接触していないことを特徴とする、請求項1または2記載のバイオセンサ。
- フィルタが、水に難溶性の繊維からなり、形状の塑性変形が可能であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバイオセンサ。
- 開口部を有するフィルタカバーをさらに備え、前記開口部とフィルタとにより試料液供給部が形成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のバイオセンサ。
- 試料液供給部の開口部の開口面積が、フィルタの、試料液が通過する方向に対して垂直な方向の断面積よりも小さいことを特徴とする、請求項7記載のバイオセンサ。
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