JP3855928B2 - 水浸超音波探傷装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は非破壊検査の一つである超音波探傷に係り、特に被検体を水中において超音波探傷をおこなうのに好適な水循環式トレー吸着パッドを備えた水浸超音波探傷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開昭60−98358号公報
【特許文献2】
特開平9−229912号公報
【0003】
水中における超音波探傷において、超音波を送受する探触子を被検体の面に沿って走査するとともに、被検体からの反射波を探触子で捕らえて映像化する技術が知られている。このような超音波探傷技術は、例えば半導体IC等の検査に用いられる。半導体IC等を検査する場合には、例えば図4に示すように被検体1を水中9に浸漬するとともに、超音波探触子8を水中で走査することにより、被検体1の超音波探傷をおこなう。従来、半導体IC等の超音波探傷をおこなうには、被検体1を水槽10内に設けたパッド13上に、被検体形状に合わせたトレー2によって設定して検査をおこなっている。
【0004】
このような場合の例として、前記特許文献1に記載されているような超音波顕微鏡用試料台装置がある。この文献には、超音波を伝播する液体を収容する容器を設け、試料全体を試料台と共に水中に浸漬可能にするとともに水温を一定温度に保持する温度制御手段および水の浄化手段を有している場合について記載されている。試料が検査工程に送られてくると、バキュームチャック等で試料台装置に装着されるようになっている。そして吸引ポンプによって水を吸引し、試料を吸引保持できるようにしている。
【0005】
また、前記引用文献2に記載されているような、超音波検査用被検体固定装置がある。この文献では、被検体を水中、大気中を問わず確実に固定する方法として真空吸着手段を用いた場合について開示がある。被検体の吸引面を水の液面から浮上させる浮上状態、および水中に浸漬する検査状態、の切り替えをおこなう昇降装置を設けている例が示されている。この例では被検体の受け渡しは大気中でできるようになっている。水中浸漬による超音波探傷をおこなう場合として、この文献の記載は、水槽中あるいは大気中で常に真空ポンプを駆動し、真空吸着により、被検体を真空吸盤にセットして保持し、水中に浸漬して超音波により検査をおこなう方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術による場合、被検体の固定が充分でなく、探触子の走査による水流により、検査体がずれてしまうことがある。また、大気中で被検体をセットしても検査のために浸漬したとき被検体の浮上、あるいは位置ずれが発生することがある。
また、前記引用文献1の場合は、被検体が水槽中にある場合しか吸着保持できないため、水中にて被検査体を設定せざるを得ない。また、トレー上の被検体が半導体IC等の場合には、水中に浸漬する際に、トレーから検査体が浮きあがることがある。また、被検体の設定位置にずれを生じたりすることがある。したがって、適切な検査体の設定ができない問題がある。
さらに、前記引用文献2の場合は、大気中、水中とも常に真空ポンプを駆動し、大気中における試料の設定時も、浸漬して検査をおこなう場合も真空吸盤による試料の保持をおこなうため、大掛かりな真空ポンプを用意しなければならない欠点がある。
本発明の目的は、大気中での検査体及びトレーへの設定、水中で被検体を安定した保持ができる超音波探傷を可能とする、水循環式のトレー吸着パッドを備えた水浸超音波探傷装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、被検査体及びトレー吸着のための水循環構造を有する被検体設定用のトレー吸着パッドを設けた水浸超音波探傷装置である。具体的な構成は以下のとおりである。
本発明は、被検査体を配置したトレーを水槽内に浸漬して、X−Y走査による超音波探傷を行う水浸超音波探傷装置において、循環水の供給口と前記被検体に対向する位置に複数の循環水回収口とを有し前記被検体及びトレーを吸着保持するトレー吸着パッドと、前記供給口より前記水を供給し該供給された前記水を前記循環水回収口を通して循環させる循環水ポンプと、を備えたことを特徴とする。
また、前記供給口は前記トレーに載置された被検体の上面よりも高い位置に設けられ、また、前記複数の循環水回収口は格子状に設けられる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図1〜図3により説明する。図1に本発明の実施例である水循環式のトレー吸着パッド3の構成を示す。図1において、1a、1bは被検体、2は被検体載置用トレー、3は水保持および水循環のため凹形状を有するトレー吸着パッド、5a、5bはトレー吸着パッド3への循環水の供給口、5c、5dはトレー吸着パッド3からの循環水回収口を示していて、循環水ポンプ6により、水循環水路のホース7を介して水が循環する構成になっている。矢印Sはトレー2のトレー吸着パッド3への設定方向を示している。20a、20bはパッドのアームで、このアームにより浸漬あるいは大気中へ持ち上げて、被検体の設定や、取り外しに利用される。また、この場合は、パッド内の小範囲における水循環のため、大掛かりなポンプを備える必要はなく、簡易な水循環構造のポンプを使用して実現することができる特徴がある。
【0009】
図1の実施例は、被検体1a、1bが載置されたトレー2を、トレー吸着パッド3内の水を循環させることにより、半導体IC等の検査体およびトレーをトレー吸着パッドに吸着させて検査をおこなう。すなわち、トレー2を載置したパッド3自体を水循環方式にしているので、従来例で示した図4のように水槽中にある場合も、被検体の受け渡し、被検体およびトレーの装着時も、常に水を循環させて吸着保持している。
【0010】
したがって、水槽に浸漬したときの被検体の浮上あるいは位置ずれ等が発生することがなく、安定した超音波検査をおこなうことができる。また、大気中における被検体およびトレーの装着あるいは取り外しのための作業性の改善も図ることができる。これは検査中も、被検体の装着時もほぼ同じ水循環による保持状態においておこなえるからである。また、トレー2の寸法に合わせてパッド3には位置決め部S1,S2を設け、位置ずれの発生を抑えている。
【0011】
次に、前記の構成による水循環式トレー吸着パッドにおいて、大気中での被検体1a、1bの装着およびトレー2への被検体の設定から超音波探触子による検査(走査)までの手順について、図2の(A)〜(D)により説明する。図2の(A)に示したステップ1は、検査中は水中に設定されているトレー吸着パッド3を、水循環による保持状態にてパッド3を水槽10から持ち上げるステップを示している(この例では、トレーなしの状態でパッドを持ち上げている)。パッド3は矢印Aの方向に被検体装着のために例えばアーム20a、20bを利用して持ち上げられる(ここでは、パッドを持ち上げているが、逆に水槽10を下方に移動しても同じように、パッドを被検体装着状態にすることができる)。
【0012】
ステップ1において、トレー吸着パッド3を水保持状態すなわち水循環状態を保持したまま大気中へ移動したあと、図2の(B)のステップ2に示したように、被検体がトレー2に載置されたあと、矢印Bの方向に移動させてパッド3にトレー2載置設定する。このように、ステップ2においてトレー吸着パッド3へ被検体1およびトレー2を設定する装着時も水の循環がおこなわれているので、トレー吸着パッド3への被検体の装着は水の循環吸着により容易におこなうことができる。また、設定した位置のずれが生じることもない。
【0013】
図2の(C)のステップ3は、被検査体1およびトレー2の吸着パッド3への設定が完了したあと、設定が完了した大気中のトレー吸着パッド3を水槽10の水中へ(矢印Cで示したように)移動させる状態を示している。ただし、水の循環は継続したままであるから、吸着状態のまま水中へ移動するため、水槽の水に浸漬した時の被検査体の浮き上がり、あるいはトレー2の位置ずれを防止することができる。
【0014】
図2の(D)のステップ4は、トレー吸着パッド3が水槽の水に浸漬され、探触子8により走査(例えば矢印D方向)して超音波探傷による検査を実施することができる状態を示している。このように本発明は、トレー2、トレー吸着パッド3を含めて水循環による吸着保持をおこなっているために、浸漬に伴う被検体の浮上あるいは水槽内の水流等による被検査体1のずれが発生することもなく、安定した超音波探傷ができる。
【0015】
また、図3の(A)〜(C)は、トレー吸着パッド3における循環水の供給口5a〜5dおよびトレー2の底部について説明する図である。図3の(A)は特に循環水の供給口5a、5bとの関係を示している。図3の(A)でgは循環水の供給口5bの中心線と、トレー2に装着された被検体1a、1bの上面hとの差を表している(供給口5aについても同様である)。水循環による被検体の保持の観点からはg>0である方がよい。トレー2に装着される被検体の高さ寸法が大きいものであっても、トレー底面15a,15bからの高さhと前記供給口中心線との差gは、水流および吸着力の点から、この条件を満足するようにすることが望ましい。
【0016】
また、吸着パッド上面15a,15bを上方から見た略図を図3の(B)に示した。図3の(A)の状態では、循環水回収口5c、5dに対して吸着パッド上面15b、15aからの循環給水における出口穴はそれぞれ2個で、15e、15f、そして15c、15dである。しかし、水流の均等性あるいは吸着力の平均化あるいは安定性の面から、この穴はある程度の数を設けるほうがよい。目詰まりしない程度の数がいい。その一例を、図3の(C)の16a、16bに示した。ここでは格子状に水回収穴を設けている。この例ではそれぞれ25個設けている。ある程度多い方が、水流が平行になるので、被検体に作用する吸着力の均一化をはかることができる。本実施例によれば、気中での被検体およびトレーの設定、水中における超音波探傷を安定した状態でおこなうことができる効果がある。また、大気中での被検体およびトレーの設定を容易におこなうことができ、水槽の水中への浸漬時にも被検体の浮き上がり現象、あるいは位置ずれ等をなくすことができる。給水の回収口は吸着パッド側に複数設けてもよいし、また、複数の水の回収口はパッド側に設け、それを集約して、集約して5c、5dのようにして循環ポンプに戻すようにしてもよい。格子状の循環回収口は均等に格子状に設けても良いが、被検体に均等に吸着力が作用するようにすればよく、均等格子状に限定する必要はない。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、大気中での検査体およびトレーの設定、水中へ侵入時の検査体浮き上がりを防止することができ、また、探触子走査時の水流による検査体のずれを防止できるので、安定した超音波探傷が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による、水循環式トレー吸着パッドの説明図である。
【図2】本発明の実施例による、トレー設定から超音波探傷までの手順を示す図である。
【図3】本発明を実施する場合のパッドの構造を説明する図である。
【図4】一般的な半導体IC等の検査体における超音波探傷試料台の例を示す図である。
【符号の説明】
1…被検査体、1a、1b…被検体、2…トレー、3…トレー吸着パッド、5a、5b…循環水の供給口、5c、5d…循環水回収口(出口)、6…循環水ポンプ、7…ホース、8…超音波探触子、9…水、10…水槽、13…トレー設定パッド、15a、15b…被検体に対応するトレー底部、15c〜15f…吸着パッド上部に設けられた循環水の回収穴、16a、16b…格子状水回収穴、20a、20b…パッドのアーム。
Claims (3)
- 被検体を配置したトレーを水槽内に浸漬して、X−Y走査による超音波探傷を行う水浸超音波探傷装置において、循環水の供給口と前記被検体に対向する位置に複数の循環水回収口とを有し前記被検体及びトレーを吸着保持するトレー吸着パッドと、前記供給口より前記水を供給し該供給された前記水を前記循環水回収口を通して循環させる循環水ポンプと、を備えたことを特徴とする水浸超音波探傷装置。
- 請求項1において、前記供給口は前記トレーに載置された前記被検体の上面よりも高い位置に設けられていることを特徴とする水浸超音波探傷装置。
- 請求項1において、前記循環水回収口は格子状に設けていることを特徴とする水浸超音波探傷装置。
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