JP3854987B2 - プレキャストコンクリートパネル構造物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、プレキャストコンクリートパネル構造物、特に、パイプラインを保護する時に用いる保護工であり、略L字状に接合して水平断面略ロ字状に配置し上下方向にも接合したプレキャストコンクリートパネルからなるプレキャストコンクリートパネル構造物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のプレキャストコンクリートパネル構造物は、その各プレキャストコンクリートパネルを略L字状に接合する時の仕口部の接合構造を、図3に示すように、接合すべき両プレキャストコンクリートパネル10の接合面10aを当面させる共に、接合用ボルト11で固定する構成としたものが一般に知られている。
【0003】
また、この従来のプレキャストコンクリートパネル構造物は、その各プレキャストコンクリートパネルを上下方向へ接合する時の仕口部の接合構造を、各レキャストパネルにおける下端の接合面に下方へ突出した状態で剪断力に対処する接合用ピンを設けると共に、各プレキャストコンクリートパネルにおける上端の接合面に接合用ピンの突出部が入り込む接合用穴を設ける構成としたものが一般に知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来のプレキャストコンクリートパネル構造物では、各プレキャストコンクリートパネルを略L字状に接合する時の仕口部の接合構造が、平面である両接合面を当面させただけのものである。
【0005】
そのため、両プレキャストコンクリートパネルを略L字状に接合した時の仕口部において発生する剪断力を、互いのプレキャストコンクリートパネルへ効率よく伝達させることができない。また、両接合面を当させただけであることは、ボルト結合時において、ボルト孔クリアランスにより、両プレキャストコンクリートパネルの接合面がずれる恐れもある。
【0006】
従って、この従来のプレキャストコンクリートパネル構造物は、外力が加わった時に、プレキャストコンクリートパネルで組立てられた構造物全体の剛性が低下して構造物全体が大きく変形する恐れがあり、略L字状とする各プレキャストコンクリートパネルの接合状態を強固に保持することができないものである。
【0007】
一方、前述した従来のプレキャストコンクリートパネル構造物では、各プレキャストコンクリートパネルを上下方向へ接合する時に、接合用穴内へ入り込んだ接合用ピンを確実に固定することが困難であった。
【0008】
そのため、この従来のプレキャストコンクリートパネル構造物は、接合すべき両プレキャストコンクリートパネルの接合部に発生する剪断力を両プレキャストコンクリートパネルへ確実に伝達することができないものであった。
【0009】
この発明は前述した事情に鑑みて創案されたもので、その目的は両プレキャストコンクリートパネルを略L字状に接合した時において、その仕口部に発生する剪断力を互いのプレキャストコンクリートパネルへ効率よく伝達させることができると共に、プレキャストコンクリートパネルにおける下端の接合面に設けた接合用ピンを、プレキャストコンクリートパネルにおける上端の接合面に設けた接合用穴内に確実に固定することができるプレキャストコンクリートパネル構造物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明のプレキャストコンクリートパネル構造物は、構造物構成用の各プレキャストコンクリートパネルをそれぞれ略L字状に接合して、水平断面略ロ字状に形成すると共に上下方向にも接合してなるプレキャストコンクリートパネル構造物であり、前記略L字状に接合すべき一方のプレキャストコンクリートパネルの接合面に係合用切欠き部を形成し、他方のプレキャストコンクリートパネルの接合面側の端部を前記係合用切欠き部に係合させ、前記一方のプレキャストコンクリートパネルの側面から前記他方のプレキャストコンクリートパネルの端部に螺合する接合用ボルトにより接合することで、略L字状に接合した仕口部に発生する水平面内の剪断力をプレキャストコンクリートパネルどうしの間でも直接伝達できるようにする。
【0011】
また、この発明のプレキャストコンクリートパネル構造物では、上方のプレキャストコンクリートパネルと下方のプレキャストコンクリートパネルは、下方のプレキャストコンクリートパネルの上端の接合面に設けられ接合剤を充填した接合用穴の内部に、上方のプレキャストコンクリートパネルの下端の接合面から突出させた接合用ピンの突出部を挿入し、前記接合剤の硬化により固定してある
【0012】
そして、この発明の接合構造によれば、一方のプレキャストコンクリートパネルの接合面に形成した係合用切欠き部に、他方のプレキャストコンクリートパネルにおける接合面側の端部を係合させることにより、接合すべき両プレキャストコンクリートパネルを略L字状に接合する時の仕口部に発生する剪断力を互いのプレキャストコンクリートパネルへ効率よく伝達できるようにしている。
【0013】
また、この発明の接合構造によれば、接合剤がまだ硬化していない時点で接合用ピンの突出部を接合用穴の内部に入り込ませることで、接合用ピンの挿入作業を容易に行うことができるようにしている。しかも、接合用ピンを入り込ませた後に接合剤が硬化することで、接合用穴の内部に入り込んだ接合用ピンを確実に固定することができるようにしている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明のプレキャストコンクリートパネル構造物を、図示する一実施形態によって説明する。
【0015】
保護工構成用の各プレキャストコンクリートパネル2をそれぞれ略L字状に接合して、断面略ロ字状に形成してなるプレキャストコンクリートパネル構造物1(図1および図2参照)は、略L字状に接合すべき一方のプレキャストコンクリートパネル2における接合面2aに係合用切欠き部3を形成していると共に、略L字状に接合すべき他方のプレキャストコンクリートパネル2における接合面2a側の端部を係合用切欠き部3に係合させている。
【0016】
また、各プレキャストコンクリートパネル2下端の接合面2aには、下方へ突出した状態で接合用ピン4を設けていると共に、各プレキャストコンクリートパネル2上端の接合面2aには、接合用ピン4の突出部4aが入り込む接合用穴5を設けている。
【0017】
そして、接合用ピン4の突出部4aを接合用穴5に入り込ませた時に、各プレキャストコンクリートパネル2が上下に接合できるように構成している。
さらに、接合用穴5は、接合用ピン4が入り込んだ時に接合用ピン4との間に空隙が形成されるように設けていると共に、接合用ピン4の突出部4aを入り込ませる前に、エポキシやセメントモルタル等の接合剤6を充填している。
【0018】
なお、この実施形態での係合用切欠き部3は、図1の(b) に示すように、プレキャストコンクリートパネル2の側面2bと平行な面3aと、プレキャストコンクリートパネル2の先端面2cと平行な面3bとを有しており、面3aと面3bとが直交した形態になっている。
【0019】
この実施形態でのプレキャストコンクリートパネル構造物1は、図1の(a) に示すように、各プレキャストコンクリートパネル2を上下方向へ延びる平面状に配置すると共に、その上方のプレキャストコンクリートパネル2における下端の接合面2aと、下方のプレキャストコンクリートパネル2における上端の接合面2aとの接合している。
【0020】
この実施形態での接合用ピン4は、図2に示すように、インサート7を介して、上方のプレキャストコンクリートパネル2における下端の接合面2aに設けている。
【0021】
この実施形態での接合用穴4は、図2に示すように、下方のプレキャストコンクリートパネル2における上端の接合面2aに開口している開口部を大径にし、プレキャストコンクリートパネル2内の底部を小径にした徐々に先細りとなる形状をしている。
【0022】
このような構成からなるプレキャストコンクリートパネル構造物1において、接合すべき両プレキャストコンクリートパネル2を略L字状に接合するには(図1参照)、先ず、接合すべき他方のプレキャストコンクリートパネル2における接合面2a側の端部を、接合すべき一方のプレキャストコンクリートパネル2における接合面2aに係合用切欠き部3に係合させる。
【0023】
次に、接合すべき一方のプレキャストコンクリートパネル2における側面2bからこの一方のプレキャストコンクリートパネル2を貫通して、接合すべき他方のプレキャストコンクリートパネル2における接合面2a側の端部に螺合する接合用ボルト8により、接合すべき両プレキャストコンクリートパネル2を略L字状に強固に接合する。
【0024】
また、上方のプレキャストコンクリートパネル2と下方のプレキャストコンクリートパネル2との接合は(図2参照)、先ず、接合作業の前に、下方のプレキャストコンクリートパネル2における上端の接合面2aに設けた接合用穴4の内部に接合剤6を充填する。
【0025】
次に、接合剤6がまだ硬化していない時点で接合用ピン4の突出部4aを接合用穴5の内部に入り込ませる。その後、接合剤6が硬化することで、接合用穴5の内部に入り込んだ接合用ピン4が固定されることとなる。
【0026】
そして、この接合剤6が硬化して接合用ピン4を固定することにより、上方のプレキャストコンクリートパネル2と下方のプレキャストコンクリートパネル2との接合が完了する。
【0027】
このように、この発明のプレキャストコンクリートパネル構造物1によれば、一方のプレキャストコンクリートパネル2の接合面2aに形成した係合用切欠き部3に、他方のプレキャストコンクリートパネル2における接合面2a側の端部を係合させている。
【0028】
このことから、例えば、パイプライン保護工に用いるべく、図の(a) に示すように、複数のプレキャストコンクリートパネル2を断面略ロ字状のボックス形状に組む時などにおいて、接合すべき両プレキャストコンクリートパネル2を略L字状に接合する仕口部に外力が加わって剪断力が発生するが、この仕口部に発生する剪断力を互いのプレキャストコンクリートパネル2へ効率よく伝達させることができる。
【0029】
一方、この発明のプレキャストコンクリートパネル構造物1によれば、接合剤6がまだ硬化していない時点で接合用ピン4の突出部4aを接合用穴5の内部に入り込ませることで、接合用ピン4の挿入作業を容易に行うことができる。しかも、接合用ピン4を入り込ませた後に接合剤6が硬化することで、接合用穴5の内部に入り込んだ接合用ピン4を確実に固定することができる。
【0030】
このことから、この発明のプレキャストコンクリートパネル構造物1では、上下方向へ延びる平面状に配置した両プレキャストコンクリートパネル2を接合した時に、その接合部に発生する剪断力を接合用ピン3によって、両プレキャストコンクリートパネル2へ確実に伝達することができる。
【0031】
【発明の効果】
この発明のプレキャストコンクリートパネル構造物によれば、一方のプレキャストコンクリートパネルの接合面に形成した係合用切欠き部に、他方のプレキャストコンクリートパネルにおける接合面側の端部を係合させることにより、接合すべき両プレキャストコンクリートパネルを略L字状に接合する時の仕口部に発生する剪断力を、互いのプレキャストコンクリートパネルへ効率よく伝達することができる。
【0032】
また、この発明のプレキャストコンクリートパネル構造物によれば、接合剤がまだ硬化していない時点で接合用ピンの突出部を接合用穴の内部に入り込ませることで、接合用ピンの挿入作業を容易に行うことができる。しかも、接合用ピンを入り込ませた後に接合剤が硬化することで、接合用穴の内部に入り込んだ接合用ピンを確実に固定することができる。
その結果、全体として水平断面略ロ字状に形成されたプレキャストコンクリートパネル構造物に作用する水平力に対し、同じ層では剪断力を接合用ボルトだけでなくプレキャストコンクリートパネルどうしの間でも直接伝達し、かつ上下のプレキャストコンクリートパネル間では、水平断面略ロ字状のまま接合剤の硬化により固定された接合用ピンによって剪断力を伝達する構造となっており、非常に安定した構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a) はこの発明のプレキャストコンクリートパネル構造物を構成すべく、各プレキャストコンクリートパネルをボックス状に組立てた状態を示す概略斜視図で、(b) は(a) のA部拡大斜視図であり、この発明のプレキャストコンクリートパネル構造物を構成している接合すべき両プレキャストコンクリートパネルを略L字状に接合した状態を示す概略斜視図である。
【図2】この発明のプレキャストコンクリートパネル構造物を構成している接合すべき上下の両プレキャストコンクリートパネルを接合した状態を示す概略断面図である。
【図3】従来のプレキャストコンクリートパネル構造物を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1…接合構造、2…プレキャスコンクリートトパネル、2a…接合面、2b…側面、2c…先端面、3…係合用切欠き部、3a…平行な面、3b…平行な面、4…接合用ピン、4a…突出部、5…接合用穴、6…接合剤、7…インサート、8…接合用ボルト。

Claims (1)

  1. 構造物構成用の各プレキャストコンクリートパネルをそれぞれ略L字状に接合して、水平断面略ロ字状に形成すると共に上下方向にも接合してなるプレキャストコンクリートパネル構造物であり、前記略L字状に接合すべき一方のプレキャストコンクリートパネル接合面に係合用切欠き部を形成し、他方のプレキャストコンクリートパネル接合面側の端部を前記係合用切欠き部に係合させ、前記一方のプレキャストコンクリートパネルの側面から前記他方のプレキャストコンクリートパネルの端部に螺合する接合用ボルトにより接合することで、略L字状に接合した仕口部に発生する水平面内の剪断力をプレキャストコンクリートパネルどうしの間でも直接伝達できるようにすると共に、上方のプレキャストコンクリートパネルと下方のプレキャストコンクリートパネルは、下方のプレキャストコンクリートパネルの上端の接合面に設けられ接合剤を充填した接合用穴の内部に、上方のプレキャストコンクリートパネルの下端の接合面から突出させた接合用ピンの突出部を挿入し、前記接合剤の硬化により固定してあることを特徴とするプレキャストコンクリートパネル構造物。
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