JP3854503B2 - 面木、目地棒等の建築用型枠材及びその製造方法 - Google Patents

面木、目地棒等の建築用型枠材及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート、モルタル構造物の面取りに使用する面木や目地形成に使用する目地棒等の建築用型枠材及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、機械強度、耐熱性及び低収縮性を有し、外観が良好で、廃棄する時の焼却処分対策を考慮した面木、目地棒等の建築用型枠材成物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
面木、目地棒等の建築用型枠材は、旧来より使用されている木製や、特開平11−141120号公報の面木又は特開平11−141121号公報の目地棒のように合成樹脂製、或いは実用新案登録第3073979号公報の目地棒、面木のように生分解性プラスチック製であることが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、木製の面木、目地棒等の建築用型枠材は、釘うち適性に優れるものの、水を吸収しやすく、吸水により反り、ねじれ、曲がり等の変形を起こしてしまい、また寸法安定性が良くない。ラワン材等の南洋材を用いて面木、目地棒等の建築用型枠材とすることがあるが、森林破壊など地球環境保護の観点から今後は使用し難くなる。
【0004】
一方、合成樹脂製の面木、目地棒等の建築用型枠材は、水を吸収し難く、変形を生じ難く、コンクリート表面を平滑にできるので仕上も美しく、施工の観点からは好ましい。しかし、前記公報で使用されている軟質塩化ビニル、硬質塩化ビニール、ABS樹脂或いはエラストマーの面木、目地棒等の建築用型枠材は、複数の樹脂やエラストマーが一体として使用されているため分離回収がし難い。また木製コンクリートパネルと併用すると分別回収しなければならない煩雑さが生じ、一般ごみとして焼却できない。焼却すれば有害ガスや黒煙が発生しやすい。さらに焼却時の発熱カロリーが高く、焼却炉を傷めやすい。ポリスチレン等の有害ガスを発生し難い合成樹脂製で面木、目地棒等の建築用型枠材を製造したとしても、解決されるのは有害ガスの発生抑制の点だけであり、木製コンクリートパネルとの分別回収は必須であり、黒煙発生、焼却炉の損傷は防止しがたい。さらに施工時において、合成樹脂は帯電しやすいため静電気が発生しやすく、鋸引き時に切り粉が型枠材の表面に付着しやすい。さらに、釘うち適性が不充分であることが多い。
【0005】
生分解性プラスチック製の面木、目地棒等の建築用型枠材は、合成樹脂と比較して高価であり、ワンウェイとして使用するこれらの型枠材としては工業的、商業的に競争力に劣る。
【0006】
したがって、ねじれ等の変形を起こさず、寸法安定性に優れ、コンクリートとの離型性、表面平滑性、低帯電性を備え、かつ焼却時に有害ガスや黒煙を発生せず、焼却炉を傷めにくいという要求特性をバランス良く満たす面木、目地棒等の建築用型枠材は存在しなかった。
【0007】
面木、目地棒は、その基本特性として強アルカリ性であるコンクリートに対する耐アルカリ性や乾燥後のコンクリートより離型させ易くするために使用される溶剤系の剥離剤に対する耐薬品性並びに釘うち適性がさらに要求される。特に塩化ビニルやポリスチレン製の物は剥離剤の溶剤が付着するとその表面が侵され、コンクリートと接着状態になり離型ができなくなるという問題もある。
【0008】
本発明の第一の目的は、耐アルカリ性、溶剤系の剥離剤等に対する耐薬品性、釘うち適性の基本特性を有することはもちろんのこと、上記課題である耐吸湿性、耐変形性、高寸法安定性、コンクリート良離型性、表面平滑性及び低帯電性を同時に備え、かつ紙として扱うことを可能とすることで木製コンクリートパネルと分別回収することなく焼却することができ、その焼却時に有害ガスや黒煙を発生せず、しかも焼却炉を傷めにくい面木、目地棒等の建築用型枠材を提供することである。
【0009】
本発明の第二の目的は、面木、目地棒等の建築用型枠材中の全塩素含有量と有機塩素量を所定量以下とすることで、焼却処分をしても塩素系有害ガスを発生しない、環境負荷の少ない面木、目地棒等の建築用型枠材を提供することである。
【0010】
本発明の第三の目的は、建築用型枠材である樹脂繊維複合成形体の表面に、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂スキン層を形成することで、耐吸湿性、コンクリート離型性、表面平滑性、端部強度性が特に優れた面木、目地棒等の建築用型枠材を提供することである。
【0011】
本発明の第四の目的は、特に、焼却時に黒煙を発生せず、且つ焼却炉を傷めるほどの発熱カロリーを発生しない面木、目地棒等の建築用型枠材、或いは回収漏れがあったとしても自然分解可能な面木、目地棒等の建築用型枠材を提供することである。
【0012】
本発明の第五の目的は、繊維材料から無機填料をほとんど除去せしめることで、繊維材料と熱可塑性樹脂との密着性を高め、また型枠材表面からの無機填料の転出を低下させることが可能な面木、目地棒等の建築用型枠材を提供することである。
【0013】
本発明の第六の目的は、所定配合の繊維材料と熱可塑性樹脂と各種添加成分からなる樹脂繊維複合組成物のペレットを用いて、押出機のスクリュ部全体を減圧下で加熱溶融混練せしめながらダイから押出し成形することで、混練効率が高く、分散性が良好であり、且つ繊維材料の酸化劣化及び酸化劣化による着色化を防止することが可能な面木、目地棒等の建築用型枠材の製造方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明者は鋭意研究した結果、粉砕された天然パルプ、粉砕された非塗工紙又は粉砕された非塗工古紙のうち少なくとも一種類からなる繊維材料と熱可塑性樹脂を所定割合で複合材料化した結果、全て課題を解決するに至った。すなわち、本発明に係る面木、目地棒等の建築用型枠材は、20〜200メッシュパスとなるまで、粉砕された天然パルプ、粉砕された非塗工紙及び粉砕された非塗工古紙のうち少なくとも一種類からなる繊維材料を熱可塑性樹脂に分散させた樹脂繊維複合成形体であって、該樹脂繊維複合成形体は、押出し成形によって成形されてなり、かつ前記繊維材料を51〜80重量%含有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る面木、目地棒等の建築用型枠材では、前記繊維材料中の全塩素含有量が500ppm以下であり、かつ有機塩素量が150ppm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る面木、目地棒等の建築用型枠材では、前記樹脂繊維複合成形体は、前記熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂スキン層を表面に形成することが好ましい。
【0017】
本発明に係る面木、目地棒等の建築用型枠材では、前記熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂又は生分解性樹脂であることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る面木、目地棒等の建築用型枠材では、前記繊維材料は、無機填料が除去されていることが好ましい。
【0019】
本発明に係る面木、目地棒等の建築用型枠材の製造方法は、20〜200メッシュパスとなるまで、粉砕された天然パルプ、粉砕された非塗工紙及び粉砕された非塗工古紙のうち少なくとも一種類からなる繊維材料の含有率が51〜80重量%となるように該繊維材料と熱可塑性樹脂と相溶化剤、酸化防止剤又はその両方とを配合した樹脂繊維複合組成物のペレットを用いて、押出機のスクリュ部全体を減圧下で加熱溶融混練せしめながらダイから押出し成形することを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態、実施例について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態、実施例に限定して解釈されない。
【0021】
本発明に係る面木、目地棒等の建築用型枠材は、20〜200メッシュパスとなるまで、粉砕された天然パルプ、粉砕された非塗工紙及び粉砕された非塗工古紙のうち少なくとも一種類からなる繊維材料を熱可塑性樹脂に分散させた樹脂繊維複合成形体であって、樹脂繊維複合成形体は、押出し成形によって成形されてなり、かつ繊維材料を51〜80重量%含有する。以下、面木を例にして発明を説明するが、目地棒についても樹脂繊維複合成形体の形状が異なるだけで同様である。図1に、本発明に係る面木の一形態を示す概略図を示す。面木100は、かさ密度を低減するために樹脂繊維複合成形体1の内部に中空部2を有する。樹脂繊維複合成形体1は、繊維材料を熱可塑性樹脂に分散させた樹脂繊維複合材料を面木に成形したものである。
【0022】
本発明に使用する熱可塑性樹脂は、その構造中に塩素を含まない熱可塑性樹脂が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂、或いはポリ乳酸、ポリカプトラクトン等の生分解性樹脂が特に望ましい。これらは、単独又は2種以上の混合物でも用いられる。
【0023】
本発明に使用する繊維材料は、粉砕された天然パルプ、粉砕された非塗工紙及び粉砕された非塗工古紙のうち少なくとも一種類からなる繊維である。したがって、これらのものを単独又は2種以上の混合物としても良い。
【0024】
前記繊維材料は、全塩素含有量が500ppm以下であり、かつ有機塩素量が150ppm以下であることが好ましい。繊維材料の全塩素含有率が500ppm以下であり、かつ有機塩素量が150ppm以下としたのは、焼却時の有害ガス発生防止のためであり、本来可能な限り塩素含有量を少なくしたいが、現在の技術で最も塩素化合物の少ないTCF、ECFパルプを用いることで達成される。
【0025】
本発明で使用する天然パルプは、蒸解した後のものか、蒸解した後に漂白剤で所望の白色度迄漂白したものである。ただし、塩素ガス以外の漂白剤で所望の白色度迄漂白したものがより好ましい。パルプは一般には木材を原料とするが、場合によってはバガス、ケナフ等の非木材を使用しても良い。
【0026】
塩素ガス以外の漂白剤としては、酸素、二酸化塩素、次亜塩素酸ソーダ、オゾン、過酸化水素、過酢酸等が挙げられるが、これらのうち、工業的に進められているのは二酸化塩素を主体とする漂白工程で、これは塩素を構造中に含む化合物を用いるものの塩素ガスを用いない方式で、この方式で製造されたパルプは通常ECF(Elemental Chroline Free)パルプと称せられている。
【0027】
一例として、このECFパルプ(蒸解後、酸素→二酸化塩素→アルカリ→二酸化塩素の工程で漂白されたパルプ)及び従来法である塩素漂白パルプ(蒸解後、酸素→塩素→アルカリ→次亜塩素酸ソーダ→二酸化塩素で漂白されたパルプ)中の塩素量及びダイオキシン量を測定すると、表1の様な結果が得られ、ECFパルプは塩素漂白パルプに比べ有機塩素量、ダイオキシン量ともに格段に少ないことは明らかである。
【0028】
【表1】
Figure 0003854503
【0029】
ダイオキシン含有量の測定は、平成9年2月厚生省環境課より指示され廃棄物処理におけるダイオキシン類測定マニュアルに従った。更に漂白剤として塩素ガスとともに塩素化合物を使用しない漂白法(例えばオゾン、過酸化水素のみを使用)で製造されたパルプは通常TCF(Totally Choline Free)パルプと称せられるが、このパルプ中の塩素量、ダイオキシン量は当然少ない。
【0030】
本発明では漂白していないパルプ、或いはECFパルプ又はTCFパルプが推奨される。その他必要に応じて機械パルプ、古紙パルプ等と併用できるが、この場合においても全塩素含有量は500ppm以下で、かつ有機塩素量が150ppm以下であることが好ましい。すなわち非塗工古紙を用いる場合には、ECFパルプ又はTCFパルプを用いたことが判明しうる古紙を用いることが好ましい。
【0031】
また天然パルプは、熱可塑性樹脂中における分散性を高めるために通常20〜200メッシュパス程度に粉砕したものが用いられる。
【0032】
本発明で使用する非塗工紙では、このようにして得られた天然パルプを原料として用い、必要に応じて紙力剤、内添サイズ剤、無機填料、染料等が配合された紙料スラリーから抄紙機により紙匹を形成する。
【0033】
紙力剤としてはカチオン澱粉、ポリアクリルアマイド等が用いられ、内添サイズ剤としては酸性ロジンサイズ、中性ロジンサイズ、アルケニル琥珀酸無水物、アルキルケテンダイマー等が用いられ、無機填料としてはカオリン、クレー、炭カル、タルク、酸化チタン、珪酸アルミ等が用いられる。
【0034】
塗布液としては、表面サイズ剤としてスチレンアクリル酸等サイズ性を向上させる薬剤の他、澱粉、澱粉誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)等も用いられる。
【0035】
天然パルプと混合配合される内添薬品、表面塗布処理薬品は上記に限定されるものでない。いずれも本発明ではその構造中に塩素を含まない物質を用いることが好ましい。
【0036】
本発明で使用する非塗工紙としては、一旦抄紙加工した成紙を寸法調整した際に発する端材を例示することができる。また本発明で使用する非塗工古紙は、オフィスオートメーション非塗工古紙(OA古紙)を例示することができる。これらの非塗工紙、非塗工古紙は、全塩素含有量が500ppm以下で、かつ有機塩素量が150ppm以下であることが好ましい。
【0037】
本発明では、前記の非塗工紙、非塗工古紙を繊維同士のからみ合いをなくすように粉砕したものを繊維原料として用いる。通常20〜200メッシュパス程度に粉砕したものが用いられる。
【0038】
天然パルプをそのまま本発明の繊維材料とする場合には、無機填料は含まれないが、非塗工紙或いは非塗工古紙は前記したように無機填料を含有する。本発明では、粉砕された非塗工紙或いは粉砕された非塗工古紙の少なくともいずれかを繊維材料として含む場合には、粉砕された非塗工紙或いは粉砕された非塗工古紙から無機填料をほとんど除去して用いることが好ましい。カオリン、クレー、炭カル、タルク、酸化チタン、珪酸アルミ等の無機填料を除去して樹脂繊維複合成形体として成形することにより、繊維材料と熱可塑性樹脂との密着性を高め、また型枠材表面からの無機填料の転出を低下させることができるからである。
【0039】
本発明の面木100の樹脂繊維複合成形体1は、繊維材料を51〜80重量%、好ましくは55〜65重量%含有する。繊維材料を51重量%以上とすることにより、成形された建築用型枠材は紙と同様に扱うことができ、すなわち焼却ごみとして扱うことができる。また有害ガスの発生もない。従って、木製コンクリートパネルと分別回収する必要はなくなる。また熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂を選択した場合、ポリプロピレン樹脂単体の成形体では、燃焼時に発熱カロリーが11000kcal/kgと高く、しかも溶融したポリプロピレン樹脂が液垂れを起こし、焼却炉を損傷してしまう。繊維材料が51重量%未満では、ポリプロピレン樹脂単体の成形体の場合ほどではないものの、焼却炉を痛める場合があり好ましくない。一方、繊維材料が80重量%を超えると、焼却時の発熱カロリーが紙本来の4000〜4500kcal/kgに近づくので焼却炉の損傷問題は解決されるものの、樹脂繊維複合成形体の強度が低下すると共に吸湿性を有するようになり好ましくない。
【0040】
成形体の強度の観点からは、繊維材料が51〜70重量%の範囲であることが好ましく、このとき剛性、曲げ強度はプラスチックより高くなる。建築用型枠材として特に強度も要求される場合には、繊維材料が51〜70重量%の範囲になる樹脂繊維複合成形体とする。
【0041】
本発明の建築用型枠材は、繊維材料と熱可塑性樹脂の他に必要に応じて無機充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、離型剤等の成分を適時添加することができる。
【0042】
図2に示すように、樹脂繊維複合成形体3は、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂スキン層5を表面に形成することが好ましい。樹脂スキン層における繊維材料の含有率は、樹脂繊維複合成形体3全体の繊維材料の含有率よりも低い51重量%未満であることが好ましく、より好ましくは20重量%以下、さらに0重量%、すなわち樹脂のみからなる層であることが最も好ましい。樹脂スキン層5と樹脂繊維複合成形体3の内部は、組成差による明確な境界を有する必要はなく、繊維材料の含有率の傾斜があっても良い。いずれにしても、樹脂繊維複合成形体表面において熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂スキン層が形成されていることが重要である。樹脂スキン層を設けることにより、耐吸湿性、コンクリート離型性、表面平滑性、端部強度性が特に優れた面木を提供することができる。なお、中空部4の内壁表面6に樹脂スキン層を形成することはさらに好ましい。耐吸湿性が良くなるからである。
【0043】
次に本発明の面木、目地棒等の建築用型枠材の製造方法について説明する。まず、天然パルプ、一旦抄紙加工した成紙を寸法調整した際に発する端材等の非塗工紙及び非塗工古紙のうち少なくとも一種類を、粉砕機(例えばCONDUX社製 CSカッター)で100メッシュパスさせ、粉砕を行ない、粉砕された繊維材料を製造する。
【0044】
次に上記の粉砕された繊維材料、熱可塑性樹脂及び必要に応じて各種添加成分が配合するように樹脂繊維複合組成物のペレットを製造する。配合は、繊維材料の含有率が51〜80重量%となるように行う。
【0045】
本発明の組成物を得るための混合手段としては、公知の手段、例えばリボンブレンダー、高速ミキサー、押出機、ミキシングロール等が使用できる。なお、ペレット製造時においても酸化を防止するために減圧下で混合することが好ましい。
【0046】
ここで各種添加成分とは、相溶化剤、酸化防止剤である。相溶化剤は、熱可塑性樹脂と繊維材料表面との密着性を高めると共に分散性を向上させるために添加する。酸化防止剤は繊維材料の酸化を防止し、高温成形による焦げによる着色を防止するために添加する。これらの目的を達成するため、適宜選択して用いる。
【0047】
製造した樹脂繊維複合組成物のペレットを用いて、押出機のスクリュ部全体を減圧下で加熱溶融混練せしめながらダイから押出成形する。押出機のスクリュ部全体を減圧下で加熱溶融混練せしめながらダイから押出成形した場合、減圧下の加熱であるため樹脂は低融点で溶融し、パルプと良く混ざり、コゲ等もなく成形が良好に行われる。
【0048】
本発明では、紙中に含まれる環境に有害な物質の指標として全塩素量及び有機塩素量を取上げている。全塩素量は三菱化成製、塩素・硫黄分析装置TSX−10型を用いて、検体約10mgを燃焼させ、電量滴定による塩化物イオンの定量により求めた。この測定により有機塩素、無機塩素を問わず紙中の塩素量が求められる。有機塩素量は、全塩素量から無機塩素量を差し引いた値を用いた。無機塩素量は、試料5gを熱水抽出し、抽出液中の塩素イオンをイオンクロマトグラフ法により測定して求めた。
【0049】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでない。
(実施例1)
ECFパルプの上質古紙を粉砕機(CONDUX社製 CSカッター)で100メッシュパスの繊維材料を得た。得られた繊維材料とポリプロピレン樹脂を繊維材料が55重量%となる割合で混合し、さらに酸化防止剤(イルガノックス1010(チバガイギー製))を加えて、高速ミキサー・押出機にて混練造粒し樹脂繊維複合組成物のペレットを得た。その後、押出機のスクリュ部全体を減圧下で加熱溶融混練せしめながらダイから押出成形して図1の形状の面木を製造した。
【0050】
(実施例2)
相溶化剤(マレイン酸変性PP(三洋化成製 ユーメックス1010))を加えた以外は実施例1と同様にして図1の形状の面木を製造した。
【0051】
(実施例3)
樹脂繊維複合組成物のペレットを得たのち、押出機のスクリュ部全体を減圧下で加熱溶融混練せしめながらダイから押出成形する際の押出成形条件を実施例1の条件よりも高温高速で押出し成形することにより、図2の形状の面木のように、面木の樹脂繊維複合成形体の表面に熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂スキン層を形成した。
【0052】
(実施例4)
100メッシュパスの繊維材料として、一旦ECFパルプを使用して抄紙加工した成紙を寸法調整した際に発する端材等の非塗工紙を用いた以外は実施例1と同様にして面木を製造した。
【0053】
(実施例5)
実施例4において、繊維材料から無機填料を除去したものを用いた以外は実施例1と同様にして面木を製造した。
【0054】
(実施例6)
100メッシュパスの繊維材料として天然パルプを用いた以外は実施例1と同様にして面木を製造した。
【0055】
(実施例7)
100メッシュパスの繊維材料として、実施例1のECFパルプの上質古紙、実施例4の一旦抄紙加工した成紙を寸法調整した際に発する端材等の非塗工紙及び実施例6の天然パルプをそれぞれ粉砕したものを等重量で配合したものを用いた以外は実施例1と同様にして面木を製造した。
【0056】
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂ペレットを押出機のスクリュ部全体を減圧下で加熱溶融混練せしめながらダイから押出成形して図1の形状の面木を製造した。
【0057】
(比較例2)
実施例1と同形状の木製面木を比較例2とした。
【0058】
(比較例3)
実施例1において、得られた繊維材料とポリプロピレン樹脂を繊維材料が45重量%となる割合で混合した以外は同様にして、面木を製造した。
【0059】
(比較例4)
実施例1において、得られた繊維材料とポリプロピレン樹脂を繊維材料が85重量%となる割合で混合した以外は同様にして、面木を製造した。
【0060】
実施例1、2及び比較例1について各種基本物性を測定し、表2にまとめた。なお、成形収縮率において自社法とは、縦8cm横8cm厚さ0.3cmの射出成形金型の寸法に対する比として測定した。
【表2】
Figure 0003854503
【0061】
実施例1〜7及び比較例1〜4の面木と木製コンクリートパネルを用いて、コンクリート構造物を製造し、下記の評価を行ない、結果を表3にまとめた。
(耐アルカリ性)
コンクリートのアルカリ成分により、目視で面木の劣化がない場合には○、劣化がある場合には×とした。
(耐薬品性)
剥離剤を塗布することにより、目視で面木の劣化がない場合には○、劣化がある場合には×とした。
(釘うち適性)
面木に釘を打ち、釘の保持力が充分な場合には○、実用上問題ないがやや弱いときは△、保持力がなく釘が抜ける場合は×とした。
(耐吸湿性)
ねじれ、ひけ、膨らみ等の変形が全く生じない場合は◎、殆ど生じない場合には○、変形が生じた場合は×とした。
(寸法安定性)
面木によりできた面の精度が設計どおり出ている場合は○、実用上問題ないがやや精度に劣る場合を△、精度が不充分な場合は×とした。
(コンクリートとの離型性)
離型したときに面木にコンクリートが全く付着していない場合は◎、殆ど付着していない場合は○、付着する場合は×とした。
(表面平滑性)
離型した時のコンクリート面の平滑性が目視で特に良い場合は◎、良い場合は○、曇りがある等の悪い場合は×とした。
(低帯電性)
面木に木の切り粉等が付着しにくい場合は○、殆ど付着しておらず実用上問題とならない場合は△、付着しやすい場合は×とした。
(焼却時の分別の必要性)
焼却時に木製コンクリートパネルと分別回収が不要な場合を○、必要な場合には×とした。
(焼却時の黒煙発生の有無)
面木の端部を着火して、黒煙発生の有無を目視で評価した。黒煙が発生しない場合を○、黒煙がわずかに発生する場合を△、黒煙が発生する場合を×とした。(焼却炉の損傷)
焼却炉の損傷は、発熱カロリーとプラスチック燃焼時の液だれによる。発熱カロリーは表2に示したので、本評価は、液だれの有無を目視して評価した。液だれを起こさない場合を○、液だれを起こす場合を×とした。
【0062】
なお、焼却時の有害ガス発生の有無について、ECFパルプを用いた場合には、塩素含有が非常に少ないので塩素起因の有毒ガスは発生しないと判断した。
【0063】
【表3】
Figure 0003854503
【0064】
表2から、実施例1及び2と比較例1を比較した場合、実施例1及び2は、発熱カロリーが小さく、寸法安定性が良く、曲げ強度、曲げ弾性率が大きい。
【0065】
表3からわかるように、実施例1〜7は、面木、目地棒等の建築用型枠剤として要求される特性をバランス良く有していた。また、押出機のスクリュ部全体を減圧下で加熱溶融混練せしめながらダイから押出し成形することで、混練効率が高く、分散性が良好で、かつ繊維材料の酸化劣化及び酸化劣化による着色化を防止することができた。
【0066】
樹脂スキン層を形成した実施例3は、耐吸湿性、コンクリートとの離型性及び表面平滑性が特に優れていた。さらに実施例3は、面木の端部における強度が大きく、端部において亀裂が生ずることがなかった。
【0067】
実施例5は、無機填料が熱可塑性樹脂中に分散することがなく、繊維材料と熱可塑性樹脂との高い密着性が得られた。また型枠材表面からの無機填料の転出がなく、コンクリートの表面平滑性に優れていた。
【0068】
一方、比較例1は、帯電しやすく、焼却時の分別回収が必要である。寸法安定性がやや劣る。また、液だれを生じ、発熱カロリーも大きいので焼却炉を損傷しやすい。
【0069】
比較例2は、従来から用いられている面木であり、面木、目地棒等の建築用型枠剤として要求される特性をバランス良く満たしていない。
【0070】
比較例3は、焼却時の分別回収が必要である。
【0071】
比較例4は、耐吸湿性、コンクリートとの離型性、表面平滑性が劣る。
【0072】
本実施例では面木について行ったが、目地棒等の建築用型枠剤についても同様の結果を得た。
【0073】
【発明の効果】
請求項1記載の発明により、耐アルカリ性、溶剤系の剥離剤等に対する耐薬品性、釘うち適性等の基本特性、並びに耐吸湿性、耐変形性、高寸法安定性、コンクリート良離型性、表面平滑性及び低帯電性を同時にバランス良く備え、かつ紙と同様に扱える、すなわち木製コンクリートパネルと分別回収することなく焼却することができ、その焼却時に有害ガスや黒煙を発生せず、しかも焼却炉を傷めにくい面木、目地棒等の建築用型枠材を提供することができた。
【0074】
請求項2記載の発明により、焼却処分をしても塩素系有害ガスを発生しない、環境負荷の少ない面木、目地棒等の建築用型枠材を提供することができた。
【0075】
請求項3記載の発明により、耐吸湿性、コンクリート離型性、表面平滑性、端部強度性が特に優れた面木、目地棒等の建築用型枠材を提供することができた。
【0076】
請求項4記載の発明により、焼却時に黒煙を発生せず、且つ焼却炉を傷めるほどの発熱カロリーを発生しない面木、目地棒等の建築用型枠材、或いは回収漏れがあったとしても自然分解可能な面木、目地棒等の建築用型枠材を提供することができた。
【0077】
請求項5記載の発明により、繊維材料と熱可塑性樹脂との密着性を高め、また型枠材表面からの無機填料の転出を低下させることが可能な面木、目地棒等の建築用型枠材を提供することができた。
【0078】
請求項6記載の発明により、混練効率が高く、分散性が良好で、かつ繊維材料の酸化劣化及び酸化劣化による着色化を防止することが可能な目地棒等の建築用型枠材の製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る面木の一形態を示す概略図であって、(a)は斜視図、(b)はA-A断面図を示すものである。
【図2】本発明に係る樹脂スキン層を形成した面木の一形態を示す概略図であって、(a)は斜視図、(b)はB-B断面図を示すものである。
【符号の説明】
1,3,樹脂繊維複合成形体
2,4,中空部
5,樹脂スキン層
6, 樹脂繊維複合成形体の内壁表面
100,200,面木

Claims (6)

  1. 20〜200メッシュパスとなるまで、粉砕された天然パルプ、粉砕された非塗工紙及び粉砕された非塗工古紙のうち少なくとも一種類からなる繊維材料を熱可塑性樹脂に分散させた樹脂繊維複合成形体であって、該樹脂繊維複合成形体は、押出し成形によって成形されてなり、かつ前記繊維材料を51〜80重量%含有することを特徴とする面木、目地棒等の建築用型枠材。
  2. 前記繊維材料中の全塩素含有量が500ppm以下であり、かつ有機塩素量が150ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の面木、目地棒等の建築用型枠材。
  3. 前記樹脂繊維複合成形体は、前記熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂スキン層を表面に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の面木、目地棒等の建築用型枠材。
  4. 前記熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂又は生分解性樹脂であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の面木、目地棒等の建築用型枠材。
  5. 前記繊維材料は、無機填料が除去されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の面木、目地棒等の建築用型枠材。
  6. 20〜200メッシュパスとなるまで、粉砕された天然パルプ、粉砕された非塗工紙及び粉砕された非塗工古紙のうち少なくとも一種類からなる繊維材料の含有率が51〜80重量%となるように該繊維材料と熱可塑性樹脂と相溶化剤、酸化防止剤又はその両方とを配合した樹脂繊維複合組成物のペレットを用いて、押出機のスクリュ部全体を減圧下で加熱溶融混練せしめながらダイから押出し成形することを特徴とする面木、目地棒等の建築用型枠材の製造方法。
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