JP3852927B2 - 周波数逓倍器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無線通信用IC等に用いられるスプリアスの少ない周波数逓倍器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在一般に使用されている周波数逓倍器(第1の従来例)を図7に示す。本構成では、バッファ回路1に周波数foの差動信号が入力すると、そのバッファ回路1により駆動されたRCポリフェーズフィルタ2により直交差動信号(I成分の差動信号とQ成分の差動信号)が生成され、差動型ミキサ回路5によりその直交差動信号を乗算することで2逓倍信号(2fo)が発生する。直交差動信号を乗算する差動型ミキサ回路5は、図9に示すような下段の差動対を構成するトランジスタQ1,Q2、上段の差動対を構成するトランジスタQ3,Q4とトランジスタQ5,Q6、負荷抵抗R1,R2、定電流源I1から構成される一般的な回路である。
【0003】
図8に別の周波数逓倍器(第2の従来例)を示す。本構成では、バッファ回路1に周波数foの差動信号が入力すると、そのバッファ回路1により駆動されたRCポリフェーズフィルタ2により直交差動信号(I成分の差動信号とQ成分の差動信号)が生成され、差動型逓倍回路6で2逓倍信号(2fo)が発生する。直交差動信号を乗算する差動型逓倍回路6は、図10に示すような第1の差動対を構成するトランジスタQ7,Q8、第2の差動対を構成するトランジスタQ9,Q10、負荷抵抗R3,R4、定電流源I2から構成される一般的な回路である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、MOSトランジスタで構成した差動型ミキサ回路5や差動型逓倍回路6では、入力に用いるトランジスタの差動対に閾値オフセットが10mV程度存在する。このため、入力信号である差動信号の振幅をA、閾値オフセットをbとすると、上記の周波数逓倍器による2逓倍信号は、
(A・cosωt+b/2)(A・sinωt+b/2)
=A2/2・sin2ωt+Ab/2・(cosωt+sinωt)+b 2 /4 (1)
となり、逓倍されない信号がスプリアスとして残存するという問題があった。
【0005】
本発明は以上のような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、スプリアスの少ない周波数逓倍器を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1にかかる発明は、第1の差動入力信号が入力する第1の差動型リミット増幅器と、前記第1の差動入力信号と直交する第2の差動入力信号が入力する第2の差動型リミット増幅器と、第1乃至第4の容量と、差動型ミキサ回路とを具備し、前記第1の差動型リミット増幅器の差動出力端子は前記第1および第2の容量を介して前記差動型ミキサ回路の一方の差動入力端子に接続され、前記第2の差動型リミット増幅器の差動出力端子は前記第3および第4の容量を介して前記差動型ミキサ回路の他方の差動入力端子に接続され、且つ、前記差動型ミキサ回路の前記一方の差動入力端子および前記他方の差動入力端子の差動入力信号の振幅がそれぞれA、前記差動型ミキサ回路の入力に用いるトランジスタの各差動対の閾値オフセットがbであるとき、前記振幅Aが、A≧10√(2)×bとなるように設定されていることを特徴とする周波数逓倍器とした。
【0007】
請求項2にかかる発明は、第1の差動入力信号が入力する第1の差動型リミット増幅器と、前記第1の差動入力信号と直交する第2の差動入力信号が入力する第2の差動型リミット増幅器と、第1乃至第4の容量と、差動型逓倍回路とを具備し、前記第1の差動型リミット増幅器の差動出力端子は前記第1および第2の容量を介して前記差動型逓倍回路の一方の差動入力端子に接続され、前記第2の差動型リミット増幅器の差動出力端子は前記第3および第4の容量を介して前記差動型逓倍回路の他方の差動入力端子に接続され、且つ、前記差動型逓倍回路の前記一方の差動入力端子および前記他方の差動入力端子の差動入力信号の振幅がそれぞれA、前記差動型逓倍回路の入力に用いるトランジスタの各差動対の閾値オフセットがbであるとき、前記振幅Aが、A≧10√(2)×bとなるように設定されていることを特徴とする周波数逓倍器とした。
【0013】
【発明の実施の形態】
[第1の実施の形態]
図1は本発明の第1の実施の形態の周波数逓倍器の構成を示すブロック図である。1は周波数foの差動信号が入力するバッファ回路、2はバッファ回路1の出力差動信号から直交差動信号(I成分の差動信号とQ成分の差動信号)を生成するRCポリフェーズフィルタ、3はI成分の差動信号を増幅する第1の差動型リミッタ増幅器、4はQ成分の差動信号を増幅する第2の差動型リミッタ増幅器、C1,C2は第1の差動型リミッタ増幅器3の差動出力側に接続された直流カット用の容量、C3,C4は第2の差動型リミッタ増幅器4の差動出力側に接続された直流カット用の容量、5はI成分の差動信号とQ成分の差動信号を乗算する差動型ミキサ回路である。
【0014】
無線通信の復調回路で周波数逓倍器を用いる場合は、スプリアスとなる逓倍されない信号は、逓倍信号よりも20dB以上小さいことが望まれる。したがって、前記した(1)式より、振幅Aは、
A≧10√(2)×b≒140mV
となる必要がある。
【0015】
そこで本実施形態では、RCポリフェーズフィルタ2と差動型ミキサ回路5との間に、差動型リミッタ増幅器3,4を容量結合により挿入して、逓倍前の各差動信号を充分に増幅する。本実施形態では、差動型リミッタ増幅器3,4における閾値オフセットによる影響は容量C1〜C4による結合により除去され、差動型ミキサ回路5に入力する差動信号の振幅を140mVよりも充分大きくすることでスプリアスの小さい周波数逓倍器を実現できる。
【0016】
[第2の実施の形態]
図2は本発明の第2の実施の形態の周波数逓倍器の構成を示すブロック図である。図1に示したものと同じものには同じ符号を付けた。6はI成分の差動信号とQ成分の差動信号を入力して差動の2逓倍信号(2fo)を生成する差動型逓倍回路である。
【0017】
本実施形態は、図2における差動型ミキサ回路5を、差動型逓倍回路6に置き換えたものであり、第1の実施形態と同様に、差動型逓倍回路6への入力信号振幅を140mVよりも充分大きくすることで、スプリアスの小さい周波数逓倍器を実現している。
【0018】
[第3の実施の形態]
図3は本発明の第3の実施の形態の周波数逓倍器の構成を示すブロック図である。図1に示したものと同じものには同じ符号を付けた。7はI成分の差動信号とQ成分の差動信号を乗算して差動の2逓倍信号(2fo)を生成すると共に、閾値オフセットを補償する閾値オフセット補償式差動型ミキサ回路である。
【0019】
この閾値オフセット補償式差動型ミキサ回路7の具体的回路を図5に示す。Q1,Q2は下段の差動対を構成するトランジスタ、Q3,Q4とQ5,Q6は上段の差動対を構成するトランジスタ、R1,R2は負荷抵抗、I1は定電流源であり、以上は図9で説明した差動型ミキサ回路5の構成と同じである。
【0020】
ここでは、さらに、トランジスタQ3、Q6のゲートと入力端子Qとの間に容量C5を、トランジスタQ4,Q5のゲートと入力端子−Qとの間に容量C6を、トランジスタQ1のゲートと入力端子Iとの間に容量C7を、トランジスタQ2のゲートと入力端子−Iとの間に容量C8を各々接続して、入力信号の直流カットを行っている。
【0021】
また、71は第1の閾値オフセット補償回路であり、差動増幅器711と抵抗R5〜R8と閾値オフセット補償用容量C9とから構成されている。72は第2の閾値オフセット補償回路であり、差動増幅器721と抵抗R9,R10と閾値オフセット補償用容量C10とから構成されている。
【0022】
S1〜S4は上段の差動対を本差動型ミキサ回路7の差動出力端子に接続するための第1のスイッチ群のスイッチ、S5〜S10は第1の閾値オフセット補償回路71を上段の差動対の入出力間に接続するための第2のスイッチ群のスイッチ、S11〜S14は第2の閾値オフセット補償回路72を下段の差動対の入出力間に接続するための第3のスイッチ群のスイッチであり、スイッチS1〜S4がオンのときはS5〜S14はオフ、スイッチS1〜S4がオフのときはS5〜S14はオンとなるように制御される。
【0023】
本実施形態では、まず直交差動信号(I成分の差動信号とQ成分の差動信号)が入力していない状態で、スイッチS1〜S4をオフ、スイッチS5〜S14をオンに切り替える(図5の切替状態)。これにより、トランジスタQ3〜Q6は本差動型ミキサ回路7の差動出力端子への経路が遮断され、第1の閾値オフセット補償回路71がトランジスタQ3,Q4の差動対、トランジスタQ5,Q6の差動対の入出力間に負帰還接続され、閾値オフセット補償回路72がトランジスタQ1,Q2の差動対の入出力間に負帰還接続され、これにより各差動対の出力直流レベルがそれぞれ等しくなり、閾値オフセットが補償される。
【0024】
次に、直交差動信号を入力させるときは、スイッチS1〜S4をオン、スイッチS5〜S14をオフに切り替える(図5の切替状態と反対の切替状態)。このときは、前記した閾値オフセット補償回路71,72は各差動対から分離されるが、そこで生成した閾値オフセット補償電圧が容量C9,C10に保持される。容量C9の電圧はトランジスタQ3,Q4の差動対の入力端子間、トランジスタQ5,Q6の差動対の入力端子間に印加され、また容量C10の電圧はトランジスタQ1,Q2の差動対の入力端子間に印加され、これらによって閾値オフセット補償が行われる。以上により、スプリアスの少ない周波数逓倍器を実現することができる。
【0025】
なお、本実施形態では図9の差動型ミキサ回路5に閾値オフセット補償回路やスイッチ、抵抗、容量等を追加した構成としたが、図1に示した第1の実施形態の差動型ミキサ回路5に同様な回路や素子を追加した構成としても良い。
【0026】
[第4の実施の形態]
図4は本発明の第4の実施の形態の周波数逓倍器の構成を示すブロック図である。図1に示したものと同じものには同じ符号を付けた。8はI成分の差動信号とQ成分の差動信号を入力して差動の2逓倍信号(2fo)を生成すると共に、閾値オフセットを補償する閾値オフセット補償式差動型逓倍回路である。
【0027】
この閾値オフセット補償式差動型ミキサ回路8の具体的回路を図6に示す。Q7,Q8は第1の差動対を構成するトランジスタ、Q9,Q10は第2の差動対を構成するトランジスタ、R3,R4は負荷抵抗、I2は定電流源であり、以上は図10で説明した差動型逓倍回路6の構成と同じである。
【0028】
ここでは、さらに、トランジスタQ7のゲートと入力端子Iとの間に容量C11を、トランジスタQ8のゲートと入力端子−Iとの間に容量C12を、トランジスタQ9のゲートと入力端子Qとの間に容量C13を、トランジスタQ10のゲートと入力端子−Qとの間に容量C14を各々接続して、入力信号を直流カットしている。また、81は第1の閾値オフセット補償回路であり、差動増幅器811と抵抗R11〜R14と閾値オフセット補償用容量C15から構成されている。82は第2の閾値オフセット補償回路であり、差動増幅器821と抵抗R15〜R18と閾値オフセット補償用容量C16から構成されている。
【0029】
S15〜S18は第1および第2の差動対の出力側を本差動型逓倍回路8の差動出力端子に接続するための第1のスイッチ群のスイッチ、S19〜S22は第1の閾値オフセット補償回路81を第1の差動対の入出力間に接続するための第2のスイッチ群のスイッチ、S23〜S26は第2の閾値オフセット補償回路82を第2の差動対の入出力間に接続するための第3のスイッチ群のスイッチであり、スイッチS15〜S18がオンのときはS19〜S26はオフ、スイッチS15〜S18がオフのときはS19〜S26はオンとなるよう制御される。
【0030】
本実施形態では、まず直交差動信号(I成分の差動信号とQ成分の差動信号)が入力していない状態で、スイッチS15〜S18をオフ、スイッチS19〜S26をオンに切り替える(図6の切替状態)。これにより、トランジスタQ7〜Q10は本差動型逓倍回路8の差動出力端子への経路が遮断され、第1の閾値オフセット補償回路81がトランジスタQ7,Q8の差動対の入出力間に負帰還接続され、第2の閾値オフセット補償回路82がトランジスタQ9,Q10の差動対の入出力間に負帰還接続され、これにより各差動対の出力直流レベルがそれぞれ等しくなり、閾値オフセットが補償される。
【0031】
次に、直交差動信号を入力させるときは、スイッチS15〜S18をオン、スイッチS19〜S26をオフに切り替える(図6の切替状態と反対の切替状態)。このときは、前記した閾値オフセット補償回路81,82は第1および第2の差動対から分離されるが、そこで生成した閾値オフセット補償電圧が容量C15,C16に保持される。容量C15の電圧はトランジスタQ7,Q8の差動対の入力端子間に印加され、また容量C16の電圧はトランジスタQ9,Q10の差動対の入力端子間に印加され、これらによって閾値オフセット補償が行われる。以上により、スプリアスの少ない周波数逓倍器を実現することができる。
【0032】
なお、本実施形態では図10の差動型逓倍回路6に閾値オフセット補償回路、スイッチ、抵抗、容量等を追加した構成としたが、図2に示した第2の実施形態の差動型逓倍回路6に同様な回路や素子を追加した構成としても良い。
【0033】
また、以上説明した第1〜第4の実施形態では、直交差動信号を発生するためにRCポリフェーズフィルタ2を使用しているが、分周回路を用いた直交信号発生回路あるいは直交差動型ミキサ回路等を用いても良いことは言うまでもない。
【0034】
【発明の効果】
以上から本発明によれば、スプリアスの少ない周波数逓倍器を実現できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施の形態の周波数逓倍器のブロック図である。
【図2】 第2の実施の形態の周波数逓倍器のブロック図である。
【図3】 第3の実施の形態の周波数逓倍器のブロック図である。
【図4】 第4の実施の形態の周波数逓倍器のブロック図である。
【図5】 図3の周波数逓倍器の閾値オフセット補償式差動型ミキサ回路の具体的な回路図である。
【図6】 図4の周波数逓倍器の閾値オフセット補償式差動型逓倍回路の具体的な回路図である。
【図7】 第1の従来例の周波数逓倍器のブロック図である。
【図8】 第2の従来例の周波数逓倍器のブロック図である。
【図9】 図7の周波数逓倍器の差動型ミキサ回路の具体的な回路図である。
【図10】 図8の周波数逓倍器の差動型逓倍回路の具体的な回路図である。
【符号の説明】
1:バッファ回路
2:RCポリフェーズフィルタ
3:第1の差動型リミッタ増幅器
4:第2の差動型リミッタ増幅器
5:差動型ミキサ回路
6:差動型逓倍回路
7:閾値オフセット補償式差動型ミキサ回路、71:第1の閾値オフセット補償回路、72:第2の閾値オフセット補償回路
8:閾値オフセット補償式差動型逓倍回路、81:第1の閾値オフセット補償回路、82:第2の閾値オフセット補償回路
Claims (2)
- 第1の差動入力信号が入力する第1の差動型リミット増幅器と、前記第1の差動入力信号と直交する第2の差動入力信号が入力する第2の差動型リミット増幅器と、第1乃至第4の容量と、差動型ミキサ回路とを具備し、
前記第1の差動型リミット増幅器の差動出力端子は前記第1および第2の容量を介して前記差動型ミキサ回路の一方の差動入力端子に接続され、
前記第2の差動型リミット増幅器の差動出力端子は前記第3および第4の容量を介して前記差動型ミキサ回路の他方の差動入力端子に接続され、
且つ、前記差動型ミキサ回路の前記一方の差動入力端子および前記他方の差動入力端子の差動入力信号の振幅がそれぞれA、前記差動型ミキサ回路の入力に用いるトランジスタの各差動対の閾値オフセットがbであるとき、前記振幅Aが、
A≧10√(2)×b
となるように設定されていることを特徴とする周波数逓倍器。 - 第1の差動入力信号が入力する第1の差動型リミット増幅器と、前記第1の差動入力信号と直交する第2の差動入力信号が入力する第2の差動型リミット増幅器と、第1乃至第4の容量と、差動型逓倍回路とを具備し、
前記第1の差動型リミット増幅器の差動出力端子は前記第1および第2の容量を介して前記差動型逓倍回路の一方の差動入力端子に接続され、
前記第2の差動型リミット増幅器の差動出力端子は前記第3および第4の容量を介して前記差動型逓倍回路の他方の差動入力端子に接続され、
且つ、前記差動型逓倍回路の前記一方の差動入力端子および前記他方の差動入力端子の差動入力信号の振幅がそれぞれA、前記差動型逓倍回路の入力に用いるトランジスタの各差動対の閾値オフセットがbであるとき、前記振幅Aが、
A≧10√(2)×b
となるように設定されていることを特徴とする周波数逓倍器。
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