JP3852071B2 - 可逆断熱論理回路及びこれを利用したパイプライン可逆断熱論理装置 - Google Patents

可逆断熱論理回路及びこれを利用したパイプライン可逆断熱論理装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は可逆エネルギー復元論理回路に係り、特にNMOSトランジスター・ネットワークとクロス接続された一対のPMOSトランジスターを利用して、非断熱エネルギーの損失を除去した可逆断熱論理回路及びこれを利用したパイプライン可逆断熱論理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
断熱充電回路は、MOS論理回路での低消費電力化のための方法として提案されてから、多くの研究が続けられてきた。標準的なCMOS回路では、あるノード(node)の電圧を充電する時、電源に接続されているスイッチ(例えばMOSFET)を閉じれば、スイッチの両端の電位差をVddとする場合、ノード(容量CL)が完全に充電される時まで、スイッチの抵抗によって(1/2)CLdd 2の電力が消費される。しかし、ノードの電位と電源電位とが同一になれば、前記スイッチを通じて電源とノードが接続されても前記スイッチには電流が流れず、スイッチ抵抗による消費電力は無くなる。
【0003】
したがって、電源電圧をスイッチの抵抗(R)とノードの容量(CL)との時定数(RCL)に比べ、比較的ゆっくりと上げていけば、スイッチ両端の電位差を減少させながら、ノードの電位と電源電位が互いに近い値になるように上昇させることができる。そうすれば、ノードの電位と電源電位とのバランスが良くなり、ノードの容量を断熱的に充電させることができる。この時、スイッチの抵抗によって消費される電力は次のような数式1で表すことができる。
【0004】
数式1: E=I2RT=(CLdd/T)2RT=(2RCL/T)(1/2CLdd 2)上の数式1で、Tは充電に所要される時間を表している。ここで、Tを無限に大きくすると、ノードの容量(CL)の充電に必要な電力を0(ゼロ)にすることができる。こうした充電方法を断熱充電方法と言い、これは時定数 RCL とは関係のないCMOS回路の標準的な充電方法とでは、その消費電力に大きな差がある。
【0005】
例えば、図1のCMOSインバーターの場合、入力ノードN1への入力(VIN)が図2の(a)のように変化する時、出力ノードN2からの出力(VOUT)は、図2の(b)のように変化する。つまり、入力(VIN)が時刻t1で高レベルから低レベルへと下がれば、PMOSトランジスターQ1が導通される一方で、NMOSトランジスターQ2が遮断されるので、出力ノードN2は、PMOSトランジスターQ1を通じて、電源ライン1から充電電流I1によって電源電位Vdd まで充電される。
【0006】
これに対して入力(VIN)が時刻t2で低レベルから高レベルへと上昇すれば、PMOSトランジスターQ1が遮断される一方で、NMOSトランジスターQ2は導通されるので、出力ノードN2の電荷は、NMOSトランジスターQ2を通じて、放電電流I2によって電源ライン2に放電される。
【0007】
したがって、こうした通常の充電方法では図3に図示されているように、一定の電源電位 Vdd (α1)と出力ノードN2の電位(α2)との電位差(V1)がスイッチングによる損失の原因となる。これに対して前述した断熱充電方法では、電源電位(Vdd)は符号(α3)で示したように変化し、これに追随した形で出力ノードN2の電位も符号(α4)で示したように変化するので、これによる損失も符号(V2)で表示した電位差に対応した少量へと減少する。
【0008】
最近、こうした断熱充電方法を利用したMOSトランジスター回路の研究が活発に行われている。例えば、Moon, Y., 及び Jeong, D. -Kの'An efficient charge recovery logic circuit', IEEE Journal of Solid-State Circuits, vol.31, no.4, 1996, pp.514-522と, Kramer, A., Denker, J., 及び Moroney, Jによる'2nd order adiabatic computation with 2N-2P and 2N-2N2P logic circuits', International Symposium on Low Power Design, 1995, pp. 191-196では、この断熱充電方法を利用したECRL(Efficient Charge Recovery Logic)、又は2N−2N2P回路と呼ばれる二重レール(dual-rail)断熱論理回路が開示されている。
【0009】
このような断熱論理回路には、前記数式1でみられた断熱損失以外に非断熱損失が存在する。前記2N−2N2PとECRL回路の場合、非断熱損失はスイッチングの際にスイッチングの両端に存在する電圧の差によって発生する。つまり、前記2N-2N2P回路は、回路のプリチャージング(precharging)のために使用されるダイオードによってCLddthのエネルギー損失が発生し、ECRL回路はMOSトランジスターのしきい値電圧(Vth)によって(1/2) CLth 2のエネルギー損失が発生する。
【0010】
こうした非断熱損失を除去するためには、二つの条件を満足させなければならない。第一の条件は、スイッチ(例えばMOSFET)の両端の電位差がない時にだけスイッチがオン(ON)にならなければならないのである。両端の電位差がある時にスイッチがオンになれば、突然電位の差が発生するため、スイッチに存在する抵抗によって大きな電流が流れ、熱が発生する。こうした熱の発生は、まさにエネルギーの損失を意味するものである。第二の条件は、いったんスイッチがオンになれば、スイッチの両端に電位差が発生しないように、ゆっくりとエネルギーを伝達しなければならない。この条件を満足させるための方法が前述した断熱充電方法である。
【0011】
ところが、この二つの条件を満足させながら、あるノードのエネルギーを供給し復元するには、そのノードの状態(又は電圧)を把握していなければならない。従って、この問題は、可逆論理を利用して解決することができる。可逆論理は逆算が可能な論理として、逆論理関数を利用して出力値から入力値を計算し、入力エネルギーを復元することができるため、エネルギー復元に利用することができる。
【0012】
この可逆論理概念を利用した超低電力回路の研究分野として、可逆コンピューター技術がある。可逆コンピューターに関する研究は、究極的にはエネルギーの消耗、あるいは電力の消耗が極めて少ないコンピューターの開発を目的とする。これは情報の損失がなければ、エネルギーの損失を無くせるという物理学の理論に基づくものとして、未来の超高集積化されたチップの熱発生問題とバッテリーの寿命延長の問題等を積極的に解決できる次世代コンピューターのモデルと言える。人体に挿入される人工臓器のように、極度の小さな電力消費が求められる分野は、このような可逆コンピューター技術が適用できる重要な応用分野である。物理学理論によると、コンピューターは、可逆的な計算が可能であれば、エネルギーを消耗しないように設計することができる。従って、可逆コンピューターは、可逆的な計算をするためには、必ず可逆論理を利用して具現されるべきである。しかしながら、既存の計算論理体系はそのほとんどが非可逆であるため、これを可逆論理に変え使用するための研究結果が多く発表されてきた。しかし、既存のブール(Boolean)関数は、ほとんどが非可逆論理であるため、これを可逆論理に変えて使うにはかなり複雑になる。だが、プロセッサーの高集積化技術の発達を考えれば、複雑度の問題は高集積度で解決が可能であると思われる。エネルギー消耗の最小化という究極的な観点から、可逆論理回路の実現は極めて重要なアプローチであると言える。
【0013】
前述した可逆論理と断熱充電方法を利用して、エネルギーの消耗を押さえる論理素子及び装置が発表されてきた。例えば、Younis, S.及びKnight, T. F.の'Asymptotically zero energy split-level charge recovery logic', Workshop on Low Power Design, 1994, pp. 177-182と、Athas, W.C., Svensson, L. J., Koller, J.G., Tzartzanis, N. 及び Chou, E.の'Low power digital systems based on adiabatic switching principles', IEEE Trans. VLSI Systems, Vol. 2, no. 4, 1994, pp. 398-407にこうした論理回路が開示されている。
【0014】
図4乃至図7は、前記Athas et. alに開示された論理回路を表したものである。図4は可逆パイプラインの連結状態を示しているもので、大きな矢印はエネルギーの充電あるいは放電の経路及び方向を示している。図5は、図4の可逆パイプライン構造のうち一部を表しており、トランスミッション・ゲートを利用してバッファーを実現した例である。図6は、前記図4及び図5で使われた電源クロックのタイミング図で、この電源クロックは8つの位相を持ち、隣接クロックは、互いに少なくとも1/8周期の位相の差がある。図7は、図5の各ノードでの動作を説明する波形図である。一方、図8は、図5で全加算器の計(S=a XOR b XOR Cin)を出すための正論理関数計算部と相補正論理関数計算部を、トランスミッション・ゲートを利用して簡略に具現させた例であり、ここではスイッチとクランプ回路は省略されている。
【0015】
前記図5で、トランスミッション・ゲートによって具現されたスイッチは正論理であるため、逆論理の値にするためには相補関係にある二つの入力を受けて、相補関係にある二つの出力を計算できる相補二重レール回路(complementary dual rail)を使う。この回路のうち、一方のレールでは正論理の出力値を計算し、もう一方のレールでは逆論理の出力値を計算して、次の段の入力としてこの二つの出力値を利用する。相補二重レールは、一つのレールがオフ(OFF)であるため、この部分がチップ(chip)内で容量性結合(capacitive coupling)によって影響をうけかねないので、こうした問題を解決するためにクランプ(clamp)回路15をつける。前記クランプ回路15は、二つのNMOSトランジスターM9、M10で構成されており、一つのレールがオンの状態であれば、残りのオフ状態になっているレールを接地に強制的につなげる回路である。
【0016】
しかし、前記図4及び図5の論理回路では、論理関数の計算の際、同一のクロックを充電及び放電クロックとして使うので、例えば第一段の正論理関数回路Fと第2段の逆論理関数回路G-1 で同じクロックφ0を充電及び放電クロックとして使うため、これによる非断熱エネルギー損失が存在することになる。これを図5乃至図7の波形図を参考にして説明すれば次のようになる。
【0017】
まず、初期状態では内部のノードn1、n2、n3、n4が接地されており、二つのスイッチ T5、T6 はオンの状態だと仮定する。T=0の場合、入力 α0 は高レベルとして有効化される。T=1の場合は、出力ノード X1 は高レベルで駆動される一方、これの相補出力ノード /X1 はクランプ回路15によって接地状態で駆動される。これと同時に、トランスミッション・ゲート T3、T4 のPMOSトランジスター(未図示)がオンの状態になり、ノード n3、n4 が充電される。ここで、入力 β2、/β2 は、T=1ではアイドル状態(idle state)にあるため、接地状態を維持する。T=3の場合、クロックφ3 が高レベルに上昇してスイッチ T7、T8 がオンの状態になる。このようになれば充電されたノード n4 が接地されているノード /X1 につながり、図7の楕円 A で表示された非断熱損失が発生する。T=4の場合、入力 α0、/α0 はアイドル(idle)状態になり、放電されたノード n2 が高レベルのクロック φ3 につながる。これによって、図7の楕円Bで表示される別の非断熱損失が発生する。
【0018】
また、前記図5の論理回路では、二つのスイッチだけではなく、正論理関数回路又は逆論理関数回路 11、13 で、正論理関数及び相補正論理関数、あるいは逆論理関数及び相補逆論理関数を計算するための論理回路をトランスミッション・ゲートを利用して具現している。トランスミッション・ゲートは、NMOSトランジスターとPMOSトランジスターのソース(source)とドレイン(drain)をそれぞれつないで、このソースとドレインをスイッチの両端として使い、NMOSトランジスター・ゲートの端子に入力をつなぎ、PMOSトランジスター・ゲートの端子にはNMOSトランジスターのゲートにつながっている入力と相補関係にある入力をつないで動作させる。そうすればスイッチの両端に電圧降下を発生させずにエネルギーをそのまま伝えることができるため、MOSトランジスターで具現できるもっとも安定的なスイッチと言われている。ところが、このトランスミッション・ゲートはすべての論理をNMOSとPMOSトランジスターの一対で具現しなければならないので、回路が大きくなるばかりでなく、エネルギーの消費が増える短所がある。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、前述した問題点を解決するためのものであり、正論理関数回路又は逆論理関数回路で、正論理関数及び相補正論理関数又は逆論理関数及び相補逆論理関数をNMOSトランジスターだけで具現し、これらNMOSトランジスターの動作の際、しきい値電圧(Vth)によるスイング減少を一対のPMOSトランジスターを利用して補償する可逆断熱論理回路を提供することにその目的がある。
【0020】
本発明のもう一つの目的は、前記可逆断熱論理回路を利用したパイプラインの可逆断熱論理装置を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明による可逆断熱論理回路は、1周期に少なくとも8つの位相を持つ電源クロックのうち、任意の第1クロックで動作し、相補二重レールの正論理関数を少なくとも一つ以上のNMOSトランジスターを利用して計算し、出力ノードの充電経路を決める正論理関数回路と、前記第一クロックより1位相遅い第二クロックで動作し、相補二重レールの逆論理関数を少なくとも一つ以上のNMOSトランジスターを利用して計算して、出力ノードの放電経路を決める逆論理関数回路と、 前記正論理関数回路と逆論理関数回路で、前記NMOSトランジスターのしきい値電圧による出力ノードからのスイング減少を補償する補償回路とを含むことを特徴とする。
【0022】
前記もう一つの目的を達成するために、本発明によるパイプラインの可逆断熱論理装置は、1周期に少なくとも8つの位相を持つ電源クロックのうち、任意の第一クロックで動作し、前段の出力値に対する正論理関数及びこれの相補正論理関数の計算を少なくとも一つ以上のNMOSトランジスターを利用して行う正論理関数回路と、前記第一クロックより少なくとも2位相遅い第二クロックで動作し、後段の出力値に対する逆論理関数及びこれの相補逆論理関数の計算を少なくとも一つ以上のNMOSトランジスターを利用して行う逆論理関数回路と、 前記正論理関数回路と逆論理関数回路で、前記NMOSトランジスターのしきい値電圧による出力ノードでのスイング減少を補償する補償回路とを含んで構成される単位可逆断熱論理回路がパイプラインの形でつながり、前記後段の単位可逆論理回路の論理関数回路は、前記第一クロックより少なくとも1位相遅いクロックで動作することを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下添付された図面に基づき、本発明をより詳しく説明する。
【0024】
図9は、本発明で使用される可逆論理回路を図示した回路図であり、正論理関数計算部21、逆論理関数計算部23、第1及び第2スイッチ25、27で構成される。ここで使われる電源クロックは、図6に図示されたものと同一の電源クロックを使う。つまり、電源クロックは、最大電源電圧 Vdd と最小電源電圧(GND;0V)の相互間の遷移が所定の時間、たとえば1/8周期にわたって徐々に行われ、8つの位相 φ0〜φ7 を持つ。従って、隣接のクロック間には、少なくとも1/8周期の位相の差がある。また、図4と比較すれば論理関数計算の際、充電及び放電クロックに互いに違うクロックを使うので、非断熱損失が発生しないようにする。
【0025】
正論理関数計算部21はクロック φi とつながり、クロック φi からエネルギーを供給してもらって、クロック φi より少なくとも1位相速いクロック φi-1 によってエネルギーを供給してもらう所定のビット数mで構成されている入力値に対してクロック φi を通じて所定の論理関数を計算し、後段での前記論理関数の逆論理関数の計算が終り、クロック φi が最大電源電圧から最小電源電圧へと遷移するとき、出力値として利用されたエネルギーを前記クロック φi に復元させる。また、前記正論理関数計算部21は、前記クロック φi が最小電源電圧の状態であるとき入力値が引加され、第1スイッチ25がオンの状態にならなければならず、こうした条件を満たした状態でクロック φi が最大電源電圧に上昇しながら出力値を計算する。つまり、供給クロック205をつないでエネルギーを供給し、mビットの入力値201からnビットの中間値202と出力値203を計算する。
【0026】
第1スイッチ25は、前記クロック φi の位相より少なくとも1位相速いクロック φi-1 につながって、正論理関数計算部21で計算された出力値をクロック φi-1 によってエネルギーの損失なしに次の段への伝達をコントロールする。また、第1スイッチ25は、前記クロック φi-1 が最小電源電圧状態のときはオフ状態、最大電源電圧状態のときはオンになる。つまり、前記中間値202と出力値203をエネルギー供給のときにはつなぎ、エネルギー復元のときには分離させる。
【0027】
逆論理関数計算部23は、第1スイッチ25の出力値に対して前記正論理関数の逆論理関数を計算し、前記正論理関数計算部21につながっているクロック φi より少なくとも1位相遅いクロック φi+1 とつながって、前記正論理関数計算部 21 の入力値として利用されたエネルギーを逆論理関数の計算が終わったあとに前記クロック φi+1 へと復元させる。つまり、出力値 203 から入力値と同じ中間値204を計算する。また、前記逆論理関数計算部 23は、前記クロック φi+1 が最小電源電圧の状態にあるときに、前記正論理関数計算部21の入力値がすでに引加され、第2スイッチ27はオフになっているべきで、前記正論理関数の結果値が計算されていなければならず、このように条件を満たす状態で、クロックが最大電源電圧へと上昇しながら出力値を計算する。それから、前記逆論理関数計算部23は、逆論理関数につながっているクロック φi+1が最大電源電圧の状態から最小電源電圧状態へと下がりながら、前記正論理関数計算部21の入力値のエネルギーをクロック φi+1 へと復元させる。
【0028】
第2スイッチ27は、前記逆論理関数計算部23につないだクロックより少なくとも1位相遅いクロック φi+2 へとつながって、前記正論理関数計算部21の入力値エネルギーを前記逆論理関数計算部23につながっているクロック φi+1 へと復元させるため、前記クロック φi+2 によって前記逆論理関数計算部23の出力値と前記正論理関数計算部21の入力値の連結をコントロールする。また、前記第2スイッチ27は、前記クロック φi+2 が最小電源電圧の状態にはオフ、最大電源電圧の状態にはオンの状態となる。つまり、前記逆論理関数計算部23の中間値204と入力値201をつないで、エネルギーを復元クロック206へと復元させた後、再び中間値204と入力値201を分離させる。
【0029】
前記ような各構成要素の動作を図6に図示された電源クロックを結び付けて説明すれば次にようになる。説明の便宜上、iを2とする。
【0030】
T=0の場合、図9のすべてのノードと供給クロックは、電位が接地(GND)状態になっている。T=1の場合、入力値201は、正論理関数計算部21のクロック φ2 より少なくとも一位相速いクロック φ1 と同期になって引加され、第1スイッチ25はクロック φ1 と同期になってオンになり、中間値202と出力値203を接続する。この際、第1スイッチ25は両端の電位差がないためスイッチがオンになってもエネルギーの損失を発生させない。T=2になれば、クロック φ2 が最大電源電圧へと上昇しながら中間値202と出力値203を計算する。そうすれば、この出力値は逆論理関数計算部23に入力される。T=3になれば、クロック φ3 が最大電源電圧へ上昇しながら入力値と同じ値である中間値204を計算する。それは、入力値が正論関数計算部21と逆論理関数計算部23を通過しながら、再び元の入力値と同一の値として計算されるためである。T=4になれば、クロック φ4 が最大電源電圧へと上昇しながら第2スイッチ27がオンになる。第1スイッチ25と同様に両端の電位差がないため、第2スイッチ27がオンになってもエネルギー損失が発生しない。T=5になれば、クロック φ1 が最小電源電圧に下がり、第1スイッチ25はオフになって、中間値202と出力値203を分離させる。T=6になれば、クロック φ2 が最小電源電圧に下がりながら、中間値202にあるエネルギーをクロック φ2へ復元させる。T=7になれば、クロック φ3 が最小電源電圧に下がりながら、入力値201及び中間値204にあるエネルギーをクロック φ3 へと復元させる。T=8になれば、クロック φ4 が最小電源電圧に下がりながら第2スイッチ27はオフになり、中間値204と入力201を分離させると同時に、出力203にあるエネルギーはクロック φ4 に復元される。そのようになれば、T=8はT=0である初期状態と同じ状況になり、一つのサイクルの動作が完了する。
【0031】
図10は、図9で図示された可逆論理回路を利用して、本発明による可逆パイプラインの連結状態を表している図面であり、大きな矢印はエネルギーの充電又は放電の経路及び方向を示している。図9に図示された可逆論理回路の動作原理が、第1段の正論理関数回路Fと逆論理関数回路H-1(未図示)、第2段の正論理関数回路Gと逆論理関数回路G-1、第3段の正論理関数回路Hと逆論理関数回路H-1 、及び第4段の正論理関数回路I(未図示)と逆論理関数回路I-1 にそれぞれ適用されながら、パイプラインの形態でつながるのである。
【0032】
図11は、図10の可逆パイプラインの構造のうち、一部を表しているもので、第1段の正論理関数回路31(F)と第2段の逆論理関数回路33(G-1)、補償回路35とクランプ回路37で構成されている。
【0033】
ここで、第1段の正論理関数回路31は、入力値α0 が入力されクロックφ1 が供給される正論理関数計算部311(f)、正論理関数計算部311の出力につながりクロックφ0 が供給される第1スイッチ315(e)、相補入力値 /α0 が入力されクロック φ1 が供給される相補正論理関数計算部313(/f)、及び相補正論理関数計算部313の出力につながりクロックφ0 が供給される第2スイッチ317(e)で構成される。ここで、正論理関数計算部311と相補正論理関数計算部313は相補二重レールで正論理関数を計算し、出力ノード X1、/X1 の充電経路を決める。
【0034】
さらに、第2段の逆論理関数回路33は、第2段の正論理関数回路(図10のG)の出力である入力値 β2 が入力されクロック φ3 が供給される逆論理関数計算部331(g-1)、逆論理関数計算部331の出力につながりクロック φ4 が供給される第3スイッチ335(e)、第2段の正論理関数回路(図10のG)の相補出力である相補入力値 /β2 が入力されクロック φ3 が供給される相補逆論理関数計算部333(/g-1)、及び相補逆論理関数計算部333の出力につながりクロック φ4 が供給される第4スイッチ337(e)で構成される。ここで、逆論理関数計算部331と相補逆論理関数計算部333は相補二重レールで逆論理関数を計算し、出力ノードX1、/X1 の放電経路を決める。
【0035】
前記正論理関数回路31と逆論理関数回路33で第1乃至第4スイッチ315、317、335、337は、充電及び放電経路を分離させる分離スイッチとして使われる。
【0036】
補償回路35は、ドレインとソースがそれぞれ正論理関数計算部311の出力とクロック φ1 につながっている第1 PMOSトランジスターQP1、ゲートが第1PMOSトランジスターQP1のゲートと接続され、ドレインとソースがそれぞれ逆論理関数計算部331の出力とクロック φ3 につながっている第2 PMOSトランジスターQP2、ドレインとソースがそれぞれ相補正論理関数計算部313の出力とクロック φ1 につながっている第3PMOSトランジスターQP3、及びゲートが第3PMOSトランジスターQP3のゲートと接続され、ドレインとソースがそれぞれ相補逆論理関数計算部333の出力とクロック φ3 につながっている第4 PMOSトランジスターQP4 で構成されている。ここで、第3 PMOSトランジスターQP3のゲートと第4PMOSトランジスターQP4のゲートとの接続点は、第1及び第3スイッチ315、335の出力X1 につながり、第1PMOSトランジスターQP1のゲートと第2PMOSトランジスターQP2のゲートとの接続点は、第2及び第4スイッチ317、337の相補出力 /X1 につながる。
【0037】
クランプ回路37は、直列でつながっている第1及び第2 NMOSトランジスターQN1、QN2で構成され、第1NMOSトランジスターQN1のゲートは出力X1 につながり、第2 NMOSトランジスターQN2のゲートは相補出力 /X1 につながる。このクランプ回路37は、出力X1 とこの相補出力/X1 のうち、駆動されない出力を接地状態に維持させるために使われる。
【0038】
それでは、前述した図11に図示されている回路の動作を図12のタイミング図と関連させて説明する。
【0039】
まず、初期状態ではすべてのノードが接地状態であり、f(α0、/α0)とg-12、/β2)が真値(true value)であると仮定する。
【0040】
T=0であるとき、クロック φ0 に同期された正分離スイッチである第1及び第2スイッチ315、317は、クロック φ0 が低レベルから高レベルへと上昇していくのでオンの状態に、クロック φ4 に同期された逆分離スイッチである第3及び第4スイッチ335、337は、クロック φ0 が高レベルから低レベルへと下がるのでオフの状態である。そして、正入力(α0、/α0)は、クロック φ0 が高レベルになってから有効になり、正論理関数回路31でf(α0、/α0)が計算される。
【0041】
T=1の場合、クロック φ1 が高レベルになり第1スイッチ315がオンの状態になって、正論理関数計算部311の電流の経路が形成されるため、出力値X1 は高レベルになる。この時、正論理関数計算部311を構成するNMOSトランジスターのしきい値電圧によってノードaで完全なスイングができないため、出力ノード X1、/X1 とクロス接続されたゲートを持つ一対のPMOSトランジスター QP1、QP3を利用してこの減少されたスイングを補償する。つまり、ノードaが高レベルになれば、第1スイッチ315がオンの状態になるので、出力値X1 は高レベルになる。出力値X1 が高レベルになることで、クランピング回路37の第1 NMOSトランジスターQN1がオンの状態になり、相補出力値/X1 が接地状態になる。相補出力値/X1 が接地されるので、第1 PMOSトランジスターQP1がオンの状態になり、ノードa及び出力値X1 は正確にクロック φ1 を追随しながら最大電源電圧 Vdd まで上昇する。
【0042】
T=2である場合、クロック φ2 が高レベルになった後、次に段の出力である逆入力(β2、/β2)が有効化される。そうすれば、逆論理関数回路33でg-12、/β2)が計算される。
【0043】
T=3の場合、ノードbは前述した通り、T=1と同一な方法で第2PMOSトランジスターQP2のためにクロック φ3 を正確に追随する。
【0044】
T=4の場合、クロック φ0 は低レベルになり、クロック φ4 は高レベルになる。従って第3及び第4スイッチ335、337はオン状態になり、第1及び第2スイッチ315、317はオフ状態になる。このスイッチングの際、ノードb、X1 が高レベルで、ノード/b、/X1 が接地状態になっているため、非断熱充電及び放電エネルギーの損失が発生しない。
【0045】
T=5の場合、クロック φ1 が接地状態になれば、ノードaと正論理関数回路31の内部のノードの電荷がクロック φ1 へと復元される反面、出力値X1 は高レベルを維持する。
【0046】
T=6の時、クロック φ2 が接地状態になるので、正入力(α0 0)が非活性化され接地状態になる。
【0047】
T=7の時、クロック φ3 が接地状態になることで、出力値X1 の電荷がクロック φ3 へと復元される。そして、ノードbと逆論理関数回路33の内部のノードの電荷がクロック φ3 へと復元される。そうすれば、すべての内部のノードが初期状態と同様に接地状態になる。
【0048】
図13は、図10で全加算器の計(S=a XOR b XOR Cin)を出すための論理関数計算部311と相補論理関数計算部313をNMOSトランジスターを利用して簡略に具現した例を示している。ここでは、補償回路35、クランプ回路37及びスイッチ315、317が省略されている。
【0049】
一方、図13に図示されているNMOSトランジスターで具現された全加算器と図5で図示されたトランスミッション・ゲートで構成された全加算器に対するエネルギーの消費は次の通りである。つまり、図13の全加算器でトランジスターの数は図5の全加算器より約22%減少するので、本発明による可逆断熱論理回路で各ノードの負荷容量が減り、図13の全加算器は、図5の全加算器で消費されるエネルギーの約40%だけを消費するようになる。
【0050】
【発明の効果】
前述したように、本発明による可逆断熱論理回路及びこれを利用したパイプライン可逆断熱論理装置では、論理関数計算部をNMOSトランジスターだけで具現し、これらNMOSトランジスターの動作の際、しきい値電圧 Vth によるスイングの減少を各出力ノードとクロス接続されたゲートを持つ一対のPMOSトランジスターを利用して補償することで、非断熱損失を除去できるばかりではなく、論理関数計算部を既存のトランスミッション・ゲートで具現する時より回路面積を大幅に減らすことができる。
【0051】
また、本発明は超低電力論理回路として使用できるので、超低電力応用分野である可逆コンピューター技術に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】CMOSインバーターの充電・放電動作を説明するための回路図である。
【図2】図1に図示されたCMOSインバーターの動作を説明するための波形図である。
【図3】一般的な充電方法と断熱充電方法の差を説明するためのグラフである。
【図4】可逆パイプラインの接続状態を表しているブロック図である。
【図5】図4の可逆パイプライン構造の一部を表したもので、トランスミッション・ゲートを使用してバッファーを具現した例を示す回路図である。
【図6】前記図4及び図5で使われたクロックのタイミング図である。
【図7】図5の各ノードでの動作を説明するためのタイミング図である。
【図8】図5の全加算器に対する正論理関数計算部と相補論理関数計算部をトランスミッション・ゲートを利用して具現した例を示す回路図である。
【図9】本発明で使用される可逆論理回路を示す回路図である。
【図10】本発明による可逆パイプラインの接続状態を表したブロック図である。
【図11】図10の可逆パイプライン構造の一部を表した回路図である。
【図12】図11の各ノードでの動作を説明するためのタイミング図である。
【図13】図11において全加算器に対する正論理関数計算部と相補正論理関数計算部をNMOSトランジスターを使用して具現した例を示す回路図である。
【符号の説明】
F、G、H 正論理関数計算回路
-1、G-1、H-1 逆論理関数計算回路
T1〜T6 トランスミッション・ゲート
φ0〜φ7、φi、φi+1、φi1 クロック
21 正論理関数計算部
23 逆論理関数計算部
25、27 スイッチ
31 正論理関数回路F
33 逆論理関数回路G-1
35 補償回路
37 クランプ回路
201 入力ライン
203 出力ライン
205、206 クロック入力ライン
311 正論理関数計算部
313 相補正論理関数計算部
331 逆論理関数計算部
333 相補逆論理関数計算部
315、317、335、337 スイッチ

Claims (10)

  1. 1周期に少なくとも8つの位相を持つ電源クロックのうち、任意の第1クロックで動作し、相補二重レールの正論理関数を少なくとも一つ以上のNMOSトランジスターを利用して計算し、出力ノードの充電経路を決定する正論理関数回路と、
    前記第1クロックより2位相遅い第2クロックで動作し、相補二重レールの逆論理関数を少なくとも一つ以上のNMOSトランジスターを利用して計算し、出力ノードの放電経路を決定する逆論理関数回路と、
    前記正論理関数回路と逆論理関数回路とで、前記NMOSトランジスターのしきい値電圧による出力ノードでのスイングの減少を補償する補償回路とを含むことを特徴とする可逆断熱論理回路。
  2. 前記出力ノードと相補出力ノードの間で直列接続された二つのNMOSトランジスターで構成されるクランプ回路をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の可逆断熱論理回路。
  3. 前記正論理関数回路は、少なくとも一つ以上のNMOSトランジスターで構成され、前記第1クロックを利用して、前段の出力値に対する正論理関数を計算する正論理関数計算部と、
    前記第1クロックより1位相速い第3クロックで動作し、前記正論理関数計算部の出力を出力ノードに伝達する第1スイッチと、
    少なくとも一つ以上のNMOSトランジスターで構成され、前記第1クロックを利用して、前段の相補出力値に対する相補正論理関数を計算する相補正論理関数計算部と、
    前記第3クロックで動作し、前記相補正論理関数計算部の出力を相補出力ノードに伝達する第2スイッチとを備えていることを特徴とする請求項2に記載の可逆断熱論理回路。
  4. 前記逆論理関数回路は、少なくとも一つ以上のNMOSトランジスターで構成され、前記第2クロックを利用して後段の出力値に対する逆論理関数を計算する逆論理関数計算部と、
    前記第2クロックより1位相遅い第4クロックで動作し、前記逆論理関数計算部の出力を出力ノードに伝達する第3スイッチと、
    少なくとも一つ以上のNMOSトランジスターで構成され、前記第2クロックを利用して後段の相補出力値に対する相補逆論理関数を計算する相補逆論理関数計算部と、
    前記第4クロックで動作し、前記相補逆論理関数計算部の出力を相補出力ノードに伝達する第4スイッチとを備えていることを特徴とする請求項3に記載の可逆断熱論理回路。
  5. 前記補償回路は、ドレインとソースがそれぞれ正論理関数計算部と逆論理関数計算部の出力端子とクロック供給端子につながり、ゲート端子が互いに接続され、前記ゲート端子の接続点が前記相補出力ノードに接続された第1及び第2PMOSトランジスターと、
    ドレインとソースがそれぞれ相補正論理関数計算部と相補逆論理関数計算部の出力端子とクロック供給端子につながり、ゲート端子が互いに接続して、前記ゲート端子の接続点が前記出力ノードに接続された第3及び第4PMOSトランジスターとを備えていることを特徴とする請求項4に記載の可逆断熱論理回路。
  6. 1周期に少なくとも8つの位相を持つ電源クロックのうち、任意の第1クロックで動作し、前段の出力値に対する正論理関数及びこれの相補正論理関数の計算を少なくとも一つ以上のNMOSトランジスターを利用して行い、出力ノードの充電経路を決める正論理関数回路と、
    前記第1クロックより少なくとも2位相遅い第2クロックで動作し、後段の出力値に対する逆論理関数及びこれの相補逆論理関数の計算を少なくとも一つ以上のNMOSトランジスターを利用して行い、出力ノードの放電経路を決める逆論理関数回路と、
    前記正論理関数回路と逆論理関数回路で、前記NMOSトランジスターのしきい値電圧による出力ノードでのスイング減少を補償する補償回路とを含んで構成される単位可逆断熱論理回路がパイプラインの形でつながり、前記後段の単位可逆断熱論理回路の論理関数回路は、前記第1クロックより少なくとも1位相遅いクロックで動作することを特徴とするパイプライン可逆断熱論理装置。
  7. 前記正論理関数回路は、少なくとも一つ以上のNMOSトランジスターで構成され、前記第1クロックを利用して前段の出力値に対する正論理関数を計算する正論理関数計算部と、
    前記第1クロックより1位相速い第3クロックで動作し、前記正論理関数計算部の出力を出力ノードに伝達する第1スイッチと、
    少なくとも一つ以上のNMOSトランジスターで構成され、前記第1クロックを利用して前段の相補出力値に対する相補正論理関数を計算する相補正論理関数計算部と、
    前記第3クロックで動作し、前記相補正論理関数計算部の出力を相補出力ノードに伝達する第2スイッチを備えていることとを特徴とする請求項6に記載のパイプライン可逆断熱論理装置。
  8. 前記逆論理関数回路は、少なくとも一つ以上のNMOSトランジスターで構成され、前記第2クロックを利用して前記後段の出力値に対する逆論理関数を計算する逆論理関数計算部と、
    前記第2クロックより1位相遅い第4クロックで動作し、前記逆論理関数計算部の出力を出力ノードに伝達する第3スイッチと、
    少なくとも一つ以上のNMOSトランジスターで構成され、前記第2クロックを利用して前記後段の相補出力値に対する相補逆論理関数を計算する相補逆論理関数計算部と、
    前記第4クロックで動作し、前記相補逆論理関数計算部の出力を相補出力ノードに伝達する第4スイッチとを備えていることを特徴とする請求項7に記載のパイプライン可逆断熱論理装置。
  9. 前記補償回路は、それぞれゲート端子が前記出力ノードと相補出力ノードにクロス接続された一対のPMOSトランジスターで構成されていることを特徴とする請求項6に記載のパイプライン可逆断熱論理装置。
  10. 前記出力ノードと相補出力ノードの間に直列接続された二つのNMOSトランジスターで構成されるクランプ回路をさらに備えていることを特徴とする請求項6に記載のパイプライン可逆断熱論理装置。
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