JP3850518B2 - 窒素酸化物センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスセンサ、特に燃焼ガス或いは内燃機関からの排ガス中の窒素酸化物濃度を検出する窒素酸化物センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
都市部での自動車を初めとした内燃機関などの移動発生源と、都市周辺の火力発電所、プラント等の燃焼機器などの固定発生源から排出される空気中のNOX濃度が年々高くなり、その対策が緊急の課題として迫られている。前述移動発生源や固定発生源からのNOXを検知し、NOXの生成を低減させるためにもNOXの検知は重要な課題となり、測定機器の小型化、低コスト化、さらに、各種使用環境に対応できる検知器は必要となっている。また、NOXを測定するだけではなく、NOとNO2を正確に見分けする事も重要である。
【0003】
従来のNOX濃度を測定する方法はザルツマン法、赤外線吸収法、化学発光法などがある。これらの方法は何れも装置が複雑で、コストが高く、携帯、車載型にすることができない。又、これらの方法は何れもNOかNO2の一方しか測定できず、両方同時の定量或いは、NOXとしての測定はまた困難である。
【0004】
近年、自動車排ガス中に直接挿入して連続検知が行える全固体型NOXセンサが注目を集め、幾つかの研究結果を報告されている。例えば、特開平4−142455号公報では、イオン伝導体に検知電極と参照電極を設置し、被検ガス中で電極間の起電力を測定するセンサを提案されている。このセンサでは、NOやNO2に対して感度を示すものの、NOとNO2に対する感度が異なるために、NOとNO2が共存する被検ガスにおいては、NOXの濃度が検出できず、またNOとNO2を単独検出することもできない。
【0005】
一方、特開平8−271476号公報に見られる限界電流型電気化学窒素酸化物センサにおいて、NOXの還元による電解電流を高感度に測定する為、酸素の濃度を最大限に減らし、酸素自体の還元電流を抑えなければならない。しかし、酸素ポンプの能力及び理論上酸素の濃度をゼロにする事が不可能であることから、酸素の影響を完全に無くす事が難しい。
最近、特願平8−85419号公報の中に被検ガス中のNOXを電極反応によってできるだけNOかNO2に単一ガス化して、更にこれに活性な電極を用いて起電力を測定する方法を提案した。このようにすれば、窒素酸化物を検出できるが、NOとNO2のガス平衡反応及び電極反応の変換効率の影響によって、センサ電極の出力信号は充分とはいえず、より高いセンサ感度が求められている。本発明は、このような課題に対して、被検ガス中の窒素酸化物をNO2以上の酸化状態まで酸化する事によって、窒素酸化物センサの感度を更に向上させることを目的としたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
検知極のNOXとO2により決まる電極電位、即ち対極に対しての起電力を出力する混成電位型窒素酸化物センサの窒素酸化物に対する感度はNOとNO2のガス平衡反応及び電極反応の変換効率の影響によって、センサ電極の出力信号は不充分であり、より高いセンサ感度が求められている。起電力を検出する際、電極反応に関与するガス種によって、標準電極電位が大きく変化し、さらに、電極反応に関与するガス種の濃度がセンサ電極の起電力を大きく左右する。周知のように、NOとNO2の平衡が高温になるほどNOの方向に移動し、電極反応によって変化して得たNO2がNOに分解し、NO2を検出する際に、起電力の低下を招く原因となる。しかし、被検ガス中の窒素酸化物をNO2以上の過酸化状態に酸化させると、過酸化窒素酸化物の標準平衡電位が高く、NO2ガスによる起電力以上の感度が期待することができる。さらに、検出電極の周囲の雰囲気中の酸素濃度を高くすれば、過酸化窒素酸化物の生成に有利になり、NO2のNOに分解する反応にも抑制できると考えられる。
【0007】
本発明は電極反応を利用して被検ガス中の窒素酸化物をできるだけNO2とそれ以上の過酸化状態に酸化し、検知極の起電力の向上を図るものである。また、過剰の酸素を測定室に汲み込むことと、得られた窒素過酸化物を素早く検出することによって、最大起電力と感度を得ることができ、トータルの窒素酸化物センサを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するため、NOXの酸化反応に高活性な触媒電極を用いて、NOX検知電極によって検知するまでの間に被検ガス中のNOXをNO2以上の過酸化状態に酸化すると同時に、酸化反応によって得た過酸化物が分解しないように測定室中の酸素濃度を酸素ポンプを用いて高める。従って、本発明に用いた窒素酸化物変換電極は同時に酸素ポンプの機能を兼ねるか、もう一つの酸素濃度を調節するための酸素ポンプ電極とその対極を形成しなければならない。特に、酸素濃度を精密に制御する必要がある場合、単独の酸素ポンプを設けることが望ましい。
【0009】
NOxを酸化するための変換電極と酸素汲み込み電極及びこれらの対極をイオン電導性固体電解質基板に形成し、変換電極の電位を酸化方向の1.5VまでのNOxのNO2以上の酸化体に酸化できる適当な電位に保持することによって、センサ測定室に導入されたNOxをNO2以上の窒素過酸化物に酸化するとともに、この酸化反応によって得た窒素が酸化物をできるだけ分解しないように酸素ポンプを用いて酸素を汲み込むことによって酸素の濃度を高める。また、変換電極の近くに配置したイオン電導性固体電解質上に形成した窒素酸化物検知電極と参照電極によって変換された窒素酸化物を素早く検知しなければならない。変換電位は0.1V未満ではNOxが変換しない。1.5Vを超えては固体電解質中に電子が流れ、不正確になる。好ましくは0.4〜1.0Vの範囲である。
【0010】
また、測定室中の酸素濃度を測定或いは制御するために、固体電解質基板に酸素センサ電極とその参照電極を形成し、酸素センサの出力信号によって、窒素酸化物検知電極の検知電圧を補正するか、酸素ポンプを制御することが必要である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明による窒素酸化物センサの最も基本的な実施形態を説明する。
本発明による窒素酸化物センサの基本的な部分は図1に示す。平板状のジルコニアイオン伝導性固体電解質基板1に貴金属類電極、或いは第二金属で修飾した貴金属類電極、或いは貴金属類合金電極、或いは金属化合物電極、或いは金属酸化物で修飾した貴金属電極を窒素酸化物変換電極2として形成し、この電解質基板の反対面に白金対極3を形成する。更に、酸素濃度を制御するための酸素ポンプ電極4を電解質基板1に形成した変換電極と同一面に形成し、その反対面に対極3を形成し、或いは変換電極の対極を共用する。
【0012】
また、これと別のジルコニア基板5に貴金属類電極、或いは第二金属で修飾した貴金属類電極、或いは貴金属類合金電極、或いは金属化合物電極、或いは金属酸化物で修飾した貴金属電極を窒素酸化物検知電極6として形成し、この電解質基板5の反対面に窒素酸化物に対して不活性、酸素に対して活性な貴金属類参照電極7を形成する。
【0013】
更に、この基板5の窒素酸化物検知電極と同一面に窒素酸化物に対して不活性、酸素に対して活性な貴金属類酸素検知電極8を形成する。以上で各電極を形成した二枚イオン電導性固体電解質基板1,5を同様な固体電解質、或いは絶縁性なセラミックス材料のスペーサ9を二枚の固体電解質基板1,5間に介在させ図1に示すように接着し、焼結によって一体化する。なお、測定室15内の窒素酸化物或いは酸素濃度が調節できるようにスペーサ9に設けたセンサのガス導入口10を絞り、拡散抵抗を付け無ければならない。一方、窒素酸化物変換電極2に電圧を印加し、窒素酸化物を過酸化状態に酸化させるが、酸化反応は電極材料に依存し、ある特定な電位範囲にしか起こらないので、変換電極2の印加電圧を最適化する必要がある。窒素酸化物変換電極2の電位を窒素酸化物の酸化電位に印加電圧保持し、酸素濃度を酸素ポンプによって所定値に制御し、窒素酸化物を酸化させる。この時の電極反応は次の式で表すことができる。
2NO2+O2- → N2O5+2e- (1)
NO2+O2- → NO3+2e- (2)
N2O5+O2- → 2NO3+2e- (3)
これらの反応によって得られた生成物の電極平衡電位がNOとNO2の平衡に比べるとより高い方向にあり、この電位が検知され、センサの感度が上昇することになる。
変換電位は0.1V未満ではNOXが変換しない。1.5Vを超えては固体電解質中に電子が流れ、不正確になる。好ましくは0.4〜1.0Vの範囲である。
【0014】
本発明によって、従来の混成電位型窒素酸化物センサ或いは起電力型窒素酸化物センサにおけるNOとNO2による異なる方向の電圧変化に関係なく、電気化学的酸化によってNOXをできるだけ高酸化状態に酸化することによって、トータルのNOXを検出することができる。また、高い酸化状態の窒素酸化物を検出する時に、電極反応の標準平衡電位が向上し、全体的に考えると、少なくともこの時の電極電位が被検ガス中のNOXをNO2まで酸化する時の混成電位或いは起電力に比べると、それ以上の混成電位値或いは起電力値を得ることができる。なお、測定室中の酸素濃度を高めることによって、センサの応答時間が短縮される効果もあることが確認された。
【0015】
【実施例】
(実施例1)
図2と図3にNOXの電極による酸化反応の実施例を示す。平板状のイオン伝導性固体電解質基板11に白金電極を図2のように三つ形成し、それぞれ試料電極12、参照電極13と対極14とした。この素子を600℃に加熱し、窒素バランス4%の酸素中、これに200ppmのNO2或いは400ppmのNO2を添加したガス中でポテンショスタットを用いて分極曲線を測定した。その結果を図3に示す。0.05〜0.3Vの電位領域にNO2の酸化電流が明確に観測され、NO2の濃度に依存することを確認した。又、同濃度のNOを同様に導入しても、このような明確な酸化電流が観測されていなかったことから、図3に示す酸化電流はNO2の酸化によってはN2O5或いはNO3が生成した電流であると判断されている。この電極反応は先述の反応式の(1)、(2)及び(3)によって表される。
尚、NiCr2O4酸化物で修飾した白金電極を用いて測定した結果、NO2の酸化電位領域が高電位側の0.3〜0.6Vの領域にシフトしたが、同様なNO2による酸化電流が測定された。
以上の結果より、NO2を電極反応によって更に高い酸化状態の窒素酸化物に酸化することが確かめられた。
【0016】
(実施例2)平板状のジルコニアイオン伝導性固体電解質基板にNiCr2O4酸化物で修飾した白金電極とこの電解質基板の反対面に形成した白金対極からなる窒素酸化物を酸化するための変換部と、これと別のジルコニア基板に形成したNiCr2O4 からなる窒素酸化物検知電極とこの電解質基板の反対面に形成した参照電極を図1に示すように測定室を形成し、センサ素子を作製した。この素子を600℃に加熱し、窒素バランス4%の酸素雰囲気中で、窒素酸化物変換部の変換電極の電圧を所定値に保持し、導入したNO2の濃度を変え、参照電極に基準して、窒素酸化物検知電極の電位変化を測定した。また、窒素酸化物変換部の電圧を変え、窒素酸化物検知電極の電位変化を測定した。得られた結果を図4に示す。窒素酸化物変換部の印加電圧を0.8Vに保持した時のセンサの感度と感度の傾きは0.4V或いは1.0Vに保持した時の感度と感度の傾きに比べると、増大していることが確かめられた。この時の変換部の印加電圧が高くなっていることが、変換電極とそれの対極の両方の分極電位を考慮すれば、0.8Vの電圧の大部分がこの二つの電極に分担され、変換電極の電位が窒素酸化物の酸化電位領域中にあるので、導入されたNO2がさらに酸化して、センサの感度が上昇したと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例のセンサの断面図である。
【図2】本発明の別の例のセンサの断面図である。
【図3】電気とNO2の酸化電流との関係を示すグラフ図である。
【図4】NO2濃度に対する検出電圧の関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1,5,11 固体電解質基板
2 窒素酸化物変換電極
3 対極
4 酸素ポンプ電極
6 窒素酸化物検知電極
7 参照電極
8 酸素検知電極
Claims (2)
- 第1及び第2の酸素イオン導電性固体電解質基板(1,5)及び当該固体電解質基板(1,5)間に設置されるスペーサ(9)から構成され、ガス導入孔(10)を備える測定室(15)と、
前記第1の固体電解質基板(1)の測定室(15)内側に設けられた窒素酸化物変換電極(2)と、
前記第1の固体電解質基板(1)の測定室(15)外側に設けられた対極(3)と、
前記第2の固体電解質基板(5)の測定室(15)内側に設けられ、NOxと酸素に対して活性な窒素酸化物検知電極(6)と、
前記第2の固体電解質基板(5)の測定室(15)外側に設けられ、酸素のみに対して活性な参照電極(7)を備え、
被検ガス中の窒素酸化物を前記窒素酸化物変換電極(2)で、NO 2 及び窒素過酸化物であるNO 3 とN 2 O 5 に変換し、前記窒素酸化物検知電極(6)と参照電極(7)との間の電位差により窒素酸化物濃度を検出することを特徴とする窒素酸化物センサ。 - 請求項1に記載の窒素酸化物センサにおいて、前記第2の固体電解質基板(5)の測定室(15)内側に酸素検知電極(8)を設け、前記第1の固体電解質基板(1)の測定室(15)内側に酸素ポンプ電極(4)を設けたことを特徴とする窒素酸化物センサ。
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