JP3850199B2 - インヒビタスイッチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機の変速レンジ位置を検出するためのインヒビタスイッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、インヒビタスイッチとしては、自動変速機のマニュアルバルブシャフトの軸回転と共に回転する可動接点を、前記自動変速機のトランスミッションケース側に取り付けられた固定接点に対し摺動させ、固定接点に対する可動接点の位置に応じて自動変速機の変速レンジの切り替えを検出できるようにしたものがある。このような摺動接点による検出の場合には、接点表面の接触コントロールが非常に困難なことから、ノイズ信号が多く、マイクロコンピュータでの制御に困難を伴うという問題があった。
【0003】
これに対し、無接点方式のインヒビタスイッチは、接触によるノイズ信号はなくマイクロコンピュータの制御に適している。この無接点方式のインヒビタスイッチとしては、各変速位置毎に磁気センサを設け各磁気センサのオン/オフ信号により検出するもの、磁気センサの数を減らし磁気センサの信号の組み合わせで検出するものがある。
【0004】
各変速位置毎に磁気センサを設けるものとしては、例えば実開昭55−101623号公報に記載された図18〜図20に示すものがある。まずその構造を簡単に説明すると、自動変速機101のマニュアルバルブシャフト103に回転子105が取り付けられ、回転子105に永久磁石107が支持されている。又、自動変速機101のハウジング109側には、変速レンジ位置に応じて配置された磁気センサ111が支持されている。この磁気センサ111は、リードスイッチで構成されている。
【0005】
そして、変速レンジの切り替えに応じたマニュアルバルブシャフト103の回転により永久磁石107が移動すると、この永久磁石107が対向する何れかの磁気センサ111の接点が閉じられ、各磁気センサ111に接続されたそれぞれ異なる抵抗値を読み込むことによって、何れかの変速レンジ位置が検出できるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような構造では、各変速位置毎に磁気センサ111を設けなければならず、その数が多く、インヒビタスイッチの小型化に限界があった。このため、インヒビタスイッチをトランスミッションケース内に配置することはほとんど困難となっていた。
【0007】
また、前記構造のインヒビタスイッチでは、正確な検出に限界があるという問題があった。即ち、変速操作によってマニュアルバルブレバー103が回転し、これに応じて永久磁石107が各磁気センサ111間を移動するとき、その中間位置においてはその前後の磁気センサ111が何れもオフとなるか、双方ともオンになるかの状態が起こり得る。磁気センサ111が何れもオフの場合には、自動変速機101の変速レンジ位置がどこにあるのか検出することができず、また双方ともオンになる場合にはその何れの位置に変速レンジがあるのかを検出することができないものとなる。
【0008】
このため、永久磁石107が前記のような中間位置においてインヒビタスイッチに故障が起こった場合に、どの変速レンジ位置で故障したのかを検出することができないなど、その検出の精度が低く、より信頼性の高い検出が望まれていた。
【0009】
前記磁気センサの数を減らし磁気センサの信号の組み合わせで検出するものでは、各変速レンジ位置でのセンサ信号の組み合わせを変えることによって、センサ故障時の信頼性を高めることができる。即ち、上記各変速レンジ毎の磁気センサ111をオン/オフさせる構造では、ショートなどの故障によって何れかの磁気センサ111が接続されるとシフトレバーをN(ニュートラルレンジ)からD(ドライブレンジ)へ操作したにも拘わらず、P(パーキングレンジ)の信号が出力されること等もあるが、前記のように信号の組み合わせを用いると誤った出力を抑制することができる。
【0010】
しかし、単純に変速レンジ位置に応じた種類の信号の組み合わせを設けるだけであると、何れかの磁気センサの故障によっては、異なる変速レンジ位置で組み合わせモードの共通化を招き、信号の正誤を区別できない恐れがあるため、通常は組み合わせ信号に1ビット増加した組み合わせ信号を用いて組み合わせモードの共通化を防止している。
【0011】
即ち、故障によって異なる変速レンジで信号の組み合わせモードが共通化し、Pから直接Nへ変速レンジが変わったとの信号が出力される等の場合は、Pから直接Nに行くことはあり得ない等という条件をマイクロコンピュータに記憶させることで信号の正誤を区別はできるが、P等における端部においてはシフトレバーを操作していないのに変速レンジがPから動かされたという信号が出され、正誤を区別できない恐れがある。このため通常は組み合わせ信号に1ビット増加して何れかの磁気センサが故障しても各検出位置において一致する信号を出さないようにしている。従って、それだけ磁気センサが増加し、やはりインヒビタスイッチが大型になるという問題がある。
【0012】
また、中間位置での検出精度が低いという問題は、上記同様となっている。
【0013】
本発明は、より小型化を図ることができると共に、検出の信頼性を著しく高めることのできるインヒビタスイッチの提供を課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、永久磁石及び該永久磁石の磁力を非接触で検出する磁気センサを備え、前記永久磁石及び磁気センサの相対位置の変化により電圧値の直線的な変化を出力するインヒビタスイッチであって、前記永久磁石又は磁気センサの一方を、自動変速機のマニュアルバルブを連動させて該自動変速機の変速レンジ位置を切り替えるためのマニュアルバルブシャフト側に取り付け、同他方を前記自動変速機のトランスミッションケース側に取り付け、前記永久磁石は、S極及びN極の磁気的な境界面を有して前記マニュアルバルブシャフトと一体回転可能に支持された非磁性体の可動子にリング状に取り付けられると共に前記磁気センサに対し前記境界面を基準位置として配置されて該磁気センサに対し前記境界面の両側方向に相対回転可能であり、前記磁気センサは、前記トランスミッションケース側に固定支持された非磁性体の極盤に取り付けられ、前記変速レンジ位置に対応する電圧値の出力により前記自動変速機の変速レンジ位置を検出可能にすることを特徴とする。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1記載のインヒビタスイッチであって、前記極盤と可動子との間に、前記磁気センサに対する永久磁石の相対回転を設定角度内とするストッパを設けたことを特徴とする。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載のインヒビタスイッチであって、前記磁気センサのリード端子は、前記極盤の外面に形成された凹部内に端末が引き出され、前記極盤に支持された外部接続用のコネクター端子の端末が前記凹部内に引き出されて前記リード端子の端末に電気的に接続され、前記凹部を、樹脂で封止したことを特徴とする。
【0019】
請求項4発明は、請求項1又は2記載のインヒビタスイッチであって、前記極盤を、樹脂で成型し、前記磁気センサを、前記極盤内にインサート成形により埋設配置したことを特徴とする。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1記載のインヒビタスイッチであって、前記磁気センサは、前記永久磁石の磁気的な境界面の数に応じて複数設けられたことを特徴とする。
【0021】
【発明の効果】
請求項1の発明では、マニュアルバルブシャフトの軸回転に応じた永久磁石及び磁気センサの相対位置の変化により、電圧値の直線的な変化を出力し、変速レンジ位置に対応する電圧値の出力により自動変速機の変速レンジ位置を検出可能としたため、自動変速機の変速レンジ位置を電圧値の変化によって確実に検出することができる。又、各変速レンジ位置に移行する中間状態においても、直線的な電圧値の変化を出力することができ、現在どの変速レンジ位置間を移行しているのかを正確に検出することができ、これによってインヒビタスイッチが突然故障した場合でも、その時の位置、変速方向を正確に判断して自動変速機の変速レンジを適切に制御することができ、信頼性を著しく高めることができる。さらに、磁気センサの数も1個にすることが可能であり、全体的に大幅な小型化を図ることができる。
【0022】
また、永久磁石はマニュアルバルブシャフトと一体回転可能に支持された非磁性体の可動子に取り付けられ、磁気センサはトランスミッションケース側に支持された非磁性体の極盤に取り付けられたため、マニュアルバルブシャフトの軸回転に応じて永久磁石が磁気センサに対して相対回転し、これによって電圧値の直線的な変化を正確に出力することができ、より正確な検出を行なうことができる。
【0023】
さらに、永久磁石はS極及びN極の磁気的な境界面を有し、永久磁石は磁気センサに対し境界面を基準位置として配置されると共に、磁気センサに対し境界面の両側方向に相対回転するため、電圧値の直線的な変化を広い範囲にわたって確保することができ、各変速レンジ位置での電圧値の変化の区別を容易とし、より正確な検出を行うことができる。
【0024】
請求項2の発明では、請求項1の発明の効果に加え、極盤と可動子との間に磁気センサに対する永久磁石の相対回転を設定角度内とするストッパを設けたため、電圧値を直線的な変化の範囲内で確実に検出することができ、より正確な検出を行うことができる。
【0025】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明の効果に加え、磁気センサのリード端子は極盤の外面に形成された凹部内に端末が引き出され、極盤に支持された外部接続用のコネクター端子の端末が凹部内に引き出されて、リード端子の端末に電気的に接続され、凹部を樹脂で封止したため、磁気センサを極盤に対し後付けすることができ、組付けの自由度を増大することができる。
【0026】
請求項4の発明では、請求項1又は2の発明の効果に加え、極盤を樹脂で成形し、磁気センサを極盤内にインサート成形により埋設配置したため、極盤内にオイル等が侵入したとしても、磁気センサに掛かることはなく、より正確な検出を可能にする。また、磁気センサの組み付け位置の精度が向上し、より正確な検出を可能とする。
【0027】
請求項5の発明では、請求項1の発明の効果に加え、磁気センサは永久磁石の磁気的な境界面の個数に応じて複数設けられているため、それぞれの磁気センサで電圧値の直線的な変化を検出し、これら電圧値を統合して変速レンジ位置を検出することができ、より正確な検出を行うことができる。又、何れかの磁気センサが故障したとしても、他の磁気センサで電圧値の直線的な変化を正確に出力することができ、変速レンジ位置の検出を継続することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るインヒビタスイッチ1の配置位置を示している。この図1では、インヒビタスイッチ1を3つ同時に示しているが、これら3つのインヒビタスイッチ1が同時に設けられるのではなく、いずれかの位置に選択して配置されるものである。
【0029】
前記磁気センサ1は、自動変速機3のマニュアルバルブシャフト5側と、自動変速機3のトランスミッションケース7側との間に取り付けられている。前記マニュアルバルブシャフト5は、前記自動変速機3のマニュアルバルブを連動させて自動変速機3の変速レンジ位置を切り替えるためのものである。マニュアルバルブシャフト5には、連接レバー9を介してシフトレバー11が連動連結されている。従って、シフトレバー11を操作すると、連接レバー9を介しマニュアルバルブシャフト5が回転し、このマニュアルバルブシャフト5の回転によりマニュアルバルブを連動させて自動変速機3の変速レンジ位置を切り替えることができる。なお、自動変速機3には、エンジンからの出力を入力するインプットシャフト13、出力を行うアウトプットシャフト15、インプットシャフト13からアウトプットシャフト15へ変速して回転を支える変速機構17が備えられている。
【0030】
前記何れかの位置に取りつけられたインヒビタスイッチ1は、インヒビタスイッチ1の全体断面を示す図2、図2のSA−SA断面を示す図3のように、永久磁石19及び該永久磁石19の磁力を非接触で検出する磁気センサ21を備えている。
【0031】
前記永久磁石19は、PPS樹脂にネオジムを加えて成形したプラスチック磁石であり、圧縮成形工法、射出成形工法などでリング状に形成されている。永久磁石19の一部には、凹部20が形成されている。この永久磁石19は非磁性体の可動子23に一体回転可能に支持されている。
【0032】
前記可動子23は、例えばPPS樹脂、PBT樹脂、ナイロンなどによって成形され、この可動子23には、凸部24が形成されている。組付時に前記凹部20に凸部24を軸方向に嵌合させることによって、可動子23に対する永久磁石19の回転方向の位置決めがなされている。なお、永久磁石19に射出成形用磁性材料を使用し、永久磁石19と可動子23とを二重成形、二色成形により一体成形して位置精度を向上させることもできる。
【0033】
前記可動子23は、前記マニュアルバルブシャフト5に嵌合して固定され、一体的に回転する構成となっている。従って、前記永久磁石19は、可動子23を介し、マニュアルバルブシャフト5側に取り付けられた構成となっている。可動子23には、肩部25,27が軸方向に突設されている。又、前記永久磁石19とほぼ同一外周位置において、ストッパ用の凸部29が突設されている。
【0034】
前記磁気センサ21は、例えばホール素子、ホールIC、MR素子などによって構成され、ホール素子の場合は、外付けの増幅回路が設けられ、またMR素子の場合も外付け増幅回路が設けられる場合もある。
【0035】
前記磁気センサ21は、前記永久磁石19の外周側に所定クリアランスをもって配置され、非磁性体の極盤31の凹部34に組み付けられる。なお、極盤31は、図1で示す前記トランスミッションケース7の内壁あるいは外壁側に支持されている。
【0036】
前記磁気センサ21のリード端子33は、極盤31の挿通孔35から極盤31の外面に形成された凹部37内に、その端末39が引き出されている。又、前記極盤31にインサート成形によって一体的に支持された外部接続用のコネクタ端子41の端末43が前記凹部37内に引き出され、前記リード端子33の端末39に半田等によって電気的に接続されている。前記凹部37は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂45によって封止されている。
【0037】
前記極盤31は、本体47と蓋体49とが接合面51において接合されたものである。この接合は、例えば図4の一部側面図のように、蓋体49及び本体47に設けた周方向所定間隔のフランジ部48(50)相互をビス52で締結することにより行っている。但し、本体47と蓋体49とは、超音波溶着、摺動溶着などの工法により溶着しても良い。
【0038】
前記極盤31には、図2、図3のように支持部53,55が設けられ、該支持部53,55の金属ブッシュ57,59によって極盤31は前記マニュアルバルブシャフト5の外面に回転自在に支持されている。
【0039】
前記極盤31の内面側には、周方向の位置決め面61,63と、軸方向の位置決め面65,67とが設けられ、前記可動子23の肩部25,27が位置決め面61,63及び65,67によって周方向及び軸方向に相対的に位置決められている。さらに、前記極盤31には、前記凸部29と共にストッパを構成する凹部69が設けられている。この凸部29及び凹部69によって構成されるストッパは、磁気センサ21に対する永久磁石19の相対回転を設定角度内とするものである。
【0040】
前記永久磁石19は、図5のようにリング状に一体に形成されたものに対し、N極,S極を有するように着磁されている。このN極,S極の中央が磁気的な境界面71となっている。そして前記永久磁石19は、前記磁気センサ21に対し前記磁気的な境界面71を基準位置として配置されると共に、磁気センサ21に対し境界面71の両側方向に矢印のように相対回転するように設定されている。この相対回転による出力電圧の変化は、例えば図6のようになっている。この変化のうち、±90度近辺において、電圧値の直線性はなくなるが、その間のほぼ150度の範囲では電圧値の直線的な変化を出力できるようになっている。
【0041】
そして、前記凸部29及び凹部69によるストッパは、この直線的な範囲での回転を規制するもので、図7のように凹部69が一定範囲の円弧状に形成されたものである。なおストッパにより規制される回転角度は、任意に選択できる。
【0042】
そして、図1のシフトレバー11の操作によって、連接レバー9を介し、マニュアルバルブシャフト5を回転させると、マニュアルバルブが動作し、変速機構17が指示された変速レンジ位置に切り替えられる。このとき磁気センサ21に対し永久磁石19が相対回転し、リード端子33、コネクタ端子41を介し制御部に電圧値の直線的な変化が出力される。この場合の変速レンジ位置P,R,N,D,3,2,1との関係を図7に示している。
【0043】
例えばPレンジからRレンジへ切り替わる境界値は3.700V、RレンジからNレンジへの境界値は同様に2.900V、以下同様にNレンジからDレンジは2.500V、Dレンジから3レンジへは2.100V、3レンジから2レンジへは1.700V、2レンジから1レンジへは1.300Vとなっている。但し、この数値は一例であって、その設定は個々の車によって自由に設定することができる。
【0044】
このように本発明の実施形態に係るインヒビタスイッチ1では、自動変速機3の変速レンジ位置を永久磁石19と磁気センサ21とにより非接触で検出することができ、スイッチ部分の摩耗がなく、摺動部分のノイズ発生がないなど信頼性が著しく向上し、検出精度の安定化を図ることができる。しかも永久磁石19及び該永久磁石19の磁力を非接触で検出する磁気センサ21によって、電圧値の直線的な変化を出力することができるため、各変速レンジ位置における検出電圧値の違いにより、変速レンジ位置を正確に検出することができる。
【0045】
また、NレンジからDレンジへ切り替えられているときに、Rレンジの信号が誤って出力されるようなことはなく、変速レンジ位置の切り替え検出を正確に行うことができる。
【0046】
さらに、変速レンジ位置の変更が行われている中間位置においても、電圧値の直線的な変化を出力することができるため、シフトレバー11によって現在どの変速レンジ位置方向へ切り替えられているのかも検出することができる。従って、例えばNレンジからDレンジへ切り替えられている途中において異常信号が発生し、故障したと判断されたときは、制御装置によって自動変速機3の変速レンジを強制的にDレンジに固定したり、Nレンジへ戻したりすることができる。Dレンジへ固定するときは、そのときの運転者の操作意志と合致させることができ、走行を継続することが可能となる。従って、故障と判断した運転者は自動車をそのまま修理工場へ自走によって運ぶことができる。Nレンジへ固定したときは、他車による牽引によって修理工場等へ運ぶことができる。他の変速レンジ位置間における故障モードにおいても、現在どの変速レンジ方向へ操作されているのかを検出することによって、上記同様の制御を行うことが可能となる。
【0047】
また、電圧値の直線的な変化の出力であるため、変速レンジ位置がさらに増加したとしても、対応する電圧値を分割するだけで容易に対処することができ、インヒビタスイッチ1の大型化を招くことは全くない。
【0048】
磁気センサ21は、基本的には1つでよく、構造が極めて簡単であり、全体的に大幅な小型化を図ることができる。このため図1のように、他の部品が密集してスペース的にあまり余裕のないミッションケース7の内側においても容易に配置することが可能となり、設計の自由度を大幅に増大することができる。ミッションケース7内に配置したときには、ミッションケース7そのものによってインヒビタスイッチ1を外部から保護することができる。
【0049】
その他、本発明の実施形態では、可動子23の肩部25,27を極盤31の位置決め面61,63,65,67に対向させることによって、可動子23を極盤31に対し軸方向、径方向へ正確に位置決めることができる。又、磁気センサ21は可動子31の凹部34内に位置決めることができる。従って、永久磁石19と磁気センサ21との間の径方向、軸方向における相対位置を正確に位置決めることができる。特に径方向における位置決めによって、永久磁石19、磁気センサ21間のクリアランスを正確に保持することができ、直線的な電圧値の出力を正確に維持することができる。
【0050】
前記永久磁石19と可動子23との間は、凹部20及び凸部24の嵌合によって周方向へ正確に位置決められ、永久磁石19の磁気的な境界面71を基準にした磁気センサ21に対する配置を正確に維持することができ、正確な検出を長く保持することができる。
【0051】
前記極盤31に対する可動子23の相対回転を凸部29と凹部69とのストッパ機能によって規制することができ、正確な検出を維持することができる。
【0052】
組付けに際しては、極盤31の本体47と蓋体49とが分離され、凹部37内に樹脂45が封止される前に、磁気センサ21を凹部34に嵌合させる。このとき磁気センサ21のリード端子33は、極盤31側の挿通孔35を通し、端末39が凹部37内に引き出される。この状態において、コネクタ端子41の端末43に対し、リード端子33の端末39が半田などによって電気的に接続される。次いで凹部37が樹脂45によって封止される。
【0053】
次に、可動子23が極盤31の本体47内に嵌め込まれ、肩部27が位置決め面63,67に支持される。次に、極盤31の蓋体49を本体47に突き当て、可動子23の肩部25を位置決め面61,65によって支持させる。次に、極盤31の本体47と蓋体49とのフランジ部50、48をビス52によって締結し、双方を一体的に結合する。
【0054】
このように本発明実施形態のインヒビタスイッチ1は、構造が極めて簡単であり、その組立も極めて容易である。
【0055】
インヒビタスイッチ1は、前記のようにミッションケース7内に配置される場合、オイルが接合面51から浸入する恐れがあるものの、極盤31内に大きなゴミの侵入は無く、磁気センサ21の検出に支障を招くことはない。
【0056】
図9,図10は、第1実施形態の変形例に係る実施形態を示し、図9は全体断面図、図10は図9のSA−SA線矢視断面図である。なお上記実施形態と対応する構成部分には同符合を付して説明する。
【0057】
本実施形態のインヒビタスイッチ1Aにおいては、永久磁石19Aと磁気センサ21Aとを軸方向に対向させたものである。すなわち可動子23Aにフランジ部72が周方向に突設され、このフランジ部72にドーナツ板状の永久磁石19Aを支持させている。可動子23Aと永久磁石19Aとの間の周方向の位置決めは、上記実施形態と同様に凹凸の嵌合によって行うことができる。
【0058】
磁気センサ21Aは、極盤31Aの本体47A内側面に形成された凹部34Aに嵌合して固定されている。磁気センサ21Aのリード端子33は、折り曲げて凹部37側に引き出されている。
【0059】
そして本実施形態においても、永久磁石19Aと磁気センサ21Aとの周方向の相対位置の変化により、電圧値の直線的な変化を出力することができ、上記同様な作用効果を奏することができる。
【0060】
一方、本実施形態においては、永久磁石19A、磁気センサ21Aを軸方向に対向配置するようにしたので、インヒビタスイッチ1Aを径方向に小型化することができる。
(第2実施形態)
図11,図12は本発明の第2実施形態に係り、図1は全体断面図、図12は図11のSA−SA矢視断面図である。なお上記実施形態と対応する構成部分には同符号を付して説明する。
【0061】
本実施形態のインヒビタスイッチ1Bにおいては、磁気センサ21Bを極盤31B内にインサート成形により埋設配置したものである。製造に際しては、まず磁気センサ21Bのリード端子33と、外部接続用のコネクタ端子41の端末39,43を加締め及び高温半田、あるいはスポット溶接などによって電気的に接続する。これら接続された磁気センサ21B及びコネクタ端子41を金型内にセットする。磁気センサ21B及びコネクタ端子41は、金型の一部により位置決め固定される。その後、射出成形を行い、極盤31Bの本体47Bを成形する。
【0062】
こうすることによって、磁気センサ21は極盤31Bの本体47Bの壁部に内蔵され、外部雰囲気から遮断されることになる。従って、極盤31Bの本体47Bと蓋体49との接合部分51を密閉構造(気密・水密構造)にする必要がなく、組付けがさらに容易となり、また低コスト化を図ることができる。
【0063】
磁気センサ21Bが外部雰囲気から遮断されるため、インヒビタスイッチ1Bがトランスミッションケース7外に配置され、水没状態で使用されたとしても、あるいはトランスミッションケース7内に配置されATF浸漬状態などであっても、使用を継続することができる。
【0064】
磁気センサ21Bの取付けの初期バラツキを低減することができ、取付精度を向上させ、より正確な検出を行うことができる。
(第3実施形態)
図13〜図17は本発明の第3実施形態を示している。まず図13は全体断面図、図14は図13のSA−SA矢視断面図である。なお上記実施形態と対応する構成部分には同符合を付して説明する。
【0065】
図13,図14のように、本実施形態のインヒビタスイッチ1Cにおいては、磁気センサ21C1,21C2が永久磁石19の磁気的な境界面の数に応じて複数設けられたものである。すなわち、磁気センサ21C1、21C2が永久磁石19の磁気的な境界面71に応じて上下一対設けられたものである。下側の磁気センサ21C2の構成は、前記第1実施形態の磁気センサ21と同様であり、前記極盤31Cにインサート成形によって一体的に支持された外部接続用のコネクタ端子41Cの端末43Cが前記凹部37内に引き出され、前記リード端子33の端末39に半田等によって電気的に接続されている。上側の磁気センサ21C1も同様の構成を備え、極盤31Cの凹部34Cに組み付けられ、リード端子33Cは、極盤31Cの挿通孔35Cから極盤31Cの外面に形成された凹部37C内に、その端末39Cが引き出されている。又、前記凹部37Cは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂45Cによって封止されている。従って、本実施形態においては、図13のようにコネクタ端子41Cに対する電気的な接続部分が、極盤31Cの本体47Cの凹部37,37C内での2箇所になっている。
【0066】
前記コネクタ端子41Cの具体的な形状は図15の斜視図のようになっている。すなわち上下に位置する接続用の端末73,43Cが弧部75によって結合され一体に形成されたものである。このコネクタ端子41Cは、極盤31Cの本体47Cにインサート成形されるもので、弧部75はブッシュ59の周りを迂回するように配置されている。
【0067】
このような磁気センサ21C1,21C2の回路構成は、図16のようになっている。すなわち双方のセンサ21C1,21C2がバッテリに接続する端子77と、アース端子79との間に並列に配置され、それぞれのアウトプット端子81,83から各磁気センサ21C1,21C2によって検出した直線的な電圧値の変化を各別に同時に出力することができるようになっている。なお図16では、電子部品の保護、ノイズ対策などのためにコンデンサ85,87,89,91,93、抵抗95、トライアック97が設けられている。前記バッテリに接続する端子77、アース端子79はコネクタ端子41Cが用いられ、検出信号を出力する各磁気センサ21C1、21C2のアウトプット端子81,83には信号線が接続され、それぞれ別々に信号が取り出されることになる。
【0068】
前記各磁気センサ21C1,21C2による電圧値の出力は、図17のようになっている。このような磁気センサ21C1,21C2の双方の出力値を同時に見ることによって、両出力値を比較しながらより正確な検出を行うことができる。さらに何れかの磁気センサ21C1,21C2が故障によって動作しなくなっても、他方の磁気センサ21C1,21C2が動作している限りは、直線的な電圧値の出力を行うことができ、変速レンジ位置の正確な検出を継続することができる。
【0069】
なお、上記実施形態では、永久磁石をリング状、あるいはドーナツ板状に形成して配置したが、これを弧状、帯状に形成し、この弧状、帯状の永久磁石に対し磁気センサが相対的に移動する構成にしても、直線的な電圧値の出力が可能であり、同様に正確な変速レンジの検出を行うことができる。但し、帯状の永久磁石の場合は、マニュアルバルブシャフトの回転を変換するなどして磁気センサを永久磁石に沿って直線的に相対移動させる構成とする。前記磁気センサ21をマニュアルバルブシャフト側に取り付け、永久磁石19をトランスミッションケース7側に取り付ける構成にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインヒビタスイッチの配置を示す自動変速機の概略断面図である。
【図2】第1実施形態に係り、全体断面図である。
【図3】図2のSA−SA矢視断面図である。
【図4】第1実施形態に係り、極盤の結合を示す要部側面図である。
【図5】第1実施形態に係り、永久磁石の磁気的な境界面を示す側面図である。
【図6】第1実施形態に係り、永久磁石の回転による出力電圧値の変化を示すグラフである。
【図7】第1実施形態に係り、ストッパの説明図である。
【図8】第1実施形態に係り、変速レンジ位置と出力電圧との関係を示すグラフである。
【図9】第1実施形態の変形例の実施形態に係る全体断面図である。
【図10】図9のSA−SA矢視断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る全体断面図である。
【図12】図11のSA−SA矢視断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る全体断面図である。
【図14】図13のSA−SA矢視断面図である。
【図15】第3実施形態に係り、コネクタ端子の斜視図である。
【図16】第3実施形態に係り、磁気センサの回路図でる。
【図17】第3実施形態に係り、回転角と出力電圧値との関係を示すグラフである。
【図18】従来例に係り、自動変速機の概略図である。
【図19】従来例に係り、インヒビタスイッチの取付状態における断面図である。
【図20】従来例に係り、インヒビタスイッチの接点を示す正面図である。
【符号の説明】
1,1A,1B,1C インヒビタスイッチ
3 自動変速機
5 マニュアルバルブシャフト
7 トランスミッションケース
19 永久磁石
21,21A,21B,21C1,21C2 磁気センサ
23,23A, 可動子
29 凸部(ストッパ)
31A,31B,31C 極盤
33,33C リード端子
37,37C 凹部
39,,39C,43,,43C73 端末
41,41C コネクタ端子
69 凹部(ストッパ)
71 磁気的な境界面
Claims (5)
- 永久磁石及び該永久磁石の磁力を非接触で検出する磁気センサを備え、前記永久磁石及び磁気センサの相対位置の変化により電圧値の直線的な変化を出力するインヒビタスイッチであって、
前記永久磁石又は磁気センサの一方を、自動変速機のマニュアルバルブを連動させて該自動変速機の変速レンジ位置を切り替えるためのマニュアルバルブシャフト側に取り付け、同他方を前記自動変速機のトランスミッションケース側に取り付け、
前記永久磁石は、S極及びN極の磁気的な境界面を有して前記マニュアルバルブシャフトと一体回転可能に支持された非磁性体の可動子にリング状に取り付けられると共に前記磁気センサに対し前記境界面を基準位置として配置されて該磁気センサに対し前記境界面の両側方向に相対回転可能であり、
前記磁気センサは、前記トランスミッションケース側に固定支持された非磁性体の極盤に取り付けられ、
前記変速レンジ位置に対応する電圧値の出力により前記自動変速機の変速レンジ位置を検出可能にすることを特徴とするインヒビタスイッチ。 - 請求項1記載のインヒビタスイッチであって、
前記極盤と可動子との間に、前記磁気センサに対する永久磁石の相対回転を設定角度内とするストッパを設けたことを特徴とするインヒビタスイッチ。 - 請求項1又は2記載のインヒビタスイッチであって、
前記磁気センサのリード端子は、前記極盤の外面に形成された凹部内に端末が引き出され、前記極盤に支持された外部接続用のコネクター端子の端末が前記凹部内に引き出されて前記リード端子の端末に電気的に接続され、
前記凹部を、樹脂で封止したことを特徴とするインヒビタスイッチ。 - 請求項1又は2記載のインヒビタスイッチであって、
前記極盤を、樹脂で成型し、
前記磁気センサを、前記極盤内にインサート成形により埋設配置したことを特徴とするインヒビタスイッチ。 - 請求項1記載のインヒビタスイッチであって、
前記磁気センサは、前記永久磁石の磁気的な境界面の数に応じて複数設けられたことを特徴とするインヒビタスイッチ。
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