JP3850056B2 - 光学素子の成形装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス等の光学素材を加熱軟化し、一対の成形用金型で押圧して成形する光学素子の成形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学素子の成形装置においては、成形された光学素子の中肉精度の確保と表面部のひけ防止ができるものが特開平4−331728号公報に記載されている。この装置は加熱軟化された光学素材を押圧する上下一対の金型と、この金型の変位を計測するセンサと、金型の押圧動作を停止する停止装置と、この停止装置を駆動する駆動手段と、前記センサからの入力を感知し、予め規定した時間後に停止装置を駆動させる遅延手段と、を有している。この装置は加熱軟化した光学素材を一対の金型が押圧した後、停止装置が金型の押圧動作を停止し、その後、停止装置の停止を解除して光学素材を再度、加圧するものである。これにより、早すぎず、遅くもないタイミングで停止装置を解除でき、これに連動して収縮成形時の加圧加工を行うことにより、成形される光学素子の中肉精度と面精度の双方を高精度とするものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、薄肉の光学素子の場合、押圧成形開始後、光学素材が固化するまでの時間が非常に短い。このため、上述した従来技術と同じタイミングで停止装置の停止を解除した場合でも、駆動手段の速度が速いと、収縮時の加圧は十分に行えるが、中肉精度が悪化する。一方、駆動手段の速度が遅いと、停止手段が解除されたときには光学素材が固化し、中肉精度は高くなるが、表面部にひけが発生する。このため中肉精度、面精度の両方を満たす光学素子を成形することができない問題を有している。
【0004】
本発明は上述した問題点を考慮してなされたものであり、薄肉の光学素子であっても、中肉精度の確保と表面部のひけ防止ができる光学素子の成形装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係る光学素子の成形装置は、加熱軟化した光学素材を押圧する一対の金型と、前記光学素材が所望の肉厚よりも厚肉の状態において前記金型の押圧動作を停止させる停止装置と、前記金型の押圧動作の停止を計測するセンサと、前記停止装置による停止を解除して前記金型の押圧動作を可能にする停止解除手段と、前記センサからの信号が入力され、前記金型の押圧停止から予め規定した時間後に、前記停止装置を前記停止解除手段によって停止を解除するように駆動させ、停止解除初期よりも停止解除後期の方が前記金型の押圧動作量が大きくなるように非線形作動して制御する遅延手段と、を具備するものである。
前記停止の解除は、前記停止装置を前記停止解除手段によって水平方向に移動して解除し、該移動の際に、前記停止装置に形成した円弧状曲面からなる当接面に沿って上下動して前記押圧動作する金型を支持する主軸を上下動するローラを具備するものである。
また、前記停止の解除は、前記停止装置を前記停止解除手段によって水平方向に移動して解除し、該移動の際に、前記停止装置に形成した垂直な段部を有する2段以上の段状の段面からなる当接面に沿って上下動して前記押圧動作する金型を支持する主軸を上下動するローラを具備するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の具体的な実施の形態を説明する前に、本発明の概要を説明する。
本発明の概要は、加熱軟化した光学素材を押圧する一対の金型と、金型の押圧停止を計測するセンサと、成形される光学素子の肉厚よりも光学素材が厚肉の状態において前記金型の押圧動作を停止させる停止装置と、この停止装置による停止を解除して前記金型の押圧動作を可能にする停止解除手段と、前記センサからの信号が入力され、予め規定した時間後に停止装置を駆動させる遅延手段とを有し、前記停止解除手段は停止装置の停止解除初期よりも後期の方が停止解除による金型の押圧動作量が大きくなるように非線形作動して停止装置を制御する構成とした。
そして、停止装置による停止の解除時に金型の停止の位置が非線形的に変化することにより、解除初期において、光学素材への加圧量を少なくして中肉精度を高くしつつもわずかでも加圧し、解除時後期では、光学素材への加圧量を多くする。
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の成形装置を、図2はそのストッパ部分を示す。下ベース6と、上ベース10と、これらのベース6、10に掛け渡されたカバー37とによって成形室38が形成されており、この成形室38内に上型7及び下型3が対向状態で配置されている。又、下ベース6が架台39に載置されることで成形室38の全体が架台39に支持されている。
【0007】
上型7は上ベース10の中央部分の開口部10aに嵌合された円柱状の上型支持体9の下端部に取り付けられるものであり、同支持体9のネジ部9aに螺合する上型押さえ8によって固定されている。下型3は下型支持体5の上端部に取り付けられるものであり、同支持体5のネジ部5aに螺合する下型押さえ4によって固定されている。この場合、上述した下ベース6の中央部分には開口部6aが形成されており、この開口部6aを上下動可能に貫通した主軸11に下型支持体5が取り付けられており、これにより下型3は主軸11と共に上下動する。
【0008】
主軸11は垂直方向に延びており、その下端部11aには主軸受16及びロードセル27が取り付けられていると共に、エアシリンダ等の加圧装置17に支持されている。この支持は加圧装置17のピストン17aの上端部にボール受6を取り付け、このボール受26上のボール25が主軸11のロードセル27下面に当接することで行われている。これにより加圧装置17のピストン17aの昇降で主軸11が上下動する。
【0009】
かかる主軸11の主軸受16には、ピン29を介してアーム21が回転自在に取り付けられており、このアーム21にセンサ18が取り付けられている。センサ18は遅延手段としてのコントローラ20に信号を出力するものである。アーム21は主軸11と直交する方向に延びており、その一側(左側)にはローラ15が装着されると共に、他側(右側)には第2のストッパ23が装着されている。これらのローラ15及び第2のストッパ23はアーム21のピン29に対して対称位置に設けられるものである。又、ローラ15の回転軸の位置及び第2のストッパ23の先端位置は高さ方向に調整可能となっている。
【0010】
上述した架台39の下面からは円筒状のハウジング19が垂下している。このハウジング19の長さ方向の所定位置には、主軸11の上下動を案内する軸受28が取り付けられている。又、ハウジング19の下端部には固定板12が取り付けられており、この固定板12下面における第2のストッパ23との対向部位には、同ストッパ23の先端部が当接するストッパ受24が配置されている。このストッパ受24は第2のストッパ23が当接する際の衝撃によっても変形しない超硬合金等の材質によって形成されている。なお、固定板12の中央部分には主軸11が貫通する通孔が開口されるものである。さらにローラ15と対向する固定板12下面に停止装置としての第1のストッパ13が設けられている。
【0011】
第1のストッパ13は固定板12の下面に取り付けられたガイド12aに沿って矢印40方向に移動可能となっている。この第1のストッパ13は固定板12下面に取り付けられたエアシリンダ等の停止解除手段としての駆動装置14のピストンに連結されて、その移動が行われる。駆動装置14はコントローラ20によってその駆動タイミングが制御されており、コントローラ20は前記センサ18からの信号の入力によって駆動装置14の制御と行う。
【0012】
22はこの第1のストッパ13の水平方向の位置を規制するストッパ調整台である。かかる第1のストッパ13はその当接面13aがローラ15に当接する。この第1のストッパ13の当接面13aは同ストッパ13の進行方向40の端面と一致した曲面中心軸13b(図2参照)を中心軸とする円弧状の曲面に成形されるものである。
【0013】
上記構成において、上型7及び下型3を光学素材1のガラス転移点温度以上の加熱する。これに対して、成形室38の外側に設けられた加熱炉(図示省略)内で軟化点温度以上の温度まで加熱された光学素材1はホルダ2と共に、搬送部材(図示省略)により、上型7と下型3の間に搬送される。しかる後、加圧装置17を作動してピストン17aを上昇し、これにより光学素材1を上型7と下型3の成形面によりプレス成形する。この時、プレスする力はロードセル27によりモニタされる。
【0014】
あらかじめ、光学素材1の肉厚が所望の値になるように上型7と下型3の間隔がローラ15および第2のストッパ23により調整されており、ローラ15が第1のストッパ13に、第2のストッパ23がストッパ受24に当接することにより、下型3を上昇させる主軸11の上昇が停止する。また、アーム21はピン29を中心に回転可能となっているが、主軸11の上昇を停止する際に生じる力は、ローラ15と第2のストッパ23に同時に生じ、しかも主軸11の中心に対して対称な位置に設置されているため、主軸11にはモーメントが生じないようになっている。
【0015】
さらに、センサ18はローラ15および第2のストッパ23により主軸11の上昇が停止する瞬間を感知し、その信号をコントローラ20が受け、所定のタイミングで駆動装置14を作動する。センサ18は、例えば近接スイッチを使用しており、ローラ15が第1のストッパ13に、第2のストッパ23がストッパ受24に当接する位置で、信号を出力するように、その高さ等の配設位置が調整されている。
【0016】
第1のストッパ13およびローラ15は、ボールベアリング等で支持されており、これにより主軸11の上昇で停止する際に生ずる力を受けても比較的小さい力で水平方向に移動が可能になっている。このため駆動装置14の動きに連動して第1のストッパ13は容易に時間的遅れもなく、水平方向40に移動することが可能になっている。そして、プレスされた光学素材1は、冷却固化するとともに収縮する過程で、センサ18が感知した時から早すぎなく、また遅すぎないタイミングで駆動装置14により水平方向に移動して取り除かれる。これにより加圧装置17により光学素材1が加圧され、収縮時の加圧が行われる。
【0017】
第1のストッパ13のローラ15への当接面13aは、ローラ15との接触面が曲面中心軸13bを中心とした円弧状曲面であるため、駆動装置14により第1のストッパ13が一定の速度で水平方向に移動した場合において、第1のストッパ13の移動開始時はローラ15の高さ方向の位置の変化が小さいが、第1のストッパ13の移動量が長くなるとともに、ローラ15の高さ方向の位置の変化も大きくなる。このため第1のストッパ13の移動開始時は、ローラ15と第1のストッパ13とが接触しているため、光学素材1は加圧されない。しかし第1のストッパ13の移動量が多くなるのにつれて、ローラ15の位置の変化が大きくなり、第1のストッパ13が取り除かれた状態になって、光学素材1が再度加圧される。
【0018】
次に、主軸11、すなわち下型3の変位を計測するセンサ18からの信号を感知した後、再び下型3が光学素材1を加圧するまでの遅延のタイミングを説明する。遅延のタイミングが早すぎると、光学素材1が充分な流動性を有する温度状態で再び加圧され、その工程において光学素材1の肉厚にバラツキが生じる。逆に遅延のタイミングが遅すぎると、光学素材1が金型温度(光学素材1の変形が実質的に生じない温度=ガラス転移点温度以下)に冷却されてもなお、金型の押圧動作は停止していることになる。その結果、光学素材1の冷却固化に伴って収縮するときに下型3からの加圧が行われず、ヒケが生じて高精度な面形状が得られない。
【0019】
ここで、第1のストッパ13の横幅を10mmとし、第1のストッパ13のローラ15との接触面13aの曲率半径Rを57mmとした場合と、従来技術に示されている5°テーパ面とした場合とにおいて、直径10mm、肉厚0.9mmの両平面の光学素子を各50個成形して、肉厚精度が±0.05mm以内となる条件では、前者を用いたとき、主軸11の停止0.1秒後に第1のストッパ13を駆動開始させることにより、ひけ量は0.2μmであったが、後者を用いた場合には主軸11の停止1.0秒後に第1のストッパ13を駆動開始させる必要があり、3μmのひけが発生した。一方、50個の成形でひけ量を0.2μmとしたとき、後者では第1のストッパ13を主軸11の停止0.1秒後に駆動開始させる必要があり、肉厚精度は±0.08mmであった。一般的には、肉厚精度は±0.05mm、ひけ量は2μm以下が望まれているので、この実施の形態の方が有効となっている。
【0020】
以上のように、光学素材1の肉厚が所望のものになるように上型7と下型3の間隔を調整し、押圧された光学素材1が冷却固化とともに収縮する過程で、主軸11の上昇が停止する瞬間をセンサ18により感知し、早すぎなく、また遅すぎないタイミングで第1のストッパ13を移動できるようにコントローラ20および駆動装置14を設け、さらに第1のストッパ13のローラ15との接触面13aを第1のストッパ13の進行方向側の端面と一致した曲面中心軸13bを中心軸とする円弧状曲面としたため、第1のストッパ13の移動開始直後は、光学素材への加圧量を少なくして中肉精度を高くしつつもわずかでも加圧することでひけの発生を最小限に抑えることができると共に、解除時後期では、光学素材への加圧量を多くして表面のひけの発生を防ぐことができ、これにより成形終了時に、中肉精度が確保され、表面部のひけもない高精度な光学素子を成形できる。
【0021】
(実施の形態2)
図3は実施の形態2を示し、実施の形態1と同一の要素は同一の符号を付して対応させてある。この実施の形態において、第1のストッパ13のローラ15との当接面13cが3段の段状の段面13cに成形されている。この当接面13cにおける段部はすべて垂直に加工されている。なお、段の数は2段以上であれば何段でも可能である。この実施の形態における第1のストッパ13も、駆動装置14により、矢印40に示す方向へ移動可能である。
【0022】
この構造において、第1のストッパ13はローラ15との接触面13cが3段の段状の段面であるため、駆動装置14の駆動によって一定の速度で水平方向に移動しても、ローラ15の高さ方向の位置は、当接面13cの水平面にローラ15が接触している間は変化しない。しかしローラ15が当接面13cの段付き部に接触しなくなり、高さが異なる次の水平面に接触するまでの間、ローラ15の高さ方向の位置が変化する。そのため、第1のストッパ13が移動を開始しても、当接面13cの最初の段突き部にローラ15が接触するまでは、光学素材1への加圧は行われず、ローラ15が段面13cの最初の段付き部に接触してから、高さが異なる次の水平面に接触するまでの間、光学素材1は加圧される。かかる作動は、さらに次の段付き部でも同様に行われて、光学素材1が再度加圧される。
【0023】
この実施の形態において、第1のストッパ13の横幅を10mmとし、第1のストッパ13が移動を開始してから0.1秒後にローラ15が当接面13cの最初の段付き部との接触を終え、次の水平面に0.3秒後に接触し、次の段付き部に0.6秒後に接触を終えることで、同一形状の光学素子を肉厚精度、ひけ量とも実施の形態1と同程度とすることができた。
【0024】
このような実施の形態では、第1のストッパ13のローラ15との当接面13cが3段の段状の段面であるため、第1のストッパ13が移動を開始しても、当接面13cの段付き部にローラ15が接触するまでは、光学素材1への加圧は行われず、ローラ15が当接面13cの最初の段付き部に接触してから、高さが異なる別の水平面に接触するまでの間、光学素材1が加圧される。そのため、第1のストッパ13の移動開始直後は、光学素材への加圧を間欠的にして中肉精度を高くしつつもわずかでも加圧することでひけの発生を最小限に抑えることができ、解除時後期では、光学素材への加圧量を多くして表面のひけの発生を防ぐことができる。これにより成形終了時では、中肉精度が確保され、表面部のひけもない高精度な光学素子を成形できるという効果がある。
【0025】
【発明の効果】
本発明は停止装置の解除時に金型の位置が徐々に変化することにより、解除初期において、光学素材への加圧量を少なくして中肉精度を高くしつつもわずかでも加圧することでひけの発生を最小限に抑え、解除時後期では、光学素材への加圧量を多くして表面のひけの発生を防ぐことにより、成形終了時において、中肉精度が確保され、表面のひけの発生もなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の全体の部分破断正面図である。
【図2】実施の形態1の要部の正面図である。
【図3】実施の形態2の要部の正面図である。
【符号の説明】
1 光学素材
3 下型
7 上型
11 主軸
13 第1のストッパ
15 ローラ
17 加圧装置
18 センサ
20 コントローラ
Claims (3)
- 加熱軟化した光学素材を押圧する一対の金型と、
前記光学素材が所望の肉厚よりも厚肉の状態において前記金型の押圧動作を停止させる停止装置と、
前記金型の押圧動作の停止を計測するセンサと、
前記停止装置による停止を解除して前記金型の押圧動作を可能にする停止解除手段と、
前記センサからの信号が入力され、前記金型の押圧停止から予め規定した時間後に、前記停止装置を前記停止解除手段によって停止を解除するように駆動させ、停止解除初期よりも停止解除後期の方が前記金型の押圧動作量が大きくなるように非線形作動して制御する遅延手段と、
を具備することを特徴とする光学素子の成形装置。 - 前記停止の解除は、前記停止装置を前記停止解除手段によって水平方向に移動して解除し、該移動の際に、前記停止装置に形成した円弧状曲面からなる当接面に沿って上下動して前記押圧動作する金型を支持する主軸を上下動するローラを具備することを特徴とする請求項1記載の光学素子の成形装置。
- 前記停止の解除は、前記停止装置を前記停止解除手段によって水平方向に移動して解除し、該移動の際に、前記停止装置に形成した垂直な段部を有する2段以上の段状の段面からなる当接面に沿って上下動して前記押圧動作する金型を支持する主軸を上下動するローラを具備することを特徴とする請求項1記載の光学素子の成形装置。
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JPH09175828A JPH09175828A (ja) | 1997-07-08 |
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