JP3848541B2 - 保安システムの選択システム、列車制御装置、地上制御装置および車上制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、列車制御システムに係り、特に、異なる鉄道信号方式が重複して使用される区間に在線する列車がいずれの鉄道信号方式に従うかを決定し、その列車のブレーキ制御を行うシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
列車は、各列車の許容速度を決定する保安システムに従って運行される。保安システムには、通常、鉄道信号方式と呼ばれているATC(AutomaticTrain Control)、ATS(Automic Train Stop system)等が含まれる。
【0003】
ここで、2つの異なる鉄道信号方式が連続する区間を列車が走行する場合、列車がいずれの信号方式の信号も受信できる重複区間がある。この重複区間において、適切なタイミングで信号方式を切り替える必要がある。
【0004】
そのため、従来の技術では、採用している信号方式とは異なる他の信号方式の信号を受信すると、その時点で新たに受信した他の信号方式に切り替えるというものがある。また、信号方式の切り替えを意味するトランスポンダを予め設置しておき、そのトランスポンダの上を通過したときに信号方式を切り替える、つまり、列車がある地点に達したときに信号方式を切り替えるという方法がある。
【0005】
このようにして信号方式を切り替えることにより、自動的に適切なタイミングで信号方式を切り替えることが可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術では、いずれも、列車がある地点に達したときに信号方式を切り替えることになる。そのため、本来切り替えの必要がないときでも、信号方式を切り替える場合がある。例えば、2つの信号方式の境界が駅構内にあり、2つの信号方式の制御範囲が駅構内で重複しているような場合を考える。このような駅で折り返す列車があった場合、列車の位置のみで信号方式を切り替えると、駅に入る前に信号方式を切り替え、駅を出るときに再び信号方式を切り替えて元の信号方式に戻るといった無駄な信号方式の切り替えが発生する。無駄な信号方式の切り替えは、設備上限られている列車に信号を伝送するための回線を無駄に使うため、列車の運行に支障する可能性がある。
【0007】
また、2つの信号方式が許容する列車速度は信号方式によって異なるため、信号方式を切り替えたときに、列車が切り替えた信号方式の許容速度を超過していて、急ブレーキがかかる場合がある。
【0008】
本発明の第一の目的は、列車が従う保安システムを適切に切り替えるための技術を提供することである。
【0009】
本発明の第二の目的は、保安システムの切り替えを安全に行うための技術を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記第一の目的を達成するため、本発明の第一の態様では以下の処理を行う。すなわち、列車の許容速度を決定する保安システムの信号を、複数種類の保安システムについて受信できる区間に列車が在線するとき、前記複数種類のうち、いずれの保安システムの区間に、当該列車の進路が向いているかを判定する。前記列車の進路方向の保安システムであると判定された保安システムにより定まる当該列車の許容速度に基づいて、当該列車を制御するための信号を生成して出力する。
【0011】
前記第二の目的を達成するため、本発明の第二の態様では以下の処理を行う。すなわち、前記第一の態様において、列車の速度が、前記列車の進路方向の保安システムによる許容速度以下の場合、前記列車の進路方向の保安システムにより定まる当該列車の許容速度に基づいて、当該列車を制御するための信号を生成して出力する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明を適用した一実施形態に係る列車制御システムの全体の構成図である。ここでは、レール上に列車103が在線している様子を示す。列車103が走行可能な区間は、無線により信号制御を行う鉄道信号方式(以下、無線信号方式と呼ぶ。)の範囲111と、軌道回路による信号制御を行う鉄道信号方式(以下、軌道回路信号方式と呼ぶ。)の範囲112とがある。各範囲内に在線する列車は、それぞれの信号方式の信号を受信することができる。そして、各信号方式により定まる走行条件に従って走行する。また、この図で列車103が在線する区間113は、無線信号方式の範囲111と軌道回路信号方式の範囲112とが重複している。従って、この重複区間113に在線する列車103は、無線信号方式および軌道回路信号方式の信号をいずれも受信できる。この列車103は、無線信号方式および軌道回路信号方式のいずれか一方に従う。本実施形態に係る列車制御システムは、列車103がいずれの信号方式に従うかを決定する。なお、鉄道信号方式とは、列車運行の安全確保を目的として、各列車の許容速度を定める保安システムの一つであり、例えば、ATC(Automatic Train Control)、新ATC、ATS(Automic Train
Stop system)等を含む。
【0014】
本実施形態に係る列車制御システムは、地上制御装置101と、地上側無線装置102と、信号制御装置105と、連動装置109と、列車103に搭載される車上制御装置130とを備える。
【0015】
地上側無線装置102は、地上側無線装置通信部201と接続されている。地上制御装置101が制御する全列車と無線通信を行い、列車と地上制御装置101との通信を中継する。
【0016】
信号制御装置105は、信号制御装置通信部208(図2参照)から軌道回路情報108(図2参照)を受信する。そして、軌道回路情報108を含む軌道回路信号をレールにより形成される軌道回路へ出力する。
【0017】
連動装置109は、分岐の有無、転てつ器の向き等の現地設備状態を取得して、現地設備状態情報110として地上制御装置101へ通知する。
【0018】
図2は、第1の実施形態に係る地上制御装置101の構成を示す。地上制御装置101は、地上側無線装置通信部201と、路線情報記憶部202と、停止限界算出部203と、連動装置通信部204と、軌道回路信号情報生成部205と、信号方式判定部206と、無線送信電文生成部207と、信号制御装置通信部208とを備える。
【0019】
地上側無線装置通信部201は、地上側無線装置102と無線信号の送受信を行う。例えば、地上側無線装置通信部201は、地上側無線装置102から位置情報107(詳細は後述する。)を受信する。受信した位置情報107は、路線情報記憶部202に格納される。また、地上側無線装置通信部201は、制御信号106(詳細は後述する。)を無線装置102へ送信する。
【0020】
路線情報記憶部202は、地上制御装置101が制御する全列車の現在位置、速度、従っている信号方式および進路と、信号機、転てつ器および軌道回路の位置、状態等の現地設備の状態を記憶する。
【0021】
連動装置通信部204は、連動装置109から現地設備状態情報110を受信し、現地設備の状態を路線情報記憶部202に格納する。
【0022】
停止限界算出部203は、路線情報記憶部202を参照し、地上制御装置101が制御を担当する範囲内の全列車について、停止限界104を算出する。停止限界104の算出は、具体的には、各列車の位置情報107と、分岐の有無、転てつ器の向き等の現地設備状態とに基づいて、各列車の走行に対する支障を検索し、その支障が存在する位置をもとに算出する。算出した停止限界104は、信号方式判定部206と無線送信電文生成部207に渡される。なお、停止限界とは、列車が他の列車に衝突する、あるいは脱線するといった危険なく、安全に走行できる限界点である。
【0023】
軌道回路信号情報生成部205は、軌道回路信号方式における許容速度を定める。具体的には、軌道回路信号情報生成部205は、路線情報記憶部202を参照し、現地設備の状態に基づいて、各軌道回路に伝送する軌道回路情報108を生成する。軌道回路情報108に、許容速度に関する情報が含まれる。生成した軌道回路情報108は、信号方式判定部206と信号制御装置通信部208に渡す。
【0024】
信号方式判定部206は、列車の進路が向いている方向が、いずれの信号方式の範囲であるかによって、その列車が従うべき信号方式を決定する。これは、列車が複数の信号方式に信号を受信できる重複区間に在線するときに行う。ここで従うべきとされた信号方式の識別情報は、列車の識別情報と併せて無線送信電文生成部207へ通知される。例えば、信号方式判定部206は、路線情報記憶部202を参照して、重複区間113に在線する列車を抽出する。そして、重複区間に在線する列車について、その進路方向を停止限界104の位置から求める。図1に示す場合、列車103の停止限界104は、軌道回路信号方式の範囲112にあるので、列車103が従うべき信号方式は、軌道回路信号方式となる。ここで従うべきとされた信号方式の識別情報は、列車の識別情報と併せて無線送信電文生成部207へ通知される。
【0025】
また、信号方式判定部206は、重複区間に在線する列車が、現在従っている信号方式と、上記処理で従うべきと判定された信号方式とが同一であるかどうかの判定を行っても良い。現在従っている信号方式は、路線情報記憶部202に記憶されている。この場合、その判定結果は、無線送信電文生成部207へ通知される。具体的には、信号方式判定部206は、停止限界104がある区間の信号方式と、列車103が従っている信号方式とを比較し、それらが異なるとき、その判定結果を無線送信電文生成部207へ通知する。図1に示す例では、停止限界104は軌道回路信号方式の範囲112にあるので、列車103が無線信号方式に従っているときは、切り替えが必要となる。
【0026】
上記の処理により、信号方式の切り替えが必要と判断されたときには、さらに、信号方式を切り替えても安全に減速できる場合にだけ、その列車に対して信号方式の切り替えを指示するようにしてもよい。具体的には、自列車103の現在の速度と、切り替え後の許容速度とを比較し、その結果に応じて、実際に切り替えを実行するかどうかを判断してもよい。すなわち、自列車の速度103が切り替え後の許容速度よりも速い場合には切り替えを行わず、自列車の速度103が切り替え後の許容速度よりも速くない場合に切り替えるようにしてもよい。これにより、信号方式を切り替えても安全に減速できる。
【0027】
無線送信電文生成部207は、停止限界算出部203から停止限界104を受け付け、信号方式判定部206から信号方式の識別方法、または信号方式切り替え要否の判定結果を受け付ける。そして、無線送信電文生成部207は、列車103に送信する制御情報106を生成し、地上側無線装置通信部201に渡す。制御情報106のフォーマットは、例えば、図6に示す。すなわち、制御情報106は、少なくとも、宛先列車ID1061と、停止限界情報1062と、信号方式指示情報1063とを含む。信号方式の識別情報を受け付けたときは、信号方式指示情報1063には、その情報が設定される。信号方式の切り替え判定の結果を受け付けたとき、その切り替えが必要な場合、信号方式指示情報1063には「切替要」を示す情報が設定される。単に「切替要」と設定する代りに、切替前後の信号方式の識別情報の両方、またはいずれか一方を含んでもよい。なお、信号方式切替の必要がないときは、信号方式指示情報1063には何も設定されない。
【0028】
信号制御装置通信部208は、信号制御装置105との通信を行う。具体的には、信号制御装置通信部208は、軌道回路信号情報生成部205から受け付けた軌道回路情報108を信号制御装置105に送信する。
【0029】
次に、第1の実施形態に係る車上制御装置130の構成を図3に示す。車上制御装置130は、車上無線装置301と、ブレーキパターン生成部302と、軌道回路信号受信装置303と、信号方式選択装置304と、ブレーキ出力装置305とを備える。
【0030】
車上無線装置301は、地上側無線装置102と無線信号の送受信を行う。例えば、地上側無線装置102から送信される制御情報106を受信する。受信した制御情報106は、ブレーキパターン生成装置302に渡される。また、位置情報107を地上側無線装置102へ伝送する。
【0031】
ブレーキパターン生成装置302は、制御情報106に含まれる停止限界1061が示す位置で、当該列車が安全に停止できるように、列車の速度を制御するためのブレーキパターンを生成する。このブレーキパターンにより、無線信号方式での、現時点における列車103の許容速度が定まる。ブレーキパターン生成装置302は、この無線信号方式の許容速度に基づいて、ブレーキを制御するための制御信号を生成する。生成されたブレーキ制御信号は、信号方式選択装置304に渡される。また、制御情報106に含まれる信号方式指示情報1063も、信号方式選択装置304へ渡される。
【0032】
軌道回路信号受信装置303は、軌道回路信号を受信する。軌道回路信号受信装置303は、受信した軌道回路信号に含まれる軌道回路情報108を解析し、軌道回路信号方式により定まる列車103の許容速度を得る。軌道回路信号受信装置303は、この軌道回路信号方式の許容新速度に基づき、ブレーキを制御するための制御信号を生成する。生成されたブレーキ制御信号は、信号方式選択装置304へ渡される。
【0033】
信号方式選択装置304は、地上制御装置101からの指示に基づいて、無線信号方式または軌道回路信号方式のいずれに従ってブレーキ制御を行うかを判断する。判断の結果、採用した信号方式のブレーキ制御信号をブレーキ出力装置305に渡す。
【0034】
例えば、信号方式選択装置304は、現在採用している信号方式の識別情報を記憶する図示しない記憶部を備え、この記憶部に識別情報が記憶されいている信号方式のブレーキ制御信号を選択するようにしてもよい。
【0035】
このとき、信号方式指示情報1063に選択された信号方式の識別情報が設定されている場合は、信号方式選択装置304は、その信号方式のブレーキ制御信号を選択し、ブレーキ出力装置305へ出力する。そして、選択された信号方式の識別情報を記憶部に上書きする。
【0036】
また、信号方式指示情報1063に「切替要」と設定されていたときは、現在採用している信号方式から他方の信号方式へ切り替え、記憶部を更新する。信号方式指示情報1063に「切替要」と設定されていないときは、切り替えを行わない。これにより、地上制御装置101の指示に基づいて信号方式の切替をすることができる。
【0037】
ブレーキ出力装置305は、信号方式選択装置304から受けたブレーキ制御信号に基づいて、図示しないブレーキ装置の制御を行う。
【0038】
位置情報生成装置307は、自列車103の速度を積算して、移動距離を算出する。この移動距離に基づき、列車103の現在位置を示す情報および速度を示す情報を含む位置情報107を作成する。位置情報107は、例えば、起動回路の通常の情報伝送手段で用いられる手法で実現できる。位置情報107は、車上無線装置301へ渡される。
【0039】
上記のように車上制御装置130を構成することにより、無線信号と軌道回路信号の両方を受信し、適切な信号方式を選択してブレーキ制御を行うことが可能となる。
【0040】
次に、本システムにおける信号方式の切替手順について、フローチャートを用いて説明する。
【0041】
地上制御装置101における処理フローを図4に示す。信号方式判定部206が、無線信号方式と軌道回路信号方式とが重複する区間に在線する列車を抽出する(S101)。重複区間にない列車については何もしない。重複区間内の列車について、停止限界算出部203が算出した停止限界が、軌道回路信号方式の範囲内であるかどうかを判定する(S102)。軌道回路信号方式の範囲内である場合、軌道回路信号方式の許容速度が、現在の列車速度より大きいかどうかを判定する(S103)。軌道回路信号方式の許容速度が、現在の列車速度より大きい場合には、無線送信電文作成部207が、軌道回路信号方式への切替指示を含む制御情報106を生成して、車上制御装置130へ送信する(S104)。
【0042】
ステップS102において、停止限界が軌道回路信号方式の範囲内でない場合、停止限界が無線信号方式の範囲内であるかどうかを判定する(S111)。そして、無線信号方式の範囲内であるときは、無線送信電文作成部207が、無線信号方式への切替指示を含む制御情報106を生成して、車上制御装置130へ送信する(S112)。
【0043】
なお、無線信号方式に関しては、許容速度との比較を行っていない。これは、一般的に、無線信号方式の方が軌道回路信号方式よりも許容速度が大きいからである。
【0044】
次に、車上制御装置130における処理フローを図5に示す。車上制御装置130では、信号方式選択装置304が、現在の採用している信号方式が無線信号方式であるかどうかを判定する(S201)。現在の信号方式が無線信号方式である場合、制御情報106に軌道回路信号方式への切替指示が含まれているかどうかを判定する(S202)。軌道回路信号方式への切替指示がある場合、信号方式選択装置304は、軌道回路信号方式によるブレーキ制御信号を選択して、出力する(S204)。軌道回路信号方式への切替指示がない場合、信号方式選択装置304は、無線信号方式によるブレーキ制御信号を選択して、出力する(S203)。
【0045】
ステップS201において、現在の信号方式が無線信号方式でない場合、制御情報106に無線信号方式への切替指示が含まれているかどうかを判定する(S211)。無線信号方式への切替指示がある場合、信号方式選択装置304は、無線信号方式によるブレーキ制御信号を選択して、出力する(S212)。無線信号方式への切替指示がない場合、信号方式選択装置304は、無線信号方式によるブレーキ制御信号を選択して、出力する(S213)。
【0046】
次に、第2の実施形態に係る地上制御装置101と車上制御装置130の構成図を図7および図8に示す。第1の実施形態では、地上制御装置101で各列車が従うべき信号方式の判定を行い、列車へ伝達していた。これに対して本実施形態では、信号方式の判定は列車に搭載されている車上制御装置130で行う。以下の説明では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明する。従って、第1の実施形態と共通の構成等には同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
図7に示す地上制御装置101は、地上側無線装置通信部201と、路線情報記憶部202と、停止限界算出部203と、連動装置通信部204と、軌道回路信号情報生成部205と、無線送信電文生成部207と、信号制御装置通信部208とを備える。地上制御装置101は、第1の実施形態と同様に、無線信号方式および軌道回路信号方式のそれぞれの鉄道信号方式に基づく信号を列車へ送信する。本実施形態では、第1の実施形態と異なり、信号方式が重複する区間にある列車が、いずれの信号方式に従うかの判断を行わない。この判断は、車上制御装置130において行う。
【0048】
図8に示す車上制御装置130は、車上無線装置301と、ブレーキパターン生成部302と、軌道回路信号受信装置303と、信号方式判定装置310と、ブレーキ出力装置305とを備える。すなわち、第1の実施形態における信号方式選択装置304の代りに信号方式判定装置310を備える。
【0049】
信号方式判定装置310は、無線信号方式または軌道回路信号方式のいずれに従ってブレーキ制御を行うかを判定する。その結果、採用した信号方式のブレーキ制御信号をブレーキ出力装置305へ出力する。
【0050】
具体的には、ブレーキパターン制御装置302から、無線信号方式のブレーキ制御信号、および制御情報106に含まれる停止限界情報1062を受け付ける。また、軌道回路信号受信装置303からは、軌道回路信号方式のブレーキ制御信号、および許容速度を受け付ける。これらに基づいて、当該列車が従うべき信号方式を決定する。
【0051】
例えば、信号方式判定装置310は、図9に示す処理手順で信号方式の判定を行う。
【0052】
信号方式判定装置310は、図示しない記憶部を備えている。この記憶部には、現在採用している信号方式の識別情報が記憶される。信号方式判定装置310は、この記憶部を参照して、無線信号方式に従っているかどうかを判定する(S301)。無線信号方式に従っている場合、軌道回路信号を受信しているかどうかを判定する(S302)。軌道回路信号を受信している場合、さらに、停止限界情報1062を参照し、当該列車の停止限界が軌道回路信号の範囲内であるかどうかを判定する(S303)。軌道回路の範囲内であるときは、軌道回路信号方式の許容速度が現在の列車速度よりも大きいかどうかを判定する(S304)。許容速度の方が現在速度よりも大きい場合は、軌道回路信号方式のブレーキ制御信号を選択し、ブレーキ出力装置305へ出力する(S305)。さらに、軌道回路信号方式の識別情報を記憶部に上書きする。
【0053】
また、軌道回路信号を受信していない場合(S302:No)、停止限界が軌道回路信号の範囲内にない場合(S303:No)、および軌道回路信号方式の許容速度が現在の列車速度よりも大きくない場合(S304:No)には、いずれも、無線信号方式のブレーキ制御信号を選択し、ブレーキ出力装置305へ出力する(S306)。このときは、記憶部の内容は更新されない。
【0054】
一方、無線信号方式に従っていない場合(S301:No)、無線信号を受信しているかどうかを判定する(S311)。無線信号を受信している場合、さらに、停止限界情報1062を参照し、当該列車の停止限界が無線信号の範囲内であるかどうかを判定する(S312)。無線信号の範囲内である場合、無線信号方式のブレーキ制御信号を選択し、ブレーキ出力装置305へ出力する(S313)。さらに、無線信号方式の識別情報を記憶部に上書きする。
【0055】
また、無線信号を受信していない場合(S311:No)、および停止限界が無線信号の範囲内にない場合(S312:No)には、軌道回路信号方式のブレーキ制御信号を選択し、ブレーキ出力装置305へ出力する(S314)。このときは、記憶部の内容は更新されない。
【0056】
このように、地上制御装置101からの指示を受けなくても、車上制御装置130が信号方式の選択または切り替えをすることができる。
【0057】
なお、上記実施形態においては、無線信号方式と軌道回路信号方式との間の切り替えを行っているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、少なくとも一方の信号方式が、停止限界のように列車の進行方を示す情報を持つ信号方式であればよい。たとえば、信号の伝送に漏洩同軸ケーブルや軌道回路を用いる他の信号方式であっても、同様に信号方式の切り替えを行うことができる。
【0058】
また、軌道回路信号についても、必ずしも軌道回路を用いて信号を伝送する信号方式である必要はなく、ATSのようにトランスポンダを用いる信号方式であってもよい。その場合、無線信号からトランスポンダを用いた信号方式への切り替え時には、列車の速度を監視することなく、列車速度以外の条件が揃った時点で信号方式の切り替えを行えばよい。また、トランスポンダを用いた信号方式から無線信号への切り替え時には、軌道回路からの信号の受信の代わりとして、トランスポンダを認識することを条件とするか、あるいはトランスポンダの認識を条件とせず、無線信号の条件のみで切り替えを行うようにしてもよい。
【0059】
さらに、上記実施形態では、二つの信号方式の間での切り替えについて説明したが、複数の信号方式の中から一つの信号方式を選択するようにしてもよい。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、列車が従う保安システムを適切なタイミングで切り替えることができる。
【0061】
さらに、本発明によれば、保安システムの切り替えを安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した列車制御システムの全体構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る地上制御装置101の詳細な構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る車上制御装置130の詳細な構成を示す図である。
【図4】第1の実施形態における地上制御装置101の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】第1の実施形態における車上制御装置130の処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】制御情報106のデータフォーマットの一例を示す図である。
【図7】第2の実施形態に係る地上制御装置101の詳細な構成を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る車上制御装置130の詳細な構成を示す図である。
【図9】第2の実施形態における車上制御装置130の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
101…地上制御装置、102…地上側無線伝送装置、103…列車、104…停止限界、105…信号制御装置、106…制御情報、107…位置情報、108…軌道回路信号情報、109…連動装置、110…現地設備状態情報、130…車上制御装置、201…地上側無線装置通信部、202…路線情報記憶部、203…停止限界算出部、204…連動装置通信部、205…軌道回路信号情報生成部、206…信号方式判定部、207…無線送信電文作成部、208…信号制御装置通信部、301…車上無線装置、302…ブレーキパターン生成装置
303…軌道回路信号受信装置、304…信号方式選択装置、305…ブレーキ出力装置、307…位置情報生成装置、310…信号方式判定装置。
Claims (4)
- 列車の許容速度を決定する保安システムの信号を、複数種類の保安システムについて受信できる区間に列車が在線するときに、前記複数種類の保安システムのいずれに従うかを選択する保安システムの選択システムであって、
保安システム毎にどの区間を担当するかを特定する区間情報、列車毎の位置情報および列車毎の進路情報を記憶した路線情報記憶部と、
前記区間情報および前記位置情報から複数種類の保安システムの信号を受信することができる区間に在線している列車を特定し、特定された列車の前記位置情報、特定された列車の前記進路情報および前記区間情報から前記特定された列車の進路方向にある保安システムを前記複数種類の保安システムの中から特定する信号方式判定部と、
前記信号方式判定部により特定された保安システムにより定まる制御信号を選択して出力する信号方式選択装置と、を備えること、
を特徴とする保安システムの選択システム。 - 列車の許容速度を決定する第1および第2の保安システムの信号を受信できる区間に列車が在線するときに、前記第1および第2の保安システムのいずれに従うかを選択する保安システムの選択システムであって、
保安システム毎にどの区間を担当するかを特定する区間情報、列車毎の位置情報および列車毎の進路情報を記憶した路線情報記憶部と、
前記区間情報および前記位置情報から前記第1および第2の保安システムの信号を受信することができる区間に在線している列車を特定し、特定された列車の前記位置情報および前記区間情報から、前記特定された列車の停止限界が前記第1および第2の保安システムのいずれの区間にあるかを特定する信号方式判定部と、
前記信号方式判定部により特定された区間により特定される保安システムによる制御信号を選択して出力する信号方式選択装置と、を備えること、
を特徴とする保安システムの選択システム。 - 列車の許容速度を決定する保安システムに従う列車に搭載される車上制御装置と、地上に配置される地上制御装置と、を備える列車制御システムであって、
前記地上制御装置は、
保安システム毎にどの区間を担当するかを特定する区間情報、列車毎の位置情報、列車毎の進路情報および各列車が従っている保安システムを列車毎に特定する信号方式情報を記憶した路線情報記憶部と、
前記区間情報および前記位置情報から前記第1および第2の保安システムの信号を受信することができる区間に在線している列車を特定し、特定された列車の前記位置情報および前記区間情報から、特定された列車の停止限界が前記第1および第2の保安システムのいずれの区間にあるかを特定し、特定された区間の保安システムが前記特定された列車の前記信号方式情報により特定される保安システムと異なる場合に、保安システムの切り替えを判断する信号方式判定部と、
前記信号方式判定部において、保安システムの切り替えを判断した場合に、切替信号を生成する無線送信電文作成部と、
前記無線送信電文作成部により作成された切替信号を前記車上制御装置に送信する通信部と、を備え、
前記車上制御装置は、
前記第1の保安システムにより定まる許容速度に基づいて、列車のブレーキを制御するための第1のブレーキ制御信号を生成する第1の装置と、
前記第2の保安システムにより定まる許容速度に基づいて、列車のブレーキを制御するための第2のブレーキ制御信号を生成する第2の装置と、
前記切替信号を受信する受信装置と、
前記第1および第2のブレーキ制御信号をそれぞれ受け付けて、いずれか一方を選択して出力する選択装置と、
前記選択装置が出力した第1または第2のブレーキ制御信号に基づいて、ブレーキ制御を行うブレーキ制御装置と、を備え、
前記選択装置は、前記受信装置が前記切替信号を受信すると、前記受信前に出力していた前記第1および第2のブレーキ制御信号のうちのいずれか一方から、他方へ切り替えて出力すること、
を特徴とする列車制御システム。 - 列車の許容速度を決定する保安システムに従う列車に搭載される車上制御装置と通信可能な地上制御装置であって、
保安システム毎にどの区間を担当するかを特定する区間情報、列車毎の位置情報、列車毎の進路情報および各列車が従っている保安システムを列車毎に特定する信号方式情報を記憶した路線情報記憶部と、
前記区間情報および前記位置情報から前記第1および第2の保安システムの信号を受信することができる区間に在線している列車を特定し、特定された列車の前記位置情報および前記区間情報から、特定された列車の停止限界が前記第1および第2の保安システムのいずれの区間にあるかを特定し、特定した区間の保安システムが前記特定された列車の前記信号方式情報により特定される保安システムと異なる場合に、保安システムの切り替えを判断する信号方式判定部と、
前記信号方式判定部において、保安システムの切り替えを判断した場合に、切替信号を生成する無線送信電文作成部と、
前記無線送信電文作成部により作成された切替信号を前記車上制御装置に送信する通信部と、を備えること、
を特徴とする地上制御装置。
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