JP3847918B2 - 光電変換装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イメージスキャナー、X線撮影装置などに用いられる光電変換装置に関し、特に複数の光電変換アレーを相互に隣接するように貼り合わせて受光領域を拡大した光電変換装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図8は、従来の光電変換装置の構成を示したものである。本図においてはX線撮影に用いた例を示している。図中、1は光源すなわち被写体2(本図では人体)にX線を照射するX線源である。3は透過X線すなわち被写体情報を有するX線を可視光に変換する蛍光体である。4は蛍光体3からの被写体情報光(可視光)を読み取り、電気信号に変換する第1の光電変換アレー、5は第2の光電変換アレーである。4および5の光電変換アレーは光電変換素子を2次元的に規則的に配列したものである。また4の第1の光電変換アレーと5の第2の光電変換アレーは6のシャーシ上に相互に隣接するように配置されている。シャーシ6には散乱などによる悪影響を防ぐために、X線の吸収率の大きい材料(鉛など)を用いるのが一般的である。
【0003】
図9(a)および図9(b)は、図8の4および5の光電変換アレー上の光電変換素子の構成を示す概略図である。図9(b)は、図9(a)を図中ABで切り取った場合の断面図である。本図において光電変換素子はガラス基板7上のセンサ8と薄膜トランジスタ(TFT)9で構成されている。本図においてセンサ8およびTFT9はアモルファスシリコン薄膜プロセスで同時に形成される。また本説明図ではセンサ8はMIS型センサである。センサ8およびTFT9はガラス基板7上に下メタル層10、絶縁層11、半導体層12、n+層13、上メタル層14および図示しない保護層(アモルファスシリコン窒化膜またはポリイミドなど)を順次成膜、パターニングすることにより形成される。
【0004】
図10は、図9の光電変換素子の働きを示す等価回路である。センサ8に入射した光量に応じて電荷が発生し、その電荷をTFT9で図示しない読み取り装置に転送することによって読み取り動作を行うものである。
【0005】
図11は、図8に示す従来の光電変換装置の光電変換アレーをX線源1の側から見たものである。本図において第1の光電変換アレー4および第2の光電変換アレー5はそれぞれ5×5の光電変換素子により構成されている。図のように第1の光電変換アレー4と第2の光電変換アレー5を相互に隣接するように、シャーシ6上で貼り合わせた構成となっており、従来の光電変換装置が2つの光電変換アレー4,5にまたがった被写体15を読み取る様子を示したものである。8は各光電変換素子におけるセンサを表している。
【0006】
また、図12は、図11の従来の光電変換装置で読み取った画像をディスプレイ上に再現した様子を簡易的に表現したものである。
【0007】
図12のように、従来の光電変換装置では、再現された画像が実際の画像と異なり、貼り合わせの境界で段差を生じてしまうという問題点を有していた。
【0008】
また従来の光電変換装置は、図13のように、ガラス基板7上に成膜、パターニングされた光電変換アレーを、スライスライン16に沿って切断し、相互に貼り合わせるのが一般的である。
【0009】
上述のような画像の段差という問題点を回避しようとすれば、図14のように、光電変換素子(センサ8)とスライスライン16の距離dを小さくしなければならない。この場合には切断時のガラスあるいは保護層の欠けや傷17によりスライスライン近傍の光電変換素子(センサ8)が欠陥となる、あるいは保護層の傷などから水分や不純物が侵入し腐蝕などの原因となる、などの問題点を有していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、従来の複数の光電変換アレーを相互に隣接するように構成する光電変換装置においては、下記のような問題点が生じていた。
▲1▼画像を再現した時に、貼り合わせの境界で画像に段差が生じ、画像品質を低下させる。
▲2▼切断時の傷などにより光電変換素子に欠陥が生じる。あるいは切断面から水分や不純物が侵入し腐蝕や特性変化を引き起こす。
【0011】
[発明の目的]
本発明の目的は、光電変換アレーの貼り合わせによる画質の低下を改善し、かつ耐久性に優れた光電変換装置を実現することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した課題を解決するための手段として、複数のセンサを規則的に配列した第1の光電変換アレーと、複数のセンサを規則的に配列した第2の光電変換アレーとを相互に隣接させて配置した光電変換装置において、
前記第1の光電変換アレーのセンサの重心間の距離で規定されるピッチP1、
前記第2の光電変換アレーのセンサの重心間の距離で規定されるピッチP2、
前記第1の光電変換アレーと前記第2の光電変換アレーとの境界における、第1の光電変換アレーのセンサの重心と、前記第2の光電変換アレーのセンサの重心の間の距離で規定されるP3に、以下の関係、
P1=P2
P3はP1またはP2の概ねn倍
(ただしnは2以上の自然数(2,3,・・・))が成り立つことを特徴とする光電変換装置を提供するものである。
【0013】
また、本発明が目的とするような良好な画像を得るためには、P3はP1(またはP2)に対して30%以内のバラツキすなわち、
(n−0.3)×P1≦P3≦(n+0.3)×P1
であることが望ましい。
【0014】
さらに、X線撮影装置などに応用し、画像を再現した際、貼り合わせ境界における段差などのない画像を得るには、P3はP1(またはP2)に対して20%以内のバラツキすなわち、
(n−0.2)×P1≦P3≦(n+0.2)×P1
であるのが理想的である。
【0015】
また、本発明は、前記課題を解決するため、以下の手段を有する。
【0016】
前記n=2であることを特徴とする光電変換装置。
【0017】
また、前記第1の光電変換アレー及び前記第2の光電変換アレーの画素の重心を、それぞれ貼り合わせ部の方向へ偏位させることを特徴とする光電変換装置。
【0018】
また、前記第1の光電変換アレーの画素形状と、前記第2の光電変換アレーの画素形状は、同一であることを特徴とする光電変換装置。
【0019】
また、前記第1の光電変換アレーの画素形状と、前記第2の光電変換アレーの画素形状は、貼り合わせ境界に対して鏡像の関係であることを特徴とする光電変換装置。
【0020】
また、前記第1の光電変換アレー及び前記第2の光電変換アレーの各画素は、光電変換素子と薄膜トランジスタを有することを特徴とする光電変換装置。
【0021】
また、前記光電変換素子および薄膜トランジスタは、非晶質シリコンプロセスで形成されたことを特徴とする光電変換装置。
【0022】
また、前記薄膜トランジスタは、前記貼り合わせ境界から遠い位置に配置されることを特徴とする光電変換装置。
【0023】
また、前記光電変換素子は、PIN型のフォトダイオードであることを特徴とする光電変換装置。
【0024】
また、前記光電変換素子は、MIS型フォトダイオードであることを特徴とする光電変換装置。
【0025】
また、前記光電変換アレーは、4枚相互に隣接するように貼り合わされることを特徴とする光電変換装置。
【0026】
また、前記画素形状は、正像、鏡像、正像の1/2回転、鏡像の1/2回転の4枚を相互に隣接するように貼り合わせることを特徴とする光電変換装置。
【0027】
また、前記貼り合わせ境界の画素重心間の距離P3は、前記P1またはP2の概ね2倍であり、かつ貼り合わせ境界部に相当する画素の情報を、周囲の画素情報を元に計算し、補間する手段を有することを特徴とする光電変換装置。
【0028】
[作用]
本発明の上記、各手段によれば、光電変換アレーの貼り合わせによる画質の低下を改善し、かつ耐久性に優れた光電変換装置を実現することができる。
【0029】
すなわち、本発明によれば、上述したP1,P2,P3において、
P1=P2
P3はP1またはP2の概ねn倍
(ただしnは自然数(1,2,3,・・・・))
とすることにより、光電変換アレーの貼り合わせによる画質の低下を改善し、かつ耐久性に優れた光電変換装置を実現することができる。
【0030】
また、本発明が目的とするような良好な画像を得るためには、P3はP1(またはP2)に対して30%以内のバラツキすなわち、
(n−0.3)×P1≦P3≦(n+0.3)×P1
であることが望ましい。
【0031】
さらにX線撮影装置などに応用し、画像を再現した際、貼り合わせ境界における段差などのない画像を得るには、P3はP1(またはP2)に対して20%以内のバラツキすなわち、
(n−0.2)×P1≦P3≦(n+0.2)×P1
であるのが理想的である。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例について図を用いて詳しく説明する。
【0033】
[第1の実施例]
図1は、本発明の第1の実施例の光電変換装置を示す上面模式図である。従来例と同じ機能のものに対しては同一の符号を用いて説明している。図1において、8はPIN型フォトダイオードやMIS型フォトダイオードなどのセンサを示す。4,5は光電変換素子を2次元状に配列した構成を有する光電変換アレーであり、シャーシ6上に相互に隣接するように貼り合わされている。
【0034】
図2は、図1の光電変換装置の貼り合わせ境界の拡大図である。P1は第1の光電変換アレー4のセンサの重心間の距離で規定されるピッチである。同様にP2は第2の光電変換アレー5のセンサの重心間の距離で規定されるピッチである。図9のようなMIS型センサの場合は、センサ8のn+層の部分の重心がセンサ重心である。またP3は貼り合わせ境界のセンサの重心間の距離である。本実施例では、
P1=P2
P3はP1またはP2と概ね同じ(すなわち、P3=n×P1=1×P1,n=1の場合)となるように光電変換装置を構成している。
【0035】
また、貼り合わせ工程のバラツキなどによりP3が変動する場合でも画像に影響を与えないためには、P3の誤差はP1またはP2の30%以内であることが望ましい。
【0036】
さらにX線撮影装置などに応用した場合、画像を再現した際、貼り合わせ境界における段差などのない良好な画像を得るにはP3の誤差はP1およびP2の20%以内であるのが理想的である。
【0037】
図3は、本実施例に基づき図1の被写体15を読み取り、その画像を再現した様子を示すものである。光電変換アレーの境界においてもピッチP1=P2=P3が概ね成り立つため、図3に示すように、画像再現後も貼り合わせ境界において段差は生じない。
【0038】
[第2の実施例]
図4は、本発明の光電変換装置の第2の実施例の概略図であり、第1の光電変換アレーと第2の光電変換アレーの貼り合わせ境界を拡大して示すものである。本実施例においては、図のように光電変換アレーの境界において、センサ重心間の距離は、概ね、
P3=2×P1(またはP2)(すなわち、n=2の場合)
となっている。前述の第1の実施例と同様に貼り合わせ工程によりP3が変動する場合でも画像に影響を与えないためには、P3はP1(またはP2)に対して30%以内のバラツキすなわち
1.7×P1≦P3≦2.3×P1
であることが望ましい。
【0039】
さらにX線撮影装置などに応用した場合、画像を再現した際、貼り合わせ境界における段差などのない良好な画像を得るには、P3はP1(またはP2)に対して20%以内のバラツキすなわち、
1.8×P1≦P3≦2.2×P1
であるのが理想的である。
【0040】
また、図4および図5のEに相当する画像は同図DおよびFのセンサ出力を元に図示しない画像処理装置によって計算、補間される。画像処理を適当に施すことにより、図5のように段差の軽減された画像を再現することができる。
【0041】
このような、補間する手段としては、
▲1▼ 隣接する画素データで補間する;
▲2▼ 周囲画素の平均値又は重み付き平均値で補間する;
などの手段がある。
【0042】
[第3の実施例]
図6は、本発明の光電変換装置の第3の実施例の構成図である。本図において8は光電変換素子中のセンサ(図9のセンサ8相当)、9は光電変換素子中のTFT(図9のTFT9相当)を模式的に示したものである。本実施例では前述の第2の実施例と同様に、P3を概ね2×P1(またはP2)とするとともに、第1の光電変換アレーと第2の光電変換アレーでは光電変換素子の形状が貼り合わせ境界に対して鏡映反転の関係としている。このような構成とすることにより、スライスラインからセンサ8までの距離dを減ずることが可能となり、信頼性を向上させることができる。
【0043】
また、前記光電変換アレーを4枚相互に隣接するように貼り合わせる場合に、同様に、前記センサ形状は、正像、鏡像、正像の1/2回転、鏡像の1/2回転の4枚を相互に隣接するように貼り合わせることによっても、同様の効果を得ることができる。
【0044】
[第4の実施例]
図7は、本発明の光電変換装置の第4の実施例の構成図である。図示するように本発明においては光電変換アレーは4枚貼り合わせた構成となっている。本実施例においては図示するようにセンサ8に対してTFT9が基板の内側に配置している。一般にTFTはセンサに比してかかる電界が大きく腐蝕などの問題が発生しやすく、かつ発生した場合には点欠陥ではなく線欠陥となる。本実施例のように、貼合せ境界からTFTを遠ざける構成により、境界における画質および信頼性の低下のない光電変換装置を実現できる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、光電変換素子によるセンサを規則的に多数配列した複数の光電変換アレーを相互に隣接するように貼り合わせて構成する光電変換装置において、光電変換アレーの貼り合わせによる画質の低下を改善し、かつ耐久性に優れた光電変換装置を実現できる。
【0046】
すなわち、本発明によれば、複数のセンサを規則的に配列した第1の光電変換アレーと、複数のセンサを規則的に配列した第2の光電変換アレーとを相互に隣接させて配置した光電変換装置において、
前記第1の光電変換アレーのセンサの重心間の距離で規定されるピッチP1、
前記第2の光電変換アレーのセンサの重心間の距離で規定されるピッチP2、
前記第1の光電変換アレーと前記第2の光電変換アレーとの境界における、第1の光電変換アレーのセンサの重心と、前記第2の光電変換アレーのセンサの重心の間の距離で規定されるP3に、以下の関係、
P1=P2
P3はP1またはP2の概ねn倍
(ただしnは2以上の自然数(2,3,・・・))が成り立つことを特徴とする光電変換装置により、光電変換アレーの貼り合わせによる画質の低下を改善し、かつ耐久性に優れた光電変換装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の光電変換装置の概略図。
【図2】本発明の第1の実施例の光電変換アレーの貼り合わせ境界部拡大図。
【図3】本発明の第1の実施例の光電変換装置の再現画像。
【図4】本発明の第2の実施例の光電変換装置の概略図。
【図5】本発明の第2の実施例の光電変換装置の再現画像。
【図6】本発明の第3の実施例の光電変換装置の概略図。
【図7】本発明の第4の実施例の光電変換装置の概略図。
【図8】従来の光電変換装置の概略図。
【図9】従来の光電変換装置の光電変換素子の構成図および断面図。
【図10】従来の光電変換素子の等価回路図。
【図11】従来の光電変換装置の概略図。
【図12】従来の光電変換装置の再現画像。
【図13】従来の光電変換アレーの基板イメージ図。
【図14】従来の光電変換アレーの貼り合わせ境界部拡大図。
【符号の説明】
1 光源
2 被写体
3 蛍光体
4 第1の光電変換アレー
5 第2の光電変換アレー
6 シャーシ
7 ガラス基板
8 センサ
9 TFT
10 下メタル層
11 絶縁層
12 半導体層
13 n+層
14 上メタル層
16 スライスライン
17 保護層の欠け

Claims (8)

  1. 複数のセンサを規則的に配列した第1の光電変換アレーと、複数のセンサを規則的に配列した第2の光電変換アレーとを相互に隣接させて配置した光電変換装置において、
    前記第1の光電変換アレーのセンサの重心間の距離で規定されるピッチP1、
    前記第2の光電変換アレーのセンサの重心間の距離で規定されるピッチP2、
    前記第1の光電変換アレーと前記第2の光電変換アレーとの境界における、第1の光電変換アレーのセンサの重心と、前記第2の光電変換アレーのセンサの重心の間の距離で規定されるP3に、以下の関係、
    P1=P2
    P3はP1またはP2の概ねn倍
    (ただしnは2以上の自然数(2,3,・・・))が成り立つことを特徴とする光電変換装置。
  2. 前記P3は、以下の関係
    (n−0.3)×P1≦P3≦(n+0.3)×P1
    (ただしnは2以上の自然数(2,3,・・・))
    が成り立つことを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
  3. 前記P3は、以下の関係
    (n−0.2)×P1≦P3≦(n+0.2)×P1
    (ただしnは2以上の自然数(2,3,・・・))
    が成り立つことを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
  4. 前記第1の光電変換アレーのセンサ形状と、前記第2の光電変換アレーのセンサ形状は、同一であることを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
  5. 前記第1の光電変換アレーのセンサ形状と、前記第2の光電変換アレーのセンサ形状は、前記境界に対して鏡像の関係であることを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
  6. 更に、複数のセンサを規則的に配列した第3の光電変換アレーと、複数のセンサを規則的に配列した第4の光電変換アレーと、を有し、前記第1、第2、第3及び第4の光電変換アレーを相互に隣接させて配置することを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
  7. 前記第1、第2、第3及び第4の光電変換アレーの夫々のセンサ形状は、相互に、正像、鏡像、正像の1/2回転及び鏡像の1/2回転の配置関係で相互に隣接させて配置させたことを特徴とする請求項6記載の光電変換装置。
  8. 前記境界のセンサ重心間の距離P3は、前記P1またはP2の概ね2倍であり、かつ前記境界部に相当する画素の情報を、周囲の画素情報を元に計算し、補間する手段を有することを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
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