JP3847321B2 - スクロール型圧縮機 - Google Patents

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本発明は、スクロール型圧縮機、特に圧縮機の潤滑油貯留構造に関する。
一般に圧縮機では、冷媒ガス中に潤滑油の油滴を浮遊せしめ、軸封装置、圧縮機構、軸受等の各摺動部の潤滑が行われているが、この潤滑油を冷媒ガス中に浮遊せしめたまま、圧縮機から冷媒回路内へ循環させると、蒸発器や凝縮器等の熱交換器内部の熱交換表面に潤滑油が付着し、熱交換器の熱交換能力が低下するという問題がある。このため、圧縮機から冷媒回路に潤滑油が冷媒ガスとともに流出しないように、圧縮機内に油分離機構を設けて潤滑油を分離し、この分離した潤滑油を貯留し、貯留した潤滑油を、圧縮機内において各摺動部分に直接または冷媒ガスに含ましめて間接的に供給するような機構が採用されている。
ところで、従来の圧縮機の場合、例えば、特許文献1に記載されたスクロール型圧縮機の場合、一対のスクロールにより形成された圧縮室からの吐出ガスを、固定スクロールの固定側板を境界壁として圧縮室に隣接して設けられた吐出室に対し、固定側板に設けられた吐出口及び吐出弁を介して送出し、吐出室内で油分離を行って、分離された潤滑油を吐出室内の下方部に貯留している。また、この潤滑油貯留構造の場合、固定側板およびリヤハウジングからそれぞれリブを伸ばして衝突面を形成し、この衝突面に吐出口より吐出された吐出ガスを衝突させることにより、ミスト状の潤滑油を分離し、潤滑油をリブ下方の貯留空間に貯留していた。
しかしながら、このリブ下方の貯留空間とリブ上方の吐出室との間は、リブの側方において潤滑油の往来が可能となるように開放されているため、一旦油分離された潤滑油が吐出ガスにより巻き上げられ、油分離効果が低くなるという問題がある。
特開平4−279786号公報
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたもので、その課題は、油分離効果を向上させることにある。
上記の目的を達成するために、本願に係る発明では、ハウジングと、固定スクロールと、可動スクロールとを有し、固定スクロールと可動スクロールとにより圧縮室が形成され、圧縮室に隣接して吐出室を設け、圧縮室と吐出室とを両室の境界壁に設けた吐出口を介し連通するとともに、吐出室の下方部を貯油室とし、上方部を吐出チャンバとしてなるスクロール型圧縮機において、貯油室と吐出チャンバとを気密に区画する隔壁を形成し、ハウジングに、遠心分離式の油分離器を配置し、吐出チャンバは、吐出ガス導入孔を介して油分離器と接続され、油分離器の下部に貯油室に連通する排油孔を設け、ガス抜き通路であって、排油孔が開口した貯油室の一部と、貯油室の他の一部とを直接に連通し、貯油室の一部と、貯油室の他の一部との間でガスの移動を許容するガス抜き通路が設けられていることを特徴とする。
このように形成することにより、圧縮室から吐出口を介して吐出された吐出ガスは、油分離器に導入されて油分離され、分離された潤滑油は排油孔を通って油分離器に導入され、ミスト状潤滑油が除去された吐出ガスは油分離器のガス排出口を通って冷媒回路へ送出される。また、隔壁により貯油室と吐出チャンバとが仕切られているため、一旦分離されて貯油室に導入された潤滑油は、吐出チャンバと往来するようなことがなく、従って、貯油室に貯留された潤滑油が吐出ガスに巻き上げられることがない。
ガス抜き通路は、固定スクロールとハウジングとが接合する端面に形成されていることを特徴としてもよい。
貯油室内の油レベルが上昇すると、貯油室内に、貯油室の内壁および油レベルによって隔てられる空間が形成され、隔てられる空間が、ガス抜き通路によって連通されてもよい。
貯油室内において、固定スクロールとハウジングとが接合する端面が鉛直方向に延在てもよい
この発明に係るスクロール型圧縮機は、吐出室内が隔壁により吐出チャンバと貯油室とに上下に気密に区画されているので、分離貯留された潤滑油が吐出ガスにより巻き上げられることがなく、油分離効果がよい。
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図1から図5に基づいて説明する。この圧縮機では、固定スクロール1は、固定側板1aと、固定側板1aと一体的に形成されるとともに固定スクロール1の外郭を形成するシェル1bと、前記固定側板1aの内側にインボリュート曲線等により形成された固定渦巻体1cとから形成されている。可動スクロール2は、可動側板2aと、この可動側板2aの内側にインボリュート曲線等により形成された可動渦巻体2cとから形成されている。そして、可動スクロール2と前記固定スクロール1とを対向接合するように噛合させることにより、圧縮室3が形成されている。
図1における固定スクロール1、即ち、シェル1bの左側には、フロントハウジング4が結合され、フロントハウジング4内には軸封装置5、主軸受6を介して駆動軸7が回転自在に支承されている。この駆動軸7の大径部内端には、偏心ピン8が偏心して形成されており、偏心ピン8には、駆動ブッシュ9が嵌合され、また、動的不均衡を吸収するバランスウエイト10が取り付けられている。そして、駆動ブッシュ9に、可動スクロール2がラジアルベアリング11を介して回転支持されている
可動スクロール2に対するフロントハウジング4の受圧壁4aには一対の公転位置規制孔21が設けられ、可動側板2a側には円柱形状の一対の鋼製の自転阻止用素子22支持用の孔23が設けられている。
公転位置規制孔21は、駆動軸7の回転軸線Lに関して180°の回転対称位置に配置されており、自転阻止用素子22の支持孔23は駆動ブッシュ9の中心軸線Lに関して180°の回転対称位置に配置されている。そして、自転阻止用素子22の一端部は、上記支持孔23に支持され、また、他端部は、公転位置規制孔21の内周面にその外周面が接触するように挿入されている。
前記固定スクロール1の後面側には、お椀型のリヤハウジング30が固定ボルト25により結合されている。そして、この結合により、固定側板1aより後方に突出された固定スクロールの外郭を形成するシェル1bの外周壁1dとリヤハウジング30の外周壁30aとが、また、後記する固定側板1aから垂設された隔壁36aとリヤハウジング30の後壁30bから垂設された隔壁36bとが、それぞれ1枚のガスケット40を介し気密に接合され、固定側板1aとリヤハウジング30により吐出室31が形成される。
また、固定側板1aの中心部には、吐出室31と圧縮室3の中心部とを連通する吐出口32が開設され、この吐出口32の吐出室31側には、吐出弁33がリテーナ34とともにボルト35により固定側板1aに固定されている。
尚、冷媒回路からの吸入口は、図示されていないが、フロントハウジング4またはシェル1bに形成され、圧縮室3に連通されている。
図1及び図2において36は、前述の隔壁で、固定側板1aから垂設された隔壁36aと、リヤハウジング30の後壁30bから垂設された隔壁36bとからなり、前記外周壁30aの接合面と略同一の接合面において接合されている。そして、この隔壁36により、吐出室31が上下に気密に区画され、下方部が貯油室37、上方部が吐出チャンバ38として形成される。
図2において、中央の仮想線(2点鎖線)の円32Aは、吐出口32の対応位置を示すが、隔壁36は、吐出口32を吐出チャンバ38に連通させるため、吐出口32周りの構造物、即ち吐出弁33及びリテーナ34を避けて下方に下げた形状とされ、吐出口32を中心とする両側部において、吐出弁33及びリテーナ34の下端より上方に屈曲され、この屈曲により上方に拡張した貯油室37の部分が形成され、これを上方拡張域37a,37bと称する。
図1〜図3において、50は、吐出チャンバに収納された油分離器で、有底の外筒51と、この外筒51と同心状に配設された内筒52とからなり、外筒51と内筒52との間には中空部53が形成された遠心分離型の油分離器として構成されている。
外筒51は、図2〜図4から分かるように、リヤハウジング30と一体に形成されている。即ち、外筒51の上端部は、リヤハウジング30の外周壁30aに連なり、吐出室の外部に開口する開口部51aが形成され、側部はリヤハウジング30の後壁30bに連なり、下端部は、隔壁36bを貫き、図2における貯油室37の右側の上方拡張域37aに臨んだ形状とされている。
また、この外筒51の吐出チャンバ38に面する上部の側壁において、吐出ガス導入孔54が内部の中空部53に対して接線方向に開口され、また、外筒51下端部の貯油室37の上方拡張域37aに臨んだ側壁において、分離した潤滑油を貯油室37に滴下させるための排油孔55が開口されている。
内筒52は、厚肉のフランジ部分52aと前記開口部51aに嵌合する嵌合部52bとからなる配管接続部と、この配管接続部分に連結されたパイプ状部分52cとからなり、配管接続部には、中心部にガス排出口52dが開設されている。
また、このように構成された内筒52のパイプ状部分52cを、前記外筒51の開口部51aから前記外筒51と同心状に差し込み、嵌合部52bを嵌合して、配管接続部をリヤハウジング30の外周壁30aに溶接して取り付けることにより、外筒51の内壁と内筒52の外壁との間に中空部53が形成されている。 尚、内筒52のパイプ状部分52cは、底壁を有さず、また、その長さは、内筒52の先端が排油孔55の少し上部となる程度とする。
図1及び図5において、45は、ガス抜き通路であって、隔壁36bの端面に形成された凹溝44と、凹溝44に対向してガスケット40に形成された凹溝42とから構成されている。この凹溝44は、リヤハウジング30の隔壁36bの端面の中央ライン上において、図2における左側の上方拡張域37bから右側の上方拡張域37aにかけて、略U字型凹溝に形成されている。一方、凹溝42は、U字型凹溝44に対向して形成されているものであって、図5のようにガスケット40を凹凸に屈折する断面形状として成形することにより、浅い略U字型の凹溝として形成されている。そして、これら各凹溝42,44の両端部は、それぞれ貯油室37の上方拡張域37a,37bの上部に開放されている。
尚、凹溝42、44は、それぞれ隔壁36a、36bの中心ライン部分に形成されるので,凹溝42、44の両側の部分で気密性が保持される。
このように構成されたスクロール型圧縮機では、自動車のエンジン(図示せず)の回転が電磁クラッチ(図示せず)の接続により、図1に示す駆動軸7に伝達され、偏心ピン8が公転すると、可動スクロール2が自転阻止用素子22の自転規制作用を受けながら駆動軸7周りを公転し、図示しない吸入口から吸入された冷媒ガスが圧縮室3に吸入され、圧縮室3内で順次圧力が高められ、吐出口32から吐出弁33を押し開いて吐出室31へ吐出される。
そして、吐出室31へ吐出された冷媒ガスは、吐出ガス導入孔54を通じて油分離器50内に導入される。このとき吐出ガス導入孔54が中空部53に対し接線方向に開口されているので、中空部53に導入された冷媒ガスは、図2の点線矢視のごとく、同じく図3の実線矢視のごとく旋回流を形成し、この冷媒ガスの旋回流により比重が高いミスト状潤滑油が遠心方向に付勢されて中空部53の壁面、即ち外筒51の内壁面に付着し、重力により下方に流れ、排油孔55より貯油室37に滴下され貯留される。貯油室37に貯留された潤滑油は、図示しない潤滑油供給路を通じ、各摺動部に給油される。一方、潤滑油が除去された吐出ガスは、油分離器50の内筒52の下端を経由しガス排出口52dより冷媒回路に送出される。
上記のごとくして貯油室37に貯留された潤滑油は、貯油室37が吐出チャンバ38と隔壁36により仕切られているので、貯油室37と吐出チャンバ38との間で往来することがなく、一旦分離された潤滑油が吐出ガスにより巻き上げられるようなことがない。また、排油孔55が上方拡張域37aの上方部で開口されているので、この排油孔55のレベルまで潤滑油を貯留することができる。
また、排油孔55は、貯油室37の一方の上方拡張域37aにのみ開口しているが、他方の上方拡張域37bと排油孔55が開口している上方拡張域37aとは、隔壁36の接合部に形成されたガス抜き通路45により連通されている。そして、貯油室37内の油レベルが屈曲された隔壁36a,36bの下端まで達すると、排油孔55が開放されていない側の上方拡張域37b内にガスが閉じ込められることになり、それ以上の油レベルの上昇は困難となる。しかし本実施の形態のスクロール型圧縮機では、前述したガス抜き通路45の存在により、排油孔55から上方拡張域37aに油が摘下されるにともなって、上方拡張域37bに閉じ込められたガスを上方拡張域37aへ移動させることができる。従って、その移動したガス分だけ上方拡張域37b内の油レベルを上昇させることが可能となり、両上方拡張域37a,37bを貯油室37として利用することができる。
尚、冷媒ガス抜きの観点から、この上方拡張域37b部分の隔壁36a,36bに吐出チャンバ38と連通する孔を設けてみても、この孔から吐出ガスが貯油室37に流れ、油分離器50を通って冷媒回路へ流れるガス流が生じるので、ガス抜きとして機能せず、潤滑油の巻き上げが生じることになり、油分離や潤滑油貯留機能が低下することになる。
また、上記ガス抜き通路45は、隔壁36の接合部に形成されるので、この実施の形態のように、隔壁36の端面や、ガスケット40に凹溝42、44を設ければよく、その加工が容易である。
尚、本実施の形態においては、隔壁36の端面とガスケット40の当たり面の双方に凹溝42、44を形成しているが、ガスケット40側の凹溝42を省略することは可能である。しかし本実施の形態のようにすると、隔壁36の端面に設ける凹溝44の深さを浅くすることができ、隔壁36の強度の低下が防止できる。
上記ガス抜き通路45を隔壁36の接合部に形成する方法は、本実施の形態以外にも種々のものが考えられる。
(1) 先の実施の形態においては、リヤハウジング30側の隔壁36bの端面とガスケット40との間にガス抜き通路45を形成したが、固定スクロール1側の隔壁36aの端面とガスケット40との間に、上記の要領で形成しても、同様の効果が得られる。
(2) 隔壁36側に設ける凹溝44の形状は、特にU字型に限定されるものでなく、上方拡張域37bの冷媒ガスを逃がすことができる程度の凹溝であればよく、図6のごとく円弧型の凹溝441とすることもできる。この場合は、先の凹溝44のように端面に対し垂直な面がないため、リヤハウジング30または固定スクロール1の成形時に、この凹溝441を一体的に形成するのが容易となる。
尚、図6においては、前記実施の形態と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略している。
(3) また、図7のようにガスケット40に抜き型で形成した抜き穴421を形成した場合は、固定スクロール1およびリヤハウジング30の何れの隔壁36a,36bの端面にも凹溝を設けることなく、ガス抜き孔421自身がガス抜き通路45となる。また、この場合において、ガスケット40に抜き孔421を形成した後においても1枚物のガスケットとしての構成を維持するには、図8のごとく、抜き孔421の両端部分を隔壁36から側方にはみ出させ、突出片部401を形成し、この突出片部401で抜き孔421の両側のガスケット40を接続するようにすればよい。
尚、図8において、中央の仮想線(2点鎖線)の円32Aは、吐出口32の対応位置を示す。また、図7及び図8においては、前記実施の形態と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略している。
本発明の実施の形態の圧縮機全体の側断面図である。 図1のIIーII矢視断面図である。 図2のIIIーIII矢視断面図である。 図2のIVーIV矢視断面図である。 図1の圧縮機における隔壁接合部の断面図である。 他の実施の形態としての隔壁接合部の断面図である。 図6のものとは異なる他の実施の形態としての隔壁接合部の断面図である。 図7の実施の形態におけるガスケットの平面図である。
符号の説明
1…固定スクロール、2…可動スクロール、3…圧縮室、30…リヤハウジング(ハウジング)、31…吐出室、32…吐出口、36…隔壁、37…貯油室、37a,37b…上方拡張域(貯油室の内壁および油レベルによって隔てられる空間)、38…吐出チャンバ、45…ガス抜き通路、50…油分離器、51…外筒、51a…開口部、52…内筒、54…吐出ガス導入孔、55…排油孔。

Claims (4)

  1. ハウジングと、固定スクロールと、可動スクロールとを有し、該固定スクロールと可動スクロールとにより圧縮室が形成され、該圧縮室に隣接して吐出室を設け、該圧縮室と吐出室とを両室の境界壁に設けた吐出口を介し連通するとともに、該吐出室の下方部を貯油室とし、上方部を吐出チャンバとしてなるスクロール型圧縮機において、
    貯油室と吐出チャンバとを気密に区画する隔壁を形成し、
    前記ハウジングに、遠心分離式の油分離器を配置し、
    前記吐出チャンバは、吐出ガス導入孔を介して前記油分離器と接続され、
    前記油分離器の下部に前記貯油室に連通する排油孔を設け、
    ガス抜き通路であって、前記排油孔が開口した前記貯油室の一部と、前記貯油室の他の一部とを直接に連通し、前記貯油室の一部と、前記貯油室の他の一部との間でガスの移動を許容するガス抜き通路が設けられている
    ことを特徴とするスクロール型圧縮機。
  2. 前記ガス抜き通路は、前記固定スクロールと前記ハウジングとが接合する端面に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
  3. 前記貯油室内の油レベルが上昇すると、前記貯油室内に、前記貯油室の内壁および前記油レベルによって隔てられる空間が形成され、
    前記隔てられる空間が、前記ガス抜き通路によって連通される
    請求項1または2に記載のスクロール型圧縮機。
  4. 前記貯油室内において、前記固定スクロールと前記ハウジングとが接合する端面が鉛直方向に延在する、請求項3に記載のスクロール型圧縮機。
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