JP3846983B2 - 情報記録媒体及び情報の記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高エネルギー密度のレーザ光を用いて情報の書き込み(記録)や読み取り(再生)が可能なヒートモード型の情報記録媒体及び情報記録方法に関するものである。特に本発明は、可視レーザ光を用いて情報を記録するのに適した追記型のデジタル・ビデオ・ディスク(DVD−R)のようなヒートモード型の情報記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、レーザ光により一回限りの情報の記録が可能な情報記録媒体(ライトワンス型の光ディスク、所謂CD−R型の光ディスク)が知られている。
このタイプの光ディスクの代表的な構造は、透明な円盤状基板上に有機色素からなる記録層、金などの金属からなる反射層、更に樹脂製の保護層をこの順に積層したものである。そしてこの光ディスクへの情報の記録は、近赤外域のレーザ光(通常は780nm付近の波長のレーザ光)を照射して記録層を局所的に発熱変形させて、ピットを形成させることにより行われる。一方情報の読み取り(再生)は通常、記録用のレーザ光と同じ波長のレーザ光を照射して、記録層が発熱変形された部位(記録部分)と変形されない部位(未記録部分)との反射率の違いを検出することにより行われている。
【0003】
近年、パーソナルコンピュータなどの普及に伴って記録密度のより高い情報記録媒体が求められている。記録密度を高めるには、照射されるレーザの光径を小さく絞ることが有効であり、また波長が短いレーザ光ほど光径を小さく絞ることができるため、高密度化に有利であることが理論的に知られている。従って、従来から一般的に用いられている780nmより短波長のレーザ光を用いて記録再生を行うための光ディスクの開発が進められており、例えば、追記型デジタル・ビデオ・ディスク(所謂DVD−R)と称される光ディスクが提案されている。この光ディスクは、トラックピッチがCD−Rの1.6μmより狭い0.8μmのプレグルーブが形成された直径が120mm、あるいは直径が80mmの透明な円盤状基板上に、色素からなる記録層、そして通常は該記録層の上に更に光反射層および保護層を設けてなるディスクを二枚、あるいは該ディスクと略同じ寸法の円盤状保護基板とを該記録層を内側にして接着剤で貼り合わせた構造となるように製造されている。そしてDVD−Rは、可視レーザ光(通常は600nm〜700nmの範囲の波長のレーザ光)を照射することにより、記録及び再生が行われ、CD−R型の光ディスクより高密度の記録が可能であるとされる。
【0004】
従来、CD−R型の光ディスクにおいては、その記録層に含有する色素化合物として、近赤外域に吸収を有する、例えば、ベンゾインドレニン骨格を有するジカルボシアニン系色素(メチン鎖が5個)やトリカルボシアニン系色素(メチン鎖が7個)が有利に用いられている(特開昭64−40382号公報、同64−40387号公報)。また耐光性を改良するために、一般に退色防止剤として上記のようなシアニン系色素と共に一重項酸素クエンチャーとを組み合わせて使用することが行われている。例えば、このような退色防止剤としては、ニトロソ化合物(特開平2−300288号公報)、ジインモニウム化合物(米国特許465612号明細書)及びニッケル錯体(特開平4−146189号公報)などが良く知られている。
【0005】
特開昭63−64794号公報には、シアニン系色素と電子受容性化合物とを含む記録層を有する、耐光性が改良された情報記録媒体が提案されている。そしてここには、具体例として、シアニン系色素としては、ベンゾインドレニン骨格などを有するトリカルボシアニン系色素(メチン鎖が7個)が記載されており、一方、電子受容性化合物としては、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)とテトラシアノエチレンが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、上記DVD−Rの製造に際して、従来のCD−R用のシアニン系色素と従来の一般的な退色防止剤とを組み合わせた場合の性能について検討を行った。その結果、DVD−Rでは、従来のシアニン系色素と従来の一般的な退色防止剤との組み合わせにおいては充分な耐光性が得られないことが判明した。
また一般に色素の吸収極大波長は、その光吸収の原因であるパイ電子系の広がりが大きいほど長波長になることが知られている。特に従来多くの光ディスクに実用化されているシアニン系色素の場合には共役メチン鎖の長さが長い程長波長になる。従って、記録再生用のレーザ光の波長がCD−Rより短いDVD−Rにおいては、色素の吸収極大波長もレーザ光の波長に合わせて短波長化させることが必要になり、そのため共役メチン鎖を短くすることが有効であるが、このように短波長化したシアニン系色素はその特性も変わるため、得られるDVD−Rにおいて高い耐光性を維持させるためにはこれと組み合わせて用いる退色防止剤の検討が重要になる。
【0007】
本発明の目的は、記録再生特性を損なわずに耐光性および耐久性が向上したDVD−R型の情報記録媒体及びこれを用いる情報の記録方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者の検討により、有機色素と有機酸化剤、特に有機色素と還元電位が−0.6Vより貴である有機酸化剤との組み合わせにおいて、有機色素の酸化電位と有機酸化剤の還元電位が一定の関係となるように組み合わせた場合、あるいは有機色素と有機酸化剤の吸収極大波長が一定の関係となるように組み合わせた場合、あるいはまた有機色素として特定の構造を持つシアニン色素を用いた場合に、記録再生特性を損なうことなく、耐光性および耐久性が顕著に改良されたDVD−R型の情報記録媒体を製造できることが見出された。
【0009】
ここで、有機酸化剤の還元電位の値は、その有機酸化剤がボルタンメトリーにおいて陰極で電子の注入を受けて還元される電位を意味し、一方、有機色素の酸化電位は、その有機色素がボルタンメトリーにおいて陽極で電子を放出して酸化される電位を意味する。酸化電位及び還元電位は、このボルタンメトリー法によって正確に測定することが可能である。即ち、支持電解質としてテトラ−n−エチルアンモニウム過塩素酸塩0.1Mを含むアセトニトリル中で、有機酸化剤1×10-3Mのボルタモグラムを測定し、これより得られる半波電位として求めることができる。なお、作用電極には白金を、比較電極には飽和カロメル電極(SCE)をそれぞれ使用し、測定は25℃で行なう。
【0010】
本発明は、トラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板の該プレグルーブが設けられた側の表面に、有機色素と有機酸化剤とを含む記録層が設けられたヒートモード型の情報記録媒体にある。
ただし、本発明で用いる有機色素は、下記一般式(B)で表されるシアニン系色素であり、有機酸化剤は、還元電位が−0.6ボルトよりも貴である下記一般式(A−I)で表される有機酸化剤である。
【0011】
【化7】
【0012】
[式中、X 11 及びX 22 は各々独立に酸素原子、硫黄原子、=NR 8 基、又は=CR 9 R 10 基を表し、R 8 、R 9 及びR 10 は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R 11 、R 12 、R 13 及びR 14 は各々独立に水素原子または置換基を表し、R 11 とR 12 、及びR 13 とR 14 は各々連結して不飽和縮合環を形成しても良い]
【0013】
【化8】
【0014】
[式中、Z1 及びZ2 は各々独立に、5員または6員の含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表し、R30 およびR31 は各々独立にアルキル基を表し、L3 、L4 、L5 、L6 及びL7 は各々独立にメチン基を表し、n1及びn2は各々独立に0又は1を表し、pおよびqは各々独立に0または1を表し、M1は電荷中和対イオンを表し、そしてm1は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す]。
【0015】
シアニン色素の酸化電位bボルトは、0.5<b<1.2の範囲にあることが好ましく、またシアニン系色素の酸化電位bボルトと有機酸化剤の還元電位aボルトとの差が、0.5<b−a<1.4の関係式を満たすように組み合わされてなることが好ましい。
【0016】
有機酸化剤の吸収極大波長は、シアニン系色素の吸収極大波長よりも50nm以上短波長側にあるように組み合わされていることが好ましく、特に有機酸化剤の吸収極大波長が、シアニン系色素の吸収極大波長よりも100nm以上、300nm以下短波長側にあることが好ましい。
【0017】
有機酸化剤は、下記一般式(A−II)で表される化合物であることが好ましい。
【0018】
【化9】
【0019】
[式中、R15、R16、R17及びR18は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R15とR16、及びR17とR18は各々連結して不飽和縮合環を形成しても良い]。
【0020】
シアニン色素は、下記一般式(B−I)で表される化合物であることが好ましい。
【0021】
【化10】
【0022】
[式中、Z11及びZ22は、各々独立に、置換基を有しても良い、ベンゼン環、ナフタレン環、ピラジン環又はキノキサリン環を形成するために必要な原子団を表し、X3及びX4は各々独立に、酸素原子、硫黄原子、−C(R34)(R35)−、又は−N(R36)−を表し、R32、R33、R34、R35及びR36は各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を表し、R37は、水素原子、又は置換基を有していてもよい、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数6〜10のアリール基、ヘテロ環基、炭素数1〜8のカルバモイル基、あるいはハロゲン原子を表し、M2m2- は陰イオンを表し、そしてm2は1又は2を表す]。
【0023】
本発明はまた、トラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板の該プレグルーブが設けられた側の表面に、前記一般式(B)で表されるシアニン系色素を含む記録層を有し、該記録層がさらに還元電位が−0.6ボルトよりも貴である前記一般式(A−I)で表される有機酸化剤を含む二枚の積層体をそれぞれの記録層が内側になるように、あるいはトラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板の該プレグルーブが設けられた側の表面に、前記一般式(B)で表されるシアニン系色素を含む記録層を有し、該記録層がさらに還元電位が−0.6ボルトよりも貴である前記一般式(A−I)で表される有機酸化剤を含む積層体と円盤状保護板とを積層体の記録層が内側となるように、それぞれ接合してなるヒートモード型の情報記録媒体にもある。
【0024】
そして、本発明は、上記の情報記録媒体に600nm〜700nm(好ましくは、620nm〜680nm、更に好ましくは630nm〜650nm)の波長のレーザ光を照射して情報を記録する、情報の記録方法にもある。
【0025】
本発明は、以下の態様であることが好ましい。
(1)有機色素の酸化電位bボルトが、0.5<b<1.2(更に好ましくは、0.6<b<1.1、特に0.6<b<1.0、最も好ましくは、0.7<b<1.0)の範囲にある。
(2)有機酸化剤の還元電位aボルトが、−0.6<a<0.6(更に好ましくは、−0.3<a<0.3、特に、−0.2<a<0.2、最も好ましくは、−0.1<a<0.2)の範囲にある。
(3)有機色素の酸化電位bボルトと有機酸化剤の還元電位aボルトとの差が0.8<b−a<1.2(更に好ましくは、0.8<b−a<1.0)の関係式を満たす。
(4)有機酸化剤の吸収極大波長が、有機色素の吸収極大波長より50nm以上短波長側(好ましくは、100nm以上、300nm以下短波長側、更に好ましくは150nm以上、250nm以下短波長側、最も好ましくは150nm以上、200nm以下短波長側)にある。
(5)有機酸化剤が、下記一般式(A−III)で表される化合物である。
【0026】
【化11】
【0027】
[式中、R19は、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アシル基、またはアルコキシカルボニル基を表し、R20は、水素原子又は置換基を表し、m4は、1〜4の整数を表し、m4又は4−m4が2以上の整数を表す時、複数のR19又は複数のR20は、それぞれ異なっていても良い。]
(6)上記(5)において、有機酸化剤が下記式で表される化合物である。
【0028】
【化12】
【0029】
(7)有機酸化剤が、下記一般式(A−IV)で表される化合物であることも最も好ましい。
【0030】
【化13】
【0031】
[式中、R21は、水素原子又は置換基を表し、m5は0〜6の整数を表し、m5が2以上の整数を表す時、複数のR21は、それぞれ異なっていても良い。]
【0032】
(8)上記(7)において、有機酸化剤が、下記式で表される化合物である。
【0033】
【化14】
【0034】
(9)記録層の上に更に金属からなる光反射層が設けられている。
(10)円盤状基板が、その直径が120±3mmで厚みが0.6±0.1mmであるか、あるいはその直径が80±3mmで厚みが0.6±0.1mmである。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明で使用される有機酸化剤及び有機色素について説明する。
まず、有機酸化剤について説明する。
本発明において、有機酸化剤は、下記一般式(A)で表される化合物に包含される前記一般式(A−I)が用いられる。
【0036】
【化15】
【0037】
式中、X1 及びX2 は各々独立に、酸素原子、硫黄原子、=NR1 基、又は=CR2 R3 基を表す。m及びnはm+n≧2となるような0〜3の整数を表す。R1 、R2 及びR3 は各々独立に、水素原子または置換基を表す。そしてL1 及びL2 は各々独立に二価の連結基を表す。
【0038】
以下に、一般式(A)で表される有機酸化剤について詳述する。
一般式(A)において、m及びnは共に1である場合が好ましい。
上記R1 、R2 及びR3 で表される置換基は、ハロゲン原子、または水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子が組み合わされてなる置換基である。置換基の例としては、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミド基、スルホンアミド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルコキシスルホニルアミノ基、ウレイド基、チオウレイド基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基、スルファモイル基、カルボキシル基(塩を含む)、及びスルホ基(塩を含む)を挙げることができる。これらは、更に、これらの置換基で置換されていてもよい。
【0039】
上記R1 、R2 及びR3 で表される置換基の例について更に詳しく説明する。ハロゲン原子としては例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子を挙げることができる。
アルキル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜6)の直鎖、分岐鎖または環状の置換基を有していてもよいアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−メトキシプロピル、2−アミノエチル、アセトアミドメチル、2−アセトアミドエチル、カルボキシメチル、2−カルボキシエチル、2−スルホエチル、ウレイドメチル、2−ウレイドエチル、カルバモイルメチル、2−カルバモイルエチル、3−カルバモイルプロピル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルを挙げることができる。
アルケニル基は、炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜6)の直鎖、分岐鎖または環状のアルケニル基であり、例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、2−ペンテニル、1,3−ブタジエニル、2−オクテニル、3−ドデセニルを挙げることができる。
【0040】
アラルキル基は、炭素数7〜10のアラルキル基であり、例えば、ベンジルを挙げることができる。
アリール基は、置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基であり、例えば、フェニル、ナフチル、p−ジブチルアミノフェニル、p−メトキシフェニルを挙げることができる。
ヘテロ環基は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、あるいは硫黄原子から構成される5〜6員環の飽和または不飽和のヘテロ環基であり、環を構成するヘテロ原子の数及び元素の種類は1つでも複数であってもよく、例えば、フリル、ベンゾフリル、ピラニル、ピロリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、チエニル、インドリル、キノリル、フタラジニル、キノキサリニル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、インドリニル、モルホリニルを挙げることができる。
【0041】
アルコキシ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜6)の置換基を有していてもよいアルコキシ基であり、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、2ーメトキシエトキシ、2ーメタンスルホニルエトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシを挙げることができる。
アリールオキシ基は、炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリールオキシ基であり、例えば、フェノキシ、pーメトキシフェノキシを挙げることができる。
アルキルチオ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜6)のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ、ウンデシルチオ、ドデシルチオ、ヘキサデシルチオ、オクタデシルチオを挙げることができる。アリールチオ基は、炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリールチオ基で例えば、フェニルチオ、4ーメトキシフェニルチオを挙げることができる。アシルオキシ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜6)のアシルオキシ基で例えば、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、オクタノイルオキシ、ドデカノイルオキシ、オクタデカノイルオキシを挙げることができる。
【0042】
アルキルアミノ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜6)のアルキルアミノ基であり、例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ、オクチルアミノ、ジオクチルアミノ、ウンデシルアミノを挙げることができる。
アミド基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜6)のアミド基であり、例えば、アセトアミド、アセチルメチルアミノ、アセチルオクチルアミノ、アセチルデシルアミノ、アセチルウンデシルアミノ、アセチルオクタデシルアミノ、プロパノイルアミノ、ペンタノイルアミノ、オクタノイルアミノ、オクタノイルメチルアミノ、ドデカノイルアミノ、ドデカノイルメチルアミノ、オクタデカノイルアミノを挙げることができる。
スルホンアミド基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜6)の置換基を有していてもよいスルホンアミド基であり、例えば、メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、プロピルスルホンアミド、2−メトキシエチルスルホンアミド、3−アミノプロピルスルホンアミド、2−アセトアミドエチルスルホンアミド、オクチルスルホンアミド、ウンデシルスルホンアミドを挙げることができる。
【0043】
アルコキシカルボニルアミノ基は、炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜6)のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、オクチルオキシカルボニルアミノ、ウンデシルオキシカルボニルアミノを挙げることができる。
アルコキシスルホニルアミノ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜6)のアルコキシスルホニルアミノ基であり、例えば、メトキシスルホニルアミノ、エトキシスルホニルアミノ、オクチルオキシスルホニルアミノ、ウンデシルオキシスルホニルアミノを挙げることができる。
スルファモイルアミノ基は、炭素数0〜18(好ましくは炭素数0〜6)のスルファモイルアミノ基であり、例えば、メチルスルファモイルアミノ、ジメチルスルファモイルアミノ、エチルスルファモイルアミノ、プロピルスルファモイルアミノ、オクチルスルファモイルアミノ、ウンデシルスルファモイルアミノを挙げることができる。
【0044】
ウレイド基は、炭素数1〜18(好ましくは、炭素数1〜6)の置換基を有していてもよいウレイド基であり、例えば、ウレイド、メチルウレイド、N,N−ジメチルウレイド、オクチルウレイド、ウンデシルウレイドを挙げることができる。
チオウレイド基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜6)の置換基を有していてもよいチオウレイド基であり、例えば、チオウレイド、メチルチオウレイド、N,N−ジメチルチオウレイド、オクチルチオウレイド、ウンデシルチオウレイドを挙げることができる。
アシル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜6)のアシル基であり、例えばアセチル、ベンゾイル、オクタノイル、デカノイル、ウンデカノイル、オクタデカノイルを挙げることができる。
アルコキシカルボニル基は、炭素数2〜18(好ましくは、炭素数2〜6)のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、ウンデシルオキシカルボニルを挙げることができる。
【0045】
カルバモイル基は、炭素数1〜18(好ましくは、炭素数1〜6)の置換基を有していてもよいカルバモイル基であり、例えば、カルバモイル、N, N−ジメチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−オクチルカルバモイル、N,N−ジオクチルカルバモイル、N−ウンデシルカルバモイルを挙げることができる。
アルキルスルホニル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜6)の置換基を有していても良いアルキルスルホニル基であり、例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル、2ークロロエタンスルホニル、オクタンスルホニル、ウンデカンスルホニルを挙げることができる。
アルキルスルフィニル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜6)のアルキルスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル、エタンスルフィニル、オクタンスルフィニルを挙げることができる。
スルファモイル基は、炭素数0〜18(好ましくは炭素数0〜6)の置換基を有していてもよいスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、オクチルスルファモイル、ジオクチルスルファモイル、ウンデシルスルファモイルを挙げることができる。
【0046】
L1 及びL2 は、各々独立に2価の連結基を表す。ここで、2価の連結基とは、炭素原子、窒素原子、酸素原子あるいは硫黄原子から構成され、X1 、X2 が結合している炭素原子と共同で4〜8員環を構成する。
L1 、及びL2 の具体例としては、−C(R4)(R5)−、−C(R6)=、−N(R7)−、−N=、−O−、及び−S−を組み合わせて構成される2価の連結基を挙げることができる。ここで、R4 、R5 、R6 及びR7 は各々独立に、水素原子または置換基を表し、その詳細は、前記R1 、R2 及びR3 にて説明したものと同義である。また、この4〜8員環は飽和あるいは不飽和の縮合環を形成してもよく、その縮合環の例としては、シクロアルキル環、アリール環またはヘテロ環を挙げることができ、その詳細は、前記R1 、R2 及びR3 にて説明したものと同義である。
【0047】
上記4〜8員環について更に詳細に説明する。
4員環の例としては、シクロブタンジオン、シクロブテンジオン、ベンゾシクロブテンキノンを挙げることができる。
5員環の例としては、シクロペンタンジオン、シクロペンテンジオン、シクロペンタントリオン、シクロペンテントリオン、インダンジオン、インダントリオン、テトラヒドロフランジオン、テトラヒドロフラントリオン、テトラヒドロピロールジオン、テトラヒドロピロールトリオン、テトラヒドロチオフェンジオン、テトラヒドロチオフェントリオンを挙げることができる。
6員環の例としては、ベンゾキノン、キノメタン、キノジメタン、キノンイミン、キノンジイミン、チオベンゾキノン、ジチオベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、ジヒドロクロメントリオン、ジヒドロピリジンジオン、ジヒドロピラジンジオン、ジヒドロピリミジンジオン、ジヒドロピリダジンジオン、ジヒドロフタラジンジオン、ジヒドロイソキノリンジオン、テトラヒドロキノリントリオンを挙げることができる。
【0048】
7員環の例としては、シクロヘプタンジオン、シクロヘプタントリオン、アザシクロヘプタントリオン、ジアザシクロヘプタントリオン、オキソシクロヘプタントリオン、ジオキソシクロヘプタントリオン、オキソアザシクロヘプタントリオンを挙げることができる。
8員環の例としては、シクロオクタンジオン、シクロオクタントリオン、アザシクロオクタントリオン、ジアザシクロオクタントリオン、オキソシクロオクタントリオン、ジオキソシクロオクタントリオン、オキソアザシクロオクタントリオン、シクロオクテンジオン、シクロオクタジエンジオン、ジベンゾシクロオクテンジオンを挙げることができる。
L1 及びL2 が、X1 及びX2 が結合している炭素原子と共同で構成する環としては、好ましくは6員環である。
【0049】
本発明で用いられる有機酸化剤は、前記一般式(A−I)で表される化合物である。
【0050】
一般式(A−I)において、X11及びX22は、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、=NR8 、又は=CR9 R10を表す。またR8 、R9 およびR10は各々独立に水素原子または置換基を表す。
X11及びX22で表される=NR8 、及び=CR9 R10は、それぞれ前記一般式(A)におけるX1 及びX2 で表される=NR1 、及び=CR2 R3 と同義であり、その好ましい範囲も同一である。またR8 、R9 及びR10で表される置換基は、前記一般式(A)におけるR1 、R2 及びR3 で表される置換基と同義であり、またその好ましい範囲も同一である。
【0051】
R11、R12、R13及びR14は各々独立に水素原子または置換基を表す。R11及びR12、あるいはR13及びR14が同時に置換基となる場合、これらは、各々連結して不飽和縮合環を形成してもよい。この不飽和縮合環は置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記R1 〜R3 にて説明したものと同じものが挙げられる。
【0052】
上記X11及びX22は、各々独立に、酸素原子あるいは=CR9 R10基であることが好ましく、共に酸素原子あるいは共に=CR9 R10基となることがより好ましい。ここで、R9 及びR10は、各々独立に、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基又はアルキルスルホニル基であることが好ましい。
X11及びX22が共に酸素原子となる場合について説明する。
X11及びX22が共に酸素原子となる場合、R11、R12、R13及びR14の少なくとも2つが電子吸引性基であることが更に好ましい。ここで電子吸引性基とは、ハメットのσp値がプラスの置換基を意味し、具体的には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、及びアルキルスルフィニル基を挙げることができる。
X11及びX22が共に酸素原子となる場合の特に好ましい組み合わせとしては、R11、R12、R13及びR14は、各々独立に水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミド基、スルホンアミド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルコキシスルホニルアミノ基、ウレイド基、チオウレイド基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基、及びスルファモイル基であって、このうち少なくとも2つが電子吸引性基である場合である。
【0053】
最も好ましい組み合わせとしては、R11、R12、R13及びR14は各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のアミド基、炭素数1〜6のスルホンアミド基、炭素数1〜6のウレイド基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のカルバモイル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基であって、このうち少なくとも2つがハロゲン原子、シアノ基、アルキルスルホニル基またはアルキルスルフィニル基である。
【0054】
X11及びX22が共に=CR9 R10基となる場合、有機酸化剤は、下記一般式(A−II)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0055】
【化16】
【0056】
式中、R15、R16、R17、及びR18は、各々独立に、前記R11〜R14について説明したものと同義である。
【0057】
有機酸化剤は、下記一般式(A−III )または一般式(A−IV)で表される化合物であることが最も好ましい。
【0058】
【化17】
【0059】
式中、R19はハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アシル基、又はアルコキシカルボニル基を表す。R20は、前記R1 〜R3 にて説明したものと同じものを意味する。m4は、1〜4の整数を表し、m4または4−m4が2以上の整数を表すとき、複数のR31と複数のR32はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0060】
【化18】
【0061】
式中、R21は水素原子または置換基を表す。ここで、置換基とは、前記R1 〜R3 にて説明したものと同じものを意味する。m5は0〜6の整数を表し、m5が2以上の整数を表すとき、複数のR21はぞれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0062】
一般式(A−III )において、R19とR20の好ましい組み合わせについて述べる。
R19はハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜8のアシル基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基であり、R20は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基である組み合わせが好ましく、最も好ましい組み合わせは、R19が炭素数1〜6のアルコキシ基で、かつR20が水素原子である。
【0063】
一般式(A−III )で表される有機酸化剤は、下記式で示される化合物であることが特に好ましい。
【0064】
【化19】
【0065】
一般式(A−IV)において、R21は好ましくは、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、又はアシル基であり、更に好ましくは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のアミド基、炭素数1〜6のスルホンアミド基、炭素数1〜6のウレイド基、炭素数1〜6のアシル基であり、特に好ましくは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基であり、最も好ましくは、水素原子である。
【0066】
本発明に用いる有機酸化剤の具体的な化合物例を下記に記載する。
【0067】
【化20】
【0068】
【化21】
【0069】
【化22】
【0070】
【化23】
【0071】
【化24】
【0072】
【化25】
【0073】
【化26】
【0074】
【化27】
【0075】
【化28】
【0076】
【化29】
【0077】
【化30】
【0078】
【化31】
【0079】
【化32】
【0080】
【化33】
【0081】
【化34】
【0082】
【化35】
【0083】
【化36】
【0084】
【化37】
【0085】
【化38】
【0086】
【化39】
【0087】
【化40】
【0088】
【化41】
【0089】
【化42】
【0090】
一般式(A)で表される化合物は、例えば、J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 611(1992)、Synthesis, 546(1971)などの一般的合成法に準じて容易に合成可能である。また、下記合成例やそれに準じた方法を採ることもできる。
合成例
下記式に従い、本発明に係る例示化合物(A−22) を合成した。
【0091】
【化43】
【0092】
(A−22a)の合成
1,4−ジブロモ−2,5−ジフルオロベンゼン2.72g、沃化カリウム24.9g、沃化銅9.53g、及びHMPA(ヘキサメチルホスホリックトリアミド)30mlを混合し、窒素下、150〜160℃に加熱した。反応終了後、反応液に希塩酸水、エーテルを注入し、銅塩を濾過した後、有機層を抽出した。有機層を亜硫酸水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過し、濾液を減圧濃縮することにより(A−22a)の黄色結晶2.93gを得た。
(A−22b)の合成
(A−22a)3.66g、マロノニトリル2.64g、水素化ナトリウム1.44g、及びビストリフェニルホスフィンパラジウムクロライド0.21gにTHF(テトラヒドロフラン)60mlを加え、12時間加熱環流した。反応終了後、反応液を1N塩酸に注ぎ、白色沈殿を濾別し、乾燥することにより(Aー22b)の白色固体2.68gを得た。
【0093】
(A−22)の合成
(A−22b)3.36gに水100mlを加え、この懸濁液に過剰量の臭素水をゆっくり滴下した。一夜放置後、得られた赤色沈殿を濾別し、冷水で洗浄後、塩化メチレン60mlに溶解した。この溶液を硫酸ナトリウムで乾燥後、活性炭処理し、溶媒を留去することにより目的物とする例示化合物(A−22)の黄色結晶3.11gを得た。
下記式に従い、本発明の例示化合物(A−58)を合成した。
【0094】
【化44】
【0095】
(A−58a)の合成
クロラニル25.0gをアセトニトリル60mlに溶かし、この懸濁液にアンモニアガスを連続導入した。得られた茶固体を濾取し、水、次いでアセトニトリル100mlで洗浄し、減圧下乾燥して(A−58a)19.6gを得た。
(A−58)の合成
(A−58a)2.1g、ラウリル酸クロライド4.4g、およびトリエチルアミン2.8mlにDMF100mlを加え、70℃で加熱した。7時間加熱した後、冷水300mlに注ぎ、酢酸エチルで抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥後濃縮し、アセトニトリルで再結晶することによって目的物とする例示化合物(A−58)の黄色結晶1.7gを得た。
一般式(A)で表される有機酸化剤は、単独で使用しても良いし、あるいはまたは他の公知のクエンチャーと併用することもできる。
組み合わせるクエンチャーの代表例としては、特開平3ー224793号公報に記載の一般式(III)、(IV)、もしくは(V)で表される金属錯体、ジインモニウム塩、アミニウム塩、特開平2−300287号公報及び特開平2−300288号公報に記載されているニトロソ化合物などを挙げることができる。組み合わせるクエンチャーとして特に好ましいものは、金属錯体(例えば、PA−1006(三井東圧ファイン(株)))あるいはジインモニウム塩(例えば、IRG−023、IRG−022(以上日本化薬(株)))であり、最も好ましいものは、ジインモニウム塩である。これらのクエンチャーは目的に応じて2種以上併用することもできる。
【0096】
一般式(A)で表される有機酸化剤の添加量は、有機色素100重量部に対して1〜100重量部の範囲であることが好ましく、1〜50重量部の範囲であることが更に好ましく、特に好ましくは1〜25重量部の範囲であり、最も好ましくは1〜10重量部の範囲である。
上記クエンチャーの添加量は、有機色素100重量部に対して1〜100重量部の範囲であることが好ましく、更に好ましくは1〜50重量部の範囲であり、特に好ましくは1〜25重量部の範囲であり、最も好ましくは1〜10重量部の範囲である。
次に、本発明で用いられる有機色素について説明する。
使用可能な有機色素としては、例えば、シアニン系色素、メロシアニン系色素、フタロシアニン系色素、オキソノール系色素、ピリリウム系色素、チオピリリウム系色素、トリアリールメタン系色素、ポリメチン系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、インドフェノール系色素、インドアニリン系色素、アミニウム系・ジインモニウム系色素、及びピラン系色素を挙げることができる。
本発明においては、下記一般式(B)で表される対称型あるいは非対称型シアニン色素を使用することが好ましい。
【0097】
【化45】
【0098】
式中、Z1 及びZ2 は、各々独立に5員または6員の含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表す。R30及びR31は各々独立に、アルキル基を表す。L3 、L4 、L5 、L6 及びL7 は各々独立にメチン基を表す。n1、n2は各々独立に0、1または2を表す。pおよびqは各々独立に0または1を表す。M1は電荷中和対イオンを表し、m1は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
一般式(B)で表されるシアニン色素について、以下に詳細に説明する。
Z1 及びZ2 は、各々独立に5員または6員の含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表す。pおよびqはそれぞれ独立に0または1を表す。pおよびqは、好ましくは共に0である。
Z1 及びZ2 によって形成される核としては、3,3−ジアルキルインドレニン核、3,3−ジアルキルベンゾインドレニン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、チアゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核、ナフトオキサゾール核、オキサゾリン核、セレナゾール核、ベンゾセレナゾール核、ナフトセレナゾール核、セレナゾリン核、テルラゾール核、ベンゾテルラゾール核、ナフトテルラゾール核、テルラゾリン核、イミダゾール核、ベンゾイミダゾール核、ナフトイミダゾール核、ピリジン核、キノリン核、イソキノリン核、イミダゾ〔4,5ーb〕キノキザリン核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核などを挙げることができる。
ここで挙げられた5員または6員の含窒素複素環は、可能な場合は、置換基を有していてもよく、ここで置換基としては、前記一般式(A)において説明したR1 、R2 及びR3 と同じものを挙げることができる。
上記置換基の例を更に詳しく説明する。
アルキル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の直鎖、分岐鎖または環状の置換基を有していてもよいアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、2ーヒドロキシエチル、4ーカルボキシブチル、ヘキシル、オクチル、ベンジル及びフェネチルを挙げることができる。
アルケニル基は、炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の直鎖、分岐鎖または環状のアルケニル基であり、例えば、ビニル、アリル、1ープロペニル、2ーペンテニル、1,3ーブタジエニル、及び2ーオクテニルを挙げることができる。
【0099】
アラルキル基は、炭素数7〜10のアラルキル基であり、例えば、ベンジルを挙げることができる。
アリール基は、炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリール基であり、例えば、フェニル、ナフチル、4ーカルボキシフェニル、3ーカルボキシフェニル、3,5−ジカルボキシフェニル、4ーメタンスルホンアミドフェニル、及び4ーブタンスルホンアミドフェニルを挙げることができる。
ヘテロ環基は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、あるいは硫黄原子から構成される5〜6員環の飽和または不飽和のヘテロ環基であり、環を構成するヘテロ原子の数及び元素の種類は1つでも複数であってもよく、例えば、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、5ーカルボキシベンゾオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、スルホラン環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、ピロール環、クロマン環及びクマリン環を挙げることができる。
【0100】
ハロゲン原子としては例えば、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子を挙げることができる。
アルコキシ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシを挙げることができる。
アリールオキシ基は、炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリールオキシ基であり、例えば、フェノキシ、及びpーメトキシフェノキシを挙げることができる。
アルキルチオ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ及びエチルチオを挙げることができる。
アリールチオ基は、炭素数6〜10のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオを挙げることができる。
アシルオキシ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、オクタノイルオキシを挙げることができる。
【0101】
アルキルアミノ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキルアミノ基であり、例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ及びオクチルアミノを挙げることができる。
アミド基は、炭素数1〜18(好ましくは、炭素数1〜8)のアミド基であり、例えば、アセトアミド、プロパノイルアミノ、ペンタノイルアミノ、オクタノイルアミノ、オクタノイルメチルアミノ、及びベンズアミドを挙げることができる。
スルホンアミド基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のスルホンアミド基であり、例えば、メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、プロピルスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、およびベンゼンスルホンアミドを挙げることができる。
アルコキシカルボニルアミノ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ、及びエトキシカルボニルアミノを挙げることができる。
アルコキシスルホニルアミノ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルコキシスルホニルアミノ基であり、例えば、メトキシスルホニルアミノ、及びエトキシスルホニルアミノを挙げることができる。
【0102】
スルファモイルアミノ基は、炭素数0〜18(好ましくは炭素数0〜8)の置換基を有していてもよいスルファモイルアミノ基で例えば、メチルスルファモイルアミノ、ジメチルスルファモイルアミノ、エチルスルファモイルアミノ、プロピルスルファモイルアミノ、オクチルスルファモイルアミノを挙げることができる。
ウレイド基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換基を有していてもよいウレイド基であり、例えば、ウレイド、メチルウレイド、N,Nージメチルウレイド、オクチルウレイドを挙げることができる。
チオウレイド基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換基を有していてもよいチオウレイド基であり、例えば、チオウレイド、メチルチオウレイド、N,Nージメチルチオウレイド、オクチルチオウレイドを挙げることができる。
アシル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアシル基であり、例えばアセチル、ベンゾイル、及びプロパノイルを挙げることができる。
アルコキシカルボニル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、及びオクチルオキシカルボニルを挙げることができる。
【0103】
カルバモイル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換基を有していてもよいカルバモイル基であり、例えば、カルバモイル、N, Nージメチルカルバモイル、及びN−エチルカルバモイルを挙げることができる。
アルキル又はアリールスルホニル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキル又はアリールスルホニル基で例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル、及びベンゼンスルホニルを挙げることができる。
アルキルスルフィニル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキルスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル、エタンスルフィニル、及びオクタンスルフィニルを挙げることができる。
スルファモイル基は、炭素数0〜18(好ましくは炭素数0〜8)の置換基を有していていも良いスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ブチルスルファモイル、オクチルスルファモイル、及びフェニルスルファモイルを挙げることができる。
【0104】
Z1 およびZ2 は、置換または無置換の3,3−ジアルキルインドレニン核、3,3−ジアルキルベンゾインドレニン核であることが好ましい。
【0105】
R30、及びR31は各々独立にアルキル基を表す。
R30、及びR31で表されるアルキル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換または無置換の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、その置換基としては、含窒素複素環の置換基として挙げたものと同義であり、またその好ましい範囲も同一である。好ましくは、無置換のアルキル基、あるいはアリール基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基又はスルホ基で置換されたアルキル基である。これらの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、2−エチルヘキシル、オクチル、ベンジル、2−フェニルエチル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−カルボキシエチル、3−カルボキシプロピル、4−カルボキシブチル、カルボキシメチル、2−メトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、2−スルホエチル、3−スルホプロピル、3−スルホブチル、4−スルホブチル、2−(3−スルホプロポキシ)エチル、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル、3−スルホプロポキシエトキシエチル、2−アセトキシエチル、カルボメトキシメチル、及び2−メタンスルホニルアミノエチルを挙げることができる。
【0106】
L3 、L4 、L5 、L6 及びL7 で表されるメチン基は、各々独立に無置換または置換メチン基であり、その置換基の詳細としては、含窒素複素環の置換基としてに説明したものと同義であり、その好ましい範囲も同一である。また、置換基を有する場合には、置換基同士が連結して5〜7員環を形成してもよく、あるいは助色団と環を形成することもできる。ここで5〜7員環としては、例えばシクロペンテン環、1−ジメチルアミノシクロペンテン環、1−ジフェニルアミノシクロペンテン環、シクロヘキセン環、1−クロロシクロヘキセン環、イソホロン環、1−モルホリノシクロペンテン環、及びシクロヘプテン環を挙げることができる。
n1及びn2は、n1が0でn2が1であるか、あるいはn1が2でn2が0であるかのいずれかであることが好ましい。
【0107】
M1は電荷均衡対イオンを表す。M1は陽イオンでも陰イオンでも良い。
陽イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンなどのアルカリ金属イオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオンなどの有機イオンが挙げられる。
陰イオンは無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなど)、スルホネートイオン(例えば、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオンなど)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロほう酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、下記式で示される金属錯体イオン:
【0108】
【化46】
【0109】
および、リン酸イオン(例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン、下記式で示されるリン酸イオン:
【0110】
【化47】
【0111】
を挙げることができる。
m1は電荷を均衡させるのに必要な数(0以上、好ましくは0〜4の数)を表し、分子内で塩を形成する場合には0である。
一般式(B)で表される化合物は、任意の炭素原子上で2種が結合して、ビス型構造を形成してもよい。
【0112】
有機色素は、下記一般式(B−I)で表されるシアニン色素であることが好ましい。
【0113】
【化48】
【0114】
式中、Z11及びZ22は各々独立に、それぞれ置換基を有しても良いベンゼン環、ナフタレン環、ピラジン環又はキノキサリン環を形成するのに必要な原子団を表す。X3 及びX4 は各々独立に酸素原子、硫黄原子、−C(R34)(R35)−、又は−N(R36)−を表す。R32、R33、R34、R35及びR36は各々独立に炭素数1〜8のアルキル基を表す。R37は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数6〜10のアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、又は炭素数1〜8のカルバモイル基を表し、但し、これらは可能な場合は置換基を有していてもよい。M2m2- は、陰イオンを表し、そしてm2は、1又は2を表す。
【0115】
一般式(B−I)で表されるシアニン色素化合物は、以下の組み合わせからなる化合物であることが更に好ましい。
X3 及びX4 は各々独立に、酸素原子、−C(R34)(R35)−、または−N(R36)−であり、R32及びR33は各々独立に、無置換またはアルコキシ基もしくはアルキルチオ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基であり、R34、R35及びR36は各々独立に炭素数1〜6の無置換のアルキル基であり、R37は水素原子または置換基を有してもよい、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジル基、スクシンイミド基、ベンソオキサゾール基又はハロゲン原子であり、Z11及びZ22は各々独立に無置換のベンゼン環、ナフタレン環あるいはキノキサリン環を形成するために必要な原子団、またはメチル基、塩素原子、フッ素原子、メトキシ基又はエトキシ基から選ばれる1または2個の基で置換されたベンゼン環を形成するために必要な原子団であり、M2は過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、下記式で示される金属錯体イオン:
【0116】
【化49】
又は下記式で示されるスルホネートイオン:
【0117】
【化50】
【0118】
である組み合わせが好ましい。
一般式(B−I)において、その最も好ましい組み合わせは、X3 及びX4 は共に−C(R34)(R35)−、又は共に−N(R36)−であり、R32およびR33は各々独立に、無置換のアルキル基(好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基)であり、R34、R35及びR36は各々独立に、メチル基、エチル基であり、R37は水素原子、メチル基、エチル基、塩素原子又は臭素原子であり、Z11及びZ22は共に無置換のベンゼン環、ナフタレン環あるいはキノキサリン環を形成するために必要な原子団である。
【0119】
本発明に係る一般式(B)で表される有機色素の具体的な化合物例を以下に記載する。
【0120】
【化51】
【0121】
【化52】
【0122】
【化53】
【0123】
【化54】
【0124】
【化55】
【0125】
【化56】
【0126】
【化57】
【0127】
【化58】
【0128】
【化59】
【0129】
【化60】
【0130】
【化61】
【0131】
一般式(B)で表される化合物は、エフ・エム・ハーマー(F.M.Hamer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズーシアニン・ダイズ・アンド・リレイテッド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds)」, ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社ーニューヨーク、ロンドン、1964年刊;デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry) 」、第18章、第14節、第482から515頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社ーニューヨーク、ロンドン、1977年刊;「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd's Chemistry of Carbon Compounds)」 2nd.Ed.vol.IV,partB, 1977刊、第15章、第369から422頁、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevir Science Publishing Company Inc.) 社刊、ニューヨーク、などに記載の方法に基づいて合成することができる。
【0132】
本発明の情報記録媒体は、前記有機色素と有機酸化剤とを含む記録層、特に前記有機色素と有機酸化剤とが特定の関係で組み合わされてなる記録層を、トラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板の該プレグルーブが設けられた側の表面に設けてなるものである。
本発明の情報記録媒体は、記録層の上に更に光反射層が設けられていることが好ましく、更に光反射層の上には、保護層を設けることもできる。
【0133】
本発明の情報記録媒体は、具体的には、下記の態様であることが好ましい。
(1)トラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板の該プレグルーブが設けられた側の表面に、前記有機色素と有機酸化剤とが特定の関係で組み合わされてなる記録層が設けられてなる二枚の積層体を、それぞれの記録層が内側となるように接合してなる情報記録媒体。
(2)トラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板の該プレグルーブが設けられた側の表面に、前記有機色素と有機酸化剤とが特定の関係で組み合わされてなる記録層が設けられてなる積層体と円盤状保護板とを、記録層が内側となるように接合してなる情報記録媒体。
なお、上記の態様においても記録層の上には光反射層が設けられていることが好ましい。また光反射層の上には更に保護層が設けられていてもよい。
【0134】
本発明の情報記録媒体の製造法について説明する。
本発明の情報記録媒体は、より高い記録密度を達成するために、CD−Rに比べてより狭いトラックピッチのプレグルーブが形成された基板を用いること以外は、基本的にCD−R型の情報記録媒体の製造に用いられる材料を使用して製造することができる。即ち、DVD−R型の情報記録媒体は、基板上に、記録層、及び反射層、そして所望により保護層を順に形成した積層体を二枚作成し、記録層を内側にしてこれらを接着剤により接合することにより、あるいはまた、該積層体と、該積層体の基板と略同じ寸法の円盤状保護基板とを同様にして接着剤により接合させることにより、製造することができる。
【0135】
本発明の情報記録媒体は、例えば、以下に述べるような方法により製造することができる。
基板(保護基板を含む)は、従来の情報記録媒体の基板として用いられている各種の材料から任意に選択することができる。基板材料としては、例えばガラス;ポリカーボネート;ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィンおよびポリエステルなどを挙げることができ、所望によりそれらを併用してもよい。上記材料の中では、耐湿性、寸法安定性および価格などの点からポリカーボネートが好ましい。本発明の情報記録媒体に使用することができる円盤状基板は、DVD−Rの規格に従い、その直径が120±3mmで厚さが0.6±0.1mmであるか、あるいはその直径が80±3mmで厚さが0.6±0.1mmであることが好ましい。特に、直径が120±3mmで厚さが0.6±0.1mmの円盤状基板を使用することが好ましい。
【0136】
記録層が設けられる側の基板表面には、平面性の改善、接着力の向上および記録層の防止の目的で、下塗層が設けられてもよい。下塗層の材料としてはたとえば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質;およびシランカップリング剤などの表面改質剤を挙げることができる。
下塗層は、上記物質を適当な溶剤に溶解または分散して塗布液を調製したのち、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコートなどの塗布法により基板表面に塗布することにより形成することができる。
下塗層の層厚は一般に0.005〜20μmの範囲にあり、好ましくは0.01〜10μmの範囲である。
【0137】
基板(または下塗層)上には、トラッキング用溝またはアドレス信号等の情報を表わす凹凸(プレグルーブ)が形成されていることが好ましい。このプレグルーブは、ポリカーボネートなどの樹脂材料を射出成形あるいは押出成形する際に直接基板上に形成されることが好ましい。
またプレグルーブの形成を、プレグルーブ層を設けることにより行ってもよい。プレグルーブ層の材料としては、アクリル酸のモノエステル、ジエステル、トリエステルおよびテトラエステルのうちの少なくとも一種のモノマー(またはオリゴマー)と光重合開始剤との混合物を用いることができる。
プレグルーブ層の形成は、例えば、まず精密に作られた母型(スタンパー)上に上記のアクリル酸エステルおよび重合開始剤からなる混合液を塗布し、さらにこの塗布液層上に基板を載せたのち、基板または母型を介して紫外線を照射するにより塗布層を硬化させて基板と塗布層とを固着させる。次いで、基板を母型から剥離することにより得ることができる。
プレグルーブ層の層厚は一般に0.05〜100μmの範囲にあり、好ましくは0.1〜50μmの範囲である。
【0138】
プレグルーブの深さは300〜2000Åの範囲にあることが好ましく、またその半値幅は、0.2〜0.9μmの範囲にあることが好ましい。また、プレグルーブ層の深さを1500〜2000Åの範囲にすることにより反射率をほとんど低下させることなく感度を向上させることができ、特に好ましい。従って、このような光ディスク(深いプレグルーブの基板に色素の記録層および反射層が形成された光ディスク)は、高い感度を有することから、低いレーザーパワーでも記録が可能となり、これにより安価な半導体レーザの使用が可能となる、あるいは半導体レーザの使用寿命を延ばすことができる等の利点を有する。
【0139】
基板上には、色素記録層が設けられる。
色素記録層には前述したように有機色素と有機酸化剤とが特定の関係となるような組み合わせで含有される。
【0140】
記録層の形成は、前記色素、有機酸化剤、さらに所望によりクエンチャー、結合剤などを溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いでこの塗布液を基板表面に塗布して塗膜を形成したのち乾燥することにより行なうことができる。
色素層塗布液の溶剤としては、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;ジクロルメタン、1、2−ジクロルエタン、クロロホルムなどの塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミドなどのアミド;シクロヘキサンなどの炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール;2,2,3,3−テトラフロロプロパノールなどのフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などを挙げることができる。上記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独または二種以上併用して適宜用いることができる。
塗布液中にはさらに酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤など各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0141】
結合剤の例としては、例えばゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴムなどの天然有機高分子物質;およびポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物などの合成有機高分子を挙げることができる。
記録層の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、色素1重量部に対して一般に10重量部以下であり、好ましくは、5重量部以下である。
このようにして調製される塗布液の濃度は一般に0.01〜10重量%の範囲にあり、好ましくは0.1〜5重量%の範囲にある。
【0142】
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法などを挙げることができる。
記録層は単層でも重層でもよい。記録層の層厚は一般に20〜500nmの範囲にあり、好ましくは50〜300nmの範囲にある。
【0143】
上記記録層の上には、情報の再生時における反射率の向上の目的で、光反射層が設けられていることが好ましい。
光反射層の材料である光反射性物質はレーザ光に対する反射率が高い物質であり、その例としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、及びBiなどの金属及び半金属あるいはステンレス鋼を挙げることができる。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Alおよびステンレス鋼である。これらの物質は単独で用いてもよいし、あるいは二種以上の組合せで、または合金として用いてもよい。特に好ましくはAuである。
光反射層は、たとえば上記光反射性物質を蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングすることにより記録層の上に形成することができる。
光反射層の層厚は、一般的には10〜300nmの範囲にあり、好ましくは50〜200nmである。
【0144】
また、光反射層の上には、記録層などを物理的および化学的に保護する目的で保護層を設けることができる。この保護層は、基板の記録層が設けられていない側にも耐傷性、耐湿性を高める目的で設けることもできる。
保護層に用いられる材料の例としては、SiO、SiO2 、MgF2 、SnO2 、Si3 N4 等の無機物質、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等の有機物質を挙げることができる。
保護層は、例えばプラスチックの押出加工で得られたフィルムを接着層を反射層上および/または基板上にラミネートすることにより形成することができる。あるいは真空蒸着、スパッタリング、塗布等の方法により設けられてもよい。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の場合には、これらを適当な溶剤に溶解して塗布液を調製したのち、この塗布液を塗布し、乾燥することによっても形成することができる。UV硬化性樹脂の場合には、溶剤を用いることなく、もしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製したのちこの塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによっても形成することができる。これらの塗布液中には、更に帯電防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤等の各種添加剤を目的に応じて添加してもよい。
保護層の層厚は一般には0.1〜100μmの範囲にある。
【0145】
以上の工程により、基板上に記録層、及び光反射層、そして所望により保護層を設けた積層体を作製することができる。
上記のようにして二枚の積層体を作製し、これらを各々の記録層が内側となるように接着剤で貼り合わせることにより、二つの記録層を持つDVD−R型の情報記録媒体を製造することができる。
また得られた積層体と、該積層体の基板と略同じ寸法の円盤状保護基板とその記録層が内側となるように接着剤で貼り合わせることにより、片側のみに記録層を有するDVD−R型の情報記録媒体を製造することができる。
【0146】
上記本発明の情報記録方法は、上記情報記録媒体を用いて、例えば、次のように行われる。
まず、情報記録媒体を定線速度(CDフォーマットの場合は1.2〜14m/秒の1倍速)または定角速度にて回転させながら、あるいは2倍速以上の高速度で回転させながら、基板側から半導体レーザー光などの記録用の光を照射する。この光の照射により、記録層と反射層との界面に空洞を形成(空洞の形成は、記録層または反射層の変形、あるいは両層の変形を伴って形成される)するか、基板が肉盛り変形する、あるいは記録層に変色、会合状態の変化等により屈折率が変化することにより情報が記録されると考えられる。
記録光としては通常500nm〜850nm(好ましくは500nm〜800nm)の範囲の波長を有する半導体レーザービームが用いられる。本発明のDVDーR型の情報記録媒体においては、600〜700nm(好ましくは、620〜680nm、特に630〜650nm)の範囲の波長のレーザ光(可視レーザ光)が適している。
上記のように記録された情報の再生は、情報記録媒体を上記と同一の定線速度で回転させながら、あるいはまた2倍速以上の高速度で回転させながら、半導体レーザ光を基板側から照射して、その反射光を検出することにより行うことができる。
【0147】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び比較例を記載する。
[実施例1]
本発明に係る前記シアニン色素〔B−6〕(酸化電位:0.905V、吸収極大波長:548nm)と、退色防止剤として下記表1に示す有機酸化剤、あるいは下記式で示されるニッケル錯体aとをそれぞれ2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールの溶媒に溶解させ、記録層形成用塗布液を調製した。退色防止剤の添加量は、色素に対して10重量%とした。得られた塗布液の濃度は、2.5重量%であった。
この塗布液を、表面にスパイラルプレグルーブ(トラックピッチ:0.8μm、プレグルーブ幅:0.4μm、プレグルーブの深さ:0.15μm)が射出成型により形成されたポリカーボネート基板(直径:120mm、厚さ:0.6mm)のそのプレグループ側の表面に、スピンコートにより塗布し、記録層(厚さ(グループ内):約200nm)を形成した。
次いで、記録層上に、Auをスパッタして、厚さ約100nmの光反射層を形成し、基板上に、記録層及び光反射層がこの順で設けられた積層体を作成した。別に、透明なポリカーボネート基板(円盤状保護基板)(直径:120mm、厚さ:0.6mm)を用意した。そして上記で得られた積層体と円盤状保護基板とを記録層が内側となるように接着剤(スリーボンド社製)を用いて接合させた(厚さ:1.2mm)。
以上の工程により本発明に従うDVD−R型の情報記録媒体を得た。
【0148】
ニッケル錯体a
【化62】
【0149】
[情報記録媒体としての評価]
これらのサンプルに波長635nmの半導体レーザをNA0.6のレンズで集光し、線速3.68m/s、変調周波数4MHzで信号を記録し、レーザーパワーを8mWで信号を再生し、変調度を測定した。
また、Xeランプ(14万ルクス)を12時間(h)、24時間(h)、または36時間(h)照射し、その後の記録再生信号の変調度を測定した。
以上の評価結果を表1に示す。
【0150】
【表1】
【0151】
【表2】
【0152】
上記表1の結果から、前記本発明に係るシアニン色素と、本発明に係る特定の有機酸化剤とを組み合わせたサンプルの場合には、前記本発明に係るシアニン色素と、従来の退色防止剤であるニッケル錯体aと組み合わせたサンプルに比べていずれも記録再生特性に優れ、また、Xeランプ照射後の性能の劣化も極めて少なく、耐光性が格段に向上していることがわかる。
【0153】
[実施例2]
実施例1において、前記シアニン色素〔B−6〕の代わりに、本発明に係るシアニン色素B−1、B−24、B−40、B−54、B−56、B−66、B−70又はB−72を同量使用し、また退色防止剤として本発明に係る一般式(A)で表される有機酸化剤を同量で置き換えた以外は同様にして本発明に従うDVD−R型の情報記録媒体を作製した。
上記シアニン色素の酸化電位と吸収極大波長を下記の表2に示す。
【0154】
【表3】
【0155】
得られたサンプルに対して前記実施例1と同様の試験を行ったところ、前記実施例1と同様の結果が得られた。
【0156】
[実施例3]
実施例1において、前記シアニン色素〔B−6〕を、表3に示した一般式(B)で表されるシアニン色素又は下記式で示されるヘプタメチンシアニン系色素cに等重量で置き換え、また、退色防止剤として表3に示した一般式(A)で表される有機酸化剤に置き換えた以外は同様にしてDVD−R型の情報記録媒体を作製した。
そして、得られたサンプルにXeランプ(14万ルクス)を12時間(h)照射した。その後、シアニン色素の残存量を紫外可視分光器にて測定した。
その結果を表3に示す。
【0157】
ヘプタメチンシアニン系色素c
【0158】
【化63】
【0159】
【表4】
【0160】
【表5】
【0161】
上記表3の結果から、本発明に係るシアニン色素と一般式(A)で表される有機酸化剤とを組み合わせたサンプルの場合には、Xeランプを照射した後においても色素の劣化量は顕著に抑制されていることがわかる。特に、シアニン色素と有機酸化剤とを、シアニン色素の酸化電位と有機酸化剤の還元電位との差(b−a)が、0.5<b−a<1.4の範囲にあるように組み合わせたサンプルの場合には、色素残存量も多く、従って、良好な耐光性を有していることがわかる。
【0162】
【発明の効果】
記録層に含有する有機色素と有機酸化剤とを、互いの電位差、吸収極大波長、および/または特定の化学構造が特定の関係となるように組み合わせることにより、記録再生特性を損なうことなく、また記録後においても高い耐光性とび耐久性を持つDVD−R型の情報記録媒体を製造することができる。
Claims (13)
- トラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板の該プレグルーブが設けられた側の表面に、下記一般式(B)で表されるシアニン系色素を含む記録層を有する情報記録媒体であって、該記録層がさらに還元電位が−0.6ボルトよりも貴である下記一般式(A−I)で表される有機酸化剤を含むことを特徴とするヒートモード型の情報記録媒体:
- シアニン色素の酸化電位bボルトが、0.5<b<1.2の範囲にある請求項1に記載の情報記録媒体。
- シアニン系色素の酸化電位bボルトと有機酸化剤の還元電位aボルトとの差が、0.5<b−a<1.4の関係式を満たすように組み合わされてなることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の情報記録媒体。
- 有機酸化剤の吸収極大波長が、シアニン系色素の吸収極大波長よりも50nm以上短波長側にあるように組み合わされてなる請求項1に記載の情報記録媒体。
- 有機酸化剤の吸収極大波長が、シアニン系色素の吸収極大波長よりも100nm以上、300nm以下短波長側にある請求項4に記載の情報記録媒体。
- シアニン色素が、下記一般式(B−I)で表される化合物である請求項1乃至6のうちのいずれかの項に記載の情報記録媒体。
- トラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板の該プレグルーブが設けられた側の表面に、下記一般式(B)で表されるシアニン系色素を含む記録層を有し、該記録層がさらに還元電位が−0.6ボルトよりも貴である下記一般式(A−I)で表される有機酸化剤を含む二枚の積層体をそれぞれの記録層が内側になるように、あるいはトラックピッチが0.6〜0.9μmのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板の該プレグルーブが設けられた側の表面に、下記一般式(B)で表されるシアニン系色素を含む記録層を有し、該記録層がさらに還元電位が−0.6ボルトよりも貴である下記一般式(A−I)で表される有機酸化剤を含む積層体と円盤状保護板とを積層体の記録層が内側となるように、それぞれ接合してなるヒートモード型の情報記録媒体:
- シアニン系色素の酸化電位bボルトと有機酸化剤の還元電位aボルトとの差が、0.5<b−a<1.4の関係式を満たすように組み合わされてなることを特徴とする請求項8に記載の情報記録媒体。
- 有機酸化剤の吸収極大波長が、シアニン系色素の吸収極大波長よりも50nm以上短波長側にあるように組み合わされてなる請求項8に記載の情報記録媒体。
- 記録層の上に更に金属からなる光反射層が設けられている請求項1〜10のうちのいずれかの項に記載の情報記録媒体。
- 円盤状基板が、その直径が120±3mmで厚みが0.6±0.1mmであるか、あるいはその直径が80±3mmで厚みが0.6±0.1mmであるかのいずれかである請求項1〜11のうちのいずれかの項に記載の情報記録媒体。
- 請求項1〜12のうちのいずれかの項に記載の情報記録媒体に600nm〜700nmの波長のレーザ光を照射して情報を記録する、情報の記録方法。
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