JP3846767B2 - 船舶用電源装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、船内の負荷に対して無停電の直流電源電流を供給するとともに、船舶用エンジンの始動電流を供給する電源装置として利用するために開発された。本発明は、電気二重層コンデンサを応用する電源装置に関する。上記船舶の無停電電源装置のほかに、本発明の原理は広く汎用の電源装置に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来例の船舶用の無停電電源装置を説明すると、図2に示すように、交流電源(7,8)から整流回路10により直流を得るとともに、この整流回路10の直流出力をスイッチ14を介して船内の負荷11に接続し、さらに二次電池2を設けてこの出力を負荷11に並列に接続することができるように構成される。そして、この二次電池2の端子に始動スイッチ13を介して、船舶エンジン12を始動するための直流電動機6を接続するように構成される。船舶エンジン12にはその主軸に主機駆動発電機9が連結されている。これは直流発電機であり、船舶エンジン12により発電を行い、スイッチ14を切り替えて、負荷11に供給する電流および二次電池2の充電電流をこの主機駆動発電機9から供給することができるように構成されている。
【0003】
接岸停泊中は商用交流電源7または船舶用発電機8を採用し、航行中は主機駆動発電機9または船舶用発電機8の出力を採用するものであり、図2に破線で囲む切替回路はよく知られた回路であるからこの図面では簡単に表示する。この船内の負荷11は主機制御装置、無線通信装置、船灯表示盤、ジャイロコンパス、機関状態表示装置など無停電電源を必要とする装置である。この図面ではこの負荷11を単に抵抗器の記号で示す。
【0004】
整流回路10の出力電圧および二次電池2の端子電圧標準値は24Vである。この二次電池2は交流電源7、8および主機駆動発電機9が使用できない場合のバックアップ用に利用するほかに、船舶エンジン12を始動させる直流電動機6の駆動電流を供給するために利用する。すなわち、船内の負荷11には整流回路10の出力から電源電流を供給するとともに、二次電池2をフロート状態に充電しておき、何らかの原因により主機駆動発電機9または整流回路10の出力が供給できない状態あるいは主機駆動発電機9または整流回路10の定格容量を超える負荷要求がある場合にも、この二次電池2から負荷11には無停電にしかも連続的に電源電流を供給することができる。
【0005】
船舶エンジン12の始動を行うときには、スイッチ14を主機駆動発電機9側に投入する。これは主機駆動発電機9を始動する際に、整流回路10からの始動電流の流出を防止することを主眼としており、負荷11に接続しておく必要があるためである。この状態で始動スイッチ13を閉じることにより、二次電池2は負荷11に電力を供給しつつ、直流電動機6にも電力を供給し、船舶エンジン12を始動させる。
【0006】
一方、大容量のコンデンサとして電気二重層コンデンサが知られている。電気二重層コンデンサは電気二重層に電荷を蓄積する、化学反応によらない大容量のコンデンサである。その容量は二次電池に近いものが知られている。電気二重層コンデンサは、構成材料に重金属などの有害物質を使用していないことから環境負荷が少ない特長がある。また二次電池のように化学反応を伴わないことから充放電のサイクルを繰り返しても長い寿命を保つことができる。
【0007】
このため、二次電池の代替デバイスとしてマイクロコンピュータやメモリなどのバックアップ電源として広く用いられるようになった。また近年、特許第2054380号公報に開示されているように、活性炭およびポリアセンの複合材料が発明されたことや、特開昭57−60828号公報に開示されるように、バインダを用いてアルミ箔上に活性炭層を形成する技術により、蓄電量の大容量化および内部抵抗の低抵抗化が可能になった。液体燃料のエンジンおよび電気モータを併用するハイブリッド自動車や電気自動車などのエネルギー回生にも利用されている。また、太陽光発電や風力発電などの発電量の変動に対する出力平均化のため、あるいは瞬時停電を防止するためのバックアップ電源として、モータ起動時のラッシュ電流供給など短時間に大きい電流を必要とする回路の補助回路として、その他さまざまな用途が期待されている。
【0008】
また電気二重層コンデンサと二次電池とを組み合わせることにより、大電流でのサイクル寿命に優れた電源回路を構成することができることもすでに知られている。単純に電気二重層コンデンサと二次電池を並列接続した回路としては、実願昭58−134715号公報に開示された技術がある。また、特開平4−112631号公報および特開平4−340328号公報にも電気二重層コンデンサと二次電池とを並列接続した回路が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
発明者らは巡視艇の船舶電源装置の設計に際して次のような問題に当面した。巡視艇は、1000馬力以上のディーゼルエンジンを2基備え、その電源回路は、基本的に上記図2で例示説明した構成になっている。たとえば20M型巡視艇の場合、二次電池は12V65Ahの鉛蓄電池を2個直列接続したものを2個並列接続して、全体で24V130Ahとしたものである。エンジン始動用の直流電動機は定格24V、6.6kWである。その直流電動機の始動時のピーク電流は1000Aを越えるものであり、これを商用交流電源や発電機の出力電流から得ることは困難である。このため、いったんエネルギを二次電池2に蓄えてから始動スイッチ13を投入して、この充電されたエネルギを一気に放電させる方法によりエンジン始動を行うように操作される。
【0010】
ところが、鉛蓄電池などの二次電池は、このような大きい電流で充放電を繰り返すと寿命劣化が早くなる欠点がある。長期間にわたり始動に必要な大きい電流を繰り返し取り出すことができるようにするためには、無停電装置のバックアップ用として定常的に必要な電流容量より、はるかに大きい電流容量の二次電池を備えなければならない。これを回避するには、常に二次電池を装備しておき、これを寿命劣化に応じてひんぱんに交換することが必要になり、このための蓄電池の交換コストは船舶の保守管理上の大きな問題となっている。
【0011】
また、いったん放電した二次電池を充電するためには数時間を要するから、何らかの原因により二次電池が予定外の過放電状態になった場合には、使用可能な予備の二次電池を別に用意しておき、この予備の二次電池と取り換えることを配慮しておかないと、巡視艇などのような緊急の用途には十分に対応することができない。このためのコストは必然的に大きくなるとともに、予備の二次電池を保管し充電保守するための設備も必要となる。
【0012】
さらに、上述のように船舶エンジンの始動時には二次電池から大電流が流れるため、二次電池の電圧が低下し、その結果、船内負荷が誤動作を引き起こす可能性がある。
【0013】
そこで発明者らは、二次電池と電気二重層コンデンサとを並列接続する回路を検討し試験した。しかし、単に二次電池と電気二重層コンデンサとを並列接続した回路では、エンジンの始動により電気二重層コンデンサが放電した後に、これを充電するために主機駆動発電機または商用電源あるいは交流発電機から過大な負荷電流が流れてしまうことがわかった。これを解決するには上で述べた整流回路10の電流容量を大きくすることが必要になるから、これは現実的な解決にならないことがわかった。
【0014】
二次電池と電気二重層コンデンサとを単に並列接続して使用すると、電気二重層コンデンサの内部抵抗が二次電池より高い場合には、二次電池からの電流量が大きくなってしまい電気二重層コンデンサを並列に使用する効果が小さいことがわかった。また、もし電気二重層コンデンサに異常短絡が発生した場合を考慮すると、これは船内負荷を直接に短絡することになってしまうので、無停電電源装置としての意味がなくなることもわかった。
【0015】
さらに二次電池と内部抵抗の小さい電気二重層コンデンサとを並列接続して使用すると、電気二重層コンデンサの蓄電電荷がなくなったときに、これを充電するために急激な電流が流れ、しばしば整流回路の定格電流を超えたり、配線回路が異常に発熱するなど、狭い船舶内に設置するには不適当であり、あるいは航海中など特殊な厳しい環境で誤りなく安全に使用するには不適当な場合があることもわかった。
【0016】
本発明は、このような背景に行われたものであって、船舶エンジンの始動のために大容量の二次電池を備える必要のない船舶用電源装置を提供することを目的とする。すなわち本発明は、船舶に搭載する二次電池の容量を小さくすることを目的とする。さらに本発明は、船舶に搭載する二次電池の寿命を長くすることができる船舶用電源装置を提供することを目的とする。本発明は、二次電池の充電中の緊急出動のために予備の二次電池または非常用発電機を準備しておく必要のない船舶用電源装置を提供することを目的とする。本発明は、電気二重層コンデンサを二次電池と並列に接続した回路を利用しても、この電気二重層コンデンサが放電した後にこれを充電するために、大容量の整流装置を必要とするなどの非合理性をなくすることができる船舶用電源装置を提供することを目的とする。さらに本発明は、かりに電気二重層コンデンサが短絡障害を起こしても、これがただちに船内電源を短絡することにならない無停電の船舶用電源装置を提供することを目的とする。さらに本発明は、船舶エンジンの始動操作を簡単化することを目的とする。
【0017】
本発明は、内部抵抗の小さい電気二重層コンデンサを二次電池と並列に接続する構成を含むものであっても、船舶用装置として厳しい環境下にあっても十分に安全性の高い装置を提供することを目的とする。
【0018】
本発明は、電気二重層コンデンサを鉛蓄電池その他二次電池と並列接続して使用する場合に、充電整流回路に異常な負担をかけることがなく、無停電電源を必要とする負荷に安定な電力を供給し、かつ二次電池を小型化できる基本的な回路構成を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴は、二次電池(2)に電気二重層コンデンサ(1)を並列に接続するとともに、この二次電池(あるいは電気二重層コンデンサ)と、負荷(11)との間に、整流器(3)と抵抗器(4)との並列回路をその整流器の導通方向が二次電池(2)から負荷(11)に向かう方向になるように接続し、この抵抗器(4)と直列に過電流遮断器(5)を接続したところにある。括弧で示す数字は、理解しやすいように参考までに示す添付図面図1の参照数字である。
【0020】
すなわち本発明の船舶用電源装置は、出力に負荷が接続された整流回路(10)と、二次電池(2)と、この二次電池にエンジン始動用の直流電動機(6)を接続する始動スイッチ(13)とを備えた船舶用電源装置において、前記二次電池(2)に並列に電気二重層コンデンサ(1)が接続され、前記負荷と前記二次電池との間にその二次電池から前記負荷に流れる電流方向が順方向となるように接続された整流器(3)と、その整流器に並列に接続された抵抗器(4)と、その抵抗器に直列に接続された過電流遮断器(5)を備えたことを特徴とする。
【0021】
この装置は船舶用装置であるから、つねに安全な動作が行われなければならない。このため前記抵抗器(4)の抵抗値は、エンジン始動時に前記整流回路(10)の出力電流がその最大定格値を越えない範囲に設定され、前記過電流遮断器(5)の容量は、前記電気二重層コンデンサまたは前記二次電池が短絡または故障したときに前記抵抗器およびその抵抗器を接続する回路に発生する発熱量がその許容値を越えない範囲に設定される。この構成により、洋上など環境の悪い条件下での操作や、狭い船内に設置される装置であっても安全が確保される。
【0022】
過電流遮断器(5)は電磁接触器またはブレーカと呼ばれる公知の装置を利用することができる。すなわち過電流を電磁的に検出するもの、あるいはバイメタルにより電熱的に検出し動作するもの、その他を利用することができる。この過電流遮断器は通過電流を検知し遮断動作を行うために、通過電流に対して小さい固有の抵抗値を呈することになるが、設計上この固有の抵抗値は上記抵抗器(4)の抵抗値と按分されることになる。すなわち、過電流遮断器(5)の固有の抵抗値の分だけ抵抗器(4)の抵抗値を小さく設計することになる。過電流遮断器(5)としてその固有抵抗値が比較的大きいものを使用するときには、みかけ上抵抗器(4)が不要になることがあっても、そのような構成は抵抗器(4)が存在しないのではなく、抵抗器(4)が過電流遮断器(5)の内部に吸収されたものであり、この構成は本発明の範囲内に含まれる。
【0023】
ここで、前記電気二重層コンデンサはその内部抵抗が前記二次電池の内部抵抗より小さく設定されることが望ましい。
【0024】
負荷(11)は無停電電源を必要とする船内の装置であり、これを例示すると、主機制御装置、無線通信装置、船灯表示盤、ジャイロコンパス、機関状態表示装置などである。
【0025】
この構成により、整流回路(10)の出力に正常な直流電圧が供給されているときには、無停電電源を必要とする負荷(11)にはこの整流回路(10)から直流電流が供給されるとともに、二次電池(2)には抵抗器(4)を介して小さい充電電流が供給されてフロート状態にある。同時に電気二重層コンデンサ(1)は充電状態に維持される。小さい充電電流に対しては抵抗器(4)の電圧降下および発熱はほとんどない。
【0026】
船舶エンジンの始動を行うときには、この状態で始動スイッチ(13)を閉じることにより、直流電動機(6)には二次電池(2)および電気二重層コンデンサ(1)から大電流が供給される。このとき、二次電池(2)の端子電圧はその内部抵抗により低下するが、これは並列に接続されている電気二重層コンデンサ(1)により電流分担されるので相応に維持されて、直流電動機(6)には十分なエネルギが供給される。そして時間の経過(数秒)とともにその回転速度は大きくなり船舶エンジン(12)が始動される。
【0027】
この間にわたり、二次電池(2)の端子電圧は整流回路(10)の出力電圧より低くなるから整流器(3)は直流電動機(6)に対して非導通状態となっている。したがって、直流電動機(6)に流れる大電流の影響は抵抗器(4)を介して整流回路(10)に対して緩和されることになる。この始動操作に際して、整流器(3)の作用により始動回路と負荷との間が分離されたことになり、従来例装置のように始動電流の影響が負荷(11)に及ぶことがなくなる。したがって始動時の電圧の異常低下により負荷(11)が誤動作するようなことはなくなる。
【0028】
直流電動機(6)はその最初の起動時にきわめて大きい電流が流れる。これは短い時間であり、この短い時間だけ電気二重層コンデンサ(1)がこの大きい電流の一部を分担するので、二次電池(2)の負担は大幅に軽減される。電気二重層コンデンサ(1)の充電時の内部抵抗を二次電池(2)の充電時の内部抵抗器より小さく設定しておくと、この短い時間の電気二重層コンデンサの電流分担が大きくなり、この動作が円滑に行われる。
【0029】
このように、二次電池(2)としてきわめて大容量の蓄電池を使用する必要がなくなるとともに、1回のエンジン始動に必要な放電量が軽減されるから、二次電池(2)が放電状態になってしまう可能性はきわめて小さくなる。したがって、上述のように緊急出動用などに交換用の予備の二次電池を用意しておくことは必要なくなる。さらに二次電池(2)と電気二重層コンデンサ(1)の容量および始動時の電流分担を巧みに設計することにより、ほとんど電気二重層コンデンサ(1)に蓄えられたエネルギだけでも始動可能とすることができる。
【0030】
船舶エンジン(12)が始動されて始動スイッチ(13)が開放されると、電気二重層コンデンサ(1)の充電量はほとんどなくなっていてその内部抵抗は低くなっているから、電気二重層コンデンサ(1)に電流が流れ込むことになる。このとき、電気二重層コンデンサ(1)の端子電圧は整流回路(10)の出力端子電圧より低くなっているから、整流器(3)は非導通状態であり、整流回路(10)から電気二重層コンデンサ(1)に供給される電流は抵抗器(4)を経由することになり緩和される。したがって、電気二重層コンデンサ(1)に対する充電電流は二次電池(2)から主に供給され、整流回路(10)はその一部のみを分担することになる。これにより、負荷(11)に対する電圧低下の影響を小さくすることができるとともに、整流回路(10)の容量を小さく設定することができる。
【0031】
船舶エンジン(12)の始動により電荷を失った電気二重層コンデンサ(1)および二次電池(2)は、抵抗器(4)を介して整流回路(10)から供給される電流によりしだいに充電されその端子電圧が回復する。電気二重層コンデンサ(1)の内部抵抗を二次電池(2)の内部抵抗より小さく設定しておくと、電気二重層コンデンサ(1)が二次電池(2)より先に回復する。この間にわたり二次電池(2)にはきわめて大きい放電電流もきわめて大きい充電電流もなかったから、その寿命劣化は小さく、このように電気二重層コンデンサ(1)と並列接続されて使用された二次電池の寿命を長くすることができる。
【0032】
もういちど定常状態にもどって考えると、整流回路(10)が正常に動作し、二次電池(2)および電気二重層コンデンサ(1)が充電された状態にあるときに、交流電源に何らかの異常があって交流電源が突然に停電したとする。このときには、整流回路(10)の出力電圧はなくなるが、二次電池(2)の端子電圧は維持されているから整流器(3)は導通状態になる。これにより二次電池(2)から負荷(11)に対して電源電流が瞬断することなく供給され、この装置は何ら操作を行わなくとも無停電電源として動作する。
【0033】
試験の結果、前記電気二重層コンデンサは硫酸を主体とする電解液が用いられたものが望ましいことがわかった。そして、前記二次電池はシール型鉛蓄電池とすることができることもわかった。すなわち、電気二重層コンデンサとして硫酸を電解液とする電気二重層コンデンサを用いると、硫酸は電気抵抗が低く、また硫酸は安定な電解液であるため、コンデンサの内部抵抗が小さくなりしかも安全性や信頼性が高い。また、二次電池にはシール型鉛蓄電池を用いることで注液型のように、電解液の量や比重を管理する必要がなく、振動などによる液漏れがない。シール型にしておくと、充電末期に発生する水素ガスが外部に出ないから船舶用として安全である。
【0034】
船舶用の電源装置としては、電気二重層コンデンサの内部抵抗または電圧を計測する監視回路を設けることが望ましい。すなわち、このような監視回路を設けることにより電気二重層コンデンサの異常を初期段階で知ることができるから、装置動作が異常になる前に適切な措置を講ずることができる。また二次電池に対して内部抵抗、端子電圧および温度の計測回路を設けることにより、二次電池の過放電等を事前に検知し緊急時に確実な対応を可能にすることができる。
【0035】
整流器(3)に並列接続される抵抗器(4)および過電流遮断器(5)の大きさについては、この電源装置の規模、利用される二次電池の特性、並列接続される電気二重層コンデンサの特性、始動用のモータである直流電動機の特性、負荷に対する電圧変動の許容規格、短絡などの異常時における発熱などを配慮して適宜設計しなければならない。特に、二次電池の内部抵抗の値および電気二重層コンデンサの内部抵抗の値とは大きい関連がある。この抵抗器(4)の値は、充電時間と通常時の発熱量を考慮すると小さいことが望ましい。一方、船舶エンジン(12)始動時には二次電池(2)の電圧が大きく低下するため、交流電源との電圧差に応じて大電流が流れる。そのため、整流回路(10)に定格以上の電流が流れないように制限する必要がある。電気二重層コンデンサ(1)または二次電池(2)に短絡や故障等の異常が発生した場合、抵抗器(4)に異常電流が流れ発熱する。この装置は船舶用であるから、抵抗器(4)の温度が抵抗器(4)に接続されている電線の許容発熱量を超えることがないように配慮しなければならない。誤っても溶断や発火などの災害を引き起こすことがあってはならない。このため、過電流遮断器(5)の容量は、電線の許容発熱量を超える電流が抵抗器(4)を流れないように制限するように設定される。
【0036】
つぎに、本発明の原理的な構成は、出力に第一の負荷(11)が接続された整流回路(10)と、二次電池(2)と、この二次電池に並列に接続された電気二重層コンデンサ(1)と、前記二次電池と前記第一の負荷との間に、その二次電池から前記第一の負荷に流れる電流方向が順方向となるように接続された整流器(3)と、その整流器に並列に接続された抵抗器(4)とを備えたことを特徴とする。そしてこの抵抗器に直列に過電流遮断器(5)を設けておくことが望ましい。この原理的な構成は、自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車、小型発電装置、その他船舶用電源以外の装置に広く利用することができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
図1は本発明実施の形態を示す船舶電源装置の回路図である。この実施例装置には、交流電源電流が、接岸時に接続される商用交流電源7または船舶用発電機8から供給される。この接続切替のための装置はよく知られた装置であるから、この図面では単に破線で囲み簡単に表示する。この装置は、整流回路10と、この整流回路の直流出力に設けられた負荷11の接続用端子と、二次電池2と、この二次電池にエンジン始動用の直流電動機6を接続する始動スイッチ13とを備える。そして、本発明の特徴として、二次電池2に並列に電気二重層コンデンサ1が接続され、前記負荷11と前記二次電池2との間にその二次電池から前記負荷11に流れる電流方向が順方向となるように接続された整流器3と、その整流器に並列に接続された抵抗器4及び過電流遮断器5を備える。
【0038】
【実施例1】
この実施例は、20M型巡視艇の船舶電源装置である。20M型巡視艇には、船舶用エンジンとして1000馬力のディーゼルエンジン2基が搭載され、このディーゼルエンジンには、始動用の直流電動機として6.6kWの直流直巻モータが装備されている。
【0039】
図1で説明した回路構成とし、電気二重層コンデンサ1には、14V80Fの電気二重層コンデンサをエレメントとして、これを2個直列に接続したものを10個並列に接続することにより、28V400Fとした。14V80Fの電気二重層コンデンサの内部抵抗は平均8mΩであり、各エレメントを銅製の接続金具で上のように2個直列に接続しこれを10個並列に接続した状態での内部抵抗は2mΩであった。二次電池2は12V65Ahのシール型鉛蓄電池(NTTファシリティーズ製)を2個直列に接続しこれをさらに2個並列に接続することにより24V130Ahの二次電池とした。鉛蓄電池1個の内部抵抗は4mΩであった。直流電動機6への配線は100mmφの銅線を用い、直流直巻形の直流電動機6を含む全体の電路抵抗は6mΩであった。
【0040】
抵抗器4および過電流遮断器5は次のように設計した。発電機の端子電圧は27.3Vであり、エンジン始動時における二次電池の端子電圧は大電流が流れて電圧降下を起こすため概ね20〜18Vに低下する。整流回路10の定格は50Aであることから、
(27.3−18.0)V/50A=0.186Ω
となり、これ以上の抵抗値にしなければ整流回路10の出力が停止または場合によっては溶損等の故障を引き起こす。一方、通常時における二次電池の最低電圧は24.0Vで、必要最低電流は5A以上を求められることから、0.66Ω以下にしなければならない。ところで、電気二重層コンデンサ1または二次電池2が短絡状態となり抵抗器4の両端に発電機の端子電圧27.3Vが直接かかると、0.186Ωのとき発熱量が4kWとなり、電線の許容発熱量を超えてしまう。このため、過電流遮断器5の定格容量と電線の許容発熱量から抵抗値を求めると10Aのとき0.5Ω以下、15Aで0.22Ω以下、20Aでは0.13Ω以下となり、抵抗と過電流遮断器の要求性能を両方満足して、コストや形状から最もよい組み合わせを選ぶと、抵抗器4は200mΩ(1120W仕様)、過電流遮断器5は電磁接触器を使用しその容量は15Aとなる。
【0041】
ここで本発明実施例に使用した電気二重層コンデンサについて説明すると、図3は電解液に硫酸を使用した電気二重層コンデンサ断面図である。この電気二重層コンデンサは、基本セル19と、この基本セル19の両側にアルミにハンダメッキを施した端子板20、絶縁ブッシュ21を介したボルトナット22を備える。この基本セル19は、正極と負極の分極性電極15と、この分極性電極15の相互間の電気的短絡を防ぎ電解液のみ通すセパレータ17と、外部回路と電気的に接続し電解液の流出を阻止する集電体16と、両極の集電体16を絶縁し電解液を封止するガスケット18などを備える。
【0042】
有機系電解液を使用したものでは、コインセルや捲回構造を有することもできる。集電体16は、水溶液系電解液では導電性ゴム、導電性エラストマー、導電性高分子などを使用する。また有機系電解液ではアルミニウムなどの金属を用いる。セパレータ17には、ガラス繊維の不織布やプラスチック製の多孔質フィルム、不織布などを用いる。
【0043】
電気二重層コンデンサの使用電圧は、分極性電極15や集電体16が電気化学反応を起こさず、かつ電解液が分解しない電圧範囲に限定されるため、硫酸などの水溶液系電解液では約1V、有機系電解液では3V前後である。通常は、使用する電圧に応じて基本セル19を直列に接続し耐圧を上げている。
【0044】
ここで用いた電気二重層コンデンサの分極性電極は活性炭・ポリアセン複合材料である。分極性電極は比表面積1600m2/gの活性炭と粉末状フェノール樹脂を重量比で60:40に混合し、70×50×1mmに成形した後、窒素雰囲気において900°Cで焼成することにより合成した。セパレータ17は厚さ200μmのガラス繊維からなる不織布、電解液は濃度40重量%の硫酸水溶液である。これらを耐熱ABS樹脂製のガスケット18と、比抵抗3Ωcm、厚さ200μmの導電性を有するブチルゴム製集電体16、およびエポキシ接着剤を用いて封止して製造した。
【0045】
図4は本発明実施例装置を用いてエンジンを始動させたときの試験結果を示す図である。時間を横軸にとり、直流電動機6の端子電圧、エンジンの回転速度、電気二重層コンデンサ1および二次電池2の端子電圧、電気二重層コンデンサ1の電流、二次電池2の電流をそれぞれ縦軸に表したものである。
【0046】
ピーク電流は電気二重層コンデンサ1では800Aであり、二次電池2では400Aであった。直流電動機6には供給される電圧と内部抵抗から決まる突入電流があるが、これが明らかに電気二重層コンデンサ1と二次電池2との内部抵抗に応じた電流が分担されて流れていることがわかる。この結果より、二次電池の寿命劣化の要因である大電流放電を抑えるためには、電気二重層コンデンサ1の内部抵抗を二次電池2より小さくすることがよいことがわかる。このとき、負荷11での電圧低下は観測されず、負荷11の各種装置には誤動作等の異常は見られなかった。
【0047】
図5は比較例である。この比較例は、図2に示す従来例回路を用いて同様の計測を行ったものである。二次電池2に流れる電流は、最大値で1000Aを越える値が観測された。
【0048】
図1で電気二重層コンデンサ1および二次電池2の接続回路に過電流遮断器と同様の記号が表示されているが、これは単に切り離し可能な接続回路を表示するものであり本発明とは直接に関係がない。
【0049】
【実施例2】
上記実施例1の始動試験を連続で10回行った。休止の間隔は30秒であり、休止中は直流電動機6の始動スイッチ13を切るだけで、他はすべて実施例1と同じである。その結果、エンジンを始動させたときの時間に対する直流電動機6の端子電圧、エンジンの回転速度、電気二重層コンデンサ1および二次電池2の端子電圧、電気二重層コンデンサ1の電流、二次電池2の電流は10回とも実施例1の結果とほぼ同一であった。この結果から、休止の30秒間で、二次電池2および交流電源6により電気二重層コンデンサ1が充電されていることがわかる。これにより、本発明の装置は短時間での連続使用にも耐え得ることが確認できた。
【0050】
【実施例3】
実施例1の電気二重層コンデンサ1に電圧計測回路を接続し、二次電池2には電圧、内部抵抗、および温度を計測する回路を設けた。これらの具体的な構成は公知であるので詳しい記述はここでは省略する。電気二重層コンデンサ1では液漏れなどにより短絡状態になっていると電圧が急速に低下するから、この計測により異常を早く検知することができる。また、二次電池2では電圧、内部抵抗、温度を計測することにより、過放電の防止や寿命劣化の状況を把握することが可能である。
【0051】
【実施例4】
実施例3の回路構成で、故意に短絡を起こした電気二重層コンデンサ1を二次電池2に並列に接続することにより試験を行った。負荷11の端子電圧は28Vから1Vまで一気に低下し、過電流遮断器5に過電流が流れ、負荷11への回路が遮断された。電圧異常により警報が発生したが、この状態で短絡した電気二重層コンデンサ1を本発明実施例電源装置に無理に接続して放置したところ、1時間程度で二次電池2が過放電状態となった。
【0052】
この結果から、電気二重層コンデンサ1に電圧計測などの監視回路を設けることは安全上有効であることがわかる。異常の検知は電圧だけでなく、内部抵抗や充放電時の電流を監視することでも可能である。また、二次電池2では電圧、内部抵抗、温度を検知する回路を設けることは、過放電の防止や寿命劣化の状況を把握するために重要であることがわかる。さらに、過電流遮断器5を設けることにより、整流回路10を保護するだけでなく、負荷11に対する影響も回避できることがわかる。
【0053】
【実施例5】
整流器3および抵抗器4、過電流遮断器5の作用を確認するために次の試験を行った。すなわち、図1の回路構成で、整流器3および抵抗器4、過電流遮断器5を取りはずし、この間を短絡しておいて、最初に初期電荷ゼロの電気二重層コンデンサ1を二次電池2に並列に接続してみた。その直後に商用交流電源7の電圧が低下し、負荷11が電源電圧の異常を警報し誤動作を起こした。
【0054】
同じく整流器3および抵抗器4、過電流遮断器5をはずしこの間を短絡しておいて、エンジンを始動したところ、同様に商用交流電源7の電圧が低下し、同様の現象が見られた。これは電気二重層コンデンサ1から流失した電荷を補充するために、整流回路10および商用交流電源7からその容量を越える電流が流れたためと考えられる。
【0055】
【実施例6】
次に、図1の回路構成で過電流遮断器5をはずして電気二重層コンデンサ1を短絡させたところ、抵抗器4が異常に発熱し、抵抗器4に接続されている電線の被覆が一部溶け落ちた。以上により、整流器3および抵抗器4、過電流遮断器5の回路は意図したとおり適正に作用していることが確かめられた。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、単に電気二重層コンデンサと二次電池とを並列接続する回路だけでなく、負荷との間に整流器および抵抗器の並列回路を接続することにより、電気二重層コンデンサを並列接続する回路を有効に作用させることができるようにしたものである。これにより、最大放電電流を電気二重層コンデンサが適正に負担することができるようになり、二次電池の容量を減らすことが可能になった。また、整流回路に容量の大きいものを使用する、あるいは予備の二次電池を準備するなどの必要がなくなり、合理的にかつ経済的に電源装置を運用することができるようになった。
【0057】
本発明では、過電流遮断器を利用し、接続される抵抗器およびその過電流遮断器の特性を適正に設計することができるので、内部抵抗のきわめて小さい電気二重層コンデンサを二次電池と並列に接続する回路を採用しても、船舶用装置として十分な安全性を確保することができる。
【0058】
電気二重層コンデンサとして、硫酸を電解液とする電気二重層コンデンサを使用したこと、および二次電池にシール型鉛蓄電池を用いたことにより船舶用電源装置として信頼性および安全性の高い装置を構築することができた。抵抗器に過電流遮断器を直列に接続することで安全性を高めることができる。さらに二次電池に比べ電気二重層コンデンサの内部抵抗を小さく設定することによりこれらの効果を大きくすることができる。また、電気二重層コンデンサおよび二次電池に異常を予知するための監視回路を設けることにより、船舶用電源装置としての安全な運用をはかることができる。
【0059】
本発明の基本的な回路構成は、ここで説明した船舶用電源装置だけでなく、自動車のスタータ、ハイブリッド自動車のエンジンアシスト、電気自動車のモータアシスト、搬送車、メカトロニクス機器、ロボットなどのモータや、ヒータ加熱、着磁のような回路でも有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例電源装置の回路構成図。
【図2】従来例の電源装置の回路構成図。
【図3】電気二重層コンデンサの構造図。
【図4】本発明実施例装置のエンジン始動特性の測定結果を示す図。
【図5】比較例として、従来例の電源装置で同様にエンジンの始動特性の測定を行った結果を示す図。
【符号の説明】
1 電気二重層コンデンサ
2 二次電池
3 整流器
4 抵抗器
5 過電流遮断器
6 直流電動機
7 商用交流電源
8 船舶用発電機
9 主機駆動発電機
10 整流回路
11 負荷
12 船舶エンジン
13 始動スイッチ
14 スイッチ
15 分極性電極
16 集電体
17 セパレータ
18 ガスケット
19 基本セル
20 端子板
21 絶縁ブッシュ
22 ボルトナット

Claims (11)

  1. 第一の負荷と
    電気二重層コンデンサと二次電池とが前記第一の負荷を介さずに並列に接続された蓄電ユニットと、
    前記蓄電ユニットと前記第一の負荷との間に前記蓄電ユニットから前記第一の負荷に流れる電流方向が順方向になるように接続された整流器と、
    前記整流器に並列に接続された抵抗器と、
    前記抵抗器に直列に接続された過電流遮断器と、
    前記蓄電ユニットに始動用の第一のスイッチを介して接続されたエンジン始動用の直流電動機と、
    船外電源に接続される整流回路と、
    船内発電機と、
    前記船内発電機または前記整流回路の出力を切り替えて前記第一の負荷に接続する第二のスイッチと
    を備えた船舶用電源装置。
  2. 前記抵抗器の抵抗値は、エンジン始動時に前記整流回路の出力電流がその最大定格値を越えない範囲に設定された請求項1記載の船舶用電源装置。
  3. 前記過電流遮断器の容量は、前記電気二重層コンデンサまたは前記二次電池が短絡または故障したときに前記抵抗器およびその抵抗器を接続する回路に発生する発熱量がその許容値を越えない範囲に設定された請求項1または2記載の船舶用電源装置。
  4. 前記電気二重層コンデンサの内部抵抗が前記二次電池の内部抵抗より小さく設定された請求項1ないし3のいずれか記載の船舶用電源装置。
  5. 前記電気二重層コンデンサは硫酸を主体とする電解液が用いられる請求項1ないし4のいずれか記載の船舶用電源装置。
  6. 前記二次電池はシール型鉛蓄電池である請求項1ないし5のいずれか記載の船舶用電源装置。
  7. 前記電気二重層コンデンサの内部抵抗または電圧を計測する監視回路を設けた請求項1ないし6のいずれか記載の船舶用電源装置。
  8. 前記二次電池の内部抵抗および電圧ならびに温度を計測する監視回路を設けた請求項1ないし7のいずれか記載の船舶用電源装置。
  9. 前記二次電池に直列に接続された第二の過電流遮断器を備えた請求項1ないし8のいずれか記載の船舶用電源装置。
  10. 前記二重層コンデンサに直列に接続された第三の過電流遮断器を備えた請求項1ないし9のいずれか記載の船舶用電源装置。
  11. 請求項1ないし10のいずれかに記載の船舶用電源装置の運転方法であり、
    前記第一のスイッチを閉じて前記蓄電ユニットから供給された電流によってエンジン始動用の直流電動機を始動する第一のステップと、
    前記直流電動機でエンジンを始動する第二のステップと、
    始動されたエンジンによって主機駆動発電機を始動して前記第一の負荷に給電し、かつ前記直流電動機を開放する第三のステップと、
    前記蓄電ユニットが充電される第四のステップと、
    前記主機駆動発電機の異常停止時に前記蓄電ユニットより前記第一の負荷に給電される第五のステップと
    よりなる船舶用電源装置の運転方法。
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