JP3846607B2 - 麺の油揚げ方法及び麺の油揚げ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、即席麺等の製造工程における麺の油揚げ方法とその装置に関し、特に、麺の油揚げ時に麺の浮力で麺が上部において密になり下部において粗になることを防止する方法と装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来における麺の油揚げは、特開昭53−94072号公報,特開昭57−49422号公報,特開昭60−41925号公報等に記載されるように、熱油が内在する油槽内を通過する無端コンベヤに多数の容器を設けておき、この容器内に麺を収容した状態で当該容器を油槽内を通過させることにより麺を油揚げしている。
【0003】
前記コンベヤは、麺を収容する容器本体が備えられた無端の本体用コンベヤと、容器本体内の麺が浮上することを防止するために前記容器本体に蓋を施すために蓋が備えられた無端の蓋用コンベヤとからなり、容器本体内に麺を収容した本体用コンベヤに同期して蓋用コンベヤが運転され、麺の油揚げ中は容器本体に蓋が施された状態で両コンベヤが並行移動し、油揚げ終了後は蓋が容器本体から離れるようになっている。
【0004】
かかる油揚げ装置及び油揚げ方法は、特に即席麺の製造業界においては当業者において慣用されているものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、麺に限らず食品一般に言えることだが、油揚げされると食品の含有水分が蒸発されて気体となる。そして、食品内部で発生した気体は食品外に出て油面まで上昇したうえ大気中に放出されるが、前記気体が食品内部にあるときには当該気体は食品に直接浮力を与え、また食品外に出て油中を上昇することによって油に上昇流を発生させ以てこの上昇流によっても食品に浮力を与える。食品には前記のようにして浮力が作用するため、特に麺のような線状の食品である場合には、所定量(例えば一食分)の麺を容器に入れて油揚げすると、麺が未だ固くならないうちに、前記浮力により、所定量のうちの上部の麺の密度が大になる一方、下部の麺の密度が小になる。そして、油揚げの進行とともに、そのまま麺が固くなってこの状態で商品化されることになる。特公昭50−38693号公報及び図6には、こうして油揚げされた麺が開示されている。なお、図6は容器本体7内に麺9を収容し蓋12を被せて油揚げしている状態を示しており、熱油は矢印で示すように容器本体7の底の小孔から容器本体7に入り、ここで麺9を油揚げすると同時に麺9に浮力を与えて蓋12に押しつけ、さらに蓋12の小孔から出る様子が図示されている。ここでは、油揚げによって麺9から発生する気泡もそのまま上昇して麺9に浮力を与えつつ蓋12の小孔から浮上する。この図6における麺9の形状は模式的に表示してある。
【0006】
このように、所定量の麺のうち上部が密になり且つ下部が粗になると、油揚げ終了後に、麺に付着した油を落とす場合にも、密な部分は毛管現象や油の表面張力等により油が落ちにくいから油を落とす時間が必要になって、麺の製造工程が長くなるという欠点がある。また、組織に密の部分と粗の部分があると即席麺を食べる前の戻し時に麺どうしの間に湯が浸透しにくい部分と浸透しやすい部分とがあって、湯戻しの遅い部分(固い部分)と早い部分(軟らかい部分)とが混在することにより歯応えや味がよくないという不具合もある。さらに組織の粗の部分は脆いために、製造工程中や製品化後の搬送中に欠損しやすいという不具合もある。
【0007】
そこで、この発明は、前記従来技術の不具合を解決するためになされたものであり、その目的は、油揚げ中に麺の密度を上下において可及的に均一にすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、熱油に麺を通過させることにより当該麺を油揚げする方法において、麺の上から当該麺に対して熱油を供給して、当該熱油の押圧力により麺の浮力を相殺し、以て麺の密度を上下方向において均す工程と、前記麺に対する前記熱油の押圧力を加えず、前記麺の加熱により発生した気泡を逃がす工程とを複数回繰り返すものである。
【0009】
油揚げ時に麺に作用する浮力に対して熱油を下向きに供給することで、前記浮力を相殺させれば、浮力による麺の粗密の変化は発生しないことになる。また、浮力を相殺させるのが熱油によるものであるから油温を下げることもない。加熱源で加熱された熱油を油槽に還流させて油槽内の油温を所定の範囲に維持する形態をとる多くの油揚げ装置においては、油槽に還流させる熱油の一部を前記浮力の相殺のために使用することで、格別に熱源や熱油供給の動力を新設する必要もなくなる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の前記発明において、麺への熱油の前記供給は、麺を熱油に入れてから出すまでの時間帯のうち初期の、麺が未だ柔らかいうちに行うことにしている。
【0011】
これにより、上下において粗密の変化がない所定量の麺を最も効率よく製造することができる。上からの麺への熱油の供給は、油揚げの最初の数10秒間の工程において行えばよい。
【0012】
請求項3の発明は、 熱油が内在する油槽と、この油槽内を通過するコンベヤとを有し、前記コンベヤには麺を収容する容器が多数連続して設けられ、前記容器は内部に熱油を通過させるための多数の孔が形成されており、前記コンベヤが油槽を通過することにより前記容器内の麺を油揚げする油揚げ装置において、
前記コンベヤにおける前記容器の上に下向きの熱油供給口を前記コンベヤの長手方向に沿って複数臨ませ、前記複数の熱油供給口には熱油供給源を連結し、
前記コンベヤに設けられた前記容器により長手方向に搬送される前記麺について、前記熱油による押圧力の付与と、前記熱油による押圧力を付与せずに前記麺の加熱により発生した気泡の放散とを複数回繰り返してなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1,図2には即席中華そば麺の油揚げ装置が示され、この装置は油槽1と、本体用コンベヤ2と、蓋用コンベヤ3と、熱油供給口4を有する熱油供給管5とを備えている。油槽1は浅底をなしていて、図1にはその始端側が図示されているが、図示しない終端側の形状も始端側と対称をなして、全体として舟形をしている。そして、その内部を本体用コンベヤ2が通過するようになっている。記号Oは油槽1内の油面を示す。
【0014】
本体用コンベヤ2は、平行な2本の無端のローラチェン6間に、複数(図2において6個)の容器本体7を油槽1の幅方向に向けて一列に固定した枠体を架設してなり、この枠体はローラチェン6の長手方向に一定間隔に連続して配置されている。而してこの本体用コンベヤ2では容器本体7が6列をなして無端状に並んでおり、容器本体7が上向きの部分が往路をなし、その下側で容器本体7が下向きになっている部分が復路をなしている。
【0015】
本体用コンベヤ2の往路の始端部は麺供給位置8となっていて、油揚げ前の各一食分の麺9がここで夫々の容器本体7に供給されるようになっている。本体用コンベヤ2の往路は、図1における左方の図示していない部分で油槽1から出て下方に反転して復路に連続し、復路は図1における右端で上方に反転して往路に連続している。
【0016】
蓋用コンベヤ3は、平行な2本の無端のローラチェン11間に、前記複数の容器本体7を覆う蓋12を架設しており、この蓋12はローラチェン11の長手方向に前記容器本体7の間隔と同一間隔をなして取付けられている。かかる蓋用コンベヤ3は、本体用コンベヤ2の往路のうち油槽1の油内を通過している間には、蓋12が容器本体7の上に被さって容器本体7を塞ぐように、その軌道が設定されている。本体用コンベヤ2及び蓋用コンベヤ3の軌道は、下端が油槽1内に下降するコンベヤフレーム13に設けられたレールによって構成されており、蓋用コンベヤ3は油槽1の油内を通過した後は上方に反転して、大気中を経由した後に図1中では途切れている蓋用コンベヤ3の右端に連続している。なお、コンベヤフレーム13は、図2に実線で示された位置より鎖線で示された位置まで図示しないジャッキにより上昇して、本体用コンベヤ2と蓋用コンベヤ3とを油槽1から上昇させ、以て油槽1内のメンテナンスを容易にしている。
【0017】
而して、麺供給位置8で容器本体7内に供給された麺9は、本体用コンベヤ2の進行に伴って蓋用コンベヤ3により上に蓋12が被せられて油槽1の熱油中に導入され、熱油中を進行中に油揚げされたうえ、油槽1の終端側で本体用コンベヤ2により熱油中から引き上げられるとともに、蓋用コンベヤ3により蓋12が容器本体7から離れ、しかる後に本体用コンベヤ2の下方への反転により油揚げされた麺9が本体用コンベヤ2の容器本体7から排出される。前記容器本体7と蓋12とによって麺9の容器が構成されている。これまでに説明した前記油槽1と本体用コンベヤ2と蓋用コンベヤ3の各構成と作用はいずれも当業者において慣用されていて周知のものである。
【0018】
この実施形態では、特に蓋用コンベヤ3の蓋12は多数の小孔が開設された板状をなしており、また本体用コンベヤ2の容器本体7にも底に多数の小孔が開設されて、容器本体7内には上下から熱油が出入りできるようになっている。
【0019】
本体用コンベヤ2の往路の始端近くには、容器本体7が熱油中に導入され且つ容器本体7に蓋12が被せられた直後の位置で且つ本体用コンベヤ2と蓋用コンベヤ3の往路の上側に熱油供給管5が配置され、この熱油供給管5には、容器本体7上面に向けて下向きの熱油供給口4が開設されている。
【0020】
本体用コンベヤ2と蓋用コンベヤ3との動作による容器本体7と蓋12の進行中に、各容器本体7は5〜20秒程度の時間にわたり熱油の供給を上から受けるように、本体用コンベヤ2と蓋用コンベヤ3の長手方向に沿って所定距離だけ熱油供給管5の熱油供給口4が並べられる。熱油供給口4からの熱油の供給時間は、油温,麺9の性状等の条件によって、大体において前記の5〜20秒程度の範囲内で変動するものであるが、油揚げにより麺9が或る程度固くなって以後の、浮力により変形しにくい状態になるまでの間は熱油を熱油供給口4から供給するように設定すべきである。
【0021】
油槽1には長手方向における複数箇所において、底に下側の熱油供給口15が開設されていて、この熱油供給口15には下側の熱油供給管16が連結されている。また油槽1の底には図示しない油戻し管も連結されていて、この油戻し管と前記熱油供給管16とは、図示しない熱供給源とポンプとフィルタとを介して連結されることにより油が循環するようになっている。
【0022】
下の熱油供給管16からは分岐管17が分岐していて、この分岐管17には前記熱油供給管5が連結されている。熱油供給管5は前記コンベヤフレーム13に支持されている一方、前記分岐管17は油槽1に固定されている。すなわち、熱油供給管5の垂直部5aの下端と分岐管17の先端とは分離可能に接合されていて、図2に示すコンベヤフレーム13の前記上昇時には熱油供給管5もコンベヤフレーム13及び両コンベヤ2,3と一体に上昇するようになっている。例えば図3に示すように、分岐管17の先端が上細りのテーパをなし、垂直部5aの下端が下広がりのテーパをなして両者が嵌合できるようにしてある。このため、熱油供給管5も油槽1内のメンテナンスの邪魔にはならない。コンベヤフレーム13の図示する下降時には、勿論熱油供給管5の垂直部5aの下端が分岐管17の先端に前記のように接合するようになっている。この接合位置は油槽1内であるために、万一ここから油漏れがあったとしても支障は生じない。
【0023】
下側の熱油供給管16と分岐管17との分岐部分には流量調整弁18,19が備えられて、これらにより熱油供給口4,15からの熱油供給量を調整できるようにしてある。前記垂直部5aの上端は3本の熱油供給管5に連結されていて、分岐管17から垂直部5aに至った熱油は3本の熱油供給管5に分岐供給される。そして熱油供給管5からの熱油は各熱油供給口4から下の容器本体7に向けて供給される。各熱油供給管5には熱油供給口4が容器本体7の列の上にそれぞれ臨んで設けられていて、油揚げ中は熱油供給口4から常時熱油が流下されるものとし、その下を、蓋12が施され且つ内部に麺9を収容した容器本体7が通過するようになっている。したがって、通過する麺9は熱油供給口4からの熱油による上からの押圧力を繰り返し受けることになる。
【0024】
このように、麺9に対する熱油による下方への押圧力の付与を連続ではなく繰り返す理由は、加熱により麺から発生する多量の気泡を、容器本体7の外側から早急に浮上させて大気中に放散させることができるからである。なぜなら、本体用コンベヤ2の所定の長さにわたって連続して熱油を上から供給すると、その面においては多量の気泡が逃げ場を失って油中に留まり、これが大きな空気溜まりとなって前方又は後方に移動すると油揚げに支障を生じるおそれがあるからである。
【0025】
而して、移動中の麺に繰り返し下方への圧力を加えることによって、圧力の加わらない位置、すなわち熱油供給口4の前後において気泡が浮上できるようにしている。なお、油温や本体用コンベヤ2及び蓋用コンベヤ3の速度等との関係から、麺9が一つの熱油供給口4の下のみを通過する形態の場合には気泡を浮上させるための格別の条件は無用となる。
【0026】
熱油供給口4から供給された熱油は、蓋12の孔を経て容器本体7内に導入され、これにより麺9は上から下に向けて押圧されるために、油揚げにより発生する浮力が前記押圧力により相殺される。このため、麺9が浮上して蓋12の下面に押しつけられることがない。容器本体7内に導入された熱油は後続する熱油に押されて容器本体7の底の孔から油槽1内に出る。この熱油の流れが図5において矢印で示されるが、従来の技術による油揚げ状態を示す図6の熱油の流れを示す矢印とは向きが逆になっている。
【0027】
このようにして、容器本体7内の麺9は浮上が抑制されるから、上下において麺の密度が均しく形成され、上部が密で下部が粗になることが防止され、全体として可及的に均一な密度の所定量の麺を製造することができる。なお、熱油供給口4からの熱油の供給量,供給速度は、容器本体7内の麺9の量,麺9の性状,蓋12の面積及び孔の寸法と数,熱油供給管5の数,油槽1内の油温度,熱油供給口4の開口面積等の条件によって変化するものであるが、前記弁18等の調整により実験的に最適の供給量と供給速度を求めればよい。最適の供給量,供給速度とは、容器本体7内で油揚げ開始時に麺9が受ける浮力と、熱油供給口4から供給される熱油による下方への押圧力、すなわち浮力とこれを相殺する力とがバランスする量,速度である。
【0028】
なお、前記麺9としては、即席中華そばの麺についての実施形態を説明したが、即席うどんの麺等の他の種類の麺であってもこの発明を適用することができることは勿論である。また、前記即席中華そばの麺は、さらに容器入りや袋入りなどの包装形態によっても各種のものがあるが、この発明はいずれの形態の麺であっても適用することができる。
【0029】
【発明の効果】
以上、請求項1及び請求項3の発明によれば、油揚げ時に麺に作用する浮力に対して熱油を下向きに供給して押圧することで前記浮力を相殺させるから、浮力による麺の粗密の変化が発生しないことになる。このため、所定量の麺の上下方向における密度が可及的に均一になるから、油揚げ後に付着油を落とす作業も容易になるとともに、製造工程中や搬送中の麺の欠損も防止することができる。さらに、食べる直前の湯戻しのときには、湯が麺全体に均等に浸透するため、全体が平均して湯戻しされて好適な食感を得ることができる効果もある。
【0030】
また、浮力を相殺させるのが熱油によるものであるから油温を下げることもなく円滑に湯揚げを実行することができる。さらに、加熱源で加熱された熱油を油槽に還流させて油槽内の油温を所定の範囲に維持する形態をとる多くの油揚げ装置においては、油槽に還流させる熱油の一部を前記浮力の相殺のために使用することで、格別に熱源や熱油供給の動力を新設する必要もなくなる効果もある。
【0031】
請求項2の発明によれば、請求項1の前記効果に加えて、麺への熱油の前記供給は、麺を熱油に入れてから出すまでの時間帯のうち初期の、麺が未だ柔らかいうちに行う一方、麺が固くなってから無駄な下向きの熱油を供給することもないので、上下において粗密の変化がない所定量の麺を最も効率よく製造することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】油揚げ装置の要部を示す長手方向断面図。
【図2】図1における▲2▼−▲2▼線断面図。
【図3】分岐管と上の熱油供給管との接続部を示す分解斜視図。
【図4】上から供給さる熱油の作用を示す説明図。
【図5】熱油の動きと容器内の麺の状態を示す説明図。
【図6】従来の熱油の動きと容器内の麺の状態を示す説明図。
【符号の説明】
1 油槽
2 本体用コンベヤ
3 蓋用コンベヤ
4 熱油供給口
5 熱油供給管
5a 垂直部
7 容器本体
8 麺供給位置
9 麺
12 蓋
13 コンベヤフレーム
16 熱油供給管
17 分岐管17
Claims (3)
- 熱油に麺を通過させることにより当該麺を油揚げする方法において、麺の上から当該麺に対して熱油を供給して、当該熱油の押圧力により麺の浮力を相殺し、以て麺の密度を上下方向において均す工程と、前記麺に対する前記熱油の押圧力を加えず、前記麺の加熱により発生した気泡を逃がす工程とを複数回繰り返すことを特徴とする麺の油揚げ方法。
- 麺への熱油の前記供給は、麺を熱油に入れてから出すまでの時間帯のうち初期の、麺が未だ柔らかいうちに行うことを特徴とする請求項1に記載の麺の油揚げ方法。
- 熱油が内在する油槽と、この油槽内を通過するコンベヤとを有し、前記コンベヤには麺を収容する容器が多数連続して設けられ、前記容器は内部に熱油を通過させるための多数の孔が形成されており、前記コンベヤが油槽を通過することにより前記容器内の麺を油揚げする油揚げ装置において、
前記コンベヤにおける前記容器の上に下向きの熱油供給口を前記コンベヤの長手方向に沿って複数臨ませ、前記複数の熱油供給口には熱油供給源を連結し、
前記コンベヤに設けられた前記容器により長手方向に搬送される前記麺について、前記熱油による押圧力の付与と、前記熱油による押圧力を付与せずに前記麺の加熱により発生した気泡の放散とを複数回繰り返すことを特徴とする麺の油揚げ装置。
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