JP3846080B2 - 芳香族カルボン酸の製造方法 - Google Patents

芳香族カルボン酸の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP3846080B2
JP3846080B2 JP37465698A JP37465698A JP3846080B2 JP 3846080 B2 JP3846080 B2 JP 3846080B2 JP 37465698 A JP37465698 A JP 37465698A JP 37465698 A JP37465698 A JP 37465698A JP 3846080 B2 JP3846080 B2 JP 3846080B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
water
slurry
mother liquor
reaction
carboxylic acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP37465698A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2000191584A (ja
Inventor
藤正 中尾
秀昭 岩田
司 飯田
道生 梅田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsui Chemicals Inc
Original Assignee
Mitsui Chemicals Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsui Chemicals Inc filed Critical Mitsui Chemicals Inc
Priority to JP37465698A priority Critical patent/JP3846080B2/ja
Publication of JP2000191584A publication Critical patent/JP2000191584A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3846080B2 publication Critical patent/JP3846080B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルキル置換基または一部酸化したアルキル置換基を含有するアルキル芳香族化合物を酸素含有ガスにより液相酸化して芳香族カルボン酸を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族カルボン酸類は基礎化学品として用いられ、特に芳香族ジカルボン酸は繊維、樹脂、可塑剤等の原料として有用であり、例えば、テレフタル酸はポリエステル原料として多用されている。
従来、芳香族カルボン酸の製造方法としては、一般に反応器において、重金属化合物および臭素化合物を触媒とし、酢酸等の低級脂肪族カルボン酸を含む反応溶媒中で、メチル基置換芳香族化合物を分子状酸素含有ガスと接触させて液相酸化する方法が採用されている。このような製造方法では、反応器に、原料としてパラキシレン等のアルキル置換芳香族化合物、溶媒の酢酸および触媒の混合物、ならびに空気等の酸素含有ガスを導入して酸化反応を行い、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸を生成させている。
【0003】
生成するテレフタル酸等の芳香族カルボン酸は結晶として析出し、スラリーとなるので、このスラリーを反応槽からスラリー受槽に抜き出して固液分離により結晶を回収することにより粗テレフタル酸等の粗生成物が得られる。
こうして得られた粗生成物の結晶中には酸化反応中間体や不純物が同伴しているので、粗生成物を溶解し、酸化処理、あるいは還元処理等の精製工程を経てテレフタル酸等の結晶を析出させると、結晶を含むスラリーが得られる。このようなスラリーから結晶を回収すると、精製テレフタル酸等の精製物が得られる。
【0004】
従来反応により生成したスラリーから結晶を回収するためには、反応器からスラリー受槽にスラリーを抜き出し、遠心分離機、ロータリフィルタ等の固液分離装置で固液分離を行っている。分離した母液は反応器に返送されるが、母液の一部は結晶に付着するので、これを回収して反応器に返送し、分離した結晶を水に分散させた水スラリーを精製工程に送っている。
【0005】
結晶に付着した母液を除去するために、かつては反応溶媒として使用される酢酸等の低級脂肪族カルボン酸を用いて洗浄し、洗浄排液を反応器に返送し、反応溶媒として用いていた。しかしこの方法では、結晶に付着した溶媒をさらに水で置換して精製工程に送る必要があるため、工程が複雑になるとともに、溶媒置換に伴って低濃度の溶媒が多量に得られ、処理が困難である。
【0006】
このような点を改善するために多段塔を用いて結晶と水を向流接触させることによりスラリーの母液を水で置換し、得られる水スラリーを精製工程に送るとともに、分離した母液を反応器に返送する方法が提案されている(特開平1−160942号)。
ところがこのような方法では結晶を水と向流接触させるため、多量の水が母液とともに反応器に導入されることになる。芳香族カルボン酸の生成反応では水が生成するため、多量の水が存在すると反応が抑制される。
【0007】
一方、スラリーから濾過機等により、分離した結晶をパラキシレン等で洗浄し、洗浄したパラキシレン等を反応器に戻すとともに、結晶を水に分散して水スラリーとする方法が提案されている(特開平8−143509号)。
しかしながらこの方法では結晶の分離、洗浄、再スラリー化を経るため、工程が複雑化するという問題点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、簡単な工程により芳香族カルボン酸の反応母液スラリーから反応母液を回収し、水の混入の少ない反応母液を反応器に返送することができるとともに、反応母液の混入の少ない水スラリーを精製工程へ送ることができる芳香族カルボン酸の製造方法を提案することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は次の芳香族カルボン酸の製造方法である。
(1) 反応器中で脂肪族カルボン酸を含む反応溶媒中、酸化触媒の存在下、アルキル芳香族化合物を酸素含有ガスで液相酸化して芳香族カルボン酸を製造する方法であって、
反応器で生成する芳香族カルボン酸結晶の反応母液スラリーを抜き出し、
このスラリーの反応母液をアルキル芳香族化合物で置換してアルキル芳香族化合物スラリーを形成し、
このスラリーのアルキル芳香族化合物を水で置換して水スラリーを形成し、
この水スラリーを精製工程へ送り、置換された反応母液およびアルキル芳香族化合物の少なくとも一部を反応器へ送る
ことを特徴とする芳香族カルボン酸の製造方法。
(2) 多段塔に芳香族カルボン酸の反応母液スラリーを供給して結晶を沈降させ、アルキル芳香族化合物の上向流と接触させて反応母液と置換させ、沈降する結晶を水に分散させて水スラリーを形成する上記(1)記載の方法。
(3) 多段塔の上部に芳香族カルボン酸の反応母液スラリーを供給して結晶を沈降させ、中間部から上向流でアルキル芳香族化合物を流して反応母液と置換させ、下部に水を供給してアルキル芳香族化合物層を沈降する結晶を分散させて水スラリーを形成する上記(2)記載の方法。
(4) 反応母液と置換するアルキル芳香族化合物が水と接触した後のアルキル芳香族化合物である上記(1)または(2)に記載の方法。
(5) 多段塔の上部に芳香族カルボン酸の反応母液スラリーを供給して結晶を沈降させ、中間部から下向流で水を流し、下部から上向流でアルキル芳香族化合物を流して水と接触させた後、反応母液と置換させ、沈降する結晶を下向流の水に分散させて水スラリーを形成する上記(1)または(2)に記載の方法。
(6) 水が反応器の反応排ガスから得られる凝縮水および/または精製工程で分離した分離水である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の方法。
【0010】
本発明の方法において芳香族カルボン酸を製造するための酸化原料としては、アルキル置換基または一部酸化したアルキル置換基を有するアルキル芳香族化合物(以下、単に酸化原料という場合がある)が使用できる。このようなアルキル芳香族化合物は単環であっても、多環であってもよい。上記アルキル置換基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基およびイソプロピル基等の炭素数1〜4のアルキル基をあげることができる。また一部酸化したアルキル基としては、例えばアルデヒド基、アシル基、カルボキシル基およびヒドロキシアルキル基等をあげることができる。
【0011】
アルキル置換基を有するアルキル芳香族化合物、すなわちアルキル置換芳香族炭化水素の具体的なものとしては、例えばm−ジイソプロピルベンゼン、p−ジイソプロピルベンゼン、m−シメン、p−シメン、m−キシレン、p−キシレン、トリメチルベンゼン類およびテトラメチルベンゼン類等の炭素数1〜4のアルキル基を2〜4個有するジもしくはポリアルキルベンゼン類;ジメチルナフタレン類、ジエチルナフタレン類およびジイソプロピルナフタレン類等の炭素数1〜4のアルキル基を2〜4個有するジもしくはポリアルキルナフタレン類;ジメチルビフェニル類等の炭素数1〜4のアルキル基を2〜4個有するポリアルキルビフェニル類などをあげることができる。
【0012】
また一部酸化したアルキル置換基を有するアルキル芳香族化合物は、上記化合物におけるアルキル基が一部酸化されて、前記アルデヒド基、アシル基、カルボキシル基またはヒドロキシアルキル基等に酸化されている化合物である。具体的なものとしては、例えば3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、m−トルイル酸、p−トルイル酸、3−ホルミル安息香酸、4−ホルミル安息香酸および2−メチル−6−ホルミルナフタレン類等をあげることができる。これらは単独で、または2種以上の混合物として用いられる。
【0013】
本発明の方法においては、重金属化合物および臭素化合物が触媒として用いられるが、それらの化合物としては次のようなものが例示される。すなわち、重金属化合物における重金属としては、例えばコバルト、マンガン、ニッケル、クロム、ジルコニウム、銅、鉛、ハフニウムおよびセリウム等をあげることができる。これらは単独で、または組合せて用いることができるが、特にコバルトとマンガンとを組合せて用いるのが好ましい。
このような重金属の化合物としては、例えば酢酸塩、硝酸塩、アセチルアセトナート塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩および臭化物等をあげることができるが、特に酢酸塩、臭化物が好ましい。
【0014】
臭素化合物としては、例えば分子状臭素、臭化水素、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化コバルトおよび臭化マンガン等の無機臭素化合物;臭化メチル、臭化メチレン、ブロモホルム、臭化ベンジル、ブロモメチルトルエン、ジブロモエタン、トリブロモエタンおよびテトラブロモエタン等の有機臭素化合物などをあげることができる。これらの臭素化合物も単独で、または2種以上の混合物として用いられる。
【0015】
本発明において、上記重金属化合物と臭素化合物との組合せからなる触媒は、重金属原子1モルに対して臭素原子0.05〜10モル、好ましくは0.1〜2モルの範囲からなるものが望ましい。このような触媒は、反応溶媒中の重金属濃度として通常10〜10000ppm、好ましくは100〜5000ppmの範囲で用いられる。
【0016】
本発明の方法では酸化反応として反応器において、前記触媒の存在下に、低級脂肪族カルボン酸を含む反応溶媒中で、酸化原料となるアルキル芳香族化合物を分子状酸素含有ガスによって液相酸化することにより、製品としての芳香族カルボン酸を得る。
【0017】
上記分子状酸素含有ガスとしては、例えば酸素や空気等をあげることができるが、実用的には空気が好ましく用いられる。分子状酸素含有ガスは酸化原料となる芳香族化合物を芳香族カルボン酸に酸化するのに必要な量より過剰に供給する。分子状酸素含有ガスとして空気を使用する場合、酸化原料となるアルキル芳香族化合物1kgに対して2〜20Nm3、好ましくは2.5〜15Nm3の割合で反応系に供給するのが望ましい。
【0018】
反応溶媒として使用する低級脂肪族カルボン酸の具体的なものとしては、例えば酢酸、プロピオン酸および酪酸等をあげることができる。低級脂肪族カルボン酸は単独で反応溶媒として使用することもできるし、水と混合して混合物の状態で反応溶媒として使用することもできる。反応溶媒の具体的なものとしては、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸およびこれらの混合物、あるいはこれらの低級脂肪族カルボン酸と水との混合物等をあげることができる。これらの中では、酢酸と水との混合物が好ましく、特に水分濃度1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%に混合した混合物が望ましい。
【0019】
酸化反応の温度は通常100〜250℃、好ましくは150〜220℃の範囲が望ましい。また、反応圧力は反応系を液相に保つことができる圧力以上であればよいが、一般的には0.1〜4MPa、好ましくは0.4〜3MPa(ゲージ圧)とされる。
【0020】
このようにして反応させることにより、酸化原料となるアルキル芳香族化合物に対応した芳香族カルボン酸が得られる。芳香族カルボン酸の具体的なものとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、トリメシン酸等の芳香族トリカルボン酸;ピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸などがあげられる。
本発明の方法は、芳香族ジカルボン酸、または反応溶媒に不溶もしくは難溶性の芳香族カルボン酸の製造に適用するのが好ましく、特にテレフタル酸の製造に適用するのが好ましい。
【0021】
本発明では上記の反応を行うための反応器として気相部が蒸留塔と接続した反応器を用いるのが好ましい。この蒸留塔は反応器の気相部から高温高圧の酸化排ガスを導入し、反応器の発熱を利用して蒸留を行うものであり、この場合反応溶媒を含む留分を塔底から反応器に還流し、水および非凝縮性のガスを塔頂から排出する。蒸留塔としては特開昭54−14098号に示すように反応器から独立したものでもよく、特開平6−279353号に示すように反応器の上部に設置されるものでもよい。また蒸留塔は棚段塔でもよいが、充填塔が好ましく、この場合芳香族カルボン酸の結晶や触媒のような微細固形物を捕集するための手段、例えば固形物捕集トレイを充填層の下側に設けるものが好ましい。
【0022】
このような反応器に反応原料としてのアルキル芳香族化合物、脂肪族カルボン酸を含む反応溶媒および酸化触媒を導入するとともに、酸素含有ガスを導入して液相酸化することにより芳香族カルボン酸を生成させる。生成する芳香族カルボン酸は結晶として反応母液中に析出しスラリーを形成する。この芳香族カルボン酸結晶の反応母液スラリーは反応器から抜き出してそのまま、または加圧し、あるいはフラッシュタンクでフラッシュさせて降温降圧し、スラリー中の反応母液を原料のアルキル芳香族化合物で置換し、続いてさらに水で置換する。
【0023】
反応母液の置換は、スラリーに含まれる反応母液を可能な限り回収して反応器に返送するとともに、次の精製工程に送るために結晶を水に分散させて水スラリーとする際、反応母液を含まないスラリーを容易に形成するために行われる。精製工程では芳香族カルボン酸を加熱下に水に溶解させた状態で水素添加等の精製処理を行うため、反応母液に含まれる低級脂肪族カルボン酸等の反応溶媒を可能な限り除去する必要がある。このため反応母液の置換を行うが、このためにはまず芳香族カルボン酸の反応母液スラリーの反応母液をアルキル芳香族化合物で置換してアルキル芳香族化合物スラリーを形成し、ついでこのスラリーのアルキル芳香族化合物を水で置換して水スラリーを形成する。また置換された反応母液およびアルキル芳香族化合物の少なくとも一部を反応器に返送する。
【0024】
この置換の方法はスラリー中の反応母液をアルキル芳香族化合物および水と置換できるものであれば特に制限されないが、スラリーから結晶を分離することなくアルキル芳香族化合物および水と接触させて置換する方法が好ましい。このような方法としては例えば特開平1−160942号に示されているような多段塔を用いて反応母液を置換する方法などがあげられる。
【0025】
多段塔を用いる方法は、仕切板を多段に配置した塔の上部に芳香族カルボン酸の反応母液スラリーを供給して結晶を沈降させ、アルキル芳香族化合物の上向流と接触させて反応母液を置換させ、沈降する結晶を水に分散させて水スラリーを形成する。このとき多段塔の上部に反応母液スラリーを導入して結晶を沈降させ、中間部から上向流でアルキル芳香族化合物を流して反応母液と置換させ、下部に水を導入してアルキル芳香族化合物層を沈降する結晶を分散させて水スラリーを形成し、上部から反応母液およびアルキル芳香族化合物を回収し、下部から水スラリーを得ることができ、単一の装置を用い簡単な操作で置換を行うことができる。
【0026】
反応母液との置換に用いるアルキル芳香族化合物は原料として用いられるものであるが、水と接触させた後のものを用いることができる。この場合、多段塔の上部に芳香族カルボン酸の反応母液スラリーを供給して結晶を沈降させ、中間部から下向流で水を流し、下部から上向流でアルキル芳香族化合物を流して水と接触させて有価物を回収した後反応母液と置換させ、沈降する結晶は下向流の水に分散させて水スラリーを形成することができる。
【0027】
上記の置換に用いる水としては反応器の反応排ガスから得られる凝縮水および/または精製工程で分離した分離水を使用することができる。上記の凝縮水は反応排ガス中に含まれる微量の反応溶媒その他の有価物を含んでおり、また分離水は精製工程で生成するp−トルイル酸等の有価物を含んでいる。これらの有価物は置換に用いるアルキル芳香族化合物と接触させることにより回収することができる。これらの有価物を回収したアルキル芳香族化合物は置換した反応母液とともに反応器に返送することにより、回収した有価物を反応系に戻すことができる。
【0028】
上記により置換に用いるアルキル芳香族化合物の量は原料として反応器に供給する量以下とするのが好ましく、これにより、置換された反応母液およびアルキル芳香族化合物を全量反応器に供給し、無駄なく利用することができる。置換に用いる水は水スラリーとして精製工程に送るのに必要な量である。このような置換に用いるアルキル芳香族化合物の量は塔内を下降する結晶1重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜1重量部、水の量は塔内を下降する結晶1重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは2〜4重量部程度である。
【0029】
このように反応母液を反応器に供給し、不足するアルキル芳香族化合物、触媒および反応溶媒を補給して反応を行うと、反応による生成水が反応熱により蒸発して蒸気になる。このとき低級脂肪族カルボン酸を含む反応溶媒も蒸発し、これらの蒸発は酸化排ガスとともに蒸留塔に入り、蒸留を受ける。
【0030】
蒸留塔で蒸留を行うことにより、酸化排ガスに伴って排出される反応溶媒を含む成分が留出して反応器に還流する。この留分は反応溶媒のほか未反応のアルキル芳香族化合物、生成した芳香族カルボン酸、触媒等が濃縮された状態で塔底液として反応器に還流する。そして水蒸気は蒸留塔の上部に設けられた凝縮器で凝縮して凝縮水として分留され、アルキル芳香族化合物の置換と水スラリーの形成に利用される。
【0031】
水の置換により生成する水スラリーは精製工程に送られ、ここで還元処理、酸化処理等の処理を受ける。芳香族カルボン酸結晶に含まれる4−CBA(4−カルボキシベンズアルデヒド)等の不純物は精製工程においてp−トルイル酸等の水溶性物質に転換されて分離水に溶出する。この分離水を水スラリー形成用に循環使用する際、アルキル芳香族化合物を接触させると、p−トルイル酸はアルキル芳香族化合物に吸収されて回収される。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、反応器で酸化反応を行い、スラリー中の反応母液をアルキル芳香族カルボン酸で置換し、ついでさらに水で置換して得られる水スラリーを精製工程へ送り、置換された反応母液およびアルキル芳香族化合物を反応器に送るようにしたので、簡単な工程により芳香族カルボン酸の反応母液スラリーから反応母液を回収し、水の混入の少ない反応母液を反応器に返送することができるとともに、反応母液の混入の少ない水スラリーを精製工程へ送ることができる。
【0033】
多段塔に芳香族カルボン酸の反応母液スラリーを供給して結晶を沈降させ、アルキル芳香族化合物の上向流と接触させて反応母液と置換させ、沈降する結晶を水に分散させて水スラリーを形成することにより、単一の装置を用い簡単な操作でアルキル芳香族化合物および水による置換を効率よく行うことができる。
【0034】
多段塔の上部に芳香族カルボン酸の反応母液スラリーを供給して結晶を沈降させ、中間部から上向流でアルキル芳香族化合物を流して反応母液と置換させ、下部に水を供給してアルキル芳香族化合物層を沈降する結晶を分散させて水スラリーを形成することにより、単一の装置を用い簡単な操作でアルキル芳香族化合物および水による置換および水スラリーの形成を効率よく行うことができる。
【0035】
反応母液と置換するアルキル芳香族化合物として水を接触した後のものを用いることにより、水に含まれる有価物を回収して利用することができる。
【0036】
多段塔の上部に芳香族カルボン酸の反応母液スラリーを供給して結晶を沈降させ、中間部から下向流で水を流し、下部から上向流でアルキル芳香族化合物を流して水と接触させた後、反応母液と置換させ、沈降する結晶を下向流の水に分散させて水スラリーを形成することにより、単一の装置を用い簡単な操作でアルキル芳香族化合物および水による置換を効率よく行うとともに、水に含まれる有価物を回収して利用することができる。
【0037】
水として反応排ガスからの凝縮水および/または精製工程の分離水を用いることにより、反応系から排出される有価物を回収して利用することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2は別の実施形態のテレフタル酸の製造方法を示すフロー図である。
図1において、1は反応器であって、その上部に蒸留塔2、およびさらに上に凝縮器3が一体的に設けられている。
反応器1は、中間部に原料供給路L1、下部にガス供給路L2およびスラリー抜出路L3、上部に母液返送路L4が連絡している。蒸留塔2は充填物層4が液およびガスが通過可能に充填されている。凝縮器3は熱交換器5およびその下に凝縮水受6が設けられており、上部に排ガス路L5が連絡し、凝縮水受6には水抜路L6が連絡している。
【0039】
7は多段塔であって、複数の棚段8a、8b、・・・8nが間隔をおいて設けられ、その上および底部には複数のスクレーパ9a、9b・・・9oが設けられてシャフト10を通してモータ11により回転させられるようになっている。最上段の棚段8aの上部にはポンプ12を介してスラリー抜出路L3が連絡し、その上部から母液返送路L4が反応器1に連絡している。中下段の棚段8mの下部にはポンプ13を介して水抜路L6が連絡し、最下段の棚段8nの下部には給水路L7、さらに下部には水スラリー取出路L8が連絡している。多段塔7の中間部にはパラキシレン供給路L9が連絡し、水抜路L6の連絡位置との間にパラキシレンと水の界面14が形成されている。
【0040】
上記の装置による製造方法は、反応器1に原料供給路L1から反応原料としてのパラキシレン、酢酸を含む反応溶媒および酸化触媒を導入するとともに、ガス供給路L2から酸素含有ガスを導入して液相酸化することによりテレフタル酸を生成させる。原料のパラキシレンは全量パラキシレン供給路L9から供給してもよい。生成するテレフタル酸は結晶として母液中に析出し、テレフタル酸の反応母液スラリーを形成する。このスラリーは反応器1からポンプ12によりスラリー抜出路L3を通して抜き出してそのまま、または加圧し、あるいはフラッシュタンク(図示せず)でフラッシュさせて降温降圧し、多段塔7に導入する。
【0041】
多段塔7ではスラリー抜出路L3から最上段の棚段8aの上部に上記テレフタル酸の反応母液スラリーを導入し、パラキシレン供給路L9からパラキシレンを導入してスラリー中の母液が下に拡散しない程度の流速で上向流でパラキシレンを流す。スクレーパ9a・・・を回転させながら、テレフタル酸の結晶を沈降させ、上昇するパラキシレンと向流接触させて反応母液と置換する。これによりテレフタル酸のパラキシレンスラリーを形成し、上部から母液返送路L4を通して反応母液とパラキシレンの混合物を回収して反応器1に返送する。
【0042】
一方、水抜路L6から中下段の棚段8mの下部に水を導入して下向流で流し、沈降する結晶を分散させて水スラリーを形成する。最下段の棚段8nとその上部のスクレーパ9nはなくてもよい。そして多段塔7の下部から、水スラリー取出路L8を通して水スラリーを取り出して精製工程に送る。このとき必要により給水路L7から水を補給して水スラリー濃度を調整する。給水路L7から供給する水としては精製工程で分離した分離水を用いることができる。
【0043】
上記の置換により得られる反応母液とパラキシレンの混合物を反応器1に供給して反応を行うと、反応による生成水が反応熱により蒸発して蒸気になる。このとき酢酸を含む反応溶媒も蒸発し、これらの蒸気は酸化排ガスとともに蒸留塔2に入り、蒸留を受ける。
【0044】
蒸留塔2で蒸留を行うことにより、酸化排ガスに伴って排出される反応溶媒を含む成分が留出して反応器1に還流する。この留分は反応溶媒のほか未反応のパラキシレン、生成したテレフタル酸、触媒等が濃縮された状態で反応器1に還流する。そして水蒸気は蒸留塔2の上部から凝縮器3に入り、熱交換器5で冷却されて凝縮して凝縮水として凝縮水受6に分留され、水抜路L6から多段塔7に送られる。スラリー抜出路L3から多段塔7に入る反応母液に含まれる水はそのまま反応器1に戻るが、反応母液中の水は上記のようにして反応器1から除去される。凝縮水の一部は凝縮水受6の周囲から蒸留塔2に流下して蒸留に用いられる。
【0045】
図2では多段塔7の中間部である中下段の棚段8mの上側および下側には給水路L7および水抜路L6が連絡して下向流で水を流すようにされ、また最下段の棚段8nより下の多段塔7の下部にはパラキシレン供給路L9が連絡して上向流でパラキシレンを流すようにされている。その下部には水スラリー取出路L8が精製工程15に連絡している。精製工程15は水添処理により4−CBA(4−カルボキシベンズアルデヒド)をp−トルイル酸に還元し、着色成分を分解するように構成され、ここで分離する分離水の一部を排水路L10から排水し、残部を給水路L7から多段塔7へ循環し、精製テレフタル酸(PTA)結晶を精製物取出路L11から取出すように構成されている。
【0046】
上記の装置では、パラキシレン供給路L9から供給されるパラキシレンは多段塔7内を上向流で流れ、水抜路L6および給水路L7から供給され下向流で流れる水と接触することにより、これらの水に含まれているテレフタル酸やp−トルイル酸等の有価物を回収する。多段塔7の給水路L7の連絡位置より高い部分では、反応母液の下部への拡散を防いだ状態でパラキシレンの層が上向流で流れて反応母液と置換し、これらの混合物は母液返送路L4から反応器1に送られる。沈殿するテレフタル酸結晶は下降する水に分散して水スラリーを形成し、水スラリー取出路L8から精製工程15へ送られ、精製処理を受ける。ここで分離する分離水の一部を排水路L10から排水し、残部を給水路L7から多段塔7へ循環し、精製テレフタル酸(PTA)結晶を精製物取出路L11から取出す。他の構成および操作は図1の場合と同様である。
【0047】
【実施例】
以下本発明の実施例について説明する。
実施例1
図1においてこの反応器1にパラキシレン供給路L9からパラキシレンを65kg/hr供給するとともに、原料供給路L1から反応等で失われる酢酸と触媒を補給して反応させた。この時の反応条件は反応温度190℃、反応圧力14kg/cm2Gである。スラリー抜出路L3から、生成したテレフタル酸と触媒を含む溶液をポンプ12で16kg/cm2Gまで昇圧し、15.5kg/cm2G下の多段塔7に送った。スラリー抜出路L3から抜き出されるテレフタル酸は100kg/hrであり、触媒を含む溶媒は200kg/hr(水20kg/hr、酢酸その他180kg/hr)であった。多段塔7では反応母液の下への拡散を防止しながら結晶を沈降させ、上昇するパラキシレンで反応母液を置換し、パラキシレンスラリーを形成した。
【0048】
多段塔7の下部には給水路L7から、水200kg/hrを供給し、蒸留塔2の上部から抜き出される凝縮水25kg/hrを水抜路L6から供給した。水スラリー取出路L8からは、テレフタル酸100kg/hrと水225kg/hrのスラリーが抜き出された。また母液返送路L4からは、触媒を含む酢酸水溶液200kg/hr(水20kg/hr、酢酸その他180kg/hr)が抜き出され反応器1に返送した。また、排ガス路L5からは蒸留塔2により凝縮物中の酢酸濃度が1wt%以下となった蒸気と排ガスを抜き出した。
上記のようにスラリーの反応母液をパラキシレンで置換することにより、水を導入することなく反応母液を母液返送路L4から反応器1に返送することができた。
【0049】
実施例2
図2において、実施例1とほぼ同条件で反応を行った。排水路L10から系外に排出する排水は25kg/hrであった。水抜路L6および給水路L7から供給される水をパラキシレンと接触させることにより、水抜路L6中に含まれる酢酸、酢酸メチル及び臭素化合物等と、給水路L7中に含まれるp−トルイル酸、4−CBAおよび混入したテレフタル酸等を回収することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態のフロー図である。
【図2】他の実施形態のフロー図である。
【符号の説明】
1 反応器
2 蒸留塔
3 凝縮器
4 充填物層
5 熱交換器
6 凝縮水受
7 多段塔
8a・・・ 棚段
9a・・・ スクレーパ
10 シャフト
11 モータ
12、13 ポンプ
14 界面
15 精製工程
L1 原料供給路
L2 ガス供給路
L3 スラリー抜出路
L4 母液返送路
L5 排ガス路
L6 水抜路
L7 給水路
L8 水スラリー取出路
L9 パラキシレン供給路
L10 排水路
L11 精製物取出路

Claims (6)

  1. 反応器中で脂肪族カルボン酸を含む反応溶媒中、酸化触媒の存在下、アルキル芳香族化合物を酸素含有ガスで液相酸化して芳香族カルボン酸を製造する方法であって、
    反応器で生成する芳香族カルボン酸結晶の反応母液スラリーを抜き出し、
    このスラリーの反応母液をアルキル芳香族化合物で置換してアルキル芳香族化合物スラリーを形成し、
    このスラリーのアルキル芳香族化合物を水で置換して水スラリーを形成し、
    この水スラリーを精製工程へ送り、置換された反応母液およびアルキル芳香族化合物の少なくとも一部を反応器へ送る
    ことを特徴とする芳香族カルボン酸の製造方法。
  2. 多段塔に芳香族カルボン酸の反応母液スラリーを供給して結晶を沈降させ、アルキル芳香族化合物の上向流と接触させて反応母液と置換させ、沈降する結晶を水に分散させて水スラリーを形成する請求項1記載の方法。
  3. 多段塔の上部に芳香族カルボン酸の反応母液スラリーを供給して結晶を沈降させ、中間部から上向流でアルキル芳香族化合物を流して反応母液と置換させ、下部に水を供給してアルキル芳香族化合物層を沈降する結晶を分散させて水スラリーを形成する請求項2記載の方法。
  4. 反応母液と置換するアルキル芳香族化合物が水と接触した後のアルキル芳香族化合物である請求項1または2に記載の方法。
  5. 多段塔の上部に芳香族カルボン酸の反応母液スラリーを供給して結晶を沈降させ、中間部から下向流で水を流し、下部から上向流でアルキル芳香族化合物を流して水と接触させた後、反応母液と置換させ、沈降する結晶を下向流の水に分散させて水スラリーを形成する請求項1または2に記載の方法。
  6. 水が反応器の反応排ガスから得られる凝縮水および/または精製工程で分離した分離水である請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
JP37465698A 1998-12-28 1998-12-28 芳香族カルボン酸の製造方法 Expired - Fee Related JP3846080B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP37465698A JP3846080B2 (ja) 1998-12-28 1998-12-28 芳香族カルボン酸の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP37465698A JP3846080B2 (ja) 1998-12-28 1998-12-28 芳香族カルボン酸の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000191584A JP2000191584A (ja) 2000-07-11
JP3846080B2 true JP3846080B2 (ja) 2006-11-15

Family

ID=18504215

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP37465698A Expired - Fee Related JP3846080B2 (ja) 1998-12-28 1998-12-28 芳香族カルボン酸の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3846080B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101107927B1 (ko) * 2003-10-02 2012-01-25 미츠비시 가스 가가쿠 가부시키가이샤 고순도 테레프탈산의 제조 방법
JP4864446B2 (ja) * 2005-01-17 2012-02-01 三井化学株式会社 液々抽出方法
CN111569814B (zh) * 2020-03-31 2021-07-09 南京延长反应技术研究院有限公司 Px生产pta的外置微界面机组强化氧化系统

Also Published As

Publication number Publication date
JP2000191584A (ja) 2000-07-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1758846B1 (en) Process for removal of impurities from mother liquor in the synthesis of carboxylic acid using pressure filtration
US7462736B2 (en) Methods and apparatus for isolating carboxylic acid
US7291270B2 (en) Process for removal of impurities from an oxidizer purge stream
US7273559B2 (en) Process for removal of impurities from an oxidizer purge stream
EP2450342B1 (en) Process for production of a dried carboxylic acid cake suitable for use in polyester production
JP2006249106A (ja) 効率的なエネルギー回収が可能な芳香族カルボン酸の製造法
JPH06502653A (ja) 還元して精製テレフタル酸を調製するのに適する粗製テレフタル酸の調製方法
RU2394808C2 (ru) Способ удаления примесей из окисленного потока сброса
MX2008010939A (es) Proceso de produccion de acido carboxilico.
RU2678993C2 (ru) Рецикл конденсата высокого давления при производстве очищенных ароматических карбоновых кислот
JP2000191583A (ja) 芳香族カルボン酸の製造方法
JPH11349529A (ja) 芳香族カルボン酸の製造方法
US7897810B2 (en) Optimized production of aromatic dicarboxylic acids
MX2007002503A (es) Produccion optimizada de acidos dicarboxilicos aromaticos.
JP3846080B2 (ja) 芳香族カルボン酸の製造方法
KR102592022B1 (ko) 산화에 의해 방향족 디카복실산을 제조하기 위한 에너지 및 환경적으로 통합된 방법
EA027339B1 (ru) Улучшение скорости фильтрования при очистке терефталевой кислоты регулированием % воды в суспензии, подаваемой в фильтр
KR20190099301A (ko) 정제된 테레프탈산 (pta) 배출 스팀 사용
JPH11335321A (ja) 芳香族カルボン酸の製造方法
CN110139701B (zh) 经纯化的对苯二甲酸(pta)排气干燥机蒸气流出物处理
JPH11349530A (ja) 芳香族カルボン酸の製造方法
EP1912928B1 (en) Process for removal of benzoic acid from an oxidizer purge stream
JP4431813B2 (ja) 芳香族カルボン酸の製造方法
JP3843533B2 (ja) 芳香族カルボン酸の製造方法
WO2015100089A2 (en) Methods and apparatus for isolating dicarboxylic acid

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060523

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060706

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20060801

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20060814

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees