JP3845864B2 - 磁気テープリールの消磁方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気テープリールの消磁方法に係り、特に、カセットテープやビデオテープを始めとして、コンピュータのデータバックアップ用の磁気テープリールの消磁方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カセットテープやビデオテープを始めとして、コンピュータのデータバックアップ用にも使用されている各種の磁気テープリールは、ロール状に巻回された幅広な帯状の磁気テープ原反を、送り出し側から引き出して搬送させながらスリッタで複数の幅狭な磁気テープに裁断して、巻取り側のリールに巻き込むことにより製造される。
【0003】
このような磁気テープリールは、業界内では一般にはパンケーキと称呼されており、樹脂製のケース等に収納されて出荷されることが多い。そして、出荷前には、交流磁界を発生させている一対の消磁コイルの間を通過させることにより消磁されている。この際の交流磁界は、従来は0.2テスラ程度であった。
【0004】
図5は、従来より採用されている磁気テープリールの消磁方法を示す概念図である。同図において、上側の消磁コイル5と下側の消磁コイル6との間を磁気テープリール1がコンベア7のコンベアベルト8上に載って搬送される構成となっている。
【0005】
磁気テープリール1は、ハブ2(巻芯)とハブ2にロール状に巻回された磁気テープ3より構成される。同図のものは、更に搬送ケース4上に載置されている。なお、コンベア7は、無端環状のコンベアベルト8が複数のガイドローラ9、9…で支持されることにより構成される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、近年において、抗磁力の高い磁気テープ製品の割合が増えており、従来存在しなかった問題が生じている。すなわち、抗磁力の高い磁気テープに対して消磁を完全に行うためには、0.3テスラ以上の交流磁界をかける必要がある。このような強い交流磁界が印加された場合、磁気テープリール1が消磁コイル5に引き込まれたりして消磁コイル5と接触することが多い。これにより、磁気テープリール1の磁気テープ3にキズを発生させることとなる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、抗磁力の高い磁気テープ製品であっても、欠点を生じずに確実に消磁することができ、製品歩留りを向上させることができる磁気テープリールの消磁方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、対向して配されるとともに、交流磁界を発生させている一対の消磁コイルの間を、磁気テープがロール状に巻回された磁気テープリールを通過させることにより該磁気テープリールの消磁を行う磁気テープリールの消磁方法において、前記磁気テープリールを保持しつつ所定速度で移動する磁気テープリール保持手段により、該磁気テープリールと前記消磁コイルとの接触を防ぐことを特徴とする磁気テープリールの消磁方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、消磁コイルの間を磁気テープリールが通過する際に、磁気テープリール保持手段により、磁気テープリールと消磁コイルとの接触を防ぐことができる。これにより、抗磁力の高い磁気テープ製品であっても、欠点を生じずに確実に消磁することができ、製品歩留りを向上させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面にしたがって本発明に係る磁気テープリールの消磁方法の好ましい実施の形態について詳説する。図1に示される、本発明の磁気テープリールの消磁方法に適用される磁気テープリールの消磁装置10は、主として、上側の消磁コイル5、下側の消磁コイル6、上側コンベア12及び下側コンベア14と、で構成される。
【0011】
上側の消磁コイル5と下側の消磁コイル6とのギャップ間隔は、磁気テープリール1のサイズ及び交流磁界強度との関係より、30〜60mmに設定されるのが好ましい。交流磁界強度は、既述のように従来は0.2テスラ程度であったが、近年の抗磁力の高い磁気テープ製品に対応すべく0.3〜0.6テスラ、場合によっては1.0テスラ程度まで設定される。交流磁界の周波数は、50〜60Hzが一般的である。
【0012】
上側コンベア12は、無端環状のコンベアベルト16が複数のガイドローラ20、20…で支持されることにより構成され、コンベアベルト16が上側の消磁コイル5と磁気テープリール1の搬送路との間に位置するように設定される。下側コンベア14も同様に、無端環状のコンベアベルト18が複数のガイドローラ22、22…で支持されることにより構成され、コンベアベルト18が下側の消磁コイル6と磁気テープリール1の搬送路との間に位置するように設定される。
【0013】
上側コンベア12と下側コンベア14の長さは、磁気テープリール1の供給、排出を考慮した場合より、上側コンベア12より下側コンベア14を長く設けることが好ましい。ただし、磁気テープリール1の供給、排出手段によっては、この逆の構成も採用し得る。
【0014】
上側コンベア12の長さは、図2に示されるように、交流磁界強度が最大値に対し80%減衰する箇所より長く設けることが、確実に消磁するために好ましい。なお、上側コンベア12を下側コンベア14より長く設ける構成の場合には、下側コンベア14の長さをこのように設けることが好ましい。
【0015】
図示のように、上側コンベア12と下側コンベア14とで磁気テープリール1を挟みつけながら搬送するので、磁気テープリール1と消磁コイル5又は6との接触を物理的に防ぐことができる。上側コンベア12と下側コンベア14とで磁気テープリール1を挟みつける挟持力は特に制限はないが、0.5〜5kg程度の範囲で好適な挟持ができる。
【0016】
上側コンベア12と下側コンベア14の搬送速度は同一に設定することが、コンベアベルト16、18と磁気テープリール1とのスリップを防ぐ点で好ましい。上側コンベア12と下側コンベア14の搬送速度は、印加される交流磁界の強度にもよるが、5〜10m/分の範囲が好適に採用できる。ただし、この範囲以外でも制限はない。
【0017】
図3は、本発明の磁気テープリールの消磁方法に使用される磁気テープリールの消磁装置10の他の例の構成図である。なお、図1と同一・類似の部材については、同様の符号を附しその説明を省略する。同図の構成において、磁気テープリール1は、搬送ケース4上に載置されず、単体として扱われている。そしてこれに対応すべく、上側の消磁コイル5と下側の消磁コイル6とのギャップ間隔も最適値に設定されている。このような構成であっても、同様に、欠点を生じずに確実に消磁することができ、製品歩留りを向上させることができる。
【0018】
図4は、本発明の磁気テープリールの消磁方法に使用される装置の更に他の例の要部構成図であり、平面図により図示している。同図においては、コンベア装置に代えて直動方式のサイドガイド装置30が採用されている。
【0019】
サイドガイド装置30は、左側サイドガイド32、右側サイドガイド34、図示しない搬送手段(X方向移動手段に相当)、サイドガイド挟持移動手段(Y方向移動手段に相当)及びテーブル50より構成される。なお、左右の別は、搬送方向下流に向かって称している。
【0020】
同図において、(a)は、磁気テープリール1が左右のサイドガイド32、34により挟持されながら搬送されている状態を示し、(b)は、磁気テープリール1が搬送された後に、左右のサイドガイド32、34から開放された状態を示し、(c)は、(b)のA−A線断面図である。
【0021】
なお、理解の便宜のため、同図(a)、(b)において、テーブル50の図示は省略されている。このテーブル50は、消磁コイル6と干渉する箇所には設けられていない。このような箇所にテーブル50が設けられなくても、この消磁コイル6の部分及びその前後では、左右のサイドガイド32、34が磁気テープリール1を挟持しながら一定の速度で移動していることより、問題は生じない。
【0022】
左側サイドガイド32、右側サイドガイド34には、それぞれ磁気テープリール1の外周部と略同一の曲率をもった凹陥部36、38が形成されており、凹陥部36、38の上下には鍔部40、40及び42、42が形成されている。
【0023】
このような構成のサイドガイド32、34によれば、左右の凹陥部36、38により磁気テープリール1の前後方向(X方向)及び左右方向(Y方向)の動きが拘束され、上下の鍔部40、40及び42、42により上下方向(Z方向)の動きが拘束される。したがって、磁気テープリール1と消磁コイル5又は6との接触を防ぐことができる。
【0024】
以下、サイドガイド装置30の動作について説明する。左右のサイドガイド32、34が同図(b)、(c)に示される開放状態にあるときに、テーブル50の供給位置に磁気テープリール1が供給される。次に、左右のサイドガイド32、34が同図(b)に矢示される方向に動き、同図(a)に示される挟持状態となる。
【0025】
この状態で、テーブル50が下方(Z方向)に退避するとともに、左右のサイドガイド32、34が同図(a)に矢示される方向に一定速度で動き、磁気テープリール1は搬送路上において搬送される。左右のサイドガイド32、34が所定距離移動した後、テーブル50が上昇し(Z方向に移動)、磁気テープリール1を支持し、その後左右のサイドガイド32、34が移動し、同図(b)に示される状態になる。
【0026】
次に、左右のサイドガイド32、34は搬送方向(X方向)に移動した距離だけ反対方向に後退し、次の磁気テープリール1を取りに行く。同時に、消磁が終了した磁気テープリール1は図示しない排出手段により、次工程に移動される。
【0027】
このように、いわゆる尺取虫方式で磁気テープリール1を左右のサイドガイド32、34により消磁コイルの間を通過させることができ、その際に、磁気テープリールと消磁コイルとの接触を防ぐことができる。
【0028】
以上、本発明に係る磁気テープリールの消磁方法の実施形態の各例について説明したが、本発明は上記実施形態の各例に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0029】
たとえば、本実施形態では、コンベア12、14又はサイドガイド装置30により磁気テープリール1が搬送されているが、これ以外の手段、たとえば、エアフロート手段等を磁気テープリール保持手段として採用する構成であってもよい。
【0030】
また、各装置の細部においても、本実施形態に拘束されるものではない。たとえば、サイドガイド装置30において、テーブル50が昇降(Z方向に移動)する構成としたが、これ以外にも、テーブル50が固定され、左右のサイドガイド32、34が昇降する構成であってもよい。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、消磁コイルの間を磁気テープリールが通過する際に、磁気テープリール保持手段により、磁気テープリールと消磁コイルとの接触を防ぐことができる。これにより、抗磁力の高い磁気テープ製品であっても、欠点を生じずに確実に消磁することができ、製品歩留りを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気テープリールの消磁方法に使用される装置の構成図
【図2】同要部構成図
【図3】本発明の磁気テープリールの消磁方法に使用される装置の他の例の構成図
【図4】本発明の磁気テープリールの消磁方法に使用される装置の更に他の例の構成図
【図5】従来例の磁気テープリールの消磁方法に使用される装置の構成図
【符号の説明】
1…磁気テープリール(パンケーキ)、2…ハブ、3…磁気テープ、4…搬送ケース、5…消磁コイル(上側)、6…消磁コイル(下側)、10…磁気テープリールの消磁装置、12…上側コンベア、14…下側コンベア
Claims (1)
- 対向して配されるとともに、交流磁界を発生させている一対の消磁コイルの間を、磁気テープがロール状に巻回された磁気テープリールを通過させることにより該磁気テープリールの消磁を行う磁気テープリールの消磁方法において、
前記磁気テープリールを保持しつつ所定速度で移動する磁気テープリール保持手段により、該磁気テープリールと前記消磁コイルとの接触を防ぐことを特徴とする磁気テープリールの消磁方法。
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