JP3845774B2 - 船舶用座席の免震装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、船体の揺動に伴って乗員用の座席が揺れるのを防ぐ船舶用座席の免震装置に関し、特に、モータボートや釣り船などのように波浪で船体のローリングやピッチング等を起こし易い小型船への使用に適する船舶用座席の免震装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、波浪による船体のローリングやピッチング等を絶縁して水平状態を保持する必要のある部所への揺れの伝達を断つた装置としては、特許出願人が先にフローティングキャビン艇として提案した特開平4−208689号公報に示されるような手段が既に知られている。
【0003】
すなわち、このものは、船体内部に作った球形凹部の内側に水を満たして重心位置の低いフロート体を浮かべ、当該フロート体を船体に対してローリングおよびピッチング方向に揺動自在に支持すると共に、上記フロート体を介してキャビンを船体に対し常に水平状態に保って支持するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような水平方向維持手段にあっては、船体の内部にフロート体を浮かべて水平方向維持物体であるキャビンを支持する必要があるために、装置が大掛かりとなるばかりでなくシステム全体の構成が著しく複雑となる。
【0005】
また、その他にも、フロート体を組み込むことができるように船体自体を特種の構造に作ってやる必要があることから、既に出来上がっている船舶に対して後から組み付けてやることがなかなかに難しく、特に、モータボートや釣り船などの小型船にあっては、装着スペース上の理由からもその組み付けが困難であるという問題点を有する。
【0006】
したがって、この発明の目的は、小型でしかも簡素なシステムを用いて既存船舶への後付けと小型船への組み付けを可能にすると共に、製作および施工の容易なこの種の船舶用座席の免震装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の手段は、船体と乗員用の座席の対向面を互に適応する凹凸面とするか或いは少なくとも一方を凹面または凸面として形成し、かつ、船体に対し乗員用の座席を所望の方向へと揺動可能に支持した船舶用座席の免震装置において、座席側に傾斜センサを設置し、前記船体と座席との間に座席の前後方向に向けて減衰特性切換装置を内蔵した一対の油圧ダンパをそれぞれ取り付け、前記減衰特性切換装置が油圧ダンパを伸側でハード、圧側でソフトにするポジションと、伸側でソフト、圧側でハードにするポジションとを有し、船体の傾き方向に応じた上記傾斜センサからの揺れ信号を上記減衰特性切換装置に入力して当該減衰特性切換装置を上記いずれかのポジションに切り換えて油圧ダンパの減衰特性をハード又はソフトに切換制御することを特徴とするものである。
この場合、油圧ダンパがストローク長さを機械的制限できる機構を備え、上記船体側の対向面の前後両端には座席側の対向面に対向する弾性材料からなるストッパ体を設置し、同じく座席側の対向面の前後両端には船体側の対向面に対向する他のストッパ片を取り付けるのが好ましい。
同じく、乗員用の座席を船体側に設けた支軸に対して揺動自在に垂設し、当該支軸を通して乗員用の座席を船体に対し所望の方向へと揺動可能に支持しても良い。
【0008】
すなわち、上記のように構成することで、波浪により船体がローリングやピッチングを起こして座席が傾こうとしたとすると、当該座席の傾こうとする方向を傾斜センサが検出して油圧ダンパの減衰特性切換装置を制御操作し、座席が船体の揺れに対し相対的に動き易いように油圧ダンパの減衰力特性を切り換える。
【0009】
これにより、船体の傾きに対して座席を水平に近い状態で動かし易くなることから、簡単な装置を用いて波浪による乗員用の座席の揺れを低減することができることになる。
【0010】
かくして、小型でかつ簡素なシステムを用いて既存船舶への後付けと小型船への組み付けを可能にすると共に、製作および施工の容易なこの種の船舶用座席の免震装置を提供することが可能になるのである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に示す幾つかの具体例に基づいて説明していくことにする。
【0012】
図1において、船体(図示省略)側には、前後方向へと向う軸線周りに上面を円筒状の凹面1としたベースブロック2をそれぞれ必要とする座席設置場所に応じて取り付けてある。
【0013】
一方、乗員が座るための座席3(ここでは、図2のように、釣り船等で多く用いられている長椅子を例示する)の下方には、船体側におけるベースブロック2の円筒状の凹面1に適合する同じく円筒状の凸面4を下面にもったベースプレート5を配置し、これらベースプレート5を適宜数の脚柱6により各座席3へと固定して取り付け、かつ、必要によっては、当該脚柱6によって座席3とベースプレート5の連結部分の角度を自由に調整できるようにしてやる。
【0014】
座席3側のベースプレート5は、下面の円筒状をした凸面4と船体側のベースブロック2における上面の円筒状の凹面1との間に所定の間隔を保って平行に配置した適数本のローラからなるロールアイソレータ7を挟んで前後方向へと容易に動き得るようにして載置してある。
【0015】
そして、ベースブロック2とベースプレート5との両側に亙って図2に示すように、減衰特性切換装置8を内蔵した油圧ダンパ9の両端をそれぞれ座席3の前後方向に向けて取り付け、かつ、座席3側のベースプレート5に当該油圧ダンパ9の減衰特性切換装置8を制御動作する傾斜センサ10を設置したのである。
【0016】
なお、上記した油圧ダンパ9としては、ストローク長さを機械的に制限できる機構を備えたものを用い、任意のストローク位置で油圧ダンパ9の伸縮動作を制限することで船体に対する座席3の揺れ幅を規制することができるようにしている。
【0017】
また、これと併せて、船体側におけるベースブロック2の凹面1の両端には弾性材料で作ったストッパ体11を設置すると共に、これらストッパ体11と対応して座席3側におけるベースプレート5の凸面4の内方端にストッパ片12を取り付け、これらストッパ体11とストッパ片12の衝合により船体と座席3との間の過大な揺れを制限しつつ衝撃の発生を吸収するようにしてある。
【0018】
かくして、上記のように構成することで、波浪により船体がローリングを起こして座席3が傾こうとしたとすると、当該座席3の傾こうとする方向を傾斜センサ10が検出する。
【0019】
この場合において、傾斜センサ10としては、図3に示すように、ボール13を導電部材として座席3が前のめりになるように動いたときに例えばプラス端子14と接触し、また、逆の向きに動いたときにはマイナス端子15へと接触してコモン端子16の導通を切り換え、油圧ダンパ9の減衰特性切換装置8を正逆二様に選択切換するところの低コストの構造のものを用いている。
【0020】
そして、この傾斜センサ10からの揺れ信号を図4の系統図に示すように、駆動回路17を通して油圧ダンパ9に内蔵した減衰特性切換装置8へと入力し、当該揺れ信号に基いて座席3が船体の揺れに対し相対的に動き易くなるように油圧ダンパ9の減衰力特性を切換制御する。
【0021】
これにより、座席3が前のめりになるように動いて傾斜センサ10がそれをプラス信号として検知すると、駆動回路17を通して油圧ダンパ9の減衰特性切換装置8を図5に示す操作図のようにRポジションへと切り換え、当該油圧ダンパ9の減衰特性を伸側ハードで圧側ソフトに制御する。
【0022】
また、座席3が逆に動いてマイナス信号を検知した場合には、駆動回路17を通して油圧ダンパ9の減衰特性切換装置8を図5に示すCポジションへと切り換え、油圧ダンパ9の減衰特性を伸側ソフトで圧側ハードとなるように正逆二様に切換制御する。
【0023】
このようにして、油圧ダンパ9の伸側および圧側減衰特性を船体の傾き方向に応じてRポジションまたはCポジションの状態に保ち、油圧ダンパ9が図6に示す減衰特性を発揮して何れにしても座席3を水平方向へと動き易くし、当該座席3に傾きが生じようとするのを極力抑えることになる。
【0024】
以上、図1から図6を用いて釣り船等で多く使用されている長椅子にこの発明を適用した場合を例にとって実施の形態を述べてきたが、図7および図8に示すように、モータボート等の個々に独立した座席3aにも適用し得ることは勿論である。
【0025】
特に、この場合にあっては、船体側のベースブロック2aと座席側のベースプレート5aの対向面を凹凸状の球面1a,4aとし、かつ、それらの間に介装するアイソレータをロールアイソレータ7からボールアイソレータ7aに変更すると共に、油圧ダンパ9と傾斜センサ10を直角方向に加えて配置してやることにより船体のピッチングに対しても対処し得るようにすることができる。
【0026】
なお、上記した各実施の形態にあっては、船体側のベースブロック2,2aと座席3,3a側のベースプレート5,5aの対向面の両方をそれぞれ円筒状の凹凸面1,4或いは凹凸状の球面1a,4aとしたが、何れか一方の対向面を円筒状の凹凸面か球面として他方の対向面をフラット面として形成するようにしてもよい。
【0027】
さらに、油圧ダンパ9についても、ベースブロック2,2aとベースプレート5,5aとの間に亙って介装するようにしてきたが、例えば、図9のように座席3,3aに沿ってその後方または側方の船体部分に壁等の固定部分18がある場合には、これらベースプレート5,5aと壁等の固定部分18との間に亙って油圧ダンパ9を介装するようにしてもよい。
【0028】
なお、これまで述べてきた実施の形態にあっては、船体に対して座席3,3aをロールアイソレータ7或いはボールアイソレータ7aで揺動自在に支持してきたが、このようにする代わりに、図10の実施の形態に示すように、例えば、船体側に設けた支持ポール19に座席3,3aを支軸20で回動自在に軸支し、これら座席3をブランコ状に吊り下げて揺動可能に支持するようにしても同じことを行うことが可能である。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば次の効果が得られる
(1)請求項1の発明によれば、船体に対して乗員用の座席を水平に近い状態で動き易く支持すると共に、減衰特性切換装置を内臓した油圧ダンパを通して船体側へと結んで座席の動きが規制されるようにしたことにより、自動的に波浪による乗員用の座席の揺れを低減することができる。
(2)波浪により船体がローリングやピッチングを起こして座席が傾こうとしたとすると、当該座席の傾こうとする方向を傾斜センサが検出して油圧ダンパの減衰特性切換装置を制御操作し、座席が船体の揺れに対し相対的に動き易いように油圧ダンパの減衰力特性を切り換える。このようにして、油圧ダンパの減衰特性を船体の傾き方向に応じたポジションの状態に保ち、油圧ダンパがハード又はソフトの減衰特性を発揮して座席を水平方向へと動き易くし、当該座席に傾きが生じようとするのを極力抑えることになる。
【0030】
しかも、装置として小型でかつ簡素なシステムを用いることで既存の船舶への後付けと小型船への組付を可能にすると共に、製作および施工の容易な船舶用座席の免震装置を提供することが可能になる。
【0031】
また、請求項2の発明によれば、油圧ダンパとしては、ストローク長さを機械的に制限できる機構を備えたものを用い、任意のストローク位置で油圧ダンパの伸縮動作を制限することで船体に対する座席の揺れ幅を規制することができる。 また、船体側に弾性材料で作ったストッパ体を設置すると共に、このストッパ体と対応して座席側にストッパ片を取り付け、これらストッパ体とストッパ片の衝合により船体と座席との間の過大な揺れを制限しつつ衝撃の発生を吸収することが出来る。
【0032】
さらに、請求項3の発明によれば、船体側に対して乗員用の座席をブランコ状に吊り下げて揺動自在に支持したことにより、請求項2の発明に比べてより一層の製作および施工の容易性を確保しつつ請求項1と同等の効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による免震装置を備えた船舶用座席の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】同上の免震装置を備えた船舶用座席を前からみた正面図である。
【図3】座席の傾き度を検出する傾斜センサの構造例を示す構成図である。
【図4】傾斜センサからの揺れ信号に基いて油圧ダンパの減衰力特性を切り換えるための系統図である。
【図5】座席の傾きを規制する油圧ダンパの減衰特性切換装置の操作状況を示す図である。
【図6】上記における油圧ダンパの各状況での減衰特性の状態を示すグラフである。
【図7】この発明の異なった他の実施の形態の免震装置を備えた船舶用座席の側面図である。
【図8】同じく、同上の免震装置を備えた船舶用座席を前からみた正面図である。
【図9】この発明のさらに異なった他の実施の形態の免震装置を備えた船舶用座席の側面図である。
【図10】さらに異なった構成からなるこの発明の他の実施の形態の免震装置を備えた船舶用座席の側面図である。
【符号の説明】
1 円筒状の凹面
1a 凹状の球面
2,2a ベースブロック
3,3a 乗員用の座席
4 円筒状の凸面
4a 凸状の球面
5,5a ベースプレート
6 脚柱
7 ロールアイソレータ
7a ボールアイソレータ
8 減衰力切換装置
9 油圧ダンパ
10 傾斜センサ
18 船体部分の壁等の固定部分
19 船体側に設けた支持ポール
20 支軸

Claims (3)

  1. 船体と乗員用の座席の対向面を互に適応する凹凸面とするか或いは少なくとも一方を凹面または凸面として形成し、かつ、船体に対し乗員用の座席を所望の方向へと揺動可能に支持した船舶用座席の免震装置において、座席側に傾斜センサを設置し、前記船体と座席との間に座席の前後方向に向けて減衰特性切換装置を内蔵した一対の油圧ダンパをそれぞれ取り付け、前記減衰特性切換装置が油圧ダンパを伸側でハード、圧側でソフトにするポジションと、伸側でソフト、圧側でハードにするポジションとを有し、船体の傾き方向に応じた上記傾斜センサからの揺れ信号を上記減衰特性切換装置に入力して当該減衰特性切換装置を上記いずれかのポジションに切り換えて油圧ダンパの減衰特性をハード又はソフトに切換制御することを特徴とする船舶用座席の免震装置。
  2. 油圧ダンパがストローク長さを機械的制限できる機構を備え、上記船体側の対向面の前後両端には座席側の対向面に対向する弾性材料からなるストッパ体を設置し、同じく座席側の対向面の前後両端には船体側の対向面に対向する他のストッパ片を取り付けた請求項1に記載の免震装置。
  3. 乗員用の座席を船体側に設けた支軸に対して揺動自在に垂設し、当該支軸を通して乗員用の座席を船体に対し所望の方向へと揺動可能に支持した請求項1又は2に記載の船舶用座席の免震装置。
    が出来る。
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