JP3845186B2 - 自動車用冷房装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷凍サイクル中に冷媒膨脹用のオリフィス部を有する自動車用冷房装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用冷房装置の中には、温度式膨脹弁の代わりに弁開度の調整機能のないオリフィス部を用いて冷凍サイクルを構成し、冷媒の絞り膨脹を行うようにしたものがある。この種の自動車用冷房装置の冷凍サイクル1は、図4に示すように、図示しない走行用のエンジンによってベルト等を介して駆動されるコンプレッサ2と、このコンプレッサ2によって圧縮され高温高圧となった冷媒を走行風等により冷却し凝縮液化させるコンデンサ3と、コンデンサ3からの冷媒を絞り膨脹させるオリフィス部4と、冷媒を蒸発させて車室内に吹き出す空気を冷却するエバポレータ5と、余剰冷媒の貯溜と気液の分離を行いガス冷媒のみをコンプレッサ2に戻すアキュムレータ6とから構成されている。
【0003】
固定オリフィスシステムは冷媒膨脹用に絞り度(開度ともいう)が固定の固定オリフィス(たとえば、細径チューブからできているオリフィスチューブをオリフィス部4としたもの)を採用したシステムであり、通常、最大冷房時を基準に設計されている。すなわち、エバポレータ5内の冷媒圧力を最大冷房時に必要とする程度の低い圧力に維持しうる絞り度となるようにオリフィスチューブの内径を設計するとともに、最大冷房時に必要とする冷媒流量をエバポレータ5内に流すようにしている。かかるシステムは、構造が簡単で製造コストが抑えられるというメリットがあるため、欧米の一部のカーエアコンで用いられている。
【0004】
ところが、固定オリフィスシステムは、一般に、通常走行時(中高速走行時)を設計基準とし、この基準時で最大冷房状態となる冷媒流量が得られるようにオリフィスチューブの内径を設定してあるため、性能面において低負荷時、高速走行時などの冷房能力は十分に備えるが、元来冷媒流量調節機能がないため、高負荷時、アイドリング時などの冷房能力が不足するという欠点がある。かかる欠点は、交通渋滞などがない環境では実際上それほど問題とはならないが、交通渋滞などが頻繁に起こる環境では重大な問題となる。
【0005】
そこで、アイドリング時の冷力不足を補い、高速走行からアイドリングまでの車速の全範囲に対応して冷房能力を維持するため、入口と出口の圧力差を感知して冷媒流量を二段階に制御する冷媒膨脹システム(ダブルオリフィスシステム)が考案されている。このダブルオリフィスシステムの作動原理は、径違いのオリフィスを環境条件によって使い分けることで冷媒流量の調整を行うというものである。これにより、温度式膨脹弁を用いたシステムに代わる安価なシステムを提供することができる。
【0006】
このようなダブルオリフィスシステムとして、たとえば、図5に示すようなものが提案されている(実開平2−73569号公報)。
【0007】
このオリフィス部4aは、コンデンサ3と連通する入口ポート11とエバポレータ5と連通する出口ポート12とが形成されたケーシング10を有し、このケーシング10内部の入口ポート11側には弁収容室13が形成されている。この弁収容室13には第1オリフィスチューブ17を取り付けた弁体14が進退自在に嵌挿されている。この弁体14はスプリング15によって高圧側に常時バネ付勢されている。弁体14とケーシング10内周壁に設けた弁口18との間には、弁体14の進退移動によって開閉される冷媒流通路であるスロート部19が形成されている。また、弁収容室13と低圧側回路を仕切る隔壁部20には、両ポート11、12を連通し第1オリフィスチューブ17よりも大きい径を持った第2オリフィスチューブ21が貫通固定されている。高速走行時などコンデンサを通過する走行風が多くコンデンサでの冷媒冷却凝縮量が多いときや、冷房の負荷の少ないときのように高圧側回路と低圧側回路の圧力差が所定値以下であるとき、弁体14はスロート部19を開き、入口ポート11に圧送されてきた冷媒はスロート部19および第2オリフィスチューブ21を通って絞り膨脹され、出口ポート12に噴出される。一方、渋滞時のアイドリング時などコンデンサを通過する走行風が少なくコンデンサでの冷媒凝縮量が少ないときや、冷房の負荷の多いときのように前記圧力差が所定値以上であるときには、弁体14はスロート部19を閉じ、入口ポート11に圧送されてきた冷媒は第1オリフィスチューブ17を通って絞り膨脹される。これにより、エバポレータ5内の冷媒の圧力が十分に低下され、冷媒の蒸発温度が低下するので、アイドリング時の冷力不足が解消される。なお、同図中、16はケーシング10内周壁の複数箇所に設けられたストッパである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のダブルオリフィスシステム(オリフィス部4a)の構造にあっては、第1オリフィスチューブ17は単に弁体14の中心軸に下流側に延伸して接続されているだけであり、下流側に位置するその先端部(冷媒出口側)17aは支持のないいわばフリーの状態となっているので、冷媒通過時に第1オリフィスチューブ17の先端部17aが振れて冷媒の流れが安定しなくなるおそれがある。
【0009】
また、上記のように、高速走行時などにはスロート部19は開いており、入口ポート11に圧送されてきた冷媒の大部分はスロート部19を通過して弁収容室13に噴出されて第1段目の絞り膨脹が行われ、さらに、第2オリフィスチューブ21を通過して出力ポート12側に向かって噴出されて第2段目の絞り膨脹が行われ、一方、アイドリング時などにはスロート部19は閉じており、入口ポート11に圧送されてきた冷媒は第1オリフィスチューブ17のみを通過して絞り膨脹が行われることになっているが、実際には後者の場合においても、冷媒がスロート部19で絞られ圧力降下を起こす可能性がある。よって、いずれの場合においても、冷媒がスロート部19で圧力降下を起こす可能性があるため、圧力差による流量制御が難しくなり、言わば狙った制御ができないおそれがある。
【0010】
本発明は、従来のダブルオリフィスシステムにおける上記課題に着目してなされたものであり、簡単な構造で温度式膨脹弁と同等の性能を持つ冷媒流量調整機能を持ったオリフィス部を有する自動車用冷房装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、冷凍サイクルの高圧側回路から低圧側回路に向かって循環しエバポレータに流入する冷媒を絞り膨脹させるオリフィス部を設けてなる自動車用冷房装置において、前記オリフィス部は、開口面積が入口側から出口側に向かって連続的に減少する溝が形成された第1部材を有し、該第1部材にばね付勢された第2部材を前記溝に沿う貫通穴に摺動自在に嵌挿して、前記溝の一部として前記第1部材と前記第2部材との間に形成される隙間を冷媒の絞り膨脹を行うオリフィスとして機能させてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の構成によると、溝の一部として第1部材と第2部材との間に形成される隙間がオリフィスとして機能する。溝は開口面積が入口側から出口側に向かって連続的に減少しているため、自動車の走行状態などによって決まる高圧側回路と低圧側回路との圧力差によって第2部材が進退移動することにより、前記隙間(オリフィス)の長さと径が変化して、オリフィスの絞り度が連続的に変わることになる。
【0013】
すなわち、通常走行時などにおいては高圧側回路の圧力が低く、高圧側回路と低圧側回路との圧力差が小さいので、第2部材は後退位置にある。このとき、前記隙間(オリフィス)の絞り度は最小となっている。この状態で、当該オリフィス部の入口に圧送されてきた冷媒は、オリフィスとしての前記隙間(溝の一部)を通過して絞り膨脹が行われ、当該オリフィス部の出口に噴出される。
【0014】
一方、アイドリング時などにおいては高圧側回路の圧力が上昇し、高圧側回路と低圧側回路との圧力差が増大するため、第2部材はばねの弾撥力に抗して徐々に低圧側に向かって前進し、これに伴い前記隙間(オリフィス)の絞り度は徐々に大きくなって最大に達する。この状態で、当該オリフィス部の入口に圧送されてきた冷媒は、オリフィスとしての前記隙間(溝の一部)を通過して絞り膨脹が行われ、当該オリフィス部の出口に噴出される。
【0015】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、前記第2部材は断面が円形以外の形状をしていることを特徴とする。
【0016】
本発明の構成によると、第2部材の断面が円形以外の形状をしているため、第2部材は軸心方向にのみ移動可能で、軸心回りの回転や振動は抑制されることになる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を使って本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施の形態に係る自動車用冷房装置に使用されるオリフィス部の構成部品を示す分解斜視図である。また、図2は同オリフィス部の縦断面模式図であり、同図(A)は通常走行時における状態を示し、同図(B)はアイドリング時における状態を示している。
【0019】
このオリフィス部4bは、図4に示す冷凍サイクル1において冷媒を断熱膨脹させて低温低圧の霧状冷媒にする機能を有し、エバポレータ5に案内する冷媒の流量および圧力を入口と出口の圧力差を感知して無段階に制御する装置であって、冷媒配管に取り付け固定される第1部材30と、この第1部材30内に軸心方向に摺動(スライド)自在に嵌挿される第2部材40と、スプリング(弾性体)50と、このスプリング50のばね付勢を規制するスプリングストッパ60と、第1部材30の外周部の冷媒の流れをシールするOリング70と、第2部材40の脱落を防止するためのキャップ(蓋)部材80とで構成されている。なお、このオリフィス部4bは、たとえば、Oリング70を第1部材30に取り付けた状態で所定の適当な冷媒配管の内部に圧入して使用される。
【0020】
第1部材30には、半円柱形状の第2部材40が嵌挿される、開口断面が半円形の貫通穴31と、半径が入口側から出口側に向かって直線的に減少した、開口断面が半円形のオリフィス溝32とが形成されている。貫通穴31の半円の中心とオリフィス溝32の半円の中心とは共通の軸心上に設けられている。ここで、入口側とは、当該オリフィス部4bの冷媒入口側であって高圧側回路の一部をなすコンデンサ3と接続され、出口側とは、当該オリフィス部4bの冷媒出口側であって低圧側回路の一部をなすエバポレータ5と接続されている。
【0021】
第2部材40は、上記のように断面が半円形の半円柱形状をしており、第1部材30の貫通穴31に軸心方向に摺動自在に嵌挿されている。このように、第2部材40の断面形状を円形以外の形状(ここでは、半円形)とすることで、第2部材40は、軸心方向にのみ移動可能となり、軸心回りの回転や振動が抑制されるので、作動の安定性が得られることになる。
【0022】
第2部材40は、第1部材30の貫通穴31の入口側(高圧側)端部に摺動自在に嵌挿され、第1部材30の貫通穴31の出口側(低圧側)端部にはスプリングストッパ60が圧入により嵌挿、固定されている。スプリングストッパ60には、たとえば、図示しないスリットが設けられ、このスリットを通って冷媒が通過する。スプリング50は、第2部材40とスプリングストッパ60との間に介装されている。なお、第2部材40が後退限位置にあるとき(図2(A)参照)スプリング50の弾撥力によって第2部材40が後退限位置からさらに高圧側に移動するのを阻止するため、適当な機構、例えば、開口部81を有するキャップ部材80が取り付けられている。
【0023】
冷媒の絞り膨脹を行うオリフィスは、オリフィス溝32の一部として第1部材30と第2部材40の間に形成される隙間33によって構成される。この隙間33は、第2部材40がスライドすることで、軸心方向の長さaと先端位置の開口面積(オリフィス径b)が変化して、オリフィスとしての絞り度が連続的に変化するようになっている。つまり、可変オリフィスが構成されることになる。
【0024】
第2部材40は、スプリングストッパ60との間に介装されたスプリング50によって高圧側、つまり冷媒の流れの上流側の方向に常時ばね付勢されており、この第2部材40が進退移動することによってオリフィスとして機能する前記隙間33(以下単に「オリフィス」という)の絞り度が一定の範囲で連続的に可変される。つまり、第2部材40が後退限位置にあるとき、図2(A)に示すように、スプリング50は定常状態を保ち、第2部材40は静止状態にあり、オリフィス33の絞り度は最小(オリフィス径b1 は最大)となっているが、この状態から第2部材40が前進移動すると、スプリング50が徐々に縮められ、オリフィス33の絞り度も徐々に大きくなり、図2(B)に示すように、第2部材40が前進限位置に達すると、オリフィス33の絞り度は最大(オリフィス径b2 は最小)となる。すなわち、第2部材40が後退限位置から前進限位置に移動することで、オリフィス33の絞り度は最小から最大まで(オリフィス径は最大から最小まで)直線的に変化するようになっている。
【0025】
このように、オリフィス部4bは第1部材30と第2部材40を組み合わせた無段階可変構造をしており、第2部材40は、入口と出口の圧力差とばね荷重とによって作動(可動)し、アイドリング時などの凝縮圧力上昇時には低圧側、つまり冷媒の流れ方向に前進移動して、オリフィス33の絞り度を大きくするようになっている。
【0026】
すなわち、第2部材40によるオリフィス33の切換えは、第2部材40に作用する三つの力、つまり高圧側回路の圧力と、スプリング50の弾撥力と、低圧側回路の圧力によって決まる貫通穴31内の圧力とのバランスによってなされる。特に、本実施の形態では、高圧側回路の圧力(コンデンサ3における凝縮圧力)と低圧側回路の圧力(エバポレータ5における蒸発圧力)との圧力差が所定値以上になると、第2部材40がスプリング50の弾撥力に抗して前進移動を開始してオリフィス33を可変するように、スプリング50の弾撥力の値を設定してある。ここで、コンデンサ3における冷媒の凝縮圧力とは、コンプレッサ2の能力による循環冷媒流量とコンデンサ3での熱負荷とによって決まるものであり、エバポレータ5における冷媒の蒸発圧力とは、前記循環冷媒流量とエバポレータ5での熱負荷とによって決まるものである。
【0027】
オリフィス33の絞り度が最小および最大のときのオリフィス長a1 、a2 およびオリフィス径b1 、b2 の各値をどのように設定するかは、通常走行時(たとえば、中高速走行時)およびアイドリング時でそれぞれ最大冷房時に必要とされるエバポレータ5の冷媒圧力および循環冷媒流量が得られるように設定されている。たとえば、オリフィス33の絞り度が最小のときのオリフィス径(最大値)はφ1.45〜1.8mmに設定され、システムとしてのオイル戻りなどの信頼性をも含めて一般の固定オリフィスシステムと同等の性能を有する径とされている。
【0028】
また、スプリング50の弾撥係数や第2部材40のスライド量も、要求性能に応じて適当に設定されている。
【0029】
次に、作用を説明する前に、自動車用冷房装置1の作動原理を図3に示すモリエル線図に基づいて簡単に説明しておく。
【0030】
図中実線で示す冷凍サイクルは、自動車が通常に走行している場合を示しており、コンプレッサで断熱圧縮された高温高圧のガス冷媒(A位置)は、コンデンサ3にて外部に熱を放出して中温高圧の液冷媒(B位置)となる。この液冷媒は、オリフィス部4bを通過して絞り膨張が行われて低温低圧の霧状冷媒(C位置)となる。この霧状冷媒は、エバポレータ5にて空気と熱交換して該空気を冷却し、過熱蒸気(D位置)となってコンプレッサ2に吸引される。このとき、エンジンによって駆動されるコンプレッサ2の回転数が高いため、冷媒の圧送・吸引量(つまり、循環冷媒流量)は多く、吸入圧は低くなる。また、コンデンサ3に当たる風の量が多いため、冷媒は十分に凝縮され、凝縮圧力も低くなる。
【0031】
一方、図中破線a→b→c→dで示す冷凍サイクルは、エンジンがアイドリング状態にある場合を示している。このとき、エンジンによって駆動されるコンプレッサ2の回転数が低いため、冷媒の圧送・吸引量(つまり、循環冷媒流量)は少なく、吸入圧は高くなる。また、コンデンサ3に当たる風の量が少ないため、冷媒は十分に凝縮されず、凝縮圧力も高くなる。
【0032】
したがって、アイドリング時において、高圧側回路と低圧側回路との圧力差ΔP2 は、通常走行時の圧力差ΔP1 と比べて一般的に大きくなっている。
【0033】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0034】
まず、通常走行時にあっては、高圧側回路の冷媒圧力が低く、オリフィス33を通過する前後の冷媒の圧力差が小さい、つまり高圧側回路と低圧側回路との圧力差ΔP1 が所定値以下であるため、図1(A)に示すように、スプリング50は定常状態を保ち、第2部材40は後退限位置に静止している。つまり、オリフィス33通過後の貫通穴31内の冷媒圧力とスプリング50の弾撥力との合成力による高圧側方向への力の方が、高圧側回路の圧力によって第2部材40に作用する低圧側方向への力よりも大きい状態となっている。このとき、オリフィス33の絞り度は最小(オリフィス径b1 は最大)となっている。
【0035】
したがって、オリフィス部4bの入口に圧送されてきた冷媒は、絞り度が最小であるオリフィス33(オリフィス溝32の一部)を通過して絞り膨脹が行われた後、オリフィス溝32の残りの部分、スプリング50が収容されてる貫通穴31の部分、およびスプリングストッパ60のスリットを通って該オリフィス部4bの出口に噴出される。そして、出口に噴出した冷媒は、冷媒配管を通ってエバポレータ5に送られ、空気と熱交換を行って該空気を冷却する。
【0036】
このように、通常走行時には、オリフィス33の絞り度が最小(オリフィス径b1 は最大)の状態で冷媒の絞り膨張が行われるので、エバポレータ5に達する冷媒の流量が多くなり、所定の冷房性能を発揮することができる。
【0037】
一方、このような状態から減速したとえば渋滞などに会ってアイドリング状態になった場合には、上記の原理により、高圧側回路の圧力が上昇し、高圧側回路と低圧側回路との圧力差が増大するため、高圧側回路の圧力によって第2部材40に作用する低圧側方向への力の方が、オリフィス33通過後の貫通穴31内の冷媒圧力とスプリング50の弾撥力との合成力による高圧側方向への力よりも大きい状態となり、第2部材40が低圧側の方向へ前進移動を始めて、スプリング50が徐々に縮められ、オリフィス33の絞り度も徐々に大きくなる。そして、図1(B)に示すように、第2部材40が前進限位置に達すると、オリフィス33の絞り度は最大(オリフィス径b2 は最小)となる。
【0038】
したがって、オリフィス部4bの入口に圧送されてきた冷媒は、絞り度が増大したオリフィス33(オリフィス溝32の一部)を通過して絞り膨脹が行われた後、オリフィス溝32の残りの部分、スプリング50が収容されてる貫通穴31の部分、およびスプリングストッパ60のスリットを通って該オリフィス部4bの出口に噴出される。そして、出口に噴出した冷媒は、冷媒配管を通ってエバポレータ5に送られ、空気と熱交換を行って該空気を冷却する。
【0039】
このようにして、アイドリング時には、オリフィス33の絞り度が最大(オリフィス径b2 は最小)の状態で冷媒の絞り膨脹が行われるので、エバポレータ5内の冷媒の圧力が低くなる。このように冷媒の蒸発圧力が低い状態の下では、冷媒の蒸発温度も低くなり、自動車用冷房装置の冷房性能は比較的高い値を示すことになるので、アイドリング時の循環冷媒流量の少なさが補われ、所望の冷房能力が維持されることになる。
【0040】
したがって、オリフィス部を有する自動車用冷房装置においても、通常走行時のみならずアイドリング時にも所望の冷房能力を維持することが可能となる。
【0041】
このように、本実施の形態によれば、従来のように通常の固定オリフィスと開閉機構を有するオリフィスとを組み合わせたシステムにより流量制御を行うのではなく、オリフィス33の絞り度を最小から最大まで(オリフィス径を最大径から最小径まで)直線的に変化させる機能を有する無段階制御のシステムとしたので、きめ細かな流量制御が可能となる。
【0042】
また、従来のようにオリフィス切換え用の開閉機構を持たないので、同機構によって発生する急激な圧力変化はなく、冷媒の流れが安定する。また、これにより、作動音、冷媒流動音も抑えられる。
【0043】
さらに、上記したように、第2部材40の断面形状を半円形にすることで、第2部材40の振動や回転を抑制するという効果もある。
【0044】
【発明の効果】
したがって、請求項1記載の発明によれば、圧力差とばね荷重とで第2部材をスライドさせてオリフィスの絞り度を負荷に応じて連続的に変化させる構造としたので、アイドリング時においてエバポレータ内の冷媒の圧力が低下し、この時の循環冷媒流量の少なさを補って、アイドリング時でも所望の冷房能力を維持することができる。このとき、オリフィスの切換えに開閉機構を持たないため、急激な圧力変化がなく、冷媒の流れが安定し、圧力差による所期の流量制御を容易に行うことができるとともに、作動音、冷媒流動音が抑えられる。
【0045】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加え、第2部材の断面形状を円形以外の形状としたので、第2部材の回転や振動が防止され、第2部材の作動の安定性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係る自動車用冷房装置に使用されるオリフィス部の構成部品を示す分解斜視図である。
【図2】 同オリフィス部の縦断面模式図である。
【図3】 冷凍サイクルをモリエル線図上に表したグラフである。
【図4】 オリフィス部を有する自動車用冷房装置の冷凍サイクルの回路図である。
【図5】 従来のオリフィス部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
4b…オリフィス部
5…エバポレータ
30…第1部材
31…貫通穴
32…オリフィス溝(溝)
33…隙間またはオリフィス
40…第2部材
50…スプリング(ばね)
60…スプリングストッパ
70…Oリング
80…キャップ部材
Claims (2)
- 冷凍サイクルの高圧側回路から低圧側回路に向かって循環しエバポレータ(5)に流入する冷媒を絞り膨脹させるオリフィス部(4)を設けてなる自動車用冷房装置において、
前記オリフィス部(4)は、開口面積が入口側から出口側に向かって連続的に減少する溝(32)が形成された第1部材(30)を有し、該第1部材(30)にばね付勢された第2部材(40)を前記溝(32)に沿う貫通穴(31)に摺動自在に嵌挿して、前記溝(32)の一部として前記第1部材(30)と前記第2部材(40)との間に形成される隙間(33)を冷媒の絞り膨脹を行うオリフィスとして機能させてなることを特徴とする自動車用冷房装置。 - 前記第2部材(40)は断面が円形以外の形状をしていることを特徴とする請求項1記載の自動車用冷房装置。
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1997
- 1997-12-08 JP JP33741797A patent/JP3845186B2/ja not_active Expired - Fee Related
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