JP3843383B2 - 写真フィルム用カッター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、写真フィルム用カッターに関し、より具体的には、互いに相対移動可能な一対の刃体を備え、これら一対の刃体の相対移動に応じて両部材の間に挟まれた写真フィルムを切断する写真フィルム用カッターに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の写真フィルム用カッターの刃体は、一般に、焼き入れ処理して硬度を高めた鋼を、前記側面に非常に平滑な面が得られるように研磨加工することによって形成されており、長尺の写真フィルムを短く分断する、写真フィルムのうちの不要な部分、例えば突出部を切り落とす等の目的で用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特に、スプライステープなどで互いに連結されたネガフィルムを印画紙に露光焼付する写真処理装置において、フィルムどうしの幅方向のずれに起因してフィルムの角が形成する突出部を、これが装置の各所に衝突するのを未然に防ぐために同装置の上流部位に付属したカッターで切り落とすと言う目的で写真フィルム用カッターが用いられる場合、切り落とされた小さな写真フィルムの断片(断片の典型的な寸法は、例えば長さが約15mmで幅が約3mm)が自由落下せずに前記カッターの刃体などに付着する傾向が見られた。
そして、この付着現象を放置すれば、付着断片の数が次第に増えて円滑な切断を阻害するという問題、或いは、付着した断片の一部が写真フィルム本体の画像面に貼り付いたまま共に露光部に運ばれて露光操作を阻害すると言った問題が生じる場合があった。
この付着は、切り落とされたフィルム断片が強く帯電していることに起因すると考えられ、切断の際の刃体の動作速度が高く、また、単位時間当たりの切断回数が高いほど付着は著しい傾向がある。従来、上記の付着に対する対策として、除電ブラシをその先端がフィルム面と接触するようにフィルム搬送路に設ける、或いは、エアー等でフィルム断片を吹き飛ばす等の方法が試みられたが、明確な効果が得られず、十分な対策とはなり得なかった。
【0004】
したがって、本発明の目的は、上に例示した従来技術による写真フィルム用カッターの持つ前述した欠点に鑑み、不要な突出部を切り落とす目的に用いても、切り落とされた写真フィルムの断片がカッターの刃体に付着する傾向が少なく、ひいては、刃体に多数付着した断片が円滑な切断を阻害したり、断片が写真フィルム本体の画像面に貼り付いたまま露光部に運ばれると言った懸念の少ない写真フィルム用カッターを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1による写真フィルム用カッターは、
一対の刃体の少なくとも一方に、放電性膜体が貼付されていることを特徴構成としている。
【0006】
このような特徴構成を備えているために、本発明の請求項1による写真フィルム用カッターでは、切り落とされた写真フィルム断片が保有している静電気(すなわち電荷の遍在)が放電性膜体を介して写真フィルム断片外(例えば空中などに放電されるものと考えられる)に放電されるので、この写真フィルム断片が持つ帯電傾向が大幅に減り、写真フィルム断片はその大半がカッターの刃体に付着することなく発生直後に装置の下方に自由落下する。したがって、付着断片がカッターの切断操作を阻害するという問題、或いは、付着した断片の一部が写真フィルム本体の画像面に貼り付いたまま共に露光部に運ばれて露光操作を阻害すると言った問題が著しく減った。
尚、物体(ここでは写真フィルム断片)が保有している静電気が放電性膜体の持つ作用で放電されるには、必ずしも物体が放電性膜体と接触する必要はなく、物体が放電性膜体に近づいただけでも、物体は静電気から解放される。この場合、物体が保有している静電気は空中を介して一旦放電性膜体に移動し(空気中の水分が多ければこの空中移動は特に容易に行われる)、その移動の直後、この放電性膜体から更に空中に放出されるものと考えれる。
【0007】
また、放電性膜体は、切断の最中に一対の刃体の移動に基づいて写真フィルムが放電性膜体に押し付けられる位置に貼付されている構成としておけば、写真フィルム断片が保有している静電気は空気中を飛ぶまでもなく、直接接触によって放電性膜体に移動するので、たとえ空気中の湿度が非常に低い空中放電の生じ難い条件下でも、写真フィルムに発生した静電気(すなわち電荷の遍在)が確実に且つ素早く解消される。
【0008】
具体的には、一対の刃体の各々には、切断の最中に一対の刃体の移動に基づいて、写真フィルムの面と接当しながら互いに交差する刃面が設けられており、放電性膜体は、これら一対の刃面の少なくとも一方に貼付されている構成とすれば、切断時の刃面どうしが交差する際に、写真フィルムが必ず放電性膜体に押し付けられ、写真フィルムに発生した静電気が確実に解消される。
【0009】
一対の刃体は、写真フィルムの本体を支持する第1刃面を備えた第1刃体と、写真フィルムの本体を第1刃面に押し付けながら前記第1刃面と交差することによって、写真フィルムの本体から不要部を切り離す第2刃面を備えた第2刃体であり、放電性膜体が第2刃面に貼付されている構成とすれば、写真フィルムの本体から切り離される不要部と第2刃面に貼付された放電性膜体の間の接当状態が、前記不要部が写真フィルム本体から切り離される直前まで維持されるので、第1刃面のみに貼付された構成とした場合以上に、写真フィルムに発生した静電気が確実に解消される。
【0010】
一対の刃体は、写真フィルムの本体を支持する第1刃面を備えた第1刃体と、写真フィルムの本体を第1刃面に押し付けながら前記第1刃面と交差することによって、写真フィルムの本体から不要部を切り離す第2刃面を備えた第2刃体であり、第1刃体には、第1刃面を形成する表面とこれに対向する裏面とを備えた板状体が設けられており、放電性膜体は、第2刃面の前記交差によって切り離された直後の不要部と接触または極近接可能なように、板状体の裏面に貼付されている構成とすれば、切り離されようとしている不要部は、第2刃面によってこの裏面と交差させられる際に、板状体の裏面に貼付された放電性膜体の端面とも接触または極近接するので、写真フィルムに発生した静電気がこの接触または極近接に基づいてより確実に解消される。
仮に、不要部位が担持している静電気すなわち電荷の偏りの発生機構は、フィルムが剪断によって切断される現象自体に起因していると仮定すれば、切り離されようとしている不要部の剪断直後の端面は、電荷が最も濃厚に偏っている箇所である可能性が高いため、この箇所を放電性膜体と接触または極近接する操作は静電気解消に特に有効と考えられる。
【0011】
板状体の厚さを決めるに当たっては、写真フィルムの本体から切り離される前の不要部位が、第2刃体の第2刃面に貼付された放電性膜体と第1刃体の板状体の裏面に貼付された放電性膜体との双方に同時に接触または極近接するように決めておけば、不要部位に蓄積されていた電荷は、フィルムの不要部位の上面を介して第2刃体の第2刃面上の放電性膜体へ向かう経路と、不要部位の下面または剪断されて出来たばかりの端面を介して第1刃体の板状体の裏面の放電性膜体へ向かう経路と言う複数の放電経路を与えられるので、フィルムの不要部位はより確実に帯電が解消された状態で本体から切り離されて、自由落下率が高まる。
【0012】
第1刃体は写真フィルムを下方から支持する固定刃体であり、第2刃体は第1刃体に対して上方から変位して切断を実施する構成とすれば、写真フィルムは常に一貫してその自重によって第1刃体上に載置された安定した状態で切断が行われる。
【0013】
放電性膜体は、導電性有機繊維を混入させた紙ないし布である構成とすれば、導電性有機繊維を刃体に確実に取り付けることができる。
また、導電性有機繊維を混入させた紙ないし布は本来的に十分な弾性を保有しているので、混入した導電性有機繊維の体積割合が非常に少なく、切断を行わない通常状態では導電性有機繊維が放電性膜体の貼付された刃体と接触していなくても、切断時に刃体の相対移動に基づいて刃体と写真フィルムの間で押し付けられれば、数少ない導電性有機繊維の少なくとも一端が紙ないし布が本来的に持つ弾性変形に基づいて確実に写真フィルムに押し付けられる。その結果、比較的少ない量の導電性有機繊維を用いながら確実な放電手段を提供することができる。
【0014】
導電性有機繊維を部分的に混入させた紙ないし布からなる放電性膜体が両面テープによって刃体に貼付されている構成とすれば、液状の接着剤などを用いて取り付ける場合に比して紙ないし布の持つ弾性を少しも損なうことなく、しかも確実に導電性有機繊維を刃体の面に取り付けることができる。また、一旦取り付けられた導電性有機繊維を新しいものに取り替える操作も容易に行うことができる。
【0015】
本発明によるその他の特徴および利点は、以下図面を用いた実施形態の説明により明らかになるであろう。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明による写真処理装置1の全体が図1に示されており、この写真処理装置1内を各種処理にともなって搬送されるネガフィルム2と印画紙3の搬送経路が、図2に模式的に示されている。この写真処理装置1は、ネガフィルム供給部10と、ネガフィルム2の画像をペーパーマガジン4から引き出された印画紙3に焼き付ける露光部20と、露光部20にて露光済の印画紙3を現像処理する現像処理部30と、現像処理部30にて現像処理された印画紙3を乾燥する乾燥部40と、乾燥された印画紙3を所定長さにカットしてプリント(印画紙3を所定長さにカットしたものをプリント3と称している)として排出するプリント排出部50と、露光部20で使用されたネガフィルム2をカットし、必要の場合はネガシートに挿入して、排出するネガフィルム排出部60と、ネガフィルム排出部60から搬入された1単位(理解し易くするため、ここではこの1単位を、顧客によって注文されたネガフィルム1本分の処理単位を表している1オーダと読み換えてよい)のネガフィルム2とプリント排出部50から搬入された1単位のプリントを仕上がり品として照合し、両物品を組み合わせて、オペレータによる仕上がり品取り出し位置まで搬送する照合搬送手段としてのコンベヤ機構70とを備えている。
【0017】
図3に詳しく示すように、ネガフィルム供給部10には、100本までのネガフィルム2をつなぎ部材の一例であるスプライステープ2Aによってつなぎ合わせたものを巻き取っているネガリール11を2本まで装填可能であり、順次選択されたネガリール11から、ローディングモータ11bによって駆動されるローディングローラ11aによって引き出される。
【0018】
この明細書で述べられるネガフィルム2は複数の意味で定義されており、そのなかには、顧客よりオーダされ現像処理が完了した1オーダ単位のネガフィルム2と、このネガフィルム2をスプライステープ2Aで互いに順次連接して長尺化された長尺ネガフイルム2と、この長尺ネガフイルム2から再び1オーダ単位で切断されて短尺化された短尺ネガフィルム2と、さらに、この短尺ネガフィルム2から数コマ画像単位で切断されたピースネガ2とが含まれている。ネガフィルム2には、1オーダ単位でバーコードシートが張り付けられており、このバーコードには1オーダのネガフィルム2がもつフィルム番号などの固有の情報が記録されている。さらに、ネガフィルム供給部10には、ここでは図示されていないフィルム案内ガイドによって形成されるネガフィルム搬送ラインに沿って、バーコードを読み取るバーコードリーダー12a、ネガフィルム2のコマ画像の輪郭をチェックする画面検出センサー14、そしてネガフィルムをスプライステープ2Aの領域で1オーダ毎に切断するネガカッター13が設けられている。
【0019】
図5に示すように、画面検出センサー14は、発光器と受光器とから構成され、この検出データは、コントローラ5のコマ画像判定手段(図示されない)に送られ、ネガフィルム2を透過した光の受光量に基づいてコマ画像の輪郭が検出されることにより、コマ画像の位置が確認される。その際、コマ画像の輪郭が検出できない場合は、該当コマ画像の位置に基づくネガフィルム2の位置決めが不可能であるので、オペレータによる目視でコマ画像の位置を示す目印となるマーキングを付けるために、画面検出センサー14とネガカッター13の間にはマーキング形成手段としてのノッチャー機構15が設けられている。ノッチャー機構15は、ネガフィルム2の上方から下降することによりネガフィルム2に位置決めマーキングとしてのノッチ2aを形成するノッチャー15aと、ノッチャー15aによるノッチ屑を吸引するためネガフィルム2の下面に吸引ノズルを向けている屑吸引ポンプ15bとを備えている。ノッチャー15aによるノッチ打ち込みは、オペレータによるコントローラ5に接続されている操作卓6bからの手動入力により、コントローラ5のノッチャー制御手段(図示されない)を介して行われる。このノッチ打ち込み作業中は、ノッチャー制御手段によって屑吸引ポンプ15bが動作しており、ノッチャー15aによって打ち抜かれたノッチ屑は直ちに吸引される。
【0020】
ノッチ打ち込み作業中に、オペレータによって行われるネガフィルム2の移動は、ノッチ合わせモータ17bとノッチ合わせローラ17aとからなるネガ搬送手段17と、コントローラ5が有するノッチ合わせモータ制御手段(図示されない)とによって、操作卓6bからの手動入力に基づいて、他のネガフィルム搬送機構から独立して行うことができる。ネガフィルム2を往復移動させることにより、ネガフィルム2の所定位置をノッチャー15aに合わせることができる。その際、オペレータがネガフィルム2の動きを見ながら操作卓6bを操作できるように、ノッチャー機構15上方には、ノッチャー15aに対するネガフィルム2の位置合わせ作業を撮像するTVカメラ16が設けられている。TVカメラ16は、ネガフィルム2のコマ画像と、ノッチャー15aによるノッチ形成ポイントをとらえるように調整されており、コントローラ5が有する画像切換手段(図示されない)を用いて、TVカメラ16の画像がモニター6aに写し出されるようにモニター6aの入力ラインを切り換える。
さらに、このようなノッチャー15aに対するネガフィルム2の位置合わせ移動がノッチャー機構15の領域だけで行われ、他の処理工程に影響を与えないようにするため、ネガフィルム搬送方向に関してノッチャー機構15の両側には、それぞれ第1ループ形成部18aと第2ループ形成部18bが設けられている。
【0021】
ネガカッター13は、図6に模式的に示されているように、ネガフィルム2どうしのスプライステープ2Aによる連結部をスプライステープ2Aと共に横断方向に切断するための直線カッター110と、ネガフィルム2どうしのスプライステープ2Aによる連結部の両側を円弧状に切断するためのRカッター130からなる。
ネガフィルム2は先ずRカッター130によって、スプライステープ2Aによるネガフィルム2のつなぎのずれ部分が切り落とされる(このずれ部分が切り離されずに放置されると、これが下流側の露光部20までの搬送経路に引っ掛かり易くなる)。次に、直線カッター110によって、スプライステープ2Aによるネガフィルム2のつなぎ部分で切断され、再びオーダー単位に切り分けられる(この直線カッター110による切断では、原則的にスプライステープ2Aのみで構成された部位が切断され、この時、スプライステープ2Aの粘着層は上面側を向いている)。
直線カッター110は、揺動に基づいてネガフィルム搬送ラインを横断するように軸芯X回りで揺動可能に設けられた上刃体112(可動刃の一例)と、フィルム搬送経路上に固定された下刃体114(固定刃の一例)を備えている。下刃体114は、フィルム搬送面の下面に向かって沿って延びたエッジ部を有する。上刃体112が前記揺動に基づいて下刃体114の方に降下することにより、ネガフィルム2が横断方向に切断される。
前記揺動に基づいて下刃体114と重なり合う上刃体112の側面112a(図6の斜線部)には、スプライステープの粘着材層に対する被粘着性を下げる表面加工として、ポリテトラフルオロエチレン膜の塗布加工が施されている。
Rカッター130は、ネガフィルム搬送ラインの両側に設けられた左右一対の昇降可能な上刃体132,132(第2刃体の一例)と、フィルム搬送経路の両側に固定された一対の下刃体134,134(第1刃体の一例、且つ、固定刃体の一例)を備えている。上刃体132,132が下刃体134,134の方に降下することにより、ネガフィルム2の両側が円弧状に切り欠かれる。この円弧状の切り欠きは、ネガフィルム2のスプライス部分は、スプライスセンサー12bによって検出される。この切り欠きを形成する一回の操作で、一般に合計4個の断片2b,2b,..が生じる。
【0022】
図7に示されるように、Rカッター130は、鋼製の剛性フレーム構造F上に設置されている。フレーム構造Fは、互いに空間を隔てて上下に延びる第1および第2垂直板140a,140bと、これらを連結する第1および第2水平板136,138とを含み、第1水平板136からは円柱状のガイド部材136aが下向きに延びている。
下刃体134,134は、第2水平板138上に固定されている。一方、上刃体132,132は、第1および第2垂直板140a,140bの間に配置された可動水平板133に固定されている。可動水平板133の中央には、第1水平板136の円柱状のガイド部材136aの周面上をがたつき無く摺動することによって可動水平板133を正確に垂直方向に案内するための、円形の貫通孔133aが形成されている。
第2垂直板140bの外側には空間を隔てて第3垂直板140cが設けられており、この外面側に駆動用モータ150が取り付けられている。駆動用モータ150から得られる回転駆動力は、第2垂直板140bと第3垂直板149cの間の空間内に配置された第1および第2ギヤ148a,148bを介して、第1垂直板140aと第2垂直板140bの間に水平な軸芯Y回りで回転可能に貫通支持された出力軸146に伝えられる。出力軸146の外周には、第1および第2垂直板140a,140bの各外側にて偏心ディスク144,144が一体的に連結されている。偏心ディスク144,144は、駆動用モータ150の駆動力によって軸芯Y回りで回転し、偏心ディスク144,144自身の周面によって決められる軸芯Pは、軸芯Yから距離dだけ偏心している。
偏心ディスク144,144の回転運動は、クランク板142,142によって、上刃体132,132の上下往復運動に変換される。すなわち、図8に示されるように、クランク板142,142は、その上端付近にて、可動水平板133から水平に延びた軸133b,133b上に軸芯Z回りで揺動可能に外嵌支持されており、他方、クランク板142,142の下端付近には、偏心ディスク144,144の外周面上を円滑に回転摺動するための内周面が形成されている。したがって、駆動用モータ150による偏心ディスク144,144の回転に応じて、上刃体132,132は、偏心ディスク144,144の外周の中心Pの上死点から下死点までの距離、すなわち、2dの幅で上下に往復運動することになる。
【0023】
図9は、上記の機構によって得られる上刃体132,132の上死点から下死点までの動きを示しており、図9−aの実線は上刃体132,132が上死点にある時の状態、図9−aの二点鎖線および図9−bは、下死点にある時の状態を示す。
図9−a,bに対応した部分拡大図である図10−a,b,cから良く判るように、可動する第2刃体としての上刃体132,132にはフィルム2の横断方向に向かって水平に延びた第2刃面132aが形成されており、固定された第1刃体としての下刃体134,134には、水平な平面状の第1刃面134aが形成されている。ネガフィルム2の両側を円弧状に切断する最中に、上刃体132,132の下向きの移動に基づいて、第2刃面132aが写真フィルム2の不要な部位2bを面で下向きに押し付けながら第1刃面134aに近づき、遂に第1刃面134aを下向きに越える(交差の一例)ことによって、写真フィルム2の不要部位2bを剪断して行き、最終的に写真フィルム2の本体から離れて落下する。
上刃体132,132の第2刃面132aは、そこを通過するフィルム2の横断方から見ると、図12に示されるように、厳密には水平でなく中央が高い山形の傾斜面を有している。これは、上刃体132,132の下刃体134,134に対する移動が上下方向の平行な移動であるに拘わらず、揺動に基づく鋏の刃体の原理と同様にフィルム2の縁から順に(ここではフィルム2の長手方向の外側から中央、すなわち、フィルム2どうしの接合部に向かって)、言い換えれば、フィルム2の本体に塑性変形が加わらない形態で円滑にフイルムを剪断して切り込むことができるためである。
図9から13に示され、図11から13に特に良く示されるように、切り離された断片2bが静電気によって特に上刃体132,132に付着する現象を抑制するために、上刃体132,132の各第2刃面132a,132aには、放電紙160が粘着性の両面テープ(図示されない)で貼付されている。第2刃面132aに貼付された放電紙160は、切断の最中に写真フィルム2の、特に切り離そうとする不要部位2bに押し付けられ、剪断を受け始めた断片2bは完全に本体から切り離される直前まで、放電紙160との接触状態を維持することになる。断片2bが比較的大きな形状であってもその全面が放電紙160と接触するように、放電紙160は、図13に示されるように、第2刃面132aの全領域に貼付されており、また、断片2bが非常に小さな形状であった場合にも確実に放電紙160と接触するように、放電紙160は、図13に示されるように、上刃体132,132の各第2刃面132a,132aどうしの中心側の端部ぎりぎりまで延びている。
【0024】
また、図10と図15に良く示されるように、下刃体134の上端付近からは板状体134Fが水平なフランジ状に延びており、下刃体134の第1刃面134aは、この板状体134Fの上面として設けられている。そして、図14から図16に示されるように、この板状体134Fの下面134bから下刃体134の互いに外側を向いた垂直壁面134cにわたる領域にも、放電紙162が貼付されている。板状体134Fは剛性が確保できる範囲で十分に薄く作られている(厚さ約2mm)ので、上刃体132の第2刃面132aの下向きの移動、すなわち、下刃体134の第1刃面134aとの交差によって剪断された直後の不要部2bは、下刃体134の板状体134Fの下面134bに貼付された放電紙162とも接触または(2mm以下の距離で)極近接する機会を与えられる(図10−bの直後の状態)。言い換えれば、剪断によって形成されたばかりの不要部2bの端面(切断面)は、写真フィルム本体から完全に切り離される前に、下刃体134の下面134bに貼付された放電紙162と接触または極近接し、しかも、この時、不要部2bの上面は上刃体132の第2刃面132aに貼付された放電紙160の接触を未だ維持している。
尚、ここで用いている放電紙160,162は導電性有機繊維を通常の紙繊維の間に漉(す)き込んで作られたシート状の紙であり、放電紙その他の名称で市販されている。これを両面テープ等で取り付けても良いが、片面側に粘着層を取り付けた状態で市販されているものを用いても良い。
導電性有機繊維は、硫化銅の極薄い皮膜層を染色手法を用いてアクリル繊維またはナイロン繊維の表面に形成したものが知られており、これは柔軟性が高く、紙の繊維中に容易に漉き込むことができ、元の紙の柔軟性や加工性を損なわない。
【0025】
ネガカッター13の下方には切断屑を収納する2つの屑箱13dが設けられており、Rカッター130による切断に基づいて発生する切断屑は、屑仕分けガイド13eによって切断屑の種類に応じて2つの屑箱13dのいずれかに落下させられる。ネガカッター13の下流側にも、ループ形成部18cが設けられており、ネガカッター13による切断処理と、後工程となる露光処理との間に1オーダ分のネガフィルム2がまたがることを避けている。19は、ピースネガなどをネガフィルム搬送ラインの途中に挿入するための中間挿入部であり、斜線を入れられたガイド19aを取り外すことによりネガフィルム2の挿入が可能になり、ガイド19bは中間挿入時の上側ガイドとして機能する。この中間挿入部19よりネガフィルム搬送方向下流側には露光部20が配置されている。
【0026】
露光部20には、図4に示すように、フィルム搬送方向上流側に、読取用光源21a、ミラートンネル21b及び撮像装置21cからなるフィルム読取装置21が設けられ、そのフィルム搬送方向下流側に、露光用光源22a、調光フィルタ22b、ミラートンネル22c、ネガマスク22d、焼付レンズ22e及びシャッタ22fからなる露光装置22が設けられ、ネガフィルム供給部10から露光部20を通過してネガ排出部60へネガフィルム2を搬送するローラ23a及びそのローラ23aを駆動するモータ23bが設けられている。さらに、フィルム読取装置21の領域には、ネガフィルム2の所望のコマ画像をフィルム読取装置21に位置決めするための画面検出センサー28aと、当該コマ画像が位置決めに不適当な場合ノッチャー15aによって形成されたノッチ2aを位置決めのために読み取るノッチセンサー29aが設けられ、露光装置22の領域には、ネガフィルム2の所望のコマ画像を露光装置22に位置決めするための画面検出センサー28bと、当該コマ画像が位置決めに不適当な場合ノッチャー15aによって形成されたノッチ2aを位置決めのために読み取るノッチセンサー29bが設けられている。
【0027】
ローラ23aにて搬送されるネガフィルム2は、先ず、画面検出センサー28a又はノッチセンサー29aのいずれかを用いて位置決めされながら、フィルム読取装置21にて、その各コマ画像が読み取られ、コントローラ5に送られる。コントローラ5の露光制御手段(図示されない)では、フィルム読取装置21から受け取った画像情報に基づいて、そのネガフィルム2の画像を印画紙3に焼き付けるための露光条件を求めて、該当するネガフィルム2のコマ画像がネガマスク22dに、画面検出センサー28b又はノッチセンサー29bのいずれかを用いて位置決めされると、先だって求めた露光条件に基づいて調光フィルタ22b及びシャッタ22fを制御し、印画紙3を露光する。さらに、コントローラ5は、フィルム読取装置21にて読み取ったネガフィルム2の画像情報を処理して、求めた露光条件で印画紙3を焼き付けた場合に得られる画像のシミュレート画像をモニタ6aに表示させることができ、オペレータは、そのシミュレート画像をモニタ6aを観察して、必要に応じて操作卓6bから露光条件を修正することができる。
【0028】
又、露光部20にて露光処理の終了したネガフィルム2は、露光装置22のフィルム搬送方向下流側に配置されているネガ排出部60に設けられたネガカッター25によって6駒又は4駒毎に切断され、1オーダのネガフィルム2は複数枚のネガピース2となる。このネガカッター25の領域にも、ネガフィルム2の所望のコマ画像をネガカッター25に位置決めするための画面検出センサー28cと、当該コマ画像が位置決めに不適当な場合ノッチャー15aによって形成されたノッチ2aを位置決めのために読み取るノッチセンサー29cが設けられている。ネガピース2は、1オーダ単位でコンベヤ機構70へ送り出されるが、仕様によっては、図示されていないネガシート挿入装置によってネガピース2がネガシートに挿入され、このネガシートは折り畳まれた後コンベヤ機構70へ送り出される。露光部20におけるネガフィルム2の位置決めや搬送は、コントローラ5のネガフィルム搬送制御手段(図示されない)によって制御される。
【0029】
現像処理部30には、その図示は省略されているが、複数の現像処理タンクが備えられており、露光部20でネガフィルム2の画像が焼き付けられた後、印画紙3はローラ24a及びローラ24aを駆動するモータ24bによってコレクション印字部26を通り、現像処理部30の現像処理タンクを順次通過することで現像処理される。なお、現像処理部30の手前には、ループ部の存在にもかかわらず露光部20と現像処理部30の間で連続して印画紙3を送り続けることができない事態が生じた場合に緊急避難的に印画紙3を切断するカッター27が設けられている。
【0030】
現像処理後の印画紙3は、乾燥部40で乾燥された後、プリント排出部50に送られ、ペーパーカッター51によってカットされることにより仕上がりプリント3となり、横送りコンベヤ53によってコンベヤ機構70へ送り出される。54は、何らかのトラブルで印画紙3をコンベヤ機構70に送り出せない事態が生じた場合印画紙3をノーカットで排出するための印画紙バイパス路である。印画紙3又はプリント3の一連の搬送や印画紙バイパス路54への分岐は、コントローラ5の印画紙搬送制御手段(図示されない)によって制御される。
【0031】
コンベヤ機構70は、図2に示すように、トレーコンベヤ式であり、周回案内路80に案内されながら搬送力を伝達する駆動手段90によって走行する複数のトレー100が備えられている。周回案内路80によって決定される搬送ラインには、写真処理装置1の低い位置に配置されたネガフィルム排出部60からネガフィルム2を搬入するネガフィルム搬入ステーション71と、待機ステーション72と、写真処理装置1の高い位置に配置されたプリント排出部50からプリント3を搬入するプリント搬入ステーション73と、1単位毎のネガフィルム2とプリント3の照合を行う照合ステーション74とが形成されている。
【0032】
周回案内路80は、左右一対の略円形断面のレールとこのレールを所定の間隔で連結している連結体とで構成されており、トレー100には、このレールに跨って走行する走行部(図示されない)が設けられている。
【0033】
次にこの写真処理装置1の動作について説明すると、まず、現像済みの長尺ネガフイルム2を巻いたネガリール11をセットし、長尺ネガフイルム2の先端部あるいは先端部に取り付けたリーダーがローディングローラ11aによってネガフィルム搬送ラインに引き出される。ネガフィルム搬送ラインに入ったネガフィルムは2は、図示されていないガイド部材が水平に延ばされていることにより第1ループ形成部18aを通過し、画面検出センサー14によってコマ画像が検出される。検出されたコマ画像が、コマ画像判定手段によって位置決めのために不適当と判定されると、このコマ画像の位置を表すノッチ2aをノッチャー機構15によって形成する。この場合、位置決めのために不適当と判定されたコマ画像に隣接するコマ画像が位置決めのために適当であるなら、この隣接する適当なコマ画像を基準にして不適当なコマ画像の位置決めを行うことが可能であるが、不適当なコマ画像と適当なコマ画像と距離がある程度あると、誤差がでてくるので、位置決めのためのノッチ2aを形成しておく。ノッチ2aの形成は、オペレータがモニター6aを見ながら、ノッチャー15aの真下に該当コマ画像に対する所定の位置がくるようにノッチ合わせモータ17bを操作卓6bのキーを操作する。その際、第1ループ形成部18aと第2ループ形成部18bの図示されていないガイド部材を退避させることによるループ形成によって、ノッチャー機構15の領域のネガフィルム2と他の領域のネガフィルム2の動きの違いは吸収される。
【0034】
必要に応じてノッチ2aを形成されたネガフィルム2は、スプライスセンサー12bで検出されたつなぎ領域で、ネガカッター13によって切断され(先ず、両側をRカッター130によって円弧状に成形された後、直線カッター110で切断される)、1オーダの短尺ネガフィルム2として露光部20に送られる。露光部20では、まずフィルム読取装置21の画面検出センサー28aによってコマ画像の輪郭が検出され、この検出結果に基づいてコントローラ5のネガフィルム搬送制御手段(図示されない)がモータ23bを駆動制御して、読み取るべきコマ画像を撮像装置21cに合わせる。画面検出センサー28aによってその輪郭が検出されないコマ画像に対しては、予めノッチャー機構15によって位置決め用のノッチ2aが形成されているので、このノッチ2aをノッチセンサー29aで検出することで読み取るべきコマ画像を撮像装置21cに合わせる。
【0035】
露光装置22においても、画面検出センサー28bによってその輪郭が検出されないコマ画像に対しては、ノッチセンサー29bによるノッチ検出に基づいて露光すべきコマ画像を露光位置に合わせる。同様に、ネガカッター25によるネガピース2へのカット工程においても、画面検出センサー28cによってその輪郭が検出されないコマ画像に対しては、ノッチセンサー29cによるノッチ検出に基づいて、コマ画像とコマ画像の間の部分に正確にカット位置を合わせる。
【0036】
ネガカッター25によってネガピース2にされた1オーダ分ネガフィルム2は、ネガフィルム搬入ステーション71において、トレー100に積み込まれた後、プリント搬入ステーション73で同じオーダのプリント3と組み合わされ、照合ステーション74に送り込まれる。照合ステーション74では、オペレータが各トレーの照合状態を確認した後、プリント3とピースネガ2をDP袋7に詰め込む。この照合ステーション74にもモニター6aと制御卓6bが配置されているので、照合ステーションにいるオペレータが、ネガフィルム供給部10で位置決め用として不適当と判定されたコマ画像に対して、モニター6aを見ながらノッチャー機構15を制御卓6bを操作して、位置決め用のノッチ2aを付与することができる。
【0037】
〔別実施形態〕
<1>導電性有機繊維を紙に漉き込むのではなく、ポリエステル繊維などを布状に織る際に織り込んで得られた導電性有機繊維入りの布、或いは、導電性有機繊維を混入させた不織布を用いても良い。
【0038】
<2>さらに、本発明で用いる放電性膜体としては、上記のような導電性有機繊維を混入したシート状材料の他に、金属繊維、炭素繊維またはこれらの複合した繊維などを布状に織ったり、不織布状に形成したものを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による写真処理装置の斜視図
【図2】図1の写真処理装置におけるネガフィルムと印画紙の流れを示す模式図
【図3】ネガフィルム供給部の構成を示す模式図
【図4】露光部の構成を示す模式図
【図5】ノッチャー機構を示す斜視図
【図6】ネガフィルム供給部のネガカッターの模式図
【図7】フィルム搬送経路に沿って見たRカッターの概略図
【図8】フィルム横断方向に沿って見たRカッターの概略図
【図9】Rカッターにおける上刃体の上死点と下死点を示す概略図
【図10】Rカッターによる切断経過を示す拡大図
【図11】Rカッターの上刃体を示す斜視図
【図12】フィルム横断方向に沿って見たRカッターの上刃体の立面図
【図13】Rカッターの上刃体の底面図
【図14】Rカッターの下刃体を示す斜視図
【図15】フィルム搬送経路に沿って見たRカッターの左側の下刃体の断面図
【図16】フィルム横断方向に沿って見たRカッターの下刃体の立面図
【符号の説明】
2 ネガフィルム
2A スプライステープ
3 印画紙
10 ネガフィルム供給部
13 ネガカッター
14 画面検出センサー
20 露光部
130 Rカッター
132 上刃体
134 下刃体
160 放電紙
Claims (9)
- 互いに相対移動可能な一対の刃体を備え、これら一対の刃体の前記相対移動に応じて前記一対の刃体の間に挟まれた写真フィルムを切断する写真フィルム用カッターであって、
前記一対の刃体の少なくとも一方に、放電性膜体が貼付されている写真フィルム用カッター。 - 前記放電性膜体は、前記切断の最中に前記一対の刃体の前記移動に基づいて写真フィルムが前記放電性膜体に押し付けられる位置に貼付されている請求項1に記載の写真フィルム用カッター。
- 前記一対の刃体の各々には、前記切断の最中に前記一対の刃体の前記移動に基づいて、写真フィルムの面と接当しながら互いに交差する刃面が設けられており、前記放電性膜体は、これら一対の刃面の少なくとも一方に貼付されている請求項1または2に記載の写真フィルム用カッター。
- 前記一対の刃体は、写真フィルムの本体を支持する第1刃面を備えた第1刃体と、写真フィルムの前記本体を前記第1刃面に押し付けながら前記第1刃面と交差することによって、写真フィルムの前記本体から不要部を切り離す第2刃面を備えた第2刃体であり、前記放電性膜体が前記第2刃面に貼付されている請求項1から3のいずれか1項に記載の写真フィルム用カッター。
- 前記一対の刃体は、写真フィルムの本体を支持する第1刃面を備えた第1刃体と、写真フィルムの前記本体を前記第1刃面に押し付けながら前記第1刃面と交差することによって、写真フィルムの前記本体から不要部を切り離す第2刃面を備えた第2刃体であり、前記第1刃体には、前記第1刃面を形成する表面とこれに対向する裏面とを備えた板状体が設けられており、前記放電性膜体は、前記第2刃面の前記交差によって切り離された直後の不要部と接触または極近接可能なように、前記第1刃体の前記板状体の前記裏面に貼付されている請求項1に記載の写真フィルム用カッター。
- 前記板状体の厚さは、写真フィルムの前記本体から切り離される前の前記不要部位が、前記第2刃体の前記第2刃面に貼付された前記放電性膜体と第1刃体の前記板状体の前記裏面に貼付された前記放電性膜体との双方に同時に接触または極近接するように決められている請求項5に記載の写真フィルム用カッター。
- 前記第1刃体は写真フィルムを下方から支持する固定刃であり、前記第2刃体は前記第1刃体に対して上方から変位して前記切断を実施する請求項4また5に記載の写真フィルム用カッター。
- 前記放電性膜体は、導電性有機繊維を部分的に漉き込んだ紙ないし布である請求項2から4のいずれか1項に記載の写真フィルム用カッター。
- 導電性有機繊維を混入した紙ないし布からなる前記放電性膜体が両面テープによって前記刃体に貼付されている請求項8に記載の写真フィルム用カッター。
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- 1998-05-18 JP JP13490098A patent/JP3843383B2/ja not_active Expired - Lifetime
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