JP3842729B2 - 低分子量gtp結合タンパク質の活性モニタータンパク質 - Google Patents

低分子量gtp結合タンパク質の活性モニタータンパク質 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質、該タンパク質をコードする遺伝子、該遺伝子を含む発現ベクター、該発現ベクターを保持する形質転換された細胞およびトランスジェニック動物、前記タンパク質を用いる低分子量GTP結合タンパク質の活性化を測定する方法、ならびに低分子量GTP結合タンパク質の活性調節物質のスクリーニング方法に関する。
背景技術
細胞内情報伝達分子には非常に多くの種類が知られており、低分子量GTP結合タンパク質(以下、GTP結合タンパク質という場合がある)はその中でも種類が多いこと、重要な分子スイッチとして働いていることから非常に詳しく解析されてきている。低分子量GTP結合タンパク質群はRasファミリー、Rhoファミリー、Rabファミリー、Ranファミリーなどからなる(文献1)。これらの低分子量GTP結合タンパク質は、細胞増殖、細胞骨格、細胞内輸送、核輸送など細胞内での多様な情報伝達を制御する重要な分子スイッチである。低分子量GTP結合タンパク質は、GDPに結合している不活性化型とGTPに結合している活性化型との間をサイクルしている(第1図)。GTP結合型はそれぞれのGTP結合タンパク質に特異的な標的タンパク質に結合し、該標的タンパク質を活性化する。GDP結合型をGTP結合型にする反応を触媒するタンパク質はグアニンヌクレオチド交換因子であり、GTP結合型をGDP結合型に戻す反応を触媒するタンパク質はGTP水解促進酵素(GTPアーゼ活性化因子)である。該GTP水解促進酵素は、結合したGTPの加水分解を促進し、無機リン酸を遊離させてGDPを生じさせるように働く。
最近、多くの低分子量GTP結合タンパク質およびその活性化因子と不活性化因子が単離されるにおよび、これら低分子量GTP結合タンパク質が細胞内および個体内でどのような機能的差異があるのかに注目が集まっている。その機能的差異を明らかにするためには、細胞内および個体内での低分子量GTP結合タンパク質の活性化状態をモニターする必要がある。
細胞内での低分子量GTP結合タンパク質の活性化の程度を調べるには、細胞内での低分子量GTP結合タンパク質のGTP結合型とGDP結合型の量比を知る必要がある。現在、細胞内での低分子量GTP結合タンパク質のGTP結合型とGDP結合型の量比を調べる方法としては次の二つがよく用いられている。
(1) ラジオアイソトープ32Piによる標識を利用する方法:細胞を32Piで標識したのち低分子量GTP結合タンパク質を精製し、結合しているGTPおよびGDPを薄層クロマトグラフィーにて分離し定量する(文献2)。
(2) プルダウン法:低分子量GTP結合タンパク質に結合する標的タンパク質を固層に結合させておき、可溶化した細胞抽出液と混合する。GTP結合型のものは標的タンパク質に高いアフィニティーで結合するので、GTP結合型のみを選択的に回収することができる。これを、SDS−PAGEゲルにて分離した後に、イムノブロッティングにて定量する(文献3)。しかしながら、いずれの方法も細胞を一旦可溶化する必要があり、生細胞で直接、低分子量GTP結合タンパク質の活性化を調べる方法はこれまでなかった。
細胞内には、細胞膜、細胞質以外にも多くの細胞内小器官が存在するだけでなく、細胞質の中でも異なる場所では異なる生化学的現象が起きていることが近年明らかにされている。また、個体レベルでも低分子量GTP結合タンパク質が高次神経機能や器官形成に非常に重要であるということがわかっている。したがって、低分子量GTP結合タンパク質の活性化状態を細胞内あるいは個体内で非侵襲的に知ることは、生命現象の理解のみならず、薬剤開発などにおいても必須である。しかし、これまでの生化学的方法では細胞を可溶化してしまうため、細胞内のどの場所で低分子量GTP結合タンパク質が活性化されているのか、また、どの細胞で低分子量GTP結合タンパク質が活性化されているのかを知ることはできなかった。
一方、生細胞においてタンパク質を可視化する技術としてはGFP(green fluorescent protein)を用いる方法が知られている(文献4)。GFPは発光クラゲなどより単離されるタンパク質群で、主に緑色の蛍光を発するタンパク質である。現在、細胞内でのタンパク質の局在を調べるのに広く用いられている。GFPとしてはCFP(cyan−emitting mutant of GFP)、YFP(yellow−emitting mutant of GFP)などがあり、また、それらを改良したタンパク質としてEGFP(enhanced green fluorescent protein)、ECFP(enhanced CFP)、EYFP(enhanced YFP)、EBFP(enhanced blue−emitting mutant of GFP)など(本明細書において、これらをまとめてGFP関連タンパク質という)がある。これらは、それぞれ異なる波長の光で励起され、異なる波長の蛍光を放出する。
さらにGFPを応用した技術としてFRET(fluorescent resonance energy transfer)を用いるものがある(文献5)。FRETとは以下の現象を指す。蛍光物質AおよびBという物質がそれぞれλaexおよびλbexで励起され、λaemおよびλbemの光をそれぞれ発光するとする。この時、AおよびBがごく近傍に存在し、λaemがλbexに充分に近い時、AおよびBの混合物にλaexの光を照射すると、物質AのエネルギーがBに吸収されλbemの発光が観察される。これをFRETという。この方法を利用して、2分子間の距離を推定することもできる。この時、蛍光物質Aをドナー、蛍光物質Bをアクセプターという。
さらにこの技術の応用として、二つの蛍光物質を一つのタンパク質内に標識することにより、タンパク質の構造変化を検出することが可能である。EBFPおよびEGFP、ECFPおよびEYFPの2セットのGFP関連タンパク質は、至適なFRETのためのドナーとアクセプターの組み合わせを作ることが知られている。たとえば、EBFPとEGFPとの二つのタンパク質とカルシウム結合タンパク質カルモジュリンとの融合タンパク質で、このFRET技術を応用してカルシウムの濃度を測りうることが知られている(文献6)。しかしながら、GFPタンパク質とFRET技術とを応用した1分子モニターによる測定法は、前記カルシウム測定ならびにサイクリックAMP依存性リン酸化酵素の活性測定以外には、現時点では成功していない。
発明の開示
本発明は、非侵襲的な低分子量GTP結合タンパク質の活性化の測定を可能にする低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質;該タンパク質をコードする遺伝子;該遺伝子を含む発現ベクター;前記タンパク質を発現し、非侵襲的な低分子量GTP結合タンパク質の活性化の測定に有用な前記発現ベクターを保持する形質転換された細胞およびトランスジェニック動物;前記タンパク質を用いる低分子量GTP結合タンパク質の活性化を測定する方法、より詳しくは生細胞においても使用可能な、低分子量GTP結合タンパク質のGTP結合型とGDP結合型の量比を測定する方法;ならびに低分子量GTP結合タンパク質の活性調節物質のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕 低分子量GTP結合タンパク質の全部または一部、該低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質の全部または一部、GFPアクセプタータンパク質の全部または一部、及びGFPドナータンパク質の全部または一部が、各タンパク質の機能を発揮し得る状態で直接または間接的に連結されてなる融合タンパク質からなる低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質、
〔2〕 前記〔1〕記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質をコードする遺伝子、
〔3〕 前記〔2〕記載の遺伝子を含む発現ベクター、
〔4〕 前記〔3〕記載の発現ベクターを保持してなる形質転換された細胞、
〔5〕 前記〔3〕記載の発現ベクターを保持してなるトランスジェニック動物、
〔6〕 前記〔1〕記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質におけるFRETを検出する工程を含む低分子量GTP結合タンパク質の活性化を測定する方法、
〔7〕 前記〔4〕記載の細胞または前記〔5〕記載のトランスジェニック動物におけるFRETを検出する工程を含む低分子量GTP結合タンパク質の活性化を測定する方法、ならびに
〔8〕 (a)前記〔4〕記載の細胞と被検物質とを接触させる工程、および
(b)低分子量GTP結合タンパク質の活性の変化を検出する工程、
を含む、低分子量GTP結合タンパク質の活性調節物質のスクリーニング方法、
に関する。
発明を実施するための最良の形態
本発明の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質(以下、モニタータンパク質という)は、GTP結合型の低分子量GTP結合タンパク質が特異的にその標的タンパク質のみに結合するという性質を利用したものであり、非侵襲的な低分子量GTP結合タンパク質の活性化の測定に非常に有用なタンパク質である。本発明のモニタータンパク質は、低分子量GTP結合タンパク質、該低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質、GFPアクセプタータンパク質、およびGFPドナータンパク質からなる融合タンパク質であり、各タンパク質が適切に、すなわち個々に本来のコンフォメーションを形成して各タンパク質が有する機能を完全な程度に発揮し得るような状態で、前記各タンパク質が直接または間接的に連結されてなる。従って、かかる融合タンパク質のアミノ酸配列は、前記各タンパク質のアミノ酸配列部分が直接または間接的に連結されてなる構造を有する。なお、本発明のモニタータンパク質を構成する各タンパク質は、当該タンパク質が有する機能を完全な程度に発揮し得るようであれば当該タンパク質の一部であってもよい。
本明細書においては、モニタータンパク質内に含まれる各タンパク質をいう場合、例えば、標的タンパク質を例にあげると、標的タンパク質そのものと区別し、標的タンパク質部分というべきところ、かかる区別なく、簡易に標的タンパク質と表現する。
本発明のモニタータンパク質では、低分子量GTP結合タンパク質のGTPとの結合による活性化(GDP結合型の、グアニンヌクレオチド交換因子によるGTP結合型への変換による低分子量GTP結合タンパク質の活性化を含む)に伴いモニタータンパク質内で低分子量GTP結合タンパク質とその標的タンパク質とが結合し、その結果、GFPドナータンパク質からGFPアクセプタータンパク質へのFRET効率に変化が生ずることになる。第2図に、本発明のモニタータンパク質の一例を模式的に示し、該モニタータンパク質を用いる、FRETを利用した低分子量GTP結合タンパク質の活性化を測定する方法の原理を示す。なお、本明細書においてFRET効率とは、GFPドナータンパク質に対する励起光を本発明のモニタータンパク質に照射した場合の、GFPドナータンパク質の蛍光波長における蛍光強度とGFPアクセプタータンパク質の蛍光波長における蛍光強度との比(蛍光強度比)をいう。詳しくは後述する。
FRETを実現するためには、i)GFPドナーの発光スペクトラムとGFPアクセプターの吸光スペクトラムとの重なり、ii)ドナーとアクセプター間の距離、iii)ドナーの発光モーメントとアクセプターの吸光モーメントの配向の3因子を考慮しなければならない。また、GFPを他のタンパク質と融合する場合、他のタンパク質と融合することがストレスとなってGFPのミスフォールディングが生じ、その結果、発色団形成の効率が低下し、無蛍光のGFPとなる可能性をも考慮しなければならない。このように、GFPドナーとGFPアクセプターを利用して両者間にFRETの良好な発現を生じさせるには厳格な条件が存在し、未だ両者間の配置等に一定の規則も見出されておらず、FRETの実現は一般に困難である。すなわち、FRETの実現は公知の技術常識に基づき容易になし得るものではなく、期待し得る程度を超える試行錯誤や複雑高度の実験等を要するものである。本発明のモニタータンパク質は、前記タンパク質を、本発明の所望の効果が得られ得るように適切に組み合わせたものであり、GTP結合型の低分子量GTP結合タンパク質が特異的にその標的タンパク質のみに結合するという性質を利用し、GTPの低分子量GTP結合タンパク質への結合に応じて変化し得るGFPドナータンパク質とGFPアクセプタータンパク質との間で生ずるFRETを実現させたもので、その技術的価値は非常に大きい。
本発明のモニタータンパク質における各構成タンパク質の結合の順序は、低分子量GTP結合タンパク質の活性化前後におけるFRET効率の差(以下、単にFRET効率の差という)の増大を考慮して適宜選択され得る。低分子量GTP結合タンパク質の活性化前後におけるFRET効率の差が大きい程、当該タンパク質の活性化状態をより的確に捉えることができ、従って、低分子量GTP結合タンパク質の活性化の測定精度を向上させることができるので好ましい。該モニタータンパク質における低分子量GTP結合タンパク質と該低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質との結合の好ましい態様としては、アミノ末端側に存在する低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質結合部位のカルボキシル末端が、カルボキシル末端側に存在する標的タンパク質のアミノ末端に直接または間接的に結合される態様(1)、アミノ末端側に存在する標的タンパク質のカルボキシル末端が、カルボキシル末端側に存在する低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質結合部位のアミノ末端に直接または間接的に結合される態様(2)が挙げられる。特に、低分子量GTP結合タンパク質がRasファミリーに属するものである場合は態様(1)が、Rhoファミリーに属するものである場合は態様(2)が好ましい。GFPアクセプタータンパク質およびGFPドナータンパク質は各々、それらのアミノ末端またはカルボキシル末端が低分子量GTP結合タンパク質と標的タンパク質とが連結されたもの(連結物)のアミノ末端またはカルボキシル末端に直接または間接的に連結されて連結される。中でも、前記連結物のアミノ末端にGFPアクセプタータンパク質のカルボキシル末端が、カルボキシル末端にGFPドナータンパク質のアミノ末端が直接または間接的に連結されてなるモニタータンパク質が好ましい。従って、本発明のモニタータンパク質としては、該モニタータンパク質において、アミノ末端側より、GFPアクセプタータンパク質、低分子量GTP結合タンパク質、該低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質、GFPドナータンパク質となるように、あるいはアミノ末端側より、GFPアクセプタータンパク質、低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質、該低分子量GTP結合タンパク質、GFPドナータンパク質となるように、それぞれ直接または間接的に連結されてなるものが特に好ましい。なお、「間接的に連結」とは、各タンパク質間の連結を、たとえば、後述するスペーサーとしてのペプチド等を介して行う態様をいう。
本発明のモニタータンパク質の構成要素である低分子量GTP結合タンパク質としては、当該タンパク質として知られるものであれば特に限定されるものではないが、有用性の観点からRasスーパーファミリーに属するものが好ましく、中でもRasファミリーまたはRhoファミリーに属するものがより好ましい。より詳しくは、H−Ras、K−Ras、N−Ras、R−Ras、Rap1A、Rap1B、Rap2A、およびRap2Bからなる群、またはRhoA、RhoB、RhoC、Rac1、Rac2、およびCdc42からなる群より選ばれる1種が好ましい。
一方、前記低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質は、前記例示するような各低分子量GTP結合タンパク質がGTP結合型となった際に特異的に結合するものであれば特に限定されるものではない。有用性の観点から、好ましくはRafまたはRalGDS、あるいはPakまたはmDiaである。
さらに、前記低分子量GTP結合タンパク質と前記標的タンパク質の組み合わせとしては、有用性ならびに特異性の観点から、低分子量GTP結合タンパク質がH−Rasであり、標的タンパク質がRafである組み合わせ、または低分子量GTP結合タンパク質がRap1Aであり、標的タンパク質がRalGDSである組み合わせ、低分子量GTP結合タンパク質がRac1であり、標的タンパク質がPakである組み合わせ、低分子量GTP結合タンパク質がCdc42であり、標的タンパク質がPakである組み合わせ、あるいは低分子量GTP結合タンパク質がRhoAであり、標的タンパク質がmDiaである組み合わせが特に好ましい。
また、GFPアクセプタータンパク質としては前記例示したGFP関連タンパク質のいずれを使用することもできるが、機能的観点から、好ましくはEGFPまたはEYFPである。一方のGFPドナータンパク質も同様に前記例示したGFP関連タンパク質のいずれを使用することもできるが、機能的観点から、好ましくはECFPまたはEBFPである。
前記した本発明のモニタータンパク質の構成要素それぞれの特に好ましい組み合わせとしては、有効性、特異性および感度の観点から、低分子量GTP結合タンパク質がH−Rasであり、標的タンパク質がRafであり、GFPドナータンパク質がECFPであり、GFPアクセプタータンパク質がEYFPであるか、または、低分子量GTP結合タンパク質がRap1Aであり、標的タンパク質がRalGDSであり、GFPドナータンパク質がECFPであり、GFPアクセプタータンパク質がEYFPであるか、または低分子量GTP結合タンパク質がRac1であり、標的タンパク質がPakであり、GFPドナータンパク質がECFPであり、GFPアクセプタータンパク質がEYFPであるか、または低分子量GTP結合タンパク質がCdc42であり、標的タンパク質がPakであり、GFPドナータンパク質がECFPであり、GFPアクセプタータンパク質がEYFPであるか、または低分子量GTP結合タンパク質がRhoAであり、標的タンパク質がmDiaであり、GFPドナータンパク質がECFPであり、GFPアクセプタータンパク質がEYFPである。
また、低分子量GTP結合タンパク質、標的タンパク質、GFPドナータンパク質、およびGFPアクセプタータンパク質の結合の順序は、FRET効率の差の増大の観点から、本発明のモニタータンパク質において、好ましくはアミノ末端側よりEYFP−H−Ras−Raf−ECFPまたはEYFP−Rap1A−RalGDS−ECFP、あるいはEYFP−Pak−Rac1−ECFP、EYFP−Pak−Cdc42−ECFPまたはEYFP−mDia−RhoA−ECFPが挙げられる。また、これらにおいてEYFPとECFPとが互いに交換されてなるものも好適に使用できる。
低分子量GTP結合タンパク質は、その標的タンパク質に結合することができれば該タンパク質の一部でもよく、必ずしも、その全部(全長)である必要はない。ここで、低分子量GTP結合タンパク質の一部とは、たとえば、公知の方法に従って当該タンパク質分子を大腸菌で生産し、試験管内でGTPと結合せしめるという方法により、標的タンパク質との結合が検出され得るタンパク質部分をいう。なお、検出は、たとえば、標的タンパク質に対する抗体で免疫沈澱させ、GTP結合タンパク質の一部が共沈するかをイムノブロッティングで調べる方法により行うことができる。たとえば、H−RasおよびRap1Aであれば、好ましくは1〜180位、より好ましくは1〜172位に相当するアミノ酸配列部分からなるタンパク質部分を、R−Rasであれば、好ましくは1〜204位、より好ましくは28〜204位に相当するアミノ酸配列部分からなるタンパク質部分、Rac1であれば、好ましくは1〜177位に相当するアミノ酸配列部分からなるタンパク質部分を、Cdc42であれば、好ましくは1〜176位に相当するアミノ酸配列部分からなるタンパク質部分を、RhoAであれば好ましくは1〜176位に相当するアミノ酸配列部分からなるタンパク質部分を挙げることができる。
一方、低分子量GTP結合タンパク質の全部よりはむしろ、そのアミノ酸配列のアミノ末端あるいはカルボキシル末端を一部削ることでしばしばFRET効率の差の増大が生ずる。それゆえ、当該タンパク質の一部としては、そのアミノ酸配列のアミノ末端領域および/またはカルボキシル末端領域に、好ましくは少なくとも1個、より好ましくは1〜28個、さらに好ましくは17〜28個のアミノ酸の欠損を有してなるものも含まれる。なお、かかる領域におけるアミノ酸の欠損部位には特に限定はない。たとえば、H−Rasの場合、C末端を172位まで削ったものが180位まで削ったものよりFRET効率の差を増大させた。すなわち、そのアミノ酸配列のカルボキシル末端領域において好ましくは少なくとも1個、より好ましくは9〜20個、さらに好ましくは17個のアミノ酸の欠損を有してなるものが好ましい。また、R−Rasの場合、アミノ末端から28個のアミノ酸を削ったものが削らないものよりもFRET効率の差を増大させた。すなわち、そのアミノ酸配列のアミノ末端領域において好ましくは少なくとも1個、より好ましくは1〜28個、さらに好ましくは28個のアミノ酸の欠損を有してなるものが好ましい。
なお、前記アミノ末端領域またはカルボキシル末端領域とは、低分子量GTP結合タンパク質のアミノ酸配列において、そのアミノ末端またはカルボキシル末端から、アミノ酸の個数で好ましくは30個までの領域をいう。
また、標的タンパク質も、対応する低分子量GTP結合タンパク質に結合することができれば該タンパク質の一部でもよく、必ずしも、その全部(全長)である必要はない。ここで、標的タンパク質の一部とは、前記低分子量GTP結合タンパク質と同様の方法において、その対応する低分子量GTP結合タンパク質との結合が検出され得るタンパク質部分をいう。たとえば、Raf(GenBank/EMBL アクセッション番号:X03484)であれば、好ましくはRas結合領域(RBD)、詳しくは、好ましくは51〜204位、より好ましくは51〜131位に相当するアミノ酸配列部分からなるタンパク質部分を、RalGDS(GenBank/EMBL アクセッション番号:U14417)であれば、好ましくは202〜309位、より好ましくは211〜297位に相当するアミノ酸配列部分からなるタンパク質部分を、Pak1(GenBank/EMBL アクセッション番号:NM002576)であれば、好ましくはRac1結合領域、詳しくは68〜150位に相当するアミノ酸配列部分からなるタンパク質部分を、mDial(GenBank/EMBL アクセッション番号:E17361)であれば、好ましくはRho結合領域、詳しくは68〜240位、さらに好ましくは、68〜180位に相当するアミノ酸配列部分からなるタンパク質部分を挙げることができる。
一方、GFPドナータンパク質および/またはGFPアクセプタータンパク質も、FRETのペアーとなる機能が保たれていればそれらタンパク質の一部でもよく、必ずしも全部(全長)である必要はない。しばしば、それらのアミノ酸配列のカルボキシル末端を短くすることにより、FRET効率の差の増大が生ずる。たとえば、GFPアクセプタータンパク質および/またはGFPドナータンパク質の一部としては、それらのアミノ酸配列のカルボキシル末端領域に好ましくは少なくとも1個、より好ましくは1〜11個の欠損を有してなるものを挙げることができる。なお、かかる領域におけるアミノ酸の欠損部位には特に限定はない。たとえば、EYFPの場合、そのアミノ酸配列のカルボキシル末端領域において好ましくは少なくとも1個、より好ましくは1〜11個、さらに好ましくは11個のアミノ酸の欠損を有してなるものが好ましい。また、ECFPの場合、そのアミノ酸配列のカルボキシル末端領域において好ましくは少なくとも1個、より好ましくは1〜11個、さらに好ましくは11個のアミノ酸の欠損を有してなるものが好ましい。ここで、カルボキシル末端領域とは、本発明に使用するGFP関連タンパク質のアミノ酸配列において、そのカルボキシル末端から、アミノ酸の個数で好ましくは1〜20個までの、より好ましくは11個までの領域をいう。なお、FRETのペアーとなる機能が保たれているか否かは、たとえば、公知の方法に従いFRETのペアを形成すると想定される1対のタンパク質分子を共に大腸菌で生産し、当該1対のタンパク質を含む細胞抽出液において、当該タンパク質それぞれの想定される励起波長での蛍光強度を観察するという方法により評価することができる。
さらに、GFPアクセプタータンパク質および/またはGFPドナータンパク質は変異を有していてもかまわない。かかる変異の導入は、FRETのペアーとなる機能が保たれている限り、GFPアクセプタータンパク質および/またはGFPドナータンパク質のアミノ酸配列における任意の部位に対し行うことができる。たとえば、変異の態様としては複数のアミノ酸の置換が挙げられ、かかるアミノ酸置換の具体的態様としては、たとえば、Phe64Leu、Val68Leu、Ser72Ala、Ile167Thrなどが挙げられる。このような変異を導入することで発色団形成効率の上昇や、FRET効率の上昇などの効果が得られるので好ましい。変異の導入は、公知の制限酵素を用いる方法や、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を用いる方法により行うことができる。
また、低分子量GTP結合タンパク質および/またはその標的タンパク質に変異を導入したものも本発明において好適に使用することができる。例えば点突然変異を導入することにより、グアニンヌクレオチド交換因子やGTPアーゼ活性化因子に対する感受性を向上させたものを得ることができる。かかる変異の導入は、互いに結合する機能が保たれている限り、低分子量GTP結合タンパク質および/またはその標的タンパク質のアミノ酸配列における任意の部位に対し行うことができる。たとえば、変異の態様としてはアミノ酸の置換、挿入、欠失などが挙げられ、具体的には、たとえば、H−Rasのアミノ酸配列においてIle36をLeuに変化させる態様(Ile36Leu)が挙げられる。かかるH−Rasにおける変異により、当該H−Rasは、多数の変異の中でもGTPアーゼ活性化因子に対し最も高い感受性を示すようになる。その結果、モニタータンパク質のダイナミックレンジを変化させることができる。かかる変異を有するH−Rasは、本発明のモニタータンパク質において好適に使用することができる。なお、変異の導入は、公知の制限酵素を用いる方法や、PCRを用いる方法により行うことができる。
本発明のモニタータンパク質においては、構成要素である各タンパク質の空間的な配置は、その機能発現に関連する因子である。かかる配置を変化させることによりFRET効率の差を非常に増大させることができる。たとえば、モニタータンパク質における各構成タンパク質間にスペーサーとなるペプチド配列を入れ、FRET効率の差を調節することができる。かかるスペーサーは、FRET効率の差を増大させる観点から、低分子量GTP結合タンパク質と標的タンパク質との間に挿入することが好ましい。スペーサーとなるペプチド配列としては、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜10個の連続した任意のアミノ酸からなるペプチドを挙げることができる。かかるペプチドを低分子量GTP結合タンパク質と標的タンパク質との間に挿入した場合、FRET効率の差が増大すること、GFP関連タンパク質自身の折りたたみの効率が上昇することなどが期待できる。また、各構成タンパク質が、本発明のモニタータンパク質内において適切なコンフォメーションをとり得る観点から、好ましくはグリシンを主とする低分子で二次構造を形成しにくいという性質を有するアミノ酸からなるペプチドをスペーサーとして用いることが好ましい。
また、本発明のモニタータンパク質のアミノ酸配列のアミノ末端および/またはカルボキシル末端に他のタンパク質あるいはペプチドを融合することも好ましい態様の1つである。特に、該モニタータンパク質に、細胞内局在シグナル、たとえば、公知の小胞体(ER)移行シグナル、細胞膜局在シグナルなどを付加することにより、細胞内の局所でのGTP結合タンパク質の活性化を直接測定することが可能となり好ましい。また、後述するように、細胞内の局所でのGTP結合タンパク質のGTP結合型とGDP結合型の量比(GTP/GDP比)(モル比)を直接測定することも可能となり好ましい。
本発明のモニタータンパク質では、GTPが結合し低分子量GTP結合タンパク質が活性化された場合、該モニタータンパク質内で低分子量GTP結合タンパク質と標的タンパク質との結合が誘導され全体のコンフォメーションが変化することになり、GFPアクセプタータンパク質とGFPドナータンパク質との距離と方向とが変化する。次いで、特定の波長の光を照射すると、かかるアクセプタータンパク質とドナータンパク質との間でFRET効率の増加が検出されるようになる(第2図)。このようなFRET効率の変化には、前記モニタータンパク質のコンフォメーション変化後におけるGFPアクセプタータンパク質とGFPドナータンパク質の配置が影響する。たとえば、GFPドナータンパク質とGFPアクセプタータンパク質との距離が短くなるとFRET効率は増加し、距離が長くなるとFRET効率は減少する。FRET効率の変化の幅、すなわち、FRET効率の差の増減は、たとえば、用いる各構成タンパク質の性質により、スペーサーペプチド等の挿入により、所望により適宜調節することができる。
なお、上述する本発明のモニタータンパク質が本発明の所望の効果を発現し得るか否かについての評価は、たとえば、後述の実施例1に記載の方法に準じて評価することができる。
本発明はまた、本発明のモニタータンパク質をコードする遺伝子を提供する。かかる遺伝子は、該タンパク質の前記各構成タンパク質の遺伝子情報をGenBank等から入手し、公知のPCRを用いた方法により、あるいは制限酵素とリガーゼとを用いた方法により常法に従って作製することができる。
本発明のモニタータンパク質の構成タンパク質として好適に用いられる各タンパク質のGenBank/EMBLにおけるアクセッション番号を以下に示す。なお、アクセッション番号は各タンパク質名の後の括弧内に示す。
(1)低分子量GTP結合タンパク質
H−Ras(V00574)、K−Ras(L00045〜L00049)、N−Ras(L00040〜L00043)、R−Ras(M14948,M14949)、Rap1A(X12533)、Rap1B(X08004)、Rap2A(X12534)、Rap2B(X52987)、RhoA(L25080)、RhoB(X06820)、RhoC(X06821)、Rac1(M29870)、Rac2(NM002872)、Rac3(NM005052)、Cdc42(M57298)
(2)標的タンパク質
Raf(X03484)、RalGDS(U14417)、Pak1(NM002576)、mDia1(E17361)
(3)GFPドナータンパク質とGFPアクセプタータンパク質
EGFP(U76561)、EYFP(AVU73901 1)、ECFP(AB041904)
なお、EBFP(GFPに以下の3つの変異を有するものである:Phe64Leu、Tyr66His、Tyr145Phe)については文献6に記載されている。
本発明はさらに、前記遺伝子を含む発現ベクターを提供する。かかるベクターは、公知の方法に従い、本発明のモニタータンパク質をコードする遺伝子を公知の原核細胞発現ベクター、例えばpGEX−2T(アマシャム−ファルマシア バイオテック社製)、真核細胞発現ベクター、例えばpCAGGS(文献7)に、あるいはウイルスベクター、例えばpShuttle(CLONTECH社製)に挿入することにより得ることができる。発現ベクターとしては発現プラスミドが好ましい。
本発明はさらに、前記発現ベクターを保持する形質転換された細胞およびトランスジェニック動物を提供する。かかる細胞は、前記発現ベクターを対象とする細胞に導入することにより得られる。細胞への導入法としては公知のトランスフェクション法やウイルス感染法が使用でき特に制限はないが、たとえばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、あるいはエレクトロポレーション法等が使用できる。該細胞としては真核細胞あるいは原核細胞を用いることができ、特に制限はない。たとえば、真核細胞としては、ヒト胎児腎臓由来HEK293T細胞、サル腎臓由来COS細胞、ヒト臍帯由来HUVEC細胞、酵母など、原核細胞としては、大腸菌など、培養細胞や、その他、各種細胞を使用できる。一方、前記発現ベクターを公知の方法、たとえば、マウス受精卵の核内にプラスミドDNAをマイクロインジェクションする方法などにより、マウス等の個体に直接導入することでトランスジェニック動物を得ることができる。
本発明においてはさらに、本発明のモニタータンパク質を用いる低分子量GTP結合タンパク質の活性化を測定する方法を提供する。かかる方法によれば、本発明のモニタータンパク質におけるFRETを検出することで低分子量GTP結合タンパク質の活性化を測定することができる。また、前記する本発明の形質転換された細胞またはトランスジェニック動物においてFRETを検出し、当該細胞または動物における低分子量GTP結合タンパク質の活性化を直接測定することもできる。かかる場合、別途、GTPの結合した低分子量GTP結合タンパク質とGTPからの無機リン酸の遊離によって生じるGDPの結合した低分子量GTP結合タンパク質とを測定してGTP/GDP比〔またはGTP/(GDP+GTP)比〕(いずれもモル比)を算出し、さらに対応するFRET効率を測定して予め検量線を作成しておけば、当該細胞または動物におけるFRET効率に基づいて、GTP/GDP比を算出することができる。
たとえば、具体的には以下のような方法が例示される。
(1)分光光度計を用いた測定法
モニタータンパク質を発現し得る本発明の形質転換細胞を、当該タンパク質の発現が可能な条件下に培養する。次いで、当該細胞を可溶化する。細胞の可溶化の方法に特に制限はないが、界面活性剤TritonX100を含む溶液を用いて可溶化する方法が好ましい。可溶化した溶液に、GFPドナータンパク質に対する励起光(たとえば、波長433nm)を照射し、たとえば、波長450nmから550nmの範囲で蛍光プロフィールを公知の蛍光分光光度計を用いて測定する。得られた蛍光プロフィールのデータを基に、たとえば、波長475nmにおけるGFPドナータンパク質の蛍光強度と波長530nmにおけるGFPアクセプタータンパク質の蛍光強度との比〔(波長530nmにおける蛍光強度)/(波長475nmにおける蛍光強度)〕を算出し、それをGFPドナータンパク質からGFPアクセプタータンパク質へのFRET効率とする。GTPの低分子量GTP結合タンパク質への結合前に比べ、結合後(すなわち、低分子量GTP結合タンパク質の活性化後)にFRET効率が上昇するため、それを指標として低分子量GTP結合タンパク質の活性化を測定する。なお、低分子量GTP結合タンパク質の活性化と不活性化は、たとえば、前者については、グアニンヌクレオチド交換因子Sos発現ベクター(pCAGGS−mSos;文献9に記載)を本発明のモニタータンパク質を発現し得る細胞にトランスフェクトすることにより、また、上皮細胞増殖因子(EGF)による当該細胞の刺激により行うことが、後者については、たとえば、GTP水解促進酵素Gap1m発現ベクター(pEF−Bos−Gap1m;文献9に記載)を当該細胞にトランスフェクトすることにより行うことができる。一方、FRET効率はGFPドナータンパク質とGFPアクセプタータンパク質との距離および方向の変化により生ずるため、FRET効率の変化によりモニタータンパク質の構造変化をも検出することができる。
(2)顕微鏡を用いた測定法
モニタータンパク質を発現した本発明の形質転換細胞またはトランスジェニック動物を蛍光顕微鏡で観察し、低分子量GTP結合タンパク質の活性化前後に生ずるFRET効率の変化を直接的に検出する。なお、低分子量GTP結合タンパク質の活性化と不活性化は前記(1)分光光度計を用いた測定法の場合と同様にして行うことができる。
用いる蛍光顕微鏡には特に制限はないが、公知のキセノン光源を有する倒立型蛍光顕微鏡(Carl Zeiss,Axiovert 100)に回転式蛍光励起フィルターおよび回転式蛍光発光フィルターを備え、高感度冷却CCDカメラを備えたものが好ましい。さらにフィルターおよびカメラ画像は、日本ローパー社製Metamorph画像解析ソフトにて制御ならびに解析できるシステムが望ましい。
前記細胞または動物にGFPドナータンパク質の励起光を照射し、GFPドナータンパク質の蛍光波長での画像をCCDカメラにより撮影し、その後、GFPアクセプタータンパク質の蛍光波長での画像を撮影する。両画像の蛍光強度の比を測定することにより各測定点でのFRET効率を算出できる。また、たとえば、グアニンヌクレオチド交換因子Sos発現ベクターをモニタータンパク質を発現し得る細胞または動物に種々の量で導入して低分子量GTP結合タンパク質の種々の活性化状態(すなわち、活性化の程度が異なる状態)を構築する。次いで、各状態における細胞または動物を蛍光顕微鏡で観察し、前記と同様にしてFRET効率を求める。また、各状態における細胞(当該動物から得られた、FRET効率を求めた部位に由来する細胞を含む)を可溶化し、別途、GTPの結合した低分子量GTP結合タンパク質とGDPの結合した低分子量GTP結合タンパク質とを測定してGTP/GDP比を算出する。詳しくは、公知の方法(文献2)により低分子量GTP結合タンパク質へのGTP結合量およびGDP結合量を測定してGTP/GDP比を求める。次いで、得られたGTP/GDP比を、予め求めておいたFRET効率と関連付ける。すなわち、各状態での測定時点におけるFRET効率とGTP/GDP比を測定し、それらを基に検量線を作成する。このようにして別途、検量線を作成しておけば、モニタータンパク質を発現した細胞または動物におけるFRET効率を蛍光顕徹鏡を用いて直接測定するだけで、各測定時点でのFRET効率からGTP/GDP比を求めることが可能となる。従って、非侵襲的に細胞内または個体内における低分子量GTP結合タンパク質の活性化状態を容易に把握することができ、しかも、かかる状態におけるGTP/GDP比を具体的に得ることができる。なお、かかる検量線を用いる方法は、前記(1)の方法においても同様に使用することができる。
本発明によれば、非侵襲的な低分子量GTP結合タンパク質の活性化の測定を可能にする低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質、その遺伝子等が提供される。また、かかるモニタータンパク質を発現し、非侵襲的な低分子量GTP結合タンパク質の活性化の測定に有用な前記発現ベクターを保持する形質転換された細胞およびトランスジェニック動物、ならびに前記タンパク質を用いる低分子量GTP結合タンパク質の活性化を測定する方法が提供される。従って、低分子量GTP結合タンパク質の活性化状態を細胞内または個体内で非侵襲的に知ることが可能となり、生命現象の理解のみならず、薬剤開発(たとえば、癌、自己免疫疾患、アレルギー性疾患等の治療剤または予防剤)において多大な利益をもたらし得る。
さらに本発明の別の態様として、低分子量GTP結合タンパク質の活性調節物質のスクリーニング方法を提供する。すなわち、
(a)低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質を発現する、当該タンパク質の遺伝子を含む発現ベクターを保持する形質転換された細胞と被検物質とを接触させる工程、ならびに
(b)低分子量GTP結合タンパク質の活性の変化を検出する工程、
を含む、低分子量GTP結合タンパク質の活性調節物質のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法によれば、本発明の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質を発現する細胞を構築し、バイオアッセイ系を用いることによって、低分子量GTP結合タンパク質の活性を変化させる物質またはその塩(すなわち、低分子量GTP結合タンパク質の活性調節物質)を効率よくスクリーニングすることができる。当該方法における被検物質としては特に限定されるものではないが、たとえば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性物質、合成物質、発酵生産物等を挙げることができる。
本発明のスクリーニング方法は、(i)低分子量GTP結合タンパク質活性化物質の存在下、あるいは(ii)当該活性化物質の非存在下において行うことができる。なお、低分子量GTP結合タンパク質活性化物質とは、低分子量GTP結合タンパク質を活性化する物質であり、たとえば、上皮細胞増殖因子等の細胞増殖因子、インターロイキン等のサイトカイン類を挙げることができ、またこれらに限定されない。低分子量GTP結合タンパク質の活性調節物質は、(i)の場合、低分子量GTP結合タンパク質の活性を増強あるいは減少させる物質として、(ii)の場合、低分子量GTP結合タンパク質の活性を増強させる物質としてスクリーニングすることができる。
具体的には、本発明のスクリーニング方法は、前記活性化物質の存在下または非存在下に、工程(a)において、本発明の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質を発現する細胞と被検物質とを接触させる(態様1)。接触させる方法は特に限定されるものではなく、たとえば、被検物質の存在下に当該細胞を培養することにより行うことができる。また、平行して、対照として、同条件下、本発明の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質を発現する細胞と被検物質とを接触させない場合(態様2)を行う。次いで、工程(b)において、それぞれの場合における低分子量GTP結合タンパク質の活性を測定し、態様2と比較した態様1における低分子量GTP結合タンパク質の活性の変化を検出することにより低分子量GTP結合タンパク質の活性調節物質のスクリーニングを行う。なお、当該活性の測定は、各々の場合におけるFRET効率を測定することにより行なうことができる。
すなわち、前記(i)の場合に、低分子量GTP結合タンパク質の活性をより増強する物質は、低分子量GTP結合タンパク質の活性を増強し得る活性調節物質であり、逆に当該活性を減少する物質は、低分子量GTP結合タンパク質の活性を減少し得る活性調節物質である。また、前記(ii)の場合に、低分子量GTP結合タンパク質の活性を増強する物質は、低分子量GTP結合タンパク質の活性を増強し得る活性調節物質である。
以上の方法により、簡便かつ迅速に低分子量GTP結合タンパク質の活性調節物質を得ることができる
参照文献
以下に、本明細書において記載する参照文献を列挙する。かかる参照文献は参照により、その全教示が本明細書中に取り込まれる。なお、本明細書中では〔文献(数字)〕として参照する各文献の文献番号を示す。
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2.Satoh,T.and Y.Kaziro.1995.「刺激された造血細胞におけるRas結合グアニンヌクレオチドの測定(Measurement of Ras−bound guanine nucleotide in stimulated hematopoietic cells.)」Method.Enzymol.255:149−155.
3.Franke,B.,J.W.N.Akkerman,and J.L.Bos.1997.「ヒト血小板における迅速なRap1のCa2+媒介活性化(Rapid Ca2+−mediated activation of Rap1 in human platelets.)」EMBO J.15:252−259.
4.Tsien,R.Y.and A.Miyawaki.1998.「生細胞の機構を見る(Seeing the machinery of live cells.)」Science 280:1954−1955.
5.Pollok,B.A.and R.Heim.1999.「FRETに基づく応用におけるGFPの使用(Using GFP in FRET−based applications.)」Trends Cell Biol.9:57−60.
6.Miyawaki,A.,J.Llopis,R.Heim,J.M.McCaffery,J.A.Adams,M.Ikura,and R.Y.Tsien.1997.「グリーンフルオレセントプロテインとカルモジュリンに基づくCa2+の蛍光インディケーター(Fluorescent indicators for Ca2+ based on green fluorescent proteins and calmodulin)Nature 388:882−887.
7.Niwa,H.,K.Yamamura,and J.Miyazaki.1991.「新規真核細胞ベクターによる高発現形質転換体の効率的な選抜(Efficient selection for high−expression transfectants with a novel eukaryotic vector.)」Gene 108:193−200.
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10.Yamashita,S.,N.Mochizuki,Y.Ohba,M.Tobiume,Y.Okada,H.Sawa,K.Nagashima,and M.Matsuda.「GalDAG−GEFIIIによるRas、R−Ras、Rap1の活性化(GalDAG−GEFIII activation of Ras,R−Ras,and Rap1.)」J.Biol.Chem.275:25488−25493,2000.
11.T.Gotoh,S.Hattori,S.Nakamura,H.Kitayama,M.Noda,Y.Takai,K.Kaibuchi,H.Matsui,O.Hatase,H.Takahashi,T.Kurata,and M.Matsuda.「Crk SH3ドメインバインディンググアニンヌクレオチドリリーシングファクター、C3GのターゲットとしてのRap1の同定(Identification of Rap1 as a target for Crk SH3 domain−binding guanine nucleotide−releasing factor,C3G)」Mol.Cell.Biol.15:6746−6753,1995.
実施例
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明の範囲はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下においては、ヒトH−RasをRasと、ヒトc−Raf1をRafと、ヒトRap1AをRap1Aと、ヒトRalGDSをRalGDSと、ヒトR−RasをR−Rasという。また、ヒトRac1をRac1と、ヒトCdc42をCdc42と、ヒトRhoAをRhoAと、ヒトPak1をPak1と、ヒトmDialをmDialという。
実施例1 Rafras1722によるRas活性化の測定
(1)RasとRafをコードするキメラ遺伝子の作成
(i)Ras遺伝子の増幅
RasのcDNA(Genbank/EMBL アクセッション番号:V00574)を鋳型として、センスプライマーhRasXh(5’−CTCGAGATGACGGAATATAAGCTGGTGGTG−3’)(配列番号:1)およびアンチセンスプライマーRas172Raf(5’−AGTGTTGCTTGTCTTAGAAGGGGTACCACCTCCGGAGCCGTTCAGCTTCCGCAGCTTGTG−3’)(配列番号:2)と、耐熱性DNA複製酵素Pfx(Gibco−BRL,Bethesda,U.S.A)とを用い、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法によりRasの1位から172位のアミノ酸配列に対応するcDNA部分を増幅した。
センスプライマーhRasXhは、5’末端の下線で示した制限酵素XhoIの切断部位の塩基配列とRasの1位から8位のアミノ酸配列に対応するcDNA部分の塩基配列とからなる。一方、アンチセンスプライマーRas172Rafは、5’末端より、RafのRas結合領域のアミノ酸配列のアミノ末端領域(61位から67位まで)に対応するcDNA部分の相補鎖の塩基配列、スペーサー配列(下線部)、Rasの166位から172位のアミノ酸配列に対応するcDNA部分の相補鎖の塩基配列とからなる。
(ii)Raf遺伝子の増輻
RafのcDNA(Genbank/EMBL アクセッション番号:X03484)を鋳型として、センスプライマーRafRBD−F1(5’−GGTACCCCTTCTAAGACAAGCAACACT−3’)(配列番号:3)およびアンチセンスプライマーRafRBDn2(5’−GCGGCCGCCCAGGAAATCTACTTGAAGTTC−3’)(配列番号:4)と前記Pfxとを用い、PCR法によりRafの51位から131位のアミノ酸配列に対応するcDNA部分を増幅した。
センスプライマーRafRBD−F1は、5’末端の下線で示した制限酵素KpnIの切断部位の塩基配列とRafの51位から57位のアミノ酸配列に対応するcDNA部分の塩基配列とからなる。一方、アンチセンスプライマーRafRBDn2は、5’末端の下線で示した制限酵素NotIの切断部位の塩基配列とRafのRas結合領域のアミノ酸配列のカルボキシル末端領域(125位から131位まで)に対応するcDNA部分の相補鎖の塩基配列とからなる。
(iii)RasとRafをコードするキメラ遺伝子の増幅
前記(i)および(ii)で増幅された遺伝子を混合したものを鋳型として、センスプライマーhRasXhおよびアンチセンスプライマーRafRBDn2と前記Pfxとを用い、PCR法によりRasとRafをコードするキメラ遺伝子からなるcDNAを増幅した。次いで、得られたDNA断片をpCR−bluntII−TOPO(Invitrogen社)にライゲーションし、得られたプラスミド構築物で大腸菌を形質転換した。かかる大腸菌を培養後、公知のアルカリSDS法によりプラスミドを精製した。
(2)EYFPおよびECFPを発現するベクターpFret2の構築
(i)pCAGGS−P7の構築
pBluescript−SKII(+)(Stratagene社)のマルティプルクローニングサイトをプライマーP7(5’−CGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGAC−3’)(配列番号:5)とプライマーP8(5’−AGCGGATAACAATTTCACACAGGAAAC−3’)(配列番号:6)とを用い、前記と同様にしてPCR法により増幅し、DNA断片を得た。
一方、哺乳類細胞発現ベクターpCAGGS(文献7)をEcoRIで切断し、Klenow酵素で平滑末端化処理した。次いで、前記DNA断片と前記処理後のpCAGGSとをT4DNAリガーゼで結合した。得られたベクターをpCAGGS−P7と呼ぶ。
(ii)EYFP遺伝子の増幅
本実施例においては、公知のEGFP(Genbank/EMBL アクセッション番号:U76561)に対し、PCR法を用いる公知の方法により6つのアミノ酸置換(Leu65Phe;Thr66Gly;Val69Leu;Gln70Lys;Ser73Ala;Thr204Tyr)を導入したものをEYFPとして用いた。このEYFPのcDNAを鋳型として、センスプライマーGFP−N2(5’−GGATCCGGCATGGTGAGCAAGGGCGAGGAG−3’)(配列番号:7)およびアンチセンスプライマーGFP−N3(5’−GGATCCGGTACCTCGAGCTTGTACAGCTCGTCCATG−3’)(配列番号:8)と前記Pfxとを用い、PCR法によりEYFPの全長アミノ酸配列に対応するcDNAを増幅した。
センスプライマーGFP−N2は、5’末端の下線で示した制限酵素BamHIの切断部位の塩基配列と3塩基のスペーサーとEYFPの1位から7位のアミノ酸配列に対応するcDNA部分の塩基配列とからなる。一方、アンチセンスプライマーGFP−N3は、5’末端の下線で示した制限酵素BamHI、KpnIおよびXhoIの各々の切断部位の塩基配列と後述のECFPのアミノ酸配列のカルボキシル末端領域(233位から239位まで)に対応するcDNA部分の相補鎖の塩基配列とからなる。
(iii)ECFP遺伝子の増幅
本実施例においては、EGFP(Genbank/EMBL アクセッション番号:U76561)に対し、PCR法を用いる公知の方法により4つのアミノ酸置換(Tyr67Trp;Asn147Ile;Met154Thr;Val164Ala)を導入したものをECFPとして用いた。このECFPのcDNAを鋳型として、センスプライマーXFPNot2(5’−GCGGCCGCATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGC−3’)(配列番号:9)およびアンチセンスプライマーXFP−Bgl(5’−AGATCTACAGCTCGTCCATGCCGAGAG−3’)(配列番号:10)と前記Pfxとを用い、PCR法によりECFPの全長アミノ酸配列に対応するcDNAを増幅した。
センスプライマーXFPNot2は、5’末端の下線で示した制限酵素NotIの切断部位の塩基配列とECFPの1位から8位のアミノ酸配列に対応するcDNA部分の塩基配列とからなる。一方、アンチセンスプライマーXFP−Bglは、5’末端の下線で示した制限酵素BglIIの切断部位の塩基配列とECFPのアミノ酸配列のカルボキシル末端領域(231位から237位まで)に対応するcDNA部分の相補鎖の塩基配列とからなる。
(iv)pFret2の構築
前記(i)で得られたpCAGGS−P7を制限酵素XhoIで切断し、dTTPとdCTPの存在下にKlenow酵素で処理した。また、前記(ii)で得られたEYFPのDNA断片をBamHIで切断し、次いでdGTPとdATPの存在下にKlenow酵素で処理した。得られた二つの遺伝子断片をT4DNAリガーゼで結合し、プラスミドを得た。該プラスミドをNotIとBglIIで切断し、次いで、NotIとBglIIで予め切断しておいた前記(iii)で得られたECFPのDNA断片と、T4DNAリガーゼを用いて結合した。得られたプラスミドをpFret2と命名した。
(3)Ras活性モニタータンパク質遺伝子の発現プラスミドであるpRafras1722の構築
前記(2)−(iv)で得られたpFret2をXhoIとNotIで切断し、次いで、XhoIとNotIで予め切断しておいた前記(1)−(iii)で得られたキメラ遺伝子と、T4DNAリガーゼを用いて結合した。得られたプラスミドをpRafras1722と呼ぶ。pRafras1722の構造、その翻訳領域の塩基配列(配列番号:11)および予測されるアミノ酸配列(配列番号:12)を第3図と第4図〜第6図にそれぞれ示す。
かかる塩基配列および予測されるアミノ酸配列を説明する:
nt 1−717 :オワンクラゲ(Aequorea)のEYFP
nt 718−723 :リンカー
nt 724−1239 :Ras
nt 1240−125 :リンカー
nt 1258−1500:Raf
nt 1501−1509:リンカー
nt 1510−2220:オワンクラゲのECFP
(4)哺乳類細胞でのRas活性モニタータンパク質(Rafras1722)の発現と分光光度法による解析
ヒト胎児腎臓由来HEK293T細胞は10%ウシ胎仔血清を含むDMEM培地(日本製薬社製)で培養した。該HEK293T細胞に前記(3)で得られたpRafras1722とグアニンヌクレオチド交換因子Sos発現ベクター(pCAGGS−mSos)またはGTP水解促進酵素Gap1m発現ベクター(pEF−Bos−Gap1m)をリン酸カルシウム法にてトランスフェクトした。トランスフェクト後のHEK293T細胞を10%ウシ胎仔血清を含むDMEM培地(日水製薬社製)で培養し、Ras活性モニタータンパク質を発現させた。48時間培養後に、細胞をリン酸緩衝生理食塩水にて洗浄し、溶解液(20mM Tris−HCl,pH7.5,150mM NaCl,5mM MgCl,0.1%Triton X−100)にて溶解した。得られた細胞溶解液を10,000×gで遠心分離後、上清を回収した。
該上清を蛍光分光光度計(日本分光社製、FP−750)の1mlキュベットに入れ、励起波長433nmにて、450nmから550nmまでの蛍光強度を測定した。得られた蛍光プロフィールを第7図に示す。
なお、前記トランスフェクト後のHEK293T細胞を32Pi無機リン酸で標識した後に該細胞の溶解液を得、抗GFP抗体を用い、発現させたRas活性モニタータンパク質を免疫沈降し、結合しているGTPおよびGDPを薄層クロマトグラフィーにて分離することにより、Ras活性モニタータンパク質について得られた蛍光プロフィールのデータから得られるFRET効率〔波長433nmで励起したときの、(波長530nmにおける蛍光強度)を(波長475nmにおける蛍光強度)で割った値〕と実際のGTP結合の程度とを対応付けることが可能である(第8図)。なお、第8図中、FRET効率は「蛍光強度比(波長530/475)」と、GTP結合の程度は「GTP/(GDP+GTP)(%)」として示した。
(5)哺乳類細胞でのRas活性モニタータンパク質の発現とタイムラプス蛍光顕微鏡による解析
サル腎臓由来COS7細胞は10%ウシ胎仔血清を含むフェノールレッド不含MEM培地(日本製薬社製)で培養した。該COS7細胞に前記(3)で得られたpRafras1722をリン酸カルシウム法にてトランスフェクトした。トランスフェクト後のCOS7細胞を10%ウシ胎仔血清を含むフェノールレッド不含MEM培地(日水製薬社製)で培養し、Ras活性モニタータンパク質を発現させた。トランスフェクションの48時間後に、培養細胞をタイムラプス蛍光顕微鏡による観察に供した。
かかる顕微鏡は、回転式蛍光励起フィルター装置および回転式蛍光発光フィルター装置(LUDL electronic社製)を備え、さらに高感度冷却CCDカメラ(Photometrix社製、Micromax450)を備えた、キセノン光源を有する倒立型蛍光顕微鏡(Carl Zeiss社製、Axiovert 100)であり、観察の際は、該顕微鏡の制御ならびに観察結果の解析を日本ローパー社製メタモルフ(Metamorph)画像解析ソフトにより行うシステムを用いた。蛍光励起フィルター、蛍光発光フィルター、ダイクロイックミラーはオメガ社より購入した。
前記培養細胞に433nmの励起光を照射し、475nmのECFPドナーの蛍光波長での画像をCCDカメラにより撮影し、次いで、530nmのEYFPアクセプターの蛍光波長での画像を撮影した。両画像データをもとに両者の蛍光強度の比を求めることにより各測定点でのFRET効率を計算した。
実施例2 Ras活性を簡便に測定するための培養細胞株の取得
マウス線維芽細胞NIH3T3細胞は10%ウシ胎仔血清を含むDMEM培地(日水製薬社製)で培養した。かかるNIH3T3細胞に、実施例1で得られたpRafras1722とG418耐性遺伝子を含むベクターpSV2neo(Genbank/EMBL:U02434)とを、FuGene6(日本ロッシュ社製)を用いて共トランスフェクトした。該細胞を前記培地にて培養し、48時間培養後に1:10の希釈率で播きなおし、G418(Gibco−BRL社製)を0.5mg/mlになるように培地中に添加した。培地は3日に一度交換した。培養2週間後、よく分離したコロニーをクローニングし、3T3−Rafras細胞と命名した。
かかる3T3−Rafras細胞を10%ウシ胎仔血清と0.5mg/mlのG418とを含むDMEM培地(日水製薬社製)で培養し、Ras活性モニタータンパク質を発現させた。次いで、かかるタンパク質の発現を抗Ras抗体(Transduction Lab社)を用いた通常のイムノブロッティング法にて解析した。その結果、約80kDaのタンパク質の発現が認められた(第9図)。
さらに、かかる細胞を上皮細胞増殖因子(EGF)(Sigma社製)で刺激し、実施例1の(4)に記載の方法によりFRET効率を求め、EGF刺激前後で比較した。EGF添加前後における蛍光プロフィールを第10図に示す。
実施例3 Rai−chu311によるRap1A活性化の測定
(1)Rap1AとRalGDSをコードするキメラ遺伝子の作成
(i)Rap1A遺伝子の増幅
Rap1AのcDNA(Genbank/EMBL アクセッション番号:X12533)を鋳型として、センスプライマーhRap1Xh(5’−GGCTCGAGATGCGTGAGTACAAGCTAGTGG−3’)(配列番号:13)およびアンチセンスプライマーRap172RalGDS(5’−GCGGATGATACAGCAGTCGCCACCTCCGGATCCGCCGGTACCTCCACCACCGGTTCCACCTCCGGAGCCATTGATCTTTGACTTTGCAGAAG−3’)(配列番号:14)と、前記Pfxとを用い、PCR法によりRap1Aの1位から172位のアミノ酸配列に対応するcDNA部分を増幅した。
センスプライマーhRap1Xhは、5’末端の下線で示した制限酵素XhoIの切断部位の塩基配列とRap1Aの1位から8位のアミノ酸配列に対応するcDNA部分の塩基配列とからなる。一方、アンチセンスプライマーRap172RalGDSは、5’末端より、RalGDS(Genbank/EMBL アクセッション番号:U14417)のRap1A結合領域のアミノ酸配列のアミノ末端領域(211位から217位まで)に対応するcDNA部分の相補鎖の塩基配列、スペーサー配列(下線部)、Rap1Aの166位から172位のアミノ酸配列に対応するcDNA部分の相補鎖の塩基配列とからなる。
(ii)RalGDS遺伝子の増幅
RalGDSのcDNA(Genbank/EMBL アクセッション番号:U14417)を鋳型として、センスプライマーRalGDS−F(5’−GGCGACTGCTGTATCATCCGC−3’)(配列番号:15)およびアンチセンスプライマーRalGDSR(5’−CGCGGCCGCCCCGCTTCTTGAGGACAAAGTC−3’)(配列番号:16)と前記Pfxとを用い、PCR法によりRalGDSのcDNAを増幅した。
センスプライマーRalGDS−Fは、RalGDSのcDNAのRap1A結合領域のアミノ酸配列のアミノ末端領域(211位から217位まで)に対応するcDNA部分の塩基配列を有する。一方、アンチセンスプライマーRalGDSRは、5’末端の下線で示した制限酵素NotIの切断部位の塩基配列とRalGDSのRap1A結合領域のアミノ酸配列のカルボキシル末端領域(291位から297位まで)に対応するcDNA部分の塩基配列の相補鎖の塩基配列とからなる。
(iii)Rap1AとRalGDSをコードするキメラ遺伝子の増幅
前記(i)および(ii)で増幅された遺伝子を混合したものを鋳型として、センスプライマーhRap1XhおよびアンチセンスプライマーRalGDSRとPfxとを用い、PCR法によりRap1AとRalGDSをコードするキメラ遺伝子からなるcDNAを増幅した。次いで、得られたDNA断片をpCR−bluntII−TOPOにライゲーションし、得られたプラスミド構築物で大腸菌を形質転換した。かかる大腸菌を培養後、公知のアルカリSDS法によりプラスミドを精製した。
(2)Rap1A活性モニタータンパク質遺伝子の発現プラスミドであるpRai−chu311の構築
実施例1の(2)の(ii)において、アンチセンスプライマーGFP−N3に換えてアンチセンスプライマーGFP−d11R(5’−GGATCCGGTACCTCGAGGGCGGCGGTCACGAACTCCAGCAG−3’)(配列番号:17)を用い同様の操作を行い、ECFPと、そのアミノ酸配列のカルボキシル末端のアミノ酸が11個欠損したEYFPとをコードするcDNAを含むベクターを作成した。かかるベクターをXhoIとNotIで切断した。次いで、該ベクターと、XhoIとNotIで予め切断しておいた前記(1)で得られたキメラ遺伝子とをT4DNAリガーゼで結合した。得られたプラスミドをpRai−chu311と命名した。得られたプラスミドの構造ならびに、その翻訳領域の塩基配列(配列番号:18)および予測されるアミノ酸配列(配列番号:19)を第11図と第12図〜第14図にそれぞれ示す。
かかる塩基配列および予測されるアミノ酸配列を説明する:
nt 1−684 :オワンクラゲのEYFP
nt 685−690 :リンカー
nt 691−1206 :Rap1A
nt 1207−1257:リンカー
nt 1258−1515:RalGDS
nt 1516−1521:リンカー
nt 1522−2235:オワンクラゲのECFP
(3)哺乳類細胞で、のRap1A活性モニタータンパク質(Rai−chu311)の発現と分光光度法による解析
実施例1の(4)に記載の方法により解析を行った。得られた蛍光プロフィールを第15図に示す。
実施例4 Rai−chu158によるR−Ras活性化の測定
(1)pRai−chu158の構築
(i)R−Ras遺伝子の増幅
R−RasのcDNA(Genbank/EMBL アクセッション番号:M14948,M14949)を鋳型として、センスプライマーRRas28F(5’−CCCCTCGAGACACACAAGCTGGTGGTC−3’)(配列番号:20)およびアンチセンスプライマーRRas204R(5’−GCCGGTACCGCCACTGGGAGGGCTCGGTGGGAG−3’)(配列番号:21)と、前記Pfxとを用い、PCR法によりR−Rasの28位から204位のアミノ酸配列に対応するcDNA部分を増幅した。
センスプライマーRRas28Fは、5’末端の下線で示した制限酵素XhoIの切断部位の塩基配列とR−Rasの28位から33位のアミノ酸配列に対応するcDNA部分の塩基配列とからなる。一方、アンチセンスプライマーRRas204Rは、5’末端より、KpnI切断部位を含むスペーサー配列(下線部)、R−Rasの198位から204位のアミノ酸配列に対応するcDNA部分の相補鎖の塩基配列とからなる。
(ii)制限酵素断片の作製
前記(i)で得られたPCR産物をXhoIとKpnIとで切断した。
(iii)R−Ras活性モニタータンパク質遺伝子の発現プラスミドであるpRai−chu158の構築
実施例1で得られたpRafras1722をXhoIで完全消化したのち、KpnIで部分消化し、Ras部分を除去したDNA断片を得た。該DNA断片と前記(ii)で得られたDNA断片とをT4DNAリガーゼで結合した。得られたプラスミドをpRai−chu158と命名した。該プラスミドの構造ならびに、その翻訳領域における塩基配列(配列番号:22)および予測されるアミノ酸配列(配列番号:23)を第16図と第17図〜第19図にそれぞれ示す。
かかる塩基配列および予測されるアミノ酸配列を説明する:
nt 1−717 :オワンクラゲのEYFP
nt 718−723 :リンカー
nt 724−1251 :R−Ras
nt 1252−1257:リンカー
nt 1258−1500:Raf
nt 1501−1509:リンカー
nt 1510−2220:オワンクラゲのECFP
(2)哺乳類細胞でのR−Ras活性モニタータンパク質(Rai−chu158)の発現と分光光度法による解析
実施例1の(4)に記載の方法により解析を行った。得られた蛍光プロフィールを第20図に示す。
実施例5 Rasの標的タンパク質結合ドメインに温度感受性変異を有するモニタータンパク質をコードする遺伝子の構築
(1)pRai−chu119の構築
(i)変異を有するRas遺伝子の増幅
実施例1にて用いたRasのcDNAを鋳型として、センスプライマーhRasXh(実施例1にて使用)とアンチセンスプライマーRasI36LR(5’−GGAATCCTCTAGAGTGGGGTCG−3’)(配列番号:24)と前記Pfxとを用い、PCR法によりRasの1位から39位のアミノ酸配列に対応するcDNA部分を増幅した。
アンチセンスプライマーRasI36LRは、Rasの35位から42位のアミノ酸配列に対応するcDNA部分の配列を有し、下線で示した部分にIleのLeuへの点突然変異を有している。この変異はRasの活性を温度感受性にすることが知られている(文献8)。
同様に、RasのcDNAを鋳型として、センスプライマーRasI36LF(5’−CGACCCCACTCTAGAGGATTCC−3’)(配列番号:25)とアンチセンスプライマーRas172Raf(実施例1にて使用)と前記Pfxとを用い、PCR法によりRasのアミノ酸配列の32位から172位に対応するcDNA部分を増幅した。
得られた2つのDNA断片を混合し、センスプライマーhRasXhとアンチセンスプライマーRas172Rafとを用い、前記と同様にしてPCRを行い、Rasのアミノ酸配列の1位から172位に対応し、かつIle36のLeuへの点突然変異を含むDNAを増幅した。
(ii)制限酵素断片の作製
上記PCR産物をXhoIとKpnIとで切断した。
(iii)実施例1で得られたpRafras1722をXhoIで完全消化したのち、KpnIで部分消化し、Rasの部分を除去したDNA断片を得た。該DNA断片と前記(ii)で得られたDNA断片とをT4DNAリガーゼで結合した。得られたプラスミドをpRai−chu119と命名した。該プラスミドの翻訳領域における塩基配列(配列番号:26)および予測されるアミノ酸配列(配列番号:27)を第21図〜第23図にそれぞれ示す。
(2)哺乳類細胞でのモニタータンパク質(Rai−chu119)の発現と分光光度法による解析
ヒト胎児腎臓由来HEK293T細胞を10%ウシ胎仔血清を含むDMEM培地(日水製薬社製)で培養した。該HEK293T細胞に、実施例1において作成したpRafras1722またはpRai−chu119と、グアニンヌクレオチド交換因子Sos発現ベクター(pCAGGS−mSos)とをリン酸カルシウム法にてトランスフェクトした。前記同培地にて24時間培養後に33℃および40℃のインキュベータに移し、さらに24時間、培養した。該細胞をリン酸緩衝生理食塩水にて洗浄した後、溶解液(20mM Tris−HCl,pH7.5,150mM NaCl,5mM MgCl,0.1%Triton X−100)にて溶解した。得られた細胞溶解液を10,000×gで遠心分離し上清を回収した。
該上清を蛍光分光光度計(日本分光社製、FP−750)の1mlキュベットに入れ、励起波長433nmにて、450nmから550nmまでの蛍光強度を測定した。得られた蛍光プロフィールを第24図に示す。
実施例6 Rafras1722を発現するトランスジェニックマウスの作成およびこのマウスの心筋培養細胞におけるRas活性化の測定
(1)実施例1で得られたpRafras1722を制限酵素SpeIおよびBamHIで切断し、これをアガロース電気泳動にかけ、約4.5kbのプロモーター、イントロン、コーディング配列、ポリA付加シグナルを含む領域のDNA断片を得た。該DNAは電気溶出法にてゲルより取り出した後、Qiagen20チップ(キアゲン社)を用いて精製した。このDNAを定法に従い、マウス受精卵(DBF1、日本エスエルシー社)の前核に注入し、偽妊娠させたICRマウス(日本エスエルシー社)の卵管内に移植した。得られたマウスの離乳後、尾を1cm切断し、プロテイナーゼKを含むDNA抽出液(ABI社)中で37℃にて一晩維持し、ここから、フェノールおよびフェノールクロロホルムにてタンパク質を除いた後に、等量のイソプロパノールを加えて、析出したDNAを回収した。回収したDNAを水にいれ、37℃で溶解させた。
(2)このマウスDNAを鋳型にして、センスプライマーRafRBDx(5’−CTCGAGCCTTCTAAGACAAGCAACACT−3’)(配列番号:28)とアンチセンスプライマーXFPNseq(5’−CGTCGCCGTCCAGCTCGACCAG−3’)(配列番号:29)とを用い、PCR法にてDNAを増幅した。このプライマーにより、Rafras1722遺伝子のうちのRaf遺伝子とECFP遺伝子の連結領域に相当するDNAが増幅できる。予期される314bpのバンドが現れるものを、Rafras1722のDNAの組み込みがあると判定した。35匹の仔マウスのうち7匹にこのバンドが確認できた。
(3)つぎに、このF1マウスをC57/Blackマウス(日本エスエルシー社)と交配させた。F2のマウス新生児(0日齢)より、心室をとり、眼科用ハサミで細切した。ここに、0.05%トリプシンと0.5mM EDTAとを含むPBSを加え、37℃で細胞を10分間処理し、剥離してきた心筋細胞を回収した。この操作を6回繰り返し、心筋細胞を集めた。ここに、10%ウシ胎仔血清を含むDMEM培地を加え、低速遠心にて心筋細胞を沈殿させ、上清を捨てた。回収した心筋細胞養10%ウシ胎仔血清を含むDMEMで培養した。
(4)得られた心筋細胞をガラス底の培養皿(φ35mm)に移して底面に付着させ、無血清培地(日本製薬製)中で6時間培養を行った。次いで、当該心筋培養細胞にEGFを100ng/ml添加し、実施例1の(5)に記載の蛍光顕微鏡システムで観察した。EGF添加による細胞内におけるECFPおよびEYFPの蛍光強度の経時的変化の結果を第25図に示す。トランスジェニックマウス由来の初代培養細胞でもEGF依存的にRasの活性化が測定できることを確認した。
実施例7 Rafras1722のグアニンヌクレオチド交換因子およびGTP水解促進酵素に対する特異性
実施例1の(4)の実験において、グアニンヌクレオチド交換因子およびGTP水解促進酵素を多数の種類を用いてRafras1722の特異性を検討した。GTP水解促進酵素およびグアニンヌクレオチド交換因子としては、(文献9)に記載のGAP1m、R−RasGAP、rap1GAPII、mSos1、RasGRF、CalDAG−GEFI、C3G、PDZ−GEF1、KIAA0351の発現ベクターを用いた。第26図に示す如く、Rasに対するGTP水解促進酵素であるGAP1mによりFRET効率の低下が認められるが、R−RasやRap1に対するGTP水解促進酵素であるR−RasGAPやrap1GAPIIによってはFRET効率は低下しない。また、mSos1、RasGRF、CalDAG−GEFIIといったRasに対するグアニンヌクレオチド交換因子によりFRET効率は上昇するが、CalDAG−GEFI、C3G、PDZ−GEF1、KIAA0351といった他のRasファミリーGタンパク質を基質とするグアニンヌクレオチド交換因子によってはFRET効率は上昇しなかった。これは、Rafras1722がRasと同じグアニンヌクレオチド交換因子およびGTP水解促進酵素によってそのFRET効率が特異的に制御されていることを示している。
実施例8 Rap 1モニターであるRai−chu404の作成とそのグアニンヌクレオチド交換因子およびGTP水解促進酵素に対する特異性
(1) Rap1AとRafをコードするキメラ遺伝子Rai−chu404の作成
公知のEGFP(Genbank/EMBL アクセッション番号:U76561)に対し、PCR法を用いる公知の方法により7つのアミノ酸置換(Thr66Gly;Val69Leu;Ser73Ala;Met154Thr;Val164Ala;Ser176Gly;Thr204Tyr)をいれたものを、実施例3に記載のpRai−chu311のEYFPと制限酵素EcoRIとXhoIとを用いる切断およびライゲーションによる方法で置換した。次に、Rafras1722のRaf領域を含むKpnI/NotI断片を、このpRai−chu311由来のプラスミドのRalGDS領域を含むKpnI/NotI断片と置換した。このベクターをpRai−chu404と命名した。その翻訳領域の塩基配列を配列番号:30として、また当該塩基配列から予測されるアミノ酸配列を配列番号:31として示す。
(2) 実施例7と同様にRai−chu404のFRET効率に及ぼすグアニンヌクレオチド交換因子の影響を調べた。Rap1に対するグアニンヌクレオチド交換因子としてはPDZ−GEF1、C3G、CalDAG−GEFI、CalDAG−GEFIIIを用いた。また、対照としてRasに対するグアニンヌクレオチド交換因子であるCalDAG−GEFII、mSos1、RasGRFおよびRalに対するグアニンヌクレオチド交換因子であるKIAA0851を用いた。これらのグアニンヌクレオチド交換因子は(文献9)に記載がある。実験の結果を第27図に示すように、Rap1に対するグアニンヌクレオチド交換因子のみがRai−chu404のFRET効率を上昇せしめることがわかった。
実施例9 Ki−Rasタンパク質のCAAXボックスを有する活性モニタータンパク質Rai−chu101XとRai−chu404Xの作成
実施例1においてアンチセンスプライマーXFP−Bglのかわりに制限酵素XbaIの認識部位を含むプライマー(配列番号:32)を用いてECFPを増幅し、(文献11)に記載の方法で、ECFPのカルボキシル末端にKi−Rasタンパク質のCAAXボックスを融合せしめた。これをRafras1722およびRai−chu404のECFPと制限酵素とT4リガーゼを用いる方法で置換した。得られたベクターをそれぞれpRai−chu101XおよびpRai−chu404Xと命名した。それぞれの翻訳領域の塩基配列を配列番号:33および配列番号:35として、また当該塩基配列から予測されるアミノ酸配列を配列番号:34および配列番号:36として示す。
実施例10 Rai−chu101XおよびRai−chu404Xを発現するCOS1細胞におけるRas活性化の可視化
COS1細胞をガラス底の培養皿に巻きなおす。実施例9で得られたRai−chu101XおよびRai−chu404XをCOS 1細胞に、定法に従いトランスフェクトした。24時間後に、実施例1の(5)に記載の蛍光顕微鏡システムで観察した。EGF添加による細胞内におけるECFPおよびEYFPの蛍光強度比(EYFP/ECFP)の経時的変化の結果を第28図に示す。本図では蛍光比の高いところを赤で、低いところを青色で表し、ECFPの蛍光強度を明度として表わすIMDモードを用いて図を提示している。すなわち、原図においては赤いところがRasあるいはRap1の活性化が高い部位を示している。第28図では細胞増殖因子による刺激でRasが細胞の周辺部より活性化され、Rap1は核周囲から活性化される様子が画像化できた。同様の実験を、細胞がやや密集した状態で行うと、第29図に示すように、細胞が接触した部位においてはRasの活性化が起きず、細胞が接触していないところにおいて辺縁部よりRasが活性化されることが明らかとなった。このように、本発明の活性モニタータンパク質を用いることにより、細胞内でRasファミリーGタンパク質の活性に関する時間的、空間的情報を取得することができる。
実施例11 Rai−chu101XおよびRai−chu404Xを発現するPC12細胞におけるRas活性化の可視化
ガラス底の培養皿に増殖しているPC12細胞に、実施例9で得られたRai−chu101XおよびRai−chu404Xを定法に従いトランスフェクトし、実施例1の(5)に記載の蛍光顕微鏡システムで観察した。神経成長因子にて添加による細胞内におけるECFPおよびEYFPの蛍光強度比(EYFP/ECFP)の経時的変化の結果を第30図に示す。原図では蛍光比の高いところを赤で、低いところを青色で表し、ECFPの蛍光強度を明度として表わすIMDモードを用いて図を提示している。すなわち、原図においては赤いところがRasあるいはRap1の活性化が高い部位を示している。PC12細胞の神経様分化においては、分化の誘導期にはRasは細胞体で辺縁部から活性化されるのに対し、分化が完成した時期においては、細胞の生存に必要なRasの活性は神経突起においてのみ維持されていることがわかった。すなわち、Rasの活性化が細胞の分化の段階により、細胞内の異なる部位で起きていることが明らかとなった。Rasとは全く対照的にRap1は神経成長因子の添加により核周囲ぶより活性化され、分化した神経突起においてはその活性は低く抑えられていることが明らかとなった。これはRasファミリーGタンパク質の活性が細胞内の異なる場所では異なる制御を受けていることを示すものである。
実施例12 Rac1の活性モニタータンパク質であるRai−chu1011Xの作成
(1)Rac1とPak1とをコードするキメラ遺伝子の作成
Rac1のcDNA(Genbank/EMBL アクセッション番号:M29870)およびPak1のcDNA(Genbank/EMBL アクセッション番号:NM002576)を鋳型として、PCR法により、実施例1および実施例9の方法に従い、プラスミドpRai−chu1011Xを得た。pRai−chu1011Xの構造(第31図)、その翻訳領域の塩基配列(配列番号:37)および予測されるアミノ酸配列(配列番号:38)を示す。
かかる塩基配列および予測されるアミノ酸配列を説明する:
nt 1−684 :オワンクラゲのEYFP
nt 685−690 :リンカー
nt 691−939 :Pak1
nt 940−969 :リンカー
nt 970−1497 :Rac1
nt 1498−1506:リンカー
nt 1507−2217:オワンクラゲのECFP
nt 2218−2229:リンカー
nt 2230−2289:K−Rasのカルボキシル末端領域(CAAXボックス)
(2)キメラ遺伝子の変異体の作成
公知のPCRを用いる方法にて、pRai−chu1011Xの塩基配列(配列番号:37)における1004位のGをTに置換し、予測されるアミノ酸GlyをValに置換したものをpRai−chu1012Xと命名した。同様に、1019位のCをAに置換し、予測されるアミノ酸ThrをAsnに置換したものをpRai−chu1013Xと命名した。タンパク質Rai−chu1012Xにおいては、Rac1のGTP水解活性が減少し、恒常的活性化型になることが予想される。一方、Rai−chu1013Xにおいては、Rac1のGTP結合能が減少し、非活性化型になることが予想される。
(3)ホ乳類細胞でのRac1の活性モニタータンパク質(Rai−chu1011X)の発現と分光光度計による解析
実施例1の(4)に記載の方法により、Rai−chu1011X、Rai−chu1012X、またはRai−chu1013Xを発現する細胞を用いて解析を行った。得られた蛍光プロフィールを第34図に示す。活性化型と予想されるRai−chu1012Xと比較して野生型Rai−chu1011Xおよび非活性化型と予想されるRai−chu1013Xでは、FRETの効率が低いことがわかる。
実施例13 Cdc42の活性モニタータンパク質であるRai−chu1054Xの作成
(1)Cdc42とPak1とをコードするキメラ遺伝子の作成
Cdc42のcDNA(Genbank/EMBL アクセッション番号:M57298)およびPak1のcDNA(Genbank/EMBL アクセッション番号:NM002576)を鋳型として、PCR法により、実施例1の方法に従い、プラスミドpRai−chu1054Xを得た。pRai−chu1054Xの構造(第32図)、その翻訳領域の塩基配列(配列番号:39)および予測されるアミノ酸配列(配列番号:40)を示す。
かかる塩基配列および予測されるアミノ酸配列を説明する:
nt 1−684 :オワンクラゲのEYFP
nt 685−690 :リンカー
nt 691−939 :Pak1
nt 940−969 :リンカー
nt 970−1494 :Cdc42
nt 1495−1503:リンカー
nt 1504−2214:オワンクラゲのECFP
nt 2215−2226:リンカー
nt 2227−2286:K−Rasのカルボキシル末端領域(CAAXボックス)
(2)キメラ遺伝子の変異体の作成
公知のPCRを用いる方法にて、pRai−chu1054Xの塩基配列(配列番号:39)における1001位のGをTに置換し、予測されるアミノ酸GlyをValに置換したものをpRai−chu1052Xと命名した。タンパク質Rai−chu1052Xにおいては、Rac1のGTP水解活性が減少し、恒常的活性化型になることが予想される。
(3)ホ乳類培養細胞でのCdc42の活性モニタータンパク質(Rai−chu1054X)の発現と分光光度計による解析
実施例1の(4)に記載の方法により解析を行った。Rai−chu1054XまたはRai−chu1052Xを発現する細胞を用いて解析を行った。得られた蛍光プロフィールを第35図に示す。活性化型と予想されるRai−chu1052Xと比較して野生型Rai−chu1054Xでは、FRETの効率が低いことがわかる。
実施例14 RhoAの活性モニタータンパク質であるRai−chu1214Xの作成
(1)RhoAとmDialとをコードするキメラ遺伝子の作成
RhoAのcDNA(Genbank/EMBL アクセッション番号:L25080)およびmDialのcDNA(Genbank/EMBL アクセッション番号:E17361)を鋳型として、PCR法により、実施例1の方法に従い、プラスミドpRai−chu1214Xを得た。pRai−chu1214Xの構造(第33図)、その翻訳領域の塩基配列(配列番号:41)および予測されるアミノ酸配列(配列番号:42)を示す。
かかる塩基配列および予測されるアミノ酸配列を説明する:
nt 1−684 :オワンクラゲのEYFP
nt 685−696 :リンカー
nt 697−1092 :mDial
nt 1093−1110:リンカー
nt 1111−1677:RhoA
nt 1678−1686:リンカー
nt 1687−2397:オワンクラゲのECFP
nt 2398−2409:リンカー
nt 2410−2469:K−Rasのカルボキシル末端領域(CAAXボックス)
(2)キメラ遺伝子の変異体の作成
公知のPCRを用いる方法にて、pRai−chu1214Xの塩基配列(配列番号:41)における1298位のAをTに、1299位のGをCに置換し、予測されるアミノ酸GlnをLeuに置換したものをpRai−chu1220Xと命名した。タンパク質Rai−chu1220Xにおいては、RhoAのGTP水解活性が減少し、恒常的活性化型になることが予想される。
(3)ホ乳類細胞でのRhoAの活性モニタータンパク質(Rai−chu1214X)の発現と分光光度計による解析
実施例1の(4)に記載の方法により解析を行った。Rai−chu1214XまたはRai−Chu1220Xを発現する細胞を用いて解析を行った。得られた蛍光プロフィールを第36図に示す。活性化型と予想されるRai−chu1220Xと比較して野生型Rai−chu1214Xでは、FRETの効率が低いことがわかる。
実施例15 Rai−chu1011XおよびRai−chu1054Xを発現するCOS1細胞におけるRac1活性化の可視化
COS1細胞をガラス底の培養皿に巻きなおす。実施例12で得られたpRai−chu1011XをCOS1細胞に、定法に従いトランスフェクトした。24時間後に実施例1の(5)に記載の蛍光顕微鏡システムで観察した。EGF添加による細胞内におけるECFPおよびEYFPの蛍光強度比(EYFP/ECFP)の経時的変化の結果を第37図に示す。第37図では、EGF刺激により、Rac1が1分間以内に速やかに細胞全体に活性化され、やがて、細胞辺縁部のラッフリングと呼ばれる細胞膜が運動している部分に活性化が収斂されていく様子が観察できた。このように、本発明の活性モニタータンパク質を用いることにより、細胞内でRhoファミリーGTP結合タンパク質の活性に関する時間的、空間的定法を取得することができる。また、これはRasやRap1の活性化とも異なるものであり、これらの活性モニタータンパク質分子の特異性を裏付ける結果でもある。
配列表フリーテキスト
配列番号:1は、制限酵素XhoIの切断部位の塩基配列とヒトH−Rasの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:2は、ヒトc−Raf1の塩基配列とヒトH−Rasの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:3は、制限酵素KpnIの切断部位の塩基配列とヒトc−Raf1の塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:4は、制限酵素NotIの切断部位の塩基配列とヒトc−Raf1の塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:5は、pBluescript−SKII(+)のマルティプルクローニングサイトの5’側の塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:6は、pBluescript−SKII(+)のマルティプルクローニングサイトの3’側の塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:7は、制限酵素BamHIの切断部位の塩基配列とEYFPの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:8は、制限酵素BamHI、KpnIおよびXhoIの各々の切断部位の塩基配列とECFPの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:9は、制限酵素NotIの切断部位の塩基配列とECFPの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:10は、制限酵素BglIIの切断部位の塩基配列とECFPの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:11は、ヒトH−Ras、ヒトc−Raf1、EYFPおよびECFPの各塩基配列を基にデザインしたプラスミドの塩基配列である。
配列番号:12は、配列番号:11のプラスミドの塩基配列から予測されるアミノ酸配列である。
配列番号:13は、制限酵素XhoIの切断部位の塩基配列とヒトRap1Aの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:14は、ヒトRalGDSの塩基配列とヒトRap1Aの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:15は、ヒトRalGDSの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:16は、制限酵素NotIの切断部位の塩基配列とヒトRalGDSの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:17は、制限酵素BamHI、KpnIおよびXhoIの各々の切断部位の塩基配列とECFPの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:18は、ヒトRap1A、ヒトRalGDS、EYFPおよびECFPの各塩基配列を基にデザインしたプラスミドの塩基配列である。
配列番号:19は、配列番号:18のプラスミドの塩基配列から予測されるアミノ酸配列である。
配列番号:20は、制限酵素XhoIの切断部位の塩基配列とヒトR−Rasの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:21は、制限酵素KpnIの切断部位の塩基配列とヒトR−Rasの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:22は、ヒトR−Ras、ヒトc−Raf1、EYFPおよびECFPの各塩基配列を基にデザインしたプラスミドの塩基配列である。
配列番号:23は、配列番号:22のプラスミドの塩基配列から予測されるアミノ酸配列である。
配列番号:24は、ヒトH−Rasの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:25は、ヒトH−Rasの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:26は、ヒトH−Ras、ヒトc−Raf1、EYFPおよびECFPの各塩基配列を基にデザインしたプラスミドの塩基配列である。
配列番号:27は、配列番号:26のプラスミドの塩基配列から予測されるアミノ酸配列である。
配列番号:28は、ヒトc−Raf1のヒトH−Ras結合領域の塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:29は、ECFPの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:30は、ヒトRap1A、ヒトc−Raf1、EYFPおよびECFPの各塩基配列を基にデザインしたプラスミドの塩基配列である。
配列番号:31は、配列番号:30のプラスミドの塩基配列から予測されるアミノ酸配列である。
配列番号:32は、ECFPの塩基配列を基にデザインしたプライマーの塩基配列である。
配列番号:33は、ヒトH−Ras、ヒトc−Raf1、EYFP、ECFPおよびヒトK−Rasの各塩基配列を基にデザインしたプラスミドの塩基配列である。
配列番号:34は、配列番号:33のプラスミドの塩基配列から予測されるアミノ酸配列である。
配列番号:35は、ヒトRap1A、ヒトc−Raf1、EYFP、ECFPおよびヒトK−Rasの各塩基配列を基にデザインしたプラスミドの塩基配列である。
配列番号:36は、配列番号:35のプラスミドの塩基配列から予測されるアミノ酸配列である。
配列番号:37は、ヒトRac1、ヒトPak1、EYFP、ECFPおよびヒトK−Rasの各塩基配列を基にデザインしたプラスミドの塩基配列である。
配列番号:38は、配列番号:37のプラスミドの塩基配列から予測されるアミノ酸配列である。
配列番号:39は、ヒトCdc42、ヒトPak1、EYFP、ECFPおよびヒトK−Rasの各塩基配列を基にデザインしたプラスミドの塩基配列である。
配列番号:40は、配列番号:39のプラスミドの塩基配列から予測されるアミノ酸配列である。
配列番号:41は、ヒトRhoA、ヒトmDial、EYFP、ECFPおよびヒトK−Rasの各塩基配列を基にデザインしたプラスミドの塩基配列である。
配列番号:42は、配列番号:41のプラスミドの塩基配列から予測されるアミノ酸配列である。
産業上の利用可能性
本発明によれば、非侵襲的な低分子量GTP結合タンパク質の活性化の測定を可能にする低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質、該タンパク質を発現し、非侵襲的な低分子量GTP結合タンパク質の活性化の測定に有用な細胞およびトランスジェニック動物、前記タンパク質を用いる低分子量GTP結合タンパク質の活性化を測定する方法、より詳しくは生細胞においても使用可能な、低分子量GTP結合タンパク質のGTP結合型とGDP結合型の量比を測定する方法、ならびに低分子量GTP結合タンパク質の活性調節物質のスクリーニング方法が提供される。
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
第1図は、低分子量GTP結合タンパク質の活性制御機構を示す。本図では、低分子量GTP結合タンパク質としてRasを例にとり、低分子量GTP結合タンパク質の活性制御機構を模式的に示してある。低分子量GTP結合タンパク質はGDPに結合していると不活性化型であり、ここにグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)が作用するとGDPがGTPに置換され、活性化型となる。活性化されたGTP結合タンパク質は構造変化を起こし、その特異的な標的タンパク質と結合し、それを活性化できるようになる。活性化型の低分子量GTP結合タンパク質はGTP水解促進酵素(GAP)存在下にGTPがGDPに水解され、無機リン酸(Pi)を遊離し、もとの不活性化型に戻る。
第2図は、FRETを利用した低分子量GTP結合タンパク質の活性化測定法の原理を示す。この図では低分子量GTP結合タンパク質としてRasを、標的タンパク質としてRafを例にとっている。GFPドナータンパク質として例示するCFP(cyan−emitting mutant of GFP)は433nmの光で励起され、475nmを極大とする光を放射する。一方、GFPアクセプタータンパク質として例示するYFP(yellow−emitting mutant of GFP)は505nmの光で励起され530nmを極大とする光を放射する。なお、本発明においては、GFPアクセプタータンパク質および/またはGFPドナータンパク質として、これらを用いることもできる。第2図中の下図に示すように、Rasの活性化前には、モニタータンパク質において、アミノ末端側に存在するYFPとカルボキシル末端側に存在するCFPとが離れているのでCFPからYFPへのエネルギーの移行はあまり起きない。ところが、何らかの刺激を受けて〔たとえば、上皮細胞増殖因子(EGF)の添加〕Rasが活性化型になると、標的タンパク質RafのRas結合領域(RBD)に結合するので、YFPとCFPが近傍に来て、その結果、CFPからYFPへのエネルギーの移行、それに伴うYFPからの530nmの蛍光が観察されるようになる。従って、刺激前後(すなわち、Rasの活性化前後)におけるFRET効率を測定することにより、Rasの活性化を測定することができる。
第3図は、プラスミドpRafras1722の構造を示す。発現ベクターはすでに報告されているpCAGGSを用いた。図中のCAGプロモーターの下流にEYFP−Ras−RafRBD(Ras結合領域)−ECFPの順となる融合タンパク質をコードするcDNAを結合した。
第4図は、プラスミドpRafras1722の翻訳領域の塩基配列および予測されるアミノ酸配列を示す。
第5図は、プラスミドpRafras1722の翻訳領域の塩基配列および予測されるアミノ酸配列(つづき)を示す。
第6図は、プラスミドpRafras1722の翻訳領域の塩基配列および予測されるアミノ酸配列(つづき)を示す。
第7図は、発現タンパク質Rafras1722の蛍光プロフィールを示す。HEK293T細胞にpRafras1722とグアニンヌクレオチド交換因子Sos発現ベクター(pCAGGS−mSos)あるいはGTP水解促進酵素Gap1m発現ベクター(pEF−Bos−Gap1m)をリン酸カルシウム法にてトランスフェクトし、48時間培養後に細胞を可溶化し、遠心分離後、上清を得た。該上清について励起波長433nmにて、波長450nm〜550nmにおける蛍光強度を蛍光分光光度計にて測定した。第7図に示すグラフの右囲みにおけるSosはpRafras1722とpCAGGS−mSosを共にトランスフェクトした場合におけるRafras1722の蛍光プロフィールであることを、Gap1mはpRafras1722とpEF−Bos−Gap1mを共にトランスフェクトした場合におけるRafras1722の蛍光プロフィールであることを示す。
第8図は、発現タンパク質Rafras1722のGTP結合タンパク質上のGTPとGDPの比〔GTP/(GDP+GTP)(%)〕に対する励起波長433nmでの波長475nmと波長530nmの蛍光強度比(波長530/475)を示す。HEK293T細胞にpRafras1722と様々な量のグアニンヌクレオチド交換因子Sos発現ベクター(pCAGGS−mSos)あるいはGTP水解促進酵素Gap1m発現ベクター(pEF−Bos−Gap1m)をトランスフェクトした。48時間培養後に32Pi標識し、Rafras1722を抗GFP抗体で免疫沈降した後に、Rafras1722に結合しているGTPおよびGDPを薄層クロマトグラフィーで分離、定量した。一方、同様に処理した細胞可溶化液について蛍光プロフィールを測定し、励起波長433nmでの波長475nmと波長530nmの蛍光強度比を測定した。Rafras1722上のGTPの量に依存して蛍光強度比が増強されることが分かる。
第9図は、発現タンパク質Rafras1722を発現する細胞株が得られたことを示す。NIH3T3細胞にpRafras1722をトランスフェクトし、細胞株3T3−Rafrasを樹立した。細胞を可溶化し、抗GFP抗体を用いてイムノブロッティングにてRafras1722の発現について解析した。第9図に示すイムノブロッティングの左には分子量マーカーを示す。
第10図は、3T3−Rafras細胞を用いたRas活性化の解析を示す。3T3−Rafras細胞をEGF(1μg/ml)で刺激し、その前後で433nmの波長で励起した蛍光プロフィール(波長450nm〜550nm)を測定した。
第11図は、プラスミドpRai−chu311の構造を示す。バックボーンとなるベクターの構造は第3図と同一である。
第12図は、プラスミドpRai−chu311の翻訳領域における塩基配列および予測されるアミノ酸配列を示す。
第13図は、プラスミドpRai−chu311の翻訳領域における塩基配列および予測されるアミノ酸配列(つづき)を示す。
第14図は、プラスミドpRai−chu311の翻訳領域における塩基配列および予測されるアミノ酸配列(つづき)を示す。
第15図は、発現タンパク質Rai−chu311の蛍光プロフィールを示す。HEK293T細胞にpRai−chu311とグアニンヌクレオチド交換因子C3G発現ベクター(pCAGGS−C3G;文献9に記載)あるいはGTP水解促進酵素rap1GAPII発現ベクター(pCAGGS−rap1GAPII;文献9に記載)とをリン酸カルシウム法にてトランスフェクトし、48時間培養後に細胞を可溶化し、遠心分離後、上清を得た。該上清について励起波長433nmにて、波長450nm〜550nmにおける蛍光強度を蛍光分光光度計にて測定した。第15図に示すグラフの右囲みにおけるC3GはpRai−chu311とpCAGGS−C3Gを共にトランスフェクトした場合におけるRai−chu311の蛍光プロフィールであることを、rap1GAPIIはpRai−chu311とpCAGGS−rap1GAPIIを共にトランスフェクトした場合におけるRai−chu311の蛍光プロフィールであることを示す。
第16図は、プラスミドpRai−chu158の構造を示す。バックボーンとなるベクターの構造は第3図と同一である。
第17図は、プラスミドpRai−chu158の翻訳領域における塩基配列および予測されるアミノ酸配列を示す。
第18図は、プラスミドpRai−chu158の翻訳領域における塩基配列および予測されるアミノ酸配列(つづき)を示す。
第19図は、プラスミドpRai−chu158の翻訳領域における塩基配列および予測されるアミノ酸配列(つづき)を示す。
第20図は、発現タンパク質Rai−chu158の蛍光プロフィールを示す。HEK293T細胞にpRai−chu158とグアニンヌクレオチド交換因子CalDAG−GEFIII発現ベクター(pCAGGS−CalDAG−GEFIII;文献10に記載)あるいはGTP水解促進酵素Gap1m発現ベクター(pEF−Bos−Gap1m)をリン酸カルシウム法にてトランスフェクトし、48時間培養後に細胞を可溶化し、遠心分離後、上清を得た。該上清について励起波長433nmにて、波長450nm〜550nmにおける蛍光強度を蛍光分光光度計にて測定した。第20図に示すグラフの右囲みにおけるGap1mはpRai−chu158とpEF−Bos−Gap1mを共にトランスフェクトした場合におけるRai−chu158の蛍光プロフィールであることを、CalDAG−GEFIIIはpRai−chu158とpCAGGS−CalDAG−GEFIIIを共にトランスフェクトした場合におけるRai−chu158の蛍光プロフィールであることを示す。
第21図は、プラスミドpRai−chu119の翻訳領域における塩基配列および予測されるアミノ酸配列を示す。
第22図は、プラスミドpRai−chu119の翻訳領域における塩基配列および予測されるアミノ酸配列(つづき)を示す。
第23図は、プラスミドpRai−chu119の翻訳領域における塩基配列および予測されるアミノ酸配列(つづき)を示す。
第24図は、発現タンパク質Rai−chu119の蛍光プロフィールを示す。HEK293T細胞にpRai−chu119またはpRafras1722とグアニンヌクレオチド交換因子Sos発現ベクター(pCAGGS−mSos)とをリン酸カルシウム法にてトランスフェクトし、24時間培養後に33℃および40℃に移し、さらに24時間培養を加えた後、細胞を可溶化し、遠心分離して上清を得た。該上清について励起波長433nmにて、波長450nm〜550nmにおける蛍光強度を蛍光分光光度計にて測定した。第21図に示すグラフの右囲みにおける対照はpRafras1722とpCAGGS−mSosを共にトランスフェクトした場合におけるRai−chu119の蛍光プロフィールであることを、変異ありはpRai−chu119とpCAGGS−mSosを共にトランスフェクトした場合におけるRai−chu119の蛍光プロフィールであることを示す。Rai−chu119では野生型(Rafras1722)より、グアニンヌクレオチド交換因子に対する反応性が増加していた。
第25図は、上皮細胞増殖因子(EGF)添加による細胞内におけるECFPおよびEYFPの蛍光強度の経時的変化の結果を示す。実施例1に記載の蛍光顕微鏡システムを用いて、波長430nmの励起光を照射して蛍光波長475nmおよび530nmでの画像を経時的に取得し、当該画像からECFPおよびEYFPの蛍光強度を求めた。
第26図は、種々のグアニンヌクレオチド交換因子およびGTP水解促進酵素による発現タンパク質Rafras1722におけるECFPとEYFPの蛍光強度比の変化を示すグラフである。HEK293T細胞にpRafras1722とグアニンヌクレオチド交換因子発現ベクターあるいはGTP水解促進酵素発現ベクターとをリン酸カルシウム法にてトランスフェクトし、24時間以上培養後に細胞を可溶化し、遠心分離して上清を得た。該上清について励起波長433nmにて、波長475nmおよび530nmにおける蛍光強度を蛍光分光光度計にて測定した。後者の前者に対する比(蛍光強度比)をグラフに示してある。
第27図は、種々のグアニンヌクレオチド交換因子およびGTP水解促進酵素による発現タンパク質Rai−chu404におけるECFPとEYFPの蛍光強度比の変化を示すグラフである。HEK293T細胞にpRai−chu404とグアニンヌクレオチド交換因子発現ベクターあるいはGTP水解促進酵素発現ベクターとをリン酸カルシウム法にてトランスフェクトし、24時間以上培養後に細胞を可溶化し、遠心分離して上清を得た。該上清について励起波長433nmにて、波長475nmおよび530nmにおける蛍光強度を蛍光分光光度計にて測定した。後者の前者に対する比(蛍光強度比)をグラフに示してある。
第28図は、EGF添加によるpRai−chu101XまたはpRai−chu404XをトランスフェクトしたCOS1細胞内におけるEYFPのECFPに対する蛍光強度比の経時的変化ならびに、細胞内分布を示す写真である。COS1細胞にpRai−chu101XあるいはpRai−chu404Xをトランスフェクトし、24時間以上培養後に、培地をフェノールレッドおよび血清を含まない培地に交換した。ついで、キセノン光源を有する倒立型蛍光顕微鏡(Carl Zeiss,Axiovert 100)に回転式蛍光励起フィルターおよび回転式蛍光発光フィルター装置(LUDL electronic社)を備え、高感度冷却CCDカメラ(Photometrix社、Micromax450)を備え、日本ローパー社製Metamorph画像解析ソフトにて制御ならびに解析できるシステムを用いて画像を取得した。細胞に430nmの励起光を照射し、475nmのECFPドナーの蛍光波長での画像をCCDカメラにより撮影し、ついで、530nmのEYFPアクセプターの蛍光波長での画像を撮影した。これを30秒間隔で行った。データ取得後、デジタル画像上の各ピクセルについて、EYFP/ECFPの蛍光強度比を8段階に分け、青から赤までの色を割り当てた。一方、ECFPの蛍光強度を明度として割り当てることによりビデオ画像が作成できる。本図ではこのうちの図に示す時間の画像を示してある。Rai−chu101X発現細胞にEGFを添加すると、FRET効率を反映する蛍光強度比が細胞の辺縁部から徐々に中央部に向かって上昇していく過程が見える。一方、Rai−chu404Xを発現する細胞においては、中央部から辺縁部に向かって活性が上昇するのがわかる。このように、本発明の活性モニタータンパク質は、RasファミリーGタンパク質の活性化に関する時間情報と、細胞内の空間情報の双方を同時に得ることを可能とする。
第29図は、EGF添加によるpRai−chu101Xをトランスフェクトしたサブコンフルエントな状態のCOS1細胞内におけるEYFPのECFPに対する蛍光強度比の経時的変化ならびに、細胞内分布を示す写真である。サブコンフルエントな状態のCOS1細胞を用いた以外は第28図の説明に記載したのと同様の方法により実験を行った。Rai−chu101X発現細胞にEGFを添加すると、FRET効率を反映する蛍光強度比が他の細胞には接着していない辺縁部から上昇していく過程が見える。一方、隣の細胞と接着している部位ではこのFRET効率の上昇が抑制されているのがわかる。
第30図は、神経成長因子添加によるpRai−chu101XまたはpRai−chu404XをトランスフェクトしたPC12細胞内におけるEYFPのECFPに対する蛍光強度比の経時的変化ならびに、細胞内分布を示す写真である。PC12細胞にpRai−chu101XあるいはpRai−chu404Xをトランスフェクトし、24時間以上培養後に、培地をフェノールレッドおよび血清を含まない培地に交換し、さらに神経成長因子を加え、第28図の説明に記載したのと同様の方法により観察した。本図ではこの連続する画像のうち、図に示す時間の画像のみを示してある。Rai−chu101X発現細胞に神経成長因子を添加すると、FRET効率を反映する蛍光強度比が細胞の辺縁部から徐々に中央部に向かって上昇していく過程が見える。そして、神経様突起の進展が明らかな180分以後においては、FRET効率の上昇はこの神経様突起に主に限局していることがわかる。一方、Rai−chu404Xを発現する細胞においては、逆に中央部から辺縁部に向かって活性が上昇し、分化した神経様突起ではこのFRET効率が抑制されているのがわかる。このことは、分化誘導の過程においてRasが細胞辺縁部より、Rap1が細胞の中心部より活性化され、分化が完成した後は、Rasは神経様突起において高い活性が持続していることを示している。このことは、RasファミリーGタンパク質が細胞内の異なる部位では異なる活性化状態にあることを明らかにするもので、本発明の活性モニタータンパク質群がRasファミリーGタンパク質活性化に関する時間的、空間的情報を得るのに至適な分子プローブであることを示すものである。
第31図は、プラスミドpRai−chu1011Xの構造を示す。バックボーンとなるベクターの構造は第3図と同一である。
第32図は、プラスミドpRai−chu1054Xの構造を示す。バックボーンとなるベクターの構造は第3図と同一である。
第33図は、プラスミドpRai−chu1214Xの構造を示す。バックボーンとなるベクターの構造は第3図と同一である。
第34図は、発現タンパク質Rai−chu1011x(野生型)、Rai−chu1012X(活性化型)、Rai−chu1013X(非活性化型)の蛍光プロフィールを示す。HEK293T細胞にpRai−chu1011x、pRai−chu1012X、またはpRai−chu1013Xをリン酸カルシウム法にてトランスフェクトし、48時間後に細胞を可溶化し、遠心分離して上清を得た。該上清について励起波長433nmにて、波長450nm〜550nmにおける蛍光強度を蛍光分光光度計にて測定した。
第35図は、発現タンパク質Rai−chu1054x(野生型)、Rai−chu1052X(活性化型)の蛍光プロフィールを示す。HEK293T細胞にpRai−chu1054xまたはpRai−chu1052Xをリン酸カルシウム法にてトランスフェクトし、48時間後に細胞を可溶化し、遠心分離して上清を得た。該上清について励起波長433nmにて、波長450nm〜550nmにおける蛍光強度を蛍光分光光度計にて測定した。
第36図は、発現タンパク質Rai−chu1214X(野生型)およびRai−chu1220X(活性化型)の蛍光プロフィールを示す。HEK293T細胞にpRai−chu1214XまたはpRai−chu1220Xをリン酸カルシウム法にてトランスフェクトし、48時間後に細胞を可溶化し、遠心分離して上清を得た。該上清について励起波長433nmにて、波長450nm〜550nmにおける蛍光強度を蛍光分光光度計にて測定した。
第37図は、EGF添加によるpRai−chu1011XをトランスフェクトしたCOS1細胞内におけるEYFPのECFPに対する蛍光強度比の経時的変化ならびに、細胞内分布を示す写真である。第28図の説明に記載したのと同様の方法により実験を行った。Rai−chu1011X発現細胞にEGFを添加すると、まず、1分間以内に一過性に細胞全体にFRET効率を反映する蛍光強度比が上昇し、ついで、細胞膜のラッフリングが起こっている部位で蛍光強度比の上昇と中心部での蛍光強度比の低下が観察される。これは、Rai−chu101Xを用いて調べたRasの活性化やRai−chu404Xを用いて調べたRap1の活性化とは異なる時間経過、空間的分布を示す結果であり、本発明の活性モニタータンパク質群がRhoファミリーGTP結合タンパク質の活性化に関しても時間的、空間的情報を得るのに至適な分子プローブであることを示すものである。

Claims (25)

  1. 低分子量GTP結合タンパク質の全部または一部、該低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質の全部または一部、GFPアクセプタータンパク質の全部または一部、及びGFPドナータンパク質の全部または一部が、各タンパク質の機能を発揮し得る状態で直接または間接的に連結されてなる融合タンパク質からなり、該低分子量GTP結合タンパク質と該標的タンパク質とが、該低分子量GTP結合タンパク質がH−Rasであり標的タンパク質がRafである組み合わせ、該低分子量GTP結合タンパク質がRap1Aであり標的タンパク質がRalGDSである組み合わせ、及び、該低分子量GTP結合タンパク質がR−Rasであり標的タンパク質がRafである組み合わせのいずれかであり、該低分子量GTP結合タンパク質の一部がGTPとの結合による活性化能を保有し前記活性化時に該低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質に結合する機能を保有する一部であり、該低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質の一部が該低分子量GTP結合タンパク質に該低分子量GTP結合タンパク質がGTPとの結合による活性化されたときに特異的に結合する機能を保有する一部であり、該GFPアクセプタータンパク質の一部及び該GFPドナータンパク質の一部がFRETのペアーとなる機能が保たれている一部であり、
    直接または間接的な連結の順序がアミノ末端側より、GFPアクセプタータンパク質とGFPドナータンパク質とのいずれかのタンパク質の全部または一部、低分子量GTP結合タンパク質の全部または一部、該低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質の全部または一部、GFPアクセプタータンパク質とGFPドナータンパク質とのいずれかであってアミノ末端側で選択されなかったタンパク質の全部または一部である低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質。
  2. 直接または間接的な連結の順序がアミノ末端側より、GFPアクセプタータンパク質の全部または一部、低分子量GTP結合タンパク質の全部または一部、該低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質の全部または一部、GFPドナータンパク質の全部または一部である請求項1に記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質。
  3. 低分子量GTP結合タンパク質の全部または一部、該低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質の全部または一部、GFPアクセプタータンパク質の全部または一部、及びGFPドナータンパク質の全部または一部が、各タンパク質の機能を発揮し得る状態で直接または間接的に連結されてなる融合タンパク質からなり、該低分子量GTP結合タンパク質と該標的タンパク質とが、該低分子量GTP結合タンパク質がRac1であり標的タンパク質がPakである組み合わせ、該低分子量GTP結合タンパク質がCdc42であり標的タンパク質がPakである組み合わせ、及び、該低分子量GTP結合タンパク質がRhoAであり標的タンパク質がmDiaある組み合わせのいずれかであり、該低分子量GTP結合タンパク質の一部がGTPとの結合による活性化能を保有し前記活性化時に該低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質に結合する機能を保有する一部であり、該低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質の一部が該低分子量GTP結合タンパク質に該低分子量GTP結合タンパク質がGTPとの結合による活性化されたときに特異的に結合する機能を保有する一部であり、該GFPアクセプタータンパク質の一部及び該GFPドナータンパク質の一部がFRETのペアーとなる機能が保たれている一部であり、
    直接または間接的な連結の順序がアミノ末端側より、GFPアクセプタータンパク質とGFPドナータンパク質とのいずれかのタンパク質の全部または一部、低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質の全部または一部、該低分子量GTP結合タンパク質の全部または一部、GFPアクセプタータンパク質とGFPドナータンパク質とのいずれかであってアミノ末端側で選択されなかったタンパク質の全部または一部である低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質
  4. 直接または間接的な連結の順序がアミノ末端側より、GFPアクセプタータンパク質の全部または一部、低分子量GTP結合タンパク質の標的タンパク質の全部または一部、該低分子量GTP結合タンパク質の全部または一部、GFPドナータンパク質の全部または一部である請求項3に記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質。
  5. さらに、細胞内局在シグナルを付加してなる請求項1〜4のいずれかに記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質。
  6. さらに、低分子量GTP結合タンパク質と標的タンパク質との間にスペーサーとなるペプチドを有してなる請求項1〜5のいずれかに記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質。
  7. GFPアクセプタータンパク質がEGFPまたはEYFPである請求項1〜6のいずれかに記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質。
  8. GFPドナータンパク質がECFPまたはEBFPである請求項1〜7のいずれかに記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質。
  9. 低分子量GTP結合タンパク質および/または標的タンパク質が変異を有するものである請求項1〜8のいずれかに記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質。
  10. 低分子量GTP結合タンパク質のアミノ酸配列のアミノ末端領域および/またはカルボキシル末端領域に少なくとも1個のアミノ酸の欠損を有してなる請求項1〜9のいずれかに記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質。
  11. GFPアクセプタータンパク質および/またはGFPドナータンパク質のアミノ酸配列のカルボキシル末端領域に少なくとも1個のアミノ酸の欠損を有してなる請求項1〜10のいずれかに記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質。
  12. 低分子量GTP結合タンパク質がH−Rasであり、標的タンパク質がRafであり、GFPドナータンパク質がECFPであり、GFPアクセプタータンパク質がEYFPである請求項1に記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質。
  13. 低分子量GTP結合タンパク質がRap1Aであり、標的タンパク質がRalGDSであり、GFPドナータンパク質がECFPであり、GFPアクセプタータンパク質がEYFPである請求項1に記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質。
  14. 低分子量GTP結合タンパク質がRac1であり、標的タンパク質がPakであり、GFPドナータンパク質がECFPであり、GFPアクセプタータンパク質がEYFPである請求項3に記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質。
  15. 低分子量GTP結合タンパク質がCdc42であり、標的タンパク質がPakであり、GFPドナータンパク質がECFPであり、GFPアクセプタータンパク質がEYFPである請求項3に記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質。
  16. 低分子量GTP結合タンパク質がRhoAであり、標的タンパク質がmDiaであり、GFPドナータンパク質がECFPであり、GFPアクセプタータンパク質がEYFPである請求項3に記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質。
  17. 請求項1〜16のいずれかに記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質をコードする遺伝子。
  18. 請求項17に記載の遺伝子を含む発現ベクター。
  19. 発現プラスミドである請求項18に記載の発現ベクター。
  20. 請求項18または19に記載の発現ベクターを保持してなる形質転換された細胞。
  21. 請求項18または19に記載の発現ベクターを保持してなるトランスジェニック動物(ヒトを除く)。
  22. 請求項1〜16のいずれかに記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質におけるFRETを検出する工程を含む低分子量GTP結合タンパク質の活性化を測定する方法。
  23. 低分子量GTP結合タンパク質の活性モニタータンパク質におけるFRETを検出する工程が、請求項20に記載の細胞または請求項21に記載のトランスジェニック動物におけるFRETを検出する工程である請求項22に記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性化を測定する方法。
  24. GTPの結合した低分子量GTP結合タンパク質およびGDPの結合した低分子量GTP結合タンパク質を測定することにより得られたGTP/GDP比(モル比)と、対応するFRETの検出値との予め作成された検量線に基づき、前記FRETを検出する工程において検出されたFRETの検出値からGTP/GDP比(モル比)を算出する工程をさらに含む請求項23に記載の低分子量GTP結合タンパク質の活性化を測定する方法。
  25. (a)請求項20に記載の細胞と被検物質とを接触させる工程、ならびに(b)低分子量GTP結合タンパク質の活性の変化を検出する工程、
    を含む、低分子量GTP結合タンパク質の活性調節物質のスクリーニング方法。
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