JP3842156B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)に関し、特に、発光輝度及び発光効率が高く、色純度が高く、赤色系に発光する有機EL素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機物質を使用した有機EL素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子としての用途が有望視され、多くの開発が行われている。一般に、有機EL素子は、発光層及び該層を挟んだ一対の対向電極から構成されている。
有機EL素子の発光は、両電極間に電界が印加されると、陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入され、電子が発光層において正孔と再結合し、励起状態を生成し、励起状態が基底状態に戻る際にエネルギーを光として放出する現象である。
最近では、有機EL素子ディスプレイの実用化が開始されているものの、フルカラー表示素子は開発途中である。特に、色純度及び発光効率が高く、赤色系に発光する有機EL素子が求められている。
これらを解決しようとするものとして、例えば、特開平8−311442号公報には、ナフタセン又はペンタセン誘導体を発光層に添加した赤色発光素子が開示されているが、この発光素子は、赤色純度は優れているものの、印加電圧が11Vと高く輝度の半減時間は約150時間と不十分であった。特開平3−162481号公報には、ジシアノメチレン系化合物を発光層に添加した素子が開示されているが赤色の純度が不十分であった。特開2001−81451号公報には、アミン系芳香族化合物を発光層に添加した赤色発光素子が開示され、この発光素子はCIE色度(0.64、0.33)の色純度を有しているものの駆動電圧が10V以上と高かった。特開2001−160489号公報には、アザフルオランテン化合物を発光層に添加した素子が開示されているが、黄色から緑色の発光となり、十分な赤色を発光するに至っていない。
また、例えばJ. Amer. Chem. Soc., 118、2374 (1996) には、5,10,15,20−テトラフェニルビスベンゾ[5,6] インデノ[1,2,3-cd:1',2',3'-lm]ペリレンが記載され、この化合物を用いた素子が特開2000−86549号公報及び特開平10−330295号公報に記載されている。しかしながら、これらの公報に記載されている化合物及びその誘導体は、吸収極大波長が590nmから600nmであり、発光波長も極大値が610nmであり、ディスプレイ仕様の赤色の有機EL発光のためには、さらなる長波長発光、高発光効率、低電圧で高輝度発光する等が望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、発光輝度及び発光効率が高く、色純度が高く、赤色系に発光する有機EL素子を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ナフトフルオランテン構造を有する化合物を有機EL素子の有機薄膜層の材料として用いることにより、前記の課題を解決することを見出し本発明を解決するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、陰極と陽極間に一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機EL素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、ナフトフルオランテン構造を有する下記式(1)又は(2)で表される化合物を含有する有機EL素子を提供するものである。
【0006】
【化3】
Figure 0003842156
(式中、R1 〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルキル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数2〜20のアルケニル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のジフェニルアミノ基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を表す。また、R15〜R18のうちの隣り合った基が、単環又は多環芳香環を形成してもよく、形成された芳香環は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルキル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数2〜20のアルケニル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のジフェニルアミノ基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基が結合していてもよい。)
【0007】
【化4】
Figure 0003842156
(式中、R21〜R38は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルキル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数2〜20のアルケニル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のジフェニルアミノ基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を表す。また、R33〜R38のうちの隣り合った基が、それぞれ単環又は多環芳香環を形成してもよく、形成された芳香環は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルキル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数2〜20のアルケニル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のジフェニルアミノ基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基が結合していてもよい。)
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の有機EL素子は、陰極と陽極間に一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機EL素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、ナフトフルオランテン構造を有する上記式(1)又は(2)で表される化合物を含有する。
上記一般式(1)において、R1 〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルキル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数2〜20のアルケニル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のジフェニルアミノ基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を表す。
【0009】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、フッ素、塩素が好ましい。
直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、フェニルプロピル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、4−ビフェニルメチル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。
これらの中でも、メチル基、t−ブチル基、イソプロピル基が好ましい。
【0010】
直鎖、分岐又は環状の炭素数2〜20のアルケニル基としては、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基、1−ブテニル基、2−メチルアリル基、スチリル基、2−フェニルスチリル基等が挙げられる。
これらの中でも、スチリル基、2−フェニルスチリル基が好ましい。
【0011】
直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルコキシ基としては、−OYで表される基であり、Yの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、フェニル基、ビフェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
これらの中でも、Yがメチル基、t−ブチル基、フェニル基であるものが好ましい。
【0012】
炭素数2〜18のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基,ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、等が挙げられる。
これらの中でも、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基が好ましい。
置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ナフタセニル基、ピレニル基、フルオレニル基、フルオランテニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、スチルベン基等が挙げられる。
これらの中でも、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、スチルベン基が好ましい。
【0013】
一般式(1)において、R15〜R18のうちの隣り合った基は、単環又は多環芳香環を形成してもよく例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、アセナフチル環、フェナレン環、フェナンスレン環、フルオランテン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環が好ましい。
また、形成された芳香環は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルキル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数2〜20のアルケニル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のジフェニルアミノ基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基が結合していてもよい。これらの結合基の具体例としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
前記一般式(1)における、各置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0014】
上記一般式(2)において、R21〜R38は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルキル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数2〜20のアルケニル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のジフェニルアミノ基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を表す。
一般式(2)において、R33〜R38のうちの隣り合った基が、それぞれ単環又は多環芳香環を形成してもよく、具体例としては、上記一般式(1)と同様のものが挙げられる。
また、形成された芳香環は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルキル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数2〜20のアルケニル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のジフェニルアミノ基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基が結合していてもよい。これらの具体例としては、上記一般式(1)と同様のものが挙げられる。
【0015】
前記一般式(2)における、各置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0016】
本発明における一般式(1)及び(2)で表されるナフトフルオランテン構造を有する化合物の具体例を以下に示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【化5】
Figure 0003842156
【0017】
【化6】
Figure 0003842156
【0018】
本発明の有機EL素子は、前記したように陽極と陰極間に一層もしくは多層の有機薄膜層を形成した素子である。一層型の場合、陽極と陰極との間に発光層を設けている。発光層は、発光材料を含有し、それに加えて陽極から注入した正孔、もしくは陰極から注入した電子を発光材料まで輸送させるために、正孔注入材料もしくは電子注入材料を含有してもよい。また、発光材料は、極めて高い蛍光量子効率、高い正孔輸送能力及び電子輸送能力を併せ持ち、均一な薄膜を形成することが好ましい。多層型の有機EL素子としては、(陽極/正孔注入層/発光層/陰極)、(陽極/発光層/電子注入層/陰極)、(陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極)等の多層構成で積層したものがある。
【0019】
本発明の有機EL素子は、前記ナフトフルオランテン構造を有する化合物を含有する層が発光層であると好ましい。また、必要に応じて、前記一般式(1)又は(2)の化合物に加えてさらなる公知のホスト材料、発光材料、ドーピング材料、正孔注入材料や電子注入材料を使用し、組み合わせて使用することもできる。有機EL素子は、多層構造にすることにより、クエンチングによる輝度や寿命の低下を防ぐことができ、他のドーピング材料により、発光輝度や発光効率の向上、赤色や白色の発光を得ることもでき、りん光発光に寄与する他のドーピング材料と組み合わせて用いることにより、従来の発光輝度や発光効率を向上させることができる。
また、本発明の有機EL素子における正孔注入層、発光層、電子注入層は、それぞれ二層以上の層構成により形成されてもよい。その際、正孔注入層の場合、電極から正孔を注入する層を正孔注入層、正孔注入層から正孔を受け取り発光層まで正孔を輸送する層を正孔輸送層と呼ぶ。同様に、電子注入層の場合、電極から電子を注入する層を電子注入層、電子注入層から電子を受け取り発光層まで電子を輸送する層を電子輸送層と呼ぶ。これらの各層は、材料のエネルギー準位、耐熱性、有機薄膜層もしくは金属電極との密着性等の各要因により選択されて使用される。
【0020】
前記ナフトフルオランテン構造を有する化合物と共に有機薄膜層に使用できる発光材料又はホスト材料としては、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物、キナクリドン、ルブレン、スチルベン系誘導体、蛍光色素、及びキノリン金属錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体等が挙げられ、特に、キノリン金属錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、アントラセン骨格を有する芳香族化合物、アセナフトフルオランテン誘導体を用いるとエネルギー移動がスムーズに行われるため好ましい。
【0021】
正孔注入材料としては、正孔を輸送する能力を持ち、陽極からの正孔注入効果、発光層又は発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成した励起子の電子注入層又は電子注入材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。具体的には、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾールチオン、ピラゾリン、ピラゾロン、テトラヒドロイミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ヒドラゾン、アシルヒドラゾン、ポリアリールアルカン、スチルベン、ブタジエン、ベンジジン型トリフェニルアミン、スチリルアミン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミン等と、それらの誘導体、及びポリビニルカルバゾール、ポリシラン、導電性高分子等の高分子材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
これらの正孔注入材料の中で、さらに効果的な正孔注入材料は、芳香族三級アミン誘導体又はフタロシアニン誘導体である。芳香族三級アミン誘導体の具体例としては、トリフェニルアミン、トリトリルアミン、トリルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−フェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−(メチルフェニル)−N,N’−(4−n−ブチルフェニル)−フェナントレン−9,10−ジアミン、N,N−ビス(4−ジ−4−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサン等、又はこれらの芳香族三級アミン骨格を有したオリゴマーもしくはポリマーであるが、これらに限定されるものではない。フタロシアニン(Pc)誘導体の具体例は、H2 Pc、CuPc、CoPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、ClInPc、ClSnPc、Cl2 SiPc、(HO)AlPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc−O−GaPc等のフタロシアニン誘導体及びナフタロシアニン誘導体であるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
電子注入材料としては、電子を輸送する能力を持ち、陰極からの電子注入効果、発光層又は発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成した励起子の正孔注入層への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、キノキサリン、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等とそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
これらの電子注入材料の中で、さらに効果的な電子注入材料は、金属錯体化合物又は含窒素五員環誘導体である。金属錯体化合物の具体例は、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリナート)クロロガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
また、含窒素五員誘導体は、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールもしくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、ジメチルPOPOP、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−( 4”−ビフェニル) 1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−( 5−フェニルオキサジアゾリル) ]ベンゼン、1,4−ビス[2−( 5−フェニルオキサジアゾリル) −4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−( 4”−ビフェニル) −1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−( 5−フェニルチアジアゾリル) ]ベンゼン、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−( 4”−ビフェニル) −1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−( 5−フェニルトリアゾリル) ]ベンゼン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
また、正孔注入材料に電子受容物質を、電子注入材料に電子供与性物質を添加することにより電荷注入性を向上させることもできる。
本発明の有機EL素子の陽極に使用される導電性材料としては、4eVより大きな仕事関数を持つものが適しており、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等及びそれらの合金、ITO基板、NESA基板に使用される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。陰極に使用される導電性物質としては、4eVより小さな仕事関数を持つものが適しており、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン、アルミニウム等及びそれらの合金が用いられるが、これらに限定されるものではない。合金としては、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム、リチウム/アルミニウム等が代表例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。合金の比率は、蒸着源の温度、雰囲気、真空度等により制御され、適切な比率に選択される。陽極及び陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていてもよい。
【0027】
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方の電極と前記有機薄膜層との間に無機化合物層を有していてもよい。無機化合物層に使用される好ましい無機化合物としては、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類酸化物、希土類酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類ハロゲン化物、希土類ハロゲン化物、SiOX 、AlOX 、SiNX 、SiON、AlON、GeOX 、LiOX 、LiON、TiOX 、TiON、TaOX 、TaON、TaNX 、Cなど各種酸化物、窒化物、酸化窒化物である。特に陽極に接する層の成分としては、SiOX 、AlOX 、SiNX 、SiON、AlON、GeOX 、Cが安定な注入界面層を形成して好ましい。また、特に陰極に接する層の成分としては、LiF、MgF2 、CaF2 、MgF2 、NaFが好ましい。
【0028】
本発明の有機EL素子は、効率良く発光させるために、少なくとも一方の面は素子の発光波長領域において充分透明にすることが望ましい。また、基板も透明であることが望ましい。
透明電極は、上記の導電性材料を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性が確保するように設定する。発光面の電極は、光透過率を10%以上にすることが望ましい。基板は、機械的、熱的強度を有し、透明性を有するものであれば限定されるものではないが、ガラス基板及び透明性樹脂フィルムが挙げられる。透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0029】
本発明の有機EL素子は、温度、湿度、雰囲気等に対する安定性の向上のために、素子の表面に保護層を設けたり、シリコンオイル、樹脂等により素子全体を保護することも可能である。
本発明の有機EL素子の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング等の湿式成膜法のいずれの方法を適用することができる。各層の膜厚は特に限定されるものではないが、適切な膜厚に設定する必要がある。膜厚が厚すぎると、一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要になり発光効率が悪くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生して、電界を印加しても充分な発光輝度が得られない。通常の膜厚は5nm〜10μmの範囲が適しているが、10nm〜0.2μmの範囲がさらに好ましい。
【0030】
湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、エタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の適切な溶媒に溶解又は分散させて薄膜を形成するが、その溶媒はいずれであってもよい。また、いずれの層においても、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。使用の可能な樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂及びそれらの共重合体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂が挙げられる。また、添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等が挙げられる。
以上のように、有機EL素子の有機薄膜層に前記一般式(1)又は(2)のナフトフルオランテン構造を有する化合物を用いることにより、発光輝度及び発光効率が高く、赤色系に発光する有機EL素子を得ることができ、この有機EL素子は、例えば電子写真感光体、壁掛けテレビ用フラットパネルディスプレイ等の平面発光体、複写機、プリンター、液晶ディスプレイのバックライト又は計器類等の光源、表示板、標識灯、アクセサリー等に好適に用いられる。
【0031】
【実施例】
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
合成例1(化合物(P−1)の合成)
上記化合物(P−1)の合成経路を以下に示す。
【化7】
Figure 0003842156
【0032】
(1)7,14−ジフェニル−7’,14’−ジフェニル−3,3’−ビナフト[k]フルオランテンの合成
塩化ニッケル(無水物)0.15 g、トリフェニルアミン2.2g、亜鉛粉末3.1g及び臭化ナトリウム3.6gを、N,N−ジメチルアセトアミド50ミリリットルに加えて80℃で2時間、加熱攪拌した。次に、3−ブロモ−7,12−ジメチルナフト[k]フルオランテン4.8 g(9ミリモル)を、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(1:1)混合溶液320ミリリットルに加えて80℃で溶かした溶液を一度に加え、同温度で24時間加熱攪拌した。放冷後、反応物に2N塩酸を加えて攪拌し、ジクロルメタン600ミリリットルで抽出した。抽出液を蒸留水、飽和食塩水で洗浄後、ぼう硝を加えて乾燥し、溶媒を留去して橙色粉末を得た。さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:へキサン:ジクロルメタン=1:1)で処理して黄橙の目的粉末4.28g(4.72ミリモル)を得た(収率52%)。このものは、NMR、IR及びFD−MS(フィールドディフュージョンマス分析)の測定により、7,14−ジフェニル−7’,14’−ジフェニル−3,3’−ビナフト[k]フルオランテン(表1における原料1及び原料2)と同定した。
【0033】
(2)化合物(P−1)の合成
塩化ナトリウム2.4g、無水塩化アルミニウム12gを油浴温度150℃で加熱攪拌して溶融し、その中へ7,14−ジフェニル−7’,14’−ジフェニル−3,3’−ビナフト[k]フルオランテン1g(1.1ミリモル)を添加して攪拌を5分行なった。
反応後、放冷して析出した黒色固形物に、2N塩酸(20ミリリットル)を加えて溶解し、1 時間還流を行なった。室温になるまで放置した後、固体を濾過し、水洗した。この固体をメタノールで洗浄した後、アルミナカラムクロマトグラフィー(溶出液:トルエン/n−へキサン=1/4)で処理した。溶媒を減圧下で留去し黒紫色の結晶0.4gを得た。このものは、NMR、IR及びFD−MSの測定により、化合物(P−1)と同定した(収率40%)。融点300℃以上、吸収極大波長(トルエン中)623nm。
【0034】
合成例2(化合物(P−2)の合成)
上記化合物(P−2)の合成経路を以下に示す。
【化8】
Figure 0003842156
【0035】
(1)3−(7,14 −ジフェニルナフト[k]フルオランテニル)ホウ酸の合成
アルゴン気流下、3−ブロモ−7,14−ジフェニルナフト[k]フルオランテン8g(15ミリモル)をエーテル15ミリリットル、トルエン150ミリリットルに溶かし、−30℃から−40℃に冷却し、攪拌しながらn−ブチルリチウムへキサン溶液(BuLi:15ミリモル)を滴下した。冷媒を除いて20℃まで昇温させ、1時間攪拌した。次に−70℃まで反応液を冷却し、トリメトキシボロン4.5ミリリットル(45ミリモル)のエーテル溶液10ミリリットルをゆっくり滴下した。1時間攪拌を続け、冷却をやめて室温にもどした。反応液に2N塩酸を加えて攪拌した後、有機層を分離し、蒸留水、飽和食塩水で洗浄後、ぼう硝を加えて乾燥し、溶媒を留去した。さらにトルエンで洗浄して淡黄色粉末5g(10ミリモル)を得た。このものは、NMR、IR及びFD−MSの測定により、3−(7,14 −ジフェニルナフト[k]フルオランテニル)ホウ酸(表1における原料(1−2))と同定した(収率67%)。
【0036】
(2)中間体(A−2)の合成
アルゴン気流下、3−ブロモ−7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテン(表1における原料(2−2))2.4g(5ミリモル)をエチレングリコールジメチルエーテル100ミリリットルに溶かし、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.25gを加えて15分間攪拌した。次に、エタノール20ミリリットルにけん濁した(1)の3−(7,14 −ジフェニルナフト[k]フルオランテニル)ホウ酸3.5g(7ミリモル)を加えて15分間攪拌した。次に2M炭酸ナトリウム水溶液25ミリリットルを加えて、還流攪拌を24時間続けた。反応後、溶液にジクロロメタンを加えて有機層を分離し、蒸留水、飽和食塩水で洗浄し、ぼう硝を加えて乾燥し、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;へキサン:ジクロルメタン=6:4)で処理して黄橙色の目的粉末2.75g(3.2ミリモル)を得た(収率64%)。このものは、NMR、IR及びFD−MSの測定により、表1における中間体(A−2)と同定した。
【0037】
(3)化合物(P−2)の合成
四塩化すず2.2g(3.84ミリモル)、無水塩化アルミニウム2.4g(9ミリモル)に脱水ベンゼン60ミリリットルに加えてけん濁させ、還流させた。(2)の中間体(A−2)1.2g(1.4ミリモル)をベンゼン60ミリリットルに加熱溶解した溶液を一度に加えて5分間還流を行なった。反応液を放冷したのち、1N塩酸溶液200ミリリットルを加えて攪拌し、有機層を分離して、蒸留水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;へキサン:ジクロルメタン=8:2)で処理して黒赤色の目的物0.4g(0.47ミリモル)を得た(収率34%)。このものは、NMR、IR及びFD−MSの測定により化合物(P−2)と同定した。融点250℃以上、吸収極大波長(トルエン中)616nm。
【0038】
合成例3(化合物(P−3)の合成)
合成例2の(2)において、3−ブロモ−7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテンの代わりに、原料(2−3)として3−ブロモ−7,8,9,10−テトラフェニルフルオランテンを用いたこと以外は同様にして、化合物(P−3)を合成した。得られた化合物は黒紫色の結晶であり、融点は250℃以上であった。
原料1、2、中間体A及び目的化合物と、その吸収極大波長(トルエン中)を表1に示す。
合成例4(化合物(P−4)の合成)
合成例2の(2)において、3−ブロモ−7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテンの代わりに、原料(2−4)として3−ブロモ−8,13−ジフェニルナフト[k]フルオランテンを用いたこと以外は同様にして、化合物(P−4)を合成した。得られた化合物は黒紫色の結晶であり、融点は250℃以上であった。
原料1、2、中間体A及び目的化合物と、その吸収極大波長(トルエン中)を表1に示す。
【0039】
合成例5(化合物(P−5)の合成)
合成例2の(1)において、3−ブロモ−7,14−ジフェニルナフト[k]フルオランテンの代わりに、3−ブロモ−8,13−ジフェニルナフト[k]フルオランテンを用いて原料(1−5)を合成し、(2)において、原料(2−5)として3−ブロモ−7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテンの代わりに、3−ブロモ−8,13−ジフェニルナフト[k]フルオランテンを用いたこと以外は同様にして、化合物(P−5)を合成した。得られた化合物は黒紫色の結晶であり、融点は250℃以上であった。
原料1、2、中間体A及び目的化合物と、その吸収極大波長(トルエン中)を表1に示す。
合成例6(化合物(P−6)の合成)
合成例2の(1)において、3−ブロモ−7,14−ジフェニルナフト[k]フルオランテンの代わりに、3−ブロモ−8,13−ジフェニルナフト[k]フルオランテンを用いて原料(1−6)を合成したこと以外は同様にして、化合物(P−6)を合成した。得られた化合物は黒紫色の結晶であり、融点は250℃以上であった。
原料1、2、中間体A及び目的化合物と、その吸収極大波長(トルエン中)を表1に示す。
【0040】
【表1】
Figure 0003842156
【0041】
合成例7(化合物(P−7)の合成)
上記化合物(P−7)の合成経路を以下に示す。
【化9】
Figure 0003842156
【0042】
(1)閉環体(B−7)の合成
合成例2の(1)と同様にして、原料(1−7)として3−(7,14 −ジフェニルナフト[k]フルオランテニル)ホウ酸を合成し、合成例2の(2)において、3−ブロモ−7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテンの代わりに、原料(2−7)として5−ブロモフルオランテンを用いて中間体(A−7)を合成し、合成例2の(3)と同様の方法で環化を行なって閉環体(B−7)を合成した。
(2)ブロモ体(C−7)の合成
閉環体(B−7)9.8g(15ミリモル)を、ジメチルホルムアミド100ミリリットルに溶解し、ジメチルホルムアミド10ミリリットルにN−ブロムコハク酸イミド2.85g(16ミリモル)を溶解させた溶液を0℃にて滴下して6時間攪拌した。反応液を蒸留水300ミリリットルに加えて生成した固体をろ別し、メタノール、蒸留水で洗浄し9.2gの薄茶色粉末を得た。このものは、NMR及びFD−MSの測定により、目的のモノブロモ体(C−7)(MSにて少量のジブロモ体を確認)と同定した(収率84%)。
【0043】
(3)化合物(P−7)の合成
アルゴンガス気流下、(2)のブロモ体(C−7)1.5g(2ミリモル)にジフェニルアミン0.36g(2.1ミリモル)、酢酸パラジウム120mg、トリス(t−ブチル)ホスフィン120mg、ナトリウムt−ブトキシド404mgをトルエン50ミリリットルに溶解させ、6時間還流を行なった。反応後トルエン50ミリリットルを加え、蒸留水200ミリリットルを加えて攪拌し、有機層を分離して、蒸留水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;へキサン:ジクロルメタン=8:2)で処理して黒赤色の化合物(P−7)0.6g(0.73ミリモル)を得た(収率36.5%)。融点は250℃以上であった。このものは、NMR及びFD−MSの測定により化合物(P−7)と同定した。目的化合物の吸収極大波長(トルエン中)を表2に示す。
【0044】
合成例8
(1)閉環体(B−8)の合成
合成例2の(1)において、3−ブロモ−7,14−ジフェニルナフト[k]フルオランテンの代わりに、3−ブロモ−8,13−ジフェニルナフト[k]フルオランテンを用いて原料(1−8)を合成し、(2)において、3−ブロモ−7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテンの代わりに、原料(2−8)として5−ブロモフルオランテンを用いて中間体(A−8)を合成し、合成例2の(3)と同様の方法で環化を行なって閉環体(B−8)を合成した。
次に、合成例7の(2)と同様にしてブロモ体(C−8)を合成し、(3)と同様にしてジフェニルアミノ化を行い黒赤色の化合物(P−8)を合成した。融点は250℃以上であった。目的化合物の吸収極大波長(トルエン中)を表2に示す。
【0045】
合成例9
合成例2の(1)と同様にして、原料(1−9)を合成し、(2)において、3−ブロモ−7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテンの代わりに、原料(2−9)として9−ブロモアントラセンを用いて中間体(A−9)を合成し、合成例2(3)と同様の方法で環化を行なって閉環体(B−9)を合成した。
次に、合成例7の(2)と同様にしてブロモ体(C−9)を合成し、(3)と同様にしてジフェニルアミノ化を行い黒赤色の化合物(P−9)を合成した。融点は250℃以上であった。目的化合物の吸収極大波長(トルエン中)を表2に示す。
【0046】
合成例10
合成例2の(1)と同様にして、原料(1−10)を合成し、(2)において、3−ブロモ−7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテンの代わりに、原料(2−10)として1−ブロモナフタレンを用いて中間体(A−10)を合成し、合成例2(3)と同様の方法で環化を行なって閉環体(B−10)を合成した。
次に、合成例7の(2)と同様にしてブロモ体(C−10)を合成し、(3)と同様にしてジフェニルアミノ化を行い黒赤色の化合物(P−10)を合成した。融点は250℃以上であった。目的化合物の吸収極大波長(トルエン中)を表2に示す。
【0047】
合成例11
合成例2の(1)と同様にして、原料(1−11)を合成し、(2)において、3−ブロモ−7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテンの代わりに、原料(2−11)として3−ブロモピレンを用いて中間体(A−11)を合成し、合成例2(3)と同様の方法で環化を行なって閉環体(B−11)を合成した。
次に、合成例7の(2)と同様にしてブロモ体(C−11)を合成し、(3)と同様にしてジフェニルアミノ化を行い黒赤色の化合物(P−11)を合成した。融点は250℃以上であった。目的化合物の吸収極大波長(トルエン中)を表2に示す。
【0048】
合成例12
合成例2の(1)と同様にして、原料(1−12)を合成し、(2)において、3−ブロモ−7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテンの代わりに、原料(2−12)として5−ブロモフェナンスレンを用いて中間体(A−12)を合成し、合成例2(3)と同様の方法で環化を行なって閉環体(B−12)を合成した。
次に、合成例7の(2)と同様にしてブロモ体(C−11)を合成し、(3)と同様にしてジフェニルアミノ化を行い黒赤色の化合物(P−11)を合成した。融点は250℃以上であった。目的化合物の吸収極大波長(トルエン中)を表2に示す。
【0049】
【表2】
Figure 0003842156
【0050】
実施例1
25×75×1.1mmサイズのガラス基板上に、膜厚120nmのインジウムスズ酸化物からなる透明電極を設けた。このガラス基板に紫外線及びオゾンを照射して洗浄を行なったのち、真空蒸着装置にこのガラス基板を設置した。
まず下記TPD74を60nmの厚さに蒸着した後、その上に下記NPDを20nmの厚さに蒸着した。次いで発光材料として上記化合物(P−1)と下記DPVDPANを重量比2:40で同時蒸着し、厚さ50nmの発光媒体層を形成した。さらに、Alq(8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体)を10nmの厚さに蒸着した。TPD74、NPD、化合物(P−1):DPVDPAN及びAlqが蒸着されてなる層は、それぞれ正孔注入層、正孔輸送層、発光媒体層及び電子注入層である。
次に、ハロゲン化アルカリ金属であるLiFを0.2nmの厚さに蒸着し、次いでアルミニウムを150nmの厚さに蒸着した。このAl/LiFは陰極として働く。このようにして有機EL素子を作製した。
この素子について、通電試験を行なったところ、電圧5.5V、電流密度2.78mA/cm2 にて、112cd/m2 の赤色発光が得られ、色度座標(0.64,0.33)、発光効率は2.30ルーメン/Wであった。
【0051】
【化10】
Figure 0003842156
【0052】
実施例2〜6
実施例1において、化合物(P−1)の代わりに、化合物(P−2)〜(P−6)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。得られた素子の直流電圧5.5Vでの電流密度、発光輝度、発光色、色度座標を測定し、その結果を表1に示した。
【0053】
実施例7
実施例1において、発光材料として化合物(P−1):DPVDPANの代わりに、化合物(P−7):下記DPVTPを用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。得られた素子の直流電圧6.0Vでの電流密度、発光輝度、発光色、色度座標を測定し、その結果を表1に示した。
【0054】
【化11】
Figure 0003842156
【0055】
実施例8〜12
実施例7において、化合物(P−7)の代わりに、化合物(P−8)〜(P−12)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。この素子の直流電圧6.0Vでの電流密度、発光輝度、発光色、色度座標を測定し、その結果を表1に示した。
【0056】
実施例13
実施例1において、発光材料として化合物(P−1):DPVDPANの代わりに、化合物(P−2):下記DDAF(3,10−ビス(ジ−p−トリルアミノ)−7,14−ジフェニル−アセナフト[1,2−K]フルオランテン)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。得られた素子の直流電圧6.0Vでの電流密度、発光輝度、発光色、色度座標を測定し、その結果を表1に示した。
【0057】
【化12】
Figure 0003842156
【0058】
実施例14
実施例13において、発光材料として化合物(P−2):DDAFの代わりに、化合物(P−9):DDAFを重量比1:40で用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。得られた素子の直流電圧6.0Vでの電流密度、発光輝度、発光色、色度座標を測定し、その結果を表1に示した。
【0059】
比較例1
実施例1において、化合物(P−1)の代わりに、下記化合物(P−0)(5,10,15,20−テトラフェニルビスベンゾ[5,6] インデノ[1,2,3-cd:1',2',3'-lm]ペリレン)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。得られた素子の直流電圧8.0Vでの電流密度、発光輝度、発光色、色度座標を測定し、その結果を表1に示した。
【化13】
Figure 0003842156
比較例2
実施例13において、化合物(P−1)の代わりに、化合物(P−0)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。得られた素子の直流電圧6.0Vでの電流密度、発光輝度、発光色、色度座標を測定し、その結果を表1に示した。
【0060】
【表3】
Figure 0003842156
【0061】
表1に示したように、化合物(P−1)〜(P−14)を用いた実施例1〜14の有機EL素子は、発光輝度及び発光効率が高く、色度の高い、赤色ドーパント材料として機能した。これに対し、化合物(P−0)を用いた比較例1の有機EL素子は、100cd/m2 の輝度を得るための印加電圧が高く、発光効率も不十分であり、比較例2の有機EL素子は、発光効率が不十分であり、発光色も赤橙色であった。
【0062】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、一般式(1)又は(2)で表される化合物を有機薄膜層の材料として用いた本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光輝度及び発光効率が高く、色純度が高く、赤色系に発光する。このため、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、各種電子機器の光源等として極めて有用である。

Claims (6)

  1. 陰極と陽極間に一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、ナフトフルオランテン構造を有する下記式(1)で表される化合物を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 0003842156
    (式中、R1 〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルキル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数2〜20のアルケニル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のジフェニルアミノ基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を表す。また、R15〜R18のうちの隣り合った基が、単環又は多環芳香環を形成してもよく、形成された芳香環は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルキル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数2〜20のアルケニル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のジフェニルアミノ基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基が結合していてもよい。)
  2. 陰極と陽極間に一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機薄膜層の少なくとも1層が、ナフトフルオランテン構造を有する下記式(2)で表される化合物を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 0003842156
    (式中、R21〜R38は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルキル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数2〜20のアルケニル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のジフェニルアミノ基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を表す。また、R33〜R38のうちの隣り合った基が、それぞれ単環又は多環芳香環を形成してもよく、形成された芳香環は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルキル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数2〜20のアルケニル基、直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のジアルキルアミノ基、置換もしくは無置換のジフェニルアミノ基、又は置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基が結合していてもよい。)
  3. 前記ナフトフルオランテン構造を有する化合物を含有する層が発光層である請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記ナフトフルオランテン構造を有する化合物を含有する層が、発光性有機金属錯体を含有する請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 陰極と陽極間に、さらに正孔注入輸送層を有する請求項1〜4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 陰極と陽極間に、さらに電子注入輸送層を有する請求項1〜4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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