JP3841965B2 - 高温高圧ガス処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体を高温・高圧のガス雰囲気下で処理する場合の高温高圧ガス処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、いわゆる配線膜の加圧埋め込み法(高圧リフロープロセス)等として、表面に凹部を有した半導体ウエハを圧力容器内の処理室へ装填し、この処理室内をヒータにより高温に加熱すると共にアルゴンガス等の不活性ガスを高圧に充填し(加熱・加圧工程)、次にこの高温高圧状態を所定時間にわたり保持させ(保持工程)、その後、所定時間をかけてヒータの加熱抑制乃至停止制御及びガス回収を行い(冷却・減圧工程)、その後、圧力容器から、アルミ合金等による配線膜が埋め込まれた半導体を取り出すといった処理方法が知られている(特開平7−193063号公報等参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記したような処理方法では、加熱・加圧工程において数百℃の高温及び数十MPaを超える高圧の処理環境を作りだしている関係上、その後の冷却・減圧工程において、100℃以下のハンドリング可能な温度へ処理室(即ち、被処理物)を冷却し、また大気圧に戻すまでに相当の時間をかける必要があるものとされ、この時間を短縮するのは困難とされていた。その理由は、おおよそ次の通りである。
【0004】
例えば、図5に示すように、保持工程を終了した時点で処理室が700℃、150MPaであったと仮定して、この高温高圧状態からヒータへの電力投入を切断してそのまま放冷し、室温近傍にまで冷却するのを待ってから減圧を開始させるといった方法をとると、高圧環境下での冷却速度は高圧ガスの放熱性の良さから比較的短時間に行えるものの、室温環境下になってから減圧を開始したときのガス密度の一気の低下、即ち、処理室内での実質的なガスの一気の体積増加が、断熱膨張に伴う著しい温度低下を招来し、これが原因となって被処理物まわりのガス温度を零℃以下にさせるといった事態に至る。
【0005】
もし、この状態で被処理物を圧力容器から取り出してしまうと、空気中の水蒸気が凝結して被処理物表面に水滴を発生させることになる。そのため、これを防止するために被処理物の温度が室温近傍に回復するまで待つ必要が生じ、結果として、全体の処理時間が長時間にわたるというものである。
一方、図6に示すように、保持工程を終了した時点で処理室が700℃、150MPaであったと仮定して、この高温高圧状態からヒータへの電力投入を切断するだけでなく、これと同時に減圧をも開始させるといった方法をとると、高圧ガスの放熱性の良さに伴った冷却が進行するといった事情は図5の場合と同じでも、この冷却の進行よりも速く処理室が大気圧になってしまうため、ガス密度の低下、即ち、ガスの体積増加による断熱膨張に伴って生じる温度低下を十分に利用できないことになってしまう。
【0006】
従って、この断熱膨張による温度低下が終了したときに処理室は未だ300℃前後もあるにも拘わらず、それ以降の温度低下は、ガスの放熱性に依存するかたちと成らざるを得なくなる。しかし、処理室が大気圧になってしまった状態では、ガスの放熱性が悪くなるという性質が前面にでてくるために、被処理物近傍のガス温度はなかなか低下しなくなり、結果として、全体の処理時間が極めて長時間にわたるというものであった。
なお、処理室を高圧環境にする必要がないのであれば、処理室内でガスを循環させることにより冷却促進を図るという方法も考えられるが、この方法を高圧環境にした処理室内で実施すると、ガスに含まれる不純物成分が例えば10ppmといった微量であっても、これが大気圧換算で1%という高濃度の汚染環境に匹敵することになり、コンタミネーションの問題が生じ、従ってこの方法を、上記のような高圧環境を要する半導体の処理において採用することはできないものである。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、半導体を高温高圧でガス処理する場合にあって、冷却・減圧工程における時間短縮を図り、もって高品質半導体の高温高圧ガス処理における処理率を高められるようにした高温高圧ガス処理方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。
即ち、本発明に係る高温高圧ガス処理方法は、その全体流れとしては、圧力容器内の処理室へ装填した被処理物に加熱・加圧工程、保持工程、及び冷却・減圧工程を施して容器外へ取り出すというものであり、そのうち上記冷却・減圧工程では、保持工程終了時の高圧状態を保持させたままで加熱を停止させる放冷を最初に行わせ、次にこの放冷によって処理室が所定温度・所定圧力に達した段階で減圧を開始するといった手順をとるものである。
【0009】
そして、上記のような減圧を行ったことにより、処理室が大気圧になったときには、処理室の被処理物が、丁度、所望のハンドリング温度になっているようにするものである。
結局、本発明では、保持工程の終了時点から、高温環境下におけるガスの放熱性の良さを利用した冷却速度の速い冷却を所定時間だけ行っておき、もって早期のうちに所定幅の温度低下を起こさせたうえで、処理室が低温になりすぎないうちに減圧を開始させ、この減圧過程では、ガス密度の低下、即ち、ガスの体積増加による断熱膨張に伴って生じる温度低下を有効且つ十分に、そして過剰に作用することがないように利用して、被処理物近傍のガス温度を迅速に冷却させるようにしたものである。
【0010】
ここにおいて、ハンドリング温度とは、直接的又は間接的な手作業或いはロボット作業によって処理後の被処理物を常温下で取り扱うことのできる温度を言うものであり、20℃以上100℃以下とするのが好適とされる。
上記の手順を実行するにあたり、最も重要となるのは、減圧を開始する時期であり、この時期は、次のようにして決定する。
減圧を開始しないまま、即ち、高圧環境下において加熱だけを停止したときに起こる処理室及び被処理物の温度低下(以下、この温度低下を示す曲線を「高圧下放冷曲線」と言う)は、処理室及び被処理物が有する当初の温度と、処理室の内容積とを主要因として、おおよそ一義的に求められるものである。
【0011】
また、加熱を停止させたうえで、且つ同時に減圧を行うときに起こる処理室及び被処理物の温度低下(以下、この温度低下を示す曲線を「減圧下放冷曲線」と言う)についても、被処理物、使用ガス及び処理室内構造物の各熱容量をはじめ、処理室の内容積、被処理物や使用ガスの種類、処理室及び被処理物の温度や圧力等によって、おおよそ一義的に求められるものである。
そこで、これら高圧下放冷曲線及び減圧下放冷曲線について、それぞれ、上記したような各種の熱的諸条件を変えた場合で予め複数回のテストを行ったうえで、それら個々のテスト結果をデータとして蓄積しておく。
【0012】
そして、まず最初に、処理室が大気圧になったとき(圧力容器から処理後の被処理物を取り出すとき)に、被処理物に対して所望するハンドリング温度を決める。
次に、このハンドリング温度を低温側の目標値として描かれる減圧下放冷曲線を上記蓄積データの中から選択する。
また、保持工程が終了した時点の処理室の温度及び圧力を高温高圧側の条件として描かれる高圧下放冷曲線を上記蓄積データの中から選択する。
【0013】
このようにしてハンドリング温度、高圧下放冷曲線、及び減圧下放冷曲線が求まれば、あとは高圧下放冷曲線の低温側領域と減圧下放冷曲線の高温側領域との交点として減圧の開始時期を決定することができることになる。
上記圧力容器の処理室に対し、被処理物を包囲可能な状態で気密性材料製のケーシングを設けておくと、このケーシングが被処理物に対する熱の出入りを抑制するバリアとして作用することになり、減圧によるエンタルピー変化による冷却の利用をケーシングと被処理物等とに限定することが可能になり、効率を上げることが可能である。
【0014】
しかも、このケーシングは、温度差に基づく自然対流に乗って不活性ガス(ガス不純物成分等)が直接的に被処理物に及ぶのを抑制したり、圧力容器の内部に設ける断熱構造体やヒータ等から生じる粉塵が被処理物に付着するのを防止したりできるものである。
この場合、ケーシングの内側に温度測定手段を設ければ、処理室内温度を正確に検出することができ、従って、この温度測定手段によって前記減圧開始時の温度検出を行うようにすれば、ヒータを正確に温度制御でき、処理室内を所定温度に制御し易くなるという利点も得られる。
【0015】
このようなことにより、処理した半導体として、高品質で且つ品質一定なものが得られることになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図2は、本発明に係る高温高圧ガス処理方法を実施するのに好適に用いられる加圧処理装置1を示している。
この加圧処理装置1は、上蓋2及び下蓋3を具備した円筒形の圧力容器4と、この圧力容器4を軸方向(上下)に把持するプレスフレーム(図示略)とを有しており、圧力容器4には、上蓋2等に設けられたガス通路5を介してアルゴンガスや窒素等の不活性ガスを給排可能にしたガス給排装置(図示略)が接続されていると共に、上蓋2等に設けられたエア通路6を介して真空ポンプ(図示略)が接続されている。
【0017】
圧力容器4内には、逆コップ状をした断熱構造体7が設けられ、この断熱構造体7の内側に処理室8が形成されるようになっている。
そして、この処理室8における下部側には、下蓋3上に載設されるかたちで台部10が設けられており、また処理室8まわりには、断熱構造体7の内側面に沿うかたちで上下二段に分割されたヒータ11,12が設けられている。
上下のヒータ11,12には、抵抗線加熱方式のものが用いられており、それぞれ別配線されて、各独立した温度制御が可能になっている。
【0018】
台部10の上には、TiやZr等により形成されたゲッタ材14を介して、被処理物Wを上下に複数支持可能にした多段支持方式の支持装置15が設けられており、従って上記した各ヒータ11,12は、この支持装置15まわりを取り囲む状態となる。
この支持装置15における被処理物Wの支持数としては、被処理物Wのロット単位数と同等数(例えば1ロットを13枚又は25枚とする)か又はその倍数とするのが好適となる。
【0019】
そして、支持装置15とヒータ11,12との両者間には、逆コップ状をしたケーシング16が設けられており、このケーシング16により、支持装置15が包囲されるかたちとなっている。このケーシング16は気密性材料によって形成されており、不活性ガスに含まれるガス不純物成分等が、支持装置15に支持された被処理物Wに対して直接に接触するのを抑制できると共に、断熱構造体7やヒータ11,12から生じる粉塵が被処理物Wに及ぶのを防止できる。
なお、このケーシング16の下端部には隙間17が設けられており、この隙間17によってケーシング16の内外での圧力差を無くして、ケーシング16の保護を図ってある。
【0020】
ケーシング16の内側には、支持装置15の最上段の被処理物Wに対応した位置付けで温度測定手段18が設けられ、この温度測定手段18によって上部ヒータ11を温度制御可能になっており、また支持装置15の最下段の被処理物Wに対応した位置付けで温度測定手段19が設けられ、この温度測定手段19によって下部ヒータ12を温度制御可能になっている。
これら温度測定手段18,19をケーシング16の内側に設けているため、ケーシング16内の温度分布を直接に検出することができ、正確な検出結果が得られ、これによって上下のヒータ11,12を適正に制御できるため、結果としてケーシング16内の全域を均熱化できるということになる。
【0021】
このような構成の加圧処理装置1を用い、且つシリコンウエハ等の半導体を対象として、本発明に係る高温高圧ガス処理を行うには、まず、圧力容器4を開き、支持装置15に対して複数(例えば2ロット分)の被処理物Wを支持させる。そして、この支持装置15の上からケーシング16を被せるなどして、圧力容器4を所定に組み立て、図2の状態にする。
そして、図1に示すように、加熱・加圧工程、保持工程、及び冷却・減圧工程をこの順番で順次、実行する。
【0022】
加熱・加圧工程では、まず真空ポンプ(図示略)を作動させ、圧力容器4の処理室8を真空にした後、次にガス給排装置(図示略)を作動させ、処理室8へアルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスを充填し、所定時間をかけて所定の内圧(ここでは150MPaとした)へと加圧する。また同時間中にヒータ11,12による加熱を開始して、処理室8を所定温度(ここでは700℃とした)にする。
次の保持工程では、上下の温度測定手段18,19により各検出温度を監視しつつ必要に応じて各ヒータ11,12への投入電力を制御する等して、支持装置15に対する上下方向、即ち、全ての被処理物Wに対する均熱性を維持させつつ、所定時間、上記の温度及び内圧を保持させる。
【0023】
次の冷却・減圧工程では、減圧をしないまま、即ち、保持工程終了時の高圧状態を保持させたまま、各ヒータ11,12への投入電力を切断して加熱を停止させることによる放冷を行い、次に、この放冷によって処理室8が所定温度・所定圧力になった段階で減圧を開始する。
この減圧では、処理室8が大気圧になったときに、被処理物Wが丁度、所望のハンドリング温度になっているようにする。
ここにおいて、保持工程終了時点から減圧開始時点までに起こる温度低下を示した曲線を「高圧下放冷曲線」と言い、減圧開始時点から大気圧に達するまでに起こる温度低下を示した曲線を「減圧下放冷曲線」と言うものとして、減圧開始時期の決定方法を説明する。
【0024】
まず、所望するハンドリング温度を決める。このハンドリング温度は、直接的又は間接的な手作業或いはロボット作業によって処理後の被処理物Wを常温下で取り扱うことのできる温度であって、20℃以上100℃以下を好適とする。
次に、減圧下放冷曲線として蓄積した複数のデータ(即ち、過去に実際に行った複数回のテスト結果を蓄えた資料)の中から、経験則として、冷却後の目標温度が上記ハンドリング温度に適合するような減圧下放冷曲線を選出する。
この蓄積されたデータ中の個々の減圧下放冷曲線は、処理室8の内容積、被処理物Wの体積及び材質、使用ガスの種類、及び被処理物Wや使用ガス更には処理室8内構造物(例えばケーシング16や支持装置15、台部10、断熱構造体7等)の熱容量、処理室8の温度及び圧力等、各種の熱的諸条件を異ならせることによって得たものである。
【0025】
また、高圧下放冷曲線として蓄積した複数のデータ(即ち、過去に実際に行った複数回のテスト結果を蓄えた資料)の中から、経験則として、冷却開始時の温度が、上記保持工程終了時における処理室8の温度に適合するような高圧下放冷曲線を選出する。
この蓄積されたデータ中の個々の高圧下放冷曲線は、処理室8の内容積と、冷却開始時の温度や圧力等の熱的諸条件を異ならせることによって得たものである。
【0026】
このようにしてハンドリング温度、減圧下放冷曲線、及び高圧下放冷曲線を順次決定すれば、減圧下放冷曲線の高温側領域と高圧下放冷曲線の低温側領域との交点として、自ずと、減圧の開始時期を決定することができることになる。
上記のように決定した冷却・減圧工程を経た後は、圧力容器4を開いて支持装置15から処理後の被処理物W(半導体)を普通に取り出すことによって、高温高圧ガス処理の1サイクルを終了することになる。
図3は、減圧を開始してから処理室8で起こる温度低下のメカニズムを、圧力媒体ガスのT−S線図(モリエール線図)で表したものである。
【0027】
この図3中において、保持工程を終わって700℃、150MPaとなった段階から、放冷速度の速い高圧環境下において500℃まで温度が低下するのを待った状態が、A点である。
その後、処理室8のガスを10〜20分かけて放出し、大気圧乃至1MPaまで減圧すると、T−S線図上ではガス温度は断熱膨張(等エントロピー変化)によりB点となる筈である。
従って、このときガスのエンタルピーは、理論上は、A点でのH1からB点のH2に減少してH1−H2の熱量を吸熱することになるが、実際には、被処理物W等がそれぞれ熱容量を持っており、これらかの放熱現象があるために、−180℃で示す位置にはならず、室温近傍のC点(室温〜100℃)に落ちつくことになる。
【0028】
このC点のエンタルピーをH3とすると、実際に、減圧により除去するのに寄与した減圧によるエンタルピー変化は、H1−H3ということになり、このエンタルピー変化を巧みに利用することにより、被処理物Wを所望するところに応じて温度管理することが可能になるものである。
なお、被処理物Wがケーシング16内に収納されているので、このケーシング16が熱の出入りをも抑制するバリアとして作用し、減圧によるエンタルピー変化による冷却の利用をケーシング16とケーシング16内部の被処理物Wやこれを受けるボート(図示略)等の治具に限定することが可能になり、効率を上げることが可能である。
【0029】
ケーシング16に断熱性に優れた石英を用いたり、ケーシング16を二重構造にしたりする等の措置を講ずれば、一層好適であり、減圧による温度低下を更に活用することが可能になる。
【0030】
【実施例】
図4は、本発明を採用した場合の冷却・減圧工程に関する二つの具体的実施例(X,Y)を示している。
図4中のXは、保持工程の終了時点において処理室8が430℃、170MPaになっている場合であって、且つ、大気圧になった時点での被処理物Wのハンドリング温度を56℃にすることに決めた場合である。
この場合の減圧開始時期は、処理室8が310℃、130MPaとなった時点であり、保持工程終了時点からこの減圧開始時までは20分を要した。また、この減圧開始時から大気圧になるまでに要した減圧時間は20分であった。
【0031】
また、図4中のYは、保持工程の終了時点において処理室8が400℃、170MPaになっている場合であって、且つ、大気圧になった時点での被処理物Wのハンドリング温度を81℃にすることに決めた場合である。
この場合の減圧開始時期は、処理室8が353℃、153MPaとなった時点であり、保持工程終了時点からこの減圧開始時までは15分を要した。また、この減圧開始時から大気圧になるまでに要した減圧時間は25分であった。
なお、このYにおいて、引き続き被処理物Wのハンドリング温度を81℃から50℃以下になるまで低下させる実験を行ったところ、更に1時間を要した。従って、Xと比べて全体の処理時間がそのまま1時間分延長することを意味するが、被処理物Wの温度が81℃のままでも、ロボットハンド等を用いれば圧力容器4からの取り出しやその後の取り扱いは可能であり、必ずしも、上記1時間の延長が必要なわけではない。
【0032】
むしろ、この1時間の延長を嫌って、例えば減圧の開始時期を15分より早めたとすると、大気圧になった時点でも100℃を超える温度となり、却って不具合が発生するし、また反対に減圧の開始時期を15分より遅めたとすると、大気圧になったときに被処理物Wが零℃以下となり、そのまま圧力容器4から取り出したときに被処理物Wの表面に水滴が発生して、被処理物Wが使用不能になる不具合が発生することになる。
結果として、上記Xの場合も、またYの場合も、冷却・減圧工程に必要とされる全処理時間は40分という極めて短時間であり、従って加熱・加圧工程及び保持工程を含めても1時間から3時間程度で高温高圧ガス処理の1サイクルが可能になり、1日に5回から20回という多数回にわたる連続処理ができることから、半導体処理率を高めることができるものである。
【0033】
表1は、8インチのウエハ50枚を処理するうえで、本発明を実施した場合(A)と、保持工程の終了と同時に減圧を開始した場合(B)と、保持工程終了後に200℃になるまで高圧状態を保持してから減圧を開始した場合(C)とを比較した結果を示している。Bは、従来において図6で説明した方法に類似し、Cは、従来において図5で説明した方法に類似したものであると言える。
【0034】
【表1】
【0035】
この表1から明らかなように、本発明を実施することで、全処理時間を飛躍的に短縮できることが判る。なお、Cの場合では、大気圧まで減圧したときの被処理物Wの温度が零℃を下回っていたので、更にヒータ加熱を行って、被処理物Wが約30℃になるのを待ってから取り出しを行っている。
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、細部の手順や用いる加圧処理装置1としての構成等について、実施の態様に応じた各種変更等が可能である。
【0036】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明に係る高温高圧ガス処理方法では、冷却・減圧工程において、保持工程終了時の高圧状態を保持させたままで加熱を停止させる放冷を最初に行わせ、次にこの放冷によって処理室が所定温度・所定圧力に達した段階で減圧を開始するといった手順をとることで、処理室が大気圧になったときには、処理室の被処理物が、丁度、所望のハンドリング温度になっているようにしており、これによって冷却・減圧工程における格段の時間短縮が図れ、もって高品質半導体の高温高圧ガス処理における処理率を飛躍的に高められるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高温高圧ガス処理方法における温度−圧力の関係を経時的に示した図である。
【図2】本発明に係る高温高圧ガス処理方法を実施するのに好適に用いられる加圧処理装置を示した断面図である。
【図3】減圧開始後における温度低下のメカニズムを説明したT−S線図(モリエール線図)である。
【図4】本発明方法を採用した冷却・減圧工程の実験例2例を示した折れ線グラフである。
【図5】従来における高温高圧ガス処理方法における温度−圧力の関係を経時的に示した図である。
【図6】従来における別の高温高圧ガス処理方法における温度−圧力の関係を経時的に示した図である。
【符号の説明】
1 加圧処理装置
4 圧力容器
8 処理室
16 ケーシング
18 温度測定手段
19 温度測定手段
W 被処理物
Claims (4)
- 圧力容器(4)内の処理室(8)へ装填した被処理物(W)に加熱・加圧工程、保持工程、及び冷却・減圧工程を施して容器外へ取り出す高温高圧ガス処理方法において、
上記冷却・減圧工程では、保持工程終了時の高圧状態を保持させたままで加熱を停止させる放冷を最初に行わせ、
次に該放冷後に、所望するハンドリング温度と、該ハンドリング温度を目標値にすることを前提として被処理物(W)の熱容量をはじめとする熱的諸条件から経験則により求められる減圧下放冷曲線と、保持工程終了時点から求まる高圧下放冷曲線とに基づいて予測された減圧開始時期に減圧を開始させる手順をとることにより、上記減圧によって大気圧にした段階で同時に被処理物が所望するハンドリング温度になるようにすることを特徴とする高温高圧ガス処理方法。 - 前記ハンドリング温度が20℃以上100℃以下であることを特徴とする請求項1記載の高温高圧ガス処理方法。
- 圧力容器(4)内へ被処理物(W)を包囲可能な状態に気密性材料製のケーシング(16)が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の高温高圧ガス処理方法。
- 前記ケーシング(16)内に温度測定手段(18,19)を設けて、該温度測定手段(18,19)によって前記減圧開始時の温度検出を行うことを特徴とする請求項3記載の高温高圧ガス処理方法。
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