JP3841738B2 - 有害重金属低減材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有害重金属を含有した粘性土、ヘドロ、軟弱地盤等の高含水土を短期間に硬化させ、有害重金属の溶出を抑える有害重金属低減材に関する。また、本発明における部や%は、特に規定のない限り質量基準である。
【0002】
【従来の技術と課題】
有害重金属を含有する産業廃棄物や産業排水の処理に関連する問題は、我々の生活と密着している。そして、有害重金属としては、メッキ工場やステンレス製鋼業等の廃棄物としてのクロム化合物、Ni-Cd電池におけるカドミウム、半導体産業における砒素、セレン等が挙げられる。
【0003】
これらの有害重金属を含有する産業廃棄物の処理問題は、この分野に携わる技術者のみならず、一般の人々も高い関心を持つようになってきた。
【0004】
有害重金属とは、カドミウム、鉛、3価クロム、6価クロム、鉛、砒素、ニッケル、水銀、及びセレン等であり、これらの有害重金属には、例えば環境基本法、環境庁告示第46号(土壌の汚染に係る環境基準)、環境庁告示第59号(水質汚濁に係る環境基準)、水質汚濁防止法、廃棄物処理法、及び生活環境保全条例等の多くの環境基準が制定されており、あらゆる環境中における有害重金属量が厳しく規制されている。これらの環境基準を遵守するためには、有害重金属を含む化合物を分解、吸着、除去等の方法で低減する方法が求められてきた。
【0005】
これらの有害重金属のうち、6価クロムは、メッキ工場をはじめとする各種化学工場の原廃液や、生コンクリート工場の原廃水中等に含まれているが、生体系に与える影響が大きく、また、移動速度が速く、不溶化が難しいことから、特に問題視されている。
【0006】
そこで、これまでに6価クロムを無害化する方法として、水溶性の第一鉄塩を添加する方法が提案されている(特開昭47-031894号公報、特開昭48-083114号公報、特開昭49-016714号公報等)。
【0007】
しかしながら、水溶性の第一鉄塩は、6価クロムを3価に還元して不溶化する効果があるが、非常に高価である。また、初期の無害化には優れるものの、空気中の酸素と容易に反応して酸化し還元作用が失われるため、長期的な効果は期待できないという課題があった。
【0008】
さらに、セメント等により固定化する方法も提案されている(特開昭56-095399号公報等)。しかしながら、セメントは、その硬化に伴って6価クロム等の有害重金属を固定化するため、硬化するまでの若材齢においての効果はほとんど期待できない。またセメントが硬化した後であっても、6価クロムと6価クロム以外の、両方の重金属を含有する廃棄物を処理する場合には、6価クロムに対し選択的に反応するわけではないため、その固定化性能が十分でないという課題があった。
【0009】
また、石灰系固化材を土壤に散布する方法も知られている(特開平09-071777号公報等)。この方法は生石灰の消化反応により短期間で脱水効果が得られるものであり、有害重金属を固定する固化材としての機能を有しているものの、6価クロムの低減効果が必ずしも十分でないことがあるという課題があった。
【0010】
カルシウムアルミネート化合物により重金属を固定化する方法も知られている(特開2002-153836号公報等)。この方法は有害重金属を低減する効果は高いが、カルシウムアルミネート化合物が土壤中の水分と反応し、凝集してダマができやすく、微粉のままで土壤と均一に混合しにくいという課題があった。
【0011】
そこで本発明者らは上記課題を鑑み種々検討した結果、カルシウムフェライトを含有する有害重金属低減材を用いることにより、土壤や廃液等の各種有害重金属を素早く固定して溶出量を低減することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、ブレーン比表面積 500cm 2 /g 以上で CaO(C) 及び Fe 2 O 3 (F) のモル比 C/F が 1 〜2のカルシウムフェライトからなる有害重金属低減材である。また、ブレーン比表面積 500cm 2 /g 以上の生石灰20〜99部、ブレーン比表面積 500cm 2 /g 以上で CaO(C) 及び Fe 2 O 3 (F) のモル比 C/F が 1 〜2のカルシウムフェライト80〜1部を含有してなる有害重金属低減材であり、カルシウムフェライトのFe2O3成分と、酸化物換算のイオウSO3のモル比SO3/Fe2O3が3.0以下であることを特徴とする該有害重金属低減材である。さらに、前記有害重金属低減材を用いることを特徴とする有害重金属低減方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明で使用するカルシウムフェライトとは、CaOを含む原料とFe2O3を含む原料を混合して、1,000〜1,600℃で熱処理をして得られる水和活性を有する物質の総称であって、CaO及びFe2O3の一部がアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルカリハロゲン化物、及びアルカリ土類金属ハロゲン化物等で置換された物質でもよい。
【0015】
鉱物形態としては結晶質、非晶質のいずれであっても良い。カルシウムフェライトの結晶相としては、CaOをC、Fe2O3をFと表記したとき、たとえばCF、C2F等の組成の結晶相がある。
【0016】
本発明におけるカルシウムフェライトの組成は特に限定されないが、CaO(C)及びFe2O3(F)のモル比C/Fが1〜2であることが好ましい。C/F比が2を超えると、水分と接触した時にカルシウムフェライトがただちに凝集し、土中に均一に分散しない場合がある。また、C/F比が1未満では有害重金属低減効果が低下することがある。
【0017】
本発明におけるカルシウムフェライトと生石灰の配合は特に制限されないが、生石灰20〜99部、カルシウムフェライトが80〜1部が好ましく、生石灰50〜95部、カルシウムフェライトが50〜5部がより好ましい。カルシウムフェライトが1部未満では有害重金属低減効果が充分に得られない場合がある。
【0018】
カルシウムフェライトの粒度は特に限定されるものではないが、ブレーン比表面積で500cm2/g以上が好ましく、2,000〜6,000cm2/gがより好ましい。カルシウムフェライトの粒度が500cm2/g未満では有害重金属の固定性能や初期強度発現性が低下する場合がある。また、6,000cm2/gを超えると過剰な粉砕動力が必要となり、不経済である。
【0019】
本発明で使用する生石灰は特に限定されるものではなく、市販されている生石灰を使用しても良く、石灰石を焼成しても良いが、純度は高い方が好ましく、JIS規格品では2号品が好ましく、1号品がより好ましい。
【0020】
生石灰の粒度は特に限定されるものではないが、ブレーン比表面積で500cm2/g以上が好ましく、2,000cm2/g以上がより好ましい。生石灰はBET比表面積で100m2/gを超える超微粉が市販されているが、このような超微粉であっても使用可能である。また、生石灰の粒度が500cm2/g未満では初期強度発現性が低下する場合がある。
【0021】
本発明の有害重金属低減材は、カルシウムフェライトの他に、Al2O3、Fe2O3、SiO2、MgO、Na2O、K2O、Li2O、F、Cl、P2O5、B2O3、TiO2等の化合物が共存してもよい。ただし、イオウ、特に硫酸態イオウ(SO4 2-イオン)は本発明の有害重金属低減材の6価クロム低減効果を阻害するため、含有量が少ないことが好ましい。すなわち、カルシウムフェライトのFe2O3成分と酸化物換算のイオウSO3のモル比でSO3/Fe2O3を3.0以下とすることが好ましく、0.5以下とすることがより好ましい。
【0022】
また、本発明の有害重金属低減材には各種カルシウムアルミネート類や酸化鉄等が共存する場合があるが、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲では特に問題とはならない。それらの化合物の具体例としては、例えば、Fe2O3、Fe3O4等の酸化鉄、及び消石灰等が挙げられる。
【0023】
本発明の有害重金属低減材には、本発明の目的を損ねない範囲で、従来固化材に使用されている材料、たとえば普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント等の各種セメント類、高炉水砕スラグや高炉徐冷スラグ等のスラグ類、カオリン、マイカ、ベントナイト等の粘土化合物類、ゼオライトやアパタイト等の金属イオン交換体類、キレート化合物等を併用することも可能である。
【0024】
本発明の効果を損なわない範囲で還元剤を併用することは、有害重金属の固定効果を高める観点から好ましい。還元剤としては、塩化鉄(II)や硝酸鉄(II)等の2価の鉄塩や、塩化チタン(III)等の3価のチタン塩、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、及び亜硫酸カルシウム等の亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウムや亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸水素塩、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化カルシウム、及び硫化アンモニウム等の硫化物、チオ硫酸ナトリウムやチオ硫酸カリウム等のチオ硫酸塩、二酸化硫黄や硫黄、チオ尿素ならびに泥炭や亜炭等があり、これらのうち、イオウを含まず、少量使用で有害重金属の固定化率が高い2価の鉄塩(II)の使用が好ましい。
【0025】
また、本発明では通常の有害重金属低減材に用いられる添加剤、たとえば緩衝剤のようなpH調整剤等を併用することも可能である。
【0026】
本発明の有害重金属低減材の使用方法としては、例えば汚染土壌の浄化に用いるのであれば(1)土壤に混合又は散布する、(2)多量の水中に分散させて土壤に注入する、(3)セメントコンクリートや土壤と混合して固化材として使用する、等の方法を用いることができる。
【0027】
また、本発明の有害重金属低減材を、汚染された水の有害重金属低減に用いるのであれば、水中に投入、攪拌混合の後に、固相を濾過又はデカンテーション等の方法で取除くことにより、汚染された水の有害重金属量を低減することができる。
【0028】
【実施例】
実験例1
表1に示すように生石灰とカルシウムフェライトの配合割合を変化させた有害金属低減材を調製した。一方、関東ローム土と6価クロム標準溶液を用いて6価クロム含有量50mg/kg(ドライベース)とした汚染土壤を作製した。この汚染土壌1m3に対し、表1に示す有害金属低減材を100kgの割合でそれぞれ添加・混合して固化体を作製し、材齢1日及び3日の一軸圧縮強度と、固化体から溶出する6価クロム濃度を測定した。結果を表1に示す。なお使用した生石灰とカルシウムフェライトの粉末度はいずれもブレーン比表面積値6,000cm2/gとした。
【0029】
<使用材料>
生石灰:市販品、CaO含有量92.0%、ブレーン比表面積値6,000cm2/g
カルシウムフェライトa:C2F(CaO:C、Fe2O3:Fと略記)組成の結晶質、ブレーン比表面積値6,000cm2/g
カルシウムフェライトb:CF組成の結晶質、ブレーン比表面積値6,000cm2/g
6価クロム標準溶液:関東化学社製Cr標準溶液、1,000mg/リットル
【0030】
<試験方法>
一軸圧縮強度:「セメント系固化材による安定処理土の試験方法」に準拠
6価クロム濃度:環境庁告示第46号法に準じて測定
【0031】
【表1】
注:表中のNDは検出下限以下であることを示す。
【0032】
実験例2
生石灰とカルシウムフェライトの粉末度を表2に示すように変化させたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に示す。生石灰とカルシウムフェライトの配合割合は生石灰80部、カルシウムフェライト20部である。
【0033】
【表2】
注:表中のNDは検出下限以下であることを示す。
【0034】
実験例3
表3に示すSO3/Fe2O3モル比となるように半水セッコウを添加した有害重金属低減材を調製したこと以外は実験例2と同様に行った。
【0035】
【表3】
注:表中のNDは検出下限以下であることを示す。
【0036】
実験例4
有害重金属の種類を表4に示すように変化させたこと以外は実験例2と同様に行った。結果を表4に示す。
【0037】
<使用材料>
セレン標準溶液 :関東化学社製Se標準溶液、1,000mg/リットル
カドミウム標準溶液:関東化学社製Cd標準溶液、1,000mg/リットル
【0038】
【表4】
注:表中のNDは検出下限以下であることを示す。
【0039】
【発明の効果】
本発明の有害重金属低減材を用いることにより、6価クロムを始めとする各種有害重金属を低減して溶出を抑制できる。本発明の有害重金属低減材は、化学及び金属分野等において発生する、カドミウム、鉛、3価クロム、6価クロム、鉛、砒素、ニッケル、水銀、及びセレン等の有害重金属によって汚染された水や土壌を浄化する有害重金属低減用途に適する。
Claims (4)
- ブレーン比表面積 500cm 2 /g 以上で CaO(C) 及び Fe 2 O 3 (F) のモル比 C/F が 1 〜2のカルシウムフェライトからなる有害重金属低減材。
- ブレーン比表面積 500cm 2 /g 以上の生石灰20〜99部、ブレーン比表面積 500cm 2 /g 以上で CaO(C) 及び Fe 2 O 3 (F) のモル比 C/F が 1 〜2のカルシウムフェライト80〜1部を含有してなる有害重金属低減材。
- カルシウムフェライトのFe2O3成分と、酸化物換算のイオウSO3のモル比SO3/Fe2O3が3.0以下であることを特徴とする請求項2項に記載の有害重金属低減材。
- 請求項1〜3記載のうちの1項に記載の有害重金属低減材を用いることを特徴とする有害重金属低減方法。
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