JP3839853B2 - 植物保護 - Google Patents

Description

発明の分野
本発明は、一般に、農業および園芸の分野であり、植物およびその作物を昆虫の被害から保護するための方法および構造物を提供する。本明細書で使用する「昆虫感染」という用語は、例えば、植物またはその作物を食べる昆虫またはその幼虫による植物に対する直接的な昆虫感染と、昆虫が感染ベクターとして作用する、例えばウィルスなどの病原微生物による間接感染を示す意味である。
発明の背景および従来技術
植物またはその作物の昆虫による感染は、農業および園芸のいずれでも大きな関心事である。例えば、殺虫剤の使用、捕虫器の使用、保護ネットなどの使用など、このような感染と戦うさまざまな手段がある。
近年、ネット付きの囲い、すなわち、壁がネット製であるかネットで構成されている囲いの中で植物を生育させることが、特に集約農業でますます一般的になってきている。このようなネットには、通気を可能にしたり、ある程度まで強風をブロックしたり、また昆虫の侵入を防ぐという利点がある。しかし、ネットが裂けたり、穴が開いたりすることが時々あるため、完全に密封できるこのような囲いはない。さらに、このような囲いにはすべて、ヒトが入るための入口が必要であり、入口を開けたときに昆虫は入口を通って侵入することができる。
昆虫はこのような囲いに侵入すると、植物やその作物に感染することができる。これは、生活環の短い昆虫の場合に主として懸念される。この場合、この囲いの中で速やかに全生活環が完了されるため、大量の子孫が生じ、それらがまた植物に感染することができ、これが続くのである。
発明の一般的説明
本発明は、紫外線を吸収できる物質（紫外線吸収剤）を組み込んだ透明または半透明のポリマー材料製のネットの使用に基づくものである。本発明によれば、このようなネット製の囲いにまたはこのようなネットからなる囲いにこのようなネットを使用すると、紫外線吸収剤を組み込んでいない従来のネットを使用した場合と比べて、このような囲い内で生育させた植物またはその作物がより有効に保護されることが判った。
以下の説明において、「植物保護」または「植物の保護」という用語は、植物またはその作物を昆虫の感染から保護することを示すよう使用される。「ネット付き温室」という用語は、少なくとも屋根がネットで作られているかまたはその少なくとも実質的部分がネットで作られている区域場所を示すよう使用される。ネット付き温室は、屋根の他に、ネットで作られているかまたはその少なくとも一部がネットで作られている側壁も有することができる。
「実質的部分」という用語は、屋根または壁の特徴および特性を定義するのに重要な屋根または壁の部分を示す。本明細書における実質的部分とは、植物に対して適切な通気を確実にするのに十分な部分、例えば、壁または屋根の全表面の少なくとも４０％、好ましくは少なくとも５０％、最も好ましくは少なくとも７０％をしめる部分、望ましくは屋根または側壁の全表面の８０％を超える部分である。
その態様の１つによれば、本発明は、少なくとも実質的部分が適当な通気を可能にするメッシュサイズのネットで作製されたものである屋根を有する構造物の下で植物を生育させることからなり、ネットが紫外線吸収剤を組み込んだ透明または半透明のポリマー材料で作製したものであることを特徴とする昆虫の感染から植物またはその作物を保護する方法を提供する。
別の態様によれば、本発明は、少なくとも実質的部分が適当な通気を可能にするメッシュサイズのネットで作製された屋根からなり、ネットが透明または半透明のポリマー材料で作製したものであり、紫外線吸収剤が組み込まれていることを特徴とする植物を生育させるための囲いを提供する。
構造物は、植物の上にまたは植物の栽培を意図する区域場所の上に組み立てた、永久的な構造物または一時的な構造物とすることができる。この構造物はネット付き温室の技術分野で知られているものと同様に組み立てることができる。
少なくとも実質的部分が上記仕様のネットで作られている屋根についての要件が、本発明の最小要件である。構造物が側壁を持たず、屋根だけを有する（すなわち、構造物の側部が開放されている）場合でさえも、上記仕様のネットを有することにより、昆虫の感染に対し、比較的高い程度の保護が提供される。しかし、好ましくは、構造物は側壁をも有し、好ましくは、実質的部分が上記仕様のネット製である側壁をも有する。
さらに別の観点によれば、また、上記方法および構造物に使用するためのネットが提供される。このようなネットは本明細書では「発明ネット」と呼ぶ。
本発明ネットはネットを通る昆虫の侵入を物理的に防ぐために必要とされるものより大きなメッシュサイズで製造することができる。しかし、理解されるように、ネット付き温室のネットのメッシュサイズは、ネットを通る昆虫の侵入を防ぐのに十分に小さいことが好ましいが、このことは必ずということではない。
本発明のネットが昆虫の感染を予防するまたは減少させる作用機構は明らかでないが、また、理論と結びつけることは必要ではないが、植物に到達する光のスペクトルが変化し、その結果、昆虫の目に見える植物の見え方が変化するためと考えられる。
ネットは、例えば、約４／ｃｍから、好ましくは約１２／ｃｍから約３０／ｃｍまで、好ましくは約２５／ｃｍまでのメッシュの開口部を有しており、約２０／ｃｍのメッシュの開口部のあるネットが特に好ましい。開口部は正方形でも、矩形でもよい。後者の場合、開口部のメッシュサイズは、１つの方向で、約６／ｃｍから、好ましくは約１２／ｃｍから約３０／ｃｍまで、好ましくは約２５／ｃｍまでであり、約２０／ｃｍが特に好ましく、他の方向で、約４／ｃｍから、好ましくは約８／ｃｍから約２５／ｃｍまで、好ましくは約１２／ｃｍまでであり、約１０／ｃｍが特に好ましい。
発明の詳細な説明
本発明は、紫外線吸収剤を組み込んだ透明または半透明のポリマー材料製のネットを利用する。
このようなネットに使用することができるポリマー材料の例としては、ポリビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、高密度ポリエチレンがある。
紫外線吸収剤の一例としてはベンゾトリアゾールがある。
紫外線吸収剤は、紫外線放射の実質的部分を吸収するのに十分な量で存在すべきである。一般的には、その量は、ポリマー材料に当たる太陽の放射線から約６０％を超える、好ましくは７０％を超える、望ましくは約９０％を超える紫外線を遮るような量である。
例えば、紫外線吸収剤は、約０．１％（ｗ／ｗ）から、好ましくは約０〜２％（ｗ／ｗ）から約２％、好ましくは約１％（ｗ／ｗ）までの濃度範囲でポリマー材料中に存在することができる。
本発明に従って実施した実験では、１つの方向に約８から約２４／ｃｍ、他の方向に約４から約１２／ｃｍのメッシュを有し、０．１５から約０．３５ｍｍの範囲のフィラメントを有するさまざまなネットを使用した。
使用した紫外線吸収剤は約０．４％ｗ／ｗの濃度のベンゾトリアゾールであった。
このようなネットを使用し、さまざまな作物について実験を行った。実験では、上記仕様のネット製の壁と屋根を有するネット付き温室を構築し、昆虫被害のレベルを測定した。これを、同様な条件下で実験した、ネットが従来のネットであるネット付き温室での被害のレベルと比較した。
本発明ネットを使用した場合には、わずかに約５％の植物でしか昆虫による被害の徴候が認められなかったが、対照の実験では、約３０％以上の植物で昆虫による被害の徴候が認められた。

Claims (4)

1. 屋根の特徴および特性を定義するのに重要な少なくとも一部分が適当な通気を可能にする４／ｃｍから３０／ｃｍまでのメッシュの開口部を有するネットで製作された屋根を有する構造物の下で植物を生育させることからなり、該ネットが紫外線吸収剤を組み込んだ透明または半透明なポリマー材料で作製したものであることを特徴とする、昆虫の感染から植物またはその作物を保護する方法。
2. 屋根の特徴および特性を定義するのに重要な少なくとも一部分が該ネットで製作された屋根および側壁からなる構造物の下で植物を生育させる請求項１に記載の方法。
3. 屋根の特徴および特性を定義するのに重要な少なくとも一部分が適当な通気を可能にする４／ｃｍから３０／ｃｍまでのメッシュの開口部を有するネットで製作された屋根からなり、該ネットが紫外線吸収剤を組み込んだ透明または半透明なポリマー材料で作製したものであることを特徴とする、植物を生育させるための囲い。
4. 屋根と壁の両者の、各々の特徴および特性を定義するのに重要な少なくとも一部分が該ネットで製作されている請求項３に記載の囲い。