JP3839073B2 - フタロニトリル化合物、ジイミノイソインドリン化合物及びフタロシアニン近赤外吸収材料並びにそれらの製造方法 - Google Patents

フタロニトリル化合物、ジイミノイソインドリン化合物及びフタロシアニン近赤外吸収材料並びにそれらの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、光記録材料、光電変換材料、赤外線カットフィルター等に利用可能な新規なフタロシアニン近赤外吸収材料、その中間体である新規なフタロニトリル化合物及びジイミノイソインドリン化合物、並びにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近赤外吸収材料は各種の用途に用いられている。このような用途例としては、例えば次のようなものが挙げられる。
▲1▼赤外線感光性感光材料用セーフライトフィルター
▲2▼植物の生育の制御を目的とした赤外カットフィルター
▲3▼太陽光の熱線の遮断材料
▲4▼人間の目の組織に有害な赤外線カットフィルター
▲5▼半導体受光素子の赤外線カットフィルター等。
更に大きな用途として、光情報記録媒体における記録材料としての用途を挙げることができる。
【0003】
これまで赤外線吸収性物質としては、シアニン色素、フェナンスレン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、スクアリリウム系色素等が知られており、これらの色素を記録材料として用いた情報記録媒体も知られている(例えば、特開昭55−97033号、特開昭58−83344号、特開昭58−224793号、特開昭58−214162号、特開昭59−24692号各公報等)。
【0004】
ただ、上記のような色素は、記録材料とした場合、種々の問題点をかかえている。例えば、フェナンスレン系色素、ナフトキノン系色素及びスクアリリウム系色素は、蒸着しやすいという利点を有する反面、反射率が低いという問題点を有している。反射率が低いと、レーザー光により記録された部分と未記録部分との反射率に関するコントラストが低くなり、記録された情報の再生が困難になる。また、ピリリウム系色素やシアニン色素は、塗布によるコーティングができるなどの利点を有する反面、耐光性に劣り、再生光(自然光)により劣化しやすいという問題がある。これらに対しフタロシアニン系色素は、安定性(熱、光に対し)が極めて高いという特徴を有している一方、有機溶剤への溶解性が乏しく、ごく一部のフタロシアニン系色素が蒸着法で薄膜化できるのみで、製品応用への用途としては乏しいものであった。
【0005】
上記の問題を解決するために、最近フタロシアニンに置換基を導入して有機溶媒に溶解し得るフタロシアニン化合物となした後、これを塗布することが行なわれている。特開平1−180865号、特開平2−265788号、特開平3−215466号各公報等に開示されているフタロシアニン化合物は、フタロシアニンのベンゼン環に長鎖のアルキル基又はアルコキシ基を導入して炭化水素系有機溶剤に対する溶解性を得たものである。これら以外にも、エステル基、ポリエーテル基、チオエーテル基等の官能基を介して長鎖のアルキル基を導入することが数多く行なわれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、これらのフタロシアニン化合物は、無極性の溶剤には溶けるが、充分満足される溶解度を有するまでには至っておらず、またシアニン色素に比べて反射率が不充分であるなどという難点があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、フタロシアニン化合物が本来もっている安定性を損なうことなく、溶解性を高め、生産性が高く、しかも近赤外線に高い吸収をもつ、新規なフタロシアニン近赤外線吸収剤とその中間体及びそれらの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記一般式(I)で示されるフタロニトリル化合物が提供される。
【化1】
(式中、R1〜R4はそれぞれ以下のものを表わす。
1: 炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基で、基中に−C−O−C−のいわゆるエーテル結合を含んでいてもよいし、シリル基で置換されていてもよい、
2〜R4:それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、又は−OSi(R5)3基若しくは−CH2Si(R5)3基、
5:炭素数1〜3のアルキル基。)
【0009】
また、本発明によれば、下記の一般式(II)で示されるジイミノイソインドリン化合物が提供される。
【化2】
(式中、R1〜R4はそれぞれ以下のものを表わす。
1:炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基で、基中に−C−O−C−のいわゆるエーテル結合を含んでいてもよいし、シリル基で置換されていてもよい、
2〜R4:それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、又は−OSi(R5)3基若しくは−CH2Si(R5)3基、
5:炭素数1〜3のアルキル基。)
【0010】
更に、本発明によれば、下記の一般式(III a)〜(III d)で示される4種のうち、1種又は2種以上の混合物からなるフタロシアニン近赤外吸収材料が提供される。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
(式中、M及びX1〜X16はそれぞれ以下のものを表わす。
M:2個の水素原子、2価の金属原子、1置換の3価金属原子、2置換の4価金属原子又はオキシ金属原子、
1〜X16:それぞれ独立に−OR1SiR234基、
1:炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基で、基中に−C−O−C−のいわゆるエーテル結合を含んでいてもよいし、シリル基で置換されていてもよい、
2〜R4:それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、又は−OSi(R5)3基若しくは−CH2Si(R5)3基、
5:炭素数1〜3のアルキル基、
ベンゼン環についているX1〜X16以外の原子:水素原子又はハロゲン原子。)
【0011】
また、本発明によれば、下記の一般式(IV a)〜(IV d)で示される4種のうち、1種又は2種以上の混合物からなるフタロシアニン近赤外吸収材料が提供される。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
(式中、M及びX1〜X16はそれぞれ以下のものを表わす。
M:2個の水素原子、2価の金属原子、1置換の3価金属原子、2置換の4価金属原子又はオキシ金属原子、
1〜X16:それぞれ独立に−OR1SiR234基、
1:炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基で、基中に−C−O−C−のいわゆるエーテル結合を含んでいてもよいし、シリル基で置換されていてもよい、
2〜R4:それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、又は−OSi(R5)3基若しくは−CH2Si(R5)3基、
5:炭素数1〜3のアルキル基、
ベンゼン環についているX1〜X16以外の原子:水素原子又はハロゲン原子。)
【0012】
更に、本発明によれば、下記の一般式(Va)〜(Vd)で示される4種のうち、1種又は2種以上の混合物からなるフタロシアニン近赤外吸収材料が提供される。
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
(式中、M、X1〜X16、Y及びn1〜n4はそれぞれ以下のものを表わす。
M:2個の水素原子、2価の金属原子、1置換の3価金属原子、2置換の4価金属原子又はオキシ金属原子、
1〜X16:それぞれ独立に−OR1SiR234基、
1:炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基で、基中に−C−O−C−のいわゆるエーテル結合を含んでいてもよいし、シリル基で置換されていてもよい、
2〜R4:それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、又は−OSi(R5)3基若しくは−CH2Si(R5)3基、
5:炭素数1〜3のアルキル基、
ベンゼン環についているX1〜X16以外の原子:水素原子又はハロゲン原子、
Y:ハロゲン原子、
n1〜n4:それぞれ独立にハロゲン置換数を表わし、1〜4の整数。)
【0013】
また、本発明によれば、3−又は4−ヒドロキシフタロニトリルを、有機溶媒中でアルカリの存在下、下記一般式(VI)
ZR1SiR234 (VI)
(式中、R1〜R4及びZはそれぞれ以下のものを表わす。
1:炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基で、基中に−C−O−C−のいわゆるエーテル結合を含んでいてもよいし、シリル基で置換されていてもよい、
2〜R4:それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、又は−OSi(R5)3基若しくは−CH2Si(R5)3基、
5:炭素数1〜3のアルキル基、
Z :ハロゲン原子。)
で示される少なくとも1種の化合物と反応させることを特徴とする前記一般式(I)で示されるフタロニトリル化合物の製造方法が提供される。
【0014】
更に、本発明によれば、3−又は4−ニトロフタロニトリルを、有機溶媒中で亜硝酸ナトリウム及び炭酸カリウム又はナトリウム金属化合物と反応させた後、更に前記一般式(VI)
ZR1SiR234 (VI)
(式中、R1〜R4及びZはそれぞれ以下のものを表わす。
1:炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基で、基中に−C−O−C−のいわゆるエーテル結合を含んでいてもよいし、シリル基で置換されていてもよい、
2〜R4:それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、又は−OSi(R5)3基若しくは−CH2Si(R5)3基、
5:炭素数1〜3のアルキル基、
Z :ハロゲン原子。)
で示される少なくとも1種の化合物を反応させることを特徴とする前記一般式(I)で示されるフタロニトリル化合物の製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、前記一般式(I)で示される少なくとも1種のフタロニトリル化合物又は前記一般式(II)で示される少なくとも1種のジイミノイソインドリン化合物と、2価の金属、1置換の3価金属、2置換の4価金属若しくはオキシ金属から選ばれた金属又はこれらの金属の誘導体とを反応させることを特徴とする前記一般式(III a)〜(III d)及び(IV a)〜(IV d)で示される少なくとも1種のフタロシアニン化合物の製造方法が提供される。
【0016】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の新規なフタロニトリル化合物は、本発明のフロシアニン近赤外吸収材料の中間体として有用なものであり、下記の一般式(I)で示される。
【化1】
(式中、R1〜R4はそれぞれ以下のものを表わす。
1:炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基で、基中に−C−O−C−のいわゆるエーテル結合を含んでいてもよいし、シリル基で置換されていてもよい。
2〜R4:それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、又は−OSi(R5)3基若しくは−CH2Si(R5)3基、
5:炭素数1〜3のアルキル基。)
【0017】
上記定義中、炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、2,3−ブチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基などが例示される。
炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などが例示され、炭素数1〜3のアルキル基としては、上記中炭素数1〜3のものが示される。
また、炭素数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが例示される。
【0018】
本発明の前記一般式(I)で示される3−又は4−シリル基置換アルコキシフタロニトリルは、3−又は4−ヒドロキシフタロニトリルを、有機溶媒中でアルカリの存在下、下記一般式(VI)
ZR1SiR234 (VI)
(式中、R1〜R4及びZはそれぞれ以下のものを表わす。
1:炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基で、基中に−C−O−C−のいわゆるエーテル結合を含んでいてもよいし、シリル基で置換されていてもよい、
2〜R4:それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、又は−OSi(R5)3基若しくは−CH2Si(R5)3基、
5:炭素数1〜3のアルキル基、
Z:ハロゲン原子。)
で示される少なくとも1種の化合物と反応させることによって製造することができる。即ち、3−又は4−ヒドロキシフタロニトリルと炭酸カリウム又は水酸化ナトリウムを有機溶媒中で溶解し、これにZR1SiR234を作用させることによって、目的とするシリル基置換アルコキシフタロニトリルが得られる。
【0019】
ここで用いる有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられるが、特にN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、あるいはこれら2種のうちの1種とその他3種のうちの少なくとも1種との混合溶媒であることが好ましい。ZR1SiR234は通常上記ヒドロキシフタロニトリルに対して等モル添加するが、1.5〜3倍モルと理論反応量よりも多く添加した方が収率が向上するので好ましい。また、このときの反応温度は20〜200℃、好ましくは40〜180℃である。
【0020】
ZR1SiR234の具体例としては、次のものが挙げられる。
ClCH2SiMe3,ClC24SiMe3,ClC36SiMe3,ClCH(Et)SiMe3,ClCH(Pr)SiMe3,ClCH(iPr)SiMe3,ClCH(SiMe3)SiMe3,ClCH(Me)SiMe3,ClCH2OCH2SiMe3,ClCH2Si(Me)2OEt,ClCH2Si(Me)2H,ClCH2Si(Me)2CH=CH2,ClCH2Si(Me)21225,ClCH2Si(OEt)3,ClCH2Si(OEt)2Me,ClCH2Si(OiPr)2Me、ClCH2Si(Me)2CH2SiMe3,ClCH2Si(Me)2OSiMe3,ClC36Si(Me)2OMe,ClC36SiMe(OMe)2,ClC36Si(OEt)3,ClC36Si(OMe)3,ClC36Si(OSiMe)3,ClCH2Si(Me)2OMe,ClCH2Si(OMe)3,ClC24OSiMe3,ClCH2CH(OSiMe3)Me,ClC36OSiMe3,ClCH2Si(Me)249,ClC36Si(Me)(OSiMe32,ClC36Si(Me)〔(CH23CH32,ClCH2Si(Me)2H,ClCH(Bu)SiMe3等。
(ここでMeはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基、iPrはイソプロピル基及びBuはブチル基である。)
【0021】
また、前記一般式(I)で示される3−又は4−シリル基置換アルコキシフタロニトリルは、3−又は4−ニトロフタロニトリルを、有機溶媒中で亜硝酸ナトリウム及び炭酸カリウム又はナトリウム金属化合物と反応させた後、更に前記一般式(VI)
ZR1SiR234 (VI)
で示される少なくとも1種の化合物を反応させるこによって製造することができる。即ち、この方法は、3−又は4−ニトロフタロニトリルのニトロ基を、カリウムオキシ基若しくはナトリウムオキシ基に変え、次いで前記一般式(VI)で示される珪素化合物を添加することにより、目的とするシリル基置換アルコキシフタロニトリルを1ポット(1容器)で直接合成するものである。具体的に言うと、3−又は4−ニトロフタロニトリルを有機溶媒に溶解し、次いで亜硝酸ナトリウムを加え、加熱して100〜200℃とし、更に炭酸カリウム又は金属ナトリウム、水素化ナトリウム、CH3ONa等のナトリウム金属化合物を加え加熱し、原料のニトロ基をカリウムオキシ基又はナトリウムオキシ基に変化させた後、ZR1SiR234を加え、20〜200℃で反応させることによって、目的とするシリル基置換アルコキシフタロニトリルが得られる。なお、本反応(1ポット反応)に使用する溶媒は、前述のヒドロキシフタロニトリルからのシリル基置換アルコキシフタロニトリルの製造方法で用いた溶媒と同様のものが使用できる。
【0022】
なお、ニトロフタロニトリルからアルコキシフタロニトリルを得る方法としては、ニトロフタロニトリルを有機溶媒(例えばジメチルホルムアミド)中で、水素化ナトリウムの存在下、アルコールと反応させる下記の反応式(I)に従う方法が提案されている(特開平3−215466号公報)。
【化15】
ところが、本発明におけるシリル基置換のアルコキシフタロニトリルを得る場合には、上記の方法を適用する(即ち、ニトロフタロニトリルを有機溶媒中、NaHの存在下HOR1SiR234と反応させる)と、C−Si結合が切断され、目的とするシリル基置換アルコキシフタロニトリルは殆ど生成せず、−OR2、−OR3、ーOR4等の置換基を有するフタロニトリルが生成する。
【0023】
本発明の新規なジイミノイソインドリン化合物は、本発明のフタロシアニン近赤外吸収材料の中間体として有用なものであり、下記の一般式(II)で示される。
【化2】
(式中、R1〜R4はそれぞれ以下のものを表わす。
1:炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基で、基中に−C−O−C− のいわゆるエーテル結合を含んでいてもよいし、シリル基で置換され ていてもよい、
2〜R4:それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、又は−OSi(R5)3基若しくは−CH2Si(R5)3基、
5:炭素数1〜3のアルキル基。)
なお、上式のR1〜R5の具体例としては、前記一般式(I)の場合と同一のものが挙げられる。
【0024】
本発明の前記一般式(II)で示されるジイミノイソインドリン化合物は、前記一般式(I)で示される少なくとも一種のフタロニトリル化合物を、アルコール溶媒中、ナトリウム(金属ナトリウム又はナトリウムアルコキシド)の存在下に、アンモニアガスと反応させることによって、下記の反応式(II)に従って得られる。
【化16】
なお、この場合の代表的なルコールとしては、メタノールが一般的である。
【0025】
本発明の新規なフタロシアニン近赤外吸収材料は、下記一般式(IIIa)〜(IIId)で示される4種のうち、1種又は2種以上の混合物からなるか、下記一般式(IVa)〜(IVd)で示される4種のうち、1種又は2種以上の混合物からなるか、あるいは一般式(Va)〜(Vd)で示される4種のうち、1種又は2種以上の混合物からなるものである。
【0026】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0027】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0028】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【0029】
(式中、M、X1〜X16、Y及びn1〜n4はそれぞれ以下のものを表わす。
M:2個の水素原子、2価の金属原子、1置換の3価金属原子、2置換の4価金属原子又はオキシ金属原子、
1〜X16:それぞれ独立に−OR1SiR234基、
1:炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基で、基中に−C−O−C−のいわゆるエーテル結合を含んでいてもよいし、シリル基で置換されていてもよい、
2〜R4:それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、又は−OSi(R5)3基若しくは−CH2Si(R5)3基、
5:炭素数1〜3のアルキル基、
ベンゼン環についているX1〜X16以外の原子:水素原子又はハロゲン原子、
Y:ハロゲン原子、
n1〜n4:それぞれ独立にハロゲン置換数を表わし、1〜4の整数。)
【0030】
上記一般式(III a)〜(III d)、(IV a)〜(IV d)及び(V a)〜(V d)において、Mで表される金属原子としては、Al,Si,Ca,Cd,Ti,V,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ge,Mo,Ru,Rh,Pd,In,Sn,Pt,Pb等が挙げられる。また、R1〜R5については、一般式(I)におけると全く同義である。なお、Yはハロゲン原子であり、臭素、塩素、弗素、沃素等が挙げられるが、吸収最大波長の長波長化効果の点で特に臭素が好ましい。
【0031】
この一般式(III a)〜(III d)、(IV a)〜(IV d)及び(V a)〜(V d)で示されるフタロシアニン近赤外吸収材料は、フタロシアニン化合物が本来もっている安定性を損なうことなしに、有機溶剤への高い溶解性を有し、もちろん近赤外線に対し高い吸収力を有する。即ち、溶解性が向上したため、溶剤塗工法により薄膜化が可能で、生産性に優れ、安定性の良いしかも吸収能の高い膜が得られ、各種電子材料への応用が可能となる。
【0032】
本発明の前記一般式(III a)〜(III d)及び(IV a)〜(IV d)で示されるフタロシアニン近赤外吸収材料は、前記一般式(I)で示される少なくとも1種のフタロニトリル化合物又は前記一般式(II)で示される少なくとも1種のジイミノイソインドリン化合物と、2価の金属、1置換の3価金属、2置換の4価金属若しくはオキシ金属から選ばれた金属又はこれらの金属の誘導体を反応させることによって製造することができる。
【0033】
この場合のフタロシアニン環合成は、有機溶媒中で実施するのが好ましい。即ち、原料のフタロニトリル又はジイミノイソインドリン化合物の少なくとも1種(1〜4種)を、金属又は金属誘導体と溶媒中、90℃〜240℃で加熱反応させる。ここで反応温度が90℃より低いと、反応進行が遅い又は進行しない等の不具合が生じるし、240℃を越えると、分解物が多く生成し、収率が落ちるという不具合が生じる。溶媒の使用量としては、フタロニトリル又はジイミノイソインドリン化合物の1〜100重量倍、好ましくは3〜25重量倍であり、溶媒としては、沸点が90℃以上あれば良い。使用する溶媒としては、アルコールが好ましく、その具体例としては、n−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキンエタノール等が挙げられる。また、反応に用いる金属又は金属誘導体としては、Al,Si,Ca,Cd,Ti,V,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ge,Mo,Ru,Rh,Pd,In,Sn,Pt,Pb及びそれらのハロゲン化物、カルボン酸誘導体、硫酸塩、硝酸塩、カルボニル化合物、酸化物、錯体等が挙げられる。
【0034】
金属又は金属誘導体とフタロニトリル又はジイミノイソインドリン化合物の使用量は、モル比で1:3〜6モルが好ましい。
なお、環形成反応の触媒として、有機塩基、例えば、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネンなどの強塩基の補助剤を添加しても良く、その添加量は、フタロニトリル又はジイミノイソインドリン化合物1モルに対して0.1〜10モル、好ましくは0.5〜2モルである。
【0035】
更に、前記一般式(III a)〜(III d)及び(IV a)〜(IV d)において、Mが2個の水素原子である、いわゆるメタルフリーフタロシアニンの場合には、前記一般式(I)で示される少なくとも一種のフタロニトリル化合物又は前記一般式(II)で示される少なくとも一種のジイミノイソインドリン化合物に、リチウム又はナトリウムを作用させることによって製造することができる。
【0036】
この反応の場合も、有機溶媒(特にアルコール系)中で実施するのが好ましい。即ち、フタロニトリル又はジイミノイソインドリン化合物と、Na,Li,CH3ONa,NaH又はブチルリチウム等の存在下、アルコール中で70〜150℃で反応させる。ここで金属Li又はNaの添加量は、フタロニトリル又はジイミノイソインドリン化合物に対し、0.5〜4倍モルがよい。使用するアルコールの具体例やアルコール量などは、前述の金属フタロシアニン製造の際と全く同様であるが、反応温度は150℃以下である。150℃を越えると分解物の生成が多くなる。
【0037】
また、本発明の前記一般式(V a)〜(V d)で示されるフタロシアニン近赤外吸収材料は、前記一般式(III a)〜(III d)あるいは(IV a)〜(IV d)で示されるフタロシアニン化合物をハロゲン化することによって得ることができる。この場合のハロゲン化反応は、特開平3−62878号、同3−215466号、同4−348168号、同4−226390号、同4−15263号、同4−15264号、同4−15265号、同4−15266号、同5−17477号、同5−86301号、同5−25177号、同5−25179号、同5−17700号、同5−1272号各公報等の記載例をそのまま利用できる。即ち、ハロゲン系溶剤、炭化水素又は水の1種又は2種以上の混合物中で、臭素などのハロゲン化剤を作用させることにより得られる。
【0038】
【実施例】
以下実施例について本発明を説明するが、本発明これらに限定されるものではない。
【0039】
実施例1
(フタロニトリルの合成)
3−ヒドロキシフタロニトリル20gと炭酸カリウム10.55gをN,N−ジメチルホルムアミド180mlに加熱溶解し、アルゴン雰囲気下クロロメチルトリメチルシラン18gを40℃で滴下し、滴下終了後反応温度を80〜90℃に保ち、30時間攪拌した。反応槽が室温になるまで冷却した後、希塩酸250mlを注入し、トルエン1.2lで分液し、有機層を充分に水洗いした後、硫酸マグネシウムで余分な水を除去し、その後にトルエンを留去し、トリエン/シリカゲルカラムにて精製し、下記式(VII)で示される化合物を23.3g(収率73.0%)得た。この化合物は白色結晶であり、その融点は112.5℃である。そのIRスペクトルを図1に示す。
【0040】
【化17】
【0041】
実施例2
(フタロニトリルの合成)
3−ニトロフタロニトリル30gをN,N−ジメチルアセトアミド/1−メチル−2−ピロリドン=1/1(容量比)混合溶媒180mlに溶解し、亜硝酸ナトリウム11.97gを加え、温度165℃にて40分攪拌し、温度を室温まで下げ、炭酸カリウム16.8gを加え、温度150℃で40分攪拌した。温度を40℃まで下げクロロメチルトリメチルシラン25gを滴下し、滴下終了後反応温度を80〜90℃に保ち、28時間攪拌した。反応槽が室温になるまで冷却した後、希塩酸350mlを注入し、トルエン1.5lで分液し、有機層を充分に水洗いした後、硫酸マグネシウムにて余分な水を除去し、その後にトルエンを留去し、トリエン/シリカゲルカラムにて精製し、下記式(VII)で示される化合物を29.8g(収率74.7%)得た。
【0042】
実施例3
(ジイミノイソインドリンの合成)
前記式(VII)で示されるフタロニトリル20gとナトリウムメトキシド14gをメタノール180mlに送入し、アンモニアガスを吹き込みながら、室温で1時間攪拌し、その後加熱環流しながらアンモニアガスを吹き込み、3時間攪拌し、室温まで冷却した。反応物を可能な限り濃縮し、クロロホルム700mlに溶解し、水及び温水で充分に洗浄し、硫酸マグネシウムで有機層の余剰な水を除去した後、クロロホルムを留去し、更にヘキサンで再結晶し、下記式(VIII)で示される化合物を19.7g(収率91.7%)得た。
【0043】
【化18】
【0044】
実施例4
(フタロニトリルの合成)
4−ヒドロキシフタロニトリル20gと炭酸カリウム10.55gをN,N−ジメチルホルムアミド200mlに加熱溶解し、アルゴン雰囲気下クロロメチルトリメチルシラン20gを40℃で滴下し、滴下終了後反応温度を85〜105℃に保ち、18時間攪拌した。反応物が室温になるまで冷却した後、希塩酸250mlを注入し、トルエン1.2lで分液し、有機層を充分に水洗いし、硫酸マグネシウムで余分な水の除去をした後、トルエンを留去し、トリエン/シリカゲルカラムにて精製し、下記式(IX)で示される化合物を24.6g(収率77.0%)得た。
【0045】
【化19】
【0046】
実施例5
(フタロニトリルの合成)
3−ヒドロキシフタロニトリル20gと炭酸カリウム10.55gをN,N−ジメチルホルムアミド200mlに加熱溶解し、アルゴン雰囲気下1−クロロエチルトリメチルシラン20gを30℃で滴下し、滴下終了と同時に温度を85〜100℃に保ち、36時間攪拌した。反応物が室温になるまで冷却した後、希塩酸200mlを注入し、トルエン1lで分液し、有機層を充分に水洗いし、硫酸マグネシウムで余分な水を除去した後、トルエン/シリカゲルカラムにて精製し、下記式(X)で示される化合物を16.9g(収率49.9%)得た。この化合物は白色結晶であり、その融点は67.5℃であった。そのIRスペクトルを図2に示す。
【0047】
【化20】
【0048】
実施例6
(フタロニトリルの合成)
3−ヒドロキシフタロニトリル20gと炭酸カリウム10.55gをN,N−ジメチルアセトアミド/ジメチルスルホキシド=5/1(容量比)混合溶媒150mlに加熱溶解し、アルゴン雰囲気下3−クロロプロピルトリメチルシラン31.4gを45℃で滴下し、滴下終了と同時に温度を90〜110℃に保ち、24時間攪拌した。反応物が室温になるまで冷却した後、希塩酸180mlを注入し、トルエン1.2lで分液し、有機層を充分に水洗いし、硫酸マグネシウムにて余分な水を除去した後、トルエン/シリカゲルカラムにて精製し、下記式(XI)で示される化合物を25.5g(収率71.2%)を得た。この化合物は白色結晶であり、その融点は145℃であった。そのIRスペクトルを図3に示す。
【0049】
【化21】
【0050】
比較例
トリメチルシリルメタノール20gをN,N−ジメチルホルムアミド60mlに溶解し、水浴にて温度を5℃とし、アルゴン雰囲気下水素化ナトリウム4.6gを加え、1時間5℃にて攪拌する。次いで、160mlのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解した3−ニトロフタロニトリル33.3gを徐々に滴下し、滴下終了後氷浴をはずし、室温にて24時間攪拌した。反応物に希塩酸200mlを送入し、トルエン1lにて分液し、有機層を充分に水洗いした後、硫酸マグネシウムにて余分な水を除去した後、トルエン/シリカゲルカラムにて精製を試みたが、目的の前記式(VII)で示される化合物は殆ど得られず、収率としては1%程度であり、副生物として3−メトキシフタロニトリルが前記式(VII)で示される化合物の数倍の重量で生成してしまった。
【0051】
実施例7
(フタロシアニンの合成)
前記式(VII)で示されるフタロニトリル10gを、32gのヘキサノールに加熱溶解し、次いでジアザビシクロノネン4gを加え、更に塩化ニッケル1.8gを加え、Ar雰囲気下120〜130℃で24時間攪拌した。反応物が室温になるまで冷却し、不溶解分を濾取し、濾液のヘキサノールを可能な限り乾燥し、トルエン/シリカゲルカラムにて、下記式(1A)(1B)(1C)及び(1D)で示される(1A)/(1B)/(1C)/(1D)=30/48/22/0の混合物5.6g(収率52.6%)を得た。なお、この混合物のクロロホルム中のλmaxは、700nmであった。
【0052】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【0053】
実施例8
(フタロシアニンの合成)
前記式(IX)で示されるフタロニトリル10gを、30gのブタノールに加熱溶解し、次いでジアザビシクロウンデセン4.1gを加え、更に塩化銅1.7gを加え、Ar雰囲気下36時間加熱環流した。反応物が室温になるまで冷却し、不溶分を濾取し、濾液のブタノールを留去し、トルエン/シリカゲルカラムにて、下記式(2A)(2B)(2C)及び(2D)で示される(2A)/(2B)/(2C)/(2D)=38/42/15/5の混合物6.8g(収率63.6%)を得た。なお、この混合物のクロロホルム中のλmaxは、682nmであった。
【0054】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【0055】
実施例9
(フタロシアニンの合成)
前記式(VIII)で示されるジイミノイソインドリン10gを、30gのn−アミルアルコールに加熱溶解し、塩化パラジウム2gを加え、Ar雰囲気下加熱環流し、28時間攪拌した。反応物が室温になるまで冷却し、不溶分を濾取し、濾液のアミルアルコールを乾燥し、トルエン/シリカゲルカラムにて、下記式(3A)(3B)(3C)及び(3D)で示される(3A)/(3B)/(3C)/(3D)=40/40/20/0の混合物6.2g(収率59.7%)を得た。なお、この混合物のクロロホルム中のλmaxは、693nmであった。
【0056】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【0057】
実施例10
(フタロシアニンの合成)
前記式(X)で示されるフタロニトリル10gを、25gのn−アミルアルコールに加熱溶解し、ジアザビシクロウンデセン4.5gを加え、次いで塩化パラジウム2.3gを加え、Ar雰囲気下120〜125℃で32時間攪拌し、反応物が室温になるまで冷却し、不溶分を濾取し、濾液のアミルアルコールを乾燥し、トルエン/シリカゲルカラムにて、下記式(4A)(4B)(4C)及び(4D)で示される(4A)/(4B)/(4C)/(4D)=10/80/10/0の混合物を4.8g(収率43.3%)得た。なお、この混合物のクロロホルム中のλmaxは、699nmであった。
【0058】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【0059】
実施例11
(フタロシアニンの合成)
前記式(XI)で示されるフタロニトリル10gを、40gのn−アミルアルコールに加熱溶解し、ジアザビシクロウンデセン4gを加え、次いで塩化パラジウム2gを加え、Ar雰囲気下115〜130℃で27時間攪拌し、反応物が室温になるまで冷却し、不溶分を濾取し、濾液のアミルアルコールを乾燥し、トルエン/クロロホルム=1/1(容量比)/シリカゲルカラムにて、下記式(5A)(5B)(5C)及び(5D)で示される(5A)/(5B)/(5C)/(5D)=20/80/0/0の混合物を5.8g(収率52.6%)得た。なお、この混合物のクロロホルム中のλmaxは、691nmであった。
【0060】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【0061】
実施例12
(フタロシアニンのハロゲン化)
実施例9で得られたフタロシアニン混合物を、ジクロロメタンと水の混合溶媒に溶解し、臭素を加え、40〜60℃に加熱し、冷却後有機層を濃縮することにより、下記式(6A)(6B)(6C)及び(6D)で示される(6A)/(6B)/(6C)/(6D)=40/40/20/0の混合物を得た。そのクロロホルム中のλmaxは、707nmと長波長化した。なお、実施例7、8、10及び11で得られたフタロシアニン混合物もハロゲン化が可能である。
【0062】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【0063】
実施例1〜6で得られた化合物以外のフタロニトリル及びジイミノイソインドリンの例を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
実施例7〜11で得られた化合物以外のフタロシアニンの例を表2に示す。なお、前述したような異性体を、別々には列挙しない(もちろん異性体は存在する。)
【0067】
【表2−(1)】
【0068】
【表2−(2)】
【0069】
(評価)
実施例7〜11で得られたフタロシアニン化合物は種々の溶媒に可溶であり、溶剤塗工法による塗膜が容易に得られ、しかも近赤外領域に優れた吸収能を有する。
【0070】
応用例1
厚さ1.2mmのポリメチルメタアクリレート板上にフォトポリマーにて、深さ1000Å、半値幅0.4μm、トラックピッチ1.4μmの案内溝を形成した基板上に、前記式(6A)〜(6D)の混合物の1,2−ジクロロエタン溶液をスピナー塗布し、厚さ1000Åの記録層を設けて追記型の記録媒体とした。
【0071】
応用例2〜5
実施例1において、式(6A)〜(6D)の混合物の代わりに、それぞれ前記表2の化合物No.22、No.25、No.26、No.33を用いた以外は、同様にして応用例2〜5の記録媒体を得た。
【0072】
応用比較例1
応用例1において、前記式(6A)〜(6D)の混合物の代わりに下記式(XII)で示されるフタロシアニン化合物を用いた以外は、同様にして応用比較例の記録媒体を得た。
【化46】
【0073】
前記の応用例1〜5及び応用比較例1の記録媒体を用い、下記の記録条件で基板を介して記録し、その後記録位置を連続レーザー光で再生し、下記の条件でC/Nを測定した。また反射率も測定した。その結果を表3に示す。
記録条件:
線速 2.1m/sec
記録周波数 1.25MHz
レーザー発振波長 680nm
ピックアップレンズ N.A.0.5
再生条件:
スキャニングフィルター 30KHz
バンド幅
再生パワー 0.25〜0.3mW
【0074】
【表3】

【0075】
応用例6
厚さ1.2mm、溝深さ1000Å、半値幅0.45μm、トラックピッチ1.6μmの案内溝を有する厚さ1.2mmの射出成形ポリカーボネート基板上に、前記式(6A)〜(6D)の混合物をエチルセルソルブ/THFの混合溶液に溶解し、それをスピナー塗布し、厚さ1800Åの記録層を設け、更にその上にAuを1100Åの厚みで真空蒸着して反射層とし、更にその上にアクリレート系フォトポリマーをスピンナー塗布して厚さ約6μmの保護層を形成し、CD−R型の記録媒体とした。
【0076】
応用例7〜10
応用例6において、式(6A)〜(6D)の混合物の代わりにそれぞれ前記表2の化合物No.22、No.23、No.33、No.35を用いた以外は、同様にして応用例7〜10の記録媒体を得た。
【0077】
応用比較例2
応用例6において、式(6A)〜(6D)の混合物の代わりに下記式(XIIIa)、(XIIIb)に示される臭素化アルコキシフタロシアニン異性体2/8の混合物を用いた以外は、同様にして応用比較例2の記録媒体を得た。
【化47】
【化48】
【0078】
応用比較例3
応用例6において、式(6A)〜(6D)の混合物の代わりに下記式(XIIIc)、(XIIId)に示される臭素化アルコキシフタロシアニン異性体2/8の混合物を用いた以外は、同様にして応用比較例3の記録媒体を得た。
【化49】
【化50】
【0079】
応用例6〜10及び応用比較例2〜3の記録媒体を用い、レーザー発振波長790nm、線速1.4m/secの記録条件でEFM信号を記録し、最適記録パワーPoと最適記録パワー×0.82でのC1エラーを測定し、更にPoでの7万5千Lux光、700時間後のC1エラー数を測定した。その結果を表4に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
(評価)
本発明のフタロシアニン化合物は、安定性が高く、770〜830nmに高い屈折率を有するので、光記録用材料に優れた特性を与えることができる。
【0082】
【発明の効果】
請求項3〜5のフタロシアニン近赤外吸収材料は、前記一般式(III a)〜(III d)、(IV a)〜(IV d)、(V a)〜(V d)で示される構造を有することから、フタロシアニン化合物が本来有している熱、光等に対する安定性を保持したまま、種々の有機溶媒に可溶なものとなり、しかも高い近赤外線吸収能を持っている。その結果、溶剤塗工法による塗膜形成が可能となり、利用形態が非常に拡大され、また光記録媒体用として有用である。
【0083】
請求項1のフタロニトリル化合物及び請求項2のジイミノイソインドリン化合物は、それぞれ前記一般式(I)及び一般式(II)で示される構造を有することから、請求項3〜5のフタロシアニン近赤外吸収材料の中間体として有用なものとなる。
【0084】
請求項6〜7の前記一般式(I)で示されるフタロニトリル化合物の製造方法並びに請求項8の前記一般式(III a)〜(III d)及び(IV a)〜(IV d)で示される金属フタロシアニン化合物の製造方法は、いずれも温和な条件で容易に目的物を得ることができるので、いずれも工業的に極めて有利な製造方法ということができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたフタロニトリル化合物のIRスペクトル図である。
【図2】実施例5で得られたフタロニトリル化合物のIRスペクトル図である。
【図3】実施例6で得られたフタロニトリル化合物のIRスペクトル図である。

Claims (8)

  1. 下記一般式(I)で示されるフタロニトリル化合物。
    (式中、R1〜R4はそれぞれ以下のものを表わす。
    1: 炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基で、基中に−C−O−C−のいわゆるエーテル結合を含んでいてもよいし、シリル基で置換されていてもよい、
    2〜R4:それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、又は−OSi(R5)3基若しくは−CH2Si(R5)3基、
    5:炭素数1〜3のアルキル基。)
  2. 下記の一般式(II)で示されるジイミノイソインドリン化合物。
    (式中、R1〜R4はそれぞれ以下のものを表わす。
    1:炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基で、基中に−C−O−C−のいわゆるエーテル結合を含んでいてもよいし、シリル基で置換されていてもよい、
    2〜R4:それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、又は−OSi(R5)3基若しくは−CH2Si(R5)3基、
    5:炭素数1〜3のアルキル基。)
  3. 下記の一般式(III a)〜(III d)で示される4種のうち、1種又は2種以上の混合物からなるフタロシアニン近赤外吸収材料。
    (式中、M及びX1〜X16はそれぞれ以下のものを表わす。
    M:2個の水素原子、2価の金属原子、1置換の3価金属原子、2置換の4価金属原子又はオキシ金属原子、X1〜X16:それぞれ独立に−OR1SiR234基、R1:炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基で、基中に−C−O−C−のいわゆるエーテル結合を含んでいてもよいし、シリル基で置換されていてもよい、R2〜R4:それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、又は−OSi(R5)3基若しくは−CH2Si(R5)3基、R5:炭素数1〜3のアルキル基、ベンゼン環についているX1〜X16以外の原子:水素原子。
  4. 下記の一般式(IV a)〜(IV d)で示される4種のうち、1種又は2種以上の混合物からなるフタロシアニン近赤外吸収材料。
    (式中、M及びX1〜X16はそれぞれ以下のものを表わす。
    M:2個の水素原子、2価の金属原子、1置換の3価金属原子、2置換の4価金属原子又はオキシ金属原子、X1〜X16:それぞれ独立に−OR1SiR234基、R1:炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基で、基中に−C−O−C−のいわゆるエーテル結合を含んでいてもよいし、シリル基で置換されていてもよい、R2〜R4:それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、又は−OSi(R5)3基若しくは−CH2Si(R5)3基、R5:炭素数1〜3のアルキル基、ベンゼン環についているX1〜X16以外の原子:水素原子。
  5. 下記の一般式(Va)〜(Vd)で示される4種のうち、1種又は2種以上の混合物からなるフタロシアニン近赤外吸収材料。
    (式中、M、X1〜X16、Y及びn1〜n4はそれぞれ以下のものを表わす。
    M:2個の水素原子、2価の金属原子、1置換の3価金属原子、2置換の4価金属原子又はオキシ金属原子、X1〜X16:それぞれ独立に−OR1SiR234基、R1:炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基で、基中に−C−O−C−のいわゆるエーテル結合を含んでいてもよいし、シリル基で置換されていてもよい、R2〜R4:それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、又は−OSi(R5)3基若しくは−CH2Si(R5)3基、R5:炭素数1〜3のアルキル基、ベンゼン環についているX1〜X16以外の原子:水素原子、Y:ハロゲン原子、n1〜n4:それぞれ独立にハロゲン置換数を表わし、1〜4の整数。)
  6. 下記一般式(I)で表されるフタロニトリル化合物の製造方法であって、
    前記一般式(I)中、R 1 は、エーテル結合を含んでいてもよい、炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、これらはシリル基で置換されていてもよく、R 〜R は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、−OSi ( ) 基、又は−CH Si ( ) 基を表し、R は、炭素数1〜3のアルキル基を表す。
    3−又は4−ヒドロキシフタロニトリルを、有機溶媒中でアルカリの存在下、次の一般式( VI )、ZR SiR (ただし、R 〜R は、前記一般式(I)におけるのと同様のものを表し、Zは、ハロゲン原子を表す。)、で表される化合物の少なくとも1種と反応させることを特徴とするフタロニトリル化合物の製造方法。
  7. 下記一般式(I)で表されるフタロニトリル化合物の製造方法であって、
    一般式(I)中、R1は、エーテル結合を含んでいてもよい、炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、これらはシリル基で置換されていてもよく、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、−OSi(R)基、又は−CHSi(R)基を表し、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表す。
    3−又は4−ニトロフタロニトリルを、有機溶媒中で亜硝酸ナトリウム及び炭酸カリウム又はナトリウム金属化合物と反応させた後、更に次の一般式(VI)、ZRSiR (ただし、R〜Rは、前記一般式(I)におけるのと同様のものを表し、Zは、ハロゲン原子を表す。)、で表される化合物の少なくとも1種と反応させることを特徴とするフタロニトリル化合物の製造方法。
  8. 下記一般式(IIIa)〜(III)及び(IVa)〜(IVd)で表されるフタロシアニン化合物の製造方法であって、
    (ただし、前記一般式(IIIa)〜(III)及び(IVa)〜(IVd)中、Mは、2個の水素原子、2価の金属原子、1置換の3価金属原子、2置換の4価金属原子、又はオキシ金属原子を表し、X〜X16は、それぞれ独立に、−OR1SiR234基を表し、R1は、エーテル結合を含んでいてもよい、炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、これらはシリル基で置換されていてもよく、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、−OSi(R)基、又は−CHSi(R)基を表し、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、ベンゼン環に結合しているX〜X16以外の原子は、水素原子を表す。)
    下記一般式(I)で表されるフタロニトリル化合物の少なくとも1種又は下記一般式(II)で表されるジイミノイソインドリン化合物の少なくとも1種と、2価の金属、1置換の3価金属、2置換の4価金属若しくはオキシ金属から選ばれた金属又はこれらの金属の誘導体とを反応させることを特徴とするフタロシアニン化合物の製造方法。
    一般式(I)及び(II)中、R1は、エーテル結合を含んでいてもよい、炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、これらはシリル基で置換されていてもよく、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、ビニル基、−OSi(R)基、又は−CHSi(R)基を表し、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表す。
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