JP3838643B2 - 室内ガス状物質除去方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は室内表面のみならず床下空間や、壁体内空間、天井裏空間など室内を囲む空間部の室内ガス状物質の除去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、新築の戸建住宅や集合住宅などでは、複合床仕上材の仕上げ面や、これに使用した接着剤、壁材や天井構造材あるいは壁仕上材の接着剤などから揮発性有機化合物(VOC)やホルムアルデヒドなどのガス状化学物質が発生し、これがシックハウス症候群の誘発物質として問題となっている。このため、ファンを回転させて室内の空気を、細かいメッシュのフィルターに通して循環させる空気清浄機を設置することも行なわれているが、これは屋内に浮遊する細かいダストを捕集するだけで、ガス状化学物質を除去する効果が小さい。
【0003】
このため外部に面する部屋の壁に通気孔を開孔し、天井側壁面に換気扇を設けて、室内の空気を外部に排出する24時間換気装置などの室内換気システムが開発されている。ところが、この室内換気システムを取付けた室内におけるガス状化学物質の測定を行なったところ、揮発性有機化合物やホルムアルデヒドなどが余り低下していないことが判明した。
【0004】
このため、室内濃度をストーブなどの加熱装置を用いて、室内温度を上昇させ、建材等に含まれる揮発性有機化合物やホルムアルデヒドの吐出を促進させるベイクアウト(Bakeーout)が提案されている。これは加熱装置により、室内温度を30〜50℃の高温度に数日間保持させることにより、揮発性有機化合物やホルムアルデヒドの発生を促進させ、汚染物質を短期間で除去するものである。
【0005】
ベイクアウトを扱った科学的な研究も盛んに行なわれるようになり、加熱条件と化学物質発生量の低減性も徐々に解明され、一つの有効な低減対策と位置づけられている。本発明者は、一般的な集合住宅に用いられる建材部位別のベイクアウト実験を行なって、その効果を確認している。実験は床、壁、天井といった構成部分を環境制御チェンバーに挿入し、38℃まで上昇させ、この温度で72時間保持して部材レベルのベイクアウト効果を測定した。その結果、壁部材は9.21〜29.3%(平均%)、天井部材は7.40〜40.0%(平均28.2%)、床部材は20.4〜27.9%(平均24.4%)のVOC発生の低減化が確認された。またホルムアルデヒドにおいても平均値で、壁部28.0%、天井部46.0%、床部16.2%の発生量の低減化が確認されている。
【0006】
しかしながら、実際の室内でベイクアウトを行なう場合、温度を上げすぎることによる火災や建具などの損傷をまねく危険性があり、特に表と裏の仕上げが違うドアは、温度変化により反りが生じ易い問題がある。また加熱中の室内濃度が高くなるので加熱中の室内滞在は危険であり、ベイクアウト実施後に、一次的に濃度の高くなるケースがあり、加熱後は窓を充分に開けて、室内の換気と冷却を行なう必要がある。
【0007】
このため、ガス燃焼装置に、粒子状物質を捕捉するフィルターと化学物資を吸着するフィルターとを備えた空気清浄部を設け空気清浄機能付き空調機(例えば特許文献1参照)が提案されている。これは、空調機の運転によって室内を加熱して、ベイクアウトを行ない、室内雰囲気温度か建材表面温度のいずれかの温度が25℃から50℃の温度に達すると、空調機運転を停止させ、空気清浄部の運転を一定時間だけ行わせることにより、ベイクアウトによって室内に発生したガスを、換気をせずに空気清浄部によって除去するようにしたものである。
【0008】
しかしながら、室内を加熱してベイクアウトを実施した後に、ガス状化学物質が増加するリバウンド現象の発生が一部で確認されている。この原因について調査したところ、室内側で用いられる建材については、化学物質発生量の小さなものが使用されるが、複合フローリングなどはベイクアウトによって蓄熱されて、揮発性有機化合物やホルムアルデヒドの吐出が促進され、床下空間の濃度が、室内に比べて約1000倍も高濃度となり、ここに滞留しているガス状化学物質が隙間を通って室内に流入(移流)するため、室内をベイクアウトしてもガス状化学物質の濃度が低下しないことが分かった。
【0009】
この床下空間のガス状化学物質の濃度が高い原因は、例えば、複合床仕上材等の合板が単体で用いられることは希であり、下地材の上に接着剤等で張り上げる工法が一般的で、この下地材や使用した接着剤から発生するガス状化学物質が床下空間や壁体内空間、天井裏空間などの狭い空間に高濃度に滞留しているためである。
【0010】
このため、ベイクアウトを実施後、居住している状態で換気扇を運転した場合に、室内側が負圧になるので、床下空間などに高濃度に滞留しているガス状化学物質が、クロスや壁材、天井材の継ぎ目、巾木、廻り縁、コンセント、電灯部などの隙間から室内に流入することが原因であることが明らかになった。
【0011】
【特許文献1】
特開平11−63543(段落3ー7)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題を改善し、室内のみならず、揮発性有機化合物やホルムアルデヒドが高濃度の床下空間や、壁体内空間、天井裏空間など室内を囲む空間部も同時にベイクアウトして、発生したガス状化学物質を外部に排出させて短期間に濃度を低減させ、リバウンド現象を防止した室内ガス状物質除去方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の室内ガス状物質除去方法は、床下空間と天井裏空間とが室内を囲む壁体内空間を介して連通する建物において、室内に加熱装置を設置すると共に、ファンに送風ダクトを取付けた送風装置を設置し、この送風装置に取付けた前記送風ダクトの先端を、床下空間と壁体内空間に接続すると共に、天井裏空間に接続されたファンに送風ダクトを取付けた排気装置を設置し、この排気装置に取付けた前記送風ダクトの先端を屋外に配置して、前記加熱装置からの最高温度が30〜50℃の温風により室内表面を加熱すると共に、この温風を送風装置に取付けた送風ダクトから床下空間と壁体内空間に直接供給して、床下空間と壁体内空間を内側から加熱すると共に、壁体内空間を上昇した温風により天井裏空間を加熱して揮発性有機化合物やホルムアルデヒドなどのガス状化学物質を吐出させ、これを排気装置で屋外に排出し、ベイクアウトした後、送風装置から冷風だけを床下空間と壁体内空間および天井裏空間に送風して冷却することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項2記載の室内ガス状物質除去方法は、更に室内に加湿装置を設けて加湿しながら加熱することを特徴とするものである。本発明の請求項3記載の室内ガス状物質除去方法は、更に室内に拡散ファンを設置して、温風を室内に拡散させることを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図1を参照して詳細に説明する。図1は木造の戸建て住宅を示すもので、合板で形成された床下地材1の下に床下空間2が形成されて、床下地材1の上には合板で形成された複合フローリングなどの床仕上材3が取付けられている。また室内4の内壁5の表面には壁仕上材6が設けられ、外壁7との間に壁体内空間8が形成されている。また天井材9と、屋根10との間には天井裏空間11が形成され、床下空間2と天井裏空間11とは、壁体内空間8を介して連通している。
【0016】
室内4には、加熱装置となる石油ストーブ13が設置されている。この石油ストーブ13は、室内温度を最高温度が30〜50℃程度まで高温に加熱する温度制御機構が備えられている。また温風14の吹出口15は、上方と下方に向けて形成され、特に床面16を加熱できるようになっている。また17は送風装置で、これはファン18の排気口に、アルミニウムフレキシブル管で形成された複数本の送風ダクト19が接続されたものである。また21は天井材9に取付けた排気装置で、この吸込口と排気口に、アルミニウムフレキシブル管で形成された送風ダクト19が接続されている。
【0017】
また床面16と、内壁5および天井材9には円形のダクト取付孔23が設けられている。前記送風装置17は、室内4に2台設置され、一方の送風ダクト19の先端は、床面16に設けたダクト取付孔23に接続されている。また他方の送風ダクト19の先端は、内壁5に設けたダクト取付孔23に接続されている。
【0018】
また排気装置21は天井側に設置され、吸込側の送風ダクト19の先端は、天井材9に設けたダクト取付孔23に接続され、排気側の送風ダクト19の先端は窓24から屋外に引出されている。この時、開けた窓24の隙間を塞いで室内4を密閉する。なお26は加湿器、27は拡散ファンでそれぞれ室内4に設置されている。
【0019】
次に上記構成の室内ガス状物質除去方法によりベイクアウトする場合について説明する。石油ストーブ13の温度を例えば35℃に設定して運転する。この時、加湿器26と拡散ファン27も同時に運転する。室内温度が高くなって、室内表面が加熱されてくると、床仕上材3や壁仕上材6、天井仕上材など表面構成部材に含まれている揮発性有機化合物やホルムアルデヒドなどの吐出が促進され、ガス状化学物質の濃度が高くなってくる。
【0020】
室内温度が設定温度になったら、送風装置17と排気装置21のファン18の運転を開始する。送風装置17が運転されると、加湿器26で加湿され、拡散ファン27で均一化された室内4の温風14が、送風ダクト19の吸込口20から吸込まれ、送風ダクト19を通って、床下空間2と壁体内空間8に供給される。ここに供給された温風14は、壁体内空間8を上昇して天井裏空間11を通り、排気装置21に取付けた吸込側の送風ダクト19から送風ダクト19を経て、排気側の送風ダクト19の先端から屋外に排出される。
【0021】
このように、温風14で加熱されて室内4で発生した高い濃度のガス状化学物質は、床下空間2や壁体内空間8、天井裏空間11を順次通過する間に、更に下地材も加熱してここでもガス状化学物質が吐出され、更に高濃度となったガス状化学物質は温風14と共に屋外に排出される。このようにして数日間、連続運転することにより、床や壁、天井などの構成部材は内外両面から加熱されて、効率よくガス状化学物質が吐出され、残留濃度を短時間で低減させることができる。
【0022】
このように数日間ベイクアウトした後、石油ストーブ13を止めて、冷風だけを送風し、室内表面や床下空間2、壁体内空間8および天井裏空間11を冷却して作業を終了する。この後、ダクト取付孔23にキャップを取付けて塞いでおく。
【0023】
従って、従来のように室内4だけをベイクアウトする方法に比べて、リバウンド現象の原因になっていた室内を囲む空間部も同時にベイクアウトして短時間で効率よくガス状化学物質を除去し、また冷却することにより蓄熱によるリバウンド現象を阻止して、短時間で効率よくガス状化学物質を除去し、室内4へのガス状化学物質の移流を防止することができる。
【0024】
【実施例】
新築の1階建木造住宅の居間とダイニングキッチンの2つの室内に、それぞれ石油ストーブと加湿器および拡散ファンを1台ずつ設置すると共に、送風装置を2台ずつ設置して、送風ダクトを床下空間と壁体内空間に接続した。また排気装置の送風ダクトは、ダイニングキッチンの天井側に取付け、一方の送風ダクトを天井裏空間に接続すると共に、他方の送風ダクトを窓の隙間から屋外に引出した。
【0025】
設定温度は38℃とし、相対湿度40%、各部屋ごとの排気量を380リットル/分、として72時間連続運転し、その後24時間冷却した。その結果、ベイクアウト前とベイクアウト実施3日後の、VOC濃度は居間で32%、ダイニングキッチンで35%低減した。またホルムアルデヒドは居間で27%、ダイニングキッチンで29%低減した。
【0026】
なお上記説明では、また加熱装置として石油ストーブを用いた場合について示したがガスストーブや電気ストーブを用いても良い。また内壁5にダクト取付孔23を開孔した場合について示したが、壁5に設けたコンセントのカバーを取外し、送風ダクト19の先端にアダプターを取付けて、送風するようにしても良い。また上記説明では木造住宅に適用した場合について示したが、マンションなどの鉄筋コンクリート造の集合住宅にも適用することができる。
【0027】
また送風装置と排気装置を固定した設備として設置し、室内の換気を積極的に行なって居住性を高めると共に、構造材料を乾燥させて白ありやカビ、ダニの発生を防止し、シックハウス症候群の発生を防止することができる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明した如く本発明に係る請求項1記載の室内ガス状物質除去方法によれば、室内を高温に加熱してベイクアウトした温風を床下空間に供給し、ここから壁体内空間を通って天井裏空間を通過する間に、下地材が加熱されてベイクアウトされ、この過程で吐出した揮発性有機化合物やホルムアルデヒドなどのガス状化学物質が温風と共に屋外に排出されるので、リバウンド現象の原因になっていた室内を囲む空間部も同時にベイクアウトできるのみならず、同空間の排熱も行うことができ、短時間で効率よくガス状化学物質を除去して残留濃度を短時間で低減させ、室内へのガス状化学物質の移流を防止することができる。また加熱装置の最高温度が30〜50℃の高温に室内を加熱する温度制御機構を備えているので、火災や建具の損傷を防止し、かつ仕上仕様に適した加熱温度でベイクアウトを効率よく行なうことができる。
【0029】
またベイクアウトした後、送風装置から冷風だけを床下空間と壁体内空間および天井裏空間に送風して冷却することにより、蓄熱によるリバウンド現象を阻止して、短時間で効率よくガス状化学物質を除去し、室内へのガス状化学物質の移流を防止することができる。
【0030】
また請求項2記載の室内ガス状物質除去方法によれば、室内に加湿装置を設けて加湿しながら加熱することにより、ガス状化学物質の吐出を促進させることができる。
【0031】
また請求項3記載の室内ガス状物質除去方法によれば、室内に拡散ファンを設置して、温風を室内に拡散させることにより室内を均一に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態による室内ガス状物質除去方法の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
1 床下地材
2 床下空間
3 床仕上材
4 室内
5 内壁
6 壁仕上材
7 外壁
8 壁体内空間
9 天井材
10 屋根
11 天井裏空間
13 石油ストーブ
14 温風
15 吹出口
16 床面
17 送風装置
18 ファン
19 送風ダクト
20 吸込口
21 排気装置
23 ダクト取付孔
24 窓
26 加湿器
27 拡散ファン
Claims (3)
- 床下空間と天井裏空間とが室内を囲む壁体内空間を介して連通する建物において、室内に加熱装置を設置すると共に、ファンに送風ダクトを取付けた送風装置を設置し、この送風装置に取付けた前記送風ダクトの先端を、床下空間と壁体内空間に接続すると共に、天井裏空間に接続されたファンに送風ダクトを取付けた排気装置を設置し、この排気装置に取付けた前記送風ダクトの先端を屋外に配置して、前記加熱装置からの最高温度が30〜50℃の温風により室内表面を加熱すると共に、この温風を送風装置に取付けた送風ダクトから床下空間と壁体内空間に直接供給して、床下空間と壁体内空間を内側から加熱すると共に、壁体内空間を上昇した温風により天井裏空間を加熱して揮発性有機化合物やホルムアルデヒドなどのガス状化学物質を吐出させ、これを排気装置で屋外に排出し、ベイクアウトした後、送風装置から冷風だけを床下空間と壁体内空間および天井裏空間に送風して冷却することを特徴とする室内ガス状物質除去方法。
- 請求項1記載の室内ガス状物質除去方法に、更に室内に加湿装置を設けて加湿しながら加熱することを特徴とする室内ガス状物質除去方法。
- 請求項1記載の室内ガス状物質除去方法に、更に室内に拡散ファンを設置して、温風を室内に拡散させることを特徴とする室内ガス状物質除去方法。
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