JP3838019B2 - 水切りごみ袋 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性を有するポリ乳酸繊維からなる水切りごみ袋に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在最も広く利用されているごみ袋用繊維素材は、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルや、6ナイロン、66ナイロンに代表されるポリアミドなどの合成樹脂である。
【0003】
合成樹脂は大量に安価に製造できるというメリットがある反面、使用後の廃棄方法をめぐる問題がある。すなわち、上述した合成樹脂からなる繊維は自然環境中では殆ど分解せず、焼却をすると高い燃焼熱を発生する恐れがある。
【0004】
そこで、最近では生分解性を有する合成樹脂であるポリカプロラクトンやポリ乳酸等を繊維用途に利用する提案がなされている。確かにこれらの合成樹脂は生分解性を有するという長所があるが、従来の(非生分解性)合成樹脂に較べて実用性という点では問題が多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、繊維の原料となるポリ乳酸の物性を厳しく吟味し、特定の物性・繊度のポリ乳酸を用いる事によって、強度、伸度等の物性値がポリエステル、ナイロン繊維並みの物性を有し、編み等の後工程でも、ポリエステル、ナイロン繊維並みの加工性を得る事のできるポリ乳酸水切りごみ袋を提供するにある。
【0006】
【課題を解決する為の手段】
上述の目的は、相対粘度が2.7〜4.0であり、モノマー量が0.5重量%以下であり、Sn(錫)の含有量が30ppm以下であり、L体の比率が98%以上であり、直鎖状であるポリ乳酸樹脂を原料とする繊維からからなり、該ポリ乳酸繊維が、引張強度が3.9cN/dT(センチニュートン/デシテックス)以上で、沸水収縮率が15%以下である事を特徴とする水切りごみ袋により達成できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるポリ乳酸は直鎖状の構造を有する。すなわち分岐構造を殆ど持たないものである。従来の提案では、溶融粘度や重合度を改良する目的でポリ乳酸を重合する際に少量の分岐剤を添加する事が行われていた。しかしながら、分岐構造が僅かでも存在するポリ乳酸は分岐構造が無い物に比べると引張り強度が弱いという問題がある。
【0008】
分岐構造を排する為には、ポリマーの原料に分岐構造を生成させるもの、3価、4価のアルコールやカルボン酸等を一切利用しないのが良いが、何らかの理由でこれらの構造を持つ成分を使用する場合であっても、紡糸時の糸切れ等、紡糸操業性に影響を及ぼさない必要最小限度の量にとどめることが肝要である。
【0009】
本発明に用いるポリ乳酸は、ポリマー中のSnの含有量が30ppm以下である必要があり、好ましくは20ppm以下である。Sn系の触媒はポリ乳酸の重合触媒として使用されるが、30ppmを超える量存在すると、紡糸時に解重合が起きてしまい、紡糸操業性が著しく低下する。
【0010】
Snの量を少なくする為には、重合時に使用する量を少なくしたり、チップを適当な液体で洗浄すればよい。
【0011】
本発明に用いるポリ乳酸はL−乳酸、D−乳酸あるいは乳酸の2量体であるL−ラクチドやD−ラクチドあるいはメゾラクチドを原料とするものであるが、結晶性を有するポリ乳酸を用いることで、引張強度を上げ、沸水収縮率を下げるため、ポリ乳酸のL−体の比率は98%以上必要である。これはL−体の比率が低下すると非晶構造になり、紡糸・延伸工程で配向結晶が進まず、得られる繊維の物性が劣る為である。特に引張強度が著しく低下したり、沸水収縮率が過大となり、実用上ごみ袋として使用する事が不可能である。
【0012】
本発明に用いるポリ乳酸は、モノマーの含有量が0.5重量%以下、好ましくは0.3重量%以下、特に好ましくは0.2重量%以下である。本発明に言うモノマーとは後述するGPC分析により算出される分子量1000以下の成分である。モノマー量が0.5重量%を超えると、モノマー成分が紡糸工程で熱により分解する為、繊維の強度が弱くなる。
【0013】
ポリ乳酸中のモノマー量を少なくする為には、重合反応完了間際に反応槽を真空吸引して未反応のモノマーを取り除く、重合チップを適当な液体で洗浄する、固相重合を行うなどの方法を行う。
【0014】
本発明に用いるポリ乳酸は、その相対粘度(ηrel)が2.7〜4.0である。この範囲より低いとポリマーの耐熱性が悪くなり、繊維の強度が弱くなり、逆に高くなると紡糸温度を上げねばならず、紡糸時のポリマーの熱劣化が大きい。好ましくは2.9〜3.3が良い。
【0015】
本発明に用いるポリ乳酸繊維は、単糸繊度が3.5dT(デシテックス)以上10dT以下でトータルの繊度が56dT以下のマルチフィラメントからなることが好ましく、更には5.5〜9.0dTが好ましい。単糸繊度が3.5dT以上であるとごみ袋の水切り性に優れる。単糸繊度が10dT以下だと操業性に優れる。
【0016】
又、トータルの繊度は56dT以下である事が好ましく、更には15〜35dTが好ましい。56dT以下では、水切り性に優れ、又、1枚あたりの水切りごみ袋作成時に使用するポリ乳酸繊維が少ないためコストメリットにも優れる。
【0017】
本発明に用いるポリ乳酸繊維は、引張強度3.9cN/dT以上が好ましい。引張強度が3.9cN/dT以上ではごみ袋の各種加工で糸切れ等が発生せず、又得られた水切りごみ袋にごみを入れても破れないので好ましい。
【0018】
本発明に用いるポリ乳酸繊維は、沸水収縮率は寸法安定性の為に17%以下が好ましく、さらに好ましくは15%以下である。
【0019】
本発明に用いる水切りごみ袋は特定のポリ乳酸マルチフィラメントの繊維形態を利用した編物である。
【0020】
【発明の効果】
本発明のポリ乳酸繊維を用いて水切りごみ袋を製造すれば、優れた生分解性繊維を有する水切りごみ袋を得る事が出来る。すなわち、強度、伸度、沸収等の物性値がポリエステル、ナイロン繊維並みの物性を有し、編み等の工程でも、ポリエステル、ナイロン繊維並みの加工性を持った、ポリ乳酸水切りごみ袋を得る事ができる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により具体的に本発明を説明する。最初に、ポリマー物性の分析方法を紹介する。
【0022】
<モノマー量>
試料を10mg/mLの濃度になるようクロロホルムに溶かした。クロロホルムを溶媒として東ソー製 HLC8120GPCによるGPC分析を行いMw、Mnを測定した。検出器はRIを用い、分子量の標準物質としてポリスチレンを用いた。
分子量分布の測定から、分子量1000以下の成分の割合からポリマー中のモノマー量を算出した。
【0023】
<相対粘度ηrel>
フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒に試料を1g/dlの濃度になるよう溶解し、20℃でウベローデ粘度管を用いて相対粘度を測定した。
【0024】
(Sn含有量)
0.5gの試料を硫酸/硝酸により湿式灰化した。これを水で希釈して50mL溶液とし、セイコー製 SPS1500VR ICP発光分析法により測定した。
【0025】
(強伸度の測定)
島津製作所製引っ張り試験機(RTM−100)を用い、試料長20cm、速度20cm/minで引っ張り試験を行った。破断強度を引っ張り強度、破断伸度を伸度とした。
【0026】
(沸水収縮率)
初期値50cmの試料に初期過重200mgをかけて沸騰水中に15分間浸漬し、5分間風乾した後、次式により沸水収縮率を求めた。
沸水収縮率(%)=(初期試料長−収縮後の試料長)/初期試料長×100
【0027】
(L体の測定)
樹脂を加水分解させ、メタノール性水酸化ナトリウム溶液1.0Nを溶媒として高速液体クロマトグラフィー(HPLC:島津製 LC10AD型)を使ってL体の比率を求めた。
【0028】
[ポリマーの重合]
L−ラクチド、D−ラクチドを原料として、オクチル酸スズを重合触媒として、定法によりポリ乳酸を重合した。比較の為に、架橋剤としてトリメリット酸を0.1モル%を加えたものも重合した。得られたポリマーは135℃で固相重合を行い、残存モノマー量の低減を図ったが一部は比較のために固相重合を行わなかった。
【0029】
[紡糸]
紡糸方法は、孔径0.25mmを有する紡糸ノズルより空中に押し出し、3500m/minで巻き取った後、95℃で2倍延伸した後、140℃にてセットした、マルチフィラメントを得た。
【0030】
[総合評価]
得られたポリ乳酸マルチフィラメントで、2重の袋底を持つように編まれた水切り用ごみ袋を試作し、得られたごみ袋に2kgの生ごみを入れて、さらに沸騰水を掛けて水切り性等の評価を4段階で行った。
◎:水切りごみ袋の破損、変形がなく、水切り性も良好で極めて優れている
○:水切りごみ袋の破損、変形がなく、水切り性も良く優れている
△:水切りごみ袋の破損はないが、変形が見られたり、水切り性が悪いなど劣る×:水切りごみ袋の破損、変形が著しく実使用不可
【0031】
【表1】
【0032】
実施例1〜3はポリマー物性、マルチフィラメントの物性全て良好であり、得られた水切り用ごみ袋も極めて良好であった。
【0033】
実施例4では糸物性は問題ないがトータル繊度が多すぎ水きり性に劣る。又、実施例5では単糸繊度が細くトータル繊度あたりのフィラメント数が多くなり、水切りごみ袋の破損、変形は見られないが水切り性に問題があった。
【0034】
【表2】
【0035】
比較例1はL体の比率が低いために、延伸時に配向結晶が進まず、沸水収縮率が高くなってしまい、沸騰水を掛けた時の水切りごみ袋の収縮が大きく寸法安定性に欠け、変形が大きい。
【0036】
比較例2はポリマーの相対粘度が低いために、又比較例3、4はモノマー量や錫量が多いために紡糸時に熱劣化が起こったため、引張強度が不十分で、水切り用ごみ袋の中に生ごみを入れた時に破損が見られ、水切りごみ袋として使用することが出来なかった。
【0037】
比較例5はポリマーの相対粘度が高すぎ、紡糸時の温度を上げねばならず、逆に熱分解が起きてしまい得られた糸の引張強度が不十分で、水切り用ごみ袋の中に生ごみを入れた時に破損が見られ、水切りごみ袋として使用することが出来なかった。
【0038】
比較例6は分岐構造を持ったポリマーを使用した結果であるが、分岐構造を持つために引張強度が不十分で、水切りごみ袋の中に生ごみを入れた時に破損が見られ、水切りごみ袋として使用することが出来なかった。
Claims (2)
- ポリ乳酸の相対粘度が2.7〜4.0であり、モノマー量が0.5重量%以下であり、Sn(錫)の含有量が30ppm以下であり、L体の比率が98%以上であり、直鎖状である主としてポリ乳酸樹脂を原料とするポリ乳酸繊維からなり、該ポリ乳酸繊維が、引張強度が3.9cN/dT(センチニュートン/デシテックス)以上で、沸水収縮率が15%以下である事を特徴とする水切りごみ袋。
- 該ポリ乳酸繊維が、単糸繊度が3.5dT(デシテックス)以上10dT(デシテックス)以下でトータルの繊度が56dT(デシテックス)以下のマルチフィラメントからなる事を特徴とする請求項1記載の水切りごみ袋。
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