JP3837598B2 - 滑り止め加工されたカット鋏 - Google Patents
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Description
また髪のカット跡を横一直線に直線揃えする時は、上述した滑りにより、予定した横一直線には髪の切れ目が揃わず、図35に示すようにカット跡が曲がって不都合である。
しかしこの様な直線のカット跡をぼかす場合でも、カット鋏による直線揃えを前処理として行っており、その後でこの直線に揃った髪を梳くことのよりカット跡をぼかして、自然な仕上がりにしている。そのためカット鋏と梳鋏との2種類を使うので、それだけ手間がかかる。しかもカット鋏を用いた直線揃えの前処理が髪の滑りでなかなか直線に揃わないので、髪を直線に揃わせるために何度もカットする面倒さがある。
発明1;まず図1−図3に示すように、切込み溝は所定の髪の太さ以下の溝幅にした。つまり、切込み溝の幅は、髪の太さより細いか、或いは髪の太さに等しく設けられる。鋏はカット鋏でも梳鋏でその他どの様な形態のものでもよい。
しかもこの鋏は、図6の一点鎖線に示すように刃先を研磨して刃先が後退しても、同図示される様に切込み溝3の無くなることはなく、滑り止め効果が最後まで持続する。
ここで摺察面Sとは、刃先の刃裏側に設けられた面のことであり、以下の理由により設けられている。
一般に鋏の刃裏の断面形状は、図40に示すように裏スキPと呼ばれる僅かな凹曲面を有しているが、刃先近傍だけは平面状の摺察面Sになっている。これは、鋏を開閉操作するときに、双方の刃先の摺察面S同士が摺察することによる切断作用を得るためであり、その時に摺察面以外の刃裏には触れ合わないように裏スキPを凹曲させているのである。従って図11−図12に示したように、切込み溝5の溝底6が摺察面Sに掛かる溝長さにして摺察面Sからはみ出ないようにしたので、予定より細い髪が切込み溝に入った場合、この髪を切断する刃7を溝底6に設けるために切込み溝を鋏の摺察面Sからはみ出ない長さに形成した。
どの切込み溝を摺察面からはみ出ない長さに形成するかは任意であり、例えば、溝幅を大小混在させた場合に、大きい幅の切込み溝5は細い髪が奥まで入りやすいので、この溝底に刃を設ければ切込み溝に入った髪があってもこれを残らず切ることができる。
溝幅が髪の太さより広くても、鋏の閉じ操作の時にはこの切込み溝の開口部に髪の引っかかる作用が得られ、滑り止めの効果が得られる。これは、鋏を閉じるときには多数の髪が切込み溝の開口部に集中するので、開口部が髪の太さより広くても密集した髪が開口部を塞ぐようにして引っかかるものと考えられる。
またこの鋏は、髪が切込み溝に入った場合であっても溝幅が広くしてあるので髪の抜けが良好となり、切込み溝に髪が詰まるようなことが無い。
この鋏によると、溝幅が広くなるので切込み溝での髪の捕捉量が増すが、髪は縦に数列程度であるので従来の鋸鋏に見られたようなゴツゴツ感はなく、スムーズな閉じ操作が可能になる。
まず鋏の閉じ抵抗は、鋏の柄の長さ、刃体の長さ、刃の切断特性などが要因となるが、最終的にはこれらに切込み溝に捕捉された髪の量が加わって決まることとなる。その際、溝幅が切込み溝に捕捉される髪の量(つまり髪の縦列)を決め、これにより髪を切る時の抵抗感やスムーズさが決まるのである。
従って本願に云う「数本縦列に入る所定の溝幅」とは、切込み溝に捕捉された髪を切っても、鋸鋏を用いたときの髪の束を切る様な抵抗感が無い程度のスムーズな閉じ抵抗の得られる溝幅をいう。よって閉じ操作のスムーズさが得られるのであれば、溝幅が例えば0.4mm−0.5mm等の広めであってもよい。
その際、円盤砥石で切込み溝を研削するのであれば、溝底は研削痕として形成されるので、鋏に対する円盤砥石の宛い方を溝底の刃先角が鋭角になるように設定すればよい。
溝幅が所定の髪の太さ以下であったり、所定の髪の太さ超且つ2倍未満の鋏のように、滑り止め効果を意図したものであれば、切込み溝の開口部の片端4'が鋭角になるので引っかかり効果が増大し、滑り止め効果が向上する。
また溝幅が、髪が数本幅の縦列に入る所定の幅であって切込み溝で補足した髪を切断することを意図したものであれば、切込み溝内で縦列になった髪に対して相手刃体の直線刃を略直角に切り下ろことになるので、切断力の向上と閉じ操作のスムーズさの向上が得られる。
また連設された部分はその切込み溝に粗密を設けてもよい。
また連設された部分にはその各部分ごとに切込み溝の粗密を違えておくことができ、この違いに応じて「滑り止め」の程度に強弱が生じるため、髪のカット跡は図21に示すように粗密に対応した波状などの不揃いになる。また1つの連設された部分についてみても、その部分内で均等ピッチにしても或いは不均等な間隔にして粗密を設けたのであってもよい。
この様に「切込み溝の連設された部分」の刃先への任意な配置と、また連設された部分での切込み溝の粗密を併用することにより、髪の多様な仕上がりが得られる。或いは任意配置と切込み溝の粗密とを併用せず、どちらか一方のみを実現させた鋏であってもよい。
特に、超硬質工具材を材料に用いれば、上述した効果が一層顕著になる。
その理由であるが、一般に使用中の鋏は刃先が髪の油でまみれるが、硬度差のある2本の刃体の摺察面が髪の油の皮膜で覆われると、この油が摺察面での研削用潤滑油の役割を果たし、鋏を開閉操作する時に、高硬度側の摺察面が低硬度側の摺察面を研磨する作用が得られる。よって鋏は、使用しながら研磨も同時に成されることとなり、よって低硬度側の刃体はその刃先がいつも研磨された状態を保つことができ、また高硬度側の刃体は元々耐摩耗生を有することに加えて、摺察相手が低硬度の刃体であるために高硬度側の刃体が摩耗することは一層少なくなる。要するに、双方の刃体はいずれも研磨された状態が維持されるようになり、切断力の良好な状態の維持される鋏となる。
例えば一方の刃体材料をセラミックとし、これに切込み溝を形成しておき、他方の刃体材料をステンレス(例えば硬度650Hv)にする方法がある。或いはサーメットとステンレスでもよく、その他どの様な材料組み合わせでもよい。低硬度側の刃体の摩耗速度が早いのであれば刃体間の硬度の高低差を縮め、逆に摩耗が少なく低硬度側の刃体への研磨効果が得られないのであれば硬度の高低差を広げるための材料選択をすればよい。
図1に示すカット鋏1Aは、2本の刃体2a、2bの一方2aに、刃体2aの全長に亘って均等ピッチの切込み溝3、3、…を設けたものである。この切込み溝3は図2−図3に示すような形状と配置になるが、その溝幅Wは太さが0.08mmの髪を想定したものであって、0.04−0.05mm程度にしてある。溝長さLは約1.0mmにしてあり、切込み溝同士のピッチ幅は約1.0mmである。
このカット鋏1Aの製造に当たっては、溝幅Wに対応した厚さの円盤砥石を刃体長手に対して直角に臨ませることにより切込み溝が研削され、この様な研削を刃体の基端から先端にかけて順次行って切込み溝3を連設してある。これにより図4に示すように切込み溝3の開口部4は直角に尖って形成されて髪Xの引っかかる効果が得られ、また溝幅が髪の太さより狭いので、切込み溝3による滑り止め効果が得られる。
また仮に髪の太さが溝幅と同じであっても同様に引っかかり効果が得られるのであり、或いは図5に示すように切込み溝に挟まり髪の滑り止めとなる。また髪1本が開口部に引っかかるとこの1本に別の髪が引っかかり、この別の髪に更に別の髪が引っかかるので、髪の引っかかりが連鎖して良好な滑り止め効果が得られる。
また鋏を使用し続けて切断力が落ちてくると、切断力の回復のために刃を研磨するが、この様な研磨(図6の一点鎖線が研磨面)により刃先が後退しても切込み溝3の無くなることはなく、滑り止め効果が最後まで持続する。更に、切込み溝の開口部の角4が使用と共に丸まってきても、刃表を研磨することにより新たな角4が開口部にでき、滑り止め効果の回復が可能である。
この鋏によると、図7に示すように髪を切るときには切込み溝の開口部で滑り止め効果が得られ、滑りが抑制されて直線揃えが容易になる。また一部の髪は切込み溝に入って捕捉された状態で切断されるが、髪が1本の縦列状態であるため閉じ抵抗もなく滑らかに切ることができる。
特に、切込み溝に捕捉された状態で切り落とされた髪は、切込み溝に挟まったままになる場合があるが、髪の切断を続けて行うと一旦切込み溝に挟まった髪も振り落とされるような状態で切込み溝から容易に抜け落ちてゆき、切込み溝に髪が目詰まりしてしまうようなことはない。
この様に上記鋏の特徴は、滑り止めの効く鋏であり、切込み溝に髪が入っても鋏を閉じるときの抵抗感は従来のカット鋏と同様の滑らかさがあり、更にこの様な切込み溝に髪の目詰まりをおこさない鋏なのである。
この鋏によれば、隣り合う切込み溝3に挟まれた直線刃の部分刃6で髪が切断されながら、一部の髪は切込み溝に補足されて切断される。
これにより、細い切込み溝3には図11に示したように髪Xaが引っかかって滑り止めとなり、太い切込み溝5にも髪Xbが引っかかったり目詰まりして滑り止めとなる。また太い切込み溝5は溝底6に刃7が形成されるので、髪が切込み溝5に入っても切れるようになっている。
またこの様に太い切込み溝5を設けておくと、平均より太めの髪の人であっても滑り止めが効きく。
以上のように髪の太さがマチマチであることを予定して、切込み溝の溝幅を大小違えて設けておけば髪の太さの個人差や、髪の太さのばらつきに対応できる。また、溝幅の異なる切込み溝を任意に混在させて連設させることにより、単一幅の切込み溝のみの鋏とは異なった切れ味、感触を得ることができる。
図13(a)は、双方の刃体2a、2bに均等ピッチの細い切込み溝3を設けてある。図13(b)は、一方の刃体2aに均等ピッチの細い切込み溝3を、他方の刃体2bには同じ均等ピッチの太い切込み溝5を設けてある。図13(c)は、一方の刃体2aに狭い均等ピッチの細い切込み溝3を、他方の刃体2bには広い均等ピッチの細い切込み溝3を設けてある。図14(a)は双方の刃体2a、2bに、細い切込み溝3と太い切込み溝5の繰り返しを均等ピッチで設けてある。図14(b)は、細い切込み溝3を均等ピッチで設け、細い切込み溝3、3同士の間に設ける太い切込み溝5が、細い切込み溝3の2つおきに配置してあり、この様な連設を双方の刃体2a、2bに設けてある。図14(c)は、一方の刃体2bに細い切込み溝3を狭い均等ピッチで設け、細い切込み溝3、3同士の間に設ける太い切込み溝5が細い切込み溝3の2つおきに配置してあり、他方の刃体2aに細い切込み溝3と太い切込み溝5を広い均等ピッチで設けてある。図15は、均等ピッチの細い切込み溝3、3同士の間に、同長の太い切込み溝5aとこれより長い太い切込み溝5bとを交互に設けたものであり、この様な並びが双方の刃体2a、2bに設けられている。
また別の例として、図18に示すカット鋏1Cは、一方の刃体2aの先端2−3cmのみに切込み溝を均等ピッチで設けたものであり、カット鋏で一番よく使う先端に本願発明を用いたものである。
この梳鋏1Gも、設けられた切込み溝により髪の逃げの少ない梳鋏になる。また鋏を閉じるときには、従来の梳鋏のような、櫛刃の刃先の凹部に捕らえられた髪の束を切断する時のゴツゴツした抵抗感がなくなり、スムーズな閉じ作業が可能となる。
なお櫛刃体には切込み溝を設けずに、棒刃体の刃先に切込み溝を設けたものであってもよい。
或いは、梳鋏が棒刃体と櫛刃体からなる場合、その櫛刃は従来からの直線的な刃先のままにしておき、棒刃側に、上述したカット鋏にした様な連設された部分の任意配置や、連設された部分での切込み溝の粗密を設けてもよい。
この様な切込み溝の設け方により、梳鋏は、髪の「滑らず切れる」櫛刃と「滑りながら切れる」櫛刃とに分かれる。この様な滑りの違いを刃先線上にもたらすので、刃体の各箇所ごとで髪の梳く量が異なり、髪梳きの仕上がりに自然な変化が得られる。
特に、溝幅が髪が数本幅のものは、切込み溝で髪を捕捉して切ることを予定しているため、図32に示すように髪を切込み溝で捕捉しやすく、補足して切込み溝3に入った髪は、相手刃体2bの刃先に対して略直角な縦列となるので切断が良好になされる。
なお、替え刃式の鋏においても以上の発明を適用することができる。替え刃式の鋏は、鋏の刃の部位が鋏本体とは別体の替え刃として提供されており、取り付け方法により替え刃の形態自体は様々である。この替え刃に以上の発明の構成要素である切込み溝を設けておき、鋏の本体に取り付けて鋏を成せば、以上の発明の鋏となるのである。
Claims (1)
- 刃が直線刃であるカット鋏であって、所定の髪の太さ以下の溝幅を有して前記直線刃上に形成される切込みの浅い略凹状の係止溝と、この係止溝に区切られた前記直線刃の部分刃と、が交互に設けられたことを特徴としたカット鋏。
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