JP3837522B2 - ZnO単結晶の育成炉と単結晶育成法 - Google Patents

ZnO単結晶の育成炉と単結晶育成法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光・電子材料として応用される酸化亜鉛の単結晶を化学気相輸送法によって育成するための方法と育成炉に関する。
本発明の方法と育成炉により、化学気相輸送法によって酸化亜鉛単結晶を育成する際に、加熱機構(炉体)や原料、析出結晶を移動させることによって、原料の蒸発量、結晶の析出量を制御し、安定した結晶成長を実現し、大型良質単結晶の育成を可能とする。
【0002】
【従来の技術】
1 酸化亜鉛の単結晶成長
酸化亜鉛単結晶、特に、外寸が数ミリ以上の大きさを持つ単結晶の成長法には、これまで、フラックス法、化学気相輸送法、水熱法が知られている。フラックス法の代表的手法は弗化鉛を利用する方法であり、酸化亜鉛を混合した原料を高温処理することによって、弗化鉛融液を融剤とした単結晶成長を実現する。水熱法では、添加物を加えた高温高圧水に酸化亜鉛を溶かし込み、これを再析出させることで単結晶を得る。フラックス法、水熱法とも育成時に亜鉛以外の金属元素が存在するため、高純度化が難しい。
【0003】
一方、化学気相輸送法は酸化亜鉛を気化させ再析出させることによって単結晶化させる方法であり、高純度結晶を得やすい。例えば、米国のLook等はこの方法でレーザー発振する高純度結晶を得ている。光・電子材料としての酸化亜鉛単結晶の利用にあたっては、高純度が必要であり、化学気相輸送法による成長が好ましい。
【0004】
2 化学気相輸送法
酸化亜鉛、又は、亜鉛金属を還元ガス気流中で蒸発・気化させ、この亜鉛を含む蒸気を結晶析出部位まで気相を介して輸送し、結晶析出部位において酸化亜鉛単結晶を成長させることを特徴とする育成法である。還元ガスを用いる代わりに、酸化亜鉛と黒鉛との混合物を熱する、という方法で酸化亜鉛を気化・蒸発させるという手法もあり得る。
【0005】
何れの方法においても、炉内に還元性の雰囲気を持った部位と酸化性の雰囲気を持った部位とを設け、例えば、還元部位においては、
ZnO(固体) → Zn(気体) + 酸素(気体) 又は
ZnO(固体)+H2(気体) → Zn(気体) + H2O(気体)
という反応を誘起し、酸化部位においては、
Zn(気体) + 酸素(気体) → ZnO(固体) 又は
Zn(気体) + H2O(気体) → ZnO(固体)+H2(気体)
という反応を誘起して、固体の原料を気化・蒸発させ、これを気体状態で輸送して再析出させるという手法で単結晶が育成される。
【0006】
この方法は、亜鉛以外の金属成分が原理的には含まれないために、高純度の単結晶を得やすい特徴がある。ただし、有効な結晶成長を実現するには、原料を気化させる還元部位の温度と酸素分圧を制御して、安定した原料供給を実現し、また、結晶を析出させる酸化部位においては、安定した結晶成長を実現するために、温度と酸素分圧を制御する必要がある。
【0007】
すなわち、原料供給のための還元部位、結晶析出のための酸化部位それぞれにおいて、Zn気体の飽和濃度とその過飽和度を制御する必要がある。さらに、気体から析出した酸化亜鉛成分が、粉末として析出することなく、育成中の結晶の表面に付着、マイグレーションして、あくまでも単結晶として成長するためには、育成結晶の温度と気体中のZn蒸気の過飽和度は極めて重要な因子となる。
【0008】
しかし、これまでに学術論文等に報告されている育成炉は必ずしも育成条件の制御性に優れたものではない。多くの化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成の学術論文において、その核生成の制御は十分に成されておらず、自然発生的に単結晶の成長が起こり、その成長方位の制御は完全ではない。また、化学気相輸送法は還元と酸化を同一の炉内で実施するものであるため、温度分布を一定に保った炉による成長では、長軸結晶の成長が困難である。
【0009】
すなわち、炉の大きさによって育成可能な結晶の大きさが制限される(非特許文献1)。一般に固定された原料と固定された結晶析出部位によって、育成が進められている。
【0010】
上記非特許文献1などに記されている化学気相輸送法によるZnO単結晶育成の概略図を図1に示す。あくまで、概略図であって、定量的、詳細な表示ではない。図1において、▲1▼反応管、▲2▼気化・蒸発中の亜鉛原料、▲3▼析出中の単結晶、▲4▼酸化ガス導入、▲5▼還元ガス導入、▲6▼酸化亜鉛原料が蒸発可能な位置範囲、▲7▼良質な酸化亜鉛単結晶が成長することが可能な位置範囲である。
【0011】
炉内の温度分布と、酸素分圧の分布によって、▲2▼に設置した酸化亜鉛を蒸発、気化させ、▲3▼の位置に酸化亜鉛単結晶を析出・結晶化させる。蒸発、再析出は、酸素分圧と温度の両方の影響を受け、▲6▼に示す位置範囲におかれた酸化亜鉛原料は、全量が蒸発可能であるが、これをはずれた分については、蒸発することができない。また、▲7▼で示す位置範囲が、酸化亜鉛の析出と、良質な単結晶としての結晶成長が起こる位置範囲であり、これをはずれた位置においては、有効な単結晶の析出は起こらない。
【0012】
この方法では、炉内の温度分布によって、気化した酸化亜鉛蒸気の飽和蒸気圧、及び、過飽和度を調整し、原料の気化と再結晶化を実施している。すなわち、原料、及び、析出結晶の位置を固定した結晶成長では、図1に概略図を示すように、結晶育成の進展に伴い、原料析出部位、結晶析出部位の温度条件が刻々と変化する。従って、育成初期と育成終期においては、異なった温度条件において酸化亜鉛単結晶が製造され、結晶の品質の均質性を実現することは難しい。従って、一定の育成条件を常に満足するためには、限られた空間での育成を余儀なくされ、(0001)面や(000-1)面が優勢である板状の結晶の成長のみ可能である。
【0013】
上記のように、結晶成長が起こる有効な位置範囲が温度分布と酸素分圧によって限定されるため、得られる単結晶の最大寸法は、炉体の大きさによって限定される。また、特に核生成制御を実施せず、化学気相輸送法による結晶成長を実施した場合、不均一核生成が進展し、多数の棒状の結晶や針状の粉末が得られることが一般的であり、単結晶として回収することが難しい。
【0014】
すなわち、図1中の▲7▼で示される、良質な酸化亜鉛単結晶が成長することが可能な位置範囲を広げた場合、その範囲内において不均一な結晶核が生成し、多結晶体として再析出する確率が高まる。すなわち、図1では、結晶は、▲7▼の範囲を埋め尽くすだけの大きさに成長できる可能性があるが、▲7▼の範囲に不均一な核発生が起こり、▲7▼の範囲に多結晶体が成長する可能性が高い。そのため、図1の▲7▼の範囲を広くする炉体を設計することでは、得られる結晶の最大寸法を大きくすると言う目的は達せられない。
【0015】
さらに、大型単結晶を得ることが可能な結晶析出条件を満足した場合、図1の▲6▼に示される原料供給のための有効な位置範囲の限定によって、原料の供給総量が限定される。すなわち、図1の▲6▼の位置範囲の大きさが、得られる単結晶の大きさの上限を決定づける。
【0016】
【非特許文献1】
Current Topics in Materials Science Series,Vol.7,Edited by E.Kaldis, Subchapter 3.2"Preparation and Crystal Growth"(North-Holland Publishing Company, 1981)
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、高純度であり、かつ、大型の酸化亜鉛単結晶を得ることにある。特に、不均一な核発生による多結晶化を抑止し、有効な単結晶成長を実施するためには、上記の図1における▲7▼の位置範囲を広げることなく、大型の単結晶の育成を可能とならしめる必要がある。さらに、滞りなく原料を供給し続ける機構を備えることによって、大型単結晶育成に必要な量の原料を滞りなく供給する必要がある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
安定した酸化亜鉛単結晶の育成を実現するため、原料の蒸発量と結晶の析出を厳密に制御する必要があり、これの手段の概略を図2及び図3に示す。なお、これらの図は、あくまで本発明の概念を示す図であって、本発明の解釈を限定するものではない。図2において、▲1▼反応管、▲2▼気化・蒸発中の亜鉛原料、▲3▼析出中の単結晶、▲4▼酸化ガス導入、▲5▼還元ガス導入、▲6▼酸化亜鉛原料が蒸発する限界位置、▲7▼良質な酸化亜鉛単結晶が成長することが可能な最も高温端である。
【0019】
図2に示すように、常に、▲2▼の原料の一端が原料蒸発位置範囲内に存在するように調整するため、▲8▼に原料を押し出すための押し出し機構を設置し、この機構により原料の蒸発に合わせて、原料を炉内の高温部に向けて押しだし、また、▲3▼の育成中の結晶の一端が、常に良質な結晶が育成する高温端になるように、▲9▼の育成結晶引き出し機構を設置する。
【0020】
図3において、▲1▼反応管、▲2▼気化・蒸発中の亜鉛原料、▲3▼析出中の単結晶、▲4▼酸化ガス導入、▲5▼還元ガス導入、▲6▼酸化亜鉛原料が蒸発する限界位置、▲7▼良質な酸化亜鉛単結晶が成長することが可能な最も高温端である。図3に示すように、育成中、温度分布を変化させることによって、育成初期にあっては、蒸発不可能な場所にあった原料を徐々に蒸発させ、また、育成中の結晶の一端が常に、結晶育成可能位置範囲内に収まるようにする
【0021】
図2及び図3に示す化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成炉は、何れも、炉内の低酸素分圧部分において酸化亜鉛原料を加熱・蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させる、いわゆる化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成に用いる炉であって、主たる構成は、加熱用熱源、原料付近に原料の蒸発を促進する還元雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を調整しつつ導入するための機構、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を制御しつつ導入するための機構、雰囲気を保つためガスを封じるにたる気密性をもった反応管を主たる構成要素とし、原料の蒸発、結晶の析出の進行状況に合わせて、炉内の温度分布、又は、析出結晶、及び、蒸発原料の位置を変化させることによって、原料の蒸発量と結晶の析出量を制御することが可能となる機能を備えた、高温雰囲気炉の呈をなす、酸化亜鉛単結晶育成炉である。
【0022】
まず、原料(図2中▲2▼)の蒸発を制御するため、固形の原料の1端が、炉内の原料蒸発位置範囲の低温端(図2中▲6▼)と一致するように原料を保持する。なお、結晶育成中、原料蒸発温度範囲に含まれる部分の原料が蒸発して、原料の蒸発が終了してしまう。そこで、原料を炉内に押し込む機構(図2中▲8▼)を設置し、原料の蒸発分に見合うだけ、原料を図2の左方向に向かって押し出してやる。この押し出しを制御することによって、原料は、常に、原料蒸発位置範囲の低温端から、常に一定量だけ蒸発するように調整する。
【0023】
次に、結晶成長条件を一定に保つため、図2に示すように、結晶成長面を結晶成長位置範囲の高温端に一致させるように制御する。これによって、原料の気化によってもたらされた亜鉛蒸気は、結晶表面に堆積する。なお、育成の初期には、種結晶、又は、基板を使用し、その表面を結晶成長温度範囲の高温端に一致させて配置することが望ましい。
【0024】
結晶成長の進展に伴い、結晶表面が、結晶成長位置範囲の高温端に完全に一致したときに、結晶成長が終了する。そのため、成長結晶引き出し機構(図2中▲9▼)を設置し、結晶が成長した分に見合うだけ、常に結晶を引き出すことによって、結晶成長面の育成条件が常に一定に保たれる。結晶成長面を結晶成長温度範囲の高温端付近におくことによって、不均一な核生成が発生する空間(図1の▲7▼に対応する空間)が無いため、不均一な核発生を最小限に抑えることが可能となる。また、この育成結晶を引き出す機構を設けることによって、図1中の▲7▼に示した結晶成長位置範囲を超える寸法の単結晶を育成することが可能となる。
【0025】
図2の方法では、原料及び成長中の結晶の位置を移動することによって、問題を解決する方法を示した。一方、図3では、炉の温度分布を時間によって変化させることによって、結晶成長を制御する方法の概略を示す。まず、育成初期においては、炉の最高温部を相対的に単結晶成長部位に近づけておき、その温度分布において、原料の一端を原料蒸発条件の最低温部、基板又は種結晶を結晶析出条件の最高温部に設置する。
【0026】
育成を開始した後、原料の蒸発分と、結晶の成長分に見合うだけ、炉の温度分布を移動し、これによって、常に、同一条件で、原料の蒸発と結晶の析出が起こるように、制御する。ただし、炉の温度分布のみを移動した場合、酸化ガスの吹き出し位置が相対的に変化することになるため、図3中▲4▼の酸化ガス導入機構の炉内ガス吹き出し口も移動して、さらに、結晶析出、原料蒸発の状況を制御する。また、図2と図3の混合型として、図3の育成炉に、図2に示した原料送り機構を付加することで、より高い制御性が実現される。
【0027】
育成された結晶の不純物濃度を抑えるためには、金属成分の混入と同時に、ガス成分の混入を避ける必要がある。近年の研究によって、窒素は酸化亜鉛に取り込まれる可能性のある元素であることがわかってきた。また、水素についても、酸化亜鉛中に混入する可能性が示唆されているが、窒素は、酸化亜鉛のキャリアーの局在化、又は、まだ、未確認であるが、p型化をもたらす不純物となる可能性がある。
【0028】
これに対して、水素は、浅いドナーとなる可能性が指摘されているが、極端なキャリアーの局在化をもたらすとの報告はない。そこで、これまでの一般的な化学気相輸送法では、窒素と水素の混合ガスが還元性のガスとして用いられる場合が多く報告されているが、本発明では、還元性ガスとして水素を用いることとした。これにより、窒素の混入を避ける。
【0029】
また、高純度単結晶の育成例として、水素と水蒸気を用いた例が報告されているが、水素のみを用いた化学気相輸送法では、酸化亜鉛原料の蒸発速度が大きくなり、その制御が難しくなるため、本発明では、水素と不活性ガスによる混合ガスを還元性ガスとして利用する。これによって、酸化亜鉛原料の蒸発速度を調整するとともに、窒素不純物の混入を阻止する。
【0030】
【発明の実施の形態】
▲1▼酸化亜鉛単結晶育成炉の基本構成
本発明は、炉内の低酸素分圧部分において酸化亜鉛原料を加熱・蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させる、いわゆる化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成に用いる炉であって、主たる構成は、加熱用熱源、原料付近に原料の蒸発を促進する還元雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を調整しつつ導入するための機構、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を制御しつつ導入するための機構、雰囲気を保つためガスを封じるにたる気密性をもった反応管を主たる構成要素とし、原料の蒸発、結晶の析出の進行状況に合わせて、炉内の温度分布、又は、析出結晶、及び、蒸発原料の位置を変化させることによって、原料の蒸発量と結晶の析出量を制御することが可能となる機能を備えた、高温雰囲気炉の呈をなす、酸化亜鉛単結晶育成炉である。
【0031】
すなわち、原料の蒸発、結晶の成長という結晶育成の進捗状況に応じて、炉内の温度分布、又は、結晶の析出位置等のパラーメータを制御することによって、安定した単結晶成長、又は、炉の寸法の制約を受けない大型の結晶成長を可能とするZnO単結晶育成炉である。
【0032】
結晶の析出速度と育成する結晶の欠陥濃度は、温度、雰囲気ガス中の酸素分圧、原料から供給される亜鉛蒸気の供給量とによって決定されるため、上記の単結晶育成炉においては、炉の温度の変化を抑えるための温度制御機能と雰囲気ガスの導入量を制御するためのガス流量調節機構を備えていることが望ましく、前者には、一般の電子式の温度コントローラを利用し、後者には、一般のマスフローコントローラーを利用することが望ましい。
【0033】
加熱機構については、化学気相輸送法が実施できるにたる高温とその温度安定性を実現できるものであれば、特に、その形式は問わない。すなわち、化学気相輸送法による育成に足る高温を発生可能な、抵抗加熱発熱体を備えた加熱装置、誘導加熱方式による加熱装置、赤外線照射による加熱装置など、いわゆる、一般的な加熱装置である。しかし、先に示した参考文献に示されるとおり、現実的な結晶成長を実施するためには、原料蒸発部位、結晶析出部位、ともに、900℃、又は、それ以上の温度に保持することが望ましい。
【0034】
反応管の材質は、アルミナ質をはじめとする緻密質の耐火物とし、特に、酸化亜鉛との反応が起こりにくく、また、付着した酸化亜鉛との熱膨張差による歪みが原因となった破壊が起こりにくい、肉厚で緻密な耐火物を用いることが望ましい。同様に、酸化のためのガスの導入、吹き出し口の部材についても、反応管と同様に、緻密質の耐火物であることが望ましい。
【0035】
また、還元ガスと酸化ガスを導入する育成法であるため、両ガスが爆発的に反応する、又は、大気中の成分と反応する恐れもあるので、反応管の両端は、密閉度の良い、いわゆるフランジを取り付け、また、このフランジを介して、酸化ガス、還元ガスを導入するための導入管を配置することが望ましい。また、フランジを介して、排ガスを排気するためのガス排出口を設置することが望ましい。
【0036】
育成中の結晶の欠陥量を抑え、析出効率を上げるために導入する酸化のためのガスの導入位置は、炉の温度分布、原料の蒸発速度に合わせて、また、炉内の対流の状況に合わせて、予備実験を実施し、最適化することが望ましい。同様に、還元ガスの導入量に関しても、予備実験を実施し、最適化することが望ましい。これらの導入量は、反応管の径、又は、導入する原料の総量、想定する単結晶の成長速度に関して決定されるものであって、個々の育成炉の寸法、育成条件により左右されるものであるため、本発明の範囲内において、その最適量を特定することは不可能である。
【0037】
▲2▼ZnO単結晶育成炉の制御性のための機構
高効率でのZnO単結晶の育成、また、育成炉の寸法による育成結晶の制限を避けた単結晶育成を実施するための、酸化亜鉛単結晶育成炉は、炉内の低酸素分圧部分において酸化亜鉛原料を加熱・蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させる、いわゆる化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成に用いる炉であって、主たる構成は、加熱用熱源、原料付近に原料の蒸発を促進する還元雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を調整しつつ導入するための機構、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を制御しつつ導入するための機構、雰囲気を保つためガスを封じるにたる気密性をもった反応管を主たる構成要素とし、原料の蒸発、結晶の析出の進行状況に合わせて、炉内の温度分布、又は、析出結晶、及び、蒸発原料の位置を変化させることによって、原料の蒸発量と結晶の析出量を制御することが可能となる機能を備えた、高温雰囲気炉の呈をなす、酸化亜鉛単結晶育成炉であって、特に、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を実現することを目的とした酸化のためのガスを導入する機能を持ち、かつ、その酸化ガスの吹き出し口の位置を原料蒸発、結晶析出の進行状況に合わせて調整する機能を備えた、酸化亜鉛単結晶育成炉であり、かつ、炉内の原料蒸発に伴い、炉体を移動すること、又は、炉内の温度分布を変化させることによって、常に原料の蒸発部位の温度を一定に保つことを特徴とする、酸化亜鉛単結晶育成炉である。
【0038】
温度分布の変化には、複数の発熱体と複数の温度制御機構を用いたマルチゾーンの電気炉を用いる方法、発熱体を移動させる方法、発熱体を固定して反応管を移動させる方法がある。吹き出し口を移動させるため、酸化ガスを導入するための導入管とフランジとの間の気密性を保つ接続部を摺動可能な継ぎ手とし、これによって、酸化ガスの吹き出し口位置の移動を可能にする。
【0039】
また、炉体、育成炉全体の構成によっては、反応管の中の温度分布を移動することが不可能である場合がある。しかし、原料の供給の安定は、結晶成長にとって必要な要件である。そのため、炉と反応管の相対位置を変化させずに安定した結晶成長を実施するために用いる際の技術が必要である。そのため、化学気相輸送法によるZnO単結晶の安定した成長を実現するための本発明は、炉内の低酸素分圧部分において酸化亜鉛原料を加熱・蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させる、いわゆる化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成に用いる炉であって、主たる構成は、加熱用熱源、原料付近に原料の蒸発を促進する還元雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を調整しつつ導入するための機構、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を制御しつつ導入するための機構、雰囲気を保つためガスを封じるにたる気密性をもった反応管を主たる構成要素とし、原料の蒸発、結晶の析出の進行状況に合わせて、炉内の温度分布、又は、析出結晶、及び、蒸発原料の位置を変化させることによって、原料の蒸発量と結晶の析出量を制御することが可能となる機能を備えた、高温雰囲気炉の呈をなす、酸化亜鉛単結晶育成炉であって、特に、炉内の原料蒸発部位に、既に蒸発した分に見合う原料を供給するための原料供給機構を備え、さらに、再析出結晶化が起こる部位の温度を一定に保つため、育成した単結晶を移動し、結晶成長位置の温度を一定に保つ機能を有することを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成炉である。
【0040】
この原料供給のための機構、及び、育成した結晶を引き出すための機構は、反応管の両端に設置したフランジに蛇腹を設けて、位置調整機能を持たせる、又は、気密性をもった継ぎ手で接続することによって実現可能である。
【0041】
▲3▼酸化亜鉛単結晶の育成方法
本発明は、化学気相輸送法による単結晶育成方法に関する。その実施にあたっては、炉内の低酸素分圧部分において酸化亜鉛原料を加熱・蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させる、いわゆる化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成に用いる炉であって、主たる構成は、加熱用熱源、原料付近に原料の蒸発を促進する還元雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を調整しつつ導入するための機構、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を制御しつつ導入するための機構、雰囲気を保つためガスを封じるにたる気密性をもった反応管を主たる構成要素とし、原料の蒸発、結晶の析出の進行状況に合わせて、炉内の温度分布、又は、析出結晶、及び、蒸発原料の位置を変化させることによって、原料の蒸発量と結晶の析出量を制御することが可能となる機能を備えた、高温雰囲気炉の呈をなす、酸化亜鉛単結晶育成炉を用い、常に、原料の蒸発状況、及び、結晶の析出環境を恒常的に保つようにして育成を継続させ、効率よい結晶の成長、又は、炉の寸法にとらわれない大型の結晶の成長を実施する。
【0042】
また、特に、炉内の原料蒸発部位に、既に蒸発した分に見合う原料を供給するための原料供給機構を備え、さらに、再析出結晶化が起こる部位の温度を一定に保つため、育成した単結晶を移動し、結晶成長位置の温度を一定に保つ機能を有することを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成炉を用いる際には、原料供給機構、及び、結晶引き出し機構を利用して、単結晶の育成プロセスを制御する。
【0043】
すなわち、本発明は、炉内の低酸素分圧部分において酸化亜鉛原料を加熱・蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させる、いわゆる化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成に用いる炉であって、主たる構成は、加熱用熱源、原料付近に原料の蒸発を促進する還元雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を調整しつつ導入するための機構、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を制御しつつ導入するための機構、雰囲気を保つためガスを封じるにたる気密性をもった反応管を主たる構成要素とし、原料の蒸発、結晶の析出の進行状況に合わせて、炉内の温度分布、又は、析出結晶、及び、蒸発原料の位置を変化させることによって、原料の蒸発量と結晶の析出量を制御することが可能となる機能を備えた、高温雰囲気炉の呈をなす、酸化亜鉛単結晶育成炉であって、特に、炉内の原料蒸発部位に、既に蒸発した分に見合う原料を供給するための原料供給機構を備え、さらに、再析出結晶化が起こる部位の温度を一定に保つため、育成した単結晶を移動し、結晶成長位置の温度を一定に保つ機能を有することを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成炉を用いた単結晶育成法であって、育成した単結晶を移動し、結晶成長位置の温度を一定に保つ機能を有することを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成炉を用い、常に、温度と酸素分圧に関して一定条件下で原料の蒸発と結晶の析出が連続して行われることを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成法である。なお、試料の移動にあたっては、その移動方法は特に指定せず、人が一定時間ごとに手動で移動する方法と、機械的に自動送りする方法とがある。移動量、又は、移動を実施する時間間隔の最適値については、酸化のためのガスの導入量、蒸発のための還元ガスの導入量、さらに炉の寸法が関係した量となるため、育成実施の前に予備実験を行い、予めその最適値を求めてから育成を実施することが望ましい。
【0044】
図1の化学気相輸送法の概念図に示すとおり、原料は還元性ガスによって酸素分圧を低く抑えた部位に設置し、これを加熱することで蒸発させることが可能であり、また、結晶析出部位については、酸化性のガスを導入して、気化した酸化亜鉛成分を再析出させることで可能となる。ただし、使用する結晶育成炉の全体寸法、使用する加熱機構の加熱能力、によって最適な温度、ガス流量は異なってくるものであり、酸化亜鉛単結晶の製造にあたっては、個々の育成炉について、最も適した条件を探索する必要がある。その最適化にあたっては、電子式の温度調節計とガス流量を制御するためのマスフローコントローラーによって、温度とガス流量を制御しておくことが望ましい。また、酸化亜鉛を気化させるための温度、酸素分圧、逆に、亜鉛蒸気と酸素を反応させて酸化亜鉛を得るための温度、酸素分圧については、エリンガム図等の実験的、又は、理論的に与えられた熱力学データを参照することが望ましい。この熱力学データを元に、原料気化部、結晶析出部の温度と酸素分圧が適当なものとなるように調整する。
【0045】
また、本発明は、炉内の低酸素分圧部分において酸化亜鉛原料を加熱・蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させる、いわゆる化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成に用いる炉であって、主たる構成は、加熱用熱源、原料付近に原料の蒸発を促進する還元雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を調整しつつ導入するための機構、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を制御しつつ導入するための機構、雰囲気を保つためガスを封じるにたる気密性をもった反応管を主たる構成要素とし、原料の蒸発、結晶の析出の進行状況に合わせて、炉内の温度分布、又は、析出結晶、及び、蒸発原料の位置を変化させることによって、原料の蒸発量と結晶の析出量を制御することが可能となる機能を備えた、高温雰囲気炉の呈をなす、酸化亜鉛単結晶育成炉であって、特に、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を実現することを目的とした酸化のためのガスを導入する機能を持ち、かつ、その酸化ガスの吹き出し口の位置を原料蒸発、結晶析出の進行状況に合わせて調整する機能を備えた、酸化亜鉛単結晶育成炉であり、かつ、炉内の原料蒸発に伴い、炉体を移動すること、又は、炉内の温度分布を変化させることによって、常に原料の蒸発部位の温度を一定に保つことを特徴とする、酸化亜鉛単結晶育成炉を使用するZnO単結晶育成法であって、発熱体と反応管との相対位置を変化させ、また、発熱体と酸化性ガスの吹き出し口の相対位置を一定に保つことによって、常に、温度と酸素分圧に関して一定条件下で原料の蒸発と結晶の析出が連続して行われることを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成法である。
【0046】
先に示した育成法にあって、炉内の低酸素分圧部分において酸化亜鉛原料を加熱・蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させる、いわゆる化学気相輸送法による単結晶育成の際に、原料の蒸発量を制御するためには、原料付近の酸素分圧と温度を制御する必要がある。この際には、純水素、又は、水素を含むガスを用いることが簡便である。したがって、本発明は、炉内の低酸素分圧部分において酸化亜鉛原料を加熱・蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させる、いわゆる化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成に用いる炉であって、主たる構成は、加熱用熱源、原料付近に原料の蒸発を促進する還元雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を調整しつつ導入するための機構、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を制御しつつ導入するための機構、雰囲気を保つためガスを封じるにたる気密性をもった反応管を主たる構成要素とし、原料の蒸発、結晶の析出の進行状況に合わせて、炉内の温度分布、又は、析出結晶、及び、蒸発原料の位置を変化させることによって、原料の蒸発量と結晶の析出量を制御することが可能となる機能を備えた、高温雰囲気炉の呈をなす、酸化亜鉛単結晶育成炉を用いたZnO単結晶の育成法であって、特に、低酸素分圧中で酸化亜鉛原料を加熱し、蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させるプロセスによる酸化亜鉛単結晶育成法であって、特に原料を蒸発させ、気化した原料を析出部位まで輸送するために、純水素、又は、不活性ガスである希ガスと水素を含む混合ガスを炉内に導入することを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成法である。
【0047】
原料を蒸発させるための低酸素分圧を実現するための還元性ガスに、窒素ガスを含むガスを利用することが可能である。しかし、特に、窒素不純物による酸化亜鉛中の電子濃度の減少や正孔の形成を抑制した結晶が生成する場合があるため、窒素ガスを用いることなく、水素と希ガスの混合ガス、又は、純水素ガスを利用することが望ましい。
【0048】
また、本育成法では、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を生じされるためのガスの導入量を制御しつつガスを導入する。酸素分圧を高めるためのガスとして、窒素酸化物のように分解して酸素を発生させるようなガスを利用することも可能である。しかし、不純物の混入を避ける目的や、より効率よく酸素分圧を高めるという目的において、最も有効である、酸素ガスを導入する。そのため、本発明は酸化亜鉛単結晶育成法であって、低酸素分圧中で酸化亜鉛原料を加熱し、蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させるプロセスによる酸化亜鉛単結晶育成法であって、酸素、又は、希ガスと酸素を含む混合ガスを、再結晶化を補助するための酸化ガスとして導入することを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成法である。
【0049】
さらに、単結晶の析出効率を上げるための方法として、ZnO単結晶を種、ないし、基板として利用することが有効である。すなわち、本発明は、炉内の低酸素分圧部分において酸化亜鉛原料を加熱・蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させる、いわゆる化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成に用いる炉であって、主たる構成は、加熱用熱源、原料付近に原料の蒸発を促進する還元雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を調整しつつ導入するための機構、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を制御しつつ導入するための機構、雰囲気を保つためガスを封じるにたる気密性をもった反応管を主たる構成要素とし、原料の蒸発、結晶の析出の進行状況に合わせて、炉内の温度分布、又は、析出結晶、及び、蒸発原料の位置を変化させることによって、原料の蒸発量と結晶の析出量を制御することが可能となる機能を備えた、高温雰囲気炉の呈をなす、酸化亜鉛単結晶育成炉を用いたZnO単結晶育成法であって、核生成を制御するため、酸化亜鉛単結晶を種結晶として利用することを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成法である。
【0050】
▲4▼ 安定した育成のための附帯的設備
化学気相輸送法による単結晶成長にあっては、育成前の炉の昇温中にあっても、炉内に還元性ガスが導かれた場合には、原料の蒸発が起こりえる。これに対して、炉の昇温中にあっては、気化した原料が供給されても、結晶析出部位の温度、酸素分圧条件が結晶析出に適した条件に達しておらず、良好な結晶の析出がおこらない場合があり得る。こうした問題を解決するためには、結晶析出部位において、良好な結晶成長が実現される環境が整った後に、原料が供給される必要がある。そのため、予め、原料を炉内の十分低温な位置に配置しておき、炉の温度が十分に上昇してから、原料を高温部に移動して蒸発を開始させるという方法が有効である。これには、先に示した原料導入機構を利用するのが有効である。
【0051】
しかし、原料に与えられる急激な温度変化は、熱衝撃による原料の破損を起こしかねない。そのため、原料は予め、所定の場所に設置しつつ、原料の蒸発を抑止する方策は、良質結晶の効率的な成長において、有用である。そこで、本発明では、育成炉の温度が上昇した後に、還元性のガスを炉内に導入する機構を有した炉を利用する。
【0052】
すなわち、本発明は、炉内の低酸素分圧部分において酸化亜鉛原料を加熱・蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させる、いわゆる化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成に用いる炉であって、主たる構成は、加熱用熱源、原料付近に原料の蒸発を促進する還元雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を調整しつつ導入するための機構、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を制御しつつ導入するための機構、雰囲気を保つためガスを封じるにたる気密性をもった反応管を主たる構成要素とし、原料の蒸発、結晶の析出の進行状況に合わせて、炉内の温度分布、又は、析出結晶、及び、蒸発原料の位置を変化させることによって、原料の蒸発量と結晶の析出量を制御することが可能となる機能を備えた、高温雰囲気炉の呈をなす、酸化亜鉛単結晶育成炉であって、炉内に導入するガスの種類と量を炉の温度と連動して変化させることが可能なガス導入、温度制御機能を備えた、酸化亜鉛単結晶育成炉である。必ずしも、温度とガスが自動的に連動して変化する必要は無く、適宜、手動にて、その温度、ガス導入を制御して実施することが可能であるが、この双方が連動した制御を実現することで、自動制御が可能となる。
【0053】
また、上記の単結晶育成法にあっては、酸化性のガスとして酸素を含むガス、還元性のガスとして、水素を含むガスを利用した単結晶育成が実施される場合がある。この場合、炉内において酸素と水素が反応してその生成物として水蒸気が生成する。この水蒸気の結露によって、反応管の破損、又は、劣化が起こる場合があり得る。そのため、本発明は、炉内の低酸素分圧部分において酸化亜鉛原料を加熱・蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させる、いわゆる化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成に用いる炉であって、主たる構成は、加熱用熱源、原料付近に原料の蒸発を促進する還元雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を調整しつつ導入するための機構、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を制御しつつ導入するための機構、雰囲気を保つためガスを封じるにたる気密性をもった反応管を主たる構成要素とし、原料の蒸発、結晶の析出の進行状況に合わせて、炉内の温度分布、又は、析出結晶、及び、蒸発原料の位置を変化させることによって、原料の蒸発量と結晶の析出量を制御することが可能となる機能を備えた、高温雰囲気炉の呈をなす、酸化亜鉛単結晶育成炉であって、育成中に発生する液体成分を収集するための液ダメを持つことを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成炉である。
この液ダメの設置は必ずしも結晶の育成において本質的ではないが、この液ダメを設置することにより、炉の損傷を抑止できる可能性が有り、結晶成長の経済性を高める上で有用となる。
【0054】
【実施例】
以下に示す実施例は、あくまでも典型的、又は、例示的なものであって、本発明の解釈に何らの制限を加える物ではない。
実施例1
図4に、実施例において使用したZnO単結晶育成炉の概略図を示す。
加熱用熱源として、炭化珪素を主成分とする発熱体1を用い、白金熱電対2とそれに接続された温度コントローラ3及び出力設定器4からなる円筒胴5を有する炉体に、アルミナ質を主成分とする気密性をもった反応管6を挿入して、加熱炉として構成された炉を用いた。なお、この炉には、車輪7を付け、炉を移動することによって、反応管6に対する炉の相対位置を移動することで、炉内の温度分布を可変とする機構を設置した。
【0055】
この反応管の両端には、雰囲気を保つため、金属製で、気密性を保つためのOリングを含むフランジ8を接続した。このフランジの一方には、原料M付近に原料の蒸発を促進する還元雰囲気を生じさせるために導入するガスを導入するためのガス導入管口9、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を生じさせるために導入するガスを導入するためのガス導入管口10を設けた。それぞれのガス導入管口には、ガス管11A、ガス管11Bを接続し、ガス管の先には、その導入量を調整しつつ導入するための機構、すなわち、マスフローコントローラー12A、12B、さらにその先に、市販のガスボンベ13A、13Bを接続するための減圧弁14A、14Bを設置した。
【0056】
特に、酸化雰囲気を形成するためのガス導入管については、アルミナ質の緻密焼結体からなるガス導入管とし、ポリテトラフロロエチレンをガスケットとした摺り合わせによって、酸化雰囲気を形成するためのガスの吹き出し口を調整する機構とした。なお、本実施例による炉には、排出される水素ガスを燃焼させて爆発の危険性を防ぐための装置などが設置されているが、必ずしも結晶成長の本質において必要なものではないと判断されるため、それらについては、図4に記載されていない。
【0057】
上記の炉を利用してZnO単結晶の育成を実施した。予備実験の結果、炉の最高温度を設置した熱電対の読みとり値(未校正)で、1000℃、還元雰囲気を実現するためのガスとして体積比で水素とアルゴンを各50%とした混合ガスを用い、また、酸化雰囲気を実現するための雰囲気として純酸素とすることが、本実施例で用いた炉において比較的良好な育成条件が達成されることが判明したため、同条件によって育成を実施した。
【0058】
また、ガス導入量は、本実施例で使用したマスフローコントローラーの読みとり値(未校正)で、水素とアルゴンの混合ガスについては毎分100立方センチ、酸素については、毎分20立方センチの読みとり値となるようにして単結晶を育成することで、比較的良好な育成結果が得られることが予備実験によって示された。こうした予備実験により決定された条件で育成を開始し、育成中に炉に付けられた車輪を利用して炉体を移動した。また、図4の摺り合わせによって、酸化ガスの吹き出し口の位置を結晶成長中に移動した。これによって、先に示した概略図3に示す結晶育成プロセスが実現し、炉内に設置した原料の全量を蒸発させることが可能となり、また、長さ1センチを超える大型のZnO単結晶が得られた。
【0059】
比較例1
上記図4の炉を利用してZnO単結晶の育成を実施した。予備実験により決定された位置に原料、及び、基板を設置して、育成を開始し、育成中に炉の位置は固定したままとした。長時間の育成の後にも、炉内の低温部にあたる部分に設置された原料は、蒸発することなく取り残され、原料の供給量が少ないことから、厚さ約2ミリほどの単結晶が得られた。
【0060】
【発明の効果】
酸化亜鉛は、それ自身が励起子光学材料として利用され、また、光触媒、紫外線遮断窓、として利用される。そのため、本発明が提供する酸化亜鉛単結晶育成炉と酸化亜鉛単結晶育成法を利用することにより、こうした光・電子素子用の素材としての酸化亜鉛単結晶の安全、かつ、効率の良い成長が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成の典型的な炉の構成を示す概念図。
【図2】化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成安定化のための方法を示す基本概念図。
【図3】化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成安定化のための方法を示す基本概念図。
【図4】本発明を実施したZnO単結晶育成炉の構成を示す概略図。

Claims (10)

  1. 炉内の低酸素分圧部分において酸化亜鉛原料を加熱・蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させる、いわゆる化学気相輸送法による酸化亜鉛単結晶育成に用いる炉であって、主たる構成は、加熱用熱源、原料付近に原料の蒸発を促進する還元雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を調整しつつ導入するための機構、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を生じさせるために導入するガスをその導入量を制御しつつを導入するための機構、雰囲気を保つためガスを封じるにたる気密性をもった反応管とし、原料の蒸発、結晶の析出の進行状況に合わせて、炉内の温度分布、又は、析出結晶、及び、蒸発原料の位置を変化させることによって、原料の蒸発量と結晶の析出量を制御することが可能となる機能を備えた、高温雰囲気炉の呈をなす、酸化亜鉛単結晶育成炉。
  2. 請求項1に記載した酸化亜鉛単結晶育成炉であって、結晶析出部位付近に結晶の再析出を促進させるための酸化雰囲気を実現することを目的とした酸化のためのガスを導入する機能を持ち、かつ、その酸化ガスの吹き出し口の位置を原料蒸発、結晶析出の進行状況に合わせて調整する機能を備えた、酸化亜鉛単結晶育成炉であり、かつ、炉内の原料蒸発に伴い、炉体を移動すること、又は、炉内の温度分布を変化させることによって、常に原料の蒸発部位の温度を一定に保つことを特徴とする、酸化亜鉛単結晶育成炉。
  3. 請求項1に記載した酸化亜鉛単結晶育成炉であって、炉内の原料蒸発部位に、既に蒸発した分に見合う原料を供給するための原料供給機構を備え、さらに、再析出結晶化が起こる部位の温度を一定に保つため、育成した単結晶を移動し、結晶成長位置の温度を一定に保つ機能を有することを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成炉。
  4. 請求項2に記載した酸化亜鉛単結晶育成炉を用いた、低酸素分圧中で酸化亜鉛原料を加熱し、蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させるプロセスによる酸化亜鉛単結晶育成法であって、発熱体と反応管との相対位置を変化させ、また、発熱体と酸化性ガスの吹き出し口の相対位置を一定に保つことによって、常に、温度と酸素分圧に関して一定条件下で原料の蒸発と結晶の析出が連続して行われることを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成法。
  5. 請求項3に記載した酸化亜鉛単結晶育成炉を用いた、低酸素分圧中で酸化亜鉛原料を加熱し、蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させるプロセスによる酸化亜鉛単結晶育成法であって、炉内の原料蒸発部位に、既に蒸発した分に見合う原料を供給するための原料供給機構を備え、さらに、再析出結晶化が起こる部位の温度を一定に保つため、育成した単結晶を移動し、結晶成長位置の温度を一定に保つ機能を有することを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成炉を用い、常に、温度と酸素分圧に関して一定条件下で原料の蒸発と結晶の析出が連続して行われることを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成法。
  6. 請求項1〜3記載のいずれかに記載した酸化亜鉛単結晶育成炉を用いた上記請求項4又は5記載の酸化亜鉛単結晶育成法であって、低酸素分圧中で酸化亜鉛原料を加熱し、蒸発させ、気化した酸化亜鉛成分を気流にのせて炉内の結晶析出部位まで輸送し、再析出、結晶化させるプロセスによる酸化亜鉛単結晶育成法であって、原料を蒸発させ、気化した原料を析出部位まで輸送するために、純水素、又は、不活性ガスである希ガスと水素を含む混合ガスを炉内に導入することを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成法。
  7. 上記請求項1〜3記載のいずれかに記載した酸化亜鉛単結晶育成炉を用いた上記請求項4又は5記載の酸化亜鉛単結晶育成法であって、酸素、又は、希ガスと酸素を含む混合ガスを、再結晶化を補助するための酸化ガスとして導入することを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成法。
  8. 請求項4〜7のいずれかに記載した酸化亜鉛単結晶育成法であって、核生成を制御するため、酸化亜鉛単結晶を種結晶として利用することを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成法。
  9. 請求項1〜3のいずれかに記載した酸化亜鉛結晶育成炉であって、炉内に導入するガスの種類と量を炉の温度と連動して変化させることが可能なガス導入、温度制御機能を備えた、ことを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成炉。
  10. 上記請求項1〜3のいずれかに記載した酸化亜鉛単結晶育成炉であって、育成中に発生する液体成分を収集するための液ダメを持つことを特徴とする酸化亜鉛単結晶育成炉。
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