JP3836647B2 - 多孔質材、それを用いた検出装置および検出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体試料(尿、血清などの液体)内における被検物質の存否を、多孔質材の孔径の大小を利用して検出する多孔質材、それを用いた検出装置および検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液体中に含まれる目的物質を、孔径が均一な多孔質材を用いて、孔径の大きさに対応させてろ過分離する技術は、従来から存在する。このような技術は、大量の目的物質の分離、濃縮などには有用であるが、液体試料の中などに存在する少量の物質の有無を検出する場合には不向きである。
【0003】
また、液体試料などの中に存在する少量の物質の有無を検出する手法として、異なる孔径を有する複数の多孔質材を、垂直方向に重ね合わせて、上下方向に液体試料を通過させ目的物質を捕捉、検出する技術もある。しかし、このような技術では、検出面積が広くなり、多くの試料が必要になるだけでなく、上流側の多孔質材が観察を邪魔するため、これを取り除いて観察する必要があり、その手間が発生する。なお、この技術は、重力による液体の移動を利用している。
【0004】
また、液体試料などの中に存在する少量の物質の有無を検出するには、免疫クロマト法がある。これは、液体試料をクロマト的に移動させ、その途中で分離捕捉を行い、被検物質が捕捉されたか否かを観察することが非常に簡単で有用な手段である。この手法による従来の検出装置では、被検物質に対する特異反応成分を、多孔質材(メンブレン)に、移動できないように結合(固定)させていた。そして、被検物質を、多孔質材に固定された特異反応成分と結合させることにより、多孔質材に被検物質を捕捉し、検出を行っていた。
【0005】
ところが、このような構成によると、多孔質材に結合できる特異反応成分の量(特異反応成分の多孔質材への吸着量)には限界があるので、感度が制限されたり、検出量にばらつきが発生するという問題点があった。
【0006】
また、この種の検出法に用いられる多孔質材は、クロマト的な流動を一定にすることのみに着目して構成されており、必然的に、多孔質材の孔径は一様となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上の事情に鑑みて、本発明は、少量の物質の検出に適し、上流側の多孔質材を取り除く必要がなく、しかも、高感度で検出量のばらつきの少ない多孔質材、これを用いた検出装置および検出方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の多孔質材では、下流部におけるクロマト的流れの途中に、液体試料中に含まれる被検物質を、直接的または間接的に捕捉する捕捉部を形成し、多孔質材において捕捉部の上流側の孔径と捕捉部の下流側の孔径とを捕捉部の孔径よりも大きくした。
【0009】
この構成により、被検物質の検出感度を向上できるとともに、検出量のばらつきを少なくできる。
【0010】
【発明の実施の形態】
請求項1記載の多孔質材では、下流部におけるクロマト的流れの途中に、液体試料中に含まれる被検物質を、直接的または間接的に捕捉する捕捉部を形成し、多孔質材において捕捉部の上流側の孔径と捕捉部の下流側の孔径とを捕捉部の孔径よりも大きくした。
【0011】
このように、捕捉部の孔径を、他の部分の孔径より小さくしているため、液体のクロマト的移動は一定でなくなる。即ち、上流部をクロマト的に移動してきた物質のうち、捕捉部の孔径より大きな物質は、捕捉部を通過できず、捕捉される。また、孔径よりも小さな物質は、捕捉部を通過する。これにより、被検物質または被検物質に所定粒子を結合させたものは、捕捉部に捕捉される。
【0012】
即ち、従来の検出装置のように、多孔質材に固定した特異反応成分に依存しないので、特異反応成分の結合量の制限を受けることがなく、検出感度の向上を図ることができるとともに、検出量のばらつきを少なくできる。
【0013】
請求項2記載の多孔質材では、捕捉部は、下流部の特定箇所に、粒子を埋め込むことにより形成される。粒子を埋め込むことにより、捕捉部の孔径を局所的に小さくできる。
【0014】
請求項3記載の多孔質材では、捕捉部は、下流部の特定箇所を溶剤処理することにより形成される。溶剤処理することにより、捕捉部の孔径を局所的に小さくできる。
【0015】
請求項4記載の多孔質材では、上流部は第一の部材からなり、下流部は、第二の部材からなり、第一の部材は、第二の部材よりも孔径が大きく、第一の部材は、第二の部材に接合され、この接合箇所が、捕捉部となる。第一、第二の部材を接合することにより、捕捉部の孔径を局所的に小さくできる。
【0016】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における検出装置の側面図、図2は、同平面図である。図1および図2に示すように、実施の形態1における検出装置は、液体試料添加部1、粒子塗布パッド3およびメンブレン5からなる。メンブレン5は、上流部7および下流部9からなる。メンブレン5の下流部9には、液体試料に含まれる被検物質を捕捉する捕捉部11が設けられる。
【0017】
液体試料添加部1は、多孔質材からなる。粒子塗布パッド3は、多孔質材からなり、例えば、ガラス繊維コンジュゲートパッドを用いることができる。粒子塗布パッド3には、標識物質および検出に影響しない粒子が塗布されている。後で詳述するが、標識物質および検出に影響しない粒子は、液体試料に含まれる被検物質と結合して、反応生成物となる。粒子塗布パッド3においては、液体試料、標識物質、検出に影響しない粒子および反応生成物の移動が可能である。標識物質は、着色されており、粒子塗布パッド3、メンブレン5および捕捉部11を容易に通過するサイズとなっている。このような条件の下で、標識物質としては、例えば、粒径が0.02μm〜0.5μmの金コロイドまたは着色ラテックスを用いることができる。検出に影響しない粒子は、粒子塗布パッド3およびメンブレン5(捕捉部11を除く)は通過するが、捕捉部11は、通過できないサイズである。このような条件の下で、検出に影響しない粒子としては、例えば、粒径が0.5μm〜5μmの白ラテックスを用いることができる。
【0018】
メンブレン5(捕捉部11除く)の孔径(実質的ポアサイズ)は、液体試料、標識物質、検出に影響しない粒子および反応生成物の移動を可能にするサイズである。このような条件の下で、メンブレン5としては、孔径が、検出に影響しない粒子の粒径以上(1μm〜20μmなど)のものを用いることができる。なお、メンブレン5は、多孔質材の一つの例であり、その他の多孔質材を用いることができる。
【0019】
メンブレン5の特定箇所に、粒子を塗布し、固定することで(粒子を埋め込むことで)、メンブレン5の特定箇所の孔径を、特定箇所を除くメンブレン5の孔径より小さくして、この特定箇所を捕捉部11としている。このような手法で、捕捉部11の孔径は、液体試料および標識物質は通過できるが、検出に影響しない粒子および反応生成物は通過できないサイズとなっている。このような条件の下で、メンブレン5に塗布、固定する粒子としては、例えば、粒径が0.5μm〜3μmの白ラテックスを用いることができ、粒径が0.5μm〜5μmの粒子を捕捉できるようにする。
【0020】
次に、検出方法について説明する。まず、液体試料を液体試料添加部1に添加する。そして、液体試料は、液体試料添加部1を矢印A方向にクロマト的に移動し、粒子塗布パッド3へ流入する。粒子塗布パッド3において、液体試料は、標識物質および検出に影響しない粒子とともに矢印B方向にクロマト的に移動する。この時、液体試料に被検物質が存在していれば、標識物質および検出に影響しない粒子は、被検物質と反応し(結合し)、反応生成物となる。
【0021】
図3は、このようにして生成された反応生成物の模式図である。図3に示すように、被検物質13は、標識物質15および検出に影響しない粒子17と結合し、反応生成物となっている。
【0022】
液体試料に被検物質13が存在している場合において、粒子塗布パッド3からメンブレン5へ流入してきた反応生成物は、矢印C方向にクロマト的に移動し、捕捉部11に捕捉される。なぜなら、捕捉部11の孔径は、反応生成物に含まれる検出に影響しない粒子の粒径より小さいからである。そして、反応生成物は、標識物質15により着色されているので、反応生成物が捕捉されたこと、すなわち、液体試料に被検物質13が存在することを肉眼で確認できる。なお、液体試料、反応生成物とならない標識物質15および検出に影響しない粒子17も、メンブレン5においてクロマト的に移動する。
【0023】
一方、液体試料に被検物質13が存在していない場合は、粒子塗布パッド3からメンブレン5へ流入してきた液体試料、標識物質15および検出に影響しない粒子17は、矢印C方向にクロマト的に移動する。そして、検出に影響しない粒子17は、捕捉部11に捕捉される。なぜなら、検出に影響しない粒子17の粒径は、捕捉部11の孔径より大きいからである。この場合、検出に影響しない粒子17は無色であるため、捕捉部11にサインは現れない。液体試料および標識物質15は、捕捉部11を通過し流れ去る。なぜなら、標識物質15の粒径は、捕捉部11の孔径より小さいからである。
【0024】
以上のように、本発明の実施の形態1においては、メンブレン5(捕捉部11を除く)の孔径を捕捉部11の孔径より大きくしている。すなわち、メンブレン5の孔径を反応生成物が通過できる大きさにし、メンブレン5の特定箇所に粒子を固定することで、捕捉部11を設け、捕捉部11の孔径を、標識物15の粒径より大きくするとともに、反応生成物のサイズより小さくしている。このような孔径の小さい捕捉部11を設けることによって、被検物質13を含む反応生成物を捕捉している。したがって、従来の検出装置のように、特異反応成分に依存しないから、特異反応成分の結合量の制限を受けることがなく、検出感度の向上を図ることができるとともに、検出量のばらつきを少なくできる。
【0025】
また、メンブレン5の特定箇所に捕捉部11を設けているため、捕捉部11の面積を小さくすることができ、被検物質が少量であるときも、明瞭なサインが得られる。捕捉部11は、外部に露呈しているから、別段メンブレンを剥がす必要はなく、検出結果を外部から容易に観察できる。さらに、被検物質13、標識物質15および検出に影響しない粒子17を結合させた反応生成物を捕捉するので、被検物質が、無色で、捕捉部11の孔径より小さい場合でも、検出が可能である。
【0026】
次に、実施の形態1における検出装置を用いた第一の実験の結果を示す。なお、この実験は、色彩および粒径の異なる二種類の着色粒子の混合溶液を用いて、実施の形態1における検出装置が、上述した機能を果たすかどうかを確認するためのものであり、実際に、検出装置の検出の対象となる液体試料を用いているわけではない。実際に、検出装置の検出の対象となる液体試料を用いた実験の結果は後述する。
【0027】
少なくとも5μm程度の粒子をクロマト的に移動させることができるニトロセルロースメンブレン(メンブレン5に相当し、商標名がSXHFであるミリポア社のニトロセルロースメンブレンを使用)に、15%(10〜20%が可能)のポリスチレン性白ラテックス(粒径2.2μm(0.5μm〜5μmが可能))溶液を、1cm当たり約1.3μlの量でライン状に塗布、乾燥し吸着固定させ、ライン幅約1mmで、メンブレン5の実質的孔径を小さくして、捕捉部11を形成した。このニトロセルロースメンブレンを、粒子などの吸着を防ぐため、0.5%のカゼインを含む溶液に30分程度漬け込み、処理した。これを、乾燥後、約5mm×35mmに切断した。
【0028】
このような処理をしたニトロセルロースメンブレンにおいて、0.6μmの粒径を持つ着色粒子(ポリスチレン性ブルーラテックス)と、0.04μm程度の粒径を持つ金コロイド粒子との混合溶液を、クロマト的に移動させた。混合溶液を十分に展開させた後、ポリスチレン製白ラテックスを固定した部分(捕捉部11に相当)を観察したところ、着色粒子(ポリスチレン性ブルーラテックス)のみが捕捉されて、青いラインが現れていた。一方、金コロイド粒子は、捕捉されずに流れたため、金コロイド由来の赤いラインは形成されなかった。以上の結果、0.04μm程度の粒径を持つ金コロイド粒子は捕捉されず、0.6μmの粒径を持つ着色粒子は捕捉され、容易に検出できることが確認された。
【0029】
次に、実際に、検出装置の検出の対象となる液体試料を用いた第二の実験の結果を示す。粒径が0.6μm(0.5μm〜5μmが可能)のポリスチレン製白ラテックス(検出に影響しない粒子17に相当)に抗βーhCG抗体を結合させ、粒径が0.04μm(0.02μm〜0.5μmが可能)の金コロイド粒子(標識物質15に相当)に抗hCG抗体を結合させた。結合の要領は、常法にしたがった。
【0030】
次に、少なくとも10μm程度の粒子をクロマト的に移動させることができるガラス繊維(粒子塗布パッド3に相当)を、5mm×10mmに切断して、上記の抗βーhCG抗体結合ポリスチレン製白ラテックスと、抗hCG抗体結合金コロイド粒子とを適量混合し、塗布して乾燥させた。このガラス繊維(粒子塗布パッド3に相当)と、上述した第一の実験と同じ方法で得られたニトロセルロースメンブレン(メンブレン5に相当)とを3mm程度重なるように接触させ、テープで貼り合わせて、5mm幅のストリップとした。
【0031】
80μlのhCGを含む陽性試料を、ガラス繊維(粒子塗布パッド3に相当)下端から吸収させ、5分後に、捕捉部11において金コロイド由来の発色を観察した。hCGを含む試料では、50mlU/ml〜1000000mlU/mlの範囲で発色が現れ、よって、陽性と判定された。一方、80μlのhCGを含まない陰性試料をガラス繊維(粒子塗布パッド3に相当)下端から吸収させたが、捕捉部11に発色は観察できなかった。hCGを含まない試料については、陰性と判定された。
【0032】
次に実施の形態1における検出装置の第1変形例について説明する。実施の形態1における検出装置では、被検物質13が、捕捉部11の孔径より小さく、かつ、無色の場合を対象としたが、第1変形例では、被検物質が、捕捉部11の孔径より小さく、かつ、有色の場合を対象とする。
【0033】
第1変形例が、上述の実施の形態1における検出装置と異なるのは、粒子塗布パッド3だけである。第1変形例では、粒子塗布パッド3には、検出に影響しない粒子17だけが、塗布されている。すなわち、第1変形例では、実施の形態1における検出装置と比較して、標識物質15が存在しないだけで、その他の構成は同じであり、粒子塗布パッド3、検出に影響しない粒子17、メンブレン5および捕捉部11の条件も同じである。
【0034】
次に、第1変形例における検出方法について、主に、上述した検出方法と比較して異なる部分を説明する。なお、第1変形例における矢印B、C方向については、図1と同様であるので、図1を参照されたい。
【0035】
粒子塗布パッド3において、液体試料は、検出に影響しない粒子とともに矢印B方向にクロマト的に移動する。この時、液体試料に被検物質が存在していれば、検出に影響しない粒子は、被検物質と結合し、反応生成物となる。
【0036】
図4は、このようにして生成された反応生成物の模式図である。図4に示すように、被検物質18は、検出に影響しない粒子17と結合し、反応生成物となっている。
【0037】
液体試料に被検物質18が存在している場合においては、粒子塗布パッド3からメンブレン5へ流入してきた反応生成物は、矢印C方向にクロマト的に移動し、捕捉部11に捕捉される。なぜなら、捕捉部11の孔径は、反応生成物に含まれる検出に影響しない粒子の粒径より小さいからである。そして、被検物質18は、有色であるため、反応生成物が捕捉されたこと、すなわち、液体試料に被検物質18が存在することを肉眼で確認できる。
【0038】
以上のような第1変形例は、捕捉部11の孔径を他の部分の孔径より小さくすることで、被検物質を検出するため、実施の形態1における検出装置と同様の効果を奏する。また、粒径が捕捉部11の孔径より大きい粒子17と、被検物質とを結合させた反応生成物を捕捉するので、被検物質の粒径が、捕捉部11の孔径より小さい場合でも、被検物質の検出が可能となる。
【0039】
次に実施の形態1における検出装置の第2変形例について説明する。実施の形態1における検出装置では、被検物質13が、捕捉部11の孔径より小さく、かつ、無色の場合を対象としたが、第2変形例では、被検物質が、捕捉部11の孔径より大きく、かつ、有色の場合を対象とする。
【0040】
図5は、実施の形態1における検出装置の第2変形例の平面図である。なお、図1と同一の部分については、同一の符号を付している。図5に示すように、第2変形例は、メンブレン5により構成され、メンブレン5は、上流部7および下流部9を有する。メンブレン5の下流部9には、捕捉部11が設けられている。
【0041】
第2変形例が、上述の実施の形態1における検出装置と異なるのは、粒子塗布パッド3および液体試料添加部1を有しないことと、捕捉部11の孔径を、被検物質の粒径より小さくしてあることである。なお、第2変形例においても、図1に示すような液体試料添加部1を設けることもできる。粒子塗布パッド3が不要なのは、被検物質の粒径が、捕捉部11の孔径をより大きく、かつ、被検物質が有色であるため、捕捉部11で被検物質を捕捉でき、被検物質が捕捉されたことを肉眼で確認できるからである。その他の構成については、第2変形例は、実施の形態1における検出装置と同様である。第2変形例における検出方法についても、反応生成物ではなく被検物質が、そのまま捕捉部11に捕捉される点を除けば、上述した実施の形態1における検出方法と同様である。
【0042】
なお、上述した第2変形例においては、被検物質は、捕捉部11に捕捉された時、肉眼で直接観察できる有色物質であったが、そうでない場合は、前もって処理するなどして、着色・染色したり、蛍光や発光などの手段によるセンシングなどで検出することもできる。
【0043】
以上のような第2変形例は、捕捉部11の孔径を他の部分の孔径より小さくすることで、被検物質を検出するため、実施の形態1における検出装置と同様の効果を奏する。
【0044】
次に実施の形態1における検出装置の第3変形例について説明する。実施の形態1における検出装置では、粒子塗布パッド3を設け、これに標識物質15および検出に影響しない粒子17を塗布し、粒子塗布パッド3におけるクロマト的流れの中で、被検物質13と、標識物質15と、検出に影響しない粒子17とを反応させ、反応生成物を作っていたが、第3変形例では、粒子塗布パッド3を設けずに、検出装置の外部で、反応生成物を作り、これを検出装置に添加するものである。この第3変形例は、実施の形態1における検出装置と同様に、被検物質が、捕捉部の孔径より小さく、かつ、無色の場合を対象とする。
【0045】
図6は、実施の形態1における検出装置の第3変形例の平面図である。なお、図1と同一の部分については、同一の符号を付している。図6に示すように、第3変形例は、メンブレン5により構成され、メンブレン5は、上流部7および下流部9を有する。メンブレン5の下流部9には、捕捉部11が設けられている。メンブレン5および捕捉部11の構成および条件は、図1に示した実施の形態1における検出装置のメンブレン5および捕捉部11と同じである。また、標識物質および検出に影響しない粒子の条件も実施の形態1における検出装置の場合と同じである。なお、図1に示したように、液体試料添加部1を、メンブレン5の上流部7に接続することもできる。
【0046】
次に、第3変形例における検出方法について、主に、実施の形態1における検出装置の場合と比較して異なる部分を説明する。図6に示すように、まず、試験管などの容器20において、液体試料19と、検出に影響しない粒子17と、標識物質15とを混合する。この時、液体試料に被検物質が存在すれば、図3に示すような反応生成物が作られる。このように、被検物質が無色の時は、化学反応や免疫反応などで、標識物質15と結合させたり、発色させたりする。一方、液体試料に被検物質が存在しなければ、反応生成物は作られない。このような容器20において作った混合液を、メンブレン5の上流部7に添加する。そして、メンブレン5において、この混合液は、クロマト的に矢印C方向に移動する。
【0047】
液体試料に被検物質が存在すれば、反応生成物に含まれる検出に影響しない粒子の粒径は、捕捉部11の孔径より大きいので、反応生成物が、捕捉部11に捕捉され、サインがあらわれる。液体試料に被検物質が存在しなければ、標識物質15は、捕捉部11を通過し、無色の検出に影響しない粒子17だけが、捕捉部11に捕捉される。なお、混合液が、メンブレン5の上流部7に添加された後の検出機構は、実施の形態1における検出装置において、液体試料、反応生成物、標識物質および検出に影響しない粒子が、メンブレン5の上流部7に流入した後の検出機構と同じである。
【0048】
以上のような第3変形例は、捕捉部11の孔径を他の部分の孔径より小さくすることで、被検物質を検出するため、実施の形態1における検出装置と同様の効果を奏する。
【0049】
次に実施の形態1における検出装置の第4変形例について説明する。上述の第3変形例は、実施の形態1における検出装置と同様に、被検物質が、捕捉部の孔径より小さく、かつ、無色の場合を対象としたが、第4変形例は、被検物質が、捕捉部の孔径より小さく、かつ、有色の場合を対象とする。
【0050】
第4変形例が、第3変形例と異なる点について説明する。第3変形例では、図6に示すように、試験管などの容器20において、液体試料19と、検出に影響しない粒子17と、標識物質15とを混合するのに対して、第4変形例では、試験管などの容器において、液体試料と、検出に影響しない粒子とを混合する点で、両者は異なる。したがって、第4変形例では、液体試料に被検物質が存在すれば、図4に示すような反応生成物が作られる。その他の構成や検出方法については、第3変形例と同じである。
【0051】
以上のような第4変形例は、メンブレンの上流部に設けられた捕捉部の孔径を他の部分の孔径より小さくすることで、被検物質を検出するため、実施の形態1における検出装置と同様の効果を奏する。また、被検物質および検出に影響しない粒子を結合させた反応生成物を捕捉するので、被検物質が、捕捉部11の孔径より小さい場合でも、検出が可能である。
【0052】
次に、実施の形態1における検出装置、第1変形例、第2変形例、第3変形例および第4変形例が、具体的にどのように利用されるかを、例を挙げながら説明する。
【0053】
まず、第2変形例(被検物質の粒径が、捕捉部11の孔径より大きく、かつ、有色の場合が対象)の利用性について説明する。上述の第1および第2の実験は、第2変形例にも同様に適用できる。ただし、第2変形例には、粒子塗布パッド3に相当するものはない。上述の第1および第2の実験におけるニトロセルロースメンブレンの処理条件、ならびに、上述の第1および第2の実験で用いたニトロセルロースメンブレンおよびポリスチレン製白ラテックスは、一つの例に過ぎず、これらの素材や処理条件を変化せることにより、捕捉部11で捕捉できる物質のサイズおよび、捕捉せず通過できる物質のサイズは、ある程度自由に設定できる。
【0054】
したがって、液体試料に、不溶性の粒子(例えば、植物の胞子、粉体顔料など)、血球成分、ココアまたは小麦粉などが含まれている場合、これらのサイズに応じて、液体試料添加部1、粒子塗布パッド3およびメンブレン5の素材、ならびに捕捉部11の孔径を設定すれば、容易に捕捉部11において、被検物質(目的物質)が、捕捉・分離され、その存在が明らかになる。また、少量の被検物質(目的物質)を、捕捉部11に濃縮させることも可能である。さらに、捕捉部11には、明らかなサイン(捕捉部11の形状によるが、例えば、ライン状やスポット状のサイン)が現れるため、判定が非常に容易である。また、被検物質が、直接肉眼で観察できない場合は、前もって処理したり、染色したりすることもできる。
【0055】
次に、第1変形例および第4変形例(被検物質の粒径が、捕捉部11の孔径より小さく、かつ、有色の場合が対象)の利用性について説明する。例えば、蛋白などの生体成分を検出する際に、生体成分を、粒径が捕捉部11の孔径より大きい粒子と特異的に反応させることにより、捕捉部11において生体成分を分離・濃縮することが可能となる。
【0056】
なお、上述の第1および第2の実験は、第1変形例および第4変形例にも同様に適用できる。ただし、第4変形例には、粒子塗布パッド3に相当するものはない。上述の第1および第2の実験におけるニトロセルロースメンブレンの処理条件、ならびに、上述の第1および第2の実験で用いたニトロセルロースメンブレン、ガラス繊維およびポリスチレン製白ラテックスは、一つの例に過ぎず、これらの素材や処理条件を変化せることにより、捕捉部11で捕捉できる物質のサイズおよび、捕捉せず通過できる物質のサイズは、ある程度自由に設定できる。
【0057】
次に、実施の形態1における検出装置および第3変形例(被検物質の粒径が、捕捉部11の孔径より小さく、かつ、無色の場合が対象)の利用性について説明する。例えば、蛋白などの生体成分を検出する際に、生体成分を、粒径が捕捉部11の孔径より大きい粒子および標識物質(色素や着色粒子、酵素など)と特異的に反応させることにより、生体成分の検出が可能となる。このように、生物化学的または免疫的な検出が容易に実施できる。
【0058】
なお、上述の第1および第2の実験は、第3変形例にも同様に適用できる。ただし、第3変形例には、粒子塗布パッド3に相当するものはない。上述の第1および第2の実験におけるニトロセルロースメンブレンの処理条件、ならびに、上述の第1および第2の実験で用いたニトロセルロースメンブレン、ポリスチレン製白ラテックスおよび金コロイド粒子は、一つの例に過ぎず、これらの素材や処理条件を変化せることにより、捕捉部11で捕捉できる物質のサイズおよび、捕捉せず通過できる物質のサイズは、ある程度自由に設定できる。
【0059】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2における検出装置の側面図である。なお、図1と同一の部分については同一の符号を付している。図7に示すように、実施の形態2における検出装置は、液体試料添加部1、粒子塗布パッド3およびメンブレン5からなる。メンブレン5は、上流部7および下流部9からなる。メンブレン5の下流部9には、液体試料に含まれる被検物質を捕捉する捕捉部21が設けられる。実施の形態2における検出装置が、実施の形態1における検出装置と異なるのは、捕捉部21だけである。したがって、液体試料添加部1、粒子塗布パッド3、メンブレン5(捕捉部21を除く)、標識物質および検出に影響しない粒子については、実施の形態1における検出装置の場合と同じである。また、検出方法についても、実施の形態1における検出装置の場合と同じである。したがって、実施の形態1における検出装置と異なる部分である捕捉部21について詳しく説明する。
【0060】
メンブレン5の特定箇所を有機溶剤(メタノール、アセトンなど)で処理することで、メンブレン5の特定箇所の孔径を、特定箇所を除くメンブレン5の孔径より小さくして、この特定箇所を捕捉部21とする。このような手法で、捕捉部21の孔径は、液体試料および標識物質は通過できるが、検出に影響しない粒子および反応生成物は通過できないサイズとなっている。このような条件を満足するように、有機溶剤としては、例えば、濃度30〜50%のアセトン(特に、濃度40〜50%のアセトン)または濃度90〜95%のメタノールなどを用いることができる。
【0061】
以上のように、本発明の実施の形態2においては、メンブレン5(捕捉部21を除く)の孔径を捕捉部21の孔径より大きくしている。すなわち、メンブレン5の孔径を反応生成物が通過できる大きさにし、メンブレン5の特定箇所を溶剤処理することで、捕捉部21を設け、捕捉部21の孔径を、標識物の孔径より大きくするとともに、反応生成物のサイズより小さくしている。このような孔径の小さい捕捉部21を設けることによって、被検物質を含む反応生成物を捕捉している。したがって、従来の検出装置のように、被検物質を捕捉する手段として、メンブレンに、特異反応成分を移動できないように結合させておらず、特異反応成分の結合量の制限を受けることがないので、検出感度の向上を図ることができるとともに、検出量のばらつきを少なくできる。
【0062】
また、メンブレン5の特定箇所に捕捉部21を設けているため、捕捉部21の面積を小さくすることができ、被検物質が少量であるときも、明瞭なサインが得られる。捕捉部21は、外部に露呈しているから、別段メンブレンを剥がす必要はなく、検出結果を外部から容易に観察できる。さらに、被検物質、標識物質および検出に影響しない粒子を結合させた反応生成物を捕捉するので、被検物質が、無色で、捕捉部21の孔径より小さい場合でも、検出が可能である。
【0063】
次に、実施の形態2における検出装置を用いた第三の実験の結果を示す。なお、この実験は、色彩および粒径の異なる二種類の着色粒子の混合溶液を用いて、実施の形態2における検出装置が、上述した機能を果たすかどうかを確認するためのものであり、実際に、検出装置の検出の対象となる液体試料を用いているわけではない。実際に、検出装置の検出の対象となる液体試料を用いた実験の結果は後述する。
【0064】
少なくとも5μm程度の粒子をクロマト的に移動させることができるニトロセルロースメンブレン(メンブレン5に相当し、商標名がSRHFであるミリポア社のニトロセルロースメンブレンを使用)に、溶剤であるアセトン45%水溶液(アセトン30〜50%水溶液、または、メタノール90〜95%水溶液が可能)を、1cm当たり約1.3μlの量でライン状に塗布し、ライン幅約1mmで、メンブレン5の実質的孔径を小さくして、捕捉部21を形成した。このニトロセルロースメンブレンを、粒子の吸着を防ぐため、0.5%のカゼインを含む溶液に30分程度漬け込み、処理した。これを、乾燥後、約5mm×35mmに切断した。
【0065】
このような処理をしたニトロセルロースメンブレンにおいて、0.6μmの粒径を持つ着色粒子(ポリスチレン性ブルーラテックス)と、0.04μm程度の粒径を持つ金コロイド粒子との混合溶液を、クロマト的に移動させた。混合溶液を十分に展開させた後、溶剤処理した部分(捕捉部21に相当)を観察したところ、着色粒子(ポリスチレン性ブルーラテックス)のみが捕捉されて、青いラインが現れていた。一方、金コロイド粒子は、捕捉されずに流れたため、金コロイド由来の赤いラインは形成されなかった。以上の結果、0.04μm程度の粒径を持つ金コロイド粒子は捕捉されず、0.6μmの粒径を持つ着色粒子は捕捉され、容易に検出できることが確認された。
【0066】
次に、実際に、検出装置の検出の対象となる液体試料を用いた第四の実験の結果を示す。粒径が0.6μm(0.5μm〜5μmが可能)のポリスチレン性白ラテックス(検出に影響しない粒子17に相当)に抗βーhCG抗体を結合させ、粒径が0.04μm(0.02μm〜0.5μmが可能)の金コロイド粒子(標識物質15に相当)に抗hCG抗体を結合させた。結合の要領は、常法にしたがった。
【0067】
次に、少なくとも10μm程度の粒子をクロマト的に移動させることができるガラス繊維(粒子塗布パッド3に相当)を、5mm×10mmに切断して、上記の抗βーhCG抗体結合ポリスチレン性白ラテックスと、抗hCG抗体結合金コロイド粒子とを適量混合し、塗布して乾燥させた。このガラス繊維(粒子塗布パッド3に相当)と、上述した第三の実験と同じ方法で得られたニトロセルロースメンブレン(メンブレン5に相当)とを3mm程度重なるように接触させ、テープで貼り合わせて、5mm幅のストリップとした。
【0068】
80μlのhCGを含む陽性試料を、ガラス繊維(粒子塗布パッド3に相当)下端から吸収させ、5分後に、捕捉部21において金コロイド由来の発色を観察した。hCGを含む試料では、50mlU/ml〜1000000mlU/mlの範囲で発色が現れ、よって、陽性と判定された。一方、80μlのhCGを含まない陰性試料をガラス繊維(粒子塗布パッド3に相当)下端から吸収させたが、捕捉部21に発色は観察できなかった。hCGを含まない試料については、陰性と判定された。
【0069】
実施の形態2における検出装置と、実施の形態1における検出装置が異なるのは、メンブレン5に設ける捕捉部21の形成方法だけである。したがって、実施の形態2における検出装置においても、実施の形態1における検出装置の第1から第4変形例を同様に適用できる。また、その利用性についても、同様である。
【0070】
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3における検出装置の側面図である。なお、図1と同一の部分については同一の符号を付している。図8に示すように、実施の形態3における検出装置は、液体試料添加部1、粒子塗布パッド23およびメンブレン25からなる。メンブレン25は、クロマト的流れの下流部を構成し、粒子塗布パッド23はクロマト的流れの上流部を構成する。メンブレン25において、粒子塗布パッド23から液体試料などが流入してくる部分、すなわち、メンブレン25と粒子塗布パッド23との接合箇所の近傍が、捕捉部27となる。なお、捕捉部27は、メンブレン25の特定箇所を加工して形成するものではなく、このように接合するだけで、メンブレン25の特定箇所がそのまま捕捉部となるのである。実施の形態3における検出装置が、実施の形態1における検出装置と異なるのは、粒子塗布パッド23とメンブレン25との関係である。以下、詳しく説明する。
【0071】
液体試料添加部1は、実施の形態1における検出装置と同じである。粒子塗布パッド23は、多孔質材からなり、例えば、ガラス繊維コンジュゲートパッド(アキュウイック(商標名)など)を用いることができる。粒子塗布パッド23には、標識物質および検出に影響しない粒子が塗布されている。粒子塗布部23においては、液体試料、標識物質、検出に影響しない粒子および反応生成物(図3参照)の移動が可能である。標識物質は、着色されており、粒子塗布パッド23、メンブレン25および捕捉部27を容易に通過するサイズとなっている。このような条件の下で、標識物質としては、例えば、粒径が0.02μm〜0.5μmの金コロイドまたは着色ラテックスを用いることができる。検出に影響しない粒子は、粒子塗布パッド23は通過するが、メンブレン25(捕捉部27含む)は、通過できないサイズである。このような条件の下で、検出に影響しない粒子としては、例えば、粒径が0.5μm〜5μm(特に1μm程度)の白ラテックスを用いることができる。
【0072】
メンブレン25(捕捉部27を含む)の孔径は、液体試料および標識物質は通過できるが、検出に影響しない粒子および反応生成物は通過できずに捕捉されるサイズである。このような条件の下で、メンブレン25としては、粒径が0.5μm〜5μmの粒子を捕捉できるものを用いることができる。なお、メンブレン25は、多孔質材の一つの例であり、その他の多孔質材を用いることができる。
【0073】
次に、検出方法について説明する。まず、液体試料を液体試料添加部1に添加する。そして、液体試料は、液体試料添加部1を矢印A方向にクロマト的に移動し、粒子塗布パッド23へ流入する。粒子塗布パッド23において、液体試料は、標識物質および検出に影響しない粒子とともに矢印B方向にクロマト的に移動する。この時、液体試料に被検物質が存在していれば、図3に示すように、標識物質15および検出に影響しない粒子17は、被検物質13と結合し、反応生成物となる。
【0074】
液体試料に被検物質13が存在している場合においては、反応生成物が、メンブレン25に流入し、メンブレン25と粒子塗布パッド23との接合箇所の近傍(捕捉部27)に捕捉される。なぜなら、メンブレン25(捕捉部27を含む)の孔径は、反応生成物に含まれる検出に影響しない粒子の粒径より小さいからである。そして、反応生成物は、標識物質15により着色されているので、反応生成物が捕捉されたこと、すなわち、液体試料に被検物質13が存在することを肉眼で確認できる。なお、反応生成物とならない標識物質15および液体試料は、メンブレン25において矢印C方向にクロマト的に移動する。
【0075】
一方、液体試料に被検物質13が存在していない場合は、粒子塗布パッド23からメンブレン25へ流入してきた液体試料および標識物質15は、矢印C方向にクロマト的に移動し、流れ去る。検出に影響しない粒子17は、捕捉部27に捕捉される。なせなら、検出に影響しない粒子17の粒径は、捕捉部27の孔径より大きいからである。この場合、検出に影響しない粒子17は無色であるため、捕捉部27にサインは現れない。
【0076】
以上のように、本発明の実施の形態3においては、メンブレン25の孔径を粒子塗布パッド23の孔径より小さくしている。すなわち、粒子塗布パッド23の孔径を反応生成物が通過できる大きさにするとともに、メンブレン25の孔径を反応生成物が通過できない大きさにしている。このように、メンブレン25の孔径を小さくすることによって、被検物質13を含む反応生成物を捕捉している。したがって、従来の検出装置のように、被検物質を捕捉する手段として、メンブレンに、特異反応成分を移動できないように結合させておらず、特異反応成分の結合量の制限を受けることがないので、検出感度の向上を図ることができるとともに、検出量のばらつきを少なくできる。
【0077】
また、メンブレン25の特定箇所(メンブレン25と粒子塗布パッド23との接合箇所の近傍、すなわち、捕捉部27)に反応生成物が捕捉されるため、捕捉部27の面積を小さくすることができ、被検物質が少量であるときも、明瞭なサインが得られる。捕捉部27は、外部に露呈しているから、別段メンブレンを剥がす必要はなく、検出結果を外部から容易に観察できる。さらに、被検物質13、標識物質15および検出に影響しない粒子17を結合させた反応生成物を捕捉するので、被検物質が、無色で、メンブレン25の孔径より小さい場合でも、検出が可能である。
【0078】
次に、実施の形態3における検出装置を用いた第五の実験の結果を示す。なお、この実験は、色彩および粒径の異なる二種類の着色粒子の混合溶液を用いて、実施の形態3における検出装置が、上述した機能を果たすかどうかを確認するためのものであり、実際に、検出装置の検出の対象となる液体試料を用いているわけではない。実際に、検出装置の検出の対象となる液体試料を用いた実験の結果は後述する。
【0079】
0.3μm程度の粒子を捕捉できるニトロセルロースメンブレン(メンブレン25に相当し、商標名がプレデターであるポール社のニトロセルロースメンブレンを使用)を、粒子の吸着を防ぐため、0.5%のカゼインを含む溶液に30分程度漬け込み、処理した。これを、乾燥後、約5mm×35mmに切断した。また、少なくとも10μm程度の粒子をクロマト的に移動させることができるガラス繊維(粒子塗布パッド23に相当)を、5mm×15mmに切断した。そして、このガラス繊維と上記のニトロセルロースメンブレンとを、3mm程度重なるように接触させ、テープで貼り合わせて、5mm幅のストリップとした。
【0080】
0.3μmの粒径を持つ着色粒子(ポリスチレン性ブルーラテックス)と、0.02μm程度の粒径を持つ金コロイド粒子との混合溶液を、上記したストリップのガラス繊維(粒子塗布パッド23に相当)側からクロマト的に移動させた。混合溶液を十分に展開させた後、ニトロセルロースメンブレン(メンブレン25に相当)の特定箇所、すなわち、ガラス繊維(粒子塗布パッド23に相当)とニトロセルロースメンブレン(メンブレン25に相当)との接合箇所の近傍(捕捉部27に相当)を観察したところ、着色粒子(ポリスチレン性ブルーラテックス)のみが捕捉されて、青いラインが現れていた。一方、金コロイド粒子は、捕捉されずに流れたため、金コロイド由来の赤いラインは形成されなかった。以上の結果、0.02μm程度の粒径を持つ金コロイド粒子は捕捉されず、0.3μmの粒径を持つ着色粒子は捕捉され、容易に検出できることが確認された。
【0081】
次に、実際に、検出装置の検出の対象となる液体試料を用いた第六の実験の結果を示す。粒径が0.3μm(0.3μm〜5μmが可能)のポリスチレン性白ラテックス(検出に影響しない粒子17に相当)に抗βーhCG抗体を結合させ、粒径が0.02μm(0.02μm〜0.5μmが可能)の金コロイド粒子(標識物質15に相当)に抗hCG抗体を結合させた。結合の要領は、常法にしたがった。
【0082】
次に、少なくとも10μm程度の粒子をクロマト的に移動させることができるガラス繊維(粒子塗布パッド23に相当)を、5mm×10mmに切断して、上記の抗βーhCG抗体結合ポリスチレン製白ラテックスと、抗hCG抗体結合金コロイド粒子とを適量混合し、塗布して乾燥させた。このガラス繊維(粒子塗布パッド23に相当)と、上述した第五の実験と同じ方法で得られたニトロセルロースメンブレン(メンブレン25に相当)とを3mm程度重なるように接触させ、テープで貼り合わせて、5mm幅のストリップとした。
【0083】
80μlのhCGを含む陽性試料を、ガラス繊維(粒子塗布パッド23に相当)下端から吸収させ、捕捉部27において金コロイド由来の発色を観察した。hCGを含む試料では、50mlU/ml〜1000000mlU/mlの範囲で発色が現れ、よって、陽性と判定された。一方、80μlのhCGを含まない陰性試料をガラス繊維(粒子塗布パッド23に相当)下端から吸収させたが、捕捉部27に発色は観察できなかった。hCGを含まない試料については、陰性と判定された。
【0084】
なお、実施の形態3における検出装置においても、実施の形態1における検出装置の第1から第4変形例を同様に適用できる。また、その利用性についても、同様である。
【0085】
【発明の効果】
本発明では、多孔質材におけるクロマト的流動が、意図的に不均一にされている。より詳しくは、捕捉部において、局所的に流動の一部が妨害される。即ち、孔径の小さい捕捉部により被検物質を捕捉することにより、検出感度の向上を図ることができるとともに、検出量のばらつきを少なくできる。また、被検物質の大きさが、直接捕捉できない大きさの場合でも、被検物質を、粒径が捕捉部の孔径より大きい粒子と結合させることにより、被検物質を検出できる。さらに、被検物質が無色の場合でも、被検物質を有色の標識物質と結合させることにより、被検物質を検出できる。加えて、本発明の多孔質材は、少量の物質検出に好適に用いられ、検出結果の確認時等に上流側の部分を除去したりする必要はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における検出装置の側面図
【図2】本発明の実施の形態1における検出装置の平面図
【図3】被検物質(無色)、検出に影響しない粒子および標識物質が反応して生成される反応生成物の模式図
【図4】被検物質(有色)および検出に影響しない粒子が反応して生成される反応生成物の模式図
【図5】本発明の実施の形態1における検出装置の第2変形例の平面図
【図6】本発明の実施の形態1における検出装置の第3変形例の平面図
【図7】本発明の実施の形態2における検出装置の側面図
【図8】本発明の実施の形態3における検出装置の側面図
【符号の説明】
1 液体試料添加部
3、23 粒子塗布パッド
5、25 メンブレン
7 上流部
9 下流部
11、21、27 捕捉部
13、18 被検物質
15 標識物質
17 検出に影響しない粒子
19 液体試料
20 容器
Claims (6)
- 上流部から下流部へ液体がクロマト的に移動する多孔質材であって、前記下流部におけるクロマト的流れの途中に、液体試料中に含まれる被検物質を直接的または間接的に捕捉する捕捉部を形成し、前記多孔質材において前記捕捉部の上流側の孔径と前記捕捉部の下流側の孔径とを前記捕捉部の孔径よりも大きくしたことを特徴とする多孔質材。
- 前記捕捉部は、前記下流部の特定箇所に、粒子を埋め込むことにより形成することを特徴とする請求項1記載の多孔質材。
- 前記捕捉部は、前記下流部の特定箇所を溶剤処理することにより形成することを特徴とする請求項1記載の多孔質材。
- 前記上流部は第一の部材からなり、前記下流部は、第二の部材からなり、前記第一の部材は、前記第二の部材よりも孔径が大きく、
前記第一の部材は、前記第二の部材に接合され、この接合箇所が、前記捕捉部となることを特徴とする請求項1記載の多孔質材。 - 請求項1から4のいずれかに記載の多孔質材を備えることを特徴とする検出装置。
- クロマト的流れの上流に位置する上流部に液体試料を注入し、上流部から下流部へ液体試料をクロマト的に移動させる方法であって、
前記下流部におけるクロマト的流れの途中に、液体試料中に含まれる被検物質を直接的または間接的に捕捉する捕捉部を形成し、前記多孔質材において前記捕捉部の上流側の孔径と前記捕捉部の下流側の孔径とを前記捕捉部の孔径よりも大きくしたことを特徴とする検出方法。
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