JP3836496B2 - Rfid用スキミング防止機能を備えたカードおよびカードホルダ - Google Patents

Rfid用スキミング防止機能を備えたカードおよびカードホルダ Download PDF

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Description

本発明は、非接触ICカードをはじめとするRFID(Radio Frequency Identification)のスキミング防止機能を備えたカードおよびカードホルダに係り、より詳細には、非接触ICカード等と併せて持ち歩くことによりスキミング防止機能と宣伝効果とを提供することのできるカードと、収容したRFIDを必要に応じて容易に使用可能状態にすることができるとともに、非使用時にはスキミングを防止し、使用時には記憶されている情報の読取りを助長することのできるカードホルダとに関する。
企業等が社名や自社製品の宣伝のために用いる手段の一つとして、広告を印刷した宣伝カードが作成されている。こうした宣伝カードは、自由に持ち帰れるよう飲食店に置かれたり、駅の周辺や催事会場など人が多く集まる場所において無料配布されるのが一般的である。
しかし、配布された宣伝カードは多くの場合直ちに捨てられてしまうので、宣伝効果をあげることが難しい。そこで、広告以外の機能や特典を付加して実用性を持たせることにより、長期にわたって所持され宣伝効果を維持するよう工夫を加えた宣伝カードが考案されている。
例えば、特許文献1に記載の宣伝カードは、広告が記載されたカードに口腔清涼剤を剥離可能に設けることにより、清涼剤を口にするまでの期間宣伝カードを保持させ、宣伝効果を維持することが可能である。
ところで、特許文献1の宣伝カードの場合、清涼剤を口にした後も宣伝カードの広告情報掲載部分を残すことができるよう、ミシン目が設けられている。しかし、このミシン目により、逆に清涼剤のみを残して宣伝カード部分が捨てられてしまう可能性がある。また、ガムなどの清涼剤は保存が可能な食品ではあるが、長い時間が経過すると風味が損なわれるので、配布できる期間は限られている。
したがって、長期にわたり所持されるよう、保存可能且つ所持者にとって実用的なカードを提供することが望ましい。
そこで発明者は、宣伝カードと、財布等に収納して携帯する銀行等のカードとが略同じ大きさを有することに着目し、銀行等のカードのスキミング防止に宣伝カードを利用することを考えた。特に、近年急速な普及を遂げている非接触ICカードのスキミング防止は社会的急務であることから、宣伝カードに非接触ICカードのスキミング防止機能を具備させることに想到した。
実用新案登録第3058730号公報 実用新案登録第3066214号公報 実用新案登録第3106094号公報
非接触ICカードのスキミング防止を目的として、特許文献2に記載の非接触型ICカードの送付用封筒や、特許文献3に記載の携帯用物入れ等が考案されている。しかし、前者の場合には、非接触ICカードが顧客の手元に送達した後のスキミング防止を行うことができない。また、後者の場合には、特殊な材料により作製するためコストが嵩んだり、現在使用している鞄等を買い換えなければならないという問題が存在した。
また、特許文献2および3のように、電磁波や磁気を遮蔽することによりスキミングを防止する手法を用いると、スキマ(カードの記録情報を不正に読取る装置)が発生する電磁波の周波数によっては十分な効果が得られないという問題があった。
以上のような問題点に鑑み本発明が提供するのは、暗号コプロセッサ付の非接触ICカードの表面または裏面のいずれかに近接して配置され、金属薄板と、金属薄板の表裏にラミネート加工された化粧板とから形成されるRFID用スキミング防止機能を備えたカードである。金属薄板は35〜100μmの厚さを有し、暗号コプロセッサ付の非接触ICカードの表面または裏面のいずれに配置された場合であっても、周波数13.56MHzの磁界が印加されたとき渦電流を発生し、この渦電流により生じる反磁界によって磁界を打消し、暗号コプロセッサの起動を阻止する−9.54dB以下の磁界強度減衰率を有することを特徴とする。
このカードにおいて、金属薄板は、金、銀、銅、アルミニウムのうちいずれかよりなる。
また、化粧板はPET(ポリエチレンテレフタレート)またはPVC(ポリ塩化ビニル)からなる。
本発明がさらに提供するのは、35〜100μmの厚さを有し、周波数13.56MHzの磁界が印加されたとき渦電流を発生し、この渦電流により生じる反磁界によって磁界を打消し、暗号コプロセッサの起動を阻止する−9.54dB以下の磁界強度減衰率を有する金属薄板と、前記金属薄板の表裏にラミネート加工された化粧板とからなるRFID用スキミング防止機能を備えたカードを取り付けることにより、収容した暗号コプロセッサ付非接触ICカードの不正読取りを防止するカードホルダである。このカードホルダは、蓋部と底部とを組み合わせてなる開口を有する収容体の内部に、開口方向に移動可能なスライド部と、底部とスライド部に両端部を係止されスライド部を異動させる付勢手段と、スライド部を収容体内の所定の位置で移動停止させるストッパとを有し、蓋部にはRFID用スキミング防止機能を備えたカードが取り付けられ、底部にはRFID用スキミング防止機能を備えたカードに用いるのと同一の金属薄板が取り付けられ、スライド部にはフェライト板が取り付けられて、スライド部を移動させた開状態のときにはフェライト板がリーダによるRFIDの読取りを助長し、スライド部を収容した閉状態のときにはRFID用スキミング防止機能を備えたカードと金属薄板とがRFIDの読取りを防止する。
このカードホルダにおいて、スライド部に取り付けられるフェライト板は、1.584dB乃至4.0282dBの増幅率を有する。
本発明のRFID用スキミング防止カードによれば、非接触ICカードをはじめとするRFIDのスキミングを防止するという大きな利点を備えるため、カードの長期所持を促し、持続的な宣伝効果をあげることが可能である。
また、非接触ICカード等と併せて財布やカードホルダ等に収納して携帯することにより、容易にスキミングを防止することができる。携帯するだけで効果を発揮するので、鞄や財布等を新たに購入する必要が無い上、従来の宣伝カードと同様に無料配布すれば、所持者には金銭的なコストがかからない。
さらに、本願発明のカードホルダによれば、携帯時には収容した非接触ICカードに記録された情報が読取られることを防止し、使用時には簡単な操作によりこの情報を一時的に読取可能にすることができる。また、広告等を印刷したスキミング防止機能を備えたカードを交換可能に嵌合させるので、使用者の嗜好に応じて異なるデザインのカードを装着し、装飾性を高めることができる。さらに、非接触ICカードの使用時には、記録されている情報をリーダが読取り易くすることが可能である。
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
まず、リーダ又はスキマが非接触ICカードに記録されている情報を読取るときの動作を端的に説明する。
図2に示すのは、非接触ICカードリーダのアンテナコイル5と、このコイル5が発生する磁界8、および非接触ICカードのアンテナコイル4とこのコイルが発生する反磁界(A)6である。
現在一般に普及している非接触ICカードの場合、混信を防ぐために、カード側から通信を開始することはない。リーダが定期的にリクエストコマンド信号を発信し、これにカードが応答する。
リーダ側のコイル5に電流が流れると磁界8が発生し、その一部が非接触ICカード側コイル4を通過する。このとき、カード側コイル4では磁束が電流に変換され、ICの電源として利用される。また、リーダ5からの磁界8とは逆向きの磁界(反磁界(A))6が発生し、これによりリーダ5のリクエストコマンド信号に対する返信を行う。
図1に示すのは、本発明による非接触ICカード用スキミング防止機能を備えたカード1の概略断面図である。図示するように、カード1は金属薄板2と、化粧板3aおよび3bとから構成される。金属薄板2には金、銀、銅、アルミニウムのうちいずれかが用いられ、この金属薄板2をPET(ポリエチレンテレフタレート)またはPVC(ポリ塩化ビニル)を用いてラミネート加工したものが化粧板3aおよび3bである。金属薄板2については後述する。
図3に示すように、カード1を非接触ICカード4に近接して配置すると、リーダ5が発生した磁界8を受けたとき、カード1の金属薄板2に渦電流9が発生する。この渦電流9により、リーダ5の磁界8を打消す反磁界(B)7が発生し、非接触ICカード4は起動されない。したがって、非接触ICカード4に記録されている情報が読取られることはない。
このように、渦電流を利用することにより、非接触ICカード4のスキミングを防止することが可能となる。しかしながら、金属薄板2に発生する渦電流は、この金属の厚みや比透磁率、電気伝導度により異なるものであり、本願発明のようにICチップを起動させないことにより非接触ICカードに記録されている情報の読取りを防止するためにはどの程度の渦電流が適当なのかは従来知られていなかった。
暗号コプロセッサ付の近接型ICカードを起動するのには、4A/mの磁界強度が必要とされる。また、ISO14443およびISO18092において、最大磁界強度は12A/mとされている。磁界強度がこの値を超えると、非接触ICカードを破損させてしまう。すなわち、本願発明によるスキミング防止機能を備えたカードには、磁界強度を3分の1以下に抑えることのできる減衰率を有する金属薄板を用いる必要がある。
この点に鑑み、本願発明のスキミング防止機能を備えたカードに適した金属を明らかにするべく、以下の実験1〜3を行った。
<実験1>
まず、渦電流の発生が微少な金属であるフェライトを用いて図4に示すような実験を行い、受信アンテナ4と送信アンテナ5とを離隔して設置し、受信アンテナ4と送信アンテナ5との間(内側)にフェライトの試験片100を配置した場合と、受信アンテナ4の背面(外側)に同様にフェライトの試験片100を配置した場合とにおける減衰率を調べた。受信アンテナ4における測定値を表1に示す。
Figure 0003836496
実験1に用いたフェライトの試験片100の厚さは0.5mm、基板(受信アンテナ4および送信アンテナ5)の厚さ(d)は1.6mm、基板間すなわち受信アンテナ4と送信アンテナ5との設置間隔(L)は25mm、試験片100を配置していないときの測定値(dBm)は−19.3961、周波数は13.56MHzであった。なお、この周波数の値は、ISO14443の規格に沿った非接触ICカードの動作周波数と同一である。
表1において、「シールド材位置」の「内側」は、図4に示す受信アンテナ4から試験片100までの距離aを、「外側」は、受信アンテナ4から試験片100までの距離bを示している。また、減衰率の測定値(dBm)と、デシベル値(dB)に換算した値とを並べて示す。
表1によれば、フェライトは、内側すなわち受信アンテナ4と送信アンテナ5との間に介在させたときには磁界の遮蔽効果を示すものの、外側すなわち受信アンテナ4の背面に配置したときには磁界を増幅してしまうことがわかる。
このように、実験1より、フェライトのように発生する渦電流が小さい金属ではスキミングを防止することはできず、逆にこれを助長してしまう場合があることが明らかになった。したがって、こうした金属を本願発明のカード1に用いることはできない。
<実験2>
次に、金属の厚みによる磁界減衰率を調べるため、蒸着したものから2mmのものまで厚さの異なるアルミニウム板を用いてKEC法により磁界減衰率の変化を測定した。図5に示すのはこの測定結果であり、縦軸が減衰率を、横軸が周波数を表している。
図5によれば、上述した周波数13.56MHzのときのアルミニウムの減衰率は概して厚いほど高いことがわかる。したがって、厚みのあるアルミニウム板を本願発明のカード1に用いる金属薄板2とすれば、高いスキミング防止効果を提供できるものと考えられる。
しかしながら、本発明によるカード1は、非接触ICカードとあわせて携帯する必要があるため、例えば財布等に収納するときに不都合が生じない程度の厚さであることが望ましい。したがって、化粧板3a・3bをラミネート加工することを考慮し、金属薄板の厚みは最大で100μmとする。また、KEC法による測定は電波暗室の中で行われるため、実験2の結果は実際の使用状況とは異なる可能性がある。そのため次の実験3を行った。
<実験3>
実験2より、本発明のカード1において、アルミニウムを金属薄板2に用いることが考えられる。そこで、アルミニウム板を用いて実験1と同様の実験を行った。すなわち、図4に示すように、離隔して設置された受信アンテナ4と送信アンテナ5との間(内側)にアルミニウムの試験片100を配置した場合と、受信アンテナ4の背面(外側)にアルミニウムの試験片100を配置した場合とにおける減衰率を測定した。この結果を表2に示す。
Figure 0003836496
実験2に用いたアルミニウムの試験片100の厚さは35μm、基板厚(d)は1.6mm、基板間すなわち受信アンテナ4と送信アンテナ5との設置間隔(L)は25mm、試験片100を配置していないときの測定値(dBm)は−19.3961、周波数は13.56MHzであった。
表2によれば、アルミニウムは、内側すなわち受信アンテナ4と送信アンテナ5との間に介在させたときと、外側すなわち受信アンテナ4の背面に配置したときとのいずれにおいても磁界の遮蔽効果を示すことがわかる。中でも、内側の位置が−1.6mmの場合および外側の位置が0mmの場合を例にとると、前者の換算値が−12.96dB、後者の換算値が−10.69dBを示している。1dB程度の測定誤差があると仮定しても、それぞれの値は−11.96dBおよび−9.69dBであることから、受信アンテナ4の内側・外側のいずれであっても、アルミニウムの試験片100を近傍に設置したときに高い減衰率が得られることが明らかとなった。
に示すのは、表1および表2に示した値をグラフ化したものである。同図において、縦軸は減衰率の換算値(dB)を表す。また、横軸は、0を受信アンテナ4の位置とした場合、正の値が内側に配置された試験片100までの距離aを、負の値が外側に配置された試験片100までの距離bを表す。アルミニウムについて、受信アンテナの近傍に配置したときに高い減衰値が示されることがわかる。
以上の実験1〜3より、渦電流の作用によりスキミングを防止する効果を得ようとする場合、金属薄板2に用いる金属としてアルミニウムが好適であることが明らかになった。
続いて、アルミニウム以外の金属の利用可能性について検討する。表3に示すのは金、銀、銅およびアルミニウムの各種金属の導電率、比透磁率、ならびに10MHzのときの表皮深さである。
Figure 0003836496
上述したように、渦電流は金属の厚み、比透磁率、および電気伝導度により変化する。したがって、表3に示される値より、本願発明において金属薄板2に金、銀、銅を用いた場合には、アルミニウムよりも優れた効果が得られるものと考えられる。
いずれの金属を用いる場合でも、カード1は金属薄板2の表裏に化粧板3aおよび3bを備えており、この化粧板3aおよび3bには企業名・商品名等の広告や記念写真をはじめとして、所望の文字や絵を印刷することが可能である。また、作製されたカード1は、従来の宣伝カードと同様に配布することができ、例えば金融機関等で配布すれば、スキミングの防止に一層効果をあげることができる。
次に、本発明が提供するカードホルダの一実施例を説明する。
図7および8は本発明によるカードホルダ10の斜視図および分解斜視図である。図8に示すように、カードホルダ10は、蓋部11と、スライド部12と、底部13とを組み合わせて形成される。蓋部11は側部に6つの爪部110を有する。また、蓋部11の上面には、内縁に沿うように溝112が設けられ、上述したスキミング防止機能を備えたカード1を嵌め込むことができるようになっている。
底部13は、蓋部11の爪部110と対応する6つの凹部130を備え、ケース10を組立てる際には爪部110と凹部130とを嵌合させる。また、底部13には上述したスキミング防止機能を備えたカード1に用いた金属薄板2と同一の金属板133が接着されるとともに、第1バネ131と、第2バネ132と、第2バネ132と協働するボタン14とが設置される。本実施例において、金属板133はアルミニウム板とする。また、第1バネ131は、一端を底部13の柱(A)15に、他端をスライド部12に設けられた柱(B)16にそれぞれ係止されており、ホルダ10が閉状態のときには伸びた状態にある。
スライド部12は蓋部11および底部13よりやや小さく形成され、保持爪120とストッパ121とを有する。保持爪120は、スライド部12に非接触ICカード4を載置したとき、このカード4がずれたり外れたりしないように保持するためのものである。また、スライド部12にはフェライト板123が接着される。
カードホルダ10は、図7(a)に示すように閉状態で携帯する。このとき、ホルダの上面にはアルミニウムの薄板2を用いて作製されたカード1が嵌め込まれており、また底面には底部13に接着されたアルミニウム板133がある。非接触ICカード4はこれらのアルミニウム板の間に介在することになるので、リーダ5やスキマからの磁界を受けても起動しない。
一方、カードホルダ10は、図7(b)に示すように開状態で使用する。閉状態において、使用者がボタン14を押下すると、このボタン14に留められていたスライド部12の第1ストッパ121が外れ、閉状態のときには伸びた状態にあった第1バネ131が収縮する。これにより付勢されたスライド部12は、蓋部11および底部13からなる収容体から飛び出し、非接触ICカード4が使用可能になる。このとき、スライド部12の第2ストッパ122が底部13のストッパ受部134に収まるので、スライド部12がカードホルダ10から外れて分離することはない。また、ボタン14は第2バネ132に付勢されて元の位置に戻る。
ここで、上述したようにスライド部12にはフェライト板123が接着されている。この点について詳述する。
実験1で明らかになったように、フェライトにはリーダ5からの磁界を受けたときに非接触ICカード4の読取りを助長する効果がある。そこで、スライド部12にフェライト板123を接着することにより、カード4の使用時には、カードホルダ10に収容した非接触ICカード4に記録された情報をリーダ5に確実に読取らせることができるようにしている。
こうしたフェライトの効果をより明らかにするため、厚さおよび比透磁率の異なるフェライト板を用いて再び図4に示すような実験を行った。
<実験4>
まず、非接触ICカード4の情報の読取りを助長する効果と厚さとの関係を明らかにするため、厚さの異なるフェライトの試験片100を受信アンテナ4の背面(外側)に密着させて、リーダ5からの磁界を受けた場合の増幅率を測定した。その結果、表4に示す値が得られた。この値をグラフ化すると図9のようになる。
Figure 0003836496
表4および図7より、フェライトの試験片100が厚いほど増幅率が高いことがわかる。すなわち、フェライト板の厚さと増幅率とは比例関係にあるといえる。
<実験5>
次に、非接触ICカード4の情報の読取りを助長する効果と比透磁率との関係を明らかにするため、比透磁率の異なるフェライトの試験片100を受信アンテナ4の背面(外側)に密着させて、リーダ5からの磁界を受けた場合の増幅率を測定した。その結果、表5に示す値が得られた。
Figure 0003836496
先の実験4より、フェライト板の厚さと増幅率とは比例関係を有することが明らかになった。実験5では厚さの異なるフェライト板を用いていることから、試験片D、E、F、Bについて厚さ0.1mmに対する換算増幅率を求め、同一の厚さにおける増幅率としてこれを示している。
ここで、比透磁率と換算増幅率とに着目すると、換算増幅率として示される値は、概して比透磁率が高いほど大きいことがわかる。すなわち、フェライトの比透磁率と増幅率とは比例関係にあるといえる。換算増幅率を比透磁率で除して比例定数を求めると、0.26260(平均値)である。
既に述べたように、ISO14443における最大磁界強度は12A/mである。高出力型のICカードリーダが発生する最大磁界強度は10A/mであるから、これを12A/mまで増幅する増幅率は1.584dBとなる。一方、一般的に多く用いられているICカードリーダが発生する最大磁界強度は7.5A/mであり、これを12A/mまで増幅する増幅率は4.082dBとなる。上述した比例定数の算出にあたり、試験片によって±10%程度のばらつきがあったことを考慮すると、最小の増幅率は1.425dB(1.584dB×90%)、最大の増幅率は4.490dB(4.082dB×110%)となる。
以上より、比透磁率をμr、厚さをtとした場合、本発明における使用に好適なフェライト板の増幅率の範囲は以下の数式(1)のように表すことができる。
1.584dB ≦ 0.2660×μr×t ≦ 4.082dB (1)
上述した比例定数の算出にあたり、試験片によって±10%程度のばらつきがあったことを考慮すると、最小の比例定数は0.2394(0.2660×90%)、最大の比例定数は0.2926(0.266×110%)となる。
この点を考慮すると、次の数式(2)のようになる。
5.413 ≦ μr×t ≦ 17.050 (2)
しかし、ICカードを破損させないために、比例定数を最大の0.2926とすると、数式(3)のようになる。
5.413 ≦ μr×t ≦ 13.950 (3)
すなわち、リーダの種類を考慮しつつ、比透磁率と厚さ(mm)との積が数式(3)の範囲内の値となるようなフェライト板を用いれば、非接触ICカードを破損させることなく効率の良い通信を行うことができる。
既に表2に示したように、フェライト板が受信アンテナ4の外側に配置されたときには磁界が増幅される。したがって、カードホルダ10に収容された非接触ICカード4を使用する場合には、ホルダ10を開状態にし、蓋部11側の面が送信アンテナに対面するようにリーダ5にかざすのが望ましい。すると、カード4の背面に位置するフェライト板123により磁界が増幅されるのでICカード4に記録された情報の読取りがスムーズに行われる。このとき、ICカード4とリーダ5との通信可能距離が長くなるので、使用者にとってはより便利である。表6に非接触ICカードを単独で用いた場合とフェライトを密着させた場合とでの通信可能距離を示す(表6中で名称として挙げられているIRL05AB、IV06、IRLF4AB(0.)はいずれもTDK株式会社の製品である)。
Figure 0003836496
カードホルダ10は、使用が済んだらスライド部12を手などで収容体に押込むことにより、再び閉状態となる。
以上説明したように、本発明のRFID用スキミング防止機能を備えたカード1によれば、非接触ICカードを初めとするRFIDと併せて携帯することにより、非接触ICカードに記憶されている情報が所有者の知らないうちに不正に読取られてしまう事態を防止することができる。
さらに、本発明のカードホルダによれば、携帯時には閉状態でスライド部12を収容しておくことにより、蓋部11の上面に取り付けられたカードと底部13に接着されたアルミニウム板133とがスキミング防止機能を発揮する。また、使用時にはスライド部12がスライドして開状態となり、非接触ICカード4がカード1とアルミニウム板133との間に完全に挟まれた状態ではなくなり、大きなずれが生じる。したがって、ICカード4はリーダからの磁界により起動され、記憶されている情報が読取り可能となる。ボタンを押下するだけで必要に応じて一時的に非接触ICカードを読取り可能にすることができるので、例えば公共交通機関の改札を通過する際などに素早く対応することができて便利である。使用後はスライド部12を押戻して閉状態にすることで、再びスキミング防止を行うことができる。
さらに、例えばスライド部12の裏面に広告を施せば、カードホルダ10の使用時にのみ使用者などの目に触れて宣伝効果を発揮することも可能である。
なお、ホルダ10に取り付けるカード1は交換可能であり、使用者は自分の嗜好に応じて表面の印刷が異なるカードを装着して、装飾性の高いカードホルダとすることができる。
本発明について、非接触ICカード4を1枚のみ収容するカードホルダを説明したが、本発明はこれに限られず、複数枚収容可能な構造とすることもできる。あるいは、非接触ICカードのみならず、例えば他のカードや名刺等をあわせて収容することも可能である。
本発明によるRFID用スキミング防止カードの概略断面図。 一般的な非接触ICカードおよび非接触ICカードリーダの動作を説明する概略図。 本発明によるRFID用スキミング防止カードを用いたスキミング防止の実施例を説明する概略図。 減衰率の測定実験を示す概略図。 アルミニウムの厚さによる減衰率を示す図。 フェライトおよびアルミニウムの受信電圧の距離依存性を示す図。 本発明のカードホルダの斜視図。 本発明のカードホルダの分解斜視図。 フェライトの厚さと増幅率との関係を示す図。
符号の説明
1 カード
2 金属薄板
3a 化粧板
3b 化粧板
4 非接触ICカード(カード側コイル、受信アンテナ)
5 非接触ICカードリーダ(リーダ側コイル、送信アンテナ)
6 反磁界(A)
7 反磁界(B)
8 磁界
9 渦電流
10 カードホルダ
100 試験片
11 蓋部
110 爪部
12 スライド部
120 保持爪
121 第1ストッパ
122 第2ストッパ
123 フェライト
13 底部
130 凹部
131 第1バネ
132 第2バネ
133 アルミニウム板
134 ストッパ受部
14 ボタン
15 柱(A)
16 柱(B)

Claims (6)

  1. 暗号コプロセッサ付の非接触ICカードの表面または裏面のいずれかに近接して配置され、金属薄板と、前記金属薄板の表裏にラミネート加工された化粧板とから形成されるRFID用スキミング防止機能を備えたカードであって、
    前記金属薄板は35〜100μmの厚さを有し、前記暗号コプロセッサ付の非接触ICカードの表面または裏面のいずれに配置された場合であっても、周波数13.56MHzの磁界が印加されたとき渦電流を発生し、前記渦電流により生じる反磁界によって前記磁界を打消し、前記暗号化コプロセッサの起動を阻止する−9.54dB以下の磁界強度減衰率を有することを特徴とするカード。
  2. 請求項1に記載のRFID用スキミング防止機能を備えたカードであって、
    前記金属薄板は、金、銀、銅、アルミニウムのうちいずれかよりなることを特徴とするカード。
  3. 請求項1または2に記載のRFID用スキミング防止機能を備えたカードであって、
    前記化粧板はPET(ポリエチレンテレフタレート)またはPVC(ポリ塩化ビニル)からなることを特徴とするカード。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載のRFID用スキミング防止機能を備えたカードであって、表および/または裏面に印刷を施すことが可能であることを特徴とするカード。
  5. 35〜100μmの厚さを有し、周波数13.56MHzの磁界が印加されたとき渦電流を発生し、前記渦電流により生じる反磁界によって前記磁界を打消し、暗号コプロセッサの起動を阻止する−9.54dB以下の磁界強度減衰率を有する金属薄板と、前記金属薄板の表裏にラミネート加工された化粧板とからなるRFID用スキミング防止機能を備えたカードを取り付けることにより、収容した暗号コプロセッサ付非接触ICカードの不正読取りを防止するカードホルダであって、
    蓋部と底部とを組み合わせてなる開口を有する収容体の内部に、前記開口方向に移動可能なスライド部と、前記底部と前記スライド部とに両端部を係止され前記スライド部を移動させる付勢手段と、前記スライド部を前記収容体内の所定の位置で移動停止させるストッパとを有し、
    前記蓋部には前記RFID用スキミング防止機能を備えたカードが取り付けられ、前記底部には前記RFID用スキミング防止機能を備えたカードに用いるのと同一の金属薄板が取り付けられ、前記スライド部にはフェライト板が取り付けられて、前記スライド部を移動させた開状態のときには前記フェライト板がリーダによるRFIDの読取りを助長し、前記スライド部を収容した閉状態のときには前記RFID用スキミング防止機能を備えたカードと前記金属薄板とがRFIDの読取りを防止することを特徴とするカードホルダ。
  6. 請求項5に記載のカードホルダにおいて、
    前記スライド部に取り付けられる前記フェライト板は、1.584dB乃至4.082dBの増幅率を有することを特徴とするカードホルダ。
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