JP3836320B2 - 付加反応硬化型ポリオルガノシロキサン組成物 - Google Patents

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Description

【発明の技術分野】
本発明は、付加反応硬化型ポリオルガノシロキサン組成物に関するものであり、さらに詳しくは、熱伝導性充填剤の充填性に優れた熱伝導性シリコーンゴムシート用ポリオルガノシロキサン組成物に関する。
【発明の技術的背景とその問題点】
従来より、パワートランジスタ、IC、CPU等に代表される電子部品の発熱体の蓄熱を防ぐには、熱伝導性の高い熱伝導性グリースや熱伝導性シートが用いられている。熱伝導性グリースの場合、電子部品の形状に影響されることなく、手軽に塗布できる利点がある反面、他の部品を汚損したり、長期間使用するとオイル分の流出がある等の問題点を抱えている。また、熱伝導性シートは他の部品の汚損やオイル分の流出はないものの、密着性がグリースよりも劣るため、熱伝導性シートの硬度を下げて密着性を高めるといった手法がとられている(特開平1−49959号公報、特許第2623380号公報)。一方、シリコーンゴムは、その優れた性質から熱伝導性シートに多く用いられており、シリコーンゴムの熱伝導性を改良するためには、シリカ粉、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム等に代表されるような、バインダーとなるシリコーンより熱伝導性の高い充填剤を添加すればよいことが知られている。
しかしながら、上記充填剤をバインダーとなるシリコーン中に充填しようとすると、どうしてもコンパウンド粘度が大きく上昇し、その結果、流動性が低下してしまうため、作業に支障をきたしたり、用いる充填剤によっては均一に分散するまでかなりの時間を要し、生産性が低下するという問題点があった。特に、最近の電子部品等は高出力化に伴った発熱量も大きくなり、より高い熱伝導率を有する熱伝導性シートが必要とされてきており、かかる要請に応じるためには熱伝導性充填剤を高充填させることが必要となり、更に上述の問題点に拍車をかけている。
【発明の目的】
本発明はかかる従来技術の問題点を解決し、充填剤、特に熱伝導性充填剤を高充填剤してもコンパウンドの流動性が低下せず、尚かつ分散性に優れた熱伝導性シリコーンゴムシート用ポリオルガノシロキサン組成物を提供することを目的とする。
【発明の構成】
本発明者らは、かかる目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、付加反応硬化型ポリオルガノシロキサン組成物のバインダーシリコーンとして、ビニル基含有ポリオルガノシロキサン中に特定量の水酸基を導入したものの使用が極めて有効であることを見いだし、本発明に到達した。
即ち、本発明は、
(a) ビニル基含有ポリオルガノシロキサンを酸素下一定時間加熱させ有機基を熱劣化させることによりケイ素原子に結合する水酸基量400〜2000ppm(カールフィッシャー法による測定値)に調製したビニル基含有ポリオルガノシロキサン100重量部に、
(b) ハイドロジェン基含有ポリオルガノシロキサン; (a) 成分のビニル基1個に対し、ハイドロジェン原子が0.2〜2.0個となる量
(c) 白金化合物; (a) 成分のビニル基含有ポリオルガノシロキサンに対し、白金元素として0.1〜1000ppmとなる量
(d) 充填剤;10〜2000重量部
を配合してなる付加反応硬化型ポリオルガノシロキサン組成物である。
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明におけるバインダーとなるシリコーンは、加熱により短時間で成形できること、得られる放熱シートの低硬度化が容易であるという点から、付加反応硬化型によって達成されるものである。
この付加反応硬化型ポリオルガノシロキサンは、(a) ベースポリマーであるビニル基含有ポリオルガノシロキサン、(b) 架橋剤であるハイドロジェン基含有ポリオルガノシロキサン、(c) 硬化用触媒である白金化合物、からなるものであることは周知の通りであり、本発明では(a) として特定量の水酸基を導入したものを用いる点に特徴がある。
以下に、(a) 〜(c) 成分の具体例について述べる。
(a) 成分のビニル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、1分子中にケイ素原子に結合した有機基の内、少なくとも平均して0.5個以上のビニル基が含有されていなければならない。0.5個より少ないと架橋にあずからない成分が増加するため、十分な硬化物が得られない。0.5個以上であれば基本的に硬化物は得られるが、余りに過剰だと硬化物の耐熱性が低下してしまうため、0.5〜2.0個であることが好ましい。このビニル基は、分子鎖末端、分子鎖側端、いずれの位置に結合していてもよいが、硬化速度の低下、硬化物の耐熱性の悪化等を防止するため、分子鎖末端にあることが好ましい。
本発明においては、このビニル基含有ポリオルガノシロキサンに含まれる水酸基量は400〜2000ppmであることが必要である。400ppmより少ないと、流動性改善等の効果が十分得られず、2000ppmを超えると、硬化速度が低下したり、硬化物が発泡したり、耐熱性が悪化するといった悪影響が生じる。
水酸基量を定量する方法としては、通常の方法、例えばKF法(カールフィッシャー法)によればよい。但し、この測定方法を実施する際、測定するビニル基含有ポリオルガノシロキサンは予め脱水処理しておく必要がある。
ビニル基含有ポリオルガノシロキサンにおけるその他の官能基としては、1価の置換または非置換の炭化水素基であり、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ドデシルなどのアルキル基;フェニルなどのアリール基;2−フェニルエチル、2−フェニルプロピルなどのアラルキル基;クロロメチル、3,3,3 −トリフルオロプロピルなどの置換炭化水素基などが例示される。尚、一般的にはメチル基、フェニル基が合成のし易さから好ましい。
このビニル基含有ポリオルガノシロキサンの構造は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。また、その粘度は特に制限されないが、一般的に低粘度であるほど熱伝導性充填剤は充填されやすくなることから、25℃における粘度が3000cP以下であることが好ましく、特に100〜1000cPであることが本発明の効果が最も発揮されるので好ましい。
一般的に、ビニル基含有ポリオルガノシロキサンは、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサンとR3SiO0.5(Rは1価の炭化水素基)単位を有するオルガノシロキサンとを、アルカリ、酸等の適切な触媒にて平衡化重合させ、その後、中和工程、余剰の低分子シロキサン分を除去する工程で得られることは周知の通りである。本発明に用いられるビニル基含有ポリオルガノシロキサンは、水酸基を特定量有することに特徴があり、このものはビニル基含有ポリオルガノシロキサンを、酸素下一定時間加熱させ有機基を熱劣化させる方法により得ることができる。
従来、シリコーンの技術分野においては、耐熱性、金型離型性が悪化するため、できるだけ水酸基が生じないようにしたポリオルガノシロキサンを用いるのが常識であり、本発明の如く特定少量の水酸基の導入により、コンパウンドの流動性が良くなり、作業性良く充填剤の高配合が可能になることは全く知られていなかったことであり、この点に本発明の特徴がある。
(b) 成分のハイドロジェン基含有ポリオルガノシロキサンは、架橋剤となる成分である。その配合量は、(a) 成分のビニル基1個に対し、ハイドロジェン原子が0.2〜2.0個となる量であり、柔軟性のあるゲル状硬化物を得たい場合には、0.2〜1.5個の範囲が好ましい。0.2個より少ないと、硬化が十分に進行せず、2.0個を超えると、硬化物が固くなりすぎ、柔軟性のあるゲル状硬化物が得られなくなってしまう。また、1分子に含まれるケイ素原子に結合したハイドロジェン基数は少なくとも2個以上であることが必要であるが、その他の条件、ハイドロジェン基以外の有機基、結合位置、重合度、構造等については特に限定されず、また2種以上のハイドロジェン基含有ポリオルガノシロキサンを使用してもよい。
(c) 成分の白金化合物は、(a) 成分のビニル基と(b) 成分のハイドロジェン基を反応させ、硬化物を得るための硬化用触媒である。この白金化合物としては、塩化白金酸、白金オレフィン錯体、白金ビニルシロキサン錯体、白金リン錯体、白金アルコール錯体、白金黒等が例示される。その配合量は、(a) 成分のビニル基含有ポリオルガノシロキサンに対し、白金元素として0.1〜1000ppmとなる量である。0.1ppmより少ないと十分に硬化せず、また1000ppmを超えても特に硬化速度の向上は期待できない。
以上の成分から、本発明の付加反応硬化型のバインダーシリコーン組成物が構成される。これに配合される(d) 充填剤としては、一般的に公知の無機充填剤が例示されるが、特に熱伝導性が要求される場合に高充填が求められる熱伝導性充填剤の場合に本発明の効果が顕著である。熱伝導性充填剤としては、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、シリカ粉、ダイヤモンド、水酸化アルミニウム、金属粉体及びカーボン等、あるいはこれらを表面処理したものが例示される。特に好ましいものはアルミナであり、これらは、平均粒子径0.1μm以上のものであれば特にその種類を問わず使用することができ、また2種類以上併用しても差し支えない。
充填剤の配合量は、前記(a) 成分であるビニル基含有ポリオルガノシロキサン100重量部に対し、10〜2000重量部であり、高充填、即ち、100〜2000重量部の場合に特に本発明の効果が顕著に発揮される。
このような充填剤を充填させたコンパウンドを調製する方法としては、バインダーシリコーン組成物((a) 〜(c) 成分)と充填剤とを、混練機器を使用しそのまま調製しても、あるいは表面処理剤を併用しながら調製してもよい。
本発明の付加反応硬化型ポリオルガノシロキサン組成物は、常法により硬化させて、シート等の製品にすることができる。前記熱伝導性充填剤をこの範囲で配合した場合、充填剤の種類にもよるが、得られるシートの熱伝導率は0.5w/mK以上となる。
また、本発明によれば、この組成物を硬化させてなるシリコーンゴムシートの硬度(JIS K 6249)を10以下とすることが可能であり、充填剤の高配合によっても、かかる低い硬度が得られるという利点がある。
尚、本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、反応抑制剤、顔料、難燃剤、接着付与剤、耐熱付与剤、有機溶剤を適宜配合することができる。
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の付加反応硬化型ポリオルガノシロキサン組成物によれば、熱伝導性充填剤を高充填してもコンパウンドの流動性が低下せず、尚且つ分散性に優れた熱伝導性ゴムシート用バインダーシリコーン組成物を提供できるので、熱伝導性シリコーンゴムシートの生産性、コストパフォーマンス等が向上し、更には、より高い熱伝導率が必要とされるシリコーンゴムシートの設計に最適であり、しかも低硬度のシリコーンゴムシートの提供が可能である。
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。以下の実施例および比較例において、部はすべて重量部を示す。
合成例
25℃における粘度が500cPであり、水酸基量は250ppmであるビニル基含有ポリオルガノシロキサン2000部を、撹拌棒、冷却管が備わったフラスコ中に仕込み、大気下、150℃で10時間撹拌した。得られたポリオルガノシロキサンは、25℃における粘度が510cPであり、脱水処理後、KF法により測定した水酸基量は670ppmであった。
合成例
25℃における粘度が500cPであり、水酸基量は250ppmであるビニル基含有ポリオルガノシロキサン2000部を、撹拌棒、冷却管が備わったフラスコ中に仕込み、大気下、170℃で6時間撹拌した。得られたポリオルガノシロキサンは、25℃における粘度が600cPであり、脱水処理後、KF法により測定した水酸基量は1500ppmであった。
実施例1
合成例1で得られたポリオルガノシロキサン100部に、両末端にトリメチルシリル基および側鎖部がメチルハイドロジェン基53モル%とジメチル基47モル%とからなるメチルハイドロジェンポリシロキサン0.61部、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.01部および塩化白金酸のビニルシロキサン錯体を白金元素として5ppm添加し、充分撹拌した。この組成物を3L釜の万能混練機器に移し、更に平均粒子径12μmの不定形であるアルミナ1000部を加え、10分間混練した。このコンパウントのちょう度を、ASTM D1403で規定される1/4コーンでの針入度にて測定したところ、110であった。更に、このコンパウントを150℃、30分加熱し硬化させたところ、硬さ(JIS K 6249)7、熱伝導率2.1W/mKのシートを作製することができた。
実施例2
合成例で得られたポリオルガノシロキサンに代えて、合成例で得られたポリオルガノシロキサンを用いた以外は実施例1と同様にしてコンパウントおよびシートを作製した。その物性を表1に示す。
比較例1
合成例で用いた、撹拌前の25℃における粘度が500cPであり、水酸基量は250ppmであるビニル基含有ポリオルガノシロキサンを使用した以外は実施例1と同様にしてコンパウントおよびシートの作製を試みたが、フィラーが全くまとまらず、シートの作製は不可能であった。
比較例2
合成例で用いた、撹拌前の25℃における粘度が500cPであり、水酸基量は250ppmであるビニル基含有ポリオルガノシロキサンを使用し、メチルハイドロジェンポリシロキサンの配合量を0.56部とし、フィラーとして平均粒子径5μ m の粒状であるアルミナを用いた以外は実施例と同様にしてコンパウントおよびシートの作製を試みたが、フィラーが全くまとまらず、シートの作製は不可能であった。
比較例3
合成例で用いた、撹拌前の25℃における粘度が500cPであり、水酸基量は250ppmであるビニル基含有ポリオルガノシロキサンを使用し、メチルハイドロジェンポリシロキサンの配合量を0.54部とし、フィラーとして平均粒子径10μ m の窒化アルミニウムを600部用いた以外は実施例と同様にしてコンパウントおよびシートの作製を試みたが、フィラーが全くまとまらず、シートの作製は不可能であった。
比較例4
メチルハイドロジェンポリシロキサンの添加量を0.53部とし、フィラーの配合量を800部に減量した以外は比較例1と同様にしてコンパウントおよびシートの作製を試みたところ、一応コンパウンドは作製できたが、そのコンパウンドのちょう度は低く、シート作製の作業性が悪かったため、結局シート作製は不可能であった。
比較例5
合成例の方法で、該ビニル基含有ポリオルガノシロキサンを、大気下、170℃で12時間撹拌した。得られたポリオルガノシロキサンは、25℃における粘度が660cPであり、脱水処理後、KF法により測定した水酸基量は2200ppmであった。このポリオルガノシロキサンを用いた以外は実施例1と同様にしてコンパウントおよびシートの作製を試みたところ、コンパウンドは容易に作製できたが、シート作製したところ、内部に発泡が多数みられる不良品となった。従って、熱伝導率等の物性は測定できなかった。
【表1】
Figure 0003836320

Claims (4)

  1. (a) ビニル基含有ポリオルガノシロキサンを酸素下一定時間加熱させ有機基を熱劣化させることによりケイ素原子に結合する水酸基量400〜2000ppm(カールフィッシャー法による測定値)に調製したビニル基含有ポリオルガノシロキサン100重量部に、
    (b) ハイドロジェン基含有ポリオルガノシロキサン; (a) 成分のビニル基1個に対し、ハイドロジェン原子が0.2〜2.0個となる量
    (c) 白金化合物; (a) 成分のビニル基含有ポリオルガノシロキサンに対し、白金元素として0.1〜1000ppmとなる量
    (d) 充填剤;10〜2000重量部
    を配合してなる付加反応硬化型ポリオルガノシロキサン組成物。
  2. (d) 充填剤が、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、シリカ粉、ダイヤモンド、水酸化アルミニウム、金属粉体及びカーボンおよびこれらを表面処理したものより選ばれる熱伝導性充填剤である請求項1記載の付加反応硬化型ポリオルガノシロキサン組成物。
  3. 請求項2記載の付加反応硬化型ポリオルガノシロキサン組成物を硬化させてなる、熱伝導率が0.5w/mK以上のシリコーンゴムシート。
  4. 請求項1又は2記載の付加反応硬化型ポリオルガノシロキサン組成物を硬化させてなる、硬度(JIS 6249)が10以下であるシリコーンゴムシート。
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