JP3835976B2 - 空気弁の排気構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気弁の排気構造に関し、下水管路の途中に設ける空気弁の技術に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の空気弁としては、例えば図3〜図4に示すものがある。図3〜図4において、弁箱1は、管路に連通する底部の下部開口2と弁箱蓋3を装着する上部開口4との間にフロート室5を形成しており、フロート室5の上部に飛沫除け部6を設けている。弁箱蓋3は中央部に弁室7を形成する開口を有し、下面にストレーナ8を配置するとともに、上面に開口を覆ってシート9を配置しており、シート9に大空気孔10を形成している。
【0003】
弁箱蓋3の上方には支柱ボルト11を介してスプリング箱12を設けており、スプリング箱12を覆って蓋13を配置するとともにスプリング箱12と蓋13の間にダイヤフラム14を介装している。このダイヤフラム14はスプリング箱12と蓋13とで形成する空間を上部の圧力室15aとスプリング室15bとに仕切っている。スプリング箱12にはスプリング室15bを大気に連通させる連通孔16を形成し、蓋13には圧力室15aを大気に連通させる微小孔17を形成している。
【0004】
弁室7には大空気孔10を開閉する弁体18を配置しており、弁体18とダイヤフラム14を弁棒19で連結している。ダイヤフラム14は上押さえ部14aと下押さえ部14bとの間に挟み込み、ナット14cを締め付けることで弁棒19に連結している。スプリング室15bにはダイヤフラム14および弁棒19を介して弁体18を閉動方向に付勢するスプリング15cを配置している。弁棒19は軸心方向に貫通する小空気孔19aを有しており、小空気孔19aは圧力室15aと弁室7とを連通している。弁体18は上面にシート9に気密に当接する大空気孔弁座(図示省略)を有し、下面に小空気孔の下端開口を覆って配置する小空気孔弁座(図示省略)を有している。
【0005】
弁体18の下端にはシャフト20を配置している。シャフト20は、頭部が小空気孔弁座に当接して小空気孔を開閉する小空気孔弁体をなし、上端側に形成した長孔21が弁体18に設けたスナップピン(図示省略)に係合することで、小空気孔弁体と小空気孔弁座の双方が当接する位置と双方が離間する位置とにわたって上下動可能に弁体18に吊下げている。シャフト20の下部側にはフロート22を装着し、フロート22の下端にフラッパー23を設けている。
【0006】
上述した構成における作用について説明する。管路を流れる水が下部開口2から弁箱1の内部に流入し、弁箱1のフロート室5の水位が増加するのに伴ってフロート22が上昇する。このフロート22の上昇によってシャフト20、弁体18、弁棒19が一体的に上昇し、シャフト20の小空気孔弁体が弁体18の小空気孔弁座に当接して小空気孔を閉栓し、弁体18が大空気孔弁座でシート9に当接して大空気孔10を閉栓する。
【0007】
流水に連行されて管路を流れる空気が下部開口2から弁箱1の内部に流入し、フロート室5に空気が溜るにしたがって弁箱1のフロート室5の水位が低下する。フロート室5の水位が下限水位以下に低下するとフロート22に作用する浮力が減少し、フロート重量が浮力に勝ることでフロート22が下降する。このとき、弁体18は弁室7の内部の空気圧を受けて閉栓状態を維持し、フロート22およびシャフト20がスナップピンに係合する長孔21の範囲で降下する。
【0008】
シャフト20の降下によって小空気孔が開栓し、弁室7の内部の空気圧が小空気孔を通して圧力室15aに流入する。このとき、圧力室15aは微小孔17を通して大気に連通しているだけなので、急激な空気の流入によってダイヤフラム14が膨張して弁棒19および弁体18を開栓方向に付勢し、この不勢力と弁棒19、弁体18、シャフト20、フロート22の重量とが弁室7の内部の空気圧による力に優ることで弁体18が開栓し、大空気孔10を通して弁室7およびフロート室5の空気を大気中へ排気する。
【0009】
この排気によってフロート室5の内部の水位が上昇し、浮力およびスプリングの付勢力によって、フロート22、シャフト20、弁体18、弁棒19が一体的に上昇し、閉栓状態に復帰する。このとき、圧力室15aの空気は微小孔16を通して排気される。フロート室5の飛沫除け部6は流体の液面から飛散する飛沫を遮り、ストレーナ8は飛沫とともに飛散するゴミを捕捉する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した従来の構成において、排気時に弁箱1に流入する汚水から飛散する異物は飛沫除け部6およびストレーナ8で遮るものの、小さな異物は小空気孔に侵入して圧力室15aに流入し、圧力室15aの微小孔17が詰まることがある。この微小孔17の詰りによって圧力室15aに対する空気の出入りが遮断されると、ダイヤフラム14の円滑な運動が阻害される。
【0011】
つまり、排気時に膨張した状態にあるダイヤフラム14が排気後にフロートの上昇によって初期状態に復帰することが困難となり、弁体18の閉栓動作が阻害され、弁箱1に流入する汚水および汚物が大空気孔から外部へ漏れ出る問題があった。
【0012】
本発明は上記課題を解決するものであり、異物によって圧力室の小排気孔が詰まっても、弁体を閉栓することができる空気弁の排気構造を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の空気弁の排気構造は、弁箱の上部に大空気孔を形成し、大空気孔の上方にダイヤフラムを有するとともに、微小孔を通して大気に連通する圧力室を設け、大空気孔を貫通して弁棒を配置し、弁棒の上端側をダイヤフラムに連結固定し、弁棒の下端側に大空気孔を開閉する弁体を設け、弁棒に圧力室と弁箱内空間とを連通する小空気孔を形成し、弁体の下部に小空気孔を開閉するシャフトを上下に移動可能に接続し、シャフトにフロートを設けた空気弁において、
弁体の下方にダイヤフラムより大径に形成したストレーナを弁箱内空間を上下に仕切って配置し、ストレーナの中心部にシャフトに遊嵌するとともに、シャフトの軸心方向において弁体の下端に当接するリングを設けたものである。
【0014】
上記した構成により、弁体はフロートの上昇に伴って閉栓方向に移動する。一方、フロートが降下し、小空気孔を通して弁箱内の空気圧が圧力室に作用することで、膨張するダイヤフラムが弁棒を介して弁体を開栓方向に押し下げる。
【0015】
排気時に弁箱内の空気はストレーナを通って大空気孔から大気へ排出する。また、ストレーナは排気時に弁箱内に流入する汚水から飛散するゴミ等の異物を捕捉する。
【0016】
圧力室の微小孔がゴミ等で閉塞して圧力室の圧力が弁体の閉栓動作を阻害し、閉栓の時機が遅れる場合には、弁箱内の設定水位を越えて上昇する水面から飛散する異物がストレーナの下面に大量に付着して通気を阻害し、ストレーナが弁箱内の空気圧力を受けて上方に移動し、中心部のリングで弁体に当接して弁体を閉栓方向に付勢する。このとき、ストレーナはダイヤフラムの圧力が作用する部位より大径に形成してあるので、圧力室の空気圧がダイヤフラムを介して弁体におよぼす開栓方向の不勢力よりも、弁箱内の空気圧がストレーナを介して弁体におよぼす閉栓方向の不勢力が優り、弁体が大空気孔を閉栓して汚水が弁箱外へ流れ出ることを防止する。
【0017】
【実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。先に図3において説明した部材と同様の作用を行なうものは同一番号を付して説明を省略する。
【0018】
図1〜図2において、飛沫除け部6には複数の通気穴6aを設けている。弁棒19を軸心方向に貫通して形成した小空気孔19aは、圧力室15a(図3参照)と弁室7とを連通している。弁体18は上面にシート9に気密に当接する大空気孔弁座18aを有し、下面に小空気孔19aの下端開口を覆って小空気孔弁座18bを有している。弁体18の下端に接続するシャフト20は、頭部が小空気孔弁座18bに当接して小空気孔19aを開閉する小空気孔弁体20aをなし、上端側に形成した長孔21(図3参照)が弁体18に設けたスナップピン18cに係合することで、小空気孔弁体20aと小空気孔弁座18bの双方が当接する位置と双方が離間する位置とにわたって上下動可能である。
【0019】
ストレーナ8はダイヤフラム14(図3参照)の加圧外形より大径に形成しており、弁箱1の弁室7における空間を上下に仕切っている。ストレーナ8は金属または樹脂製の網もしくはフィルタからなり弾性を有しており、中心部のリング8aでシャフト20に遊嵌し、リング8aはシャフト20の軸心方向において弁体18の下端に当接する。
【0020】
以下、上記した構成における作用について説明する。フロート22はフロート室5の水位の増加に伴って上昇し、フロート22の上昇によってシャフト20、弁体18、弁棒19が一体的に上昇し、シャフト20の小空気孔弁体20aが弁体18の小空気孔弁座18bに当接して小空気孔19aを閉栓し、弁体18が大空気孔弁座18aでシート9に当接して大空気孔10を閉栓する。
【0021】
下部開口2から弁箱1の内部に流入する空気がフロート室5に溜るにしたがってフロート室5の水位が低下してフロート22に作用する浮力が減少し、フロート重量が浮力に優ることで、フロート22およびシャフト20がスナップピン18cに係合する長孔21の範囲で降下し、弁体18が弁室7の内部の空気圧を受けて閉栓状態を維持する。
【0022】
シャフト20の降下によって小空気孔19aが開栓し、弁室7の内部の空気圧が小空気孔19aを通して圧力室15aに流入し、急激な空気の流入によってダイヤフラム14が膨張して弁棒19および弁体18を開栓方向に付勢し、この不勢力と弁棒19、弁体18、シャフト20、フロート22の重量とが弁室7の内部の空気圧による力に優ることで弁体18が開栓し、大空気孔10を通して弁室7およびフロート室5の空気を大気中へ排気する。
【0023】
この排気によってフロート室5の内部の水位が上昇する。このとき、水面の上昇に伴って水面から飛散する飛沫を飛沫除け部6が遮り、通気穴6aを通過したゴミ等の異物をストレーナ8が捕捉し、浮力およびスプリングの付勢力によって、フロート22、シャフト20、弁体18、弁棒19が一体的に上昇し、圧力室15aの空気を微小孔16から排気し、閉栓状態に復帰する。
【0024】
万一に、圧力室15aの微小孔17がゴミ等で閉塞することで、圧力室15aの圧力が弁体18の閉栓動作を阻害して閉栓の時機が遅れる場合には、上限水位を越えて上昇する水面から飛散する異物がストレーナ8の下面に大量に付着して異物層Dを形成することで通気を阻害し、ストレーナ8が弁箱1の内部の空気圧力を受けて上方に移動するとともに、弾性変形によって上方に撓む中心部のリング8aで弁体18を閉栓方向に付勢する。
【0025】
このとき、ストレーナ8はダイヤフラム14の圧力が作用する部分より大径に形成してあるので、圧力室15aの空気圧がダイヤフラム14を介して弁体18におよぼす開栓方向の不勢力よりも、弁箱1の内部の空気圧がストレーナ8を介して弁体18におよぼす閉栓方向の不勢力が優り、弁体18が大空気孔10を閉栓して汚水が弁箱1の外部へ流れ出ることを防止する。
【0026】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、微小孔の閉塞により圧力室の圧力で弁体の閉栓動作が阻害される場合には、弁箱内の上昇する水面から飛散する異物がストレーナの下面に大量に付着して通気を阻害し、ストレーナが弁箱内の空気圧力を受けてリングで弁体を閉栓方向に付勢し、圧力室の圧力に優る力で弁体を閉栓させることで、汚水が弁箱外へ流れ出ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における空気弁を示す拡大断面図である。
【図2】同空気弁の部分断面図である。
【図3】従来の空気弁の一例を示す断面図である。
【図4】同空気弁の部分断面図である。
【符号の説明】
D 異物層
1 弁箱
3 弁箱蓋
4 上部開口
5 フロート室
6 飛沫除け部
6a 通気穴
7 弁室
8 ストレーナ
8a リング
9 シート
10 大空気孔
18 弁体
18a 大空気孔弁座
18b 小空気孔弁座
18c スナップピン
19 弁棒
19a 小空気孔
20 シャフト
20a 小空気孔弁体
21 長孔

Claims (1)

  1. 弁箱の上部に大空気孔を形成し、大空気孔の上方にダイヤフラムを有するとともに、微小孔を通して大気に連通する圧力室を設け、大空気孔を貫通して弁棒を配置し、弁棒の上端側をダイヤフラムに連結固定し、弁棒の下端側に大空気孔を開閉する弁体を設け、弁棒に圧力室と弁箱内空間とを連通する小空気孔を形成し、弁体の下部に小空気孔を開閉するシャフトを上下に移動可能に接続し、シャフトにフロートを設けた空気弁において、
    弁体の下方にダイヤフラムより大径に形成したストレーナを弁箱内空間を上下に仕切って配置し、ストレーナの中心部にシャフトに遊嵌するとともに、シャフトの軸心方向において弁体の下端に当接するリングを設けたことを特徴とする空気弁の排気構造。
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