JP3835700B2 - 分子識別能を有する二酸化チタン複合体を含む分散液 - Google Patents

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本発明は、内分泌撹乱物質、あるいは病因分子やガン細胞などに対して特異的な結合能を有する分子を固定化し、紫外線の照射などによってこれらの物質、分子、細胞の分解作用を示す、分子識別能を有する二酸化チタン複合体に関する。
近年、内分泌撹乱物質の分子識別能を有するDNAなどの生体分子を支持体上に固定化し、それにより選択的結合性を付与した材料が環境浄化材として提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、アナターゼ型二酸化チタンには光触媒作用があり、その強い酸化力により微生物、汚れ、悪臭物質等の有機物を分解することが知られている。特に、内分泌撹乱物質のような難分解性の物質に対しても強力な分解作用を示すことから、環境浄化に有効であると期待されている(例えば、非特許文献1参照)。さらに、現在では二酸化チタンと活性炭やゼオライトなどの無機吸着剤を複合化することにより、二酸化チタンの分解効率を高めるような工夫がなされている(例えば特許文献2参照)。二酸化チタンの表面処理においても、パラジウムなどの還元反応促進触媒金属を二酸化チタン等の光触媒表面に析出させることで、光触媒の酸化、還元反応を促進することが考案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、DNA等による内分泌攪乱物質の選択的結合材料については、結合させた内分泌攪乱物質等の確実な除去や分解手段が無く、かつ吸着飽和の問題から浄化能力にも限界がある。また、前記の二酸化チタンの光触媒としての能力を高めようとする考案についても、特定物質の結合や分解を指向していない。したがって、例えば内分泌攪乱物質のみと選択的に結合し分解することは不可能であった。このように環境浄化の分野では、目的の物質のみを識別して選択的に結合し、これを光触媒の強い酸化力によって分解する、すなわち二酸化チタンによる「分子識別能と光触媒能との組合せ」技術は知られていない。
一方、近年医療分野における新しい薬剤投与形態として、体内または体表面で薬剤が経時的に徐放されるように設計されたシステム(ドラッグデリバリーシステム:DDS)が注目されている。これは、既存医薬品の薬効を最大限に高めると共に、その副作用を最小限に制御しようとするものである。DDSにおける薬剤の担体としては、非分解性高分子やアミノ酸ポリマー(例えば、特許文献4参照)、リポソーム(例えば、特許文献5参照)、およびタンパク質中空ナノ粒子(例えば、特許文献6参照)等が盛んに研究されている。DDSの概念をさらに進展させたものに、標的指向(ターゲティング)DDSがある。これは薬剤を必要な部位に、必要な量を、必要な時間に送り込むシステムであり、最終的には病巣を確実に狙い撃ちするミサイルドラッグ(ミサイル療法)を目標としている。
ミサイルドラッグの場合、DDS担体にリガンドを担持させ、標的細胞表面に存在する受容体に特異的に認識・結合させることによりターゲティングを行う。このような能動的ターゲティングの標的となる受容体に対応するリガンドとしては、抗原、抗体、ペプチド、糖脂質や糖タンパク質などが挙げられる。これらの中で、糖脂質や糖タンパク質の糖鎖は細胞の増殖や分化、組織の発生や形態形成、生体防御や受精機構、あるいはガン化とその転移等の細胞間コミュニケーションにおける情報分子として重要な役割を果たしていることが近年明らかになりつつある(例えば、非特許文献2参照)。
このようなDDSに、強い光触媒分解能を有する二酸化チタンを応用しようとする試みがなされている(特許文献7、特許文献8、非特許文献3参照)。これは、標的とするガン細胞に二酸化チタンを担持した金などの金属粒子を撃ち込んで取り込ませた後、紫外線等の光を照射してガン細胞を死滅させようとするものである。二酸化チタンは、大気中や溶液中でも極めて安定な物質であり、かつ(遮光された)動物体内では毒性もなく安全なことが知られている。しかも、二酸化チタンの活性化を光のオン・オフで制御することが可能なため、ガン治療に向けてのDDSへの応用が期待される。
さらに、医療用材料として好適な、これら二酸化チタンと高分子基材とを複合化させた二酸化チタン複合体が提案されている。例えば、人工血管や人工臓器等の医療用材料として高分子基材と二酸化チタンを複合化させた医療用材料がある(特許文献9参照)。これは、生体適合性の高い高分子基材に酸化チタンと化学結合可能な官能基を導入することにより、高分子基材が簡単に剥離することなく強固に結合を保持し、また二酸化チタンに化学的前処理を行う必要がないため、この化学的前処理のために二酸化チタンの特性(物性)が損なわれたり、変性したりする恐れがなく、医療用材料として好適に用いられるものである。また、二酸化チタンと生体分子を複合化させた医療用材料がある(特許文献10参照)。これは、特定の物質を特異的に認識して結合するような生体分子を二酸化チタンと複合化することにより、血液などに混入するおそれのあるウィルス、細菌および毒素などの特定の有害物質を光触媒機能により不活性化することで、血液成分や血液製剤成分である成分蛋白質が変性することなく、効率よく分離できる技術として有用である。
しかしながら、二酸化チタンの等電点はpH6前後であり、中性付近の生理的条件下では二酸化チタン粒子が凝集してしまう問題点がある。これら従来技術による製造方法では、酸化チタンの機能性は膜形状、板形状、または容易に固液分離が可能な粒子形状のものに限定されるため、二酸化チタン自体を直接血管内に投与したり、そのままでDDSの担体として用いることは不可能であった。
その上さらに、二酸化チタン表面に、前記リガンド等の選択的結合能を有する分子の活性を保ったまま結合し、かつ中性付近の生理的条件下で高度に分散性を保持することが可能になるような技術も知られておらず、二酸化チタンのDDSとしての実用化は現状では困難な状況にある。すなわち、医療分野においても二酸化チタンによる「分子識別能と光触媒能との組合せ」技術は、上記問題点のために未だ開発されていない。
特開2001−81098号公報 特開平01−189322号公報 特開昭60−14940号公報 特開平09−255590号公報 特開2003−226638号公報 特開2003−286198号公報 特開2002−316946号公報 特開2002−316950号公報 特開2004−143417号公報 特開2003−116534号公報 Y. Ohkoら:Environmental Science and Technology, 35, 2365-2368 (2001) N. Yamazakiら:Advanced Drug Derivery Review, 43, 225-244 (2000) R. Caiら:Cancer Research, 52, 2346-2348 (1992)
本発明は、上記二酸化チタンによる「分子識別能と光触媒能との組合せ」の問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の課題は、内分泌撹乱物質、病因分子、ガン細胞等と特異的に結合し、かつ光触媒作用によりそれらの分解作用を示す、分子識別能を有する二酸化チタン複合体を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行い、二酸化チタン微粒子表面を親水性高分子で修飾した後、さらに目的分子に対して特異的な結合能を有する分子を固定化した二酸化チタン複合体が、分子識別能と光触媒能を両立できることを見い出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の分子識別能を有する二酸化チタン複合体は、二酸化チタン微粒子表面が親水性高分子により修飾され、該親水性高分子のカルボキシル基と二酸化チタンはエステル結合で結合しているとともに、前記親水性高分子のカルボキシル残基に目的分子に対して特異的な結合能を有する分子を固定化したものである。この方法により、光触媒作用を有する二酸化チタン粒子に、抗体などの特異的結合能を有する分子を導入することが可能となり、分子識別能を有する二酸化チタン複合体を製造することができる。
本発明は、内分泌撹乱物質、病因分子、ガン細胞等に対する分子識別能を有し、かつ光触媒作用によりこれら物質の分解反応を示す、分子識別能を有する二酸化チタン複合体を提供する。本複合体は、水または水溶液中で目的とする分子を特異的に識別捕捉し、紫外線照射などによりこれを強力に分解する能力を有する。特に、本複合体が有する水系溶媒中で使用できる、目的分子を正確に識別捕捉できる、かつ強力な光触媒能を示す等の特性は、例えば水系の内分泌攪乱物質を始めとする有害物質の分解処理、あるいは特定の病因分子やガン細胞の破壊などの医療分野への応用に極めて有用である。
本発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。図1は本発明の分子識別能を有する二酸化チタン複合体を示す模式図である。すなわち、本発明の分子識別能を有する二酸化チタン複合体は、二酸化チタン微粒子(1)と、カルボキシル基を複数有する親水性高分子(2)をジメチルホルムアミドに分散させて90〜180℃で1〜12時間水熱反応を行って両者をエステル結合で結合させた後、親水性高分子(2)のカルボキシル残基に目的分子に対して特異的な結合能を有する分子(3)を固定化させたものである。ここで、二酸化チタンと親水性高分子とがエステル結合するのは、粒子表面の酸化チタンが反応系中の水に水和されてその表面に水酸基が生成し、その水酸基と親水性高分子のカルボキシル基とが反応してエステル結合を形成することによるものである。エステル結合の確認方法としては種々の分析方法が適用できるが、例えば赤外分光法によりエステル結合の吸収帯である1700〜1800cm−1付近の赤外吸収の有無で確認することが可能である。また、特異的な結合能を有する分子(3)の固定化には、主にこの分子(3)が有するアミノ基が用いられる。また、アミノ基の無い分子であっても適切な修飾方法によりアミノ基を導入することは可能であり、あるいはアミノ基以外のカルボキシル基と反応性のある所望の官能基や架橋を導入することも可能である。
本発明で用いる二酸化チタン微粒子(1)としては、凝集性の問題や癌治療用として体内への適用の場合など、その使用形態の自由度の観点から分散粒経が2〜200nmであることが望ましい。さらに、本発明で用いる二酸化チタンとしては、アナターゼ型およびルチル型のいずれも好適に使用可能である。これは、結晶系の異なる二酸化チタンであってもその化学的性質はほぼ同一であり、いずれの結晶系であっても水溶性高分子による修飾、および特異的な結合能を有する分子を固定化することが可能であるためである。例えば、ガン細胞を破壊するためには光触媒活性の強いアナターゼ型を選択するなど、用途に応じて所望の結晶系の二酸化チタンを選択し使用することができる。
さらに、二酸化チタンが少なくとも粒子表面の一部に存在すれば、例えば磁性材と二酸化チタンとの複合材のようなものであっても、粒子表面の二酸化チタンの特性は近似しているため、カルボキシル基を介した特異的結合能を有する分子の固定化は可能である。したがって、磁性材と二酸化チタンとの複合材であっても単一の二酸化チタン粒子の場合と全く同様の方法により、分子識別能を有する二酸化チタン複合体を製造することが可能である。
本発明で用いる親水性高分子(2)としては、本二酸化チタン複合体を水溶液中に分散した状態で使用することを想定しているため、水溶性高分子であることが望ましい。本発明で用いる水溶性高分子としては、複数のカルボキシル基を有する高分子であればいずれも適用可能であるが、例えばカルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルセルロース、ポリカルボン酸類、およびカルボキシル基単位を有する共重合体(コポリマー)などが挙げられる。具体的には、水溶性高分子の加水分解性および溶解度の観点から、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸等のポリカルボン酸類、およびアクリル酸/マレイン酸やアクリル酸/スルフォン酸系モノマーの共重合体(コポリマー)がより好適に使用される。これらの親水性高分子により二酸化チタンを修飾することにより、親水性高分子のカルボキシル残基に所望の特異的な結合能を有する分子(3)を固定化することが可能となる。さらに、分子(3)の固定化後においても残余のカルボキシル基間の電気的斥力により、本発明の二酸化チタン複合体は中性付近を含む広範囲のpH領域で均一に分散した状態を維持できる。
本発明において、二酸化チタン複合体に分子識別能を付与する、特異的な結合能を有する分子(3)としては、目的分子と特異的に結合する分子であれば下記に限定されるものではない。このような分子間の特異的な結合は、生体内においては多種多様なものが明らかとなっている。これらの中で、最も重要な分子としてタンパク質が挙げられる。本発明によれば、タンパク質として抗体、リガンド、レセプター、ポリ・オリゴペプチド、さらにはアミノ酸まで好適に固定化が可能である。また、単純タンパク質の二酸化チタン複合体への固定化にはアミノ基およびチオール基を、糖タンパク質の場合では糖のアルデヒド基を、固定化の際の標的官能基とすることが可能である。また、水溶性高分子により修飾した二酸化チタンのカルボキシル基にビオチン(または、アビジン)を導入しておき、タンパク質をアビジン(または、ビオチン)と架橋させることにより、ビオチン:アビジンの相互作用を利用して固定化することも可能である。
さらに、本発明の二酸化チタン複合体は粒子表面に特定の因子やリガンドを提示することが可能である。したがって、例えば特定の受容体を発現しているガン細胞のような細胞に対して、リガンド:受容体の特異的な結合により本複合体を細胞に導入することが可能である。これらの因子やリガンドとしては、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子、血小板由来増殖因子、骨形成因子、神経成長因子等の増殖・成長因子や形成因子の他に、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子、エリスロポエチン、Fas抗原、アクチビン等のホルモンやリガンド等が挙げられる。これらのタンパク質も上記と同様に固定化が可能である。すなわち、これらに対応する受容体を特異的に発現している特定細胞に対して、ターゲティング可能なミサイルドラッグを構築することが可能となる。
近年、特定のタンパク質と特異的に結合する核酸アプタマーが注目されている。このようなアプタマーも、本発明の分子識別能を付与する特異的な結合性を有する分子(3)として利用が可能である。核酸の固定化を行う場合には、ポリメラーゼ チェーン リアクション(PCR)によるDNA増幅の際に、アミノ化プライマー、ビオチン化プライマー、チオール化プライマーを用いて修飾DNAを合成することにより、同様の方法で修飾二酸化チタン上へ固定化することが可能である。例えば、アミノ化DNAを固定化に用いる場合、あらかじめ修飾二酸化チタンのカルボキシル基にN−ヒドロキシこはく酸イミド(NHS)のようなエステルを導入し、求核置換反応によりアミノ化DNAを修飾二酸化チタンへ共有結合させることが可能である。チオール化DNAを用いる場合も、カルボキシル基にNHSを反応させた後に2−(2−ピリジニルジチオ) エタンアミンを作用させることにより、同様にチオール化DNAを修飾二酸化チタン上へ固定化することが可能である。
被固定化分子のアルデヒド基を用いる場合は、カルボキシル基にNHSを反応させた後に、ヒドラジンを用いることにより被固定化分子を修飾二酸化チタンに結合し、シアノホウ素化ナトリウムで還元すれば良い。この他、ビオチンヒドラジドやアミノ化ビオチンを用いてカルボキシル基をビオチン化させておけば、容易にアビジン化した被固定化分子を修飾二酸化チタン上に導入できる。このように適宜、試薬、修飾および架橋の方法を選択すれば、修飾二酸化チタン上に導入したカルボキシル残基に多種多様な特異的な結合能を有する分子(3)を、容易に固定化することが可能である。
以上のように、修飾二酸化チタン上に導入したカルボキシル残基と結合可能な官能基を有し、かつその結合手法が明らかであれば、特異的な結合能を有する分子(3)としてタンパク質や核酸あるいは糖類の他にも、脂質や各種生理活性物質等を好適に利用することが可能である。
一方、本発明の分子識別能を有する二酸化チタン複合体を水系の有害物質処理や、医薬あるいは医療に応用しようとする場合では生体内の生理的条件から、中性の水系溶媒に均一に分散していることが要求される。分散液における二酸化チタン複合体としては、分散性の観点から分散粒経が2〜500nmであることが好ましい。さらに、癌治療用として体内への適用の場合、癌細胞への蓄積効果の観点から分散粒経が50〜200nmであることがより好ましい。このような範囲とすることで、生理的条件下で24時間以上にわたって、二酸化チタン表面に選択的結合能を有する分子の活性を保ったまま結合可能な程度の高度な分散が可能となる。上述したように、本発明の分子識別能を有する二酸化チタン複合体は残余のカルボキシル残基を有しているため、水系溶媒中ではカルボキシル基の負電荷に由来する斥力が複合体間に作用する。そのため、pH3〜13の広範囲のpH領域における水溶液中でも、本複合体は凝集することなく均一に分散した状態を維持することが可能である。したがって、本発明の分子識別能を有する二酸化チタン複合体を水、種々のpH緩衝液、輸液、あるいは生理食塩水に分散させた、均一で安定な分散液を提供することが可能となる。また、本分散液を含む軟膏やスプレー剤等も製造が可能である。この特性は、特に二酸化チタンを体内外のDDSに応用する際に極めて有用である。すなわち、本発明の分子識別能を有する二酸化チタン複合体の分散液は中性付近の生理的条件においても凝集することがないために、患部組織に直接注射したり静脈に注射してターゲティングを行うことが可能となる。また、本分散液を含む軟膏やスプレー剤を皮膚等の患部に直接塗布し、太陽光や紫外線ランプ等により光治療を施すことが可能となる。
さらに、本発明の分子識別能を有する二酸化チタン複合体は単独でDDSとして利用可能であることは無論のこと、DDSの一形態として他のキャリア中に包括させて利用することも可能である。この場合のキャリアとしては特に制限はないが、リポソーム、ウイルス粒子、中空ナノ粒子等を好適に用いることができる。
本発明の分子識別能を有する二酸化チタン複合体を励起、活性化させるための光源装置は特別である必要はないが、二酸化チタンのバンドギャップの関係上その波長は400nm以下であることが望ましい。皮膚等の外用用途では、太陽光や通常の紫外線ランプ、あるいはブラックライトを好適に使用できる。また、体内の患部に対しては内視鏡に紫外線ファイバーを装着することにより紫外線を照射すれば良い。さらに、特に280nm付近の紫外線を局所的に患部に照射して病変部を破壊しようとする光療法を想定した場合では、その作用増強剤として本発明の分子識別能を有する二酸化チタン複合体を適用することも可能である。
以下に、本発明を実施例に従って詳細に説明する。ただし、本発明はこの実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
二酸化チタン粒子へのポリアクリル酸の導入
チタンテトライソプロポキシド3.6gとイソプロパノール3.6gを混合し、氷冷下で60mlの超純水に滴下して加水分解を行った。滴下後に室温で30分間攪拌した。攪拌後、12N硝酸を1ml滴下して、80℃で8時間攪拌を行い、ペプチゼーションした。ペプチゼーション終了後、0.45μmのフィルターで濾過し、脱塩カラム(PD10;アマシャム ファルマシア バイオサイエンス社)を用いて溶液交換して固形成分1%のアナターゼ型二酸化チタンゾルを調製した。この分散液を100ml容のバイアル瓶に入れ、200Hzで30分間超音波処理を行った。超音波処理を行う前と後での平均分散粒経はそれぞれ、36.4nm、20.2nmであった。超音波処理後、溶液を濃縮して固形成分20%の二酸化チタンゾル(アナターゼ型)を調製した。
得られた二酸化チタンゾル0.75mlを20mlのジメチルホルムアミド(DMF)に分散させ、ポリアクリル酸(平均分子量:5000、和光純薬)0.2gを溶解したDMFを10ml添加後、攪拌して混合した。水熱反応容器に溶液を移し変え、180℃で6時間水熱合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、溶液を取り出した後に水80mlを添加して攪拌混合した。エバポレータでDMFおよび水を除去した後に、再度、水20mlを添加してポリアクリル酸修飾二酸化チタン水溶液とした。2N塩酸1mlを添加して二酸化チタン粒子を沈殿させて、遠心後に上清を除去することにより未反応のポリアクリル酸を分離した。再度水を添加して洗浄を行い、遠心後に水を除去した。50mMリン酸緩衝液(pH7.0)を10ml添加後、200Hzで30分間超音波処理を行い、二酸化チタン粒子を分散させた。超音波処理後、0.45μmのフィルターで濾過し、固形成分1.5%のポリアクリル酸修飾二酸化チタンゾルを得た。作製したポリアクリル酸修飾二酸化チタン微粒子(アナターゼ型)の分散粒径をゼータサイザーナノZS(シスメックス社製)を用いて、ゼータ電位測定セルにポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子を含む分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて動的光散乱法により測定したところ、キュムラント法解析から平均分散粒径は45.5nmであった。
(実施例2)
ポリアクリル酸修飾二酸化チタン微粒子への抗AFP抗体分子の固定化
実施例1により得たポリアクリル酸修飾二酸化チタンゾル(アナターゼ型)1mlを脱塩カラムPD10を用いて溶液交換を行い、水に分散したポリアクリル酸修飾二酸化チタンゾル3mlを得た。この溶液1.5mlに、200mMの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドと50mMの N−ヒドロキシこはく酸イミド(NHS)の混合液0.1mlを添加して10分間攪拌を行い、カルボキシル基を活性化した。攪拌終了後、10mM酢酸緩衝液(pH5.0)で平衡化したPD10を用いて溶液交換し、10mM酢酸緩衝液(pH5.0)に分散したカルボキシル基活性化ポリアクリル酸修飾二酸化チタンゾル3mlを得た。同一の緩衝液で調製した抗α−フェトプロテイン(抗AFP)ポリクローナル抗体(ヤギIgG、SC−8108;コスモバイオ社)を0.05mg/mlになるように添加した。室温で15分間攪拌後、0.5Mになるようにエタノールアミン塩酸塩水溶液(pH8.5)を添加した。10分間攪拌後、2N塩酸を1ml添加して二酸化チタン粒子を沈殿させ、遠心後に上清を除去した。再度水を添加して洗浄を行い、遠心後に水を除去した。50mMリン酸緩衝液(pH7.0)を2.5ml添加した後、200Hzで30分間超音波処理を行い、二酸化チタン粒子を分散させた。超音波処理後、0.45μmのフィルターで濾過し、固形成分0.3%の抗AFP抗体固定化二酸化チタン複合体ゾルとした。作製した抗AFP抗体固定化二酸化チタン複合体(アナターゼ型)の分散粒径を実施例1と同様に測定したところ、52.8nmであった。さらに、作製した抗AFP抗体固定化二酸化チタン複合体を含む分散液を一晩、凍結乾燥させた後に、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)を2.5ml添加し、200Hzで30分間超音波処理を行い、分散させた抗AFP抗体固定化二酸化チタン複合体の分散粒径を実施例1と同様に測定したところ、53.7nmであった。
(実施例3)
ポリアクリル酸修飾二酸化チタン微粒子への抗HSA抗体分子の固定化
実施例1により得たポリアクリル酸修飾二酸化チタンゾル(アナターゼ型)1mlを脱塩カラムPD10を用いて溶液交換を行い、水に分散したポリアクリル酸修飾二酸化チタンゾル3mlを得た。この溶液1.5mlに200mMの 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドと50mMの N−ヒドロキシこはく酸イミド(NHS)の混合液0.1mlを添加して10分間攪拌を行い、カルボキシル基を活性化した。攪拌終了後、10mM酢酸緩衝液(pH5.0)で平衡化したPD10を用いて溶液交換し、10mM酢酸緩衝液(pH5.0)に分散したカルボキシル基活性化ポリアクリル酸修飾二酸化チタンゾル3mlを得た。同一の緩衝液で調製した抗ヒト血清アルブミン(抗HSA)モノクローナル抗体(マウスIgG、MSU−304;コスモバイオ社)を0.05mg/mlになるように添加した。室温で15分間攪拌後、0.5Mになるようにエタノールアミン塩酸塩水溶液(pH8.5)を添加した。10分間攪拌後、2.5Mの NaCl、20%(w/v)ポリエチレングリコールを等量添加し二酸化チタン粒子を沈殿させ、遠心後に上清を除去した。再度水を添加して洗浄を行い、遠心後に水を除去した。PBS緩衝液(pH7.0:100mMのNaClを含む、日本ジーン)を2.5ml添加し、二酸化チタン粒子を分散させた。0.45μmのフィルターで濾過し、固形成分0.3%の抗HSA抗体固定化二酸化チタン複合体ゾルとした。作製した抗HSA抗体固定化二酸化チタン複合体(アナターゼ型)の分散粒径を実施例1と同様に測定したところ、52.8nmであった。
(実施例4)
ポリアクリル酸修飾二酸化チタン微粒子へのストレプトアビジン分子の固定化
実施例1により得たポリアクリル酸修飾二酸化チタンゾル(アナターゼ型)1mlを脱塩カラムPD10を用いて溶液交換を行い、水に分散したポリアクリル酸修飾二酸化チタンゾル3mlを得た。この溶液1.5mlに200mMの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドと50mMのN−ヒドロキシこはく酸イミド(NHS)の混合液0.1mlを添加して10分間攪拌を行い、カルボキシル基を活性化した。攪拌終了後、10mM酢酸緩衝液(pH5.0)で平衡化したPD10を用いて溶液交換し、10mM酢酸緩衝液(pH5.0)に分散したカルボキシル基活性化ポリアクリル酸修飾二酸化チタンゾル3mlを得た。ストレプトアビジン(Pierce Biotechnology Inc.コード:21126)を 0.05mg/mlになるように添加した。室温で15分間攪拌後、0.5Mになるようにエタノールアミン塩酸塩水溶液(pH8.5)を添加した。10分間攪拌後、2.5MのNaCl、20%(w/v)ポリエチレングリコールを等量添加し二酸化チタン粒子を沈殿させ、遠心後に上清を除去した。再度水を添加して洗浄を行い、遠心後に水を除去した。PBS緩衝液(pH7.0、日本ジーン)を2.5ml添加し、二酸化チタン粒子を分散させた。0.45μmのフィルターで濾過し、固形成分0.3%のストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合体ゾルとした。作製したストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合体(アナターゼ型)の分散粒径を実施例1と同様に測定したところ、50.5nmであった。
二酸化チタン複合微粒子のpH安定性の評価
50mMの異なるpHを持つ緩衝液(pH4および5=酢酸緩衝液、pH6=2−モルフォリノエタンスルホン酸緩衝液)、pH7および8=2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液、pH9=ホウ酸緩衝液、pH10=グリシン水酸化ナトリウム緩衝液)を作成し、終濃度0.025(w/v)%になるように実施例4で得られたストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合微粒子を含む分散液を添加し、1時間室温にて静置した。その後、ゼータサイザーナノZSにて実施例1と同様に平均分散粒径の測定を行った。結果を図5に示す。pHが4から10の間で粒径の変化は認められるものの75から50nm程度であった。また、これらを室温にて24時間静置した後、同様に平均分散粒径の測定を行ったところ、粒径の変化は5nm以内であった。これらにより、安定した分散性を示すことが明らかとなった。
二酸化チタン複合微粒子の塩強度安定性の評価
0.01〜0.5Mの異なる塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液に実施例4で得られたストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合微粒子を含む分散液を終濃度0.025(w/v)%になるように添加し、1時間室温にて静置した。その後、実施例1と同様に分散粒径の測定を行った。図6に示す。系中の塩濃度が0.01から0.5Mの間はほとんど分散粒径の変化は認められなかった。また、これらを室温にて24時間静置した後、同様に平均分散粒径の測定を行ったところ、粒径の変化は5nm以内であった。これらにより、安定した分散性を示すことが明らかになった。
二酸化チタン複合微粒子の均一性(透明度)の評価
0.1Mの塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液を用いて、実施例4で得られたストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合微粒子を含む分散液を終濃度0.1%になるように調整し、1時間室温にて静置した。また、二酸化チタン微粒子としてP25(日本アエロジル)を0.1Mの塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液を用いて、同様に終濃度0.1%になるように調整し、1時間室温にて静置した。その後、シャーレに5ml移し上方から撮影し、確認した。その結果を図7に示す。P25水溶液に対してストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合微粒子を含む分散液は明らかに透明度が高く、均一に分散していることが確認された。また、分光光度計(UV−1600、島津製作所)を用いて波長660nmにおける吸光度の測定を行った結果、P25水溶液は吸光度が1を大きく上回り測定不能であったのに対して、ストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合微粒子を含む分散液は吸光度が0.044であり、また沈殿の形成は起きていなかった。更に、これらの溶液を室温暗所にて2週間静置した後に、同様に波長660nmにおける吸光度の測定を行った結果、P25水溶液は吸光度が1を大きく上回り測定不能であったのに対して、ストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合微粒子を含む分散液は吸光度が0.051であった。このことから、水溶液中において二酸化チタン複合微粒子が透明度の高い、均一な分散性を示し、かつ安定していることが明らかになった。
(実施例5)
ポリアクリル酸修飾磁性材複合二酸化チタン微粒子の合成
セパラブルフラスコ内にポリオキシエチレン(15)セチルエーテル(C−15;日本サーファクタント工業社)を45.16gを溶解させ、5分間窒素置換した後、シクロヘキセン溶液(和光純薬)75mlを添加、0.67MのFeCl(和光純薬)水溶液3.6mlを添加し、250rpmで攪拌しながら、30%アンモニア水溶液5.4mlを添加し、1時間反応させた。その後、50mMテトラエチルオルソシリケイト水溶液(和光純薬)を0.4ml滴下し、1時間反応させた。 その後、チタンテトライソプロポキシド(和光純薬)を最終濃度 0.005Mになるように加えた。50%(w/v)エタノール水溶液10mlを 1mlずつ 10分間隔で添加した。この反応液を遠心分離し、沈殿物を350℃で2時間焼成した。焼成後、10mM硝酸水溶液に分散させ、超音波処理後、0.1μmのフィルターでろ過した。得られた磁性材:複合二酸化チタンゾル0.75mlを20mlのジメチルホルムアミド(DMF)に分散させ、ポリアクリル酸(平均分子量:5000、和光純薬)0.3gを溶解したDMF10mlを添加後、攪拌して混合した。水熱反応容器(HU−50、三愛科学)に溶液を移し変え、180℃で6時間合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、分液漏斗に溶液を取り出した後、水10mlを添加して攪拌混合した。次いで、クロロホルムを40ml加え攪拌混合して下層を除去し、上層を回収した。このステップを2回繰り返し、DMFを除去した。この溶液10mlに10mlの1.5MのNaCl、20%(w/v)ポリエチレングリコール6000(和光純薬)を加え、遠心後に上澄を除去した。沈殿に2.5mlの水を加え、Sephadex G−25カラムによりゲルろ過を行いポリアクリル酸修飾磁性材複合二酸化チタン微粒子(アナターゼ型)の分散液を得た。
(実施例6)
ポリアクリル酸修飾磁性材複合二酸化チタン微粒子への抗HSA抗体分子の固定化
実施例5で得られたポリアクリル酸修飾磁性材複合二酸化チタン微粒子の分散液1.5mlに200mMの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドと50mMのN−ヒドロキシこはく酸イミド(NHS)の混合液0.1mlを添加して10分間攪拌を行い、カルボキシル基を活性化した。攪拌終了後、10mM酢酸緩衝液(pH5.0)で平衡化したPD10を用いて溶液交換し、10mM酢酸緩衝液(pH5.0)に分散したカルボキシル基活性化ポリアクリル酸修飾磁性材複合二酸化チタンゾル3mlを得た。同一の緩衝液で調製した抗ヒト血清アルブミン(抗HSA)モノクローナル抗体(マウスIgG:MSU−304、コスモバイオ社)を0.05mg/mlになるように添加した。室温で15分間攪拌後、0.5Mになるようにエタノールアミン塩酸塩水溶液(pH8.5)を添加した。10分間攪拌後、2.5MのNaCl、20%(w/v)ポリエチレングリコールを等量添加して磁性材複合二酸化チタン粒子を沈殿させ、遠心後に上清を除去した。再度水を添加して洗浄を行い、遠心後に水を除去した。PBS(日本ジーン)を2.5ml添加し、磁性材複合二酸化チタン粒子を分散させた。0.45μmのフィルターで濾過し、固形成分0.3%の抗HSA抗体固定化磁性材複合二酸化チタン複合体ゾルとした。作製した抗HSA抗体固定化磁性材複合二酸化チタン複合体(アナターゼ型)の分散粒径を実施例1と同様に測定したところ、105nmであった。
(実施例7)
二酸化チタン粒子へのアクリル酸/スルホン酸系共重合体の導入
実施例1で得られた固形成分20%の二酸化チタンゾル(アナターゼ型)0.75mlを20mlのジメチルホルムアミド(DMF)に分散させ、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体(平均分子量:5000、プロトン置換後凍結乾燥した標品、日本触媒)0.3gを溶解したDMF10mlを添加後、撹拌して混合した。水熱反応容器(HU−50、三愛科学)に溶液を移し、150℃で5時間反応させた。反応終了後、反応容器を室温になるまで冷却し、反応液に対して2倍量のイソプロパノール(和光純薬)を添加した。室温で30分以上静置後、4000×g、20分間遠心分離を行い、沈殿物を回収した。この沈殿物を70%エタノールで洗浄後、2.5mlの水を加えて、アクリル酸/スルホン酸系共重合体修飾二酸化チタンゾル(アナターゼ型)を得た。
(実施例8)
アクリル酸/スルホン酸系共重合体修飾二酸化チタン微粒子への抗DR4抗体分子の固定化
実施例7で作製したアクリル酸/スルホン酸系共重合体修飾二酸化チタンゾル1.5mlに200mMの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドと50mMのN−ヒドロキシこはく酸イミド(NHS)の混合液0.1mlを添加して10分間撹拌を行い、カルボキシル基を活性化した。撹拌終了後、10mM酢酸緩衝液(pH5.0)で平衡化したPD10を用いて溶液交換し、10mM酢酸緩衝液(pH5.0)に分散したカルボキシル基活性化アクリル酸/スルホン酸系共重合体修飾二酸化チタンゾル3mlを得た。これに、抗DR4モノクローナル抗体(Anti−TRAIL Receptor1、マウス、コード:SA−225、フナコシ社)を0.05mg/mlになるように添加した。室温で1分間撹拌後、0.5Mになるようにエタノールアミン塩酸塩水溶液(pH8.5)を添加した。室温で10分間撹拌後、2.5MのNaCl、20%(w/v)ポリエチレングリコールを等量添加して二酸化チタン粒子を沈殿させ、遠心分離により上清を除去した。水で洗浄の後遠心分離して沈殿を回収し、PBS緩衝液(pH7.0、日本ジーン)を2.5ml添加して二酸化チタン粒子を分散させた。0.45μmのフィルターで濾過し、固形成分0.3%の抗DR4抗体固定化二酸化チタン複合体ゾル(アナターゼ型)を得た。
(実施例9)
抗AFP抗体固定化二酸化チタン複合体による抗原AFPの分解
α-フェトプロテイン(AFP、コスモバイオ社)を1μg/mlになるように50mMのPBS緩衝液(pH7.0、日本ジーン)で希釈し、実施例2で作製した抗AFP抗体固定化二酸化チタン複合体を固形成分0.01%になるように添加した。次いで、37℃で3時間静置して抗原抗体反応による凝集体を形成させた。AFPと抗AFP抗体固定化二酸化チタン複合体が凝集体を形成したことから、抗AFP抗体固定化二酸化チタン複合体が特異的にAFPを認識して結合していることは明らかである。この凝集体を攪拌しながら波長340nmの紫外光を1mW/cmになるように照射し、600nmにおける波長の吸収(凝集体の濁度)を分光光度計により測定した。結果を図2に示す。紫外線(UV)照射時にのみ、凝集体濃度の低下にともなう吸光度の減少が認められる。すなわち、抗AFP抗体固定化二酸化チタン複合体の光触媒作用により、抗原AFPが分解されることが明らかとなった。
(実施例10)
抗HSA抗体固定化二酸化チタン複合体による抗原−抗体反応の確認
ヒト血清アルブミン(HSA、コスモバイオ社)を250μg/mlになるように50mMのPBS緩衝液(pH7.0、日本ジーン)で希釈した。別途、400mMの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドと100mMのN−ヒドロキシこはく酸イミド(NHS)の混合液で表面プラズモン共鳴センサのセンサチップC1(BIACORE社)を活性化した。このセンサチップを表面プラズモン共鳴測定装置:BIACORE1000(BIACORE社)に装着し、先のHSA溶液を流速10μl/minで通液した後、0.1Mエタノールアミンにより活性基のブロッキングを行い、HSA固定化センサチップを作製した。このHSA固定化センサチップへ実施例3で作製した0.01%の抗HSA抗体固定化二酸化チタン複合体ゾル、および実施例4で作製した0.01%のストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合体ゾルを送液して抗原−抗体反応を確認した。結果を図3に示す。HSA固定化センサチップに対し、抗HSA抗体固定化二酸化チタン複合体は反応してチップに結合しているが、ストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合体は反応せず結合は起こらなかった。すなわち、二酸化チタン上の親水性高分子に固定化された抗HSAモノクローナル抗体は、固定化後も抗体としての活性を確実に保持していることが確認された。
(実施例11)
抗HSA抗体固定化二酸化チタン複合体による抗原HSAの分解
HSAを20ng/mlになるようにPBS緩衝液(pH7.0、日本ジーン)で希釈し、実施例3で作製した抗HSA抗体固定化二酸化チタン複合体を固形成分0.01%になるように添加した。次いで、室温で30分放置後、波長340nmの紫外光を1mW/cmになるように照射し、15分毎にサンプリングを90分間行った。実施例4で作製したストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合体についても同様の処理を行った。別途、実施例8の方法に準じて、表面プラズモン共鳴測定用の抗HSAポリクローナル抗体(ウサギ)固定化センサチップを作製した。実施例8と同様にBIACORE1000を用い、各経時サンプルを抗HSA抗体固定化センサチップに20μl送液し、次いで2次抗体として抗HSAポリクローナル抗体(ウサギ)50μg/mlを10μl送液してサンドイッチアッセイを行い、抗体送液後10秒後のRU値(結合量に相当)を測定した。UV未照射時のRU値を100%とした相対値から算出したHSAの分解率を図4に示す。図4の結果から、抗HSA抗体固定化二酸化チタン複合体はストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合体と比べ、HSAの分解速度が極めて速いことが示された。
(実施例12)
二酸化チタン複合微粒子封入リポソームの作製
ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC)/コレステロール(Chol)/ジパルミトイルフォスファチジル酸(DPPA)/マレイミド化ジパルミトイルフォスファチジルエタノールアミン(マレイミド化DPPE)=18/10/2/0.5(mol比)からなる固形混合物(日本精化)100mgに0.4Mクエン酸緩衝液pH4を1ml加えて撹拌し、さらに凍結融解を5回繰り返し水和することによりマルチラメラリポソームを作製した。クロロホルムに溶解した前述のマルチラメラリポソームを含む溶液10mlをロータリーエバポレーターにより蒸発留去して、形成された脂質フィルムを減圧乾燥後に実施例4で得られたストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合微粒子を含む分散液を加えて、ボルテックスで処理し、さらに超音波処理することで、二酸化チタン複合微粒子封入リポソームを作製した。ついで、得られた二酸化チタン複合微粒子封入リポソームを、200nmのポアサイズをもつポリカーボネート膜(ヌクレオポア、マイクロサイエンス)を装着した加圧装置(エクストルーダー、バイオメンブレンズ)で60℃に加温しつつ10回加圧濾過を繰り返すことで、整粒されたリポソームを得た。その後、実施例1と同様に平均分散粒径の測定を行った。その結果、分散粒径は185.7nmであることが確認された。
本発明は、内分泌撹乱物質、あるいは病因分子やガン細胞などに対する分子認識能を有するタンパク質、抗体、DNAなどの生体分子を、水溶性高分子で修飾した二酸化チタンに固定することにより、これらに対する分子認識能を有し、かつ紫外線の照射などの光触媒作用によりこれら物質の分解反応を示す分子識別能を有する二酸化チタン複合体を含む分散液を提供する。本分散液中における二酸化チタン複合体は目的とする物質を特異的に認識捕捉し、紫外線照射などにより目的物質を強力に分解する能力を有する。これにより、例えば水系における内分泌攪乱物質の分解処理などに有用である。また、生体への使用において、生理的条件下で高度に分散した状態を維持できること、目的物質を正確に捕捉できること、強力な光触媒能を有することは、DDSへの応用、さらには選択的な癌細胞の破壊などの医療への応用に極めて有用である。
図1は、本発明の分子識別能を有する二酸化チタン複合体を示す模式図である。二酸化チタン微粒子(1)は親水性高分子(2)により修飾され、かつ特異的な結合能を有する分子(3)は親水性高分子(2)に固定化されている。 図2は、本発明の抗α-フェトプロテイン抗体固定化二酸化チタン複合体による、抗原(α-フェトプロテイン)の分解活性を示す図である。抗原の分解活性は、吸光度の減少として表示されている。 図3は、本発明の抗ヒト血清アルブミン抗体固定化二酸化チタン複合体と抗原(ヒト血清アルブミン)との結合性を、表面プラズモン共鳴法で評価した結果を示す図である。対照として、ストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合体を用いた。 図4は、本発明の抗ヒト血清アルブミン抗体固定化二酸化チタン複合体による、抗原(ヒト血清アルブミン)の分解活性の結果を示す図である。抗原の分解活性は、分解に伴う抗原の抗体との結合量の低下(表面プラズモン共鳴法で測定)から算出した分解率(%)で表示されている。対照として、ストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合体を用いた。 図5は、本発明のストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合体による、溶液のpH変化に対する分散性を示す図である。pH変化に対して、二酸化チタン複合体の平均分散粒径をプロットしてある。 図6は、本発明のストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合体による、溶液の塩濃度変化に対する分散性を示す図である。塩濃度変化に対して、二酸化チタン複合体の平均分散粒径をプロットしてある。 図7は、本発明のストレプトアビジン固定化二酸化チタン複合体を含む分散液および未処理の二酸化チタン微粒子(P25)を含む溶液の様子を上方より撮影した画像である。

Claims (18)

  1. 二酸化チタン微粒子の表面が、カルボキシル基を有する親水性高分子により修飾され、該親水性高分子のカルボキシル基と二酸化チタンがエステル結合で結合しているとともに、
    該親水性高分子のカルボキシル残基に、目的分子に対して特異的な結合能を有する分子を固定化した、二酸化チタン複合体と分散媒とを含んでなり、前記二酸化チタン微粒子の粒径が2〜200nmである、ドラッグデリバリーシステムに用いるための二酸化チタン複合体の分散液。
  2. 前記分散媒は、生体への導入が許容される水溶液であって、該分散媒中に前記二酸化チタン複合体を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の分散液。
  3. 前記分散媒は、pH4〜10であることを特徴とする、請求項2に記載の分散液。
  4. 前記分散媒は、pH緩衝液であることを特徴とする、請求項3に記載の分散液。
  5. 前記分散媒は、塩濃度1M以下であることを特徴とする、請求項3〜4のいずれか一項に記載の分散液。
  6. 前記分散媒は、生理食塩水であることを特徴とする、請求項5に記載の分散液。
  7. 生体への導入が許容される包括体に、該二酸化チタン複合微粒子が包括されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の分散液。
  8. 前記包括体が、リポソーム、ウイルス粒子、中空ナノ粒子のいずれかであることを特徴とする、請求項7に記載の分散液。
  9. 前記二酸化チタンが、アナターゼ型、またはルチル型である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の分散液。
  10. 前記二酸化チタンが、二酸化チタンと磁性材とからなる複合二酸化チタンであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の分散液。
  11. 前記親水性高分子が、水溶性高分子であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の分散液。
  12. 前記水溶性高分子が、ポリカルボン酸を含むことを特徴とする、請求項11に記載の分散液
  13. 前記水溶性高分子が、分子中に複数のカルボキシル基単位を有する共重合体を含むことを特徴とする、請求項11に記載の分散液。
  14. 前記目的分子に対して特異的な結合能を有する分子が、アミノ酸、ペプチド、単純タンパク質、複合タンパク質、および抗体であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の分散液。
  15. 前記目的分子に対して特異的な結合能を有する分子が、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、およびペプチド核酸であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の分散液。
  16. 前記目的分子に対して特異的な結合能を有する分子が、単糖、糖鎖、多糖、および複合糖質であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の分散液。
  17. 前記目的分子に対して特異的な結合能を有する分子が、脂肪酸、脂肪酸誘導体、単純脂質、複合脂質であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の分散液。
  18. 請求項1〜17のいずれか一項に記載の分散液を含んでなることを特徴とする、医薬品。

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