JP4423677B2 - 殺細胞剤 - Google Patents

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本発明は、親水性のカチオンポリマーにより表面改質された分散性光触媒ナノ粒子およびその分散液を用いた殺細胞剤に関する。
強い光活性分解能を有する二酸化チタンを利用して、医学・医療分野への応用検討がなされている。その中の一つに、治療法への応用として二酸化チタンを用いた癌治療の試みがなされている(例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1参照)。これは、標的とするガン細胞に二酸化チタンを担持した金などの金属粒子を撃ち込んで取り込ませた後、紫外線等の光を照射してガン細胞を死滅させようとするものである。二酸化チタンは、大気中や溶液中でも化学的に極めて安定な物質であり、かつ(遮光された)動物体内では毒性もなく安全なことが知られている。また光によって化学反応スイッチのON・OFFや、反応領域および反応の強弱を制御できるため、部位特異的な制御機構による治療法の確立に有用であると考えられる。
従来、二酸化チタンの等電点はpH6前後といわれており、そのため中性付近の水系溶媒中では二酸化チタン粒子は凝集を生じてしまい、これを均一に分散させることは極めて困難であった。それ故、二酸化チタン粒子を水系の分散媒に均一分散させるため、現在までに種々の工夫がなされてきた。例えば、チタンイソプロポキシドから水酸化チタンの沈殿を生成させ、これを硝酸酸性下において高温で解膠した硝酸酸性の二酸化チタンゾルが提案されている(例えば、非特許文献2および3参照)。また、四塩化チタン水溶液にアンモニア水を滴下して水酸化チタンの沈殿を生成させた後、過酸化水素水を添加して100℃で6時間反応させ、二酸化チタン粒子表面をペルオキソ基で修飾したペルオキソ基修飾二酸化チタンゾルを得る方法(例えば、特許文献3参照)、二酸化チタン粒子表面を多孔質シリカにより表面被覆することにより、アルカリ条件下に分散させて安定化させた複合型二酸化チタン微粒子の分散液を得る方法(例えば、特許文献4参照)、分散剤としてポリカルボン酸またはその塩を含有することによって、分散性を高めた二酸化チタンの水溶液を得る方法(例えば、特許文献5参照)等が提案されている。
また、光触媒粒子を水処理に用いる場合の分離・濃縮を容易にする目的で、磁性材と二酸化チタンを複合させた粒子も提案されている。たとえば、鉄粉を担体として有機溶媒に溶解したチタンアルコキシドを表面に被覆したような粒子(例えば、特許文献6参照)や、酸化鉄・シリカ担体に高温処理によってアモルファスあるいは結晶性の二酸化チタンを直接沈着させて、磁性材と二酸化チタン複合粒子を調製する方法(例えば、非特許文献4参照)が提案されている。
しかしながら、硝酸酸性の二酸化チタンゾルの場合ではゾルのpHを中性あるいはアルカリ性にした時に、凝集あるいは沈殿が生じるなどの問題があった。ペルオキソ基修飾二酸化チタンゾルの場合でもゾルのpHは中性であるものの、ゾルに無機塩類を添加すると凝集あるいは沈殿が生じるなどの問題があった。また、多孔質シリカを表面被覆した二酸化チタン微粒子分散液の場合では、分散液のpHを中性あるいは酸性にするとやはり凝集あるいは沈殿が生じるなどの問題があった。さらに、分散剤を添加して分散性を高めた二酸化チタン水溶液でも、分散剤が光触媒の活性により分解されたり、逆に光触媒の活性が低下する場合があり、また塩が共存すると二酸化チタンが凝集あるいは沈殿を生じるなどの問題点があった。表面の一部に二酸化チタンが存在する上記磁性材との複合粒子においても、同様の現象が生じてしまい、やはり凝集・沈殿が問題となっていた。
上述のような問題点は、二酸化チタン粒子を医療材料として生体において適用する場合、中性付近の生理的条件下で二酸化チタン粒子が凝集を生じ、生体に何らかのダメージを与え、好ましくない状況を作り出す原因であった。このため、例えば二酸化チタン分散液を注射液として直接生体内に投与するという行為は不可能であった。
また、細胞内への粒子取込み方法としてリポソームを利用する試みがなされている。リポソームとは、生体膜の構成成分であるリン脂質により形成される、生体適合性に優れた小胞であり、その小胞内に様々な薬物を封入できることから、薬剤のキャリアーとして広く利用されている。さらに、リポソームの荷電、粒子径、脂質成分を変えたり、リポソーム表面に抗原、抗体、糖などの特異的リガンドを結合させたりすることで、細胞あるいは組織に対して特異性を持たせることが出来ることから、ターゲティング可能な薬剤キャリアーとして注目を集め、抗ガン剤をはじめとした副作用が強い化学療法剤の運び屋として臨床応用されている。
カチオニックリポソームとはリポソーム膜の表面に4級アミンなどの正電荷官能基を持つものである。リポソームの外面に正電荷を持たせることによって、負電荷を帯びた細胞との相互作用を増強させ、細胞内に薬剤を取り込ませることができる。カチオニックリポソームは近年、遺伝子の細胞への非ウイルス性導入用キャリアーとして広く用いられるようになった。リポソームは形態学的には小さな1枚膜リポソームと大きな1枚膜リポソームと多重層リポソームに分類されている。Yagiらにより3種類の脂質で構成され、DNAが封入された多重層カチオニックリポソームによる、ヒト悪性脳腫瘍に対するβ型インターフェロン遺伝子治療の試みが行われている(例えば、非特許文献5参照)。
また、この組成のカチオニックリポソームの内部に酸化鉄Fe3O4の10nm程の微粒子であるマグネタイトを封入する方法を検討し、腫瘍局所投与による腫瘍へのターゲティングを行う試みがなされている。クロロホルムに溶解した前述の組成脂質を含む溶液をロータリーエバポレーターにより蒸発留去して、形成された脂質フィルムを減圧乾燥後にマグネタイトを加えて、ボルテックスで処理し、さらに超音波処理することでマグネタイトカチオニックリポソーム(MCL)が得られる。このMCLのin vitroでのT-9 rat glioma細胞への導入効率は、電荷を持たない中性のリポソームに封入したマグネタイト(マグネトリポソーム)と比較して10倍以上高かった(例えば、非特許文献6参照)。
しかしながら、リポソームに微粒子を封入することで、元の微粒子サイズの数十倍程度に大きくなってしまうという問題がある。また、リポソームを作製する工程自体が複雑であり、均質な生産物を提供するのが難しいという問題があった。
R.Caiら:Cancer Research,52,2346-2348(1992) Barbe Christopheら:Journal of the American Ceramics Society,80,3157-3171(1997) Vorkapic Danijelaら:Journal of the American Ceramics Society,81,2815-2820(1998) Beydoun Watsonら:Journal of Photochemistry and Photobiology Chemistry,148,303-313(2002) Ohishi Nら:Biochem Biophys Res Commun.,196,1042-1048(1993) Yoshida Jら:Jpn J Cancer Res.,87,1179-1183(1996) 特開2002-316946号公報 特開2002-316950号公報 特開平10-67516号公報 特開平11-319577号公報 特開平02-212315号公報 特開平09-299810号公報
本発明は上述した従来の技術における問題を解決するためになされたもので、生体内での中性な生理的条件下においても安定して分散し、存在することが可能な微粒子とその分散液を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行い、光触媒性二酸化チタン微粒子表面に親水性のカチオンポリマーを化学的に結合させて表面改質することにより、正電荷を持ち、かつ中性付近はもとより幅広いpH領域においても水系溶媒への分散性が極めて良好となることを見い出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子は、その表面に親水性のカチオンポリマーを強固に結合しており、中性付近で正電荷を持つ。そのため中性付近はもとより幅広いpH領域の水系溶媒中においても極めて良好な分散性を示すものである。さらに、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子の分散液は、この特質により水または塩を含む各種pH緩衝液を溶媒として利用可能であり、生理的条件下、分散剤等の他物質の添加無しに、分散性が極めて良好で、24時間以上にわたって安定な分散液である。また、光触媒性二酸化チタン微粒子の製造方法は、2〜200nmの二酸化チタン粒子分散液と親水性のカチオンポリマー溶液を混合し、80〜220℃の加熱により両者を結合させた後、未結合である親水性のカチオンポリマーを除去して、光触媒性二酸化チタン微粒子を精製することを特徴とするものである。
本発明によれば、生体内での中性な生理的条件下においても安定して分散し、存在することができる。
本発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。図1は本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子を示す模式図である。本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子は、光触媒性二酸化チタン微粒子表面に親水性のカチオンポリマーを有し、該カチオンポリマーのアミンと二酸化チタンは強く結合し、これにより光触媒性二酸化チタン微粒子のみで分散剤等の他物質の添加無しに、水溶液中において安定して分散可能であることを特徴とするものである。 本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子の等電点は、親水性高分子に含まれるアミンの等電点を反映し、中性の水系溶媒中においても粒子間に電気的斥力が働くため良好な分散性を示すものである。
本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子の材料として用いる二酸化チタンとしては、結晶系がアナターゼ型でもルチル型であっても良い。これは、結晶系が異なっていても水和されて水酸基が生成するという化学的性質が同一であれば表面改質が可能なためである。強い光触媒能が所望であればアナターゼ型を、あるいは化粧料のように高屈折率等の性質が所望であればルチル型を、適宜好適に選択できる。また、同様な理由から、単一の二酸化チタン粒子だけでなく、二酸化チタンと磁性材とからなる複合二酸化チタン粒子も好適に使用される。さらに、その使用形態の自由度の観点から、これらの分散粒経は2〜200nmであることが望ましい。これは、粒径が200nmよりも大きくなると微粒子に作用する重力の効果も大きくなるため、より沈降しやすくなるためである。
また、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子は、分散性の観点から分散粒経が2〜500nmであることが好ましい。癌治療用として体内への適用の場合、腫瘍細胞への蓄積効果の観点から分散粒経が50〜200nmであることがより好ましい。このような範囲とすることで、生理的条件下で24時間以上にわたって、安定した分散が可能となる。尚、ここでいう分散粒径とは、動的光散乱法によって測定を行い、キュムラント法解析から算出される平均値のことを示している。また、ここでいう生理的条件下とは25℃、1気圧で(137mM NaCl,8.1mM Na2HPO4,2.68mM KCl,1.47mM KH2PO4)の組成であるリン酸緩衝食塩水(pH7.4)存在下のことを示す。
また、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子は、親水性高分子が水溶性高分子であることを特徴としている。これは、本発明が光触媒性二酸化チタン微粒子を水溶液中に分散した状態で使用することを想定しており、したがって本発明で用いる親水性高分子としては水溶性高分子が望ましい。水溶性高分子としては、重量平均分子量が1000から100000の範囲にあるアミンであればいずれも使用可能であるが、例えばポリアミノ酸、ポリペプチド、ポリアミン類、およびアミン単位を有する共重合体(コポリマー)などが挙げられる。具体的には、水溶性高分子の加水分解性および溶解度の観点から、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等のポリアミン類がより好適に使用される。
また、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子の分散液は、水系溶媒に分散していることを特徴とする。これは、水系の分散媒体中では、光触媒性二酸化チタン微粒子表面上に存在するアミンにより、粒子間に電気的斥力が働くために凝集することなく、長期間にわたって安定に存在することによる。しかも、基本的にpHの変動や無機塩類の添加に対しても極めて安定である。さらに、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子の等電点は、該親水性高分子のアミンの等電点を反映しており、pH9以下の水系分散媒中ではpHが減少するにつれて粒子間に働く電気的斥力が増大するため、pHが3〜9の水系分散媒中で極めて良好な分散性を示すものである。これらのことから、本分散液は前記水系溶媒としてpH緩衝液を利用することが可能である。すなわち、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子は、pHが3〜9の範囲であればいかなる緩衝成分が水系分散媒に含有されていても良好な分散性を示すものである。ここで使用され得る好適な緩衝液としては、グリシン緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液(PBSを含む)、炭酸緩衝液、マッキルベインの緩衝液、グッドの緩衝液、ホウ酸緩衝液などが挙げられる。中性付近の緩衝液が使用できるということは、バイオテクノロジー分野や医薬医療分野における応用に対して極めて有利である。なお、上記の良好な分散性を維持するために、分散液中の表面改質二酸化チタン微粒子のアミノ基/二酸化チタン量比(mol/g)は、反応条件により異なるが概ね1.5×10-2以上であるのが好ましい。
また、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子の製造方法は、光触媒性二酸化チタン微粒子表面に親水性高分子を結合させる反応において、(1)二酸化チタンゾルを溶媒に分散させる工程と、(2)親水性高分子を溶媒に分散させる工程と、(3)これらの分散液を混合する工程と、(4)この混合液を加熱する工程と、(5)光触媒性二酸化チタン微粒子と未結合親水性高分子とを分離する工程と、(6)光触媒性二酸化チタン微粒子を精製する工程とからなることを特徴とする。
本発明で用いる二酸化チタンゾルとしては、チタンテトライソプロポキシド等を原料として合成することも、無機酸で解膠した既存の酸性二酸化チタンゾルを使用することも可能である。一方、(1)、(2)で用いる溶媒は、二酸化チタンゾルおよび親水性高分子共に溶解できるものが好適である。これは、二酸化チタンが溶媒中で凝集すると親水性高分子との結合反応が起こりうる表面積が減少するため、反応終了後の水系溶媒に対する分散粒径が増大して分散性も悪化するからである。さらに、ここで用いる溶媒として二酸化チタン粒子表面と反応性を有するものは不適である。特に、水酸基を含有するアルコール類は加熱すると二酸化チタン粒子表面とエーテル結合を形成するため、目的とする親水性高分子との結合反応を阻害する。この場合、二酸化チタン粒子の表面特性は使用するアルコールの特性に依存し、水系の分散媒に対する分散性が著しく低下する。本発明で使用する溶媒は上記反応性の点から、非プロトン性極性溶媒を使用することが好ましいが、具体的にはジメチルホルムアミド、ジオキサン、もしくはジメチルスルホキシドを溶媒として使用可能であり、さらに揮発性の観点からジメチルホルムアミドを溶媒として使用することがより好適である。このような条件で反応させることにより、二酸化チタンと親水性高分子とが化学的に結合し、高度な分散安定性を発現することができる。
次に、(3)前記溶媒の二酸化チタン分散液と、親水性高分子分散液とを混合して攪拌を行い、二酸化チタンと親水性高分子が均一に分散した分散液を作製する。この際、二酸化チタン分散液に直接親水性高分子を添加すると二酸化チタンの凝集を引き起こす場合があるので、各分散液をそれぞれ作製してから混合することが望ましい。
次いで、(4)この混合液を加熱して結合反応を行うが、この際二酸化チタンと親水性高分子との比率を適宜選択すれば加圧しなくとも反応は進行する。しかしながら、加圧すると反応がより促進されるため、加圧下で反応を進行させる方が望ましい。この際、親水性高分子としてポリエチレンイミン(平均分子量:10000)を用いた場合では、分散性をより好適にするためポリエチレンイミンの終濃度を10mg/ml以上とするのが好ましい。本発明の製造方法においては、前記加熱温度が80〜220℃であることを特徴としている。加熱温度が80℃よりも低い場合は親水性高分子の結合量が低下して水系溶媒への分散性が低下する。また、加圧下で反応を行う場合では、加熱温度が220℃を超えると反応容器の密閉性の問題から不適である。さらに、水の沸点以上の温度で反応を進行させる場合では、二酸化チタンゾルに含まれる水分が完全に反応系外に揮散されると二酸化チタンが凝集するので、加圧下で反応を進行させる方が望ましい。一方、反応液中の水分含量が高すぎると逆に反応を阻害する場合があることから、反応液中の水分含量は反応条件によって異なるが概ね4%以下が望ましい。
次に、(5)生成後の光触媒性二酸化チタン微粒子と未結合親水性高分子を分離する。分離する手段としては、透析法、限外濾過法、ゲル濾過クロマトグラフィー法、あるいは沈殿法などが好適に使用できるが、透析法や限外濾過法で分離する場合では使用した親水性高分子の分子量に合致した透析膜または限外濾過膜を使用する必要がある。すなわち、上記のいずれの方法でも分離可能であるが、操作の簡便性から有機溶媒を用いた有機溶媒沈殿法を利用することが望ましい。
有機溶媒沈殿法を利用する場合には、反応終了後に反応液に対して2倍量のイソプロパノールを添加し、室温で30分間静置する。適量のイソプロパノールを添加することで、溶解度の低下により粒子は沈殿するが、粒子と結合していない親水性高分子は凝集せずに溶液中に残存するため、この溶液を遠心して未結合親水性高分子を除去することが可能となる。回収した沈殿を70%エタノールで洗浄し、洗浄液は遠心分離により除去する。
次いで、(6)沈殿物である光触媒性二酸化チタン微粒子をpH3〜9、より好ましくはpH5〜8の水系溶媒に懸濁する。ここで使用する水系溶媒としては、水、所望のpH緩衝液等を好適に利用できる。また、この懸濁液を攪拌または超音波照射により表面改質二酸化チタン微粒子を均一に分散させ、脱塩後乾燥すると光触媒性二酸化チタン微粒子の乾燥粉体を得ることができる。取扱いが簡便で安定な粉体を製造出来ることは、光触媒性二酸化チタン微粒子を種々の用途に応用する際極めて有利である。
さらに、二酸化チタンと磁性材とからなる複合二酸化チタン微粒子の場合も、二酸化チタンが微粒子の表面に露出していれば、溶媒中での特性は単一の二酸化チタンと近似しているために、上記と同一の製造法、精製法を適用することができる。この光触媒性二酸化チタン微粒子は磁性を有しているため、例えば水中の有害物質の分解処理等への応用に際し、処理後に磁石によって該微粒子を容易に回収できるため、極めて有用である。
また、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子は、表面上に存在するアミンにより、粒子間に電気的斥力が働くために凝集することなく、少なくとも24時間以上にわたって安定に存在することによる。
しかも、基本的にpHの変動や無機塩類の添加に対しても極めて安定である。さらに、表面上に存在するアミンによって表面電荷が正に帯電していることから、一般的に負の表面電荷をもつ細胞への親和性、取込み性が著しく高く、癌細胞の破壊を目的とした医療用材料として極めて有用である。これらの観点から、表面電位の最適範囲としては、良好な分散性と細胞取込み性を達成できる範囲にあればよく、+20mV以上あればよい。さらに望ましくは、一般に自主分散(粒子が沈殿しない状態)が十分に達成できる電位として+40mV以上あればよい。
また、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子を含む分散液は、光触媒性二酸化チタン微粒子間に電気的斥力が働くために凝集することなく、少なくとも24時間以上にわたって安定することができ、これを達成できる塩濃度の範囲として、1M以下であればよい。さらに望ましくは、生体への適用を考えた場合に生体内での中性な生理的条件下においても安定して分散し、存在することができればよく、塩濃度として100mM〜300mM程度であればよい。
また、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子を含む分散液は、光触媒性二酸化チタン微粒子間に電気的斥力が働くために凝集することなく、少なくとも24時間以上にわたって安定することができ、これを達成できる光触媒性二酸化チタン粒子濃度の範囲として、重量百分率で20%以下であればよい。さらに望ましくは、生体への適用を考えた場合に細胞に対する安全性の観点から、重量百分率で0.1%〜0.0001%であればよい。
以上のことから、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子を含む分散液を水、種々のpH緩衝液、輸液、あるいは生理食塩水を用いた、均一で安定な分散液として提供することが可能となる。また、本分散液を含む軟膏やスプレー剤等も製造が可能である。この特性は、特に二酸化チタンを体内外のDDSに応用する際に極めて有用である。すなわち、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子を含む分散液は中性付近の生理的条件においても凝集することがないために、患部組織に直接注射したり静脈に注射してターゲティングを行うことが可能となる。また、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子を含む分散液を含む軟膏やスプレー剤を皮膚等の患部に直接塗布し、太陽光や紫外線ランプ等により治療を施すことが可能となる。
本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子を励起、活性化させるための光源装置は特別である必要はないが、二酸化チタンのバンドギャップの関係上その波長は400nm以下であることが望ましい。皮膚等の外用用途では、太陽光や通常の紫外線ランプ、あるいはブラックライトを好適に使用できる。また、体内の患部に対しては内視鏡に紫外線ファイバーを装着することにより紫外線を照射すれば良い。さらに、特に280nm付近の紫外線を局所的に患部に照射して病変部を破壊しようとする光療法を想定した場合では、その作用増強剤として本発明の二酸化チタン複合微粒子を含む分散液を適用することも可能である。
さらに、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子は、表面上に存在するアミンによって表面電荷が正に帯電していることから、一般的に負の表面電荷をもつ細胞への親和性、取込み性が著しく高く、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子と細胞とが接触すると直ちに細胞への結合や取込みが始まる。このことから、特に生体の皮膚表面や、あるいは気管、消化器などの生体内の表層部や、生体内に存在する様々な患部への適用が非常に有効であり、例えば、本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子を含む分散液を含む軟膏やスプレー剤を皮膚癌や喉頭癌といった癌患部に直接塗布したり、あるいは注射により固形ガンに局所投与した後に、太陽光や紫外線ランプ等により治療を施すことにより簡便でかつ高い治療効果を得ることができるものである。
以下、本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
二酸化チタン粒子へのポリエチレンイミンの導入(その1)
チタンテトライソプロポキシド3.6gとイソプロパノール3.6gを混合し、氷冷下で60mlの超純水に滴下して加水分解を行った。滴下後に室温で30分間攪拌した。攪拌後、12N硝酸1mlを滴下して80℃で8時間攪拌を行い、ペプチゼーションした。
ペプチゼーション終了後0.45μmのフィルターで濾過し、さらに脱塩カラムPD-10(アマシャム・ファルマシア・バイオサイエンス社製)を用いて溶液交換して固形成分1%の酸性二酸化チタンゾルを調製した。この分散液を100ml容のバイアル瓶に入れ、200Hzで30分間超音波処理を行った。超音波処理を行う前後の平均分散粒経はそれぞれ、36.4nm、20.2nmであった。超音波処理後、溶液を濃縮して固形成分20%の二酸化チタンゾルを調製した。得られた二酸化チタンゾル0.75mlを20mlのジメチルホルムアミド(DMF)に分散させ、ポリエチレンイミン(平均分子量:10000、和光純薬)450mgを溶解したDMF10mlを添加後、攪拌して混合した。
水熱反応容器(HU-50、三愛科学)に溶液を移し変え、150℃で6時間合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応液に対して2倍量のイソプロパノール(和光純薬)を添加した。室温で30分間静置後、遠心分離により沈殿を回収した。回収した沈殿を70%エタノールで洗浄後、2.5mlの水を加えてポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子(アナターゼ型)の分散液を得た。作製したポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子の分散粒径を、ゼータサイザーナノZS(シスメックス社製)を用いて、ゼータ電位測定セルにポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて動的光散乱法により測定したところ、作製したポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子の平均粒径は65.6nmであった。また、同様の条件でゼータサイザーナノZSを用いてゼータ電位を測定したところ、作製したポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子のゼータ電位は+35.7mVであった。
(実施例2)
二酸化チタン粒子へのポリエチレンイミンの導入(その2)
平均分子量7500のポリエチレンイミンを用いたこと以外、実施例1と全く同様の方法でポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子を合成した。平均分子量7500のポリエチレンイミンを用いた場合でも、ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子(アナターゼ型)の分散液はいずれも良好な分散性を示し好適であった。
(実施例3)
二酸化チタン粒子へのポリエチレンイミンの導入(その3)
酸性二酸化チタンゾルの代わりにアルカリ性二酸化チタンゾル(タイノックAL―6、多木化学社製)を用いたこと以外、実施例1と全く同様の方法でポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子を合成した。アルカリ性二酸化チタンゾルを用いた場合でも、ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子(アナターゼ型)の分散液はいずれも良好な分散性を示し好適であった。
(実施例4)
磁性材/酸化チタン複合微粒子へのポリエチレンイミンの導入
セパラブルフラスコ内にポリオキシエチレン(15)セチルエーテル(C-15:日本サーファクタント工業社製)を45.16gを溶解させて5分間窒素置換した後、シクロヘキセン(和光純薬社製)75mlを添加、0.67MのFeCl2(和光純薬社製)水溶液3.6mlを添加し、250rpmで攪拌しながら30%アンモニア水溶液5.4mlを添加し、1時間反応させた。その後、50mMテトラエチルオルソシリケイト水溶液(和光純薬社製)を0.4ml滴下して1時間反応させた。その後、チタンテトライソプロポキシド(和光純薬社製)を最終濃度5mMになるように加えた。50%(w/v)エタノール水溶液10mlを1mlずつ10分間隔で添加した。水溶液を遠心分離し、沈殿物を350℃で2時間焼成した。焼成後、10mM硝酸水溶液に分散させて超音波処理後、0.1μmのフィルターでろ過した。得られた磁性材/酸化チタン複合体ゾル0.75mlを20mlのジメチルホルムアミド(DMF)に分散させ、ポリエチレンイミン(平均分子量:10000、和光純薬社製)450mgを溶解したDMF10mlを添加後、攪拌して混合した。水熱反応容器(HU-50、三愛科学社製)に溶液を移し変え、150℃で6時間合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応液に対して2倍量のイソプロパノール(和光純薬社製)を添加した。室温で30分間静置後、遠心分離により沈殿を回収した。回収した沈殿を70%エタノールで洗浄後、2.5mlの水を加えてポリエチレンイミン結合磁性材/二酸化チタン複合微粒子(アナターゼ型)の分散液を得た。本分散液は白濁も生ぜず、微粒子が良好に分散しており単一の二酸化チタンの場合と同様に好適な分散液であった。
(実施例5)
ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子のイソプロパノールに対する溶解性
ポリエチレンイミン200mgを10mlのDMFに溶解したものを、溶液(A)とした。実施例1の工程中で得られた固形成分20%の二酸化チタンゾル0.25mlを10mlのDMFに分散させたものを、溶液(B)とした。また、実施例1の工程中で得られた固形成分20%の二酸化チタンゾル0.25mlとポリエチレンイミン200mgを10mlのDMFに溶解したものを混合させたものを、溶液(C)とした。さらに、溶液(C)を150℃で6時間反応させたポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子の分散液を、溶液(D)とした。(A)〜(D)の各溶液に2倍量のイソプロパノールを添加して撹拌後静置し、沈殿の生成を確認した。その結果、溶液(A)〜(C)はいずれもイソプロパノール中で沈殿のない透明な分散体であったが、溶液(D)のみが沈殿を生じたことが確認され、単にポリエチレンイミンと二酸化チタン微粒子を混合した状態に比べてポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子は、ポリエチレンイミンと二酸化チタン微粒子の間により強い結合を有しているためにイソプロパノールによる影響を受けて沈殿を形成したことが示唆された。
(実施例6)
ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子の中性溶液における安定性
実施例5で用いた(A)〜(D)と同組成の各溶液を用いて、中性溶液におけるそれぞれの安定性を評価した。すなわち、(A)〜(D)の各溶液を200mMリン酸緩衝液(pH7.0)で10倍に希釈して撹拌後静置し、沈殿生成の有無を観察した。その結果、二酸化チタンゾルを含む溶液(B)と(C)は沈殿を生じたが、溶液(A)と(D)では沈殿を生じなかった。これは二酸化チタンの等電点が中性付近にあるため、溶液(B)と(C)では二酸化チタンが凝集してしまい沈殿を生じたと考えられる。一方、溶液(D)では、二酸化チタン表面は無数のアミンにより修飾されているため、中性付近では粒子全体が正電荷を帯びており、均一に分散された状態を保持している。すなわち、溶液(C)と(D)の比較において実施例7と8の結果から、ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子は、ポリエチレンイミンの添加で単に分散性を高められた状態の二酸化チタン微粒子とは、全く異なる物性を示すことが分かった。
(実施例7)
ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子分散液の二酸化チタン含量の測定
実施例1で得られたポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子の分散液を110℃で1時間加熱乾燥し、さらに4時間強熱して完全に灰化した。これをシリカゲルデシケータ中で冷却し、前記分散液中の正味の二酸化チタン量として質量を測定した。その結果、前記分散液は、0.25%(w/v)の二酸化チタンを含むことが示された。
(実施例8)
ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子分散液のアミノ基含量の測定
実施例1で得られたポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子のアミノ基をフルオレスカミン(東京化成工業社製)との反応により確認と定量を行った。フルオレスカミンはアミノ基と反応し、蛍光物質を生成するので、ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子とフルオレスカミンとの反応での生成物の蛍光強度を測定することにより確認と定量を行うことができる。100mMホウ酸緩衝液(pH9.0)によって所定濃度に調製したグルコサミン溶液を作製して、励起波長395nmおよび蛍光波長480nmでの蛍光強度について検量線を作成し、この検量線を用いてポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子上のアミノ基含量を求めた。その結果、前記分散液は4.01×10-2Mの濃度でアミノ基を含むことが示された。実施例7の結果から、前記分散液のアミノ基/二酸化チタン量比は、1.63×10-2(mol/g)であった。
(実施例9)
ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子(アナターゼ型)の光触媒活性の評価
実施例1で得られたポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子(アナターゼ型)を固形成分が0.02%になる様に50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈した。メチレンブルー三水和物(和光純薬社製)を40μMになる様に水溶液に添加した。攪拌しながら、本水溶液に波長340nmの紫外光を1.5mW/cm2になるように照射し、580nmにおける波長の吸収を紫外-可視光分光光度計により測定した。結果を図2に示した。紫外線を照射しなかった混合液に比べ、紫外線照射を行った混合液は照射時間の経過と共にメチレンブルーの分解にともなう吸光度の減少が認められることから、実施例1で得られたポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子(アナターゼ型)が光触媒活性を保持していることは明らかである。
(実施例10)
ポリエチレンイミン二酸化チタン微粒子のpH安定性の評価
50mMの異なるpHを持つ緩衝液(pH3=グリシン塩酸緩衝液、pH4および5=酢酸緩衝液、pH6=2-モルフォリノエタンスルホン酸緩衝液)、pH7および8=2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液、pH9=ホウ酸緩衝液、pH10=グリシン水酸化ナトリウム緩衝液)を作成し、終濃度0.025(w/v)%になるように実施例1で得られたポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子を含む分散液を添加し、1時間室温にて静置した。その後、ゼータサイザーナノZSにて実施例1と同様に平均分散粒径の測定を行った。結果を図3に示す。pHが3から10の間で粒径の変化は認められるものの70から85nm程度であり、安定した分散性を示した。
(実施例11)
ポリエチレンイミン二酸化チタン微粒子の塩強度安定性の評価
0.05〜5Mの異なる塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液に実施例1で得られたポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子を終濃度0.025%になるように添加し、1時間室温にて静置した。その後、ゼータサイザーナノZSにて実施例1と同様に平均分散粒径の測定を行った。結果を図4に示す。
系中の塩濃度が0.05から1Mの間はほとんど平均分散粒径の変化は認められず、安定した分散性を示すことが明らかになった。
(実施例12)
二酸化チタン複合微粒子の均一性(透明度)の評価
0.1Mの塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液を用いて、実施例1で得られたポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子を含む分散液を終濃度0.1%になるように調整し、1時間室温にて静置した。また、二酸化チタン微粒子としてP25(日本アエロジル)を0.1Mの塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液を用いて、同様に終濃度0.1%になるように調整し、1時間室温にて静置した。その後、シャーレに5ml移し上方から撮影し、確認した。その結果を図5に示す。P25水溶液に対してポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子を含む分散液は明らかに透明度が高く、均一に分散していることが確認された。また、分光光度計(UV-1600、島津製作所)を用いて波長660nmにおける吸光度の測定を行った結果、P25水溶液は吸光度が1を大きく上回り測定不能であったのに対して、ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子を含む分散液は吸光度が0.044であり、また沈殿の形成は起きていなかった。更に、これらの溶液を室温暗所にて2週間静置した後に、同様に波長660nmにおける吸光度の測定を行った結果、P25水溶液は吸光度が1を大きく上回り測定不能であったのに対して、ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子を含む分散液は吸光度が0.051であった。このことから、水溶液中において二酸化チタン複合微粒子の分散液が透明度の高い、均一な分散性を示し、かつ安定していることが明らかになった。
(実施例13)
ポリエチレンイミン二酸化チタン微粒子の細胞毒性の評価
実施例1で得られたポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子を含む分散液を、固形分が1.0%になるように10%血清を含むRPMI1640培地(GIBCO社製)で調整した。培養ガン細胞(Jurkat)を、10%血清を含むRPMI1640培地(GIBCO社製)で37℃、5%二酸化炭素雰囲気下で培養し、5.0×10 細胞数/mlとなるように調製した。これを再度20時間同条件で培養した。この細胞培養液に、上記ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子を含む分散液を終濃度で0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%になるように96穴プレート上で調整し、200μlの試験用細胞培養液とした。この試験用細胞培養液を37℃、5%二酸化炭素雰囲気下で20時間培養した後、それぞれ100μlを用いてCelltiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega社製)により生細胞由来の発光反応を行い、イメージアナライザLAS-3000UVmini(富士フィルム社製)を用いてその発光量測定を行うことで細胞毒性の評価を行った。その結果を図6に示す。何も添加していないコントロールの培養細胞における発光量に比べ、どの分散液濃度においても同等の発光量を確認したことから、この濃度域のポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子を含む分散液は細胞毒性が認められないことが明らかになった。
(実施例14)
ポリエチレンイミン二酸化チタン微粒子の細胞取込み性の評価
実施例1で得られた二酸化チタンゾル0.75mlを20mlのジメチルホルムアミド(DMF)に分散させ、ポリアクリル酸(平均分子量:5000、和光純薬社製)0.2gを溶解したDMFを10ml添加後、攪拌して混合した。水熱反応容器に溶液を移し変え、180℃で6時間水熱合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、溶液を取り出した後に水80mlを添加して攪拌混合した。エバポレータでDMFおよび水を除去した後に、再度、水20mlを添加してポリアクリル酸結合二酸化チタン微粒子の水溶液とした。2N塩酸1mlを添加して二酸化チタン粒子を沈殿させて、遠心後に上清を除去することにより未反応のポリアクリル酸を分離した。再度水を添加して洗浄を行い、遠心後に水を除去した。50mMリン酸緩衝液(pH7.0)を10ml添加後、200Hzで30分間超音波処理を行い、二酸化チタン粒子を分散させた。超音波処理後、0.45μmのフィルターで濾過し、重量百分率で0.25%のポリアクリル酸結合二酸化チタン微粒子の分散液を得た。ゼータサイザーナノZS(シスメックス社製)を用いて、ゼータ電位測定セルにポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて動的光散乱法により測定したところ、作製したポリアクリル酸結合二酸化チタン微粒子の平均粒径は45.9nmであった。このポリアクリル酸結合二酸化チタン微粒子の分散液2mlに対して、0.8M 1-Ethyl-3-[3-Dimethylaminopropyl]Carbodiimide Hydrochlorideを250μlおよびN-Hydroxysuccinimideを250μl加えて、撹拌しながら室温で1時間反応させた。10mM 酢酸緩衝液(pH5.0)で平衡化した脱塩カラムNAP-10(アマシャム・ファルマシア・バイオサイエンス社製)を用いてゲル濾過を行って溶液交換し、その後に10mM酢酸緩衝液(pH5.0)を用いて全量を9.5mlとした。そこへ、DMFに溶解させた100mM 5-amino fluorescein(NCI社製)を5μl加え、遮光下で撹拌しながら室温で1時間反応させた。次に、0.1Mのエタノールアミン(和光純薬工業社製)水溶液を500μl加え、遮光下で撹拌しながら室温で30分間反応させた。この溶液を100mMリン酸緩衝食塩水(pH7.5)で平衡化した脱塩カラムPD-10を用いてゲル濾過を行って溶液交換し、未反応の5-amino fluoresceinを分離し、その後、溶液を2mlにまで濃縮した。これを蛍光色素標識ポリアクリル酸結合二酸化チタン微粒子の分散液とした。
また、実施例1で得られたポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子の分散液を500μlを、100mMリン酸緩衝食塩水(pH7.5)で平衡化した脱塩カラムNAP-10を用いてゲル濾過を行って溶液交換し、そこへ、最終濃度が0.8mMになるようにDMSOに溶解したフルオレセインイソチオシアネート(ピアース社製)を加え、30分間室温で穏やかに攪拌した。反応終了後、あらかじめPBSにて平衡化したPD-10(アマシャム・ファルマシア・バイオサイエンス社製)により溶液交換を行い、その後、溶液を2mlにまで濃縮した。これを蛍光標識ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子の分散液とした。
次に、メラノーマ細胞株T-24を10%血清を含むF12培地(ギブコ社製)で100%コンフルエントにになるまで培養し、フラスコを100mMリン酸緩衝食塩水(pH7.4)で2回洗浄し、100mMトリプシン-エチレンジアミン三酢酸溶液を1ml添加し、10分静置後、フラスコ壁面より剥離した細胞を回収し、9mlの10%血清を含むF12培地で希釈した。細胞数を血球計算盤により計測し、5×10個の細胞を含む培地500μlをそれぞれ24穴マイクロタイタープレートに接種し、最終濃度0.01%になるように分注した。そこに、先の蛍光色素標識ポリアクリル酸結合二酸化チタン微粒子の分散液および蛍光色素標識ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子の分散液をそれぞれ最終濃度0.01%となるよう100μl加え、24時間CO2インキュベータ内で培養した。その後、細胞のフラスコへの接着を確認し、フラスコを100mMリン酸緩衝食塩水にて洗浄し、200μlの10%血清を含むF12培地を添加し、蛍光顕微鏡により観察を行った(図7)。蛍光視野像を観察した結果、蛍光色素標識ポリアクリル酸結合二酸化チタン微粒子よりも蛍光色素標識ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子のほうが明らかに細胞に対して高い親和性と細胞取込み性をもつことが確認された。
(実施例15)
ポリエチレンイミン二酸化チタン微粒子の細胞殺傷性の評価
メラノーマ細胞株T-24を10%血清を含むF12培地(ギブコ社製)で100%コンフルエントにになるまで培養し、フラスコを100mMリン酸緩衝食塩水(pH7.4)で2回洗浄し、100mMトリプシン-エチレンジアミン三酢酸溶液を1ml添加し、10分静置後、フラスコ壁面より剥離した細胞を回収し、9mlの10%血清を含むF12培地で希釈した。細胞数を血球計算盤により計測し、5×10個の細胞を含む培地500μlをそれぞれ24穴マイクロタイタープレートに接種した。そこに、実施例1で得られたポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子の分散液を100mMリン酸緩衝食塩水(pH7.4)で調整し、最終濃度0%および0.01%となるよう100μl加え、ブラックライト(東芝社製)により波長340nmの紫外光を2.5mW/cm2で0分間および60分間照射し、24時間CO2インキュベータ内で培養した。Cell counting kit-8(同人化学社製)を試薬のマニュアルに従い調整して加え、96穴プレート上にて吸光度計Benchmark(Bio-Rad社製)を用い、波長450nmの吸光度測定を行った。その結果を表1に示す。
Figure 0004423677


バックグラウンドの値を差し引いた紫外線照射0分間、ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子濃度0%における生細胞由来の吸光度を1として相対生存率を示した。この結果から、ポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子が0.01%存在下で紫外線照射60分間の実験条件における場合のみ、相対生存率が減少しており、これによりポリエチレンイミン二酸化チタン微粒子は細胞殺傷性が高いことが確認された。
本発明は、親水性のカチオンポリマーを化学的に結合させて表面改質することにより、表面電荷が正電荷にチャージし、これにより中性付近はもとより幅広いpH領域においても水系溶媒への分散性が極めて良好である光触媒性二酸化チタン微粒子を含む分散液を提供する。本光触媒性二酸化チタン微粒子は正電荷を帯びていることから、負電荷を帯びる物質を捕捉し、紫外線照射などにより目的物質を強力に分解する能力を有する。一般に細胞はその表面が負電荷を帯びていることから、本光触媒性二酸化チタン微粒子は細胞に対して極めて親和性が高く、また取込み性もよい。このことを利用して、特に癌細胞の破壊などの医療への応用に極めて有用である。
本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子を示す模式図である。 本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子の光触媒活性(メチレンブルーの分解にともなう吸光度の減少として表示)を測定した結果を示す図である。図中○および●は、実施例1で作製したポリエチレンイミン結合二酸化チタン微粒子(アナターゼ型)を用いて、○が紫外線照射なし、●が紫外線照射ありをそれぞれ表している。 本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子の各pHにおける平均分散粒径を測定した結果を示す図である。 本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子の各塩濃度における平均分散粒径を測定した結果を示す図である。 本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子の均一性(透明度)を確認した結果を示す写真図である。 本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子の各濃度における細胞毒性を測定した結果を示す図である。 本発明の光触媒性二酸化チタン微粒子の細胞取込み性を確認した結果を示す写真図である。

Claims (17)

  1. 光触媒性二酸化チタン微粒子と、該光触媒性二酸化チタン微粒子の表面に修飾される親水性のカチオンポリマーとを含んでなり、前記親水性カチオンポリマーと光触媒性二酸化チタンが結合されてなる、殺細胞剤。
  2. 前記光触媒性二酸化チタンが、アナターゼ型、またはルチル型である、請求項1に記載の殺細胞剤。
  3. 前記光触媒性二酸化チタンの粒径が、2〜200nmである、請求項1または2に記載の殺細胞剤。
  4. 前記光触媒性二酸化チタンが、光触媒性二酸化チタンと磁性材とからなる複合二酸化チタンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の殺細胞剤。
  5. 前記カチオンポリマーが、水溶性高分子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の殺細胞剤。
  6. 前記水溶性高分子がアミンである、請求項5に記載の殺細胞剤。
  7. 前記水溶性高分子が、ポリエチレンイミンを含む、請求項5に記載の殺細胞剤。
  8. 前記水溶性高分子が、分子中に複数のアミン単位を有する共重合体を含む、請求項5に記載の殺細胞剤。
  9. 前記光触媒性二酸化チタン微粒子の表面電位が+20mV以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の殺細胞剤。
  10. 水系溶媒に分散していることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の殺細胞剤。
  11. 前記水系溶媒のpHが3〜9である、請求項10に記載の殺細胞剤。
  12. 前記水系溶媒がpH緩衝液である、請求項10に記載の殺細胞剤。
  13. 前記水系溶媒の塩濃度が1M以下である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の殺細胞剤。
  14. 前記水系溶媒が、生理食塩水である、請求項13に記載の殺細胞剤。
  15. 前記光触媒性二酸化チタン微粒子の分散液が、前記光触媒性二酸化チタン微粒子を重量百分率で0.0001〜0.1%含んでなる、請求項10〜14のいずれか一項に記載の殺細胞剤。
  16. 生体の皮膚表面、生体内の表層部に存在する患部に適用する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の殺細胞剤。
  17. 前記細胞が癌細胞である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の殺細胞剤。


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