JP3835167B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の制御対象の入力をフィードバック制御する内燃機関の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子制御化が進んだ自動車は、各種の制御をフィードバック制御により行っている。例えば、空燃比制御(燃料噴射制御)、可変バルブタイミング制御、電子スロットル制御、燃料ポンプ制御、ターボチャージャの過給圧制御、アイドル回転速度制御、クルーズコントロール(定速走行制御)等にフィードバック制御が用いられている。
【0003】
従来のフィードバック制御は、制御対象の出力(制御量)をセンサ等で検出し、制御対象の出力を目標値に一致させるように、制御対象の出力と目標値との偏差に応じて制御対象の入力(操作量)の補正量を算出し、制御対象の入力をこの補正量で補正して、制御対象の出力を目標値に追従させるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動車のフィードバック制御の対象となる系は、むだ時間(遅れ要素)が大きい場合が多く、しかも、そのむだ時間がエンジン運転状態や制御系の経時劣化等によって変化する。このため、上記従来のフィードバック制御は、むだ時間の変化の影響を受けやすく、応答性を速くするために、高ゲイン化すると、フィードバック制御が不安定になって、ハンチングが発生する可能性がある。このため、上記従来のフィードバック制御では、高ゲイン化(高応答性)と安定性とを両立させることが困難である。しかも、制御対象のモデル化誤差の影響を受けて安定性が低下しやすく、ロバスト性が低いという欠点もある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、フィードバック制御の高ゲイン化(高応答性)と安定性とを両立させることが可能になると共に、ロバスト性も高めることができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の内燃機関の制御装置は、中間目標値設定手段により、所定時間毎又は所定クランク角毎に制御対象の出力と最終目標値とに基づいて中間目標値を設定し、フィードバック制御手段により、制御対象の出力と所定時間毎又は所定クランク角毎に設定される中間目標値とに基づいて制御対象の入力の補正量を算出して該制御対象の入力を補正することで該制御対象の出力を前記最終目標値に一致させるようにフィードバック制御するようにしたものである。このように、最終目標値の他に、中間目標値を設定すれば、制御対象のむだ時間(遅れ要素)の変化やモデル化誤差の影響を受けにくくなり、フィードバック制御の安定性を維持しながら、高ゲイン化(高応答性)が可能となり、フィードバック制御の高ゲイン化と安定性とを両立させることができると共に、ロバスト性も高めることができる。
【0007】
この場合、請求項2のように、中間目標値を前回演算時又は所定演算回数前の制御対象の出力と最終目標値との間に収まるように設定するようにすると良い。このようにすれば、制御対象の出力の中間目標値への追従性が良くなる。
【0008】
また、請求項3のように、前回演算時又は所定演算回数前の制御対象の出力と最終目標値との偏差に1未満の正の係数を乗算した値と、最終目標値とを加算して中間目標値を求めるようにしても良い。このようにすれば、前回演算時(又は所定演算回数前)の制御対象の出力と最終目標値との間に収まる中間目標値を簡単な演算処理で設定することができ、中間目標値を求める演算処理を簡略化することができる。
【0009】
また、請求項4のように、制御対象の入力の補正量を算出する式には、中間目標値と制御対象の出力との偏差が大きくなるほど、大きくなる項(例えば比例項)を含ませるようにしても良い。このようにすれば、むだ時間(遅れ要素)の変化を制御対象の入力の補正量に迅速に反映させることができ、むだ時間の変化の変化に対するフィードバック制御の応答性を更に向上することができる。
【0010】
また、請求項5のように、制御対象の入力の補正量を算出する式には、中間目標値と制御対象の出力との偏差の積算値が大きくなるほど、大きくなる項(例えば積分項)を含ませるようにしても良い。このようにすれば、制御系が安定しているときの制御対象の出力と中間目標値との定常偏差(オフセット量)が少なくなり、制御対象の出力の中間目標値への収束性が良くなる。
【0011】
本発明は、前記制御対象の出力に対して中間目標値を設定しても良いが、制御対象の出力と最終目標値との偏差に対して中間目標値を設定しても良い。例えば、請求項6のように、制御対象の出力と最終目標値との偏差の前回値に基づいて偏差の中間目標値を設定し、制御対象の出力と最終目標値との偏差(今回値)と中間目標値とに基づいて前記制御対象の入力の補正量を算出するようにしても良い。このように、制御対象の出力と最終目標値との偏差に対して中間目標値を設定しても、制御対象の出力に対して中間目標値を設定した場合と同様の効果を得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
[実施形態(1)]
以下、本発明を空燃比フィードバック制御システムに適用した実施形態(1)を図1乃至図5に基づいて説明する。
【0013】
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。内燃機関であるエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側には、吸入空気量を検出するエアフロメータ14が設けられている。このエアフロメータ14の下流側には、DCモータ等のモータ31によって駆動されるスロットルバルブ15が設けられ、このスロットルバルブ15の開度(スロットル開度)がスロットル開度センサ16によって検出される。エンジン運転中は、スロットル開度センサ16によって検出した実スロットル開度を、アクセル操作量等に応じて設定された目標スロットル開度に一致させるようにモータ31の制御量をフィードバック制御する。
【0014】
また、スロットルバルブ15の下流側には、サージタンク17が設けられ、このサージタンク17に、吸気圧力Pを検出する吸気圧力センサ18が設けられている。また、サージタンク17には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド19が設けられ、各気筒の吸気マニホールド19の吸気ポート近傍に、それぞれ燃料を噴射する燃料噴射弁20が取り付けられている。エンジン11の吸気バルブ26と排気バルブ27は、それぞれ可変バルブタイミング調整機構28,29によって駆動され、エンジン運転状態に応じて吸気/排気バルブタイミング(VVT角度)が調整される。尚、可変バルブタイミング調整機構28,29は、油圧駆動式、電磁駆動式のいずれの方式であっても良い。
【0015】
一方、エンジン11の排気管21の途中には、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒22が設置されている。この触媒22の上流側には、排出ガスの空燃比(又は酸素濃度)を検出する空燃比センサ(又は酸素センサ)23が設けられている。また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ24や、エンジン回転速度を検出する回転速度センサ25(クランク角センサ)が取り付けられている。
【0016】
これら各種のセンサ出力は、エンジン制御回路(以下「ECU」と表記する)30に入力される。このECU30は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された空燃比フィードバック制御プログラムを実行することで、触媒22の上流側の空燃比を目標空燃比に一致させるようにフィードバック制御する。その他、ECU30は、スロットル開度制御、可変バルブタイミング制御、アイドル回転速度制御、燃圧フィードバック制御(燃料ポンプ制御)、クルーズコントロール(定速走行制御)等、各種のフィードバック制御を実行する。
【0017】
本発明は、いずれのフィードバック制御にも適用できるが、ここでは、本発明を空燃比フィードバック制御に適用した場合について図2乃至図5を用いて説明する。図2は空燃比フィードバック制御システムの概要を示す機能ブロック図である。空燃比フィードバック制御の制御対象は、燃料噴射弁20、エンジン11、空燃比センサ23等からなる系である。この制御対象の入力は、基本噴射量に各種の補正量を加算(又は各種の補正係数を乗算)した燃料噴射量を空燃比フィードバック制御部32の出力AFcompで補正して求めた燃料噴射量であり、基本噴射量は、吸入空気量(又は吸気管圧力)とエンジン回転速度に応じてマップ又は数式により算出され、各種の補正量は、例えば冷却水温による補正量、加減速運転時の補正量、学習制御による補正量等がある。また、制御対象の出力は、空燃比センサ23の出力φ(空燃比又は空気過剰率又は燃料過剰率)となる。
【0018】
空燃比フィードバック制御部32は、時間遅れ要素(1/z)33と中間目標値計算部34と補正量計算部35とから構成され、特許請求の範囲でいうフィードバック制御手段に相当する役割を果たす。時間遅れ要素33は、前回演算時の空燃比センサ23のの出力φ(i-1) を中間目標値計算部34に入力する。
【0019】
一方、中間目標値計算部34は、特許請求の範囲でいう中間目標値設定手段に相当する役割を果たし、前回演算時の空燃比センサ23の出力φ(i-1) と最終目標値φtg(i) (最終的な目標空燃比)とに基づいて中間目標値φmidtg(i)を図3のマップ又は下記の(1)式を用いて計算する。これにより、前回演算時の空燃比センサ23の出力φ(i-1) と最終目標値φtg(i) との間に中間目標値φmidtg(i)が設定される。
【0020】
この中間目標値φmidtg(i)を設定する図3のマップは、非線型単調増加関数によって表される。この非線型単調増加関数は、前回演算時の空燃比センサ23の出力φ(i-1) が最終目標値φtg(i) よりも小さいとき、すなわちリーン時には、中間目標値φmidtg(i)が傾き1、接片0の直線よりも上方に位置し、反対に、前回演算時の空燃比センサ23の出力φ(i-1) が最終目標値φtg(i) よりも大きいとき、すなわちリッチ時には、中間目標値φmidtg(i)が傾き1、接片0の直線よりも下方に位置するように設定されている。この非線型単調増加関数のカーブ形状は、空燃比センサ23の静特性により決定しても良い。
【0021】
一方、中間目標値φmidtg(i)を数式で演算する場合は、次の(1)式を用いれば良い。
φmidtg(i)=φtg(i) +Kdec ×{φ(i-1) −φtg(i) } ……(1)
【0022】
上式において、φtg(i) は今回の最終目標値、φ(i-1) は前回演算時の空燃比センサ23の出力である。Kdec は1未満の正の係数(以下「減衰率」という)であり、0<Kdec <1の範囲内で設定される。この減衰率Kdec は、演算処理の簡略化のために固定値としても良いが、例えば、エンジン運転状態(例えば吸入空気量、エンジン回転速度等)に応じてマップ又は数式により設定するようにしても良い。
【0023】
また、空燃比センサ23(酸素センサ)の出力変化特性は、リーンからリッチに変化する応答性と、その反対方向に変化する応答性とが同一ではなく、前者の応答性が速く、後者の応答性が遅いという特性がある。この特性を考慮して、最終目標値φtg(i) に対してリッチ時とリーン時とで減衰率Kdec を変化させるようにしても良い。このようにすれば、リッチ/リーンによる応答性の相違を補償した高精度な中間目標値φmidtg(i)を求めることができる。
【0024】
以上のようにして、中間目標値φmidtg(i)を図3のマップ又は前記(1)式を用いて計算した後、補正量計算部35によって、中間目標値φmidtg(i)を用いて目標空燃比の補正量AFcomp(i) を次式により算出する。
Figure 0003835167
但し、Δφ(i) =φmidtg(i)−φ(i)
【0025】
上式において、Fsat は図4に示すような特性の飽和関数であり、補正量AFcomp(i) は、K1 ×Δφ(i) +K2 ×Σ(Δφ(i) )の演算値を上限ガード値と下限ガード値でガード処理して求められる。上式において、K1 は比例ゲイン、K2 は積分ゲインである。従って、K1 ×Δφ(i) は比例項であり、中間目標値φmidtg(i)と空燃比センサ23の出力φ(i) との偏差Δφ(i) が大きくなるほど、大きくなる。また、K2 ×ΣΔφ(i) は積分項であり、中間目標値φmidtg(i)と空燃比センサ23の出力φ(i) との偏差Δφ(i) の積算値が大きくなるほど、大きくなる。また、f( φtg(i) )は、最終目標値φtg(i) をパラメータとするマップ又は数式により算出される。このf( φtg(i) )は、演算処理の簡略化のために、f( φtg(i) )=φtg(i) (但しφtg(i) を空気過剰率で表す場合)としても良い。
【0026】
以上説明した空燃比フィードバック制御部32による補正量AFcomp(i) の算出は、図5の補正量算出プログラムに従って行われる。本プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に実行される。
【0027】
本プログラムが起動されると、まずステップ101で、現在の空燃比センサ23の出力φ(i) を読み込み、次のステップ102で、前回演算時の空燃比センサ23の出力φ(i-1) と最終目標値φtg(i) (最終的な目標空燃比)とに基づいて中間目標値φmidtg(i)を図3のマップ又は前記(1)式を用いて算出する。これにより、前回演算時の空燃比センサ23の出力φ(i-1) と最終目標値φtg(i) との間に中間目標値φmidtg(i)が設定される。
【0028】
この後、ステップ103に進み、中間目標値φmidtg(i)と空燃比センサ23の出力φ(i) との偏差Δφ(i) を算出する。
Δφ(i) =φmidtg(i)−φ(i)
【0029】
そして、次のステップ104で、前回までの偏差Δφの積算値ΣΔφ(i-1) に今回の偏差Δφ(i) を積算して、今回までの偏差Δφの積算値ΣΔφ(i) を求める。
ΣΔφ(i) =ΣΔφ(i-1) +Δφ(i)
【0030】
この後、ステップ105に進み、目標空燃比の補正量AFcomp(i) を次式により算出する。
AFcomp(i) =Fsat (K1 ×Δφ(i) +K2 ×ΣΔφ(i) )+f( φtg(i) )
この際、Fsat (K1 ×Δφ(i) +K2 ×ΣΔφ(i) )は、比例項(K1 ×Δφ(i) )と積分項(K2 ×ΣΔφ(i) )を加算して求めた値を上限ガード値と下限ガード値でガード処理して求められる。f( φtg(i) )は、最終目標値φtg(i) をパラメータとするマップ又は数式により算出される。
そして、次のステップ106で、今回のΔφ(i) とΣΔφ(i) をそれぞれ前回のΔφ(i-1) とΣΔφ(i-1) として記憶して本プログラムを終了する。
【0031】
エンジン運転中は、吸入空気量(又は吸気管圧力)とエンジン回転速度に応じて基本噴射量をマップ又は数式により算出すると共に、この基本噴射量にエンジン運転状態に応じた各種補正量を加算して燃料噴射量を求め、この燃料噴射量に補正量AFcomp(i) を乗算して最終的な燃料噴射量を求め、燃料噴射弁20の燃料噴射量を制御する。
【0032】
以上説明した実施形態(1)によれば、前回演算時の空燃比センサ23の出力φ(i-1) と最終目標値φtg(i) とに基づいて中間目標値φmidtg(i)を算出し、この中間目標値φmidtg(i)と空燃比センサ23の出力φ(i) との偏差Δφ(i) に基づいて目標空燃比の補正量AFcomp(i) を算出するようにしたので、制御対象のむだ時間(遅れ要素)の変化やモデル化誤差の影響を受けにくくなり、空燃比フィードバック制御の安定性を維持しながら、高ゲイン化(高応答性)が可能となり、空燃比フィードバック制御の高ゲイン化と安定性とを両立させることができると共に、ロバスト性も高めることができる。
【0033】
尚、本実施形態(1)では、中間目標値φmidtg(i)を算出する際に前回演算時の空燃比センサ23の出力φ(i-1) を用いたが、所定演算回数前の空燃比センサ23の出力φ(i-n) を用いても良い。
【0034】
[実施形態(2)]
本発明を空燃比フィードバック制御に適用する場合、中間目標値と補正量を算出する方法を変更しても良く、要は、空燃比センサ23の出力と最終目標値とに基づいて中間目標値を算出し、この中間目標値と空燃比センサ23の出力とに基づいて目標空燃比の補正量を算出するようにようにすれば良い。
【0035】
そこで、本発明の実施形態(2)では、図6の補正量算出プログラムを実行することで、空燃比センサ23の出力φ(i) と最終目標値φtg(i) との偏差Δφ(i) を算出すると共に、この空燃比偏差の前回値Δφ(i-1) に基づいて空燃比偏差の中間目標値Δφmidtg(i)を算出し、この中間目標値Δφmidtg(i)と今回の空燃比偏差Δφ(i) との偏差Eに基づいて目標空燃比の補正量AFcomp(i) を算出するようにしている。
【0036】
図6の補正量算出プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ201で、現在の空燃比センサ23の出力φ(i) を読み込み、次のステップ202で、最終目標値φtg(i) を読み込む。この後、ステップ203に進み、空燃比センサ23の出力φ(i) と最終目標値φtg(i) との偏差(空燃比偏差)Δφ(i) を算出する。
Δφ(i) =φ(i) −φtg(i)
【0037】
この後、ステップ204に進み、前回演算時の空燃比偏差Δφ(i-1) に減衰率Kdec を乗算して、空燃比偏差の中間目標値Δφmidtg(i)を求める。
Δφmidtg(i)=Kdec ×Δφ(i-1)
【0038】
ここで、減衰率Kdec は、演算処理の簡略化のために固定値としても良いが、例えば、エンジン運転状態(例えば吸入空気量、エンジン回転速度等)に応じてマップ又は数式により設定するようにしても良い。また、最終目標値φtg(i) に対してリッチ時とリーン時とで減衰率Kdec を変化させるようにしても良い。
【0039】
この後、ステップ205に進み、中間目標値Δφmidtg(i)と空燃比偏差Δφ(i) との偏差Eを算出する。
E=Δφmidtg(i)−Δφ(i)
【0040】
そして、次のステップ206で、偏差Eを用いて目標空燃比の補正量AFcomp(i) を次式により算出する。
AFcomp(i) =Kp ×E+f( φtg(i) )
【0041】
ここで、Kp は比例ゲインであり、f( φtg(i) )は、最終目標値φtg(i) をパラメータとするマップ又は数式により算出される。このf( φtg(i) )は、演算処理の簡略化のために、f( φtg(i) )=φtg(i) (但しφtg(i) を空気過剰率で表す場合)としても良い。
【0042】
この後、ステップ207に進み、今回のΔφ(i) を前回のΔφ(i-1) として記憶して本プログラムを終了する。
以上説明した本実施形態(2)においても、前記実施形態(1)と同様の効果を得ることができる。
【0043】
[実施形態(3)]
次に、本発明を可変バルブタイミング制御システムに適用した実施形態(3)を図7及び図8に基づいて説明する。図7に示すように、可変バルブタイミング制御の制御対象は、可変バルブタイミング調整機構28,29の油圧を制御する油圧制御弁41、エンジン11、カム位置cam(i) (バルブタイミング)を検出するカムセンサ42等からなる系である。この制御対象の入力は、基本デューティに各種の補正量を加算(又は各種の補正係数を乗算)した油圧制御デューティを、本発明のフィードバック制御で算出したカム位置補正量CAMcomp(i) で補正して求めた油圧制御デューティであり、基本デューティは、エンジン運転状態に応じてマップ又は数式により算出される。また、制御対象の出力は、カムセンサ42の出力cam(i) (カム位置)となる。
【0044】
本実施形態(3)で用いる図8の補正量算出プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ301で、カムセンサ42で検出した現在のカム位置cam(i) を読み込み、次のステップ302で、最終目標値である目標カム位置camtg(i) を読み込む。この後、ステップ303に進み、現在のカム位置cam(i) と目標カム位置camtg(i) との偏差(カム位置偏差)Δcam(i) を算出する。
Δcam(i) =cam(i) −camtg(i)
【0045】
この後、ステップ304に進み、前回演算時のカム位置偏差Δcam(i-1) に減衰率Kdec を乗算して、カム位置偏差の中間目標値Δcammidtg(i) を求める。
Δcammidtg(i) =Kdec ×Δcam(i-1)
ここで、減衰率Kdec は、演算処理の簡略化のために固定値としても良いが、例えば、エンジン運転状態に応じてマップ又は数式により設定するようにしても良い。
【0046】
この後、ステップ305に進み、中間目標値Δcammidtg(i) とカム位置偏差Δcam(i) との偏差Eを算出する。
E=Δcammidtg(i) −Δcam(i)
そして、次のステップ306で、偏差Eを用いてカム位置補正量CAMcomp(i) を次式により算出する。
CAMcomp(i) =Kp ×E+f( camtg(i) )
【0047】
ここで、Kp は比例ゲインであり、f( camtg(i) )は、目標カム位置camtg(i) をパラメータとするマップ又は数式により算出される。
この後、ステップ307に進み、今回のΔcam(i) を前回のΔcam(i-1) として記憶して本プログラムを終了する。
【0048】
エンジン運転中は、エンジン運転状態に応じて基本デューティをマップ又は数式により算出すると共に、この基本デューティに各種補正量を加算して油圧制御デューティを求め、この油圧制御デューティにカム位置補正量CAMcomp(i) を乗算して最終的な油圧制御デューティを求め、この油圧制御デューティで油圧制御弁41を駆動して、吸気バルブ26及び/又は排気バルブ27のカム位置(バルブタイミング)を目標カム位置camtg(i) にフィードバック制御する。
【0049】
以上説明した本実施形態(3)においては、可変バルブタイミングシステムのむだ時間(遅れ要素)の変化やモデル化誤差の影響を受けにくくなり、可変バルブタイミング制御の安定性を維持しながら、高ゲイン化(高応答性)が可能となり、可変バルブタイミング制御の高ゲイン化と安定性とを両立させることができると共に、ロバスト性も高めることができる。
【0050】
尚、可変バルブタイミング制御においても、前記実施形態(1)で説明した図5の補正量算出プログラムと同様の方法で、カム位置補正量CAMcomp(i) を算出するようにしても良い。
【0051】
[実施形態(4)]
次に、本発明を電子スロットルシステムに適用した実施形態(4)を図9及び図10に基づいて説明する。図9に示すように、スロットル開度制御の制御対象は、電子スロットルシステムのモータ31、スロットルバルブ15、スロットル開度センサ16等からなる系である。この制御対象の入力は、基本デューティに各種の補正量を加算(又は各種の補正係数を乗算)したモータ制御デューティを、本発明のフィードバック制御で算出したスロットル開度補正量TAcomp(i) で補正して求めたモータ制御デューティであり、基本デューティは、エンジン運転状態に応じてマップ又は数式により算出される。また、制御対象の出力は、スロットル開度センサ16の出力TA(i) (スロットル開度)となる。
【0052】
本実施形態(4)で用いる図10の補正量算出プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に実行される。本プログラムが起動されると、まず、ステップ401で、スロットル開度センサ16で検出した現在のスロットル開度TA(i) を読み込み、次のステップ402で、最終目標値である目標スロットル開度TAtg(i) を読み込む。この後、ステップ403に進み、現在のスロットル開度TA(i) と目標スロットル開度TAtg(i) との偏差(スロットル開度偏差)ΔTA(i) を算出する。
ΔTA(i) =TA(i) −TAtg(i)
【0053】
この後、ステップ404に進み、前回演算時のスロットル開度偏差ΔTA(i-1) に減衰率Kdec を乗算して、スロットル開度偏差の中間目標値ΔTAmidtg(i) を求める。
ΔTAmidtg(i) =Kdec ×ΔTA(i-1)
【0054】
ここで、減衰率Kdec は、演算処理の簡略化のために固定値としても良いが、例えば、エンジン運転状態に応じてマップ又は数式により設定するようにしても良い。
【0055】
この後、ステップ405に進み、中間目標値ΔTAmidtg(i) とスロットル開度偏差ΔTA(i) との偏差Eを算出する。
E=ΔTAmidtg(i) −ΔTA(i)
【0056】
そして、次のステップ406で、偏差Eを用いてスロットル開度補正量TAcomp(i) を次式により算出する。
TAcomp(i) =Kp ×E+f( TAtg(i) )
ここで、Kp は比例ゲインであり、f( TAtg(i) )は、目標スロットル開度TAtg(i) をパラメータとするマップ又は数式により算出される。
【0057】
この後、ステップ407に進み、今回のΔTA(i) を前回のΔTA(i-1) として記憶して本プログラムを終了する。
【0058】
エンジン運転中は、エンジン運転状態に応じて基本デューティをマップ又は数式により算出すると共に、この基本デューティに各種補正量を加算してモータ制御デューティを求め、このモータ制御デューティにスロットル開度補正量TAcomp(i) を乗算して最終的なモータ制御デューティを求め、このモータ制御デューティでモータ31を駆動して、スロットル開度を目標スロットル開度TAtg(i) にフィードバック制御する。
【0059】
以上説明した本実施形態(4)においては、電子スロットルシステムのむだ時間(遅れ要素)の変化やモデル化誤差の影響を受けにくくなり、スロットル開度制御の安定性を維持しながら、高ゲイン化(高応答性)が可能となり、スロットル開度制御の高ゲイン化と安定性とを両立させることができると共に、ロバスト性も高めることができる。
【0060】
尚、スロットル開度制御においても、前記実施形態(1)で説明した図5の補正量算出プログラムと同様の方法で、スロットル開度補正量TAcomp(i) を算出するようにしても良い。
【0061】
[実施形態(5)]
次に、本発明を燃圧フィードバック制御(燃料ポンプ制御)システムに適用した実施形態(5)を図11及び図12に基づいて説明する。図11に示すように、燃圧フィードバック制御の制御対象は、燃料ポンプ43、エンジン11、燃料ポンプ43から吐出される燃料圧力(以下「燃圧」と略記する)FP(i) を検出する燃圧センサ44等からなる系である。この制御対象の入力は、基本デューティに各種の補正量を加算(又は各種の補正係数を乗算)した燃圧制御デューティを、本発明のフィードバック制御で算出した燃圧補正量FPcomp(i) で補正して求めた燃圧制御デューティであり、基本デューティは、エンジン運転状態に応じてマップ又は数式により算出される。また、制御対象の出力は、燃圧センサ44の出力FP(i) (燃圧)となる。
【0062】
本実施形態(5)で用いる図12の補正量算出プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ501で、燃圧センサ44で検出した現在の燃圧FP(i) を読み込み、次のステップ502で、最終目標値である目標燃圧FPtg(i) を読み込む。この後、ステップ503に進み、現在の燃圧FP(i) と目標燃圧FPtg(i) との偏差(燃圧偏差)ΔFP(i) を算出する。
ΔFP(i) =FP(i) −FPtg(i)
【0063】
この後、ステップ504に進み、前回演算時の燃圧偏差ΔFP(i-1) に減衰率Kdec を乗算して、燃圧偏差の中間目標値ΔFPmidtg(i) を求める。
ΔFPmidtg(i) =Kdec ×ΔFP(i-1)
【0064】
ここで、減衰率Kdec は、演算処理の簡略化のために固定値としても良いが、例えば、エンジン運転状態に応じてマップ又は数式により設定するようにしても良い。
【0065】
この後、ステップ505に進み、中間目標値ΔFPmidtg(i) と燃圧偏差ΔFP(i) との偏差Eを算出する。
E=ΔFPmidtg(i) −ΔFP(i)
【0066】
そして、次のステップ506で、偏差Eを用いて燃圧補正量FPcomp(i) を次式により算出する。
FPcomp(i) =Kp ×E+f( FPtg(i) )
ここで、Kp は比例ゲインであり、f( FPtg(i) )は、目標燃圧FPtg(i) をパラメータとするマップ又は数式により算出される。
【0067】
この後、ステップ507に進み、今回のΔFP(i) を前回のΔFP(i-1) として記憶して本プログラムを終了する。
【0068】
エンジン運転中は、エンジン運転状態に応じて基本デューティをマップ又は数式により算出すると共に、この基本デューティに各種補正量を加算して燃圧制御デューティを求め、この燃圧制御デューティに燃圧補正量FPcomp(i) を乗算して最終的な燃圧制御デューティを求め、この燃圧制御デューティで燃料ポンプ43を制御して、燃圧を目標燃圧FPtg(i) にフィードバック制御する。
【0069】
以上説明した本実施形態(5)においては、燃圧フィードバック制御システムのむだ時間(遅れ要素)の変化やモデル化誤差の影響を受けにくくなり、燃圧フィードバック制御の安定性を維持しながら、高ゲイン化(高応答性)が可能となり、燃圧フィードバック制御の高ゲイン化と安定性とを両立させることができると共に、ロバスト性も高めることができる。
【0070】
尚、燃圧フィードバック制御においても、前記実施形態(1)で説明した図5の補正量算出プログラムと同様の方法を用いて、燃圧補正量FPcomp(i) を算出するようにしても良い。
【0071】
[実施形態(6)]
次に、本発明をターボチャージャの過給圧フィードバック制御システムに適用した実施形態(6)を図13及び図14に基づいて説明する。図13に示すように、過給圧フィードバック制御の制御対象は、過給圧TC(i) を調整する調整バルブ45、エンジン11、過給圧TC(i) を検出する過給圧センサ46等からなる系である。この制御対象の入力は、基本デューティに各種の補正量を加算(又は各種の補正係数を乗算)した過給圧制御デューティを、本発明のフィードバック制御で算出した過給圧補正量TCcomp(i) で補正して求めた過給圧制御デューティであり、基本デューティは、エンジン運転状態に応じてマップ又は数式により算出される。また、制御対象の出力は、過給圧センサ46の出力TC(i) (過給圧)となる。
【0072】
本実施形態(6)で用いる図14の補正量算出プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ601で、過給圧センサ46で検出した現在の過給圧TC(i) を読み込み、次のステップ602で、最終目標値である目標過給圧TCtg(i) を読み込む。この後、ステップ603に進み、現在の過給圧TC(i) と目標過給圧TCtg(i) との偏差(過給圧偏差)ΔTC(i) を算出する。
ΔTC(i) =TC(i) −TCtg(i)
【0073】
この後、ステップ604に進み、前回演算時の過給圧偏差ΔTC(i-1) に減衰率Kdec を乗算して過給圧偏差の中間目標値ΔTCmidtg(i) を求める。
ΔTCmidtg(i) =Kdec ×ΔTC(i-1)
【0074】
ここで、減衰率Kdec は、演算処理の簡略化のために固定値としても良いが、例えば、エンジン運転状態に応じてマップ又は数式により設定するようにしても良い。
【0075】
この後、ステップ605に進み、中間目標値ΔTCmidtg(i) と過給圧偏差ΔTC(i) との偏差Eを算出する。
E=ΔTCmidtg(i) −ΔTC(i)
【0076】
そして、次のステップ606で、偏差Eを用いて過給圧補正量TCcomp(i) を次式により算出する。
TCcomp(i) =Kp ×E+f( TCtg(i) )
ここで、Kp は比例ゲインであり、f( TCtg(i) )は、目標過給圧TCtg(i) をパラメータとするマップ又は数式により算出される。
【0077】
この後、ステップ607に進み、今回のΔTC(i) を前回のΔTC(i-1) として記憶して本プログラムを終了する。
【0078】
エンジン運転中は、エンジン運転状態に応じて基本デューティをマップ又は数式により算出すると共に、この基本デューティに各種補正量を加算して過給圧制御デューティを求め、この過給圧制御デューティに過給圧補正量TCcomp(i) を乗算して最終的な過給圧制御デューティを求め、この過給圧制御デューティで調整バルブ45を駆動して、過給圧を目標過給圧TCtg(i) にフィードバック制御する。
【0079】
以上説明した本実施形態(6)においては、過給圧フィードバック制御システムのむだ時間(遅れ要素)の変化やモデル化誤差の影響を受けにくくなり、過給圧フィードバック制御の安定性を維持しながら、高ゲイン化(高応答性)が可能となり、過給圧フィードバック制御の高ゲイン化と安定性とを両立させることができると共に、ロバスト性も高めることができる。
【0080】
尚、過給圧フィードバック制御においても、前記実施形態(1)で説明した図5の補正量算出プログラムと同様の方法を用いて、過給圧補正量TCcomp(i) を算出するようにしても良い。
【0081】
[実施形態(7)]
次に、本発明をアイドル回転速度制御(ISC)システムに適用した実施形態(7)を図15及び図16に基づいて説明する。図15に示すように、アイドル回転速度制御の制御対象は、アイドル運転時の吸入空気量(バイパス空気量)を制御するアイドル回転速度制御バルブ47(ISCV)、エンジン11、エンジン回転速度NE(i) を検出する回転速度センサ25等からなる系である。この制御対象の入力は、基本デューティに各種の補正量を加算(又は各種の補正係数を乗算)したISC制御デューティを、本発明のフィードバック制御で算出したISC補正量NEcomp(i) で補正して求めたISC制御デューティであり、基本デューティは、エンジン運転状態に応じてマップ又は数式により算出される。また、制御対象の出力は、回転速度センサ25の出力NE(i) (エンジン回転速度)である。
【0082】
本実施形態(7)で用いる図16の補正量算出プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ701で、回転速度センサ25で検出した現在の回転速度NE(i) を読み込み、次のステップ702で、最終目標値である目標回転速度NEtg(i) を読み込む。この後、ステップ703に進み、現在の回転速度NE(i) と目標回転速度NEtg(i) との偏差(回転速度偏差)ΔNE(i) を算出する。
ΔNE(i) =NE(i) −NEtg(i)
【0083】
この後、ステップ704に進み、前回演算時の回転速度偏差ΔNE(i-1) に減衰率Kdec を乗算して、回転速度偏差の中間目標値ΔNEmidtg(i) を求める。
ΔNEmidtg(i) =Kdec ×ΔNE(i-1)
【0084】
ここで、減衰率Kdec は、演算処理の簡略化のために固定値としても良いが、例えば、エンジン運転状態に応じてマップ又は数式により設定するようにしても良い。
【0085】
この後、ステップ705に進み、中間目標値ΔNEmidtg(i) と回転速度偏差ΔNE(i) との偏差Eを算出する。
E=ΔNEmidtg(i) −ΔNE(i)
【0086】
そして、次のステップ706で、偏差Eを用いてISC補正量NEcomp(i) を次式により算出する。
NEcomp(i) =Kp ×E+f( NEtg(i) )
ここで、Kp は比例ゲインであり、f( NEtg(i) )は、目標回転速度NEtg(i) をパラメータとするマップ又は数式により算出される。
【0087】
この後、ステップ707に進み、今回のΔNE(i) を前回のΔNE(i-1) として記憶して本プログラムを終了する。
【0088】
エンジン運転中は、エンジン運転状態に応じて基本デューティをマップ又は数式により算出すると共に、この基本デューティに各種補正量を加算してISC制御デューティを求め、このISC制御デューティにISC補正量NEcomp(i) を乗算して最終的なISC制御デューティを求め、このISC制御デューティでアイドル回転速度制御バルブ47を駆動して、アイドル回転速度を目標回転速度NEtg(i) にフィードバック制御する。
【0089】
以上説明した本実施形態(7)においては、アイドル回転速度制御システムのむだ時間(遅れ要素)の変化やモデル化誤差の影響を受けにくくなり、アイドル回転速度制御の安定性を維持しながら、高ゲイン化(高応答性)が可能となり、アイドル回転速度制御の高ゲイン化と安定性とを両立させることができると共に、ロバスト性も高めることができる。
【0090】
尚、アイドル回転速度制御においても、前記実施形態(1)で説明した図5の補正量算出プログラムと同様の方法を用いて、過給圧補正量NEcomp(i) を算出するようにしても良い。
【0091】
また、本実施形態(7)のアイドル回転速度制御システムは、スロットルバルブ15をバイパスするバイパス通路を流れる空気量を調整するアイドル回転速度制御バルブ47によってアイドル回転速度を制御するようになっているが、アイドル回転速度制御バルブ47とバイパス通路を省略して、アイドル運転時にスロットルバルブ15の開度を制御してアイドル運転時の吸入空気量を調整してアイドル回転速度を制御するようにしても良い。
【0092】
[実施形態(8)]
次に、本発明をクルーズコントロールシステムに適用した実施形態(8)を図17及び図18に基づいて説明する。図17に示すように、クルーズコントロールの制御対象は、電子スロットルシステムのモータ31、スロットルバルブ15、車速センサ48等からなる系である。この制御対象の入力は、基本デューティに各種の補正量を加算(又は各種の補正係数を乗算)したモータ制御デューティを、本発明のフィードバック制御で算出した速度補正量SPDcomp(i) で補正して求めたモータ制御デューティであり、基本デューティは、エンジン運転状態に応じてマップ又は数式により算出される。また、制御対象の出力は、車速センサ48の出力SPD(i) (車速)である。
【0093】
本実施形態(8)で用いる図18の補正量算出プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ801で、車速センサ48で検出した現在の車速SPD(i) を読み込み、次のステップ802で、最終目標値である目標車速SPDtg(i) を読み込む。この後、ステップ803に進み、現在の車速SPD(i) と目標車速SPDtg(i) との偏差(車速偏差)ΔSPD(i) を算出する。
ΔSPD(i) =SPD(i) −SPDtg(i)
【0094】
この後、ステップ804に進み、前回演算時の車速偏差ΔSPD(i-1) に減衰率Kdec を乗算して車速偏差の中間目標値ΔSPDmidtg(i) を求める。
ΔSPDmidtg(i) =Kdec ×ΔSPD(i-1)
ここで、減衰率Kdec は、演算処理の簡略化のために固定値としても良いが、例えば、エンジン運転状態に応じてマップ又は数式により設定するようにしても良い。
【0095】
この後、ステップ805に進み、中間目標値ΔSPDmidtg(i) と車速偏差ΔSPD(i) との偏差Eを算出する。
E=ΔSPDmidtg(i) −ΔSPD(i)
【0096】
そして、次のステップ806で、偏差Eを用いて速度補正量SPDcomp(i) を次式により算出する。
SPDcomp(i) =Kp ×E+f( SPDtg(i) )
ここで、Kp は比例ゲインであり、f( SPDtg(i) )は、目標車速SPDtg(i) をパラメータとするマップ又は数式により算出される。
【0097】
この後、ステップ807に進み、今回のΔSPD(i) を前回のΔSPD(i-1) として記憶して本プログラムを終了する。
【0098】
エンジン運転中は、エンジン運転状態に応じて基本デューティをマップ又は数式により算出すると共に、この基本デューティに各種補正量を加算してモータ制御デューティを求め、このモータ制御デューティに速度補正量SPDcomp(i) を乗算して最終的なモータ制御デューティを求め、このモータ制御デューティでスロットルバルブ15の開度を制御して、車速を目標車速SPDtg(i) にフィードバック制御する。
【0099】
以上説明した本実施形態(8)においては、クルーズコントロールシステムのむだ時間(遅れ要素)の変化やモデル化誤差の影響を受けにくくなり、クルーズコントロールの安定性を維持しながら、高ゲイン化(高応答性)が可能となり、クルーズコントロールの高ゲイン化と安定性とを両立させることができると共に、ロバスト性も高めることができる。
【0100】
尚、クルーズコントロールにおいても、前記実施形態(1)で説明した図5の補正量算出プログラムと同様の方法を用いて、車速補正量SPDcomp(i) を算出するようにしても良い。
【0101】
以上説明した各実施形態(1)〜(8)のフィードバック制御は、適宜、組み合わせて実施しても良い。
【0102】
その他、本発明のフィードバック制御は、上記各実施形態(1)〜(8)に限定されず、車両の各種のフィードバック制御に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を空燃比フィードバック制御システムに適用した実施形態(1)を示すエンジン制御システム全体の概略構成図
【図2】実施形態(1)の空燃比フィードバック制御システム全体の機能を示すブロック図
【図3】前回演算時の空燃比センサの出力φ(i-1) に応じて中間目標値φmidtg(i)を設定するマップを概念的に示す図
【図4】補正量AFcomp(i) を算出する飽和関数を説明する図
【図5】実施形態(1)の補正量算出プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図6】実施形態(2)の補正量算出プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図7】本発明を可変バルブタイミング制御システムに適用した実施形態(3)を示すシステム全体の概略構成図
【図8】実施形態(3)の補正量算出プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図9】本発明を電子スロットルシステムに適用した実施形態(4)を示すシステム全体の概略構成図
【図10】実施形態(4)の補正量算出プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図11】本発明を燃圧フィードバック制御システムに適用した実施形態(5)を示すシステム全体の概略構成図
【図12】実施形態(5)の補正量算出プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図13】本発明を過給圧フィードバック制御システムに適用した実施形態(6)を示すシステム全体の概略構成図
【図14】実施形態(6)の補正量算出プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図15】本発明をアイドル回転速度制御システムに適用した実施形態(7)を示すシステム全体の概略構成図
【図16】実施形態(7)の補正量算出プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図17】本発明をクルーズコントロールシステムに適用した実施形態(8)を示すシステム全体の概略構成図
【図18】実施形態(8)の補正量算出プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【符号の説明】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管、14…エアフローメータ、15…スロットルバルブ、16…スロットル開度センサ、18…吸気圧力センサ、20…燃料噴射弁、21…排気管、22…触媒、23…空燃比センサ、25…回転速度センサ、28,29…可変バルブタイミング調整機構、30…ECU(中間目標値設定手段,フィードバック制御手段)、31…モータ、32…空燃比フィードバック制御部、34…中間目標値計算部、35…補正量計算部、41…油圧制御弁、42…カムセンサ、43…燃料ポンプ、44…燃圧センサ、45…調整バルブ、46…過給圧センサ、47…アイドル回転速度制御バルブ、48…車速センサ。

Claims (6)

  1. 内燃機関の制御対象の出力を最終目標値に一致させるように該制御対象の入力をフィードバック制御する内燃機関の制御装置において、
    所定時間毎又は所定クランク角毎に前記制御対象の出力と前記最終目標値とに基づいて中間目標値を設定する中間目標値設定手段と、
    前記制御対象の出力と所定時間毎又は所定クランク角毎に設定される前記中間目標値とに基づいて前記制御対象の入力の補正量を算出して該制御対象の入力を補正することで該制御対象の出力を前記最終目標値に一致させるようにフィードバック制御するフィードバック制御手段と
    を備えていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記中間目標値設定手段は、前記中間目標値を前回演算時又は所定演算回数前の前記制御対象の出力と前記最終目標値との間に収まるように設定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記中間目標値設定手段は、前記中間目標値を前回演算時又は所定演算回数前の前記制御対象の出力と前記最終目標値との偏差に1未満の正の係数を乗算した値と、最終目標値とを加算して前記中間目標値を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記制御対象の入力の補正量を算出する式には、前記中間目標値と前記制御対象の出力との偏差が大きくなるほど、大きくなる項が含まれていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記制御対象の入力の補正量を算出する式には、前記中間目標値と前記制御対象の出力との偏差の積算値が大きくなるほど、大きくなる項が含まれていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
  6. 前記中間目標値設定手段は、前記制御対象の出力と前記最終目標値との偏差の前回値に基づいて偏差の中間目標値を設定し、
    前記フィードバック制御手段は、前記制御対象の出力と前記最終目標値との偏差と前記中間目標値とに基づいて前記制御対象の入力の補正量を算出することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
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