JP3833239B2 - 含カルシウム散布剤 - Google Patents

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Description

本発明は、植物に施用される含カルシウム散布剤の技術分野に属する。
例えばリンゴ、ナシ等の果樹に対して、その果実の表面(果面)を保護してサビ病などを予防するために、炭酸カルシウムを含有した液剤を散布することが行われている。
また、水溶性カルシウム化合物を含有する葉面散布剤をカルシウム肥料として散布することも行われており、その際にサリチル酸又はアミノ酸とリグニンスルホン酸塩を含有する葉面散布用カルシウム肥料も提案されている(特開2000−327471号公報)。
特開2000−327471号公報(請求項2、段落0020)
炭酸カルシウムを含んだ液剤を散布した場合、晶出した炭酸カルシウムが果実の表面に付着して残留するので、消費者が「農薬の残留」と誤解する問題があった。
一方、特許文献1に記載のカルシウム肥料等は、葉面散布されるために果面に付着することもあるが、果面を保護する効果は期待されておらず、また発明者の知る限りではそのような効果の報告例もない。
請求項1記載の含カルシウム散布剤は、ギ酸カルシウムとリグニンスルホン酸塩とを必須成分とし(但し、任意成分としてサリチル酸又はアミノ酸を含有する場合を除く)、ギ酸カルシウムとリグニンスルホン酸塩との配合比が、重量比でギ酸カルシウム80:リグニスルホン酸塩20〜ギ酸カルシウム50:リグニスルホン酸塩50の範囲にあることを特徴とする。
ギ酸カルシウムは、pH値(多くの植物にとっては弱酸性が好ましい。)と臭気等を考慮すると、他の水溶性の有機酸カルシウム、例えば酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウムなどよりも優れているので、本発明はギ酸カルシウムを採用している。
なお、含カルシウム散布剤を単にカルシウム肥料としてのみ使用するなら、ギ酸カルシウムに代えて水溶性のカルシウム無機塩、例えば塩化カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウムなどを使用することもできるが、これらは植物の表面、特に果面に残留した場合の見た目が悪いので、本発明には好ましくない。
また、本発明においては、ギ酸カルシウムとリグニンスルホン酸塩だけで目的(効果)を達成するので、基本的に他の成分例えばサリチル酸やアミノ酸を添加する必要はない。
リグニンスルホン酸塩(リグニンスルホン酸カルシウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウム、リグニンスルホン酸マグネシウム等)は、農薬の物性改善や展着剤として周知であり広汎に使用されている。特に請求項2のリグニンスルホン酸カルシウムは、カルシウム源ともなるので、本発明に好適と言える。なお、複数種類のリグニンスルホン酸塩を混用することもできる。
本発明では、リグニンスルホン酸塩の濡れ性、拡展性、付着性と乾燥速度が速い点を利用する。
すなわち、 ギ酸カルシウムとリグニンスルホン酸塩とを必須成分とする含カルシウム散布剤を、散布対象の植物(果樹、果菜類、葉菜類、花き)の種類や散布目的(例えば果面の保護、カルシウムの補給)等に応じて、適宜濃度の溶液として植物表面に散布(例えば葉面散布)する。植物の種類や散布目的、ギ酸カルシウムとリグニンスルホン酸塩との配合比率等により一律ではないが、散布する溶液は、請求項3記載のようにリグニンスルホン酸塩の濃度を0.01%〜0.1%の範囲に調製するのが好ましい。
この含カルシウム剤は、リグニスルホン酸塩の働きにより植物表面への付着性が良く、カルシウムの吸収効果が促進される。また、高い分散効果を有するので、上記効果が一層良好になる。
これもリグニスルホン酸塩を配合した効果であるが、散布された薬液の乾燥速度が速いので、例えば葉面や果面から滴下する薬液を少なくでき、散布効率が高まる。
散布された薬液の乾燥速度は、主にリグニスルホン酸塩の配合比(濃度)に左右され、配合比(濃度)が高いほど(溶液として散布するので自ずと上限はある)乾燥速度が速くなる。
しかも、乾燥後に成分の一部が葉面や果面に残留するが、この残留物はほぼ透明であり、炭酸カルシウム等(カルシウムの無機塩)が白色粉末状に果実の表面に残留するのとは違って、肉眼では残留(付着)しているとは見えない。したがって、消費者に「農薬の残留」と誤解されるおそれはない。
そして、果面に残留した薬剤はコーティングとして機能し、葉や枝との接触で果面が傷むのを防止する。また、カルシウムは、植物体内に吸収されるとペクチンと結合し、細胞壁の組織の維持、強化に重要な役割を果しており、カルシウムが十分に供給されることによって細胞は強化され、植物体は硬くなる。すなわち、果実に吸収されたカルシウムが果皮を強化するので、これによっても果面の傷みが防止される。
幼果のときに(例えば落花直後に)含カルシウム剤を散布しておけば、葉等との接触に起因する傷が果面に残ったりサビ病が発生して果実の商品価値が低下する(或いは失われる)のを防止できる。そして、幼果期の後も適宜のタイミングで含カルシウム剤を散布すれば、この効果は一層良好、確実になる。
ギ酸カルシウムとリグニスルホン酸塩との配合比は、重量比でギ酸カルシウム80:リグニスルホン酸塩20〜ギ酸カルシウム50:リグニスルホン酸塩50程度が望ましい。これは、リグニスルホン酸塩の配合比が小さくなると付着性、分散効果、乾燥速度などが低下したり十分でなくなったりするからであり、ギ酸カルシウムの配合比が小さくなると植物へのカルシウム供給効果が低下したり十分でなくなったりするからである。
ギ酸カルシウムとリグニスルホン酸塩とは、粉末同士を混合してもよいし溶液同士で混合してもよい。散布時の希釈率は、散布対象になる植物の種類や散布目的、散布頻度等により一律に決まらないが、一般的には500倍〜2000倍である。
例えばギ酸カルシウム80重量部、リグニスルホン酸塩20重量部の配合になる含カルシウム剤を水で2000倍に希釈すればリグニンスルホン酸塩の濃度は0.01%、ギ酸カルシウム50重量部、リグニスルホン酸塩50重量部の配合になる含カルシウム剤を水で500倍に希釈すればリグニンスルホン酸塩の濃度は0.1%となる。
散布目的(又は目的の一部)が果面保護であれば、希釈倍率はリグニスルホン酸塩が比較的高濃度(0.1%付近)になるように例えば500倍程度にするとよい。
次に、いくつかの実施例に従って本発明をより具体的に説明する。なお、実施例中に示す成分や数値等は例示であり、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
[実施例1]
ともに粉末のギ酸カルシウム80重量部とリグニスルホン酸カルシウム20重量部とを混合して含カルシウム剤を調製した。
これを水で500倍に希釈して落花直後のリンゴ樹に全体的に散布した。また、第1回目の散布から10日後に第2回目、その10日後に第3回目を散布した。
収穫時に、含カルシウム剤の散布区及び不散布区からそれぞれ100果をサンプリングして、果面の傷及びサビ病の有無を比較したところ、散布区の方が傷、サビ病ともに少なく、両区には有意な差が認められた。
[実施例2]
ともに粉末のギ酸カルシウム50重量部とリグニスルホン酸カルシウム50重量部とを混合して含カルシウム剤を調製した。
これを水で1000倍に希釈して落花直後のリンゴ樹に全体的に散布した。また、第1回目の散布から10日後に第2回目、その10日後に第3回目を散布した。
収穫時に、含カルシウム剤の散布区及び不散布区からそれぞれ100果をサンプリングして、果面の傷及びサビ病の有無を比較したところ、散布区の方が傷、サビ病ともに少なく、両区には有意な差が認められた。
実施例1、2の比較結果から、本発明の含カルシウム剤は良好な果面保護効果を発揮することが確認できる。
また、散布区では、不散布区と比較して収穫前の落果が少なく、含カルシウム剤の散布によってリンゴ樹に吸収されたカルシウムによる効果と考えられる。
なお、実施例は対象植物がリンゴであるが、例えばナシ、モモ、ブドウ等の果樹についても同様の効果を得られる。また、本発明の含カルシウム剤は果菜類や葉菜類等にも施用できる。

Claims (3)

  1. ギ酸カルシウムとリグニンスルホン酸塩とを必須成分とし(但し、任意成分としてサリチル酸又はアミノ酸を含有する場合を除く)、ギ酸カルシウムとリグニンスルホン酸塩との配合比が、重量比でギ酸カルシウム80:リグニスルホン酸塩20〜ギ酸カルシウム50:リグニスルホン酸塩50の範囲にある
    ことを特徴とする含カルシウム散布剤。
  2. 前記リグニンスルホン酸塩はリグニンスルホン酸カルシウムであることを特徴とする請求項1に記載の含カルシウム散布剤。
  3. 請求項1又は2記載の含カルシウム散布剤を水で希釈して、前記リグニンスルホン酸塩の濃度を0.01%〜0.1%の範囲に調製したことを特徴とする含カルシウム散布剤。
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