JP3832638B2 - 重合装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、単量体成分を含む粘稠液を重合して重合体を製造する重合装置に関し、特に、粘稠液が浸透しない基材部上において、粘稠液を不連続な形状とした後に重合させて重合体とする重合装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ベルト等の基材部上において、単量体成分を重合させて重合体を製造する重合装置として、基材部上に単量体成分を含む液を均一に供給した後に、該液中の単量体成分を重合せしめてシート状重合体とするものが知られている。そして、このような従来の重合装置は、通常、得られたシート状重合体を解砕して重合体粗粒とした後に乾燥して重合体の製品とする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の重合装置は、基材部上に単量体成分を含む液を均一に供給して、すなわち、基材部上に単量体成分を含む液の連続的な形状が形成されている状態で、該液中の単量体成分を重合するものである。このため、上記従来の重合装置を用いることにより、重合が行われる領域の全体において基材部と接しているシート状重合体が得られる。したがって、スクラバー等の板状体を剥離部として用いて基材部からシート状重合体を剥離する際に、該剥離部により大きな力を加える必要があり、剥離部と基材部表面との接触により基材部の磨耗が早く進行し、基材部の交換を頻繁に行う必要が生じるという問題点がある。
【0004】
また、重合により得られる重合体は、その全面において基材部表面と接しているシート状重合体であるため、上記剥離部により剥離した後においても、重合体の残留物が薄膜として基材部上に残り易い。従って、残留物の薄膜を取り除くために、基材部を定期的に洗浄する必要があるという問題点がある。
【0005】
更に、重合により得られたシート状重合体を解砕して細かくするために、解砕機を用いた解砕工程が必要な場合、この解砕工程において生じる重合体粗粒が解砕機に付着しやすいため、解砕機の整備を頻繁に行って重合体粗粒を取り除く必要があるという問題点もある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、基材部上において、重合体を基材部から剥離する際の基材部の磨耗、および剥離後の重合体の残留物が基材部へ付着することを抑制あるいは防止することができ、重合体を解砕する工程を簡略化または省略することができる重合体の重合装置を提供することにある。すなわち、基材部から容易に剥離することができ、かつ解砕工程を簡略化または省略することができる重合体を製造できる重合装置、すなわちメンテナンスが容易であり、かつ重合体を効率よく製造することができる重合装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、単量体成分を含む粘稠液を、基材部上において、たとえば、水玉状、筋状(直線状および曲線状)等の不連続な形状とした後に重合させることにより、上記問題点を解消できることを見出した。不連続な形状とは、具体的には、基材に対して全面に単量体成分を含む粘稠液を展開しているようなシート状ではないことである。すなわち、粘稠液供給部により、基材部上に粘稠液の不連続な形状を形成した後に重合することにより、基材部からの剥離が容易な重合体を得ることができる。これにより、重合体を基材部から剥離する際に基材部の磨耗が生じたり、重合体の剥離後に、残留物の膜が基材部上に残ったりすることを抑制または防止することができる。また、基材部上において、粘稠液により所望の形状を形成した後に重合することにより、重合体の解砕工程を省略または簡略化し、乾燥効率を向上させられること確認して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の重合装置は、上記の課題を解決するために、単量体成分を含む粘稠液を供給する粘稠液供給部と、粘稠液が浸透しない基材部と、基材部上に供給された粘稠液中の単量体成分の重合反応を促進させる重合反応促進部とを有する重合装置であって、当該粘稠液供給部が、10mPa・s以上20,000,000mPa・s以下の範囲内の粘度の粘稠液を供給するものであるとともに、当該粘稠液供給部が、粘稠液により、粘稠液を展開することができる基材部上の領域の少なくとも一部に粘稠液が存在しない領域が存在する展開形状を基材部上に形成するものであり、基材部がコンベヤーであることを特徴としている。
【0009】
上記の発明によれば、粘稠液中の単量体成分が重合して重合体とされた状態において、基材部上に重合体が形成されていない領域が存在する。このため、基材部表面における重合体との接触面積を小さくすることができる。
【0010】
上記接触面積を小さくするためにとるべき好ましい基材部における粘稠液の展開形状としては、シート状ではなく、水玉状や筋状である。このような形状をとることで、重合後、基材からのスクラバーによる剥離が容易になる。又、さらにより均一な状態で重合を行わせることができる。
【0011】
また、基材部は粘稠液が浸透しないものであり、基材部上に、粘稠液の不連続な形状を形成すると、表面張力により粘稠液は基材部との接触面積を小さくしようとするため、粘稠液と基材部との間に隙間が形成される。たとえば、粘稠液供給部により、基材部上に、粘稠液の水玉状の形状を形成すると、基材部と粘稠液との界面において働く表面張力(界面張力)により、粘稠液が小さな表面積をとろうとする。このため、粘稠液により形成された水玉状の形状の各円形状の周縁部において、基材部との間に隙間が形成される。
【0012】
更に、通常、粘稠液は単量体成分の重合により収縮するが、この際にも水玉状の形状を形成する各円形状の周縁部において、基材部との間に隙間が形成される。このように、基材部上の粘稠液の形状を不連続な形状として重合することにより、得られる重合体と基材部との接触面積を小さくすることができる。そして、粘稠液により形成されている各円形状の周縁部、すなわち、基材部表面の、重合体と接している領域と重合体と接していない領域との境界においては、上述した粘稠液の表面張力および重合の際の収縮によって、重合体が基材部から浮いた状態となっている。
【0013】
このように、粘稠液供給部により、基材部上に粘稠液の不連続な形状を形成し、重合反応促進部により、基材部上に形成された粘稠液中の単量体成分の重合反応を促進して重合体を製造することにより、基材部と重合体との接触面積を、従来のシート状重合体に比べて小さくすることができる。更に、基材部上の重合体に、基材部表面から浮いた状態となっている部分を形成することができる。このため、重合体を剥離する際に、スクラバー等の剥離部を重合体と基材部表面との間に容易に進入させることができる。
【0014】
したがって、基材部の表面に大きな力を加えることなく基材部上の重合体を剥離し、基材部上に残留物が残ることを防止または抑制することができる。このため、本発明の重合装置を用いて製造された重合体は、基材部から剥離することが容易となる。したがって、重合体を基材部から剥離する際に基材部が磨耗することを防止または抑制すること、および、重合体の残留物により形成された薄膜を取り除くための基材部の洗浄を不要とすること、またはその回数を少なくすることができる。
【0015】
更に、基材部上において、粘稠液により重合体の製品に必要とされる形状を形成して重合することにより、得られた重合体の解砕工程および乾燥工程を簡略化または省略することができる。これにより、粉砕工程および乾燥工程において、製品の規格に適合しない重合体が発生することを抑制または防止することができるため、重合体の製品としての歩留まりも向上する。したがって、重合体を効率良く生産することができ、点検・保守・管理等のメンテナンスの容易な重合装置を提供することができる。
【0016】
また、基材部がコンベヤーであることにより、粘稠液供給部により供給された粘稠液中の単量体成分を、基材部上で連続的に重合させて重合体とすることができる。したがって、重合体の製造効率を更に向上させることが可能となる。なお、コンベヤーとしては、2以上のベルト車にかけられている平帯状のベルトが循環することにより、ベルト上のものを連続的に運搬するベルトコンベヤーが挙げられる。また、ベルトとしては、継ぎ目のないエンドレスベルトを用いることが好ましい。
【0017】
なお、基材部上における粘稠液の重合は、基材部上から粘稠液を剥離することができる程度にまで進行させれば良い。すなわち、重合反応促進部により、粘稠液中の単量体成分の重合反応を促進させて基材部上で完結させることとしてもよく、あるいは単量体成分の重合を基材部上で完結させずに、粘稠液を基材部から剥離した後に完結させることとしてもよい。
【0018】
本発明において「基材部」とは、粘稠液供給部により供給された粘稠液の重合が行われる部分をいう。また、「粘稠液」とは単量体成分、単量体成分が部分的に重合してなる重合体成分および/または増粘剤を含んでなるものをいい、これら成分の他に、重合開始剤、溶媒などを含む。また、「不連続な形状」とは、粘稠液供給部により粘稠液を展開することができる基材部上の領域の少なくとも一部に粘稠液が存在しない領域が存在する形状をいう。
【0019】
本発明の重合装置は、上記粘稠液供給部が、10mPa・s以上20,000,000mPa・s以下の範囲内の粘度の粘稠液を供給するものであることを特徴としている。
【0020】
これにより、基材部上において、単量体成分を含む粘稠液により所望の形状をより確実に形成することができる。すなわち、粘稠液の粘度を上記範囲内にすることにより、粘稠液に保形性を与えることができるため、所望の形状を確実に形成することが可能となる。
【0021】
上記重合体粘稠液供給部は、粘稠液により水玉状の展開形状を形成するものであって、
当該水玉状の形状を構成する単位となる各形状は、円形状、楕円形状、又は、円形状と楕円形状とが混在してなるものであってもよい。また、上記円形状の直径は1mm以上70mm以下であり、楕円形状の長軸の長さは3mmよりも大きく70mm以下であり、かつ、短軸の長さは3mm以上70mm未満であり、隣接する形状の最近接部の距離は1mm以上であることが好ましい。また、上記重合体粘稠液供給部は、粘稠液により、複数の独立した細長く一続きになっている筋状の展開形状を形成するものであって、当該筋状の展開形状は、直線状または曲線状であってもよい。また、上記筋状の展開形状の幅は1mm以上70mm以下であり、隣接する形状の最近接部の距離は1mm以上であることが好ましい。
【0022】
上記の発明によれば、基材部上の重合体を容易に剥離することができる。したがって、重合体を基材部から剥離する際の基材部の磨耗を、より確実に、防止または抑制することができる。そして、重合体の残留物により形成された薄膜を取り除くために必要な基材部の洗浄を不要とすること、またはその回数を少なくすることをより確実とすることができる。したがって、重合体の製造効率が良好であり、メンテナンスの容易な重合装置を提供することができる。なお、本発明において「筋状」とは、細長く一続きになっている形状をいい、直線状および曲線状のいずれも含む。
【0023】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕
本発明の重合装置の実施の一形態について、図1ないし図6を用いて以下に説明する。図1は本実施の形態の重合装置の概略の構成を示す正面図である。同図に示すように、本実施の形態の重合装置は、単量体貯槽1、増粘剤貯槽2、重合開始剤貯槽3、粘稠液作製槽4、滴下装置(粘稠液供給部)5、第1の光照射部である光ランプ6a、重合反応促進部(第2の光照射部)である光ランプ6b、可動式ベルト(基材部、コンベヤー)7、カバー8、スクラバー10およびベルト車(基材部、コンベヤー)11を備えて構成されている。
【0024】
上記単量体貯槽1は、粘稠液作製槽4に供給する単量体成分を含む単量体溶液をたくわえるものであり、増粘剤貯槽2は、粘稠液9の粘度を調整するために必要に応じて添加される増粘剤をたくわえるものであり、重合開始剤貯槽3は、単量体成分を重合させて粘稠液9とする際に必要な重合開始剤をたくわえるものである。これら単量体貯槽1、増粘剤貯槽2および重合開始剤貯槽3は、それぞれ粘稠液作製槽4と、バルブを備えたパイプ等により実現される供給手段を介して接続されている。
【0025】
なお、上記単量体貯槽1、増粘剤貯槽2、および重合開始剤貯槽3は、通常、同時に使用されることはなく、単量体貯槽1は、増粘剤貯槽2または重合開始剤貯槽3のいずれか一方と同時に使用されるものであるが、これら全てを同時に使用することとしてもよい。このため、本実施の形態の重合装置は、単量体貯槽1に加えて、増粘剤貯槽2および/または重合開始剤貯槽3を備えるものであればよい。
【0026】
粘稠液貯槽4は、単量体溶液の単量体成分を部分重合したり、単量体溶液と増粘剤とを混合したりして所望の粘度として、粘稠液9を製造するものである。そして、通常、その内部には、単量体溶液や、粘稠液9を攪拌する攪拌機等の攪拌手段を備えている。
【0027】
また、単量体貯槽1と増粘剤貯槽2とを同時に使用する場合は、粘稠液作製槽4において、単量体溶液と増粘剤とを混合して所望の粘度の粘稠液9を作製し、可動式ベルト7上で重合して重合体とする。また、単量体貯槽1と重合開始剤貯槽3とを同時に使用する場合は、粘稠液作製槽4において、単量体溶液の単量体成分を部分重合して所望の粘度の粘稠液9を作製し、可動式ベルト7上で重合して重合体とする。
【0028】
本実施の形態の重合装置は、粘稠液作製槽4中の上記単量体溶液は重合開始剤を含む単量体溶液に、熱を加えたり、光を照射したりして、単量体溶液中の単量体成分を部分重合して粘稠液9を作製する。ここでは、粘稠液作製槽4の単量体溶液に光を照射する光ランプ6aを備えたものについて説明する。この光ランプ6aにより、粘稠液作製槽4中の単量体溶液に光を照射して、単量体成分の一部を重合(部分重合)させて重合体成分とする。これにより、可動式ベルト7上に所望の形状を形成するために適した粘度の粘稠液9を作製し、滴下装置5に供給することができる。
【0029】
このように、本実施の形態の重合装置は、滴下装置5に供給する粘稠液をたくわえる粘稠液作製槽4と、該粘稠液作製槽4槽内部に光を照射する第1の光照射部である光ランプ6aとを有している。
【0030】
これにより、光ランプ6aを用いて、粘稠液作製槽4の単量体成分を含んでいる単量体溶液に光を照射して重合反応を進行させて、単量体成分を部分重合して重合体成分として、単量体溶液を所望の粘度の粘稠液9とすることができる。すなわち、粘稠液9の粘度を、可動式ベルト7上に形成される形状に応じた粘度とした後に、滴下装置5に供給することができる。
【0031】
したがって、滴下装置5により粘稠液9を供給して、可動式ベルト7上に不連続な形状を形成することをより確実に行うことができる。このため、重合体を効率よく製造することができ、かつメンテナンスの容易な重合装置を提供することができる。
【0032】
なお、粘稠液作製槽4中における粘稠液9の作製、およびその粘度の調整は、光ランプ6aによる光照射により単量体成分を部分重合することの他に、増粘剤の添加によっても行うことができる。このため、増粘剤を添加して粘稠液9の粘度を所望の範囲内とする場合には、光ランプ6aにより単量体成分の部分重合を行わなくてもよい。また、光ランプ6aによって単量体溶液中の単量体成分の重合反応を制御することのみにより所望の粘度とし、粘稠液9を作製することができる場合には、増粘剤は添加しなくてもよい。
【0033】
なお、上記では、粘稠液作製槽4中の単量体溶液の単量体成分に光を照射することにより、部分重合させて粘稠液9を製造する場合について説明したが、単量体溶液に熱を加えることにより、単量体成分を部分重合させて粘稠液9を製造する場合や、増粘剤を加えて粘稠液9を製造する場合には、重合装置は光ランプ6aを備えていないものであってもよい。
【0034】
また、粘稠液作製槽4は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)等により実現される光ランプ6aの制御部に接続されている粘度測定部を更に有していてもよい。この粘度測定部は、粘稠液作製槽4の粘稠液9の粘度を測定して、測定結果を光ランプ6aの制御部に送信するものである。
【0035】
これにより、粘度測定部により測定された粘稠液9の粘度に応じて、光ランプ6aによる光照射を制御して、粘稠液9の単量体成分の重合反応を制御することができる。具体的には、光ランプ6aは、粘度測定部により測定された粘稠液9の粘度が所定の値以下である場合に光の照射を行い、粘度測定部により測定された粘稠液の粘度が所定の値よりも大きい場合に光の照射を停止するものであってもよい。
【0036】
上記の構成により、例えば、単量体貯槽1、増粘剤貯槽2および重合開始剤貯槽3の成分が、粘稠液作製槽4に連続的に供給されることにより、粘稠液作製槽4内の粘稠液9の成分が変化する場合であっても、粘稠液9の粘度を粘度測定部によりリアルタイムで測定し、その粘度変化に応じて光ランプ6aによる光照射を制御することが可能となる。これにより、粘稠液9を所望の粘度として滴下装置5に供給することができる。
【0037】
上記説明したように、重合装置が粘度測定部をさらに備えることにより、粘稠液作製槽4の粘稠液9を、可動式ベルト7上において、滴下装置5による不連続な形状の形成に適した粘度として、粘稠液作製槽4に供給することが可能となる。すなわち、粘稠液9の粘度を一定の範囲内として、滴下装置5に供給することが可能となる。これにより、可動式ベルト7表面において、粘稠液9による所望の形状をより確実に形成することができるため、可動式ベルト7からの重合体の剥離をより容易とすることができ、重合体の製造効率を向上させることができる。
【0038】
滴下装置5は、粘稠液作製槽4よりパイプなどを介して供給された粘稠液9を、可動式ベルト7上に滴下して、粘稠液9により不連続な形状を形成するものである。ここで、粘稠液9を不連続な形状とするとは、可動式ベルト7上の粘稠液9を展開することができる領域の少なくとも一部に粘稠液9が存在しない形状とすることをいうが、粘稠液9により形成される不連続な形状としては、たとえば、水玉状、筋状(直線状および曲線状)が挙げられる。
【0039】
可動式ベルト7上おいて、粘稠液9を不連続な形状として重合し、重合体とすることにより、従来のように可動式ベルト7の表面全体に連続的に粘稠液9を展開して重合したシート状重合体と比較して、スクラバー10により、重合体を可動式ベルト7から容易に取り除くことができる。このため、可動式ベルト7から重合体を取り除く際の可動式ベルト7の磨耗を防止し、重合体の残留物の膜が可動式ベルト7表面に形成されることを防止することができる。
【0040】
更に、滴下装置5により、可動式ベルト7上において、粘稠液9により所望の形状を形成した後に重合することにより、得られた重合体を解砕する解砕工程を省略または簡易化することができる。
【0041】
可動式ベルト7上において、滴下装置5により滴下される粘稠液9の厚みは、1mm以上50mm以下の範囲内であることが好ましく、3mm以上30mm以下の範囲内であることがより好ましく、3mm以上20mm以下の範囲内であることがさらに好ましい。これにより、重合反応を行う場合等において、粘稠液9に光や熱を均一に加えることができる。このため、粘稠液9の単量体成分の重合反応を均一に進行させることができる。また、重合体の可動式ベルト7からの剥離性、および重合体の乾燥性を良好にすることができる。
【0042】
本実施の形態の重合体の製造装置において、粘稠液9を可動式ベルト7に不連続に展開して得られる好ましい展開形状としては、水玉状(水玉模様状)、筋状(直線状および曲線状)を挙げることができる。これら粘稠液9の形状は、可動式ベルト7からの重合体の剥離性、製造された重合体の取り扱い性、乾燥性が良好であるという効果が発揮されるものであれば、形状が同一である必要はなく、異なる複数の形状が混在したものであってもよい。すなわち、円形状の直径や、楕円形状の長軸の長さ、短軸の長さが、異なるものが混在して構成されていてもよい。しかしながら、重合体の製造工程を簡略化することができ、かつ得られた重合体の取り扱い性、および乾燥性を良好にすることができるため、可動式ベルト上の粘稠液9が同一な形状に揃うように、粘稠液9が滴下装置5により供給されることが好ましい。すなわち、滴下装置5は粘稠液9により複数の独立した同一形状を形成するものであってもよい。
【0043】
ここで、可動式ベルト7上に形成される粘稠液9の形状の一例として、図2および図3に示すように、可動式ベルト7上における粘稠液9が、互いに接続されていない独立した複数の円形状よりなる水玉状の形状である場合を例に挙げて、不連続な形状について以下に説明する。水玉状の形状を構成する単位となる各形状は、円形状のみに限られず、楕円形状であってもよい。また、水玉状の形状は、円形状、楕円形状のいずれかのみから形成されていても、円形状と楕円形状とが混在してなるものであってもよい。
【0044】
また、可動式ベルト7上において、粘稠液9が同一な形状に揃えられているとは、水玉状の形状を構成する単位となる各形状が、円形状である場合にはその直径が揃っていることをいい、楕円形状である場合にはその長軸の長さおよび短軸の長さが揃っていることをいう。具体的には、上記各形状が円形状である場合は、基材上に形成されている円形状の70%以上のものが、該円形状の直径の平均値の50%以上150%以下の範囲内であることが好ましく、60%から140%以内の範囲内であることがより好ましく、70%以上130%以下の範囲内であることがさらに好ましい。また、上記各形状が楕円形状である場合は、可動式ベルト上の楕円形状の70%以上のものが、該楕円形状の長軸の長さの平均値の50%以上150%以下の範囲内であることが好ましく、60%から140%以内の範囲内であることがより好ましく、70%以上130%以下の範囲内であることがさらに好ましい。すなわち、可動式ベルト7上において水玉状の形状を構成する円形状の直径、楕円形状の長軸の長さは、これらの平均値を基準とした変動率が、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
【0045】
また、粘稠液9が同一な形状に揃えられてなる複数の同一形状を、可動式ベルト7上に形成して重合することにより、同一形状の重合体が得られる。これにより、上記解砕工程を省略等できることに加えて、得られた重合体の乾燥が必要な場合に、効率よく乾燥することができる。すなわち、同一形状の重合体には、その形状および大きさの相異に起因する乾燥状態の差が生じないため、重合体の乾燥処理を非常に効率よく行うことが可能となり、重合体の製造効率を向上させることができる。
【0046】
粘稠液9により形成されている水玉状の形状を構成する円形状の直径は、1mm以上70mm以下の範囲内であることが好ましく、3mm以上50mm以下の範囲内であることがより好ましく、5mm以上30mm以下の範囲内であることがさらに好ましい。また、水玉状の形状を構成する楕円形状の長軸の長さが3mmよりも大きく70mm以下であり、かつ、短軸の長さが3mm以上70mm未満であることが好ましい。また、上記水玉状の形状を構成する各形状間の距離は、最も近接する形状間の距離、すなわち隣接する形状の最近接部の距離が1mm以上であることが好ましい。
【0047】
滴下装置5により、可動式ベルト7上に粘稠液9水玉状の形状を形成する場合、円形状または楕円形状の数は、50cm四方の面積中に、4個以上16000個以下の範囲内であることが好ましく、10個以上15000個以下の範囲内であることがより好ましく、20個以上10000個以下の範囲内であることがさらに好ましく、40個以上8000個以下の範囲内であることがさらに好ましく、100個以上6000個以下の範囲内であることがさらに好ましい。基材上の50cm四方の面積中に形成される、粘稠液9の円形状の直径、隣接する形状の最近接部の距離、および円形状の個数の例について、下記の表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
また、基材上における粘稠液9が筋状(直線状または曲線状)の形状である場合には、その幅、すなわち、粘稠液9の幅が、1mm以上70mm以下の範囲内であることが好ましく、3mm以上50mm以下の範囲内であることがより好ましい。また、上記筋状(直線状または曲線状)の形状を構成する各形状間の距離は、互いに接触しない距離であればよいが、最も近接する形状の間の距離、すなわち隣接する形状の最近接部の距離が1mm以上であることが好ましい。
【0050】
可動式ベルト7上において、粘稠液9を所望の形状にする滴下装置5としては、熱可塑性樹脂を加熱溶融して、滴下、冷却、固化させてタブレット(錠剤)状にするために用いられる一般的な装置を用いることができる。具体的には、樹脂類の製造の際に、造粒装置として用いられている、ロートフォーマー(商品名、サンドビック株式会社製)、ロールドロップ(商品名、日本ベルディング株式会社製)等を用いることができる。本発明の重合装置において、上記滴下装置(粘稠液供給部)として造粒装置を用い、基材上に水玉状に粘稠液を展開する形態は好ましい実施態様の1つである。
【0051】
また、滴下装置5は、図2、図3に示す水玉状以外に、粘稠液9を筋(ストリップ)状(直線状および曲線状)に展開するものであってもよい。この場合の滴下装置5としては、等間隔の細孔が形成されている供給管より可動式ベルト7上に粘稠液9を供給するもの、複数の定量ポンプを並列に設置して、粘稠液9を可動式ベルト7上に供給するものが挙げられ、熱可塑性樹脂を加熱溶融した状態で筋状とし、冷却、固化させるために用いられる一般的な装置を用いることができる。具体的には、樹脂類の製造の際に造粒装置として用いられている、ストリップフォーマー(商品名、サンドビック株式会社製)等を用いることができる。又、本発明の重合装置において、粘稠液を基材上に筋状に展開する滴下装置を用いる形態は好ましい実施態様の1つである。
【0052】
また、可動式ベルト7上において粘稠液9を不連続な形状とした後に重合体とした状態において、可動式ベルト7表面の重合体と接している領域の総面積は、可動式ベルト7表面の粘稠液9を展開することが可能な領域の面積の1%以上90%以下の範囲内とすることが好ましく、10%以上70%以下の範囲内とすることがより好ましい。可動式ベルト7表面の重合体と接している領域の総面積を上記範囲内とすることにより、従来の重合装置に比較して、可動式ベルト7から重合体を容易に剥離して、取り除くことができる。
【0053】
光ランプ6bは、可動式ベルト7上の粘稠液9に光を照射して、粘稠液9の単量体成分の光重合反応を促進するものである。光ランプ6bとしては、主要波長が100nm以上800nm以下の範囲内にあるものを用いることができ、たとえばキセノンランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、炭素アーク灯、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、白熱電球、蛍光ランプ、アルゴングロウランプ、ナトリウムランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。光ランプ6bの可動式ベルト7からの距離、および粘稠液9に照射する光強度(照度)は、粘稠液9に含まれる単量体成分の濃度、可動式ベルト7上の粘稠液9の形状等に応じて設定されるが、通常1W/m2以上100W/m2以下とされる。光ランプ6bにより、粘稠液9中の単量体成分の光重合反応を進行させて連続的に重合体を製造することができる。
【0054】
上記説明した光ランプ6bは、滴下装置5により供給された可動式ベルト7上の重合体9の単量体成分の光重合反応を制御するためのものであるのに対して、光ランプ6aは、滴下装置5に供給される粘稠液作製槽4中の単量体溶液中の単量体成分の一部を重合して重合体成分とすることにより、粘稠液9の粘度を調整するためのものである点で相違している。しかしながら、光ランプ6aの波長の範囲、具体例は光ランプ6bと同様である。また、粘稠液9に照射する光強度は、(照度)は、粘稠液9に含まれる単量体成分の濃度、可動式ベルト7上に形成される粘稠液9の形状などに応じて設定されるが、通常1W/m2以上100W/m2以下とされる。
【0055】
本実施の形態においては、上記説明したように、光ランプ6bにより、可動式ベルト7上の粘稠液9に光を照射して、光重合反応を促進して重合体を得るものについて説明したが、粘稠液9を加熱して重合し、重合体を製造することもできる。このように、可動式ベルト7上で粘稠液9を加熱して重合体を製造する場合には、重合装置は光ランプ6bを備えている必要はない。
【0056】
粘稠液作製槽4中の粘稠液9の粘度、すなわち滴下装置5に供給される粘稠液9の粘度は、10mPa・s以上20,000,000mPa・s以下の範囲内であることが好ましく、50mPa・s以上10,000,000mPa・s以下の範囲内であることがより好ましく、100mPa・s以上1,000,000mPa・s以下の範囲内であることが更に好ましい。粘稠液9の粘度を上記範囲内とすることにより、粘稠液9にある程度の保形性を与えることができる。このため、可動式ベルト7上において、粘稠液9を用いて所望の形状を形成しやすくなり、所望の不連続な形をした重合体を容易に形成することができる。
【0057】
粘稠液9中に添加される増粘剤としては、たとえば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、澱粉、アルギン酸、グアガム、アラビアゴム、トラガントガム等の天然物、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、架橋ポリアクリル酸、水性ウレタン樹脂、水性アクリル樹脂、水溶性エポキシ化合物、水溶性ポリエステル等の合成高分子が挙げられる。
【0058】
粘稠液9に添加される増粘剤の量は、増粘剤の種類に応じて、粘稠液9の粘度を所望の範囲内とするために必要な量とすればよいが、粘稠液9に含まれる量として0.1重量%以上10重量%以下の範囲内とすることが好ましい。
【0059】
可動式ベルト7は、滴下装置5により滴下された粘稠液9の単量体成分を、その表面上において重合させて重合体とするものであり、その表面は粘稠液9が浸透しない素材により形成されている。可動式ベルト7としては、たとえば、スチールベルトやゴムベルト等のベルト等が挙げられる。可動式ベルト7上おいて、粘稠液9の不連続な形状を形成し、光ランプ6bにより光を照射して重合することにより、所望の形状の重合体を連続して製造することが可能であり、重合体の製造効率を向上させることができる。また、粘稠液9が浸透しない可動式ベルト7表面を構成する材料としては、テフロン(登録商標)、アルミニウム、鉄、ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコン、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0060】
可動式ベルト7の表面の形状としては、平面や、湾曲した形状などが挙げられるが、平面であることが好ましい。表面の形状が平面である可動式ベルト7を用い、その上で重合体を製造することすることにより、平板状のスクラバー10を用いて重合体を容易に剥離することができる。
【0061】
カバー8は、可動式ベルト7上における重合反応の条件を一定にするために、可動式ベルト7の周囲を外界から遮るためのものであり、たとえば、カバー8内部を窒素雰囲気として重合反応を行うことができる。スクラバー10は、可動式ベルト7上で粘稠液9を重合して得られた重合体を可動式ベルト7から剥離するために用いられるものである。ベルト車11は、可動式ベルト7を駆動するためのものであり、本実施の形態においては、2個のベルト車11により可動式ベルト7を駆動するベルトコンベヤーを示しているが、ベルト車11の数はこれに限られない。
【0062】
また、可動式ベルト7とベルト車11とからなるベルトコンベヤーは、図示しないが、可動式ベルト7上の粘稠液9の温度を調節するための、温度調整部をその内部に有していてもよい。これにより、可動式ベルト7上における重合反応の際に粘稠液9の温度を調節することが可能となる。温度調節部は、例えば、その温度を調節することができる電熱ヒータなどにより構成することができる。
【0063】
本実施の形態の重合装置により、可動式ベルト7上において重合体を製造する際の重合反応の反応条件は、特に限定されるものではないが、粘稠液9の反応温度は、50℃〜120℃の範囲内がより好ましく、60℃〜115℃の範囲内が更に好ましく、90℃〜110℃の範囲内が特に好ましい。
【0064】
本実施の重合装置を用いて重合される粘稠液9に含まれる単量体成分を構成する単量体、つまり、重合体の原料として用いられる単量体としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体;上記不飽和モノカルボン酸系単量体を、一価金属、ニ価金属、アンモニア、有機アミン等で部分中和または完全中和してなる中和物;
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体;上記不飽和ジカルボン酸系単量体を、一価金属、ニ価金属、アンモニア、有機アミン等で部分中和または完全中和してなる中和物;
(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;
(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体;
ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド等の不飽和スルホン酸系単量体;上記不飽和スルホン酸系単量体を、一価金属、ニ価金属、アンモニア、有機アミン等で部分中和または完全中和してなる中和物;
3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル、α−ヒドロキシアクリル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ビニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のカチオン性単量体;
(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体;
(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸メチルエステル、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の含リン単量体;
等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0065】
これら単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。上記例示の単量体のうち、不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和モノカルボン酸系単量体を部分中和または完全中和してなる中和物、不飽和スルホン酸系単量体、および、不飽和スルホン酸系単量体を部分中和または完全中和してなる中和物がより好ましい。そして、単量体成分がアクリル酸(塩)を含んでいることがさらに好ましく、アクリル酸(塩)を主成分として、具体的には単量体全体の50モル%以上として含んでいることが特に好ましい。
【0066】
粘稠液9中の重合前の単量体成分の濃度は、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましい。単量体成分の濃度を10重量%以上にすることにより、重合により得られる重合体の分子量および重合率を所望の範囲にすることが容易になる。
【0067】
本実施の形態の重合装置を用いた粘稠液9の重合反応に用いられる重合開始剤としては、光重合反応を行う場合に用いられる光重合開始剤として、たとえば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2、2’アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、1,1’−アゾビス(1−アミジノ−1−シクロプロピルエタン)、2,2’−アゾビス(2−アミジノ−4−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−N−フェニルアミノアミジノプロパン)、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−エチルアミノ−2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(1−アリルアミノ−1−イミノ−2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−N−シクロヘキシルアミジノプロパン)、2,2’−アゾビス(2−N−ベンジルアミジノプロパン)およびその塩酸、硫酸、酢酸塩等、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)プロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(1,1’−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕等の水溶性アゾ系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾインヒドロキシアルキルエーテル、ジアセチルおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、ジフェニルジスルフィドおよびその誘導体、ベンゾフェノンおよびその誘導体、ベンジルおよびその誘導体など様々な化合物があり、上記例示したもの以外の光重合開始剤を使用することもできる。上記例示した光重合開始剤は、それぞれ単独で使用することができ、また複数を組み合わせて使用することもできる。
【0068】
上記重合開始剤の使用量は、単量体成分100重量部対して、0.0001重量部以上5重量部以下の範囲内とすることが好ましく、0.001重量部以上1重量部以下の範囲内とすることがより好ましい。光重合開始剤の添加量を上記の範囲内とすることにより、光重合反応により得られる重合体の分子量および重合率を十分なものとすることができる。
【0069】
また、本実施の形態においては、可動式ベルト7上の粘稠液9に光ランプ6bにより紫外線を照射することにより、粘稠液9中の単量体成分を光重合させて重合体とする場合について説明したが、可動式ベルト7上の粘稠液9に熱重合開始剤を添加した後に加熱を行うことにより、重合反応を進行させることとしてもよい。この場合に用いられる熱重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;ペルオキソ二硫酸アンモニウム(過硫酸アンモニウム)、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(過硫酸ナトリウム)、ペルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)等のペルオキソ二硫酸塩(過硫酸塩);2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら重合開始剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0070】
また、単量体成分1モルに対する重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、0.0001モル〜0.05モルの範囲内が好適である。なお、重合をより促進させるために、上記重合開始剤と、(重)亜硫酸塩や遷移金属塩等の還元剤とを併用することもできる。
【0071】
本実施形態の重合装置により粘稠液9を重合する際に好適に用いることができる溶媒としては、例えば、水;水と相溶性を有する水性溶媒;水と水性溶媒との混合溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の、非水性溶媒;が挙げられるが、特に限定されるものではない。該水性溶媒としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等の低級エーテル;等が挙げられる。上記例示の溶媒のうち、水がより好ましい。また、溶媒として上記混合溶媒を用いる場合における水の割合は、特に限定されるものではないが、40重量%以上であることがより好ましい。単量体成分1モルに対する溶媒の使用量は、特に限定されるものではない。
【0072】
上記説明したように、粘稠液作製槽4における重合反応、および可動式ベルト7上における重合反応は、いずれも、光照射のみでなく、加熱することによっても行うことができる。光ランプ6a,6bを用いた光照射により単量体成分を光重合反応により重合する、図1に示す重合装置以外のものを、図4ないし図6に示す。なお、図4ないし図6においては、図1に示した部分と対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。
【0073】
図4に示す重合装置は、図1の重合装置の光ランプ6a・6bの代わりに加熱部16a・16bを備えている。すなわち、同図に示す重合装置は、加熱部16aによって粘稠液作製槽4中の単量体溶液を加熱して、熱重合反応により単量体成分を部分重合させて粘稠液9を作製し、可動式ベルト7上の粘稠液9を加熱部16bによって加熱して、熱重合反応により重合体を製造するものである。
【0074】
図5に示す重合装置は、図1の重合装置の光ランプ6bの代わりに加熱部16bを備えている。すなわち、同図に示す重合装置は、光ランプ6aによって粘稠液作製槽4中の単量体溶液に光を照射して、光重合反応により単量体成分を部分重合させて粘稠液9を作製し、可動式ベルト7上の粘稠液9を加熱部16bによって加熱して、熱重合反応により重合体を製造するものである。
【0075】
図6に示す重合装置は、図1の重合装置の光ランプ6aの代わりに加熱部16aを備えている。すなわち、同図に示す重合装置は、加熱部16aによって粘稠液作製槽4中の単量体溶液を加熱して、熱重合反応により単量体成分を部分重合させて粘稠液9を作製し、光ランプ6bによって可動式ベルト7上の粘稠液9に光を照射して、光重合反応により重合体を製造するものである。
【0076】
上記加熱部16aは、粘稠液作製槽4の中の単量体溶液に熱を加えることができればよいが、粘稠液作製槽4の温度を調整できることがより好ましい。また、上記加熱部16bは、可動式ベルト7上の粘稠液9に熱を加えることができればよい。
【0077】
加熱部16aは、粘稠液作製槽4の周囲の少なくとも一部に設けられているものであり、図4、図6に示すように、その周囲を覆うように設けられていることがより好ましい。これらの図には、別に設けたタンク(図示せず)からの加熱・冷却媒体が、必要に応じてその内部に循環供給されるジャケットにより構成された加熱部16aのイメージを示している。この加熱部16aにより、粘稠液作製槽4の温度を調整することができるため、内部の単量体溶液の熱重合反応を制御し、所望の粘度の粘稠液9を作製することが可能となる。なお、上記説明したジャケットのほかに、例えば、別に設けたタンク(図示せず)からの加熱・冷却媒体が、必要に応じてその内部に循環供給される管や、温度調節可能な電熱ヒーター等によっても、加熱部16aを構成することができる。
【0078】
そして、加熱部16bは、図4、図5に示すように、通常、可動式ベルト7の粘稠液9の不連続な形状が形成されていない面(以下、「裏面」と記す)側に配されている。これらの図には、別に設けたタンク(図示せず)から、任意の温度の加熱・冷却媒体がその内部に循環供給される管が、可動式ベルト7の面と略平行に配されて構成されている加熱部16bのイメージを示している。この加熱部16bにより、可動式ベルト7を介して粘稠液9の温度を調整することができるため、粘稠液9の熱重合反応を促進して重合体を製造することができる。なお、上記説明した管のほかに、例えば、可動式ベルト7の裏面に、任意の温度の加熱・冷却媒体をスプレーする噴霧部、温度調整可能な電熱ヒーター等によっても、加熱部16bを構成することができる。
【0079】
なお、上記加熱部16a・16bの加熱・冷却媒体としては、例えば、油、水、水蒸気などが挙げられる。
【0080】
以上のように、本発明の重合装置は、滴下装置5により、可動式ベルト7上に粘稠液9を不連続な形状として、粘稠液9の単量体成分を重合して重合体とするものである。このため、スクラバー10により、容易に可動式ベルト7上の重合体9を剥離することができ、可動式ベルト7上に粘稠液9の残留物が残ることを防止または抑制することができる。これにより、可動式ベルト7の交換・洗浄を不要または抑制することができる。更に、不連続な形状の重合体が得られるため、その解砕工程および乾燥工程を簡略化または省略することできる。したがって、製品としての取扱いの良好な重合体を効率よく製造することができ、かつメンテナンスの容易な重合装置を提供することが可能となる。
【0081】
【実施例】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例においては、「部」は「重量部」を表し、「%」は「重量%」を表している。
【0082】
〔実施例1〕
容量5000mlのステンレスビーカーに、単量体成分としてのアクリル酸431部と、溶媒としてのイオン交換水1031部とをとり、アクリル酸水溶液とした。次に、上部にふたをして攪拌しながら、窒素をバブリングさせることによりアクリル酸水溶液中の溶存酸素を除去した。そして、図1で示すベルトコンベヤー式の重合装置の単量体貯槽1に仕込んだ(本実施例では、重合開始剤貯槽を新たに追加設置した)。このとき滴下装置5としては、造粒装置を採用した。
【0083】
次に、上記単量体貯槽1からアクリル酸水溶液、重合開始剤貯槽3から光重合開始剤であるダロキュア1173(商品名、チバ・スペシャリティ・ケミカル株式会社製)の1%アクリル酸溶液、および別の重合開始剤貯槽から次亜リン酸ナトリウムの1%水溶液をそれぞれ粘稠液作製槽4に供給した。このとき、単量体貯槽1から供給されるアクリル酸水溶液に対して、ダロキュア1173の1%アクリル酸溶液18.7部(最終的にアクリル酸1モルに対して、ダロキュアとして0.03gの添加量となる量)、および別の重合開始剤貯槽から次亜リン酸ナトリウムの1%水溶液18.7部(最終的にアクリル酸1モルに対して、次亜塩素酸ナトリウムとして0.03gの添加量となる量)の混合量になるようにして、各貯槽のバルブを調整した。このようにして単量体成分と重合開始剤とが所定量の割合で混合された重合用単量体組成物を粘稠液作製槽4に移送した。この時点での、アクリル酸水溶液の温度は23℃であった。
【0084】
次いで、ブラックライト水銀ランプ(H400BL−L、東芝ライテック株式会社製)を用いて、上記粘稠液作製槽4中の水溶液の表面における光量が1.7mW/cm2となる強度で光照射を行った。この照射により、アクリル酸水溶液中のアクリル酸の重合反応を開始させて、上記条件の下、50秒間の光照射を行い、粘稠液Aを得た。この粘稠液Aの粘度を測定した結果、47℃において1160mPa・sであった。このようにして、その一部が光重合反応により重合された重合体成分を含む粘稠液である粘稠液Aを粘稠液作製槽4の中に得た。
【0085】
このようにして得られた粘稠液Aを、滴下装置より、図2に示すように、コンベヤー上に水玉状に展開した(厚さ3mm)。このときコンベヤー上には、粘稠液Aによる水玉状の形状が形成されている面積の合計が、コンベヤー表面のうち、該水玉状の形状が形成されている面の、粘稠液Aを展開すること(のせること)ができる領域の面積(以下、コンベヤー表面積と記す)に対して45%となるように、水玉状の形状が形成されていた。なお、水玉状の形状を構成する各円形状はほぼ同じ大きさであり、また、その直径は10mmであった。(なお、滴下装置5、この場合造粒装置の条件を特定することで、表1に示されるような展開が可能であった。)
さらに、光ランプ6bより(上記と照射光量は同じ条件)、3分間の光照射が水玉状に展開された粘稠液Aに均一に行われるようにコンベヤー速度を調整し、光重合を行った。このようにして、重合装置のコンベヤー上で、上記粘稠液A中のアクリル酸の重合反応を完結させて得られた重合体を、スクラバーを用いてかきとり、さらに次の工程で、105℃に調整された熱風循環式乾燥機で90分間乾燥させた。乾燥後の重合体の形状は、水玉状、すなわちタブレット状であった。また、乾燥後の重合体は、その水分量が1.8%であり、卓上粉砕機を用いて容易に粉砕することができた。
【0086】
〔実施例2〕
本実施例では、図1の重合装置における滴下装置5を、粘稠液を筋状、直線状あるいは曲線状に展開することのできる供給装置とした。そして、実施例1と同様にして、今度は、筋状に粘稠液を展開させ重合させた。今回は、重合剤貯槽3よりダロキュア1173の1%アクリル酸溶液および次亜塩素酸ナトリウムの1%水溶液が添加されたアクリル酸水溶液を、さらに増粘剤貯槽2より増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を、粘稠液貯槽4に供給して、系の粘度を330mPa・sとした。このようにして得られた水溶液を以下粘稠液Bと記す。そして、調整された粘稠液Bを粘稠液貯槽4から、筋状に粘稠液を展開できる滴下装置5に供給し、コンベヤー上に、平均の厚みが3mmであり、かつ、コンベヤー上の粘稠液Bによる筋形状が形成されている面積の合計が、コンベヤー表面積の30%となるように、筋状の形状を形成した。
【0087】
ついで、上記ブラックライト水銀ランプを用いて、コンベヤーの表面における光量が1.7mW/cm2となる強度で粘稠液Bに対して均一に4分間の光照射となるようにコンベヤー速度を調整し、アクリル酸の光重合反応を完結させた。このようにして、上記粘稠液B中のアクリル酸の重合反応を完結させて得られた筋状の重合体を、スクラバーでかきとり、次の工程として、予め105℃に調整された熱風循環式乾燥機で90分間乾燥させた。乾燥後の重合体の形状は、筋状、すなわち紐状であった。また、乾燥後の重合体は、その水分量が1.5%であり、卓上粉砕機を用いて容易に粉砕することができるものであった。
【0088】
【発明の効果】
本発明の重合装置は、以上のように、粘稠液供給部が、10mPa・s以上20,000,000mPa・s以下の範囲内の粘度の粘稠液を供給するものであるとともに、当該粘稠液供給部が、粘稠液により、粘稠液を展開することができる基材部上の領域の少なくとも一部に粘稠液が存在しない領域が存在する展開形状を基材部上に形成するものである。
【0089】
それゆえ、重合体が形成されている基材部表面の重合体と接触している面積を小さくすることができる。このため、基材部の表面に大きな力を加えることなく基材部上の重合体を剥離し、基材部上に残留物が残ることを防止または抑制することができる。これにより、重合体の製造効率が良く、かつメンテナンスの容易な重合装置を提供できるという効果を奏する。
【0090】
また、上記粘稠液供給部が、10mPa・s以上20,000,000mPa・s以下の範囲内の粘度の粘稠液を供給するものであることにより、基材部上において、単量体成分を含む粘稠液に保形性を与えて、所望の形状をより確実に形成することができるという効果を奏する。
【0091】
上記重合体粘稠液供給部は、粘稠液により水玉状の展開形状を形成するものであって、
当該水玉状の形状を構成する単位となる各形状は、円形状、楕円形状、又は、円形状と楕円形状とが混在してなるものであってもよい。また、上記円形状の直径は1mm以上70mm以下であり、楕円形状の長軸の長さは3mmよりも大きく70mm以下であり、かつ、短軸の長さは3mm以上70mm未満であり、隣接する形状の最近接部の距離は1mm以上であることが好ましい。また、上記重合体粘稠液供給部は、粘稠液により、複数の独立した細長く一続きになっている筋状の展開形状を形成するものであって、当該筋状の展開形状は、直線状または曲線状であってもよい。また、上記筋状の展開形状の幅は1mm以上70mm以下であり、隣接する形状の最近接部の距離は1mm以上であることが好ましい。
【0092】
これにより、重合体を効率よく製造することができ、かつメンテナンスの容易な重合装置を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態である重合装置の概略の構成を説明する正面図である。
【図2】本発明の重合装置の可動式ベルト上における粘稠液の形状を説明する平面図である。
【図3】本発明の重合装置の可動式ベルト上における粘稠液の形状を説明する断面図である。
【図4】本発明の他の実施の一形態である重合装置の概略の構成を説明する正面図である。
【図5】本発明のさらに他の実施の一形態である重合装置の概略の構成を説明する正面図である。
【図6】本発明のさらに他の実施の一形態である重合装置の概略の構成を説明する正面図である。
【符号の説明】
1 単量体貯槽
2 増粘剤貯槽
3 重合開始剤貯槽
4 粘稠液作製槽(粘稠液槽)
5 滴下装置
6a,6b 光ランプ
7 可動式ベルト(基材部、コンベヤー)
9 粘稠液
10 スクラバー
11 ベルト車(基材部、コンベヤー)
16a,16b 加熱部
Claims (5)
- 単量体成分を含む粘稠液を供給する粘稠液供給部と、粘稠液が浸透しない基材部と、基材部上に供給された粘稠液中の単量体成分の重合反応を促進させる重合反応促進部とを有する重合装置であって、
当該粘稠液供給部が、10mPa・s以上20,000,000mPa・s以下の範囲内の粘度の粘稠液を供給するものであるとともに、
当該粘稠液供給部が、粘稠液により、粘稠液を展開することができる基材部上の領域の少なくとも一部に粘稠液が存在しない領域が存在する展開形状を基材部上に形成するものであり、
基材部がコンベヤーであることを特徴とする重合装置。 - 上記粘稠液供給部が、粘稠液により水玉状の展開形状を形成するものであって、
当該水玉状の形状を構成する単位となる各形状は、円形状、楕円形状、又は、円形状と楕円形状とが混在してなるものであることを特徴とする請求項1に記載の重合装置。 - 上記円形状の直径は1mm以上70mm以下であり、
楕円形状の長軸の長さは3mmよりも大きく70mm以下であり、かつ、短軸の長さは3mm以上70mm未満であり、
隣接する形状の最近接部の距離は1mm以上であることを特徴とする請求項2に記載の重合装置。 - 上記粘稠液供給部が、粘稠液により、複数の独立した細長く一続きになっている筋状の展開形状を形成するものであって、
当該筋状の展開形状は、直線状または曲線状であることを特徴とする請求項1に記載の重合装置。 - 上記筋状の展開形状の幅は1mm以上70mm以下であり、
隣接する形状の最近接部の距離は1mm以上であることを特徴とする請求項4に記載の重合装置。
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