JP2004352849A - 吸水性樹脂の製造装置および製造方法 - Google Patents

吸水性樹脂の製造装置および製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】吸水倍率が大きく、かつ可溶分の少ない吸水性樹脂を高い生産性および良好な作業性で連続的に製造する装置と製造方法を提供すること。
【解決手段】単量体混合物供給装置を有するバケットコンベア−方式の吸水性樹脂連続製造装置において、バケット13内を一つ以上の仕切り1によって複数の処理室6に区画形成したバケットを用い、このバケット中で重合およびまたは重合体ゲルの乾燥を行って吸水性樹脂を連続的に製造する。仕切りによって区画形成される処理室の開口部面積は500cm以下で、高さが500mm以下であることが好ましく、バケット表面はフッ素樹脂でコーティングされていることが好ましい。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸水性樹脂の連続製造装置に関するものである。より詳細には、吸水倍率が大きく、かつ可溶分の少ない吸水性樹脂を製造することが可能な、一つのバケット内に複数の仕切を持つ高生産性を有するバケットコンベアー方式の吸水性樹脂連続製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自重の数十倍から数百倍の水を吸収する吸水性樹脂が開発され、生理用品や紙おむつ等の衛生材料分野をはじめとして農園芸用分野、鮮度保持などの食品分野、結露防止や保冷材等の産業分野等、吸収や保水を必要とする用途に種々の吸水性樹脂が使用されている。
【0003】
このような吸水性樹脂としては、例えば、デンプン−アクリルニトリルグラフト重合体の加水分解物(特許文献1)、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物(特許文献2)、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物(特許文献3)、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物 (特許文献4)、またはこれらの架橋体、逆相懸濁重合によって得られた自己架橋型ポリアクリル酸ナトリウム(特許文献5)、ポリアクリル酸部分中和物架橋体(特許文献6)等が知られている。
【0004】
従来、吸水性樹脂を製造する方法としては、水溶液重合法などの技術が知られており、この例としては、特定容器内で親水性ビニル系単量体水溶液を断熱重合する方法(例えば、特許文献7等)、双腕ニーダー内で、攪拌により重合ゲルを砕断しながら重合する方法(例えば、特許文献8等)、ベルト上で静置重合するベルト式連続製造装置(例えば、特許文献9等)等を挙げることができる。
【0005】
また、液状反応成分を厚さ少なくとも10mmの層として可動性無端回転支持ベルト上に適用して重合させるものにおいて、該液状反応成分を該支持ベルトから連続的に形成される凹部に収容するとともに、該反応成分が重合中に該支持ベルトの凹部形状を延ばされた平坦なベルト形状に連続的に転化し、および生成したポリマーリボンゲルが該支持ベルトの曲げられた凹部形状を該延ばされた平坦なベルト形状に転化する際側端部から該支持ベルトから形成された凹部の中心に向かって連続的に分離されることを特徴とする水溶性モノマーから重合体および共重合体を連続的に製造する方法および装置が提案されている(特許文献10)。
【0006】
しかしながら、このような装置を用いる場合には、凹部横断面が椀状形状となるために、供給される液状原料および生成する吸水性樹脂の断面形状も椀状形状となりその中央部と両端部とでは厚みが異なる。このため、例えば下面よりの冷却速度が異なり均一な品質の吸水性樹脂は得られ難いという欠点があった。ベルト式連続重合器においては、ベルト上の堰が設置された範囲内で重合を開始し重合ゲルが確実に出来る様に反応速度を常にコントロールする必要がある。万一、堰の設置された範囲内で重合ゲルが出来ないときはベルト上から液状原料の水溶性単量体が漏れ出す欠点があった。
【0007】
ベルトに支持されいる吸水性樹脂の連続製造装置(特許文献9等)は除熱面が主として重合体ゲルのベルト接触面のみであり重合体ゲルの高さ(厚み)に制約がある。さらに、これらの装置を用いて得られる重合ゲルは大きな固まりとなりそのままでは乾燥しにくい。そのため乾燥前に重合ゲルを解砕する解砕工程が必要であった。
【0008】
【特許文献1】
特公昭49−43395号公報
【特許文献2】
特開昭51−125468号公報
【特許文献3】
特開昭52−14689号公報
【特許文献4】
特公昭53−15959号公報
【特許文献5】
特開昭53−46389号公報
【特許文献6】
特開昭55−84304号公報
【特許文献7】
特開昭55−108407号公報
【特許文献8】
特開昭57−34101号公報
【特許文献9】
特開2000−17004公報
【特許文献10】
特開昭62−156102号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、重合ゲル化反応速度のコントロールが可能で離型し易い重合体ゲルが解砕することなく粉砕し易い重合体として得られる吸水性樹脂連続製造装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高い生産性を有し吸水倍率が大きく、かつ可溶分の少ない吸水性樹脂の連続製造装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記諸目的は、下記(1)〜(7)の本発明により達成される。
(1)単量体混合物供給装置を有するバケットコンベア−方式の吸水性樹脂連続製造装置であって、一つのバケット内に一つ以上の仕切りを持つバケット中で重合およびまたは重合体ゲルの乾燥を行うことを特徴とする吸水性樹脂連続製造装置。
(2)仕切りによって区画形成される処理室の開口部と底部との面積比(開口部面積/底部面積)が1以上であるバケットを使用する上記(1)記載の吸水性樹脂連続製造装置。
(3)仕切りによって区画形成される処理室の開口部面積が、500cm以下で、高さが500mm以下であるバケットを使用することを特徴とする上記(1)または(2)記載の吸水性樹脂連続製造装置。
(4)バケットがフッ素樹脂コーテイングされていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の吸水性樹脂の連続製造装置。
(5)バケットの開口部の周縁に液受け板を設けたことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の吸水性樹脂の連続製造装置。
(6)バケット内の重合体ゲル表面温度または前記液受け板から垂直方向に0.5cm〜3m離れた位置の気相部ガス温度が、一定になるようにバケットの移動速度と単量体供給速度を自動調整することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の吸水性樹脂の連続製造装置。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の吸水性樹脂の連続製造装置を用いて吸水性樹脂を製造することを特徴とする吸水性樹脂の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1、図2は、本発明の吸水性樹脂連続製造装置の概略図であり、また図3は、本発明の吸水性樹脂連続製造装置において使用するバケットの一例を示す図である。
【0012】
図1に示した本発明の吸水性樹脂連続製造装置は、VVVF(インバーター)モーター等の動力源に、必要により変速機等(いずれも図示せず)を介して連結されたその一端に設けられた回転体5と他端に設けられた他の回転体6と該回転体5と6の間に張設されたバケット付きチェーンまたはバケット付きベルト20から構成されている。
【0013】
図2に示したものは、走行方向に水平方向および垂直方向さらに水平方向へとバケット13が移動する機能を備えた連続製造装置であり、該回転体5と6の間に張設された回転支持バケット付きチェーンおよびまたはバケット付きベルト20の間に複数個の張調整用のギヤまたは軸受け30,31,32,33が設けられている。
【0014】
該バケット付きチェーンまたはバケット付きベルト20の上面の一端には単量体混合物供給装置1が、また、他端にはバケット13から重合体ゲルを排出するための重合体排出口16がそれぞれ設けられている。バケット付きチェーンまたはバケット付きベルト20の外側に設けられた連続重合装置外部カバー4には、重合体ゲルの表面温度を測定するための複数個の放射温度計21,26,39、41と、バケット13の開口部の液受け板(図3の3,4参照)から0.5mm〜3m離れた位置の気相部ガス温度が測定出来る様に温度計22,23,24,37,38,44と、内部を監視できる監視窓19,25,35と照明27,28,29,30,34,40,42,46が必要により設けられている。
また、17,18は非定常ゲル排出口である。
【0015】
装置の内部には、回転するバケット13の底部からバケット13を冷却または加熱するための加熱冷却設備(7,8,9),(10,11,12)が必要により複数設けられている。均一な品質の吸水性樹脂を得るために単量体混合物は、供給装置により、バケット13の底から5mm〜500mmの高さまで間欠的または連続的に供給される。
【0016】
図3に示すように、バケット13は固定軸2、5によってチェーンまたはベルト20に取付けられる。バケット13の開口部の周縁には液受け板4が設けられている。3は幅方向の液受け板を示している。バケット内部は一つ以上の仕切り1によって複数の処理室6が区画形成されている。この仕切り板1はバケット内の単量体混合物の加熱または冷却を促進して重合反応の反応速度の制御を容易にする機能を有する。
【0017】
単量体混合物の重合ゲル化反応の開始は、単量体混合物供給装置1から0.25m〜20m以内に設置された放射温度計21または気相部温度を測定するための温度計22の温度上昇によって検知する。放射温度計21は、重合体ゲルの表面温度を測定するために、また、気相部ガス温度測定用温度計22は気相部温度を測定するために、それぞれバケット開口部液受け板から0.5mm〜3m離れた位置に設けられている。
【0018】
放射温度計21または気相部ガス温度測定用温度計22の測定温度が一定になるように、単量体混合物供給量およびバケット13の走行速度を変速機モーター付きまたは、変速機の付いたVVVFモーターまたは、VVVFモーターの回転数を自動調整する。
【0019】
放射温度計21または気相部ガス温度測定用温度計22から0.5m〜20m離れた位置に重合体ゲルの表面温度を測定するための放射温度計26または気相部温度を測定するための気相部ガス温度測定用温度計23が設けられている。
放射温度計26または気相部ガス温度測定用温度計23の測定温度が一定になるように温水または冷却水量が自動調整され、重合体ゲル表面温度またはバケット開口部液受け板から0.5mm〜3m離れた位置の気相部ガス温度は一定となる。
【0020】
さらに、気相部ガス温度測定用温度計23または放射温度計26から0.5m〜20m離れた位置から重合体排出口までに設けられた不活性ガス入り口14,47から不活性ガス入り口毎に温度の異なる加熱した不活性ガスが供給され、重合から熟成、粗乾燥までを同一装置内で行い粗乾燥し粉砕し易い重合体ゲルが得られる。
【0021】
すなわち、重合ゲル化反応速度を常にコントロールし重合体ゲルの温度を一定にし、さらに、バケット13内部に設けられた一つの仕切りの開口部面積を小さくして、バケット13から離型しにくくなる重合体ゲルの重合、熟成、粗乾燥の工程を一つの装置で行うことによって離型し易い重合体にすると共に、重合体ゲルを解砕することなく粉砕し易い重合体に出来るという特徴を本発明のバケットコンベアー方式の吸水性樹脂連続製造装置は有する。
【0022】
本発明のバケットコンベアー方式の吸水性樹脂連続製造装置のバケットは、重合体ゲルとの接触面を5面有し、また、重合体ゲルのバケットとの非接触部分の面積を放熱部分として使用出来るので除熱面積を多く取ることが出来るという特徴を有する。
また、本発明のバケットコンベアー方式の吸水性樹脂連続製造装置はバケットの中で重合反応を行うため、液状原料の単量体混合物のゲル化を開始する位置がずれてもバケットから漏れないという特徴を有する。
【0023】
バケットの進行方向は、水平方向、垂直方向、下り傾斜、上り傾斜を複数組み合わせてよい。本発明の吸水性樹脂連続製造装置の最大の特徴を出すための好ましい形態は、水平方向、垂直方向、水平方向へバケットが進行する図2のような組み合わせを取ったときである。これによって、敷地面積は小さくても、垂直方向の空間を利用出来、且つ、重合体排出口が高い位置に設置出来る特徴を有する。例えば、ほぼ直下に粉砕機を設置することで粉砕機へ重力落下で重合体ゲルを移送出来、空送ニューマなどの移送装置は不要となる。
【0024】
仕切りによってバケット内に区画形成される処理室の開口部面積は、500cm以下が好ましく、400cm以下、さらには300cm以下がより好ましく、最も好ましいのは、200cm以下である。開口部面積が500cm超えると重合体ゲルの乾燥の際、解砕を必要とする。
【0025】
重合を安定に行うには内部を不活性ガスで置換することが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等を用いることが出来る。使用するガスは重合体ゲルの冷却または加熱にも利用出来る。ガスは水蒸気を含んでいてもかまわないが好ましくは水分を含まない乾燥状態のガスである。乾燥ガスが好ましいのは、重合ゲル中の水の蒸発除去が100℃以下の重合中の温度でも出来ると同時に、水の蒸発潜熱によって、重合体ゲルの温度上昇を抑えることが出来るからである。
【0026】
本発明のバケットコンベアー方式吸水性樹脂連続製造装置の重合体排出口の後には、粉砕機を設けて、粒径を100〜850ミクロンに粉砕することが可能である。或いは、該バケットコンベアー方式の連続製造装置内で重合体ゲルを製造しベルト式乾燥機や竪型乾燥機等と組み合わせ乾燥機出口または内部に粉砕器を取り付け、ポリマーの粒径を100〜850ミクロンに粉砕することも出来る。
【0027】
本発明のバケットコンベアー方式の吸水性樹脂連続製造装置を構成する材料としては、耐食性ならびに耐久性のある材料が使用できる。一例を挙げると、例えば、カーボンスチール製、ステンレス鋼製、合成樹脂製等が挙げられる。
【0028】
酸性の単量体混合物に好適な合成樹脂材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアセタール、ナイロン、セルロース、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレートのような合成樹脂あるいは、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、クロロプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム、ニトリル・イソプレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのようなゴム材料、あるいは、ガラス、グラファイト、ブロンズおよびモリブデンジサルファイドのような無機充填剤あるいは、ポリイミドのような有機充填剤で複合体を作り補強した前記合成樹脂が挙げられる。
【0029】
前記物質の中でも、ニトリルゴム、シリコーンゴム、クロロプロピレンゴムのようなゴムやポリエチレンテトラフルオライド、ポリエチレントリフルオライド、ポリエチレントリフルオロクロライド、エチレンテトラフルオライド−エチレンコポリマー、プロピレンペンタフルオライド−エチレンテトラフルオライドコポリマー、パーフルオロアルキルビニルエーテル−エチレンテトラフルオライドコポリマーおよびポリフッ化ビニルのようなフッ素樹脂が挙げられる。
【0030】
バケットの材質としては耐食性ならびに耐久性のある材料で作られたものが使用できる。一例を挙げると、例えば、カーボンスチール製、ステンレス鋼製、合成樹脂製等が挙げられる。
【0031】
重合ゲルと接触するバケットの表面に小さな凹凸を付けたり、表面を合成樹脂でコーティングすることは、バケットからの重合ゲルの離型性を高める上で好ましい。そのような例としては、バケットにフッ素樹脂コーティングを施すことが挙げられる。
【0032】
本発明の吸水性樹脂連続製造装置において、前記バケットの走行方向上流端部付近には、単量体混合物供給装置1が設けられており、該単量体混合物供給装置1より液状の単量体混合物がバケット13内に供給される。
【0033】
移動するバケット13の下部には温水およびまたは冷却水を流すことができる装置(7,8,9)および、または、温水および/または加熱ガスを流すことができる加熱装置(10,11,12)が設けられている。
ここで、7,11は温水または冷却水排出溝であり、8,10は温水または冷却水受けであり、9は流量調整バルブ付き温水または冷却水ノズルであり、12は流量調整バルブ付き温水またはガスノズルである。加熱装置(10,11,12)においては、温水または、加熱ガスが供給されるかあるいは、供給される水またはガスを伝熱、遠赤外線等により直接加熱するように構成されている。
【0034】
また、温水または冷却水を流すことができる装置(7,8,9)においては、水、温水、その他の冷却媒体がバケット13の下部に向けてノズル9より噴出するように構成されている。
【0035】
バケット13の開口部には、バケット下部のノズルから噴出される温水または冷却水がバケット内に入るのを防止するために、液受け板を取り付ける。図3に示したバケットの幅方向の液受け板3は、温水又は冷却水の噴出角度を調整して温水または冷却水がバケット内に入ることがないようにすれば設ける必要はない。
【0036】
バケットコンベーア方式の吸水性樹脂連続製造装置は、装置全体またはバケットの進行方向である回転体5から6方向のみ外部カバーで覆い反応域全体を不活性ガスでシールするように構成することもできる(図示略)。
重合反応終了後の重合体ゲル、すなわち吸水性樹脂は、重合体ゲル排出口からバケットが反転することによって排出される。
【0037】
本発明の装置により重合出来る液状原料の単量体混合物としては、吸水性樹脂を生成するものであればいずれも使用できる。一例を挙げると、例えば、アクリロニトリルを微生物で加水分解して合成したアクリル酸アンモニウムおよびまたは、アクリル酸とアクリル酸ナトリウムのようなアクリル酸塩類との混合物に少量の架橋剤および重合開始剤を配合したもの等がある。
【0038】
次に、本発明の連続製造装置により吸水性樹脂を製造する方法の例を説明する。
単量体混合物供給装置1より液状原料の単量体混合物はバケット13の底から5mm〜500mmの高さまで、間欠または、連続的にバケット中へ供給される。液状原料の単量体混合物をバケット内に供給すると同時に、開始剤を供給し混合することにより反応が開始する。また、液状原料の単量体混合物は、バケットの容量とバケットの走行速度に合わせて供給する。
【0039】
単量体混合物の重合ゲル化反応の開始は、単量体混合物供給装置から0.25m〜20m以内に設置された放射温度計21または気相部温度を測定するための温度計22の温度上昇で検知する。放射温度計21は、重合体ゲルの表面温度を測定するために、また、気相部ガス温度測定用温度計22は気相部温度を測定するためにバケット開口部液受け板から0.5mm〜3m離れた位置に設けられている。
【0040】
放射温度計21または気相部ガス温度測定用温度計22の測定温度が一定になるように、単量体混合物供給量およびバケットの走行速度を変速機モーター付きまたは、変速機の付いたVVVFモーターまたは、VVVFモーターの回転数を自動調整する。
【0041】
放射温度計21または気相部ガス温度測定用温度計22から0.5m〜20m離れた位置に重合体ゲルの表面温度を測定するための放射温度計26または気相部温度を測定するための気相部ガス温度測定用温度計23が設けられている。放射温度計26または気相部ガス温度測定用温度計23の測定温度が一定になるように、温水または冷却水量が自動調整され重合体ゲル表面温度またはバケット開口部液受け板から0.5mm〜3m離れた位置の気相部ガス温度は一定にされる。
【0042】
さらに、気相部ガス温度測定用温度計23または放射温度計26から0.5m〜20m離れた位置から重合体排出口までに設けられた不活性ガス入り口14,47からは、不活性ガス入り口毎に温度の異なる加熱した不活性ガスが供給され重合から熟成、粗乾燥までを同一装置内で行うことにより、そのままでは水分含量が多く粉砕しにくい重合体ゲルを解砕することなく、粗乾燥し粉砕し易い重合体ゲルが得られる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例によりさらに詳細に本発明を説明するが、本発明の範囲がこれら実施例のみ限定されるものではない。
実施例中で「部」とは特にことわりがない限り「重量部」を表すものとする。
また、実施例において得られた吸水性樹脂の吸水倍率、可溶分および残存単量体はそれぞれ次のようにして算出した。
【0044】
[吸水倍率]
吸水性樹脂(A)0.2gを不織布製のテイーバック式袋(50*70mm)に均一に入れ0.9重量%塩化ナトリウム水溶液中に浸積した。60分後にテイーバック式袋を引き上げ、一定時間水切りを行った後、ティーバック式袋の重量(WW)を測定した。同様の操作を吸水性樹脂を用いずに行ない、そのときの袋の重量B(g)を測定した。そして、得られた重量から次式にしたがって、吸水性樹脂の吸収倍率を算出した。
吸水倍率[g/g]=(WW[g]−B[g]−A[g])/A[g]
【0045】
[可溶分]
吸水性樹脂C(g)(約0.5g)を1000gの脱イオン水中に分散し、20時間攪拌した後、濾紙で濾過した。次に、得られた濾液50gを100mlビーカーにとり、該濾液に0.05N−水酸化ナトリウム水溶液2ml、N/100−メチルグリコールキトサン水溶液5ml、および0.2%トルイジンブルー水溶液3滴を加えた。次いで、上記ビーカーの溶液を、N/400ポリビニル硫酸カリウム水溶液を用いてコロイド滴定し、溶液の色が青色から赤紫色に変化した時点を滴定の終点として滴定量D(ml)を求めた。また、濾液50gに代えて脱イオン水50gを用いて同様の操作を行ない、ブランクとして滴定量E(ml)を求めた。そして、これら滴定量と吸水性樹脂を構成する単量体の平均分子量Fとから、次式にしたがって可溶分(重量%)量を算出した。
可溶分(重量%)=(E[ml]−D[ml])*0.005/C[g]*F
【0046】
[残存単量体]
脱イオン水1000gに吸水性樹脂0.5gを加え、攪拌下で2時間抽出した後、膨潤ゲル化した吸水性樹脂を濾紙を用いて濾別し、濾液中の残存単量体を液体クロマトグラフィーで分析した。一方、既知濃度の単量体標準溶液を同様に分析して得た検量線を外部標準とし、濾液の希釈倍率を考慮して、吸水性樹脂中の残存単量体量を求めた。
【0047】
【実施例1】
アクリル酸10.70部、37%アクリル酸ナトリウム水溶液70.07部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量478)8部、および脱イオン水19.15部からなる水溶液を調製し、窒素ガスを導入し脱気した。上記水溶液2895g/分と窒素ガスを導入し脱気し、脱気した0.982%V−50(和光純薬工業製アゾ系重合開始剤)水溶液27g/分、0.982%過硫酸ナトリウム水溶液27g/分、および0.088%L−アスコルビン酸水溶液27g/分をラインミキシングした後、さらに窒素ガスを導入し脱気した0.0707%過酸化水素水を27g/分でラインミキシングした。
【0048】
バケットには、図3に示した形状・構造を有する容量10000ml、深さ約10cmのもので、区画形成される一つの処理室の開口部が100cmであり、バケットの材質はSUS316とし、表面に凹凸を設け、更にフッ素樹脂コーティングしたものを用いた。バケットには、約30mmの高さまでラインミキシングされた原料が供給されるように、バケットを約100mm/分で駆動させた。1分後に重合が開始し、反応系温度は30℃であった。重合系は攪拌されることなく、バケット壁面の温度を20℃に冷却して7分後に重合系は最高到達温度の80℃を示した。この後、バケットの壁面温度が70℃になるようにバケット下部の温水温度を調整し含水ゲル状重合体を得た。
【0049】
単量体濃度は35重量%、水溶液の厚みは30mmであった。この含水ゲル状重合体を140℃、120分間熱風乾燥機で乾燥後、粉砕器で粉砕し、粉状の吸水性樹脂(1)を得た。
吸水性樹脂(1)は、吸収倍率65倍、可溶分12%および残存単量体470ppmであった。
【0050】
【実施例2】
[原料1の調製]
98%アクリル酸36.28部、25%アンモニア水20.14部を30℃以上にならないよう冷却しながら反応させアクリル酸アンモニウム水溶液を調合した。この溶液に、脱イオン水を使用して調合した18.9%カセイソーダ水溶液43.55部を30℃以上にならないように冷却しながら加えた。次に、30℃、10torrの条件で液中のアンモニアを除去した。液中のアンモニアを除去後、窒素ガスを導入した。さらに、上記水溶液に窒素ガスを導入しながらN,N’−ビスメチレンアクリルアミド0.0228部、アスコルビン酸0.00041部を加えた。
【0051】
[原料2の調製]
過硫酸ナトリウム0.6157部を脱イオン水約99.38部で溶解して水溶液を調製し、窒素ガスを導入し脱気した。
【0052】
[重合、乾燥、粉砕]
窒素置換を十分に行ったチェーン方式のバケットコンベーア式連続重合装置に、原料1を68600g/Hrで、原料2を8460g/Hrでラインミキシングしてバケットコンベアー式連続重合器に供給した。バケットには、図3に示した形状・構造を有する容量11000ml、深さ約10cmのもので、区画形成される一つの処理室の開口部が90cmであり、バケットの材質はSUS316とし、表面に凹凸を設け、更にフッ素樹脂コーティングしたものを用いた。バケットには、約30mmの高さまでラインミキシングされた原料(1と2の混合物)が供給されるように、バケットを約45mm/分で駆動させた。
【0053】
単量体濃度は40重量%、水溶液の厚みは約25mmであった。2分後に重合が開始し、反応系温度は30℃であった。重合系は攪拌されることなく、バケット壁面の温度を10℃に冷却して6分後に重合系は最高到達温度の78℃を示した。この後、バットの壁面温度が70℃になるようにバケット下部の温水温度を調整し含水ゲル状重合体を得た。この含水ゲル状重合体の厚さは約25mmであった。この含水ゲル状重合体を140℃、80分間熱風乾燥機で乾燥後、得られた乾燥物は適度な発泡体で容易に粉砕器で粉砕することができ、粉状の吸水性樹脂(2)を得た。
吸水性樹脂(2)は、吸収倍率66倍、可溶分11%および残存単量体470ppmであった。
【0054】
【比較例1】
原料組成と供給量は実施例2と同様にし、大きさ、10cm×120cm、深さ10cm、開口部面積1200cm、容量10000mlのSUS316製のバケットを用いた。
バケットには、約25mmの高さまでラインミキシングされた原料が供給されるように、バケットを50mm/分で駆動させた。3分後に反応が開始し、反応系温度は30℃であった。重合系は攪拌されることなく、バケット表面の温度が10℃になるように冷却したが、冷却効率が悪いため6分後に重合系は最高到達温度の90℃を示した。この後、バケットの温度が70℃になるようにバケット下部の温水温度を調整し、含水ゲル状重合体としたが、バケットから含水ゲル状重合体が剥離しないため、装置は運転を継続できなかった。そのため、装置の運転を停止して含水ゲル状重合体を回収した。
【0055】
単量体濃度は40重量%、水溶液の厚みは約30mmであった。この含水ゲル状重合体を140℃、120分間、熱風乾燥機で乾燥した後、粉砕器で粉砕しようとしたが、含水ゲル状重合体の内部が乾燥不足のため、実施例2で使用した粉砕器では粉砕できなかった。そのため、含水ゲルの一部をとり、ハサミで解砕して再度140℃、120分間、熱風乾燥機で乾燥した後に粉砕し、吸水性樹脂(3)を得た。
吸水性樹脂(3)は、吸水倍率55倍、可溶分13%及び残存単量体500ppmであった。
【0056】
【発明の効果】
従来ベルト上で単量体混合物を重合し重合物を得る方法は知られていたが、低粘度の単量体混合物を、効率よく、ゲル状重合物にし解砕することなく、しかも安定して優れた性能を有する重合物とする方法は、本願によって初めて達成された。しかも、吸収倍率が大きく、可溶分と残存単量体の少ない吸水性樹脂を製造する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の吸水性樹脂連続製造装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の吸水性樹脂連続製造装置の他の例を示す概略図である。
【図3】本発明の吸水性樹脂連続製造装置において使用するバケットの一例を示す図である。
【符号の説明】
(図1,2について)
1 単量体混合物供給装置
2 温水または冷却水供給配管(1以上)
3 温水または加熱ガス供給配管(1以上)
4 連続重合装置外部カバー
5,6、31,32,33 回転体(モーター部またはギヤ、軸受け部)
7,11 温水または冷却水排出溝(1以上)
8,10 温水または冷却水受け(1以上)
9 流量調整バルブ付き温水または冷却水ノズル(1以上)
12 流量調整バルブ付き、温水またはガスノズル(1以上)
13 バケット
14、47 ガス入り口(1以上)
15,36 ガス出口(1以上)
16 重合体排出口
17,18 非定常ゲル排出口
19,25,35 覗き窓(監視窓)
20 チェーンまたはベルト
21,26,39,41 放射温度計
22,23,24,37,38,44 温度計
27,28,29,34,40,42,46 照明
45 10,11,12の装置を簡略化して表示したもの
(図3について)
1 仕切り
2,5 固定軸
3 幅方向の液受け板
4 液受け板
6 処理室

Claims (7)

  1. 単量体混合物供給装置を有するバケットコンベア−方式の吸水性樹脂連続製造装置であって、一つのバケット内に一つ以上の仕切りを持つバケット中で重合およびまたは重合体ゲルの乾燥を行うことを特徴とする吸水性樹脂連続製造装置。
  2. 仕切りによって区画形成される処理室の開口部と底部との面積比(開口部面積/底部面積)が1以上であるバケットを使用する請求項1に記載の吸水性樹脂連続製造装置。
  3. 仕切りによって区画形成される処理室の開口部面積が、500cm以下で、高さが500mm以下であるバケットを使用することを特徴とする請求項1または2記載の吸水性樹脂連続製造装置。
  4. バケットがフッ素樹脂コーテイングされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸水性樹脂の連続製造装置。
  5. バケットの開口部の周縁に液受け板を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吸水性樹脂の連続製造装置。
  6. バケット内の重合体ゲル表面温度または前記液受け板から垂直方向に0.5cm〜3m離れた位置の気相部ガス温度が、一定になるようにバケットの移動速度と単量体供給速度を自動調整することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸水性樹脂の連続製造装置。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の吸水性樹脂の連続製造装置を用いて吸水性樹脂を製造することを特徴とする吸水性樹脂の製造方法。
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