JP3832602B2 - 浄水器および浄水装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水道水を浄化処理する浄水器および浄水装置に関するものである。さらに詳細に述べれば、活性炭層とナノろ過膜を用いることにより、従来の精密ろ過膜や限外ろ過膜を用いた浄水器では十分除去できなかった溶解性物質の除去性能を向上させ、また、従来の逆浸透膜を用いた浄水器では取り除いてしまっていたミネラル等の除去性能を抑制することで、安全で快適な高品質の水を得ること、さらには、水中の残留塩素が活性炭層ですべて除去されることなく、一部の残留塩素がナノろ過膜モジュールに供給されることによりナノろ過膜モジュールが細菌、雑菌等に汚染されることがなく、かつ臭気物質を低減することを目的とする浄水器に関するものである。本発明における浄水器とは活性炭層及び分離膜を用いて水道水等を浄化、精製する器具を意味し、浄水装置は浄水器に加圧手段を設けてなる装置をいう。
【0002】
【従来の技術】
環境悪化に伴い水源が汚染され、一般家庭に配水される水道水の水質は悪化の一途をたどっており、臭気、トリハロメタンに代表される消毒副生成物などが問題となっている。一般家庭でも水道の蛇口に、浄水器を連結し、高品質の水を得ることが行われている。
【0003】
従来の浄水器としては活性炭でカルキ臭の原因である残留塩素などを除去し、活性炭後に増殖のおそれのある一般細菌を精密ろ過膜や限外ろ過膜で除去する構成が、例えば特開昭54−81663号公報、特開昭60−220107号公報などに提案されており、現在の浄水器の主流となっている。一方、精密ろ過膜や限外ろ過膜より分離対象が小さい逆浸透膜を用いた浄水器も例えば特開平8−318270号公報などに提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような、活性炭と精密ろ過膜または限外ろ過膜では、原水中に含まれる溶解性有機物、例えばその指標の一つである過マンガン酸カリウム消費量や色度を浄水器での処理により低減させることは困難である。また、逆浸透膜を用いた浄水器では、前述した過マンガン酸カリウム消費量や色度を除去できるものの、ミネラル成分、硬度成分をも除去してしまうため、国内など原水の硬度が適量である場合には、飲料用としては、まろやかさを損なうこととなり快適な水を得るという点では必ずしも好ましいとは言えない。
【0005】
また、従来のような活性炭と膜の組み合わせでは、活性炭で残留塩素が除去された原水が膜に供給されるため、膜が細菌、雑菌で汚染され、膜の寿命を短縮させる場合がある。一方、浄水器からの浄化水に残留塩素を供給する手段として、原水の一部を混入する流路を有する浄水器が特開昭49−17047号公報に提案されている。しかし、この浄水器は活性炭で処理するだけのものであり、活性炭で臭気物質などが除去された浄化水に、活性炭を介さない原水を混入させ、そのまま浄水器の浄化水として流出する方式であるため、残留塩素により殺菌作用は働くが、浄化水の臭気等が悪化し、浄水器そのものの特性を低下させることになり、好ましいとは言い難い。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記問題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、活性炭層とナノろ過膜を用い、活性炭層を通った原水と活性炭層を介さない一部の原水がナノろ過膜へ供給される構成の浄水器を見いだした。この浄水器によると、原水中の溶解性有機物の低減、除去が可能で、しかも、ミネラル、硬度成分を保持でき、さらに、残留塩素が膜に供給されるため膜が細菌、雑菌汚染されることなく、臭気物質の低減が可能となることを見いだし本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記のものである。
(1)水道栓やポンプの吐出口に接続可能な原水流入口部を有し、該原水流入口部は活性炭層に連通しており、該活性炭層からの流出口がナノろ過膜モジュールの供給水口に連通しており、該ナノろ過膜モジュールの透過水口、非透過水口にそれぞれ連通する透過水取り出し口部、非透過水排出口部を有し、非透過水口には回収率調整手段を設けている浄水器であって、該活性炭層を介さずに該原水流入口部とナノろ過膜モジュールの供給水口とを連通するバイパス流路を設け、活性炭層に流入する水量Q1と、活性炭層を介さずにナノろ過膜モジュールに供給される水量Q2の割合Q1/Q2が95/5〜70/30であり、かつ回収率が75%超85%以下であることを特徴とする浄水器。
(2)ナノろ過膜モジュールが中空糸膜から構成されている上記(1)に記載の浄水器。
(3)中空糸膜が複合中空糸膜である上記(2)に記載の浄水器。
(4)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の浄水器を有し、該浄水器の原水流入口部に加圧水が供給できる加圧手段を設けたことを特徴とする浄水装置。
【0008】
本発明において、ナノろ過膜とは、限外ろ過膜と逆浸透膜との間に位置づけられる分画特性を有する領域の膜を意味する。具体的には、水道水中に存在する臭気物質、例えば2−メチルイソボルネオールやジェオスミン、及び低分子量有機物を除去でき、ミネラル、硬度成分の除去性能は低い膜である。さらに、具体的に説明すると、以下の2つの要件を満たす膜を言う。第1として、その膜の分画分子量が100から500であり、好ましくは、100から300であり、より好ましくは100から200であること。第2として、その膜の塩化カルシウムの除去率が95%以下であり、好ましくは93%以下であり、より好ましくは90%以下であることである。分画分子量が1000より大きいと溶解性有機物の除去性能が十分ではなく、また、100より小さいと、ミネラル、硬度成分の除去率が高くなったり、膜の透水性能が低くなったりするため、好ましくない。また、塩化カルシウムの除去率が95%より大きいと、ミネラル、硬度成分を除去し過ぎることとなり好ましくない。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において、分画分子量とは、以下のように定義される。すなわち、供給水濃度1000mg/L、供給圧力3kg/cm2、温度25℃、回収率が5%以下の条件で測定した場合に、除去率が90%に相当する糖などの溶質の分子量で表される。除去率は下記(1)式で定義される。また、本発明において、塩化カルシウムの除去率とは、以下のように定義される。すなわち、供給水濃度500mg/L、供給圧力3kg/cm2、温度25℃、回収率が5%以下、pH6の条件で測定した場合の除去率である。除去率は下記(2)式で定義される。なお、本発明におけるナノろ過膜モジュールは、ナノろ過膜からなる膜モジュールである。本発明におけるナノろ過膜は水道用浄水処理、例えば、凝集沈澱・砂濾過で除去しきれずに、一般家庭などに供給される水道水中に存在する臭気物質、低分子量有機物を除去でき、ミネラル、硬度成分の除去性能は低いものが望ましい。また、本発明におけるナノろ過膜の膜素材は特に限定されないが、残留塩素に対するある程度の耐性を有していることが必要である。この耐塩素性は高ければ高いほど好ましいが、実使用に耐え得る残留塩素濃度が0.05mg/L以上、好ましくは0.1mg/L以上、より好ましくは0.2mg/L以上が好適である。
【0010】
【数1】
【0011】
【数2】
【0012】
本発明において、ナノろ過膜の形状は平膜、中空糸膜など特に限定されないが、膜モジュールにした場合のコンパクト性の面から中空糸膜が好ましい。また、ナノろ過膜の形態としては、いわゆる非対称膜、複合膜など特に限定されないが、性能の点から複合膜が好ましい。
【0013】
本発明において、原水流入口部とは水道水や、ポンプにより加圧された原水を流入する流入口部であり水道栓やポンプの吐出口に接続可能な形態を有する。接続可能な形態とは、ネジ構造、ソケット構造、フランジ構造、カップラー構造、ユニオン構造、ホースノズル構造などホース等を介しても接続可能であれば、特に限定されない。
【0014】
本発明において、ナノろ過膜モジュールの供給水口とはナノろ過膜モジュールで処理される原水が供給される流入口であり、透過水口とは、ナノろ過膜モジュールの透過水が流出する流出口である。非透過水口とは、ナノろ過膜モジュールで原水が処理される際、ナノろ過膜を透過せず排出される非透過水の流出口である。
【0015】
本発明において、透過水取り出し口部、非透過水排出口部とはそれぞれナノろ過膜モジュールの透過水、非透過水が取り出し、排出されるところである。
【0016】
本発明において、回収率調整手段とは、ナノろ過膜モジュールから排出される非透過水流量を調整し、回収率を調整できる手段であれば特に限定されない。一例としてバルブなどの流動抵抗部材があげられる。
【0017】
本発明において、活性炭層は、水中の残留塩素や、臭気物質、微量の有機物を除去する機能を有する活性炭からなる層であり、その形態、材質等は特に限定されない。また、活性炭のみがケースに装着された構成であったり、ナノろ過膜と同じ容器内に装着された構成であってもかまわない。使用にともないこの活性炭層が目詰まりしてくると、バイパス流路への流量が変化するため、目詰まり防止策としてプレフィルターを設けたり、逆流洗浄ができる構成としたり、さらには、活性炭層のみを簡易に交換できる構造にしておくことが好ましい。
【0018】
本発明において、活性炭層を介さないとは、残留塩素が除去されないように活性炭層と接触しないということである。残留塩素が除去されなければ、吸着剤、イオン交換剤、キレート剤、触媒、磁性体など他の機能材料との接触はかまわない。
【0019】
本発明において、流量の調整手段とは、活性炭層を介さずに原水流入口部とナノろ過膜モジュールの供給水口を連通するバイパス流路内の流量を制御する手段であれば特に限定されない。一例としてバルブなどの流動抵抗部材があげられる。流量の調整の設定値としては、原水流入量のうち、活性炭層に流入する水量Q1 と、活性炭層を介さずにナノろ過膜モジュールに供給される水量Q2 の割合Q1 /Q2 としては、95/5〜70/30、好ましくは90/10〜80/20である。Q2 の割合がこれより小さいとナノろ過膜モジュールに供給される残留塩素濃度が低くなり、細菌、雑菌の汚染の防止が困難となる。逆にこれより大きいと臭気物質等の除去率が低下し、透過水中の臭気物質等の水質が低下し、また、残留塩素が高くなるためカルキ臭も多くなり、好ましくない。
【0020】
本発明において、中空糸膜とは選択透過性を有する中空糸状の分離膜であり、外圧型、内圧型いずれでもかまわない。有効膜面積が大きくなる外圧型が好ましい。
【0021】
本発明において、複合中空糸膜とは、多孔質中空糸支持膜の外表面及び/または内表面に多孔質中空糸支持膜とは異なる素材からなる分離活性層を設けたものである。外表面、内表面いずれの表面に分離活性層を設けたものでもかまわないが、有効膜面積が大きくなる外表面に設けたものが好ましい。外表面に分離活性層を設けた複合中空糸膜の例として、特開平8−281085号公報で開示されている複合中空糸膜、及び特開平7−284639号公報、特開平8−66625号公報で開示されている製造方法で得られる複合中空糸膜などがあげられる。
【0022】
本発明における加圧手段とは、浄水器に供給する供給水を加圧する手段であり、ポンプが一例としてあげられる。本発明における浄水器は水道水圧で使用できることが望ましいが、必要に応じて上記加圧手段を設けて浄水装置として使用することが可能である。また、この場合に、ポンプの入り口側に必要に応じてタンク等を設けることもできる。
【0023】
本発明における浄水器は、付加機能として、殺菌手段、ミネラル添加、調整手段、アルカリイオン水生成手段等を別途設けることも可能である。また、抗菌部材を用いたり、透過水を一時的に溜めるタンクなどを設けてもよい。
【0024】
以下、図面を参照して本発明について詳細に説明する。図1は本発明の浄水器の一例の構成図である。図1において、1は原水流入口部、2は活性炭層、3はナノろ過膜モジュール、7は透過水取り出し口部、8は非透過水排出口である。水道水が原水流入口部1より流入し、一部はバイパス流路10を経由して、残りは活性炭層2を経由して、ナノろ過膜モジュール3の供給水口4に供給される。バイパス流路10内の流量はバイパス流路10の流量調整手段11であるバルブで調整されている。活性炭層2を経由した水道水は、残留塩素がほとんど除去されており、また、臭気物質や低分子量有機物も低減されている。バイパス流路10を経由した水道水には残留塩素も臭気物質や低分子量有機物も水道水中とほぼ同じ濃度で存在する。
【0025】
供給水口4への供給水には、水道水より低い濃度の残留塩素があり、臭気物質や低分子量有機物は活性炭層2で低減された濃度より、バイパス流路10から混合された分、高くなっている。ナノろ過膜モジュール3で処理されることにより、透過水口5からは、残留塩素は供給水口4とほぼ同じ濃度で、臭気物質や低分子量有機物は供給水口4より低減された濃度の透過水が流出し、透過水取り出し口部7から取り出される。非透過水口6からは、残留塩素は供給水口4とほぼ同じ濃度で、臭気物質や低分子量有機物は供給水口4より濃縮された非透過水が流出し、非透過水排出口8から排出される。非透過水の流量は回収率調整手段9であるバルブによって調整されている。
【0026】
ナノろ過膜モジュール3には低濃度の残留塩素が供給されるため、細菌、雑菌による汚染が防止される。透過水中の臭気物質や低分子量有機物は活性炭層2に加えナノろ過膜モジュール3でも除去されるため、水道水に比べ大きく低減される。但し、水道水中のミネラル、硬度はわずかの低下に抑えられ、透過水のまろやかさは水道水とほとんど変わらない。透過水中に残留塩素が含まれるため、バイパス流路10への流量が多い場合や、原水である水道水中の残留塩素濃度や臭気物質の濃度が高い場合にはカルキ臭、臭気が出る場合があるため、これらを考慮して、バイパス流路10の流量調整手段11で調整しておくことが好ましい。
【0027】
ナノろ過膜モジュール3の回収率は低い方が、一般には除去率は増加する。必要な透過水の水質や、原水の許容流量を考慮して、回収率調整手段9により回収率を設定しておくことが好ましい。実用的な回収率の値として、75%〜85%が一例としてあげられる。
【0028】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0029】
実施例1
ポリスルホン系の中空糸支持膜の外表面にピペラジンとトリメシン酸クロリドを界面重合させて得られた架橋ポリピペラジンアミドからなる分離活性層が形成されている複合中空糸膜をナノろ過膜として、特開平8−281085号公報に基づいて作製した。この複合中空糸膜の外径、内径はそれぞれ300μm、200μmであり、この複合中空糸膜の透水量、CaCl2 除去率はそれぞれ0.34m3 /(m2 ・日)、88.3%であった。また、分画分子量は227であった。なお、この複合中空糸膜の性能は次のようにして求めた。上記複合中空糸膜を用いた膜面積132cm2 のミニモジュ−ルを作製し、温度25℃、pH6にてCaCl2 の500g/m3 水溶液を複合中空糸膜の外側に操作圧力3kg/cm2で供給して脱塩を行い、60分後に測定を開始し透過水の単位膜面積あたりの透水量、塩濃度を測定した。この場合の回収率すなわち供給水流量に対する透過水流量の割合は5%以下と十分に小さいものであった。同様に、上記ミニモジュールに対し、温度25℃、pH6にてグルコース(分子量180)、N−アセチルグルコサミン(同221)、サッカロース(同342)を各々100gを100リットルの純水に溶解した水溶液を複合中空糸膜の外側に操作圧力3kg/cm2で供給して分画実験を行い、60分後に測定を開始し透過水の各溶質濃度を測定した。この場合の回収率すなわち供給水流量に対する透過水流量の割合は5%以下と十分に小さいものであった。除去率は前記、(1)式で定義され、分画分子量は除去率が90%に相当する溶質の分子量として求めた。
【0030】
これらの複合中空糸膜6900本をほぼ円筒状の束にして、内径28.4mm、長さ260mmの透明なポリカーボネート樹脂製のケースに挿入し、脱水、乾燥後、遠心接着して両端部を樹脂固定した。接着樹脂はウレタン系樹脂とエポキシ系樹脂を用い、切断部がウレタン系樹脂となるようにした。1晩室温で放置後、金型を離型し、接着樹脂部を50℃で1時間加熱し片端部のウレタン樹脂部を切断し、中空糸膜を開口させた。このナノろ過膜モジュールは外圧型中空糸膜モジュールであり、中空糸膜の開口部に透過水口を有し、中空糸膜の外側の空間に連通して供給水口、非透過水口が設けられている。供給水口は非透過水口より透過水口に近い位置にある。このナノろ過膜モジュールの有効膜面積は1.4m2 である。
【0031】
このナノろ過膜モジュールの供給水口に25℃の純水を5kg/cm2で加圧供給し、中空糸膜の開口端部からの水の流出状態から中空糸膜の損傷に由来する大きなリークの有無を調べ、リークが検出されなくなるまで、リークテスト、エポキシ系樹脂による補修を繰り返した。
【0032】
続いて、親水化処理として室温のエタノール50重量%水溶液をナノろ過膜モジュールの供給水口に155ml/分の流量で10分間循環した後排出し、さらに純水を同流量で30分間、流水洗浄を行った。
【0033】
このナノろ過膜モジュールに温度25℃、pH6にてCaCl2 の500g/m3 水溶液を供給水口に操作圧力3kg/cm2で供給して脱塩を行い、10分後の透過水の塩濃度を電気伝導度にて測定した。この場合の回収率、すなわちナノろ過膜モジュールへの供給水流量に対する透過水流量の割合は50%と80%であり、それぞれの塩除去率は、80.7%、66.4%であった。同様に、温度25℃、pH6にてグルコース、N−アセチルグルコサミン、サッカロースの各々1000g/m3水溶液をナノろ過膜モジュールの供給水口に操作圧力3kg/cm2で供給して分画実験を行い、10分後の各溶質濃度を測定した。この場合の回収率は50%と80%であり、それぞれの除去率を表1に示した。
【0034】
【表1】
【0035】
このナノろ過膜モジュールの供給水口に活性炭層およびポンプを連通させ、さらに、活性炭層を介さずに原水の一部が、ナノろ過膜モジュールの供給水口に流入させることができるバイパス流路およびその流量調整バルブを設けて大阪市内の水道水の浄水処理実験を行った。活性炭層はアドバンテック製の活性炭フィルターTCC-W1 SOCO(活性炭量約200g)を使用した。実験では、原水流量の90%を活性炭層に流して、残りの10%を活性炭層を介さずにバイパス流路を流して、ナノろ過膜モジュールの供給水口に供給した。実験でのナノろ過膜モジュール供給水の圧力は3kg/cm2、温度は約12℃、透過水量は0.21L/分であった。回収率を80%に設定し、1時間通水した後、透過水を採取し、原水とともに水質分析を実施した。また、ナノろ過膜モジュールの供給水口に流入される供給水を一部採取し、残留塩素濃度を測定した。結果を表2に示した。
【0036】
原水の水質も表2中に示した。水道の水質基準での快適水質項目の目標値では、有機物等すなわち過マンガン酸カリウム消費量は3mg/L以下、カルシウム、マグネシウム等すなわち硬度は10mg/L以上100mg/L以下であるので、有機物等はできるだけ除去し、硬度はなるべく除去しない浄水器が好ましい性能であると言える。本発明の浄水器では除去すべき有機物等は大きく除去され、除去しない方が好ましい硬度はあまり除去されていない。また、間欠的に3ケ月間運転した結果、ナノろ過膜モジュール内には、細菌、雑菌に汚染された形跡は認められなかった。
【0037】
実施例2
原水流量の内、活性炭層に流す割合が80%、活性炭層を介さずにバイパス流路を流す割合が20%であること以外は実施例1と同様の浄水実験を行った。結果を表2に示した。また、間欠的に3ケ月間運転した結果、ナノろ過膜モジュール内には、細菌、雑菌に汚染された形跡は認められなかった。
【0038】
比較例1
原水をバイパス流路に流さず、すべて活性炭層に流したこと以外は実施例1と同様の浄水実験を行った。結果を表2に示した。除去すべき有機物等は大きく除去され、除去しない方が好ましい硬度はあまり除去されていない。しかし、間欠的に3ケ月間運転した結果、ナノろ過膜モジュール内には、細菌、雑菌に汚染された形跡が認められた。
【0039】
比較例2
実施例1と同じ大阪市内の水道水を、活性炭と精密ろ過膜から構成されている浄水器として、三菱レイヨン製、クリンスイデミ CX751 に通水、処理した。2L/分の通水流量で1時間通水後、処理水を採取し、水質分析を実施した。回収率は100%であった。結果を表2に示した。硬度の除去はほとんどなされていないが、有機物等の除去率が低く、原水の有機物等が多い場合には、除去しきれずに、浄水器からの浄水処理水中に多く残存することが予想される。また、間欠的に3ケ月間運転した結果、精密ろ過膜には、細菌、雑菌に汚染された形跡が認められた。
【0040】
比較例3
ナノろ過膜モジュールの代わりに逆浸透膜モジュールを用い、回収率が20%、透過水流量が0.08L/分である以外は実施例1と同様の条件で大阪市内の水道水の浄水処理実験を実施した。結果を表2に示した。除去すべき有機物等は大きく除去されているものの、除去しない方が好ましい硬度もほとんど除去されてしまっている。また、間欠的に3ケ月間運転した結果、逆浸透膜モジュールには、細菌、雑菌に汚染された形跡は認められなかった。
【0041】
ここで用いた逆浸透膜モジュールは三酢酸セルロース中空糸型逆浸透膜からなる外圧型中空糸膜モジュールである。この逆浸透膜膜モジュールに温度25℃、pH6にてCaCl2 の500g/m3 水溶液を供給水口に操作圧力3kg/cm2で供給して脱塩を行い、10分後の透過水の塩濃度を電気伝導度にて測定した。この場合の回収率は20%、50%、80%であり、それぞれの塩除去率は、99.0%、98.4%、95.9%であった。同様に、温度25℃、pH6にてグルコース、N−アセチルグルコサミン、サッカロースの各々1000g/m3 水溶液を逆浸透膜モジュールの供給水口に操作圧力3kg/cm2で供給して分画実験を行い、10分後の各溶質濃度を測定した。この場合の回収率は20%、50%、80%であり、それぞれの除去率を表3に示した。この逆浸透膜モジュール膜に用いられている中空糸膜の分画分子量は100未満であると推察される。
【0042】
比較例4
原水をバイパス流路に流さず、すべて活性炭層に流したこと以外は比較例3と同様の浄水実験を行った。結果を表2に示した。また、間欠的に3ケ月間運転した結果、逆浸透膜モジュールには、細菌、雑菌に汚染された形跡が認められた。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【発明の効果】
本発明の浄水器及び浄水装置によれば、活性炭層及びナノろ過膜を設け、活性炭層を介しない原水の一部をナノろ過膜に供給できるバイパス流路を設けているため、水道水中のミネラル、硬度の低下をできるだけ低く抑え、かつ溶解性有機物、例えば、過マンガン酸カリウム消費量や色度、及び臭気物質を低減させることが可能となり、快適な飲料用水を得ることができることに加え、浄水器内の膜が細菌や雑菌に汚染されにくくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す浄水器の簡単な構成図を示す。
【図2】本発明の浄水装置の一例の簡単な構成図を示す。
【図3】本発明の浄水器で、活性炭層がナノろ過膜モジュールと同一容器内に収納されているものの一例の簡単な構成図を示す。
【図4】本発明の浄水装置で、活性炭層がナノろ過膜モジュールと同一容器内に収納されている浄水器を用いたものの一例の簡単な構成図を示す。
【符号の説明】
1 原水流入口部
2 活性炭層
3 ナノろ過膜モジュール
4 供給水口
5 透過水口
6 非透過水口
7 透過水取り出し口部
8 非透過水排出口部
9 回収率調整手段(バルブ)
10 バイパス流路
11 バイパス流路の流量調整手段(バルブ)
12 ポンプ(加圧手段)
13 浄水器の容器
Claims (4)
- 水道栓やポンプの吐出口に接続可能な原水流入口部を有し、該原水流入口部は活性炭層に連通しており、該活性炭層からの流出口がナノろ過膜モジュールの供給水口に連通しており、該ナノろ過膜モジュールの透過水口、非透過水口にそれぞれ連通する透過水取り出し口部、非透過水排出口部を有し、非透過水口には回収率調整手段を設けている浄水器であって、該活性炭層を介さずに該原水流入口部とナノろ過膜モジュールの供給水口とを連通するバイパス流路を設け、活性炭層に流入する水量Q1と、活性炭層を介さずにナノろ過膜モジュールに供給される水量Q2の割合Q1/Q2が95/5〜70/30であり、かつ回収率が75%超85%以下であることを特徴とする浄水器。
- ナノろ過膜モジュールが中空糸膜から構成されている請求項1に記載の浄水器。
- 中空糸膜が複合中空糸膜である請求項2に記載の浄水器。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の浄水器を有し、該浄水器の原水流入口部に加圧水が供給できる加圧手段を設けたことを特徴とする浄水装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP06300697A JP3832602B2 (ja) | 1997-03-17 | 1997-03-17 | 浄水器および浄水装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP06300697A JP3832602B2 (ja) | 1997-03-17 | 1997-03-17 | 浄水器および浄水装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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