JP3832600B2 - 走査回路および画像表示装置 - Google Patents

走査回路および画像表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マトリクス型表示装置の駆動回路等に用いて好適な走査回路並びにその走査回路を用いた画像表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マトリクス型画像表示装置は、図15に示すように、複数のデータ信号線51と、これらのデータ信号線51と直交するように配される複数の走査信号線52とを基板上に有している。また、各データ信号線51と各走査信号線52との交差部分には、画素が設けられ、これらの画素は表示面全体においてマトリクス状に設けられている。データ信号線51には、データ信号線駆動回路53より画素に印加するデータ信号(映像信号)が供給される。一方、走査信号線52には、データ信号線51に供給されているデータ信号を受け取る画素を選択するための走査信号が走査信号線駆動回路54により供給される。
【0003】
データ信号線駆動回路53の構成の概略を図16に示す。データ信号線駆動回路53は、一定の時間間隔でパルス信号を次々と出力する走査回路55と、走査回路55の信号を受け外部より入力されるデータ信号をサンプリングし出力するサンプル・ホールド回路56とを備えている。走査信号線駆動回路54の構成もほぼ同様で、通常、サンプル・ホールド回路56の代わりにバッファ回路が用いられる。
【0004】
上記両駆動回路53・54のいずれにおいても走査回路55が必要となるが、走査回路55を構成する手段として、(1) シフトレジスタを用いるものと、(2) 複数のアドレス信号線へ入力されるビット信号の単純な論理演算を行いパルス信号を出力するデコーダ回路またはデマルチプレクサ回路等を用いるものとがある。後者(2) の一例としてデコーダ回路を用いた場合の回路構成を図17に示す。この走査回路55は、アドレス信号線AL61〜AL63・IAL61〜IAL63とデコーダ回路DC61〜DC68とを有しており、非反転信号線であるアドレス信号線AL61〜AL63には、それぞれビット信号BS61〜BS63(図18参照)が外部から入力されている。ビット信号BS61〜BS63の周期は、それぞれT、2T、4Tとされている。一方、反転信号線であるアドレス信号線IAL61〜IAL63には、それぞれビット信号BS61〜BS63の反転信号であるビット信号IBS61〜IBS63(図18参照)が外部から入力されている。
【0005】
各デコーダ回路DC61〜DC68は、アドレス信号線AL61〜AL63・IAL61〜IAL63のうちから入力されるmビット(この例では、m=3)のビット信号を論理演算し出力する。そして、各デコーダ回路DC61〜DC68ごとに異なる演算を行わせることで、図18の信号波形例に示すように、全出力L本(この例では、L=8)の各出力線OL61〜OL68から互いにタイミングの異なる走査信号SS61〜SS68が出力される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、デコーダ方式の走査回路では、非反転信号線および反転信号線からなるアドレス信号線に外部より入力されるmビットのビット信号の論理演算を行うことによって、各出力に選択信号としての走査信号が出力される。各デコーダ回路は、各ビットのアドレス信号線の非反転信号線若しくは反転信号線のうちどちらか一方の信号線に接続されており、各アドレス信号線からデコーダ回路へ信号を導く配線の数は、全出力L本の半分L/2本となっている。該デコーダ回路の入力1本分に接続されるゲート容量Cg は、誘電率をε、ゲート絶縁膜厚をd、面積をs(各デコーダ回路の入力部では、P型トランジスタとN型トランジスタのゲート入力に接続されており、ここで定義した面積sは、P型トランジスタとN型トランジスタのゲート面積の和である)とすると、
【0007】
【数1】
Figure 0003832600
【0008】
となる。
【0009】
また、各アドレス信号線は、信号の劣化を防ぐためミニマム配線幅の数十倍の太い配線幅を用い、アドレス信号線などの配線間の層間絶縁膜厚は、ゲート絶縁膜厚の数倍で形成されるのが普通である。各配線幅、膜厚、誘電率等は製造プロセスにより異なるが、ここでは、説明を簡単にするため、アドレス信号線間のクロス部の面積を、デコーダ回路の入力トランジスタのゲート面積の約30倍程度、層間絶縁膜厚をゲート絶縁膜厚の5倍程度として説明する。各クロス部の容量をCL とすると、
【0010】
【数2】
Figure 0003832600
【0011】
である。また、各アドレス信号線に接続される配線のクロス部の数は、(m−1/2)×L個であるため、アドレス信号線1本あたりの負荷容量Ca は、
【0012】
【数3】
Figure 0003832600
【0013】
となる。
【0014】
さらに、デコーダ回路への入力部において、電源線と入力配線間並びに隣接する入力配線間でクロス部が生じる(例えば、本発明の参考例の説明図である図10若しくは図11を参照)。ただし、該クロス部はデコーダ回路の構成により変化する。例えば、2入力のデコーダ回路では入力1本あたり2個、3入力のデコーダ回路では入力1本あたり3個(例えば図10参照)と、配線のクロス部は入力数と同数となる。しかし、10入力などの多入力のデコーダ回路では10個とならず、図19に示すように、通常2入力または3入力程度のデコーダ回路により全入力のうち少数の入力をデコードし、さらにそれらの出力を2〜3入力のデコーダ回路を用いてデコードし、これらを繰り返すことにより1つのデコードされた出力を得る。このため、デコーダ回路入力部のクロス部の数は、回路設計やレイアウト等で異なるものとなる。また、単結晶シリコン基板上にて走査回路を形成した場合、基板とアドレス信号線等の配線との間の配線容量が支配的となるが、該配線容量は、基板サイズや製造プロセス等に伴い配線長が異なれば、その値も異なるものとなる。ここでは、主に絶縁基板上に走査回路を形成した場合、配線の寄生容量として支配的になる配線間のクロス部の容量について説明することとする。絶縁基板を用いる場合、配線−基板間の寄生容量は無視できるため、以下では説明を簡単にするため配線−基板間容量は考慮せず、また、デコーダ回路直前のクロス部の容量をCC とし、上記Cg 中に含め、
【0015】
【数4】
Figure 0003832600
【0016】
として説明する。
【0017】
ここで、消費電力並びにそれぞれのパラメータについて説明する。デコーダ回路の最下位ビットのビット信号の周波数は、ドット周波数をfd とすると、fd の1/2となる。ここで用いたドット周波数は、画像表示装置の一画素分のデータを取り込むために与えられた時間の逆数と定義する。それぞれ所定の周波数を有するビット信号が、mビットのアドレス信号線に入力され、最下位ビットの周波数はfd/2である。各ビット信号の周波数は最下位ビットから上位ビットになるに従い、fd /2、fd /22、fd /23 、…、fd /2m-2 、fd /2m-1、fd /2m となる。上述の走査回路は、m本のアドレス信号とその反転信号とを送信する構成とされているので、全体の消費電力Paは、
【0018】
【数5】
Figure 0003832600
【0019】
となる。
【0020】
上記消費電力の式から明らかなように、アドレス信号線のクロス部の負荷容量は、出力信号線数Lに比例して増大するため、高精細の画像表示装置では、アドレス信号線の数が増加し消費電力が著しく増加する。このため、負荷容量の削減は、低消費電力化を実現する上で重大な課題である。
【0021】
また、多結晶シリコン薄膜トランジスタを用いて表示パネルと駆動回路との一体化を行った場合、例えば特公平5−22917号公報に開示されているように、多結晶シリコン薄膜中のキャリアの移動度は、単結晶シリコン中のものに比べて数分の1以下となり、さらにプロセス/デバイスの微細化レベルの相異から、配線幅も数倍以上となる。したがって、クロス部の面積は増加し、アドレス信号線に寄生する負荷容量も数倍となるため、低消費電力化が困難となるばかりでなく、正常動作しない可能性もある。このため、配線間のクロス部の寄生容量の削減は極めて重要な課題である。
【0022】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、簡単な回路構成で、従来のデコーダ方式の走査回路で問題となっているアドレス信号線のクロス部の寄生容量を低減し、低消費電力化と外部入力パッド数の削減とを実現する走査回路およびそれを用いた画像表示装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明の走査回路は、それぞれ所定のビット信号が入力される複数本のアドレス信号線のうちから供給されるmビットのビット信号の論理演算を施すことによりL(L≦2m )個の走査信号を順次出力するデコーダ回路を備えるとともに、非反転信号のみが入力されるビット信号を反転して、反転信号若しくは非反転信号を生成するインバータ回路が、アドレス信号線の途中に設けられていることを特徴としている。
【0024】
上記の構成では、インバータ回路が設けられているので、非反転信号から反転信号(または、反転信号から非反転信号)を生成できる。これにより、アドレス信号線の数を減らすことができ、外部入力数を削減できる。また、アドレス信号線のクロス部の数を減らすことができるため、寄生容量を低減して低消費電力化を実現できる。
【0025】
また、上記の走査回路において、上位n(n≦m)ビットのビット信号が入力される第1群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号が入力される1本の信号線からなり、下位(m−n)ビットのビット信号が入力される第2群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号と反転信号とが入力される2本の信号線からなり、上記第1群のアドレス信号線の途中に、上記インバータ回路が単一または複数個設けられている構成とすることは、好ましい。この構成において、アドレス信号線の上位n本の信号線では、途中に設けられるインバータ回路によって反転信号若しくは非反転信号が生成されるため、アドレス信号線の数を減らすことができ、これにより、低消費電力化と外部入力数の削減とを実現する。
【0026】
あるいはまた、上記の走査回路において、上位n(n≦m)ビットのビット信号が入力される第1群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号が入力される1本の信号線からなり、これら第1群のアドレス信号線の途中に、上記インバータ回路が設けられ、下位(m−n)ビットのビット信号が入力される第2群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号が入力される1本の信号線からなり、これら第2群のアドレス信号線から供給される信号を反転する上記インバータ回路が、反転信号の入力を選択するデコーダ回路の直前に設けられている構成とすることは、好ましい。この構成において、アドレス信号線の上位n本の信号線では、入力される信号の反転信号が途中に設けられるインバータ回路を通して生成され、一方、下位(m−n)本の信号線では、入力される信号の反転信号がデコーダ回路入力部の直前のインバータ回路により生成される。したがって、アドレス信号線の数を従来の半分に減らすことができ、また、アドレス信号線間およびアドレス信号線と他の配線間のクロス部の数を低減できるので、低消費電力化と外部入力数の削減とを実現できる。
【0027】
さらにまた、上記の走査回路において、上位n(n≦m)ビットのビット信号が入力される第1群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号が入力される1本の信号線からなり、これら第1群のアドレス信号線の途中に、上記インバータ回路が設けられ、中位r(r≦m)ビットのビット信号が入力される第2群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号が入力される1本の信号線からなり、これら第2群のアドレス信号線から供給される信号を反転する上記インバータ回路が、反転信号の入力を選択するデコーダ回路の直前に設けられ、下位(m−n−r)ビットのビット信号が入力される第3群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号と反転信号とが入力される2本の信号線からなる構成とすることは、好ましい。この構成において、アドレス信号線の上位n本の信号線では、入力される信号の反転信号が途中に設けられるインバータ回路を通して生成され、上位n本以下のr本の信号線では、入力される信号の反転信号がデコーダ回路入力部の直前のインバータ回路により生成される。したがって、アドレス信号線の数を減らすことができ、また、アドレス信号線間およびアドレス信号線と他の配線間のクロス部の数を低減できるので、低消費電力化と外部入力数の削減とを実現できる。
【0028】
また、デコーダ回路の遠い方から近い方へ順番に、より下位ビットのビット信号が入力される信号線からより上位ビットのビット信号が入力される信号線へとアドレス信号線を配置することで、クロス部の数を大幅に減らすことができ、低消費電力化実現の効果が一層顕著になる。また、デコーダ回路の入力配線の配置を、設置されるインバータ回路数に 応じて最適化することにより、アドレス信号線のクロス部の数を低減できるので、さらなる低消費電力化を達成できる。
【0029】
さらに、上述の走査回路が、薄膜トランジスタ、特に多結晶シリコン薄膜トランジスタにより構成されるものとすると、該薄膜トランジスタの素子特性は単結晶シリコン基板上に形成されるトランジスタに比べて劣り、配線幅も大きくなるが、上記のように配線のクロス部が低減され低消費電力化が図られた走査回路においては、性能の低い薄膜トランジスタでも十分使用することができ、また、低消費電力化の効果を一層顕著に奏することになる。
【0030】
また、本発明の画像表示装置は、マトリクス状に設けられて表示を行う画素と、この画素に映像信号を供給する複数のデータ信号線と、データ信号線と交差するように配されて画素への映像信号の供給を順次選択する複数の走査信号線と、データ信号線に映像信号を出力するデータ信号線駆動回路と、走査信号線に走査信号を出力する走査信号線駆動回路とを備えるとともに、上記データ信号線駆動回路および上記走査信号線駆動回路の少なくとも一方が上述したいずれかの構成の走査回路を備えていることを特徴としている。
【0031】
上記の構成では、データ信号線駆動回路および走査信号線駆動回路の少なくとも一方に、上述したいずれかの構成の走査回路が設けられているので、該駆動回路の寄生容量の減少による低消費電力化が実現できる。
【0032】
また、上記の画像表示装置において、上記画素は、データ信号線から供給される映像信号を受け取る画素電極と、該画素電極への映像信号の供給を走査信号線からの走査信号に基づいて制御するスイッチング素子とを含み、上記データ信号線駆動回路が上述したいずれかの構成の走査回路を備えるとともに、上記画素電極、上記スイッチング素子および上記データ信号線駆動回路が絶縁基板上に形成された非晶質シリコン薄膜、多結晶シリコン薄膜または単結晶シリコン薄膜上に構成されることは、好ましい。
【0033】
上記のように構成された画像表示装置では、画素と駆動回路との絶縁基板上での一体化が図られる。このような絶縁基板上において、非晶質シリコン薄膜、多結晶シリコン薄膜または単結晶シリコン薄膜上に形成された薄膜トランジスタは、単結晶シリコン基板上に形成されたトランジスタより素子特性が劣り、配線幅も大きくなる。しかしながら、データ信号線駆動回路が上記のように配線のクロス部が低減され低消費電力化が図られた走査回路を備えているので、性能の低い薄膜トランジスタでも十分使用することができ、このような薄膜トランジスタで構成されたドライバ内蔵型アクティブマトリクス基板を備えた画像表示装置を容易に作製することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
〔実施形態1〕
本発明の実施の一形態について図1〜図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0035】
本実施形態に係るマトリクス型画像表示装置は、アクティブマトリクス型液晶表示装置であって、図3に示すように、複数のデータ信号線DLと複数の走査信号線SLとが設けられた液晶パネル1と、データ信号線駆動回路2と、走査信号線駆動回路3と、アドレス信号発生回路4とを備えている。液晶パネル1は、2枚のガラス基板が貼り合わされ、その間に液晶が封入されて構成されている。
【0036】
液晶パネル1には、データ信号線DLと、走査信号線SLとが直交するように配されている。また、隣接するデータ信号線DLと隣接する走査信号線SLとで囲まれた領域には、画素5が1つずつ設けられており、全体で画素5はマトリクス状に配列されている。
【0037】
画素5は、図4に示すように、電界効果トランジスタ(薄膜トランジスタ)からなるスイッチング素子SWと、画素容量CP とにより構成される。画素容量CP は、液晶容量CLCを有しており、必要に応じて補助容量CSが付加される。
【0038】
スイッチング素子SWのソースおよびドレインを介してデータ信号線DLと画素容量CP の一方の電極すなわち画素電極EP とが接続されている。スイッチング素子SWのゲートは走査信号線SLに接続され、画素容量CPの他方の電極すなわち共通電極は全画素5に共通に設けられている。そして、各液晶容量CLCに印加される電圧により、液晶の透過率または反射率が変調されて表示が行われる。
【0039】
データ信号線駆動回路2は、入力された映像信号を特定の期間だけ選択してデータ信号としてデータ信号線DLに出力する回路であり、後述の走査回路を備えている。走査信号線駆動回路3は、走査信号線SLを順次選択して、画素5内のスイッチング素子SWの開閉を制御する回路である。
【0040】
本アクティブマトリクス型液晶表示装置では、スイッチング素子SWは、薄膜トランジスタであり、液晶パネル1のガラス基板(絶縁基板)上に形成された非晶質シリコン薄膜、多結晶シリコン薄膜または単結晶シリコン薄膜上に構成される。また、データ信号線駆動回路2および走査信号線駆動回路3は、スイッチング素子SWおよび画素電極EP とともに同一のガラス基板上にモノリシックに設けられており、スイッチング素子SWと同様な薄膜トランジスタにより構成される。
【0041】
次に、データ信号線駆動回路2に設けられる走査回路について説明する。
【0042】
本走査回路は、図1に示すように、非反転信号線であるm本のアドレス信号線AL1 〜ALm 、反転信号線であるアドレス信号線IAL1〜IALm-n 、L(L≦2m )個のデコーダ回路DC1 〜DCL 、および電源ラインVH・VL を備えている。また、アドレス信号線AL3 の途中にインバータ回路(INV回路)6aが設けられるとともに、アドレス信号線AL2の途中にインバータ回路6b〜6dが設けられている。インバータ回路6a〜6dは、入力されるビット信号を反転して出力する回路である。
【0043】
なお、本走査回路では、説明を簡単にするために、mを3とし、Lを8としている(また、n=2としている。)。つまり、ビット線の数mを3に、出力信号線の数Lを8としている。m、Lの数は特に限定されるものではなく、L≦2m を満たす数であればよい。
【0044】
アドレス信号線AL1 には、周期がTであるビット信号BS1 が入力され、アドレス信号線IAL1には、ビット信号BS1 が反転されたビット信号IBS1 が入力される(図2参照)。これらビット信号BS1・IBS1 は、デコーダ回路DC1 〜DC8 に入力される信号の最下位ビットに相当する。また、アドレス信号線AL2・AL3 には、それぞれ周期が2T・4Tであるビット信号BS2 ・BS3 が入力される(図2参照)。ここでは、ビット信号BS3が最上位ビットとなる。なお、これら各ビット信号は、図3に示すアドレス信号発生回路4が発生する信号である。
【0045】
アドレス信号線AL1 〜AL3 ・IAL1 は、クロス部の数を削減するため、次のように配置されている。すなわち、図1に示すように、3入力のデコーダ回路DC1〜DC8 の入力部から遠い方より近い方へ向かって、より下位ビットを送信するアドレス信号線からより上位ビットを送信するアドレス信号線へと順番に配置されている。
【0046】
また、図1に示すように、デコーダ回路DC1 は、アドレス信号線AL1 〜AL3に接続され、これらより入力されるビット信号の論理積信号が出力線OL1 に出力される。デコーダ回路DC2 は、アドレス信号線IAL1・AL2 ・AL3 に接続され、これらより入力されるビット信号の論理積信号が出力線OL2 に出力される。
【0047】
また、デコーダ回路DC3 は、アドレス信号線AL1 ・AL3に接続されるとともに、インバータ回路6bを通してアドレス信号線AL2 に接続されている。デコーダ回路DC4 は、アドレス信号線IAL1・AL3 に接続されるとともに、インバータ回路6bを通してアドレス信号線AL2 に接続されている。デコーダ回路DC5は、アドレス信号線AL1 に接続されるとともに、インバータ回路6b・6cを通してアドレス信号線AL2 に接続され、さらに、インバータ回路6aを通してアドレス信号線AL3に接続されている。デコーダ回路DC6 は、アドレス信号線IAL1 に接続されるとともに、インバータ回路6b・6cを通してアドレス信号線AL2に接続され、さらに、インバータ回路6aを通してアドレス信号線AL3 に接続されている。デコーダ回路DC7 は、アドレス信号線AL1に接続されるとともに、インバータ回路6b〜6dを通してアドレス信号線AL2 に接続され、さらに、インバータ回路6aを通してアドレス信号線AL3に接続されている。そして、デコーダ回路DC8 は、アドレス信号線IAL1 に接続されるとともに、インバータ回路6b〜6dを通してアドレス信号線AL2に接続され、さらに、インバータ回路6aを通してアドレス信号線AL3 に接続されている。
【0048】
上記のようにインバータ回路6a〜6dが設けられているので、デコーダ回路DC1 〜DC8 には、それぞれ異なる組み合わせでビット信号のうちの3つが入力され、それらのビット信号の論理積が出力される。すなわち、各デコーダ回路DC1〜DC8 に入力されるビット信号の論理積信号が、それぞれ走査信号SS1 〜SS8 (図2参照)として出力線OL1〜OL8 に出力される。
【0049】
なお、以下の説明では、特にデコーダ回路DC1 〜DC8 の個々に言及しない場合は、単にデコーダ回路DCと称し、同様に、アドレス信号線AL1〜AL3 ・IAL1 の個々に言及しない場合は、単にアドレス信号線ALと称する。また、各デコーダ回路DC1〜DC8 に入力される3ビットの信号をそれぞれ信号α、β、γと称する。
【0050】
上述したデコーダ回路DCは、選択されたビット信号を受けて出力するデコーダ回路であればよく、特に限定されるものではない。デコーダ回路DCは、例えば、図5に示すような3入力AND回路でもよいし、図6に示すように、アドレス信号線ALに反転したビット信号(同図におけるαB、βB、γB)を入力して3入力NOR回路としてもよい。あるいは、デコーダ回路DCを、図7に示すようなダイナミック型で構成してもよい。さらに、VGA仕様の画像表示装置のデータ信号線駆動回路(L=640)の場合、ビット数mは10となるため、動作スピードの問題からデコーダ回路DCは図19に示すような回路構成となるのが普通である。
【0051】
再び図1を参照して、本走査回路におけるアドレス信号線ALのクロス部の数について、最下位ビットのアドレス信号線AL1 ・IAL1 は12個、2ビット目のアドレス信号線AL2は19個、3ビット目のアドレス信号線AL3 は22個である(各アドレス信号線ALについて、他の配線と交差する部分をカウントする。)。また、各アドレス信号線ALのゲート容量はCgである。ただし、2ビット目および3ビット目のアドレス信号線AL2 ・AL3 は1本のアドレス信号線で非反転信号線と反転信号線とを共用しているため、デコーダ回路DCに入力されるゲート容量は2倍になる。また、反転用のインバータ回路6a〜6dが含まれ、該インバータ回路6a〜6dの入力負荷容量をCiとすると、消費電力Pa1は、
【0052】
【数6】
Figure 0003832600
【0053】
となる。
【0054】
一方、図17に示す従来のデコーダ方式の走査回路では、各アドレス信号線のクロス部は20個となり、各アドレス信号線は非反転信号線と反転信号線とからなっているので、消費電力Pa は、
【0055】
【数7】
Figure 0003832600
【0056】
となる。上記2式を比較すると、第2項は明らかに本走査回路の方が消費電力が小さく、約半分程度である。本走査回路の第3項の入力負荷容量Ci は、クロス部の負荷容量ほど支配的ではないため、全体の消費電力も小さくなる。
【0057】
一般的に、デコーダ方式の走査回路を画像表示装置に適用したとき、アドレス信号線は10本以上必要となるため、最上位ビットの周波数は、例えばVGA仕様の画像表示装置のデータ信号線駆動回路でfd /1024であり、ほとんど消費電力に影響しない。
【0058】
本走査回路の構成を採用する場合、反転信号をインバータ回路により生成する上位ビットのアドレス信号線の数nを1本増加するごとに、インバータ反転を用いない下位ビットの各アドレス信号線1本あたりのクロス部数はL/2本ずつ削減される。しかし、インバータ反転を用いたアドレス信号線のインバータ回路数は最上位ビットから下位ビットになるにつれ、1個、3個、7個、…、2n-2 −1、2n-1 −1、2n−1と増加し、それに伴い、インバータ回路用の電源ラインと最上位ビットのアドレス信号線とのクロス部が2n+1 −2で増加する(図1参照)。このため、製造に際しては、配線幅およびトランジスタの能力などを考慮し、最適なnの数を求めるとよい。本発明の消費電力の一般式は、
【0059】
【数8】
Figure 0003832600
【0060】
である。nの数を2〜4程度とすれば、アドレス信号線にインバータ回路を挿入したときの電源ライン挿入によるクロス部の数の増加は少ない。上位nビットの消費電力は下位ビットより十分小さく無視できるため、上式の第2項以降は無視できる。例えば、VGA仕様の画像表示装置のデータ信号線駆動回路において、最下位ビットの動作周波数に比較し最上位ビットの動作周波数は1/512となり、ほとんど消費電力に影響しない。また、第1項めは、
【0061】
【数9】
Figure 0003832600
【0062】
と近似できる。
【0063】
以上のように、本実施形態における走査回路では、デコーダ回路DCを用いた走査回路において、アドレス信号線ALのクロス部の数を低減し、寄生容量を低減することによる低消費電力化を実現できる。
【0064】
また、上位ビットのアドレス信号線ALは、外部回路で反転信号線を作らなくてよい。このため、外部入力パッドのパッド数を削減できる。つまり、外部から供給されるアドレス信号(反転信号)数を削減できるため、信号接続部の簡素化を図ることが可能となる。
【0065】
また、単結晶シリコン基板上において本走査回路を作製した場合、アドレス信号線ALの削減に伴い、配線−基板間容量を減らすことができるため、本発明は単結晶シリコン基板上に走査回路を設ける場合においても有効である。
【0066】
参考例1
本発明の参考例について図8〜図12に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、本参考例において実施形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記してその説明を省略する。
【0067】
参考例に係る走査回路では、図8に示すように、非反転信号線であるm本のアドレス信号線AL1 〜ALm が設けられるとともに、デコーダ回路DCの直前において反転信号生成用のインバータ回路7a〜7lが設けられている。反転信号線としてのアドレス信号線ALは設けられていない。
【0068】
なお、ここでは、実施形態1と同様に、説明を簡単にするため、ビット数mを3に、出力信号線の数Lを8としている。m、Lの数は特に限定されるものではなく、L≦2m を満たす数であればよい。また、実施形態1と同様に、デコーダ回路DCは、選択されたアドレス信号を受けて出力するデコーダ回路であればよく、特に限定されるものではない。例えば、3入力AND回路(図5参照)としてもよいし、アドレス信号線ALに反転したビット信号を入力して3入力NOR回路(図6参照)としてもよいし、あるいは、図7に示すようなダイナミック型で構成してもよい。
【0069】
図8に示すように、各アドレス信号線AL1 〜AL3 からのビット信号BS11〜BS13(図9参照)は、3入力のデコーダ回路DCに入力される。このとき、回路直前に設けられるインバータ回路7a〜7lによって、所定のビット信号が反転されて、各デコーダ回路DC11〜DC18に入力される。これにより、各デコーダ回路DC11〜DC18から論理積信号としての走査信号SS11〜SS18(図9参照)が出力線OL11〜OL18に出力される。
【0070】
上記構成とすることで、アドレス信号線ALの外部入力数は従来の半分となり、アドレス信号線ALのクロス部の数は(m−1)・L個と大幅に削減できる。しかし、デコーダ回路DCの直前にインバータ回路7a〜7lを挿入する必要があるため、電源ラインおよび他の配線とのクロス部の増加は避けられない。このため、本参考例では、デコーダ回路入力部の配置の最適化を図り、インバータ回路7a〜7l挿入によるクロス部の増加を最小限にすることを実現している。以下に該配置について説明する。
【0071】
反転信号は、各デコーダ回路DCの直前で生成する。反転信号生成用のインバータ回路7a〜7lの追加によるクロス部の数の増加は、例えば図10に示すような3入力のデコーダ回路(NAND)における全ての入力が反転信号入力で、直前にインバータ回路7が3個ある場合には、入力α、β、γのクロス部CRの数は、従来のデコーダ回路に比してそれぞれ0、1、2個増加する。入力の反転数が2個の場合には、インバータ回路7をβ、γの位置に配置することで、α、β、γのクロス部CRの数は0、0、1個の増加となる(図11参照)。入力の反転数が1個の場合は、インバータ回路7をγの位置に配置することで、入力α、β、γのクロス部の数は増加しない。なお、図10および図11において、12はメタルライン、13はゲートラインであり、PはP型活性層、NはN型活性層である。また、14はメタル・ゲート間のコンタクト部であり、15はメタル・活性層間のコンタクト部である。そして、デコーダ回路直前にインバータ回路7が挿入されることにより生じるクロス部がCRで示され、デコーダ回路入力部のクロス部容量が生じる領域がCC で示される。
【0072】
反転信号入力の個数にかかわらず入力αのクロス部の数は増加しないため、最も高速動作周波数である最下位ビットの入力信号を入力αに、次のビットをβに、最上位ビットをγに接続することにより、3入力の入力α、β、γのクロス部の数は、0、4、8個の増加となる(図12参照)。さらに、反転信号入力が2つ以下の場合の入力の配置を替えることにより、入力α、β、γのクロス部の数は0、1、5個の増加となり増加分をさらに削減できる(図8参照)。
【0073】
このため、アドレス信号線ALにおけるクロス部の数は、最下位ビットから16個、17個、21個である。また、各アドレス信号線ALのゲート容量は、1本のアドレス信号線ALで非反転信号線と反転信号線とを共用しているため、従来のゲート容量の2倍の2Cg である。また、反転用のインバータ回路7a〜7lの入力負荷容量をCiとすると、消費電力Pa2は、
【0074】
【数10】
Figure 0003832600
【0075】
となり、実施形態1に比してさらに低消費電力化を実現できる。
【0076】
また、2入力のデコーダ回路では、組み合わせを替えることにより、例えば図19における入力A、Bのクロス部の数はそれぞれ0、1個の増加となる。
【0077】
入力アドレス信号線数が増加しても、例えばVGA仕様の画像表示装置のデータ信号線駆動回路に対応する10ビット入力(L=640)をデコードする場合には、図19のように2入力と3入力のデコーダ回路の組み合わせによりデコードする。このため、本発明による組み合わせを用いると、クロス部の増加の数はβに配置した場合で1/23 ・L=80個(L=640、2のべき乗数の3は3入力のデコーダ回路であることを示す)、γでは5/23・L=400個、Bで1/22 ・L=160個である。したがって、下位ビットの入力をα(反転信号入力が2つであればβ、1つ以内であればγでもよい)若しくはAになるように配置すると、デコーダ回路DCの直前に反転信号生成用のインバータ回路7を挿入することにより生じるクロス部の増加は、最下位ビットから4ビットは0個、5〜6ビットは80個、7〜8ビットは160個、9〜10ビット(最上位ビット)は400個となる。この個数はアドレス信号線ALのクロス部(m−1)×L=5760個に比べて十分小さく、また上位ビットの動作周波数が下位ビットに比較し十分遅いため、該クロス部の増加は消費電力にほとんど影響しないと考えてよい。このため、本発明の消費電力の一般式Pa2は、
【0078】
【数11】
Figure 0003832600
【0079】
となる。つまり、従来のデコーダ方式に比べて消費電力を1/2以下に削減できる。
【0080】
以上のように、本参考例における走査回路では、デコーダ回路DCを用いた走査回路において、アドレス信号線ALのクロス部の数を低減し、寄生容量を低減することによる低消費電力化を実現できる。
【0081】
また、アドレス信号線ALは、外部回路で反転信号線を作らなくてよい。このため、外部入力パッドのパッド数を削減できる。つまり、外部から供給されるアドレス信号(反転信号)数を削減できるため、信号接続部の簡素化を図ることが可能となる。
【0082】
また、単結晶シリコン基板上において本走査回路を作製した場合、アドレス信号線ALの削減に伴い、配線−基板間容量を減らすことができるため、本発明は単結晶シリコン基板上に走査回路を設ける場合においても有効である。
【0083】
このように、それぞれ所定のビット信号が入力される複数本のアドレス信号線のうちから供給されるmビットのビット信号の論理演算を施すことによりL(L≦2 m )個の走査信号を順次出力するデコーダ回路を備えた走査回路において、非反転信号のみが入力されるビット信号を反転して、反転信号若しくは非反転信号を生成するインバータ回路が、アドレス信号線の途中あるいはデコーダ回路の直前に設けられており、上記複数本のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号が入力される1本の信号線からなり、これらアドレス信号線から供給される信号を反転する上記インバータ回路が、反転信号の入力を選択するデコーダ回路の直前に設けられている構成であれば、各アドレス信号線は、所定ビット信号の非反転信号が入力される非反転信号線のみで構成され、反転信号はデコーダ回路入力部の直前のインバータ回路により生成される。したがって、アドレス信号線の数を従来の半分に減らすことができ、低消費電力化と外部入力数の削減とを実現できる。また、この構成において、デコーダ回路の入力配線の配置を、設置されるインバータ回路数に応じて最適化することにより、アドレス信号線のクロス部の数を低減できるので、さらなる低消費電力化を達成できる。
【0084】
実施形態2
本発明のさらに他の実施形態について図13に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、本実施形態において実施形態1あるいは参考例1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記してその説明を省略する。
【0085】
本実施形態に係る走査回路では、図13に示すように、非反転信号線であるm本のアドレス信号線AL1 〜ALm (m=3)が設けられるとともに、アドレス信号線AL3の途中にインバータ回路8aが設けられ、かつ、デコーダ回路DCの直前にインバータ回路8b〜8iが設けられている。反転信号線としてのアドレス信号線ALは設けられていない。
【0086】
各アドレス信号線AL1 〜AL3 からのビット信号BS11〜BS13(図9参照)は、3入力のデコーダ回路DCに入力される。このとき、インバータ回路8a〜8iによって、所定のビット信号が反転されて、各デコーダ回路DC21〜DC28に入力される。これにより、各デコーダ回路DC21〜DC28から論理積信号としての走査信号SS11〜SS18(図9参照)が出力線OL21〜OL28に出力される。
【0087】
上記構成とすることで、低消費電力を実現しつつ回路規模を小さくすることが可能となる。つまり、参考例1で用いたデコーダ回路DCでは、全体の寄生容量が小さくなり消費電力も少なくなるが、各デコーダ回路DC直前の反転信号を生成する部分にインバータ回路7a〜7lを要するため、回路規模が大きくなる可能性がある。そこで、参考例1の上位nビットに対して、実施形態1において説明したアドレス信号線の途中にインバータ回路を設けた構成を適用することによって回路規模を小さくすることができる。この場合、上位ビットで反転用のインバータ回路の負荷容量Ci とそれに伴う電源ラインが増加するが、それ以上に参考例1に比してデコーダ回路直前のインバータ回路数が大幅に削減されるため、大幅にクロス部を削減できる。例えば、VGA仕様の画像表示装置のデータ信号線駆動回路におけるm=10(L=640)の場合に、n=2とし上位2ビットを図19における3入力のデコーダ回路のそれぞれに振り分けて入力すると、入力α、β、γの参考例1の構成によるクロス部の増加数は0、0、2/23・L=160個であり、実施形態1の構成によるアドレス信号線途中のインバータ回路の電源より増加するクロス部の数は、最上位ビットで6個、該ビットの1つ下のビットで3個である。また、この場合の全体の消費電力Pa3は、
【0088】
【数12】
Figure 0003832600
【0089】
となり、参考例1とほぼ同じである。したがって、回路規模を小さくして参考例1と同等の低消費電力を実現できる。
【0090】
以上のように、本実施形態における走査回路では、デコーダ回路DCを用いた走査回路において、アドレス信号線ALのクロス部の数を低減し、寄生容量を低減することによる低消費電力化を実現できる。
【0091】
また、アドレス信号線ALは、外部回路で反転信号線を作らなくてよい。このため、外部入力パッドのパッド数を削減できる。つまり、外部から供給されるアドレス信号(反転信号)数を削減できるため、信号接続部の簡素化を図ることが可能となる。
【0092】
また、単結晶シリコン基板上において本走査回路を作製した場合、アドレス信号線ALの削減に伴い、配線−基板間容量を減らすことができるため、本発明は単結晶シリコン基板上に走査回路を設ける場合においても有効である。
【0093】
実施形態3
本発明のさらに他の実施形態について図14に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、本実施形態において実施形態1、2、参考例1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記してその説明を省略する。
【0094】
本実施形態に係る走査回路では、図14に示すように、非反転信号線であるm本のアドレス信号線AL1 〜ALm (m=3)、および反転信号線であるアドレス信号線IAL1が設けられるとともに、アドレス信号線AL3 の途中にインバータ回路9aが設けられ、かつ、デコーダ回路DCの直前にインバータ回路9b〜9eが設けられている。
【0095】
各アドレス信号線AL1 〜AL3 ・IAL1 からのビット信号BS1〜BS3 ・IBS1 (図2参照)は、3入力のデコーダ回路DCに入力される。このとき、インバータ回路9a〜9eによって、所定のビット信号が反転されて、各デコーダ回路DC31〜DC38に入力される。これにより、各デコーダ回路DC31〜DC38から論理積信号としての走査信号SS1〜SS8 (図2参照)が出力線OL31〜OL38に出力される。
【0096】
上記構成とすることで、アドレス信号線ALのクロス部の数をさらに削減できる。つまり、負荷容量をさらに減らす必要があるとき、例えば多結晶シリコンなどの素子特性が劣り、プロセスが遅れているもので回路を構成する場合、微細化、特に配線の微細化が困難であるため、さらにクロス部の数を削減する必要がある。そこで、高周波動作を必要とする下位ビットのアドレス信号線ALを非反転信号線と反転信号線とを用いて入力することにより、該アドレス信号線ALのクロス部の数をさらに削減できる。ここで、上位nビットに対しては、アドレス信号線の途中にインバータ回路を設けた構成(実施形態1で説明した構成)を適用し、以降のrビットに対しては、デコーダ回路直前にインバータ回路を設けた構成(参考例1で説明した構成)を適用すると、下位(m−n−r)ビットの各アドレス信号線ALのクロス部の数は、{m−(n+r+1)/2}・Lとなる。全体の消費電力Pa4は、上位nビットは動作周波数が遅いので全体の消費電力に比較し無視できるため、
【0097】
【数13】
Figure 0003832600
【0098】
となる。したがって、全体の消費電力は従来のデコーダ回路に比較して大幅に削減できる。
【0099】
下位ビットの非反転信号線および反転信号線1本あたりの負荷容量は、参考例1に比較してCg で1/2、クロス部で{m−(n+r+1)/2}/(m−1)となり大幅に削減できる。さらに、参考例1における反転信号生成のためのデコーダ回路直前のインバータ回路数が減ることにより、該部でのクロス部の増加も削減できる。例えば、VGA仕様の画像表示装置のデータ信号駆動回路におけるm=10(L=640)の場合に、n=2、r=2とし、図19における2入力および3入力のデコーダ回路(合計4個)のそれぞれに上位(n+r=4)ビットの何れかを振り分けて接続したとき、3入力のデコーダ回路の入力α、β、γのクロス部の参考例1の構成による増加の数は0、0、2/23・L=256個であり、2入力のデコーダ回路のクロス部の同増加数は0となる。一方、実施形態1の構成により増加するクロス部の数は、最上位ビットで6個、該ビットの1つ下のビットで3個であるため、最下位ビット〜8ビットはクロス部の増加は0であり、大幅にクロス部を削減できる。
【0100】
また、上位ビットのアドレス信号線ALは、外部回路で反転信号線を作らなくてよい。このため、外部入力パッドのパッド数を削減できる。つまり、外部から供給されるアドレス信号(反転信号)数を削減できるため、信号接続部の簡素化を図ることが可能となる。
【0101】
また、単結晶シリコン基板上において本走査回路を作製した場合、アドレス信号線ALの削減に伴い、配線−基板間容量を減らすことができるため、本発明は単結晶シリコン基板上に走査回路を設ける場合においても有効である。
【0102】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る走査回路は、非反転信号のみが入力されるビット信号を反転して、反転信号若しくは非反転信号を生成するインバータ回路が、アドレス信号線の途中に設けられている構成である。
【0103】
これにより、非反転信号から反転信号(または、反転信号から非反転信号)を生成できるので、アドレス信号線の数を減らすことができる。
【0104】
それゆえ、アドレス信号線のクロス部の数を低減し、寄生容量の低減による低消費電力化を実現できるという効果を奏する。また、外部から供給されるアドレス信号(反転信号)数を削減できるため、信号接続部の簡素化を図ることが可能となる。
【0105】
また、本発明に係る走査回路は、以上のように、上記構成において、上位n(n≦m)ビットのビット信号が入力される第1群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号が入力される1本の信号線からなり、下位(m−n)ビットのビット信号が入力される第2群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号と反転信号とが入力される2本の信号線からなり、上記第1群のアドレス信号線の途中に、上記インバータ回路が単一または複数個設けられている構成である。
【0106】
これにより、アドレス信号線の上位n本の信号線では、途中に設けられるインバータ回路によって反転信号若しくは非反転信号が生成されるため、アドレス信号線の数を減らすことができる。それゆえ、低消費電力化と外部入力数の削減とを実現できる。
【0107】
また、本発明に係る走査回路は、以上のように、上記構成において、上位n(n≦m)ビットのビット信号が入力される第1群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号が入力される1本の信号線からなり、これら第1群のアドレス信号線の途中に、上記インバータ回路が設けられ、下位(m−n)ビットのビット信号が入力される第2群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号が入力される1本の信号線からなり、これら第2群のアドレス信号線から供給される信号を反転する上記インバータ回路が、反転信号の入力を選択するデコーダ回路の直前に設けられている構成である。
【0108】
これにより、アドレス信号線の数を従来の半分に減らすことができ、また、アドレス信号線間およびアドレス信号線と他の配線間のクロス部の数を低減できるので、低消費電力化と外部入力数の削減とを実現できる。
【0109】
また、本発明に係る走査回路は、以上のように、上記構成において、上位n(n≦m)ビットのビット信号が入力される第1群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号が入力される1本の信号線からなり、これら第1群のアドレス信号線の途中に、上記インバータ回路が設けられ、中位r(r≦m)ビットのビット信号が入力される第2群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号が入力される1本の信号線からなり、これら第2群のアドレス信号線から供給される信号を反転する上記インバータ回路が、反転信号の入力を選択するデコーダ回路の直前に設けられ、下位(m−n−r)ビットのビット信号が入力される第3群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号と反転信号とが入力される2本の信号線からなる構成である。
【0110】
これにより、アドレス信号線の数を減らすことができ、また、アドレス信号線間およびアドレス信号線と他の配線間のクロス部の数を低減できるので、低消費電力化と外部入力数の削減とを実現できる。
【0111】
また、本発明に係る走査回路は、以上のように、上記構成において、上記デコーダ回路の遠い方から近い方へ順番に、より下位ビットのビット信号が入力される信号線からより上位ビットのビット信号が入力される信号線へと上記アドレス信号線が配置されている構成である。
【0112】
これにより、アドレス信号線間のクロス部の数を大幅に減らすことができ、低消費電力化の実現をより顕著に達成することができる。
【0113】
また、本発明に係る走査回路は、以上のように、上記構成において、上記デコーダ回路の入力配線の配置が、上記インバータ回路の設置数に応じて調整されている構成である。
【0114】
これにより、アドレス信号線のクロス部の数を低減できるので、さらなる低消費電力化を達成できる。
【0115】
また、本発明に係る走査回路は、以上のように、上記のいずれかの構成において、薄膜トランジスタにより構成されている。
【0116】
これにより、上記のように配線のクロス部が低減され低消費電力化が図られた走査回路においては、性能の低い薄膜トランジスタでも十分使用することができ、また、低消費電力化の効果を一層顕著に奏することになる。
【0117】
また、本発明に係る画像表示装置は、以上のように、データ信号線駆動回路および走査信号線駆動回路の少なくとも一方が上記のいずれかに記載の走査回路を備えている構成である。
【0118】
これにより、データ信号線駆動回路および走査信号線駆動回路の少なくとも一方に、上述したいずれかの構成の走査回路が設けられているので、該駆動回路の寄生容量の減少による低消費電力化が実現できるという効果を奏する。
【0119】
また、本発明に係る画像表示装置は、以上のように、上記構成において、上記画素は、データ信号線から供給される映像信号を受け取る画素電極と、該画素電極への映像信号の供給を走査信号線からの走査信号に基づいて制御するスイッチング素子とを含み、上記データ信号線駆動回路が上記のいずれかに記載の走査回路を備えるとともに、上記画素電極、上記スイッチング素子および上記データ信号線駆動回路が絶縁基板上に形成された非晶質シリコン薄膜、多結晶シリコン薄膜または単結晶シリコン薄膜上に構成されている。
【0120】
これにより、画素と駆動回路との絶縁基板上での一体化を図ることができる。また、データ信号線駆動回路が上記のように配線のクロス部が低減され低消費電力化が図られた走査回路を備えているので、性能の低い薄膜トランジスタでも十分使用することができ、このような薄膜トランジスタで構成されたドライバ内蔵型アクティブマトリクス基板を備えた画像表示装置を容易に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の一形態に係る走査回路を概略的に示す構成図である。
【図2】 上記走査回路のアドレス信号線に入力されるビット信号およびデコーダ回路から出力される走査信号を示す波形図である。
【図3】 上記走査回路を備えるアクティブマトリクス型液晶表示装置の主要部の構成を示す説明図である。
【図4】 上記アクティブマトリクス型液晶表示装置における画素の詳細な構成を示すブロック図である。
【図5】 上記走査回路に設けられる各デコーダ回路の一構成例を示す図である。
【図6】 上記走査回路に設けられる各デコーダ回路の他の構成例を示す図である。
【図7】 上記走査回路に設けられる各デコーダ回路のさらに他の構成例を示す図である。
【図8】 本発明の参考例に係る走査回路を概略的に示す構成図である。
【図9】 上記走査回路のアドレス信号線に入力されるビット信号およびデコーダ回路から出力される走査信号を示す波形図である。
【図10】 上記デコーダ回路の直前の全ての入力にインバータ回路を挿入した場合のレイアウトの一例を示す説明図である。
【図11】 上記デコーダ回路の直前の2つの入力にインバータ回路を挿入した場合のレイアウトの一例を示す説明図である。
【図12】 上記走査回路において、デコーダ回路に入力される入力配線の配置を変更した場合の走査回路の一例を示す構成図である。
【図13】 本発明のさらに他の実施形態に係る走査回路を概略的に示す構成図である。
【図14】 本発明のさらに他の実施形態に係る走査回路を概略的に示す構成図である。
【図15】 従来のマトリクス型画像表示装置の構成を概略的に示す説明図である。
【図16】 従来のマトリクス型画像表示装置で用いられるデータ信号線駆動回路の構成を概略的に示す説明図である。
【図17】 従来のデコーダ回路を用いた走査回路を概略的に示す構成図である。
【図18】 従来の走査回路のアドレス信号線に入力されるビット信号およびデコーダ回路から出力される走査信号を示す波形図である。
【図19】 10入力デコーダ回路の一構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 液晶パネル
2 データ信号線駆動回路
3 走査信号線駆動回路
5 画素
6a〜6d インバータ回路
7・7a〜7l インバータ回路
8a〜8i インバータ回路
9a〜9e インバータ回路
DC デコーダ回路
AL1 〜AL3 アドレス信号線
IAL1 アドレス信号線
H 電源ライン
L 電源ライン
DL データ信号線
SL 走査信号線
SW スイッチング素子
P 画素電極

Claims (9)

  1. それぞれ所定のビット信号が入力される複数本のアドレス信号線のうちから供給されるmビットのビット信号の論理演算を施すことによりL(L≦2m )個の走査信号を順次出力するデコーダ回路を備えた走査回路において、
    非反転信号のみが入力されるビット信号を反転して、反転信号若しくは非反転信号を生成するインバータ回路が、アドレス信号線の途中に設けられていることを特徴とする走査回路。
  2. 上位n(n≦m)ビットのビット信号が入力される第1群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号が入力される1本の信号線からなり、
    下位(m−n)ビットのビット信号が入力される第2群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号と反転信号とが入力される2本の信号線からなり、
    上記第1群のアドレス信号線の途中に、上記インバータ回路が単一または複数個設けられていることを特徴とする請求項1に記載の走査回路。
  3. 上位n(n≦m)ビットのビット信号が入力される第1群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号が入力される1本の信号線からなり、これら第1群のアドレス信号線の途中に、上記インバータ回路が設けられ、
    下位(m−n)ビットのビット信号が入力される第2群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号が入力される1本の信号線からなり、これら第2群のアドレス信号線から供給される信号を反転する上記インバータ回路が、反転信号の入力を選択するデコーダ回路の直前に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の走査回路。
  4. 上位n(n≦m)ビットのビット信号が入力される第1群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号が入力される1本の信号線からなり、これら第1群のアドレス信号線の途中に、上記インバータ回路が設けられ、
    中位r(r≦m)ビットのビット信号が入力される第2群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号が入力される1本の信号線からなり、これら第2群のアドレス信号線から供給される信号を反転する上記インバータ回路が、反転信号の入力を選択するデコーダ回路の直前に設けられ、
    下位(m−n−r)ビットのビット信号が入力される第3群のアドレス信号線は、それぞれ所定ビット信号の非反転信号と反転信号とが入力される2本の信号線からなることを特徴とする請求項1に記載の走査回路。
  5. 上記デコーダ回路の遠い方から近い方へ順番に、より下位ビットのビット信号が入力される信号線からより上位ビットのビット信号が入力される信号線へと上記アドレス信号線が配置されていることを特徴とする請求項2、3または4に記載の走査回路。
  6. 上記デコーダ回路の入力配線の配置が、上記インバータ回路の設置数に応じて調整されていることを特徴とする請求項3、4または5に記載の走査回路。
  7. 薄膜トランジスタにより構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の走査回路。
  8. マトリクス状に設けられて表示を行う画素と、この画素に映像信号を供給する複数のデータ信号線と、データ信号線と交差するように配されて画素への映像信号の供給を順次選択する複数の走査信号線と、データ信号線に映像信号を出力するデータ信号線駆動回路と 、走査信号線に走査信号を出力する走査信号線駆動回路とを備えた画像表示装置において、
    上記データ信号線駆動回路および上記走査信号線駆動回路の少なくとも一方が請求項1ないし6のいずれかに記載の走査回路を備えていることを特徴とする画像表示装置。
  9. 上記画素は、データ信号線から供給される映像信号を受け取る画素電極と、該画素電極への映像信号の供給を走査信号線からの走査信号に基づいて制御するスイッチング素子とを含み、
    上記データ信号線駆動回路が請求項1ないし6のいずれかに記載の走査回路を備えるとともに、上記画素電極、上記スイッチング素子および上記データ信号線駆動回路が絶縁基板上に形成された非晶質シリコン薄膜、多結晶シリコン薄膜または単結晶シリコン薄膜上に構成されていることを特徴とする請求項8に記載の画像表示装置。
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