JP3832234B2 - アンテナ装置およびそのアンテナの測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は例えば、2000年電子情報通信学会通信ソサィエティ大会B-1-138「サブアレー単位で実時間遅延移相器を設けたフェーズドアレーアンテナのビーム指向誤差近似式」に示されたような、レーダまたは通信用装置において広周波数帯域にわたる信号を同時に送受信するために、N個(Nは2以上の整数)の素子アンテナとそれぞれの素子アンテナにつながれ、0度から360度の間で透過位相を変化させる事ができるN個の移相器、上記N個の移相器の出力をサブアレーとして合成するM個(Mは2以上、N以下の整数)のRF合成回路、上記それぞれのRF合成回路につながれたM個の実時間遅延線路、上記それぞれの実時間遅延線路につながれたRF合成回路を備えたアンテナ装置において、アンテナの動作状態における各実時間遅延線路の設定誤差によるビーム指向性誤差の影響を軽減できるアンテナ装置を提案するとともに、そのアンテナ装置の遅延設定量と実際の遅延量の差異を精度良く測定できるアンテナ測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図3は従来のアンテナ装置の構成を示す図である。図において1-1…1-NはN個の素子アンテナ、2-1…2−Nは同じくN個の移相器、3-1…3-NはM個のサブアレーRF分配回路、4は4-1…4-MはM個の実時間遅延線路、5はRF分配回路、6は送信器である。7は計測用のピックアップアンテナ、8は計測用の受信器である。
【0003】
次に動作について説明する。図3は送信の例であり、送信器6より発生した信号電力は電力分配回路5により所望の分配比に分配されて、各実時間遅延線路に送られる。各実時間遅延線路4は所望のビームを形成する為に必要な時間遅延量を信号電力に与える。サブアレーRF分配回路にて所望の分配比に分配された信号電力は所望のビームを形成するために、所望の位相量にコントロールされた移相器2により位相が変えられ、素子アンテナ1-1…1-Nから放射されて、所望のアンテナ特性を得る。受信の場合も送信器と受信器が入れ替わるだけで、送信の場合と同一である。
【0004】
ここで、実時間遅延線路4の働きについて、より詳しく説明する。説明においてアンテナは素子アンテナがX軸に沿って配置されたリニアアレーアンテナとする。図3に示すアンテナにおいて、主ビームをθ1方向に向ける為に、各素子アンテナ1に設定する必要な位相は次式で与えられる。
【0005】
【数3】
【0006】
ここで、φiはi番目の素子アンテナ1-iに設定する位相、λは波長、θ1は主ビーム方向、Xiは素子アンテナ1-iの座標である。アンテナの開口長45λ、ビーム走査角度を+20度の場合、45sin(20)=15.39λであるため、アンテナ左端の移相器2に0度を設定した場合、アンテナ右端の移相器2には0.39λ=140.4度を設定すれば良い。
【0007】
しかし、レーダ、または通信等で広帯域な変調信号を使用する場合、アンテナの放射パターンには広帯域にわたり、その特性が変化しないことが求められる。しかしながら、上記のように移相器2を用いてビーム走査を行った場合、運用帯域幅が±3%であるとすると、帯域上限(FH)、帯域中心(FC)、 帯域下限(FL)、における主ビーム方向は、
【0008】
【数4】
【0009】
となり、帯域内で±0.6度程度変動する。開口長45λの場合、ビーム幅は約1.2度であるため、この主ビーム方向の変動はシステム上大きな問題となる。
【0010】
そこで、移相器2のみで、主ビーム方向に対応する位相を設定するのではなく、各素子アンテナから所望の方向へビームを形成するために必要な信号遅延量を実時間遅延経路4により実現することが行われている。
【0011】
実時間遅延線路4の構成を図4 に示す。図は最小遅延量が中心周波数における1λ、4ビットの遅延線路の例である。ここで、最小遅延量とビット数はアンテナ開口長と所望のビーム走査特性によって決まる値である。図4において11は1λ遅延回路、12は2λ遅延回路、13は4λ遅延回路、 14は8λ遅延回路、15は制御回路であり、線路長が異なる線路をスイッチで切り替える事により、所望の遅延特性を得る。上記の例において1λ、2λ、4λ、8λの遅延線路を動作させることで、15λの遅延を実現し、移相器に0.39λ=140.9度の位相を設定してビーム走査を行った場合の帯域内で主ビーム方向は、
【0012】
【数5】
【0013】
となり、実時間遅延線路を用いることで、主ビーム方向の変動を±0.02度に低減可能である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従来のアンテナ装置は、以上のように構成されているため、実時間遅延線路4の特性の変動がアンテナのビーム走査特性に大きな影響を与える。従って、実時間遅延線路特性のばらつき、変動を低減する必要があり、個々の実時間遅延線路4の試験・調整に多大な時間を必要とした。また、実際には実時間遅延線路4を透過する信号の位相は前後につながれるコンポーネントの入出力特性の影響を受けるが、その影響を考慮した制御は不可能であり、高い精度のビーム指向性を実現することが困難であった。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この発明によるアンテナ装置は、実時間遅延線路の実際の遅延量D'と遅延設定量Dの差から補正位相を求め、この補正位相を格納する記憶装置と補正位相から各位相器に設定する位相を計算する演算装置を備えることで、実時間遅延線路特性のばらつき、変動を考慮した位相設定を可能とし、試験・調整時間を短縮しながらも、従来に比べて高い精度のビーム指向を可能とする。
【0016】
また、この発明によるアンテナ測定法は2つのサブアレーA,Bのみを励振し、サブアレーAの移相器とサブアレーBの移相器には180度の位相差を与え、各サブアレーにつながれた実時間遅延線には遅延設定量として零を与えることで、アンテナ正面方向にナルパターンを形成し、次にサブアレーBの実時間遅延線路に遅延設定量Dを設定した場合のナル位置の変化ΔθからサブアレーBにつながれた実時間遅延線路の実際の遅延量D'を求めることが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1を示す図であり、図において1-1…1-NはN個の素子アンテナ、2-1…2-Nは同じくN個の移相器、3-1…3-MはM個のサブアレーRF分配回路、4-1…4-MはM個の実時間遅延線路、5はRF分配回路、6は送信器である。7は計測用のピックアップアンテナ、8は計測用の受信器、9は実測された実時間遅延線路の遅延量を格納する記憶装置、10はビーム走査位相を計算する演算装置である。
【0018】
前述のアンテナの開口長45λ、ビーム走査各度を+20度、運用帯域幅が±5%の場合、遅延線路の長さが設計値に対し5%短い場合、帯域上限、中心、下限における主ビーム方向は、
【0019】
【数6】
【0020】
となり、帯域全体で主ビーム方向が約-1度シフトしてしまう。
【0021】
演算装置10は記憶装置9に格納された各遅延線路の遅延量D'を用い、次式によって補正位相を計算する。
【0022】
【数7】
【0023】
m番目の実時間遅延線路4がつながれているそれぞれの移相器2に設定する位相に数7による補正位相を加えることで、主ビーム方向のシフトを補正することが可能であり、前述の例の場合、
【0024】
【数8】
【0025】
となり、帯域内でのビーム指向精度の改善が確認できる。
【0026】
実施の形態2.
図2は実施の形態2を示す構成図であり、図において1-1…1−NはN個の素子アンテナ、2-1…2−Nは同じくN個の移相器、3-1…3-MはM個のサブアレーRF分配回路、4-1…4-MはM個の実時間遅延線路、5はRF分配回路、6は送信器である。7は計測用のピックアップアンテナ、8は計測用の受信器である。16は計測において着目するサブアレー、17は基準用サブアレーである。
【0027】
次に動作について説明する。アンテナ装置を構成するサブアレーの内、計測において着目するサブアレー16と基準用サブアレー17を構成する素子アンテナ1のみを励振する。着目するサブアレー16を構成する素子アンテナ1と基準用サブアレー17を構成する素子アンテナ1の励振位相に180度の差を与え、それぞれの実時間遅延線路4の設定は0とすると、アンテナ正面方向では着目するサブアレー16からの信号と基準用サブアレー17からの信号が相殺しあい、放射パターンの零点が形成される。
【0028】
アンテナ正面方向に放射パターンの零点が形成されたことは、回転台または走査型スキャナーにより、アンテナ装置と計測用ピックアップアンテナ7の相対位置関係を変化させて、受信器8の出力を測定することで確認可能である。
【0029】
上記状態において、着目するサブアレー16につながれた実時間遅延線路4に遅延量Dを設定し、放射パターンの零点位置を測定する。 アンテナ正面からの零点位置の変位をΔθとすると、着目するサブアレー16につながれた実時間遅延線路4の遅延量は次式で求められる。
【0030】
【数9】
【0031】
ここで、Xは着目するサブアレ−16と基準用 サブアレー17の位相中心の間隔であり、既知の量である。上記の測定を実時間遅延線路の各ビット毎に繰り返し、また、全ての サブアレーに対して行うことで、全ての実時間遅延線路の遅延特性D'を測定することが可能である。
【0032】
【発明の効果】
この発明によれば、実時間遅延線路の実際の遅延量D'と遅延設定量Dの差から補正位相を求め、この補正位相を格納する記憶装置と補正位相から各移相器に設定する位相を計算する演算装置を備えることで、実時間遅延線路特性のばらつき、変動を考慮した位相設定を可能とし、試験・調整時間を短縮しながらも、高精度なビーム指向を可能とする。
【0033】
また、この発明によれば、2つの サブアレーA,Bのみを励振し、 サブアレーAの移相器と サブアレーBの移相器には180度の移相差を与え、各 サブアレーにつながれた実時間遅延線には遅延設定量として零を与えることで、アンテナ正面方向にナルパターンを形成し、次に サブアレーBの実時間遅延線路に遅延設定量Dを設定した場合のナル位置の変化Δθから サブアレーBにつながれた実時間遅延線路の実際の遅延量D'を求めることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1を示す図である。
【図2】 この発明の実施の形態2を示す図である。
【図3】 従来のアンテナ装置の構成を示す図である。
【図4】 従来のアンテナ装置における遅延線路の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 素子アンテナ、2 移相器、3 サブアレーRF分配回路、4 実時間遅延線路、5 RF分配回路、6 送信器、7 ピックアップアンテナ、8 受信器、9記憶装置、10 演算装置、11 1λ遅延回路、12 2λ遅延回路、13 4λ遅延回路、14 8λ遅延回路、15 制御回路、16 計測において着目する サブアレー、17 基準用 サブアレー。
Claims (2)
- N個(Nは2以上の整数)の素子アンテナとそれぞれの素子アンテナにつながれ、0度から360度の間で透過位相を変化させる事ができるN個の移相器、上記N個の移相器の出力をサブアレーとして合成するM個(Mは2以上、N以下の整数)のRF分配回路、上記それぞれのRF分配回路につながれたM個の実時間遅延線路、上記それぞれの実時間遅延線路につながれたRF分配回路を備えたアンテナ装置において、m番目(mは1以上、M以下の整数)の実時間遅延線路の遅延設定量Dmと実際の遅延量のD'mから、
- N個(Nは2以上の整数)の素子アンテナとそれぞれの素子アンテナにつながれ、0度から360度の間で透過位相を変化させる事ができるN個の移相器、上記N個の移相器の出力をサブアレーとして合成するM個(Mは2以上、N以下の整数)のRF分配回路、上記ぞれぞれのRF分配回路につながれたM個の実時間遅延線路、それぞれの上記実時間遅延線路につながれたRF分配回路を備えたアンテナ装置において、2つのサブアレーA,Bのみを励振し、サブアレーAの移相器とサブアレーBの移相器には180度の位相差を与え、各サブアレーにつながれた実時間遅延線には遅延設定量として零を与えることで、アンテナ正面方向にナルパターンを形成し、次にサブアレーBの実時間遅延線路に遅延設定量Dを設定した場合のナル位置の変化Δθから
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