JP3138728B2 - アレーアンテナの較正方法 - Google Patents

アレーアンテナの較正方法

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JP3138728B2
JP3138728B2 JP09157397A JP15739797A JP3138728B2 JP 3138728 B2 JP3138728 B2 JP 3138728B2 JP 09157397 A JP09157397 A JP 09157397A JP 15739797 A JP15739797 A JP 15739797A JP 3138728 B2 JP3138728 B2 JP 3138728B2
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circuit
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龍 三浦
泰 松本
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郵政省通信総合研究所長
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アンテナの近傍ま
たは遠隔から受信した各アンテナ素子の入力信号を、所
定のディジタル信号処理演算を行うことにより、所定の
励振分布以外に存在する振幅および位相の不均一性を相
殺するための係数を得るアレーアンテナの較正方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】第1の従来例として、”Digital Beamfo
rming for Radar System,MICROWAVEJOURNAL,JAN,198
9,p121〜p136”に記載されているように、受信アンテ
ナ装置内部にアレーアンテナ較正用の無変調信号源を備
え、この較正用信号をアレーアンテナの各アンテナ素子
の近傍の給電線に、予め正確な特性がわかっている方向
性結合器を経由して注入し、各系統の信号を検波してそ
れぞれの振幅及び位相の不均一性を測定する方法が開発
されている。
【0003】また、第2の従来例として、”「フェイズ
ドアレイアンテナの素子振幅位相測定法」,電子通信学
会誌,’82/5,Vol.J65−DNo.5,p55
5〜p560”に記載されているように、遠方から到来
する一定振幅の信号を受信し、アレーアンテナの各アン
テナ素子に対応した各系統の位相を1つずつ回転させ、
その時のアレーアンテナの全アンテナ素子の合成出力電
力を測定し、その軌跡から各系統における振幅と位相の
不均一性を検出する方法が開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】第1の従来例は、十分
品質のよい較正用の信号を用いることができるため、精
度の高いアンテナの較正ができるという特徴を有する
が、較正信号発生用の信号源とその信号を各アンテナ素
子の給電線に注入するためのアンテナ素子数分の線路及
び方向性結合器など、較正用の高周波部品を予めアンテ
ナ内あるいはアンテナの近傍に装備する必要があり、ハ
ードウェアとしての負担が重い。また、アンテナ素子や
反射鏡自体とアンテナ素子から方向性結合器までの線路
における振幅・位相の不均一性は検出することができな
いという問題点があった。
【0005】第2の従来例は、アンテナ較正用の特別な
高周波部品を装備しなくてもアンテナの較正が可能で、
アンテナ素子や反射鏡自体を含む全線路における振幅・
位相の不均一性を検出できるという特徴を有するが、ア
ンテナ素子が多い場合、各アンテナ素子毎に位相を回転
させて合成電力を測定する必要があるため、測定に時間
がかかることがあり、また、1アンテナ素子当たりの信
号電力が弱い場合、較正精度が十分確保できなくなる恐
れがあるという問題点があった。
【0006】また、第1及び第2の従来例とも、較正専
用に周波数を設けるか、あるいは通信を中断して較正を
行うための時間を設ける必要があるという問題点があっ
た。
【0007】本発明は、以上の問題点を解決し、較正用
の特別な高周波回路を装備することなく、遠方界より到
来する較正用の無変調信号または変調された通信信号を
用いて、ディジタル集積回路において、アンテナ素子や
反射鏡自体を含むアレーアンテナの各系統の高周波帯あ
るいは中間周波帯の部分に存在する、所定の励振分布以
外の振幅と位相の不均一性を相殺するための係数を高速
かつ精度良く検出し、これを用いて通信開始前に、ある
いは通信中に実時間で、所定の励振分布以外に存在する
各系統間の振幅と位相の不均一性を相殺することができ
るアレーアンテナの較正方法を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に記載の発明は、複数の受信アンテナ素子
で構成され、所定のビームパターンを得るための所定の
励振分布が各アンテナ素子に接続された各系統に与えら
れ、それら各アンテナ素子で受信した信号を検波するま
での各系統間には所定の励振分布以外に振幅および位相
の不均一性が存在するアレーアンテナにおいて、既知の
方向から到来する任意の変調方式で変調された単一の信
号を受信し、上記各系統毎に、受信信号が取り出せる出
力ポートをもつ場合、上記各系統の受信信号出力に、所
定のディジタル信号処理演算を行って出力することによ
り、上記各系統間に存在する振幅および位相の不均一性
を相殺するための較正係数を得ることを特徴とするアレ
ーアンテナの較正方法を提供する。
【0009】また、請求項2に記載の発明は、複数の受
信アンテナ素子で構成され、所定のビームパターンを得
るための所定の励振分布が各アンテナ素子に接続された
各系統に与えられ、それら各アンテナ素子で受信した信
号を検波するまでの各系統間には所定の励振分布以外に
振幅および位相の不均一性が存在するアレーアンテナに
おいて、既知の方向から到来する任意の変調方式で変調
された単一の信号を受信した場合、各系統の信号強度に
比例し、かつ位相基準となる特定の系統の信号に同相化
するための平均的な重みを各系統毎に演算し、この重み
に上記所定の励振分布の係数を上記重みの絶対値の2乗
で除算した係数を乗算し、これを受信信号の到来方向と
アンテナ素子の配置で一意的に決まるアンテナ素子間の
到来信号の位相差分だけ補正することにより、上記各系
統間に存在する振幅および位相の不均一性を相殺するた
めの較正係数を求め出力する、ことを特徴とするアレー
アンテナの較正方法を提供する。
【0010】また、請求項3に記載の発明は、複数の受
信アンテナ素子で構成され、所定のビームパターンを得
るための所定の励振分布が各アンテナ素子に接続された
各系統に与えられ、それら各アンテナ素子で受信した信
号を検波するまでの各系統間には所定の励振分布以外に
振幅および位相の不均一性が存在するアレーアンテナに
おいて、同時に複数の方向にビームを向けるための第1
の空間離散フーリエ変換回路を備え、既知の方向から到
来する任意の変調方式で変調された単一の信号を受信し
た場合、第1の空間離散フーリエ変換回路から出力され
る各ビームの信号強度に比例し、かつ位相基準となるあ
る所定のビームの信号に同相化するための平均的な重み
を各ビーム毎に演算し、この重みに第2の空間離散フー
リエ変換回路での演算を行うことにより、各ビームに対
応した重みから各アンテナ素子に接続された系統に対応
した重みに変換し、この重みに上記所定の励振分布の係
数を上記重みの絶対値の2乗で除算した係数を乗算し、
これを受信信号の到来方向とアンテナ素子の配置で一意
的に決まるアンテナ素子間の到来信号の位相差分だけ補
正することにより、上記各系統間に存在する振幅および
位相の不均一性を相殺するための較正係数を求め出力す
る、ことを特徴とするアレーアンテナの較正方法を提供
する。
【0011】請求項4に記載の発明は、複数の受信アン
テナ素子で構成され、所定のビームパターンを得るため
の所定の励振分布が各アンテナ素子に接続された各系統
に与えられ、それら各アンテナ素子で受信した信号を検
波するまでの各系統間には所定の励振分布以外に振幅お
よび位相の不均一性が存在するアレーアンテナにおい
て、同時に複数の方向にビームを向けるための第1の空
間離散フーリエ変換を行う空間離散フーリエ変換回路を
備え、既知の方向から到来する任意の変調方式で変調さ
れた単一の信号を受信した場合、第1の空間離散フーリ
エ変換で出力される各ビームの信号強度に比例し、かつ
位相基準となるある所定のビームの信号に同相化するた
めの平均的な重みを各ビーム毎に演算し、この重みに第
2の空間離散フーリエ変換を行うことにより、各ビーム
に対応した重みから各アンテナ素子に接続された系統に
対応した重みに変換し、この重みに上記所定の励振分布
の係数を上記重みの絶対値の2乗で除算した係数を乗算
し、これを受信信号の到来方向とアンテナ素子の配置で
一意的に決まるアンテナ素子間の到来信号の位相差分だ
け補正することにより、上記各系統間に存在する振幅お
よび位相の不均一性を相殺するための較正係数を求め出
力するとともに、上記第1の空間離散フーリエ変換と、
上記第2の空間離散フーリエ変換とを行う各回路を同一
の空間離散フーリエ変換回路に設け、交互にスイッチで
切り換えながら共用するようにした、ことを特徴とする
アレーアンテナの較正方法を提供する。
【0012】また、請求項5に記載の発明は、上記の請
求項4に記載の発明の構成に加えて、同時に複数の方向
にビームを向けるための空間離散フーリエ変換回路と、
上記空間離散フーリエ変換回路からの出力信号に対し、
各出力信号の信号強度に比例し、かつ位相基準となるあ
る所定の信号に同相化するための平均的な重みを演算し
上記各信号に乗算して、その乗算した結果を各信号間で
合成して受信信号を出力するビーム形成回路とを備え、
既知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単
一の信号を受信した場合、各アンテナ素子で受信した信
号を検波するまでの各系統間において、上記各系統間に
存在する振幅および位相の不均一性を相殺するための較
正係数を出力するための、空間離散フーリエ変換回路か
ら出力される各ビーム、または上記各系統の信号の強度
に比例し、かつ位相基準となるある所定の信号に同相化
するための平均的な重みを各信号毎に演算する回路を、
上記受信信号を出力するビーム形成回路と交互にスイッ
チで切り換えながら共用することを特徴とするアレーア
ンテナの較正方法を提供する。
【0013】請求項6に記載の発明は、上記した請求項
1に記載の発明の構成に加えて、複数の受信アンテナ素
子で構成され、所定のビームパターンを得るための所定
の励振分布が各アンテナ素子に接続された各系統に与え
られ、それら各アンテナ素子で受信した信号を検波する
までの各系統間には所定の励振分布以外に振幅および位
相の不均一性が存在するアレーアンテナにおいて、それ
らの不均一性を相殺させる係数を出力する回路と、各系
統毎に準同期検波を行うための局部発振器の振幅と位相
を調節できる補正回路とを備え、ある既知の方向から到
来する任意の変調方式で変調された単一の信号を受信し
た場合、その不均一性を相殺させるための係数を各系統
毎に互いに直交する2つの成分からなるベクトルで表現
し、そのベクトルに比例したベクトルを上記局部発振器
の初期ベクトルとなるように上記振幅・位相の補正回路
を設定することにより、上記単一の信号の近傍にある周
波数帯にあって任意の方向から到来する通信信号に対し
て、各系統間において存在する振幅と位相の上記不均一
性を相殺する、ことを特徴とするアレーアンテナの較正
方法を提供する。
【0014】さらに、請求項7に記載の発明は、上記し
た請求項1に記載の発明の構成に加えて、複数の受信ア
ンテナ素子で構成され、所定のビームパターンを得るた
めの所定の励振分布が各アンテナ素子に接続された各系
統に与えられ、それら各アンテナ素子で受信した信号を
検波するまでの各系統間には所定の励振分布以外に振幅
および位相の不均一性が存在するアレーアンテナにおい
て、ある既知の方向から到来する任意の変調方式で単一
の信号を受信した場合、その出力された不均一性を相殺
させるための係数を各系統毎に互いに直交する2つの成
分からなるベクトルで表現し、上記ベクトルが各系統間
で同一となるように、各系統の局部発振器の振幅と位相
を、上記ベクトルに基づいてフィードバック制御するこ
とにより、上記単一の信号の近傍に特定の周波数帯にあ
って任意の方向から到来する通信信号に対して、各系統
間において存在する振幅と位相の上記不均一性を実時間
で相殺するアレーアンテナの較正方法を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明に関
わる実施形態について説明する。
【0016】<アレーアンテナのエレメントスペース較
正> 図1は、本発明に関わる第1の実施形態である受信用の
アレーアンテナの較正装置のブロック図である。この実
施形態では、4素子のアレーアンテナに1つの無変調ま
たは変調された通信信号がある既知の方向から到来して
いる場合、各アンテナ素子1で受信した信号をそのまま
用いて、各系統における振幅と位相の不均一性を相殺す
るための較正係数を演算して出力する。
【0017】図中、ek(k=1,2,3,4)、(k
は各系統の番号)は各アンテナ素子1に接続する高周波
帯、中間周波帯のアンテナ素子、給電線、増幅器、フィ
ルタなどから構成される、アンテナ素子1からそれらア
ンテナ素子1で受信した信号を合成あるいは検波するま
での各系統がもつ振幅と位相の不均一性を複素数で表し
た係数、A/Dは各系統の高周波帯または中間周波帯の
アナログ信号をディジタル信号に変換するためのA/D
コンバータ2を示す。
【0018】各系統の信号は、A/D変換された後、適
当なサイドローブ制御等を行うためのある所定の励振振
幅係数ak(k=1,2,3,4)が乗算される。次
に、各系統の信号は、アレーアンテナの較正を行うため
の振幅と位相が各系統毎に個別に制御することが可能な
ディジタル局部信号発生器3によりディジタル演算の準
同期検波回路(Q−DET)4でベースバンド信号に変
換され、その後、各系統のベースバンド信号に基づいて
ekを相殺する較正係数(CAL factor)を演
算し出力する。
【0019】なお、本実施形態では、各系統毎のA/D
コンバータは省略し、準同期検波もアナログで行う構成
でも構わない。また、各系統毎の準同期検波は行わず、
高周波信号または中間周波信号のままビーム形成や較正
係数の演算を行い、較正のために局部信号発生器の振幅
と位相を制御する代わりに別途、各系統の振幅と位相を
個別に制御する回路を導入した構成でも構わない。
【0020】本較正装置では、ekを相殺する較正係数
(CAL factor)を検出するため、単一の無変
調または変調された通信信号を受信した場合の、各系統
の準同期検波出力信号または高周波信号あるいは中間周
波信号を最大比合成(MRC)回路5に入力する。較正
係数の演算中は、準同期検波のための局部信号発生器3
あるいは別途導入された振幅と位相の制御回路の振幅と
位相は各系統で同じ値に設定する。
【0021】このとき、最大比合成回路5に入力される
各系統のベースバンド信号または振幅と位相で決定され
る複素数で表現された高周波あるいは中間周波信号s
k’は、次のように表される。
【0022】
【数1】
【0023】ただし、kは各アンテナ素子1に接続され
た各系統の番号(4素子の場合はk=1,2,3,
4)、sk,ekは各アンテナ素子1で受信される高周
波信号、及び各系統に接続された高周波帯並びに中間周
波数帯のコンポーネントがもつ振幅と位相の不均一性
を、それぞれ振幅と位相で決定される複素数で表現した
ものである。
【0024】また、akはある適当なサイドローブ特性
を得るための所定の励振振幅係数(実数)である。一
方、sk’を最大比合成するためにsk’に与えられる
重みvkは、次式の演算により求められる。
【0025】
【数2】
【0026】ただし、rは最大比合成するために適当に
選ばれた同相化の基準となる系統の番号、*は複素共役
を表す。すなわち、vkは各系統の信号sk’に比例し
た振幅をもち、基準となる信号sr’に同相化するため
の位相差分の位相をもつ重みであることになる。ここ
で、この重みの位相成分は、受信した信号が情報シンボ
ルによって位相が変化する変調信号であっても、その情
報シンボルにはほとんど影響を受けない。実際には、v
kは実数部と虚数部とを個別にローパスフィルタに通し
て雑音や変調に伴う誤差成分を抑圧するが、ここでの説
明では簡略を期するため、これを省略している。
【0027】この最大比合成回路5は、図に示すような
ベースバンド帯での処理だけでなく、高周波あるいは中
間周波帯での処理でも構わない。すなわち、数式2に数
式1を代入すれば、vkは次のように表される。
【0028】
【数3】
【0029】ただし、φkは遠方から到来する単一の信
号が各アンテナ素子1に到達した時点での受信位相分布
を表し、アンテナ素子1の位置と信号到来方向で決定さ
れる。φkは、リニアアレーアンテナの場合、例えば次
式で与えられる。
【0030】
【数4】
【0031】ここで、xkはアンテナ素子1の位置を表
す座標値、lは受信する搬送波の波長、θはアンテナ正
面方向からみた信号の到来角を表す。
【0032】数式3において、sr’は全系統で共通の
係数であり、また各アンテナで受信する信号の振幅は等
しいため|sk|も各系統で等しく、その結果、次式に
示す比例関係が成り立つ。
【0033】
【数5】
【0034】従って、各系統の高周波帯または中間周波
帯のコンポーネントに存在する系統間の不均一性を相殺
するための較正係数は、次式で与えられる。
【0035】
【数6】
【0036】したがって、図1に示す通りディジタル演
算により、最大比合成回路(MRC)5から出力される
各系統に対応した重みに対して係数ak/|vk|2
乗じ、既知なる信号到来方向とアンテナ素子配置で決ま
るφkだけベクトル回転させれば較正係数を振幅と位相
の情報を含む複素数の形で検出することができる。な
お、実際は、MRC5の演算には先に記述したようにロ
ーパスフィルタが適用されるため、数式2の演算はある
所定の時間だけ繰り返し行い、vkの確度を高めた上で
数式6の処理を行う。
【0037】各アンテナ素子1に接続された各系統で個
別に振幅と位相の制御が可能な局部信号発生器3を備え
た準同期検波をディジタル演算で行っている場合には、
数式6で求められた較正係数を各系統の局部信号発振器
3の初期ベクトルとすることにより、各系統の高周波帯
または中間周波帯に存在する振幅と位相の不均一性は相
殺され、アレーアンテナは較正される。なお、準同期検
波回路4がアナログの場合においても、別の手段によ
り、局部発振器3の振幅と位相を較正係数を用いて制御
することが可能ならば、同様に較正できる。
【0038】さらに、高周波帯あるいは中間周波帯で振
幅と位相を制御する別の機構を各系統毎に用意して、こ
れにより求められた較正係数を適用して較正する方法で
も構わない。
【0039】較正係数が適用された後は、未知の方向か
ら到来する場合も含む較正用に受信した信号の近傍の周
波数帯における任意の通信信号を受信し、この時の最大
比合成回路出力は、そのまま到来信号の方向に自動的に
正しくビームが向けられたアレーアンテナの受信信号と
して、そのあとに続く復調等に利用できる。
【0040】なお、較正係数の適用された準同期検波出
力または高周波あるいは中間周波出力を最大比合成回路
に入力せず、別に用意した任意のビーム形成回路に入力
しても構わない。さらに、較正係数が適用された後に、
任意の方向から到来する通信信号に対して演算される各
アンテナ素子1に接続した各系統に対応した重みvk
は、ekが相殺されているため、次式となる。
【0041】
【数7】
【0042】数式7は、k番目のアンテナ素子1に到達
した受信信号が位相基準となるアンテナ素子1に到達し
た受信信号に比べてφkだけ位相が進み、しかもある所
定のサイドローブ特性を得るための励振振幅がakであ
る場合、位相φkだけ遅らせ、かつ同じ励振振幅akを
乗ずる重みとなっている。
【0043】したがって、vkをそのままあらかじめ別
の手段により較正された送信アレーアンテナのビーム形
成用のための、各アンテナ素子1に接続した各系統の重
みとして適用すれば、送信アレーアンテナが受信アレー
アンテナと波長からみて同じ配置並びに素子間隔である
ならば、受信信号が到来した方向に自動的に送信ビーム
を向けることができる。
【0044】なお、送信アレーアンテナが受信アレーア
ンテナと波長からみて同じ配置並びに素子間隔でない場
合でも、適当なアンテナ素子配置及び送受周波数を考慮
した処理を行うことにより、同様に受信信号の到来方向
に送信ビームを向けるための重みを演算することができ
る。
【0045】本実施形態は、受信信号の強度が比較的強
く、信号対雑音電力比が比較的大きい場合に適用可能で
あり、演算処理の規模が小さく済むという特徴をもつ。
また本実施形態では、アレーアンテナの各アンテナ素子
1で直接電波を受信する場合を想定したが、アンテナが
広い面積の反射鏡等を備え、これを介してアレーアンテ
ナで受信する場合にも有効で、その場合は反射鏡の鏡面
誤差なども含めて較正することが可能である。
【0046】<マルチビームアンテナのビームスペース
較正> 図2は、本発明に関わる第2の実施形態である受信用の
アレーアンテナの較正装置のブロック図である。この実
施形態では、4素子からなり、複数の方向に同時に互い
に直交するマルチビームを向けることが可能なアレーア
ンテナに1つの無変調または変調された通信信号がある
既知の方向から到来している場合において、アンテナ素
子1からそれらアンテナ素子1で受信した信号を合成あ
るいは検波するまでの各系統に存在する振幅と位相の不
均一性を相殺するための較正係数を演算して出力する。
【0047】図中のアンテナ素子1から準同期検波回路
(Q−DET)4までの構成は第1の実施形態と同じで
ある。本実施形態では、その準同期検波出力信号をマル
チビーム形成を行うための空間離散高速フーリエ変換
(FFT)回路8に入力し、その出力、すなわちマルチ
ビーム信号bn(nはFFT出力ビームの番号)に対し
てビーム合成演算を行い、到来信号方向に自動的にビー
ムを向けてアレーアンテナ出力を得る構成をとってい
る。
【0048】なお、FFT回路8は、空間離散フーリエ
変換(DFT)回路であっても構わない。また、本実施
形態においても、各系統毎のA/Dコンバータ2は省略
し、準同期検波回路4もアナログで行う構成でも構わな
い。さらに、各系統毎の準同期検波は行わず、高周波信
号または中間周波信号のままバトラマトリクス等に代表
されるアナログのマルチビーム形成や較正係数出力を行
い、較正のために局部信号発生器3の振幅と位相を制御
する代わりに別途、各系統の振幅と位相を個別に制御す
る回路を導入した構成でも構わない。
【0049】本較正装置では、ekを相殺する較正係数
(CAL factor)を検出するため、単一の無変
調または変調された通信信号を受信した場合のFFT出
力ビームを最大比合成回路(MRC)5に入力する。較
正係数の検出中は、準同期検波のための局部信号発生器
3あるいは別途導入された振幅と位相の制御回路の振幅
と位相は各系統で同じ値に設定する。このとき、n番目
のFFT出力ビームbnは複素数により次式で表され
る。
【0050】
【数8】
【0051】
【数9】
【0052】ただし、mはアンテナ素子数(本実施形態
の場合は4)である。このビームに対して最大比合成を
行う場合に、各ビームにかかる重みは次式で表される演
算によって求められる。
【0053】
【数10】
【0054】ただし、rは最大比合成のための位相基準
となるビームの番号である。位相基準となるビームは信
号品質が高い方がよいため、FFT出力ビームの中から
最も強度の大きいビームを選ぶ。実際には第1の実施形
態と同様に、最大比合成の演算にはローパスフィルタが
適用され、数式10の演算は所定の時間だけ繰り返して
次の処理に移る。すなわち、数式8を数式10に代入す
れば次式を得る。
【0055】
【数11】
【0056】ここで、br・Sk*・ek*・ak をv
kとおいて、数式11の逆フーリエ変換式を表すと、次
式のようになる。
【0057】
【数12】
【0058】このvkは、第1の実施形態において数式
3で求められたvkのsr’をbrで置き換えただけの
ものであり、結局、数式12は、FFT出力ビームを最
大比合成するために各ビームにかけられる重みを、各ア
ンテナ素子1に接続された各系統の信号を最大比合成す
るために各信号にかけられるべき重みに変換する演算を
与えることになる。
【0059】数式12は、wnにもう1度FFTの演算
を施すことによりvkが求められることを意味してい
る。なお、マルチビームを形成する回路がFFT回路8
ではなく、DFT回路か、あるいは、それらに等価なア
ナログ回路の場合、それと同じ処理をする演算回路を較
正係数出力回路にFFT回路の代わりに導入する構成を
とることとしても構わない。
【0060】後は第1の実施形態と同様にvkに対して
ak/|vk|2 を乗じ、信号到来方向及びアンテナ素
子1の配置で決まる位相分布φkだけ各系統毎にベクト
ル回転演算をすることで較正係数を求めることができ、
またこれを利用してアレーアンテナを較正することがで
きる。さらに、較正がなされた後のvkを送信ビーム形
成用の重みとして利用することができる。
【0061】本実施形態は、演算処理の規模が比較的大
きくなるが、アレーアンテナの素子数が多く、かつ1素
子当たりの信号対雑音電力比が小さい場合に、アレーア
ンテナの高い利得を有効に利用した較正並びビーム形成
が可能であるという特徴を有する。また第1の実施形態
と同様、本実施形態では、アレーアンテナの各アンテナ
素子1で直接電波を受信する場合を想定したが、アンテ
ナが広い面積の反射鏡等を備え、これを介してアレーア
ンテナで受信する場合にも有効で、その場合は反射鏡の
鏡面誤差なども含めて較正することが可能である。
【0062】<単一指向性アレーアンテナのビームスペ
ース較正> 図3は、本発明に関わる第3の実施形態である受信用の
アレーアンテナの較正装置のブロック図である。この実
施形態では、4素子からなり、任意の単一の方向にビー
ムを向けることが可能なアレーアンテナに、単一の無変
調信号がある既知の方向から到来している場合におい
て、アンテナ素子1からそれらアンテナ素子1で受信し
た信号を合成あるいは検波するまでの各系統に存在する
振幅と位相の不均一性を相殺するための較正係数を演算
して出力する。
【0063】本実施形態におけるアンテナは、各アンテ
ナ素子1に接続された各系統毎に高周波帯あるいは中間
周波帯において、移相器10並びに可変利得増幅器11
あるいは可変減衰器を備え、高周波帯あるいは中間周波
帯のままで各系統の信号を合成したのち、これをA/D
コンバータ(図示せず)によりディジタル信号に変換し
て出力する構成を想定している。
【0064】なお、上記移相器10並びに可変利得増幅
器11あるいは可変減衰器は、各系統毎に個別に振幅と
位相を制御することが可能な局部発振器、並びに準同期
検波回路で置き換え、ベースバンドで各系統の信号を合
成する構成であっても構わない。また、較正係数出力回
路は受信アンテナの近傍であってもよいし、受信アンテ
ナの合成出力信号さえ別の手段によって得られれば、受
信アンテナから離れた場所にあってもよい。
【0065】本較正装置では、ekを相殺する較正係数
(CAL factor)を検出するため、既知の方向
から到来する単一の無変調信号を受信した場合におい
て、初めに各系統の移相器を制御し、信号の到来方向に
最も近い方向にビームを向け、その時の全系統の合成受
信信号の周波数に、別途用意したアナログまたはディジ
タル演算による基準信号発生器13の周波数を調整して
一致させ、この時の基準信号をbrとする。
【0066】次に、各系統の移相器10を制御し、アン
テナのビームを空間離散フーリエ変換で形成されるであ
ろうマルチビームの全ての方向に順次向けていき、各方
向における合成受信信号bnと上記基準信号brとの間
で、数式10、数式12並びに数式6の演算を行うこと
により、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に較
正係数を求めることができ、またこれを利用してアレー
アンテナを較正することができる。
【0067】本実施形態は、ディジタル信号処理でビー
ムを形成する方式のアレーアンテナのみでなく、アナロ
グで高周波あるいは中間周波領域の信号を合成する方式
の従来型のフェーズドアレーアンテナにおいても適用が
可能であるという特徴をもっている。
【0068】また、アレーアンテナの合成出力信号さえ
得られればよいため、較正信号出力回路をアンテナから
離れた位置に設置せざるを得ない場合にも適しており、
例えば、任意の方向に単一の指向性を形成することが可
能なアナログ方式のフェーズドアレーアンテナが衛星上
に搭載されている場合、アレーアンテナの受信信号をそ
のまま地上局に折り返して受信し、地上から衛星上の移
相器10を制御しながら衛星搭載アレーアンテナの較正
係数を演算して得ることが可能である。
【0069】この時、アレーアンテナの高い利得を活用
しながら較正係数の演算が行えるため、アンテナ素子数
が多く、1素子当たりの受信電力が小さい場合でも精度
の高い較正が可能となる。
【0070】また、第1、第2の実施形態と同様に、本
実施形態では、アレーアンテナの各アンテナ素子で直接
電波を受信する場合を想定したが、アンテナが広い面積
の反射鏡等を備え、これを介してアレーアンテナで受信
する場合にも有効で、その場合は反射鏡の鏡面誤差など
も含めて較正することが可能である。
【0071】<FFT回路及びMRC回路の共用> 図4は、本発明に関わる第4の実施形態である受信用の
アレーアンテナの較正装置のブロック図である。この図
の例においては、4素子からなり、複数の方向に同時に
互いに直交するマルチビームを向けることが可能なアレ
ーアンテナに1つの無変調または変調された通信信号が
ある既知の方向から到来している場合において、アンテ
ナ素子1からそれらアンテナ素子1で受信した信号を合
成あるいは検波するまでの各系統に存在する振幅と位相
の不均一性を相殺するための較正係数を演算して出力す
る。
【0072】本実施形態では、較正係数出力機能は第2
の実施形態と同一であるが、ビーム形成回路9は全てデ
ィジタル信号処理によって構成されていることを前提と
している。その前提のもとで、FFT回路8をビーム形
成の目的と、較正係数出力の目的の両方で共用し、信号
処理回路の規模を節約している。
【0073】また、ビーム形成方法として、FFT回路
8の出力信号の中から強度の大きいビームをビーム選択
回路(SEL)16において複数選択し、位相中心シフ
ト回路(Phase center shift)17に
よって、FFTにおいて偏った、それら選択されたビー
ムの位相中心をアンテナの幾何学的中心に移し、その出
力ビームの間でディジタル演算に基づく最大比合成をす
ることによってアレー合成出力信号を得る方法をとって
いる。
【0074】この方法は、自動的に到来信号の方向にア
ンテナのビームを向け、これを追尾する機能を実現す
る。この場合、MRC回路5もビーム形成用と較正係数
出力用で共用し、上記FFT回路8の共用と併用すれ
ば、信号処理回路の規模を大幅に節約することが可能と
なる。上記FFT回路8とMRC回路5を共用するた
め、本実施形態においてはアルゴリズム内のFFT前段
において信号経路を切り換えるスイッチ(SW)15を
備えている。また、較正係数演算時にビーム形成用のビ
ーム選択回路16と位相中心シフト回路17をスキップ
するための制御を行っている。
【0075】本実施形態における較正装置の動作手順は
次の通りである。 1.準同期検波(Q−DET)出力信号をFFTに接続
する。 2.ビーム形成用の空間離散フーリエ変換を行い、bn
を得る。 3.較正係数演算中は、ビーム選択回路(SEL)16
及び位相中心シフト回路(Phase center s
hift)17はスキップし、FFT出力を全ビームと
も最大比合成回路(MRC)5に直接入力する。 4.MRC5の重み演算は内部のローパスフィルタによ
り、受信信号サンプルが増えるにしたがって、その確度
を高めていくため、ある適当なサンプル数だけMRC5
の重み演算を繰り返す。 5.FFT前段のSW15をQ−DET4からMRC5
側に切り換え、MRC5の重み出力wnをFFT回路8
に入力する。 6.そのFFT回路出力として、各アンテナ素子1に接
続された各系統に対応した重みvkが得られる。 7.数式6にしたがって較正係数(CAL facto
r)が得られる。
【0076】較正係数がQ−DET4の局部信号発生器
3に適用された後は、任意の方向から到来する通信信号
に対して、FFT前段のスイッチ15がQ−DET4に
接続している時に同時にビーム選択回路16と位相中心
シフト回路17を動作可能にすれば、MRC5の合成出
力として、通信信号の到来方向に向けられたアレーアン
テナのビームによる受信信号が得られる。
【0077】さらに、送信ビーム形成のための重みを得
る必要がある場合には、MRC5から出力される重みの
空間離散フーリエ変換が引き続き必要となるため、次の
手順を繰り返す。 1.準同期検波(Q−DET)4出力信号をFFT8に
接続する。 2.ビーム形成用の空間離散フーリエ変換を行い、bn
を得る。 3.ビーム選択回路16、位相中心シフト回路17を動
作可能とし、その出力をMRC5に入力して、連続して
アレー合成出力yを得る。 4.次の受信信号サンプルでは、ビーム選択回路16、
位相中心シフト回路17をスキップさせ、FFT8の全
ビーム出力をMRC5入力する。この時、MRC内部の
ローパスフィルタはアレー合成出力で用いたものとは別
のものを用いる。 5.FFT前段のスイッチ15をMRC5側に接続し、
MRC5の重み出力をFFT8に入力する。 6.FFT出力を送信ビーム形成用の重みとして送信ビ
ーム形成装置に出力する。 7.各受信信号サンプル毎に、上記1から6を繰り返
す。
【0078】<リアルタイム較正> 図5は、本発明に関わる第5の実施形態である受信用の
アレーアンテナの較正装置のブロック図である。この実
施形態では、4素子からなるアレーアンテナにある既知
の方向から1つの無変調または変調された通信信号が到
来し、加えて未知の任意の方向からその近傍の周波数帯
の複数の通信信号が到来している場合において、上記既
知の方向から到来している通信信号に対応して較正係数
出力回路(CAL factor detector)
から出力される較正係数に基づき、各通信信号に対応し
た準同期検波のための局部信号発生器3の振幅と位相を
フィードバック制御することにより、上記全ての通信信
号を受信しながらアレーアンテナを実時間で較正し、較
正されたアレーアンテナによる受信信号を各通信信号に
対応して出力する。
【0079】図において、ビーム形成回路(Beamf
ormer)18とは別に、あるいは一部回路を共用す
る較正係数出力回路(CAL factor dete
ctor)19から出力される較正係数はある時間間隔
Δτ毎にサンプラ(Sampler)20でサンプルさ
れ、乗算回路21に入力される。例えば、t−Δτの時
点での各系統毎の較正係数eCK(t−Δτ)は、サンプ
ル後、同じくe′CK(t−Δτ)の時点での各系統毎の
局部発振器3の振幅と位相を与えるベクトルと乗算され
る。次にその乗算結果はホールド回路(Hold)22
で保持されるとともに、局部発振器3にフィードバック
され、tの時点での局部発振器の振幅と位相を与える。
すなわち、tの時点で局部発振器にフィードバックされ
るベクトルは、各系統毎に次の数式で表される。
【0080】
【数13】
【0081】ホールド回路22で保持された乗算結果の
ベクトルeCK(t)は、次のΔτ後の乗算に再び使用さ
れる。このフィードバック演算を時間間隔Δτ毎に繰り
返す。例えば、準同期検波がディジタル演算によって行
われている場合は、局部信号の1周期がnsサンプルか
らなるものとし、その系統kにおける各周期毎の初期ベ
クトルをlk(0)とすれば、Nをサンプル数とおい
て、各周期毎の局部信号の時間変化は例えば次のように
なる。
【0082】
【数14】
【0083】(N=0,1,2,3,...,ns−
1) lk(N)は、nsサンプル毎に位相が2π回転し初期
ベクトルlk(0)に戻るが、この局部信号初期ベクト
ルとして常にホールド回路出力を用いる。すなわち、数
式15となる。
【0084】
【数15】
【0085】ただし、e′CK(t)の初期値e′
CK(0)は、任意のベクトルでよく、例えば各系統共通
に単位ベクトル(1,0)などとしておく。Δτを適当
な値に選べば、以上の演算を繰り返すことにより、較正
係数出力は各系統とも単位ベクトル(1,0)に収束
し、局部発振器3の振幅と位相に対応したベクトルlk
(0)は、各系統間に存在する振幅と位相の不均一性に
対応したベクトルek (t)を自動的に相殺するような
ベクトルに収束する。すなわち、アレーアンテナは較正
されたことになる。
【0086】なお、準同期検波回路4がアナログ回路で
ある場合、局部発振器3を電圧制御発振器あるいは数値
制御発振器として、ある適当な制御ループを構成するこ
ととしても構わない。また、上記振幅と位相を制御可能
な局部信号発生器3をもつ準同期検波回路4は、高周波
帯あるいは中間周波帯の可変移相回路と可変利得増幅器
あるいは可変減衰器であっても構わない。
【0087】本実施形態は、アレーアンテナが複数の近
接周波数の通信信号を受信しているときに、高周波帯あ
るいは中間周波帯において各系統がもつ振幅と位相の不
均一性が時間と共に比較的速く変化する場合、また、ア
ンテナが広い面積の反射器等を備え、その形状や鏡面精
度が時間と共に変化するような場合に有効である。
【0088】
【発明の効果】以上、詳述したように本発明に関わる請
求項1に記載のアレーアンテナの較正装置によれば、ア
レーアンテナの各アンテナ素子に接続された各系統の受
信信号出力、あるいはそれに空間離散フーリエ変換また
はそれに相当する信号変換を行った際に得られる複数の
受信信号出力にディジタル信号処理演算を行うことによ
り、アレーアンテナを較正するための係数を出力する。
したがって、本発明は以下の特有の効果を有する。 (1)較正用の特別な高周波回路を装備することなく、
ディジタル集積回路の中において、アレーアンテナのア
ンテナ素子あるいは反射鏡を介してそれらアンテナ素子
で受信した信号を合成あるいは検波するまでの各系統に
存在する、所定の励振分布以外の振幅と位相の不均一性
が相殺するための係数を高速かつ精度良く検出し、これ
を用いて通信開始前に、あるいは通信中に実時間で、所
定の励振分布以外に存在する各系統間の振幅と位相の不
均一性を相殺するための較正係数を出力する。 (2)較正用の信号としては、遠方から到来する無変調
の信号だけでなく、変調された通信信号それ自体を用い
ることができ、周波数の有効利用ができる。
【0089】また、請求項2に記載のアレーアンテナの
較正装置によれば、各アンテナ素子での受信信号を最大
比合成する際に求められる重みを用いてアレーアンテナ
を較正するための係数を出力し、上記の効果を得るため
の回路規模を小さく押さえることができる。
【0090】また、請求項3に記載のアレーアンテナの
較正装置によれば、各アンテナ素子での受信信号のFF
T出力を最大比合成する際に求められる重みを用いてア
レーアンテナを較正するための係数を出力し、アレーア
ンテナの素子数が多く、かつ1素子当たりの信号対雑音
電力比が小さい場合に、アレーアンテナの高い利得を有
効に利用した較正並びビーム形成が可能であるという特
徴を有する。
【0091】また、請求項4および5に記載のアレーア
ンテナの較正装置によれば、通信信号の到来方向にビー
ムを向けるためのビーム形成回路の一部を共用してアレ
ーアンテナを較正するための係数を出力し、ビーム形成
回路と較正系数出力回路の各1部を共用することで、信
号処理回路全体の規模を大幅に節約することが可能とな
る。
【0092】また、請求項6に記載のアレーアンテナの
較正装置によれば、簡単なディジタル信号処理回路でア
レーアンテナをオフライン較正することができる。
【0093】また、請求項7に記載のアレーアンテナの
較正装置によれば、通信中において、上記不均一性が時
間変化する場合においても、これを実時間で較正するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アレーアンテナの各アンテナ素子に接続された
各系統毎の信号から直接アレーアンテナの較正係数を検
出し、これを用いてアレーアンテナを較正する較正装置
のブロック図である。
【図2】マルチビーム形成機能をそなえたアレーアンテ
ナに対する較正係数を検出し、これを用いてアレーアン
テナを較正する較正装置のブロック図である。
【図3】単一の指向性を形成することができる従来型の
アナログ方式のフェーズドアレーアンテナに対する較正
係数を検出し、これを用いてアレーアンテナを較正する
較正装置のブロック図である。
【図4】較正係数出力回路とビーム形成回路のうち、F
FT回路とMRC回路を共用して、アレーアンテナの較
正係数を検出し、これを用いてアレーアンテナを較正す
る較正装置のブロック図である。
【図5】較正係数出力回路から出力される較正係数を準
同期検波回路の局部信号発生器にフィードバックし、ア
レーアンテナを実時間で較正する較正装置のブロック図
である。
【符号の説明】
1 アンテナ素子 2 A/Dコンバータ 3 局部発信器 4 準同期検波回路 5 最大比合成回路 6 利得設定増幅器 7,10 移相器 8 フーリエ変換回路 9,18 ビーム形成回路 11 可変利得増幅器 12 加算器 13 基準信号発生器 14 記憶回路 15 スイッチ 16 ビーム選択回路 17 位相中心シフト回路 19 較正係数検出回路 20 サンプラ 21 乗算回路 22 ホールド回路

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の受信アンテナ素子で構成され、所
    定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各ア
    ンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各ア
    ンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間
    所定の励振分布以外に振幅および位相不均一性が存
    在するアレーアンテナにおいて、 既知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単
    一の信号を受信し、上記各系統毎に、受信信号が取り出
    せる出力ポートをもつ場合、上記各系統の受信信号出力
    、所定のディジタル信号処理演算を行って出力するこ
    とにより、上記各系統間に存在する振幅および位相の不
    均一性を相殺するための較正係数を得ることを特徴とす
    るアレーアンテナの較正方法。
  2. 【請求項2】 複数の受信アンテナ素子で構成され、所
    定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各ア
    ンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各ア
    ンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間
    所定の励振分布以外に振幅および位相不均一性が存
    在するアレーアンテナにおいて、 知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単
    一の信号を受信した場合、各系統の信号強度に比例し、
    かつ位相基準となる特定の系統の信号に同相化するため
    の平均的な重みを各系統毎に演算し、この重みに上記所
    定の励振分布の係数を上記重みの絶対値の2乗で除算し
    た係数を乗算し、これを受信信号の到来方向とアンテナ
    素子の配置で一意的に決まるアンテナ素子間の到来信号
    の位相差分だけ補正することにより、上記各系統間に存
    在する振幅および位相の不均一性を相殺するための較正
    係数を求め出力する、 ことを特徴とするアレーアンテナの較正方法。
  3. 【請求項3】 複数の受信アンテナ素子で構成され、所
    定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各ア
    ンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各ア
    ンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間に
    は所定の励振分布以外に振幅および位相の不均一性が存
    在するアレーアンテナにおいて、 同時に複数の方向にビームを向けるための第1の空間離
    散フーリエ変換回路を 備え、 既知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単
    一の信号を受信した場合、第1の空間離散フーリエ変換
    回路から出力される各ビームの信号強度に比例し、かつ
    位相基準となるある所定のビームの信号に同相化するた
    めの平均的な重みを各ビーム毎に演算し、この重みに第
    2の空間離散フーリエ変換回路での演算を行うことによ
    り、各ビームに対応した重みから各アンテナ素子に接続
    された系統に対応した重みに変換し、この重みに上記所
    定の励振分布の係数を上記重みの絶対値の2乗で除算し
    た係数を乗算し、これを受信信号の到来方向とアンテナ
    素子の配置で一意的に決まるアンテナ素子間の到来信号
    の位相差分だけ補正することにより、上記各系統間に存
    在する振幅および位相の不均一性を相殺するための較正
    係数を求め出力する、 ことを特徴とするアレーアンテナの較正方法。
  4. 【請求項4】 複数の受信アンテナ素子で構成され、所
    定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各ア
    ンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各ア
    ンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間に
    は所定の励振分布以外に振幅および位相の不均一性が存
    在するアレーアンテナにおいて、 同時に複数の方向にビームを向けるための第1の空間離
    散フーリエ変換を行う空間離散フーリエ変換回路を備
    え、 既知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単
    一の信号を受信した場合、第1の空間離散フーリエ変換
    で出力される各ビームの信号強度に比例し、かつ位相基
    準となるある所定のビームの信号に同相化するための平
    均的な重みを各ビーム毎に演算し、この重みに第2の空
    間離散フーリエ変換を行うことにより、各ビームに対応
    した重みから各アンテナ素子に接続された系統に対応し
    た重みに変換し、この重みに上記所定の励振分布の係数
    を上記重みの絶対値の2乗で除算した係数を乗算し、こ
    れを受信信号の到来方向とアンテナ素子の配置で一意的
    に決まるアンテナ素子間の到来信号の位相差分だけ補正
    することにより、上記各系統間に存在する振幅および位
    相の不均一性を相殺するための較正係数を求め出力する
    とともに、 上記第1の空間離散フーリエ変換と、上記第2の空間離
    散フーリエ変換とを行 う各回路を同一の空間離散フーリ
    エ変換回路に設け、交互にスイッチで切り換えながら共
    用するようにした、 ことを特徴とするアレーアンテナの較正方法。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載のアレーアンテナの較正
    方法において、 同時に複数の方向にビームを向けるための空間離散フー
    リエ変換回路と、 上記空間離散フーリエ変換回路からの出力信号に対し、
    各出力信号の信号強度に比例し、かつ位相基準となるあ
    る所定の信号に同相化するための平均的な重みを演算し
    上記各信号に乗算して、その乗算した結果を各信号間で
    合成して受信信号を出力するビーム形成回路とを備え、 既知の方向から到来する任意の変調方式で変調された単
    一の信号を受信した場合、各アンテナ素子で受信した信
    号を検波するまでの各系統間において、上記各系統間に
    存在する振幅および位相の不均一性を相殺するための較
    正係数を出力するための、空間離散フーリエ変換回路か
    ら出力される各ビーム、または上記各系統の信号の強度
    に比例し、かつ位相基準となるある所定の信号に同相化
    するための平均的な重みを各信号毎に演算する回路を、
    上記受信信号を出力するビーム形成回路と交互にスイッ
    チで切り換えながら共用することを特徴とするアレーア
    ンテナの較正方法。
  6. 【請求項6】 複数の受信アンテナ素子で構成され、所
    定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各ア
    ンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各ア
    ンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間に
    は所定の励振分布以外に振幅および位相の不均一性が存
    在するアレーアンテナにおいて、 それらの不均一性を相殺させる係数を出力する回路と、 各系統毎に準同期検波を行うための局部発振器の振幅と
    位相を調節できる補正回路とを備えある既知の方向から
    到来する任意の変調方式で変調された単一の信号を受信
    した場合、その不均一性を相殺させるための係数を各系
    統毎に互いに直交する2つの成分からなるベクトルで表
    現し、そのベクトルに比例したベクトルを上記局部発振
    器の初期ベクトルとなるように上記振幅・位相の補正回
    路を設定することにより、上記単一の信号の近傍にある
    周波数帯にあって任意の方向から到来する通 信信号に対
    して、各系統間において存在する振幅と位相の上記不均
    一性を相殺する、 ことを特徴とする請求項1に記載のアレーアンテナの較
    正方法。
  7. 【請求項7】 複数の受信アンテナ素子で構成され、所
    定のビームパターンを得るための所定の励振分布が各ア
    ンテナ素子に接続された各系統に与えられ、それら各ア
    ンテナ素子で受信した信号を検波するまでの各系統間に
    は所定の励振分布以外に振幅および位相の不均一性が存
    在するアレーアンテナにおいて、 ある既知の方向から到来する任意の変調方式で単一の信
    号を受信した場合、その出力された不均一性を相殺させ
    るための係数を各系統毎に互いに直交する2つの成分か
    らなるベクトルで表現し、上記ベクトルが各系統間で同
    一となるように、各系統の局部発振器の振幅と位相を、
    上記ベクトルに基づいてフィードバック制御することに
    より、上記単一の信号の近傍に特定の周波数帯にあって
    任意の方向から到来する通信信号に対して、各系統間に
    おいて存在する振幅と位相の上記不均一性を実時間で相
    殺する請求項1に記載のアレーアンテナの較正方法。
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